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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】半導体製造装置の部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240404BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240404BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240404BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240404BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L21/31 F
H01L21/205
H01L21/302 101G
C23C14/06 B
C23C14/56 Z
H01L21/203 S
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022132548
(22)【出願日】2022-08-23
(65)【公開番号】P2023035931
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】63/238,400
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/562,502
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514213682
【氏名又は名称】友達晶材股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AUO Crystal Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ユィ チャン ホー
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034566(JP,A)
【文献】特表2020-503675(JP,A)
【文献】特開2000-080463(JP,A)
【文献】特開2002-037669(JP,A)
【文献】特開平02-054754(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151294(WO,A1)
【文献】米国特許第06440150(US,B1)
【文献】中国実用新案第205974660(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/3065
C23C 14/06
C23C 14/56
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に使用される部品であって、
ケイ素を含む基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う保護コーティングと、を備え、
前記保護コーティング中の炭素の原子比が前記基材から離れる方向に増加し、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が前記方向に減少し、
前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より大きく、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より小さいことを特徴とする部品。
【請求項2】
前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が50%より大きく、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては、前記保護コーティング中の炭素の原子比が50%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記保護コーティングは、(111)ファセット、(220)ファセットまたはそれらの組み合わせを有する結晶質ケイ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項4】
前記保護コーティングにおいて、炭素に対するケイ素の相対含有量は、2/3~3/2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項5】
前記保護コーティングは、第1の部分と第2の部分とを有し、
前記第1の部分は、前記基材と前記第2の部分とに接続され、前記基材に近い部分のケイ素の原子比が前記第2の部分のケイ素の原子比よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項6】
前記保護コーティングは、前記第1の部分側の反対側で前記第2の部分に接続されている第3の部分を更に有し、
前記第3の部分は、前記第1の部分の前記基材に近い部分の炭素の原子比よりも大きい炭素の原子比を有することを特徴とする請求項に記載の部品。
【請求項7】
反応性イオンエッチングモードのドライエッチング装置において、反応性ガスが気体のSF6及びCl2を含む場合、前記基材に対する前記保護コーティングの相対エッチングレートは、5分の3以下であることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項8】
前記基材は、それぞれが300nm~1.5μmの範囲の高さを有する複数の微細構造を含む表面を有し、
前記保護コーティングは、10μm以上の最小厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項9】
前記保護コーティングは、1.5μm以上の最小厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項10】
閉ループ物体であることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項11】
前記閉ループ物体は、ドライエッチング装置に用いられるフォーカスリングであることを特徴とする請求項10に記載の部品。
【請求項12】
半導体製造装置に使用される部品の製造方法であって、
ケイ素を含む基材の少なくとも一部を覆うように、少なくとも非結晶質炭化ケイ素を含むように反応性物理気相成長法により形成する3C-SiCを含む、保護コーティングを形成するステップであって、前記保護コーティングは、前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より大きく、且つ、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より小さくなるように、炭素の原子比が前記基材から離れる方向に増加し且つケイ素の原子比が前記方向に減少するように形成されるステップを含むことを特徴とする部品の製造方法。
【請求項13】
前記保護コーティング内の3C-SiCは、0%~60%の範囲の結晶化率を有することを特徴とする請求項12に記載の部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置の部品、より詳細には、半導体製造装置の部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の分野において、半導体チップを作るためにさまざまな半導体製造装置が必要とされる。これらの装置には、薄膜形成装置(thin film deposition equipment)、エッチング装置、フォトリソグラフィ装置などが含まれる。
【0003】
