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特許7465921ダイナミックレンジを改善したインバータを有する電気外科手術用発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ダイナミックレンジを改善したインバータを有する電気外科手術用発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134148
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2023033230
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】63/237,395
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ,イェレ
(72)【発明者】
【氏名】フェージング,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラミン,ダニエル
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-120325(JP,A)
【文献】特開2017-012752(JP,A)
【文献】特開2007-124732(JP,A)
【文献】特表2018-519918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0312005(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
H02M 7/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科手術器具(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科手術用発生装置であって、
前記電気外科手術用発生装置は、直流電圧源(2)と、前記直流電圧源(2)から給電され、前記電気外科手術器具(16)の接続のための出力(14)に印加される可変電圧及び周波数を有する高周波交流電圧を発生する高電圧インバータとを備え、
前記インバータは、出力される電圧の基準信号によって制御され、直列接続された複数のインバータセル(5)の少なくとも2つのグループ(HVC,LVC)を有するマルチレベルインバータ(4)として構成され、
前記各グループには異なる直流電圧が給電され、
前記各グループが出力する電圧を加算して出力(14)に出力し、
前記複数のインバータセルは2つのグループに結合され、そのうちの第1のグループ(LVC)には、異なる第2のグループ(HVC)よりも低い直流電圧が給電される、
電気外科手術用発生装置。
【請求項2】
前記複数のインバータセル(5)は、バイポーラ構成を有し、正、負又はゼロである少なくとも3つの異なる出力電圧レベルを出力する、請求項1に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項3】
前記第2のグループ(HVC)の個々のインバータセルによって発生される電圧の絶対値と、前記第1のグループ(LVC)の個々のインバータセルによって発生される電圧の絶対値との間に、数倍の電圧、なくとも4倍の固定比率が存在する、請求項1又は2に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項4】
前記グループの複数のインバータセル(5)を駆動するために、高電圧インバータセル(HVC)の動作を複数の低電圧インバータセル(LVC)の動作に選択的に置き換えることによって高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング周波数を低減するようになっている変調器(33)を備える、請求項1又は2に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項5】
タップ切替装置(31,31’)が変調器(33)と相互作用し、このタップ切替装置に基準信号(43)が印加され、このタップ切替装置は基準信号(42)を変調器(33)に印加される電圧レベルの信号に変換するように構成される、請求項1又は2に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項6】
前記変調器(33)はイネーブル信号を介して動作され、前記基準信号(43)及び/又は電圧レベル信号の変化を識別し、前記イネーブル信号を前記変調器(33)に適用するように構成される変化検出器(32,32’)が設けられる、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項7】
前記変調器(33)は、さらに、少なくとも1つの予め定義可能なパラメータに基づいて、切り替えられる前記第2のグループ(HVC)のインバータセルの数を変化させ、かつ、切り替えられるべき前記第1のグループ(LVC)のインバータセルの別の数を決定し、補償目的のためにこれらを反対方向に切り替えるように構成される、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項8】
前記定義可能なパラメータは、前記第2のグループ(HVC)のインバータセルのスイッチング周波数を含み、
前記変調器(33)は、前記スイッチング周波数を最小にするように構成される、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項9】
前記予め定義可能なパラメータは、前記インバータセルの電力損失に関する指標を含み、
前記変調器(33)は、前記第2のグループ(HVC)のインバータセルを動作させることによって生じる電力損失を、前記第1のグループ(LVC)のインバータセルを動作させることによって生じる電力損失に適応させるように構成される、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項10】
電圧変化のためのイッチング規則(34)が変調器(33)に実装され、
これらの両方は、同じ電圧変化をもたらすが、第2のグループ(HVC)の異なる数のインバータセルをスイッチングする、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項11】
電圧上昇の際に、前記スイッチング規則(34)の一方に従って、第2のグループ(HVC)のインバータセルの数は同じままであり、第1のグループ(LVC)のインバータセルの1つが活性化され、もしくは
前記スイッチング規則(34)の他方に従って、第2のグループ(HVC)のスイッチングされたインバータセルの数は1つ増加し、第1のグループ(LVC)の複数のインバータセルが反対方向にスイッチングされ、
前記複数のインバータセルの数は、電圧の倍数から1を引いた値に対応する、請求項10に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項12】
電圧低下の場合に、前記スイッチング規則(34)の一方に従って、第2のグループ(HVC)のインバータセルの数は同じままであり、第1のグループ(LVC)の複数のインバータセルの1つが非アクティブ化され、もしくは、
前記スイッチング規則(34)の他方に従って、第2のグループ(HVC)のスイッチングされたインバータセルの数は1つ減少し、第1のグループ(LVC)の複数のインバータセルが反対方向にスイッチングされ、
前記複数のインバータセルの数は、電圧の倍数から1を引いた数に相当する、請求項10に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項13】