上記の装置には、様々な部品またはコンポーネント、例えば、フォーカスリング、エッジリング(edge ring)、チャンバウォール(chamber wall)など、製造装置を長期使用に耐えられるように保護するために必要なものが含まれる。
【0004】
部品の保護は、部品の基材(substrate)に保護層を形成することにより行われることが多い。
【0005】
例えば、半導体製造工程で古い保護層が破損した場合、部品の基材上に新しい保護層を形成して、部品の再利用を可能にすることができる。
【0006】
しかし、層間応力(interlayer stress)や格子不整合(lattice mismatch)など、さまざまな要因で保護層が部品から剥がれやすくなる可能性がある。
【0007】
従って、基材との密着性に優れ、通常の使用に耐える耐久性を有する保護層を備える部品を提供することが当技術分野に求められている。
【0008】
特許文献1には、基材表面を粗化することにより保護層と基材との密着性を上げる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2021/0043429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、新しい方法で、基材との密着性に優れ、通常の使用に耐える耐久性を有する保護層を備える部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を実現するために、本発明は、
半導体処理装置に使用される部品であって、
ケイ素を含む基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う保護コーティングと、を備え、
前記保護コーティング中の炭素の原子比が前記基材から離れる方向に増加し、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が前記方向に減少し、
前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より大きく、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より小さいことを特徴とする部品を提供する。
【0012】
また、本発明は、
半導体製造装置に使用される部品であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う保護コーティングと、を備え、
前記保護コーティングは、反応性物理気相成長法から形成された、少なくとも非結晶質炭化ケイ素を含む3C-SiCと、(111)ファセット、(220)ファセットまたはそれらの組み合わせを有する結晶質ケイ素と、を含む
ことを特徴とする部品を提供する。
【0013】
また、本発明は、
半導体処理装置に使用される部品の製造方法であって、
複数のシリコンターゲットと、基材と、を含むチャンバに不活性ガスを導入するステップと、
炭素元素を含む反応性ガスを前記チャンバに導入するステップと、
前記不活性ガスを、前記シリコンターゲットに衝突するプラズマになるようにイオン化して、ケイ素原子を前記シリコンターゲットから離脱させて、前記反応性ガスと反応することにより、前記基材の少なくとも一部を覆う炭化ケイ素を含む保護コーティングを形成させるステップと、を含むことを特徴とする部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明は、基材との密着性に優れ、通常の使用に耐える耐久性を有する保護コーティングを備える部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体製造装置に使用することに適合される本発明の部品の製造方法のフローチャートである。
【0016】
図2】一部の実施形態において、本発明を実行するための反応性物理気相成長装置(reactive physical vapor deposition equipment)の概略図である。
【0017】
図3】本発明の一部の実施形態に係る部品の基材を示す概略上視図である。
【0018】
図4図3の線IV-IVの断面図である。
【0019】
図5】本発明の部品における基材上に保護コーティングが形成されている状態を示す概略図である。
【0020】
図6】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0021】
図7】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0022】
図8】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0023】
図9】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0024】
図10】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0025】
図11】本発明の部品における保護コーティングの変形例を示す概略図である。
【0026】
図12】反応性物理気相成長装置のシリコンターゲットの配置を示す図である。
【0027】
図13】反応性物理気相成長装置のシリコンターゲットの配置を示す図である。
【0028】
図14】本発明の部品における基材の複数の微細構造を示す拡大概略断面図である。
【0029】
図15】本発明の部品における基材のピラミッド形状を有する複数の微細構造の変形例を示す拡大概略断面図である。
【0030】
図16】本発明の部品の実施例を示す走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、以下SEMと略称する)画像である。
【0031】
図17図16に示す実施例の保護コーティングのエネルギー分散型X線分析(energy-dispersive X-ray spectroscopy、以下EDSと略称する)による分析結果を示すグラフである。
【0032】
図18図16に示す実施例の保護コーティングのX線回折(X-ray diffraction、以下XRDと略称する)分析結果を示すグラフである。
【0033】
図19】本発明の部品の他の実施例のSEM画像である。
【0034】
図20図19に示す実施例の保護コーティングのEDS分析結果を示すグラフである。
【0035】
図21図19に示す実施例の保護コーティングのXRD分析結果を示すグラフである。
【0036】
図22】本発明の部品の更に他の実施例のSEM画像である。
【0037】
図23図22に示す実施例の保護コーティングのEDS分析結果を示すグラフである。
【0038】
図24図22に示す実施例の保護コーティングのXRD分析結果を示すグラフである。
【0039】
図25】反応性イオンエッチング(reactive ion etching、以下RIEと略称する)処理でエッチングされた本発明における基材と同じ材質のウエハ基板のSEM画像である。
【0040】
図26】反応性イオンエッチング(RIE)処理でエッチングされた図16に示す実施例のSEM画像である。
【0041】
図27】反応性イオンエッチング(RIE)処理でエッチングされた図19に示す実施例のSEM画像である。
【0042】
図28】反応性イオンエッチング(RIE)処理でエッチングされた図22に示す実施例のSEM画像である。
【0043】
図29図16の実施例の高分解能透過電子顕微鏡(high resolution transmission electron microscope、以下HRTEMと略称する)画像を示す図である。
【0044】
図30図16の実施例の回折パターン(diffraction pattern)を示す図である。
【0045】
図31図19の実施例の高分解能透過電子顕微鏡画像を示す図である。
【0046】
図32図19の実施例の回折パターンを示す図である。
【0047】
図33図22の実施例の高分解能透過電子顕微鏡画像を示す図である。
【0048】
図34図22の実施例の回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示をより詳細に説明する前に、適切と考えられる場合において、符号又は符号の末尾部分は、同様の特性を有し得る対応の又は類似の要素を示すために各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい。
【0050】
図1は、半導体製造装置に使用することに適合される本発明の部品400(図5を参照)の製造方法のフローチャート200である。
【0051】
一部の実施形態において、部品400は、エッチング(例えば、ドライエッチング(dry etching)または他のエッチング技術)、薄膜形成(例えば、原子層堆積(atomic layer deposition)、物理気相成長(physical vapor deposition、物理蒸着)、化学気相成長(chemical vapor deposition、化学蒸着)、プラズマ化学気相成長(plasma enhanced chemical vapor deposition)など)または他の半導体製造工程を行うための装置である半導体製造装置のコンポーネントとすることができる。
【0052】
例えば、部品400は、フォーカスリング、エッジリング、シャドーリング(shadow ring)、電極板、シャワーヘッド(shower head)、プロセスチャンバの内壁(interior wall of a process chamber)、チャック(chuck)、薄膜形成装置のサセプタ(susceptor)または台(pedestal)、ウエハボート(wafer boat)または他の適切な装置部品とすることができる。
【0053】
また、本発明は、基材(例えば、ケイ素基材)上にSiCコーティングをしたコーティングウェハにも同様の方法で適用することができる。
【0054】
一部の実施形態において、SiCコーティングは、数オングストローム(1オングストローム=10-10m=0.1ナノメートル(nm)=100ピコメートル(pm))から数ミリメートル(mm)の範囲の厚さを有する機能層と見なすことができる。
【0055】
機能層は、例えば、低熱膨張、高熱伝導性、優れた耐熱衝撃性、耐酸化性、バッファ層としての機能などを有することができる。
【0056】
一部の実施形態において、例えばGaN層のような少なくとも1つの異なる層が、SiC機能層上に更に堆積されていてもよい。
【0057】
以下、本発明の部品400の製造方法を、図1図5を参照に例説する。
【0058】
図1及び図2に示されるように、ステップS202において、反応性物理気相成長装置300が提供される。
【0059】
一部の実施形態において、反応性物理気相成長装置300は、チャンバ302と、チャンバ302内に配置されているホルダ(holder)304と、チャンバ302内に配置される複数のシリコンターゲット308とを含む。
【0060】
一部の実施形態において、シリコンターゲット308は、偶数個あり、ホルダ304の上方で互いに略平行に配置され且つホルダ304に対して略垂直に配置されている。
【0061】
一部の実施形態において、反応性物理気相成長装置300は、ホルダ304を加熱するために使用されるヒーター306を更に含む。
【0062】
ヒーター306は、グラファイトヒーター、IRレーザーヒーターまたは他の適切な加熱装置を使用することができる。
【0063】
また、ヒーター306は、ホルダ304を効果的に加熱できれば、チャンバ302内側またはチャンバ302の外側に配置することができる。
【0064】
図1及び図2に示されるように、ステップS204において、基材402がホルダ304上のチャンバ302に載置される。
【0065】
一部の実施形態において、基材402は、ケイ素、酸化ケイ素、グラファイト、セラミック、金属、合金及び他の適切な材料で製造されることができる。
【0066】
セラミックとして、例えば炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素または酸化イットリウムなどが挙げられる。
【0067】
合金として、例えばアルミニウム合金、クロム含有ステンレス鋼、銅合金またはチタン合金などが挙げられる。
【0068】
酸化ケイ素として、例えば石英などが挙げられる。
【0069】
図3に示されるように、一部の実施形態において、基材402は閉ループ物体であり、リング状で例示されるが、実際の要求に応じて、他の適切な形状も可能である。
【0070】
図4には、図3の線IV-IVに沿った基材402の断面が示される。
【0071】
一部の実施形態において、基材402は、図4に示されるように、相反する内面410及び外面412、相反する上面406及び下面408、並びに水平面414及び水平面414と共に段差を構成する垂直面416を有する主体404を有する。
【0072】
一部の実施形態において、水平面414は、内面410に対して実質的に垂直であるが、他の実施形態において、水平面414は、内面410に対して傾斜していてもよい。
【0073】
一部の実施形態において、垂直面416は、上面406に対して実質的に垂直であるが、他の実施形態において、垂直面416は、上面406に対して傾斜していてもよい。
【0074】
図1及び図2に示されるように、ステップS206において、不活性ガスが、チャンバ302のガス導入口(図示せず)を介してチャンバ302に導入される。
【0075】
一部の実施形態において、不活性ガスは、Ar、He、Ne、Krまたはそれらの組合せを使用することができる。
【0076】
一部の実施形態において、不活性ガスの流量(flow rate)は5slm~24slmの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0077】
図1及び図2に示されるように、ステップS208において、反応性ガスは、チャンバ302の別のガス入口(図示せず)を介してチャンバ302内に導入される。
【0078】
一部の実施形態において、反応性ガスは、例えば、C22、CH4など炭素元素を含むものを使用することができる。
【0079】
一部の実施形態において、反応性ガスは、Cn(2n-2)、Cnn、Cn(2n+2)または他の適切な式を有する炭化水素ガス(hydrocarbon gas)を使用することができ、ここでnは正の整数である。
【0080】
一部の実施形態において、反応性ガスの流量は10sccm~120sccmの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0081】
図1及び図2に示されるように、ステップS210において、不活性ガスをシリコンターゲット308に衝突するイオンを含むプラズマになるようにイオン化して、ケイ素原子やケイ素イオンをシリコンターゲット308から離脱させて、反応性ガスと反応することにより、基材402の少なくとも一部を覆う炭化ケイ素(SiC)製の保護コーティング418を形成させ、それによって、基材402と基材402の少なくとも一部を覆っている保護コーティング418とを含む部品400を得ることができる。
【0082】
保護コーティング418は、例えば、部品400をエッチング装置で使用する際に、部品400の基材402をドライエッチガス(例えば、Cl2、F2、O2、CF4、C38、CHF3、XeF2、SF6、HBr、塩素ガスなど)による損傷から保護することが可能である。
【0083】
一部の実施形態において、不活性ガスをイオン化するための高周波電力(radiofrequency power)は0.4kW~1.2kWの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0084】
一部の実施形態において、保護コーティング418は、6×10-10m/秒以上の速度で形成される。
【0085】
一部の実施形態において、保護コーティング418は、1.5μm以上の最小厚さを有する。
【0086】
更に図5に示されるように、一部の実施形態において、基材402の所望の部分のみを露出させて保護コーティング418が該部分に形成されるように、保護コーティング418の形成中に複数の被覆ユニット(covering unit)500を基材402に取り付けることができる。
【0087】
例えば、図4及び図5に示されるように、基材402の主体404の下面408、内面410及び外面412を被覆ユニット500で覆うことにより、基材402の上面406、水平面414及び垂直面416のみに保護コーティング418が形成されるようにすることができる。
【0088】
保護コーティング418を形成した後、被覆ユニット500を基材402から取り外す。
【0089】
一部の実施形態において、被覆ユニット500は、治具、マスク、テープ、それらの任意の組み合わせ、又は他の適切な材料を使用することができる。
【0090】
図6図11は、保護コーティング418の各異なる変形例(即ちそれぞれ保護コーティング418の形成箇所が異なる各例)を示す概略図である。
【0091】
図4及び図6に示される例では、保護コーティング418は、基材402の上面406と、垂直面416と、水平面414の一部とを覆っている。
【0092】
図4及び図7に示される例では、保護コーティング418は、基材402の上面406と、垂直面416と、水平面414と、外面412の一部とを覆っている。
【0093】
図4及び図8に示される例では、保護コーティング418は、基材402の上面406と、垂直面416と、水平面414と、内面410の一部とを覆っている。
【0094】
図4及び図9に示される例では、保護コーティング418は、基材402の上面406と、垂直面416と、水平面414と、内面410の一部と、外面412の一部とを覆っている。
【0095】
図4及び図10に示される例では、保護コーティング418は、基材402の上面406と、垂直面416と、水平面414と、内面410と、外面412とを覆っている。
【0096】
図4及び図11に示される例では、保護コーティング418は、上面406、下面408、内面410、外面412、水平面414及び垂直面416を含む基材402の主体404を完全に覆っている。
【0097】
更に、図4図10に示される各例において、保護コーティング418の応力により基材402が曲がる場合に備えて、下面408に反り防止層(図示せず)を選択的に設置することができる。
【0098】
反り防止層の材料も炭化ケイ素を選択することができるが、基材402の反りを補償できるものであれば、炭化ケイ素に限定されるものではない。
【0099】
図2に示されるような一部の実施形態においては、偶数個のシリコンターゲット308がチャンバ302内に配置されている。
【0100】
一部の実施形態において、シリコンターゲット308は、互いに向かい合うように少なくとも1ペアで配置されている。
【0101】
具体的には、シリコンターゲット308の数が2つの場合、シリコンターゲット308は、互いに向かい合うようにチャンバ302に取り付けられてもよいし、数ミリメートルから数百ミリメートルといった短い距離で互いに近くに配置されてもよい(図12参照)。
【0102】
シリコンターゲット308の数が偶数であると、プラズマやガス原子やイオンがシリコンターゲット308に衝突しやすくなり、その結果、より緻密な炭化ケイ素保護コーティング418が形成されることができる。
【0103】
なお、シリコンターゲット308の数が4個、6個、8個など2個より多い場合は、シリコンターゲット308を複数ペアで配置することができる。
【0104】
例えば、図13に示されるように、基材402の上方には、3ペアのシリコンターゲット308が等角配列で配置されている。
【0105】
一部の実施形態において、保護コーティング418の均一性を調整又は改善するために、閉ループ物体又はリングなどである基材402を、保護コーティング418の形成中に仮想中心軸Lを中心に回転させる。
【0106】
一部の実施形態において、ケイ素原子やケイ素イオンの形成効率を向上させるため、又はシリコンターゲット308のペアのプラズマエロージョン(plasma erosion)均一性を調整するために、各ペアのシリコンターゲット308の2つの側面には、図13に示されるように、磁場を生成する磁石(magnets)501が設けられて磁場内に位置するプラズマを制御する。
【0107】
図2に示されるように、一部の実施形態において、基材402は、プラズマに対してより低い電圧を有するようにバイアスされることができる。
【0108】
例えば、プラズマが正に帯電している場合(例えば、Ar+を含むプラズマ)、基材402は負に帯電され、それによって、プラズマの一部のイオンが基材402に衝突するように引き寄せられる。
【0109】
プラズマにおける引き寄せられたイオンは、空気、水分などに晒された時に基材402に形成されたネイティブな酸化層(native oxidized layers)を除去することによって、基材402の表面を清浄化することができる。
【0110】
更に、Ar+などのガスイオンを有するプラズマは、基材402の表面に、ケイ素原子、ケイ素イオン、炭素、炭化ケイ素のうちの少なくとも1者と反応性があるダングリングボンド(dangling bond)を生成することができる。
【0111】
従って、保護コーティング418は、基材402に物理的、化学的、またはその両方により接続されることができ(例えば、保護コーティング418は、ダングリングボンドとの化学結合を介して基材402に接続される)、これにより、保護コーティング418は、基材402により強固に付着され得る。
【0112】
また、反応性物理気相成長法によって形成される保護コーティングは、比較的に低い温度で形成されるので、保護コーティング418と基材402との間の応力の不整合を低減できて、密着性が向上できる。
【0113】
図2に示されるように、一部の実施形態において、基材402は、保護コーティング418が基材402により強固に付着するようにヒーター306によって加熱されることができる。ヒーター306によって加熱されることにより、保護コーティング418の結晶化度が増加する(即ち、保護コーティング418を高密度化する)こともできる。
【0114】
加熱温度は、室温から基材402及び保護コーティング418(即ち、炭化ケイ素)の融点より低い温度までの任意の温度でよい。
【0115】
一部の実施形態において、保護コーティング418の形成中、様々な目的、例えば保護コーティング418の均一性を調整するなどのために、ホルダ304を回転、水平方向、垂直方向または傾斜方向に移動させることにより、基材402を回転または移動させることができる。
【0116】
図14は、図5に示される円Aの拡大概略断面図である。
【0117】
一部の実施形態において、図14に示されるように、保護コーティング418が基材402の主体404上に形成された後、基材402と保護コーティング418との間の応力を低減することができ且つ保護コーティング418を基材402により強固に取り付けることができるように、保護コーティング418の形成前に基材402の主体404には、突起など複数の微細構造420を形成しておくことができる。
【0118】
一部の実施形態において、微細構造420の各々は、図14に示されるように、300nm~1.5μmの範囲の高さHを有し、その上の保護コーティング418は、10μm以上の最小厚さTを有する。
【0119】
図15に示されるように、一部の実施形態において、微細構造420の各々は、ピラミッド型であり、三角形の断面を有する。
【0120】
微細構造420は、基材402を適切なエッチング剤でエッチングすることによって形成されることができ、堆積技術によって形成されることもでき、又は他の適切な技術を用いて形成されることもできる。
【0121】
一部の実施形態において、ケイ素で製造された基材402は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide、TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール(ethylenediamine pyrocatechol、EDP)などによってエッチングされることができる。
【0122】
図16は、本発明の部品400の実施例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0123】
本実施例の製造工程において、不活性ガスは、5slm~24slmの範囲の流量のArであるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0124】
反応性ガスは、10sccm~36sccmの範囲の流量のC22であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0125】
チャンバ302内の圧力は、10-1torr~10-2torrの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0126】
不活性ガスをイオン化するための高周波電力は、初期では0.4kW~0.7kWの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0127】
その後、高周波電力を0.7kW~1.2kWの範囲に上げるが、これも実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0128】
成膜工程(deposition process)の温度は、250℃以下であればよいが、実際の要求に基づいて他の範囲でも可能である。
【0129】
例えば、成膜温度(deposition temperature)を700℃とすることで、保護コーティング418のエッチング抵抗能力を高める結晶質炭化ケイ素の比率を高めることができる。
【0130】
即ち、部品400の製造方法の一部の実施形態において、不活性ガスの流量、反応性ガスの流量及び不活性ガスをイオン化するための高周波電力の少なくとも1者は、保護コーティング418の形成過程において動的に変化し且つ初期数値より大きい数値で終了する(即ち、上記の数値は動的に増大することができる)。
【0131】
図16に示されるように、部品400の保護コーティング418は、第1の部分422と第2の部分424とを有するように形成されている。
【0132】
第1の部分422は、基材402と第2の部分424とが接続され、基材402に近い部分のケイ素の原子比が第2の部分424のケイ素の原子比よりも大きい。
【0133】
この実施形態において、図16に示されるように、第1の部分422は基材402と第2の部分424との間に挟まれている。
【0134】
図17は、図16の線L1に沿ってエネルギー分散型X線分析(EDS)で図16に示す実施例の保護コーティング418を分析した結果を示すグラフである。
【0135】
図16及び図17に示されるように、保護コーティング418中の炭素の含有量(即ち、炭素の原子比)は、線L1に沿って増加し(例えば、基材402から離れる方向に増加し)、保護コーティング418中のケイ素の含有量(即ち、ケイ素の原子比)は例えば基材402から離れる方向に減少している。
【0136】
この実施形態において、保護コーティング418中の炭素の含有量は、基材402から離れる方向に増加し、保護コーティング418中のケイ素の含有量は、基材402から離れる方向に減少している。
【0137】
即ち、保護コーティング418の基材402に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも大きい。
【0138】
逆に言えば、基材402から離れた保護コーティング418の外表面に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも小さい。
【0139】
より具体的には、保護コーティング418において、基材402に近い部分では、ケイ素の原子比が75%より大きい一方、炭素の原子比は25%より小さく、保護コーティング418の外表面に近い部分では、炭素の原子比が約70%である一方、ケイ素の原子比は約30%である。
【0140】
保護コーティング418中の炭素に対するケイ素の平均相対含有量は、3/2付近(即ち、Si:C=60:40)である。
【0141】
図17において、ケイ素の曲線と炭素の曲線は、基材402からの距離の最大値の1/2より大きい点で交差している。
【0142】
その結果、保護コーティング418において、全体のケイ素の含有量は、全体の炭素の含有量よりも大きい。
【0143】
基材402がケイ素で製造された場合、ケイ素含有量の高い保護コーティング418を基材402に近づけることで、保護コーティング418をより強固に基材402に付着させることができる。
【0144】
図18は、図16に示す実施例の保護コーティング418のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
【0145】
図18に示されるように、保護コーティング418は、少なくともc-Si(111)と、c-Si(220)と、例えば非結晶質炭化ケイ素(amorphous silicon carbide、a-SiC)及び少量のβ-SiC(111)(図示せず)を含む3C-SiCとを含む。
【0146】
即ち、保護コーティング418は、3C-SiCと、(111)ファセット、(220)ファセットまたはそれらの組み合わせを有する結晶質ケイ素とを含む。
【0147】
図19は、本発明の部品400の他の実施例のSEM画像である。
【0148】
本実施例の製造工程において、不活性ガスは、流量が5slm~17slmの範囲のArであるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0149】
反応性ガスは、流量が10sccm~60sccmの範囲のC22であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0150】
チャンバ302内の圧力は、10-1torr~10-2torrの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0151】
不活性ガスをイオン化するための高周波電力は、初期では0.4kW~0.7kWの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0152】
その後、高周波電力を0.7kW~1.2kWの範囲に上げるが、これも実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0153】
成膜工程の温度は、250℃以下であればよいが、実際の要求に基づいて他の範囲でも可能である。
【0154】
例えば、成膜温度を1000℃とすることで、保護コーティング418のエッチング抵抗能力を高める結晶質炭化ケイ素の比率を高めることができる。
【0155】
即ち、部品400の製造方法の一部の実施形態において、不活性ガスの流量、反応性ガスの流量及び不活性ガスをイオン化するための高周波電力の少なくとも1者は、保護コーティング418の形成過程において動的に変化し且つ初期数値より大きい数値で終了する(即ち、上記の数値は動的に増大することができる)。
【0156】
図19に示されるように、部品400の保護コーティング418は、第1の部分422とコラム状の構造(columnar-like structure)を有する第2の部分424とを有するように形成されている。
【0157】
第1の部分422は、図19に示されるように、基材402と第2の部分424とが接続され、基材402に近い部分のケイ素の原子比が第2の部分424のケイ素の原子比よりも大きい。
【0158】
図20は、図19の線L2に沿ってエネルギー分散型X線分析(EDS)で図19に示す実施例の保護コーティング418を分析した結果を示すグラフである。
【0159】
図19及び図20に示されるように、保護コーティング418中の炭素の含有量(即ち、炭素の原子比)は、線L2に沿って増加し(例えば、基材402から離れる方向に増加し)、保護コーティング418中のケイ素の含有量(即ち、ケイ素の原子比)は例えば基材402から離れる方向に減少している。
【0160】
この実施形態において、保護コーティング418中の炭素の含有量は、基材402から離れる方向に増加し、保護コーティング418中のケイ素の含有量は、基材402から離れる方向に減少している。
【0161】
即ち、保護コーティング418の基材402に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも大きい。
【0162】
逆に言えば、基材402から離れた保護コーティング418の外表面に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも小さい。
【0163】
より具体的に、保護コーティング418において、基材402に近い部分では、ケイ素の原子比が70%より大きい一方、炭素の原子比は30%より小さく、保護コーティング418の外表面に近い部分では、炭素の原子比が70%より大きい一方、ケイ素の原子比は30%より小さい。
【0164】
保護コーティング418中の炭素に対するケイ素の平均相対含有量は、1付近(即ち、Si:C=50:50)である。
【0165】
図20において、ケイ素の曲線と炭素の曲線は、基材402からの距離の最大値の1/2付近の点で交差している。
【0166】
その結果、保護コーティング418において、全体のケイ素の含有量は、全体の炭素の含有量とほぼ等しい。
【0167】
図21は、図19に示す実施例の保護コーティング418のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
【0168】
図21に示されるように、保護コーティング418は、少なくとも、例えば非結晶質炭化ケイ素(a-SiC)の3C-SiCを含む。
【0169】
図22は、本発明の部品400の更に他の実施例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0170】
本実施例の製造工程において、不活性ガスは、5slm~18slmの範囲の流量のArであるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0171】
反応性ガスは、10sccm~120sccmの範囲の流量のC22であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0172】
チャンバ302内の圧力は、10-1torr~10-2torrの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0173】
不活性ガスをイオン化するための高周波電力は、初期では0.4kW~0.7kWの範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0174】
その後、高周波電力を0.7kW~0.9kWの範囲に上げるが、これも実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0175】
その後、更に高周波電力を0.9kW~1.2kWの範囲に上げるが、これもまた実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0176】
成膜工程の温度は、250℃以下であればよいが、実際の要求に基づいて他の範囲でも可能である。
【0177】
例えば、成膜温度を1200℃とすることで、保護コーティング418のエッチング抵抗能力を高める結晶質炭化ケイ素の比率を高めることができる。
【0178】
即ち、部品400の製造方法の一部の実施形態において、不活性ガスの流量、反応性ガスの流量及び不活性ガスをイオン化するための高周波電力の少なくとも1者は、保護コーティング418の形成過程において動的に変化し且つ初期数値より大きい数値で終了する(即ち、上記の数値は動的に増大することができる)。
【0179】
図22に示されるように、部品400の保護コーティング418は、第1の部分422と第2の部分424と第3の部分426とを有するように形成されている。
【0180】
図22に示されるように、第1の部分422は、基材402と第2の部分424とが接続され、第3の部分426は、第2の部分424の第1の部分422側の反対側で第2の部分424と接続されている。この実施形態において、第2の部分424は、図22に示されるように、第1の部分422と第3の部分426との間にある。
【0181】
第3の部分426は、保護コーティング418の外表面に近い部分の炭素の原子比が第1の部分422の基材402に近い部分の炭素の原子比よりも大きい。
【0182】
図23は、図22の線L3に沿ってエネルギー分散型X線分析(EDS)で図22に示す実施例の保護コーティング418を分析した結果を示すグラフである。
【0183】
図22及び図23に示されるように、保護コーティング418中の炭素の含有量(即ち、炭素の原子比)は、線L3に沿って増加し(例えば、基材402から離れる方向に増加し)、保護コーティング418中のケイ素の含有量(即ち、ケイ素の原子比)は例えば基材402から離れる方向に減少している。
【0184】
この実施形態において、保護コーティング418中の炭素の含有量は、基材402から離れる方向に増加し、保護コーティング418中のケイ素の含有量は、基材402から離れる方向に減少している。
【0185】
即ち、保護コーティング418の基材402に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも大きい。
【0186】
逆に言えば、基材402から離れた保護コーティング418の外表面に近い部分は、ケイ素の原子比が炭素の原子比よりも小さい。
【0187】
より具体的には、保護コーティング418において、基材402に近い部分では、ケイ素の原子比が55%より大きい一方、炭素の原子比は45%より小さく、保護コーティング418の外表面に近い部分では、炭素の原子比が約70%である一方、ケイ素の原子比は約30%である。
【0188】
保護コーティング418中の炭素に対するケイ素の平均相対含有量は、2/3付近(即ち、Si:C=40:60)である。
【0189】
図23において、ケイ素の曲線と炭素の曲線は、基材402からの距離の最大値の1/2未満の点で交差している。
【0190】
その結果、保護コーティング418において、全体の炭素の含有量は、全体のケイ素の含有量よりも大きい。
【0191】
一部の実施形態において、保護コーティング418(即ち、炭化ケイ素)中の炭素に対するケイ素の相対含有量は、2/3から3/2の範囲であるが、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0192】
図24は、図22に示す実施例の保護コーティング418のX線回折(XRD)分析結果を示すグラフである。
【0193】
図24に示されるように、保護コーティング418は、少なくともc-Si(111)と、c-Si(220)と、例えばβ-SiC(111)などの3C-SiC(即ち、結晶質立方晶SiC(crystalline cubic SiC))とを含む。
【0194】
図25図28は、ドライエッチング装置(東京エレクトロン社製、型番4502)において、エッチャントガスとして気体のSiF6とCl2を用い、RFパワー1000W、エッチング時間200秒の反応性イオンエッチング(RIE)モードでエッチングした本発明による各実施例を示している。
【0195】
図25は、基材402と同じ材質のSi(100)ウエハ基板(wafer substrate)を前記条件のドライエッチング装置のRIEモードでエッチングしたものであり、この時のウエハ基板のエッチングレートは216μm/hrと算出された。
【0196】
図26は、図16に示す部品400を前記条件にてRIEモードでエッチングしたものであり、この時の保護コーティング418のエッチングレートは10.8μm/hrと算出された。
【0197】
図27は、図19に示す部品400を前記条件にてRIEモードでエッチングしたものであり、この時の保護コーティング418のエッチングレートは21.6μm/hrと算出された。
【0198】
図28は、図22に示す部品400を前記条件にてRIEモードでエッチングしたものであり、この時の保護コーティング418のエッチングレートは5.4μm/hrと算出された。
【0199】
従って、保護コーティング418を有することにより、部品400のエッチングレートが低下する。
【0200】
一部の実施形態において、Si(100)基材402に対する保護コーティング418の相対エッチングレートは、10分の1以下である。
【0201】
非結晶質炭化ケイ素と比較して、結晶質炭化ケイ素(例えば、β-SiC(111))の比率が高いほど、高いエッチング抵抗能力を得ることができる。
【0202】
一部の実施形態(図示せず)において、Si(100)基材402に対する保護コーティング418の相対エッチングレートは、様々なエッチングガス、RFパワー、またはエッチング時間、部品400のスケールにより、5分の3(即ち、3/5)以下であることがある。
【0203】
前述の実施形態において、保護コーティング418内の3C-SiC(炭化ケイ素)は、0%から17%の範囲の結晶化率を有することができる。
【0204】
しかし、より高い工程温度または800℃までのアニール温度を有する他の実施形態において、結晶化率は最大60%であってもよい。
【0205】
つまり、実際の要求に基づいて他の範囲も可能である。
【0206】
本発明の一部の実施形態による保護コーティング418内の3C-SiCの結晶化率は、0%から5%、5%から10%、10%から15%、15%から17%、17%から20%、20%から25%、25%から30%、35%から40%、40%から45%、45%から50%、55%から60%又は他の値の範囲であってもよく、アニール温度が炭化ケイ素及び基材402の融点より低い温度であれば、例えば工程温度又は1200℃までのアニール温度の場合、80%であってもよい。
【0207】
図29は、日本電子社製のモデルJEM-2100Fによって撮影された図16の実施例の高分解能透過電子顕微鏡画像である。
【0208】
更に、図30は、図16の実施例の回折パターンを示す図である。
【0209】
図29及び図30に示される検出位置は、図16に示されるように、保護コーティング418の外表面から1μmの深さである。
【0210】
白い点で形成された円は結晶の面積を表し、図29の結果から3C-SiCの結晶化率は5%と算出された。
【0211】
図31は、日本電子社製のモデルJEM-2100Fによって撮影された図19の実施例の高分解能透過電子顕微鏡画像である。
【0212】
更に、図32は、図19の実施例の回折パターンを示す図である。
【0213】
図31及び図32に示される検出位置は、図19に示されるように、保護コーティング418の外表面から1μmの深さである。
【0214】
図31の結果から3C-SiCの結晶化率を計算すると0%となり、非結晶質SiCが存在することを表している。
【0215】
図33は、日本電子社製のモデルJEM-2100Fによって撮影された図22の実施例の高分解能透過電子顕微鏡画像である。
【0216】
更に、図34は、図22の実施例の回折パターンを示す図である。
【0217】
図33及び図34に示される検出位置は、図22に示されるように、保護コーティング418の外表面から1μmの深さである。
【0218】
白い点で形成された円は結晶の面積を表し、図33の結果から3C-SiCの結晶化率は17%と算出された。
【0219】
図34に示すように、図34の回折パターンには、3つのリングが存在する。
【0220】
中央付近の第1のリング(1st Ring)は、β-SiC(111)を表している。
【0221】
第1のリングに近い第2のリング(2nd Ring)は、β-SiC(220)を表している。
【0222】
一番外側の第3のリング(3rd Ring)はβ-SiC(311)を表している。
【0223】
即ち、β-SiC(111)を除き、結晶構造の領域は、更にβ-SiC(220)とβ-SiC(311)とを含む。
【0224】
X線回折と比較して、高分解能透過電子顕微鏡はナノスケールのエリアを測定することができ且つ回折パターンは結晶構造の化合物をより具体的に認識する。
【0225】
ケイ素(111)面の原子密度は、7.83×1014/cm2であり、(100)面の原子密度は、6.78×1014/cm2であるため、ケイ素(100)面に比べて、ケイ素(111)面にエッチング副生成物のフッ化ケイ素結合または塩化ケイ素結合をより多く形成する必要がある。
【0226】
そのため、ケイ素(111)のエッチングレートは、ケイ素(100)のエッチングレートより低くすることができる。
【0227】
即ち、c-Si(111)を有する前記実施形態は、ガス状のCF4、SiF6、Cl2等の各種エッチャントガスのエッチングレートを低下させることもできる。
【0228】
更に、保護コーティング418(即ち炭化ケイ素)全体の炭素に対するケイ素の相対含有比率が1より大きい場合、例えば1.5である場合、エッチング抵抗能力が高くなる可能性があるが、1より大きい他の範囲、例えば1.1、1.3または1.8も実際の要求に基づいて選択可能である。
【0229】
また、前述の実施形態における保護コーティング418の抵抗値は、窒素元素のドーピングにより、基材402の抵抗値と同じ値または他の値などの目標値に調整することが可能である。
【0230】
上記の内容によれば、基材402がケイ素を含む場合、ケイ素含有量の高い保護コーティング(炭化ケイ素)418を基材402に近づけることで、保護コーティング418をより強固に基材402に付着させることができて、密着性が向上できる。
【0231】
また、反応性物理気相成長法によって形成される炭化ケイ素の保護コーティングは、比較的に低い温度でコーティングされるので、保護コーティング418と基材402との間の応力の不整合を低減できて、密着性が向上できる。
【0232】
従って、基材402の表面を粗化しなくでも、保護コーティング418と基材402との間の密着性が層間応力など様々な要因で向上し、保護コーティング418が部品から剥がれることを防止できる上、炭化ケイ素の結晶化率を上げることによりエッチング抵抗能力の向上も図ることができて、本発明の目的を達成できる。
【0233】
上記においては、説明のため、実施形態の完全な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0234】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
なお、本発明の実施形態の態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
半導体製造装置に使用される部品であって、
ケイ素を含む基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う保護コーティングと、を備え、
前記保護コーティング中の炭素の原子比が前記基材から離れる方向に増加し、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が前記方向に減少し、
前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より大きく、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が炭素の原子比より小さいことを特徴とする部品。
[態様2]
前記保護コーティングの前記基材に近い部分においては、前記保護コーティング中のケイ素の原子比が50%より大きく、前記保護コーティングの前記基材から離れた外表面に近い部分においては、前記保護コーティング中の炭素の原子比が50%より大きいことを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様3]
前記保護コーティングは、(111)ファセット、(220)ファセットまたはそれらの組み合わせを有する結晶質ケイ素を含むことを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様4]
前記保護コーティングは、反応性物理気相成長法から形成された3C-SiCを含み、且つ、
前記3C-SiCは、少なくとも非結晶質炭化ケイ素を含むことを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様5]
前記保護コーティングにおいて、炭素に対するケイ素の相対含有量は、2/3~3/2の範囲にあることを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様6]
前記保護コーティングは、第1の部分と第2の部分とを有し、
前記第1の部分は、前記基材と前記第2の部分とに接続され、前記基材に近い部分のケイ素の原子比が前記第2の部分のケイ素の原子比よりも大きいことを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様7]
前記保護コーティングは、前記第1の部分側の反対側で前記第2の部分に接続されている第3の部分を更に有し、
前記第3の部分は、前記第1の部分の前記基材に近い部分の炭素の原子比よりも大きい炭素の原子比を有することを特徴とする態様6に記載の部品。
[態様8]
前記保護コーティング内の3C-SiCは、0%~60%の範囲の結晶化率を有することを特徴とする態様4に記載の部品。
[態様9]
反応性イオンエッチングモードのドライエッチング装置において、反応性ガスが気体のSF 6 及びCl 2 を含む場合、前記基材に対する前記保護コーティングの相対エッチングレートは、5分の3以下であることを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様10]
前記基材は、それぞれが300nm~1.5μmの範囲の高さを有する複数の微細構造を含む表面を有し、
前記保護コーティングは、10μm以上の最小厚さを有することを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様11]
前記保護コーティングは、1.5μm以上の最小厚さを有することを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様12]
閉ループ物体であることを特徴とする態様1に記載の部品。
[態様13]
前記閉ループ物体は、ドライエッチング装置に用いられるフォーカスリングであることを特徴とする態様12に記載の部品。
[態様14]
半導体製造装置に使用される部品であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う保護コーティングと、を備え、
前記保護コーティングは、反応性物理気相成長法から形成された、少なくとも非結晶質炭化ケイ素を含む3C-SiCと、(111)ファセット、(220)ファセットまたはそれらの組み合わせを有する結晶質ケイ素と、を含むことを特徴とする部品。
[態様15]
前記保護コーティングにおいて、炭素に対するケイ素の相対含有量は、2/3~3/2の範囲にあることを特徴とする態様14に記載の部品。
[態様16]
前記保護コーティング内の3C-SiCは、0%~60%の範囲の結晶化率を有することを特徴とする態様14に記載の部品。
[態様17]
反応性物理気相成長装置を使用して、半導体製造装置に使用される部品を製造する製造方法であって、
複数のシリコンターゲットと、基材と、を含むチャンバに不活性ガスを導入するステップと、
炭素元素を含む反応性ガスを前記チャンバに導入するステップと、
前記不活性ガスを、前記シリコンターゲットに衝突するプラズマになるようにイオン化して、ケイ素原子を前記シリコンターゲットから離脱させて、前記反応性ガスと反応することにより、前記基材の少なくとも一部を覆う炭化ケイ素を含む保護コーティングを形成させるステップと、を含むことを特徴とする部品の製造方法。
[態様18]
前記基材は、ケイ素、酸化ケイ素、グラファイト、セラミック、金属または合金で製造されたものであることを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
[態様19]
前記不活性ガス及び前記反応性ガスを導入する前に、偶数個の前記シリコンターゲットを前記チャンバ内に配置することを更に含み、
前記シリコンターゲットは、互いに向かい合うように少なくとも1ペアで配置されることを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
[態様20]
閉ループ物体である前記基材を、仮想中心軸を中心に回転させることを更に含むことを特徴とする態様19に記載の部品の製造方法。
[態様21]
前記プラズマのイオンの少なくとも一部が前記基材に衝突して、前記基材上の酸化された層を除去し、且つ、前記基材の表面にダングリングボンドを作成するために、前記基材をバイアスすることを更に含み、
前記保護コーティングは、前記ダングリングボンドとの化学結合により前記基材上に形成されることを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
[態様22]
炭化ケイ素及び前記基材の融点より低い温度まで前記基材を加熱またはアニールすることを更に含むことを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
[態様23]
前記不活性ガスの流量、前記反応性ガスの流量及び前記不活性ガスをイオン化するための高周波電力の少なくとも1者は、前記保護コーティングの形成過程において動的に変化し且つ初期数値より大きい数値で終了することを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
[態様24]
前記不活性ガスの流量は、5slm~24slmの範囲であり、
前記反応性ガスの流量は、10sccm~120sccmの範囲であり、且つ、
前記高周波電力は、0.4kW~1.2kWの範囲であることを特徴とする態様23に記載の部品の製造方法。
[態様25]
前記保護コーティングを形成させるステップにおいて、前記保護コーティングを形成する速度が6×10 -10 m/秒以上であることを特徴とする態様17に記載の部品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明の製造方法による本発明の部品は、半導体製造装置に使用することに好適である。
【符号の説明】
【0236】
S202~S210 ステップ
200 フローチャート
300 反応性物理気相成長装置
302 チャンバ
304 ホルダ
306 ヒーター
308 シリコンターゲット
400 部品
402 基材
404 主体
406 上面
408 下面
410 内面
412 外面
414 水平面
416 垂直面
418 保護コーティング
420 微細構造
422 第1の部分
424 第2の部分
426 第3の部分
500 被覆ユニット
501 磁石
図1
図2
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