前記スイッチング規則(34)には、それぞれのスイッチング範囲が割り当てられ、
前記スイッチング範囲は、と負の出力電圧の極性に対して異なる、請求項10に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項14】
前記スイッチング範囲の限界は、記第2のグループ(HVC)のインバータセル及び前記第1のグループ(LVC)のインバータセルの、それぞれの状態変数であるスイッチオン時間、磁束及び/又は温度に基づいて、動作中に動的に変更可能である、請求項13に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項15】
前記変調器(33)は、電圧の上昇と下降との間の複数の変化の場合に、前記第2のグループ(HVC)のインバータセルのスイッチングをブロックするように構成され、圧の増減が第2のグループ(HVC)のインバータセルの電圧値を超える場合に、第1のグループ(LVC)の追加のインバータセルがスイッチングされる、請求項に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項16】
前記第2グループ(HVC)のインバータセル及び/又は前記第1グループ(LVC)のインバータセルの磁束を把握して記憶するように構成される監視ユニットが設けられる、請求項1又は2に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項17】
前記監視ユニットと相互作用する補償ユニット(38)が設けられ、
電圧上昇時には、最初に第2のグループ(HVC)のインバータセル又は第1のグループ(LVC)のインバータセルを低磁束で切り替え、電圧低下時には、最初にインバータセルのうち高磁束のものを切り替えるように構成される、請求項16に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項18】
前記マルチレベルインバータ(4)のための制御信号発生装置(40)を備え、前記制御信号発生装置は、前記マルチレベルインバータ(4)を駆動するための基準信号(43)を発生するように構成され、
前記基準信号(43)は、電気外科手術用発生装置(1)によって出力されるべき交流電圧のためのパターンであり、幅、周波数、波形及び/又はデューティサイクルに関係するパターンであって、
前記波形は、望のように自由に設定することが可能である、請求項1又は2に記載の電気外科手術用発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科手術用器具に高周波交流電圧を出力する電気外科手術用発生装置に関する。電気外科手術用発生装置は、直流電圧源と、前記直流電圧源から給電され、高周波交流電圧を発生し、電気外科手術器具の接続用の出力に印加する高電圧インバータとを備える。
【背景技術】
【0002】
電気外科手術器具では、高周波交流電流は、特に、熱切除(いわゆる電気メス)の意味において、組織を切断又はスライスし、体組織を切除するために使用される。動作原理は、切断される組織を加熱することに基づく。この利点は、切断と同時に、患部の血管を閉じることで出血を止めることも可能なことである(凝固)。このためにはかなりの電力が必要で、具体的には200kHz以上4000kHz以下、典型的には400kHz前後の周波数が必要とされる。この周波数では、体組織はオーミック抵抗のような挙動を示す。しかし、その比抵抗は組織の種類に強く依存し、筋肉、脂肪、骨などの比抵抗は互いに大きく異なり、具体的には1000分の1程度になる。このため、電気メスの負荷インピーダンスは、切削する組織によって、仮想的に短絡するほど高速かつ大きく変化することがある。このため、電気メスの発生装置とその高電圧給電には、特別で独特な要件が課せられます。特に、数キロボルトの範囲の高電圧と、典型的には200kHzから最大4MHzまでの広い範囲の高周波に適した高速電圧制御が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許第2514380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組織とその結果生じるインピーダンスによって、電流は数ミリアンペアから数アンペアの間で変化し、具体的には非常に短時間で非常に動的な方法で変化する。出力される交流電圧の波形は、連続した正弦波であってもよいし、最大20kHz程度の変調周波数で最大10までのクレストファクタで変調されてもよい。
【0005】
従来の電気外科手術用発生装置は、シングルエンド型の高電圧変換器の原理で構成されていることが多い。電気外科手術器具に電力を給電するためのインバータを持ち、そこにグリッドから整流された電流が異なる電圧で給電される。このため、直流電源は給電される直流電圧を調整できることが必要である。インバータは通常、LC共振回路を持つ自由に発振するシングルエンド発生装置として構成される(例:特許文献1)。この種の構造は、実際に実績があるが、欠点もある。まず、損失が大きいため効率が悪い。また、共振回路に大きな無効電流が発生するため、部品が大型化し、さらに低電力時の効率も悪化する。さらに、出力周波数は負荷に依存し、波高因子も高く、高変調モードには不適当である。また、出力電圧のレギュレーションが比較的遅いため、負荷インピーダンスの変化に対するマッチングが悪くなるばかりである。
【0006】
これらのユニークな要件をより良く満たすために、出願人はマルチレベルインバータを使用した電気外科手術用発生装置の未発表の新しい概念を開発した。これにより、電気外科手術器具用の交流電圧の発生と出力をより適切に制御できるようになる。電圧が変化する複雑な直流電源は必要なく、マルチレベルインバータを介して出力交流電圧の値(及び周波数と波形)が直接制御される。しかし、ダイナミックレンジは制限され、特に出力交流電圧の振幅が小さくなると制限される。出力電圧が低下すると、達成可能な変調指数が低下する。このため、変調された信号形態(いわゆるモード)の出力が制限されるだけでなく、発生される交流電圧の波形が悪化する可能性がある。
【0007】
この対策として、インバータの直流電圧給電の値を変更できるようにすることも可能である。しかし、このことは、従って、一定電圧を有する給電の利点の喪失と、それに伴う直流電圧給電の簡略化をもたらす。
【0008】
本発明は、変更可能な電圧値を有する直流電圧給電に頼ることなく、より高いダイナミックレンジを提供する電気外科手術用発生装置を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による解決策は、独立請求項の特徴にある。有利な展開は、従属請求項の主題である。
【0010】
電気外科手術器具に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科手術用発生装置の場合において、電気外科手術用発生装置は、直流電圧給電と、直流電圧給電から給電され、電気外科手術用器具の接続のための出力に印加される可変電圧及び周波数を有する高周波交流電圧を発生する高電圧インバータとを備える。本発明によれば、インバータが、出力されるべき電圧のための基準信号によって制御され、直列接続された複数のインバータセルのうちの少なくとも2つのグループを有するマルチレベルインバータとして構成されるように設けられ、前記各グループに異なる直流電圧が給電され、前記各グループから出力される電圧は加算されて出力される。
【0011】
本発明は、本質的に、異なる直流電圧の給電を有する複数のインバータセルを使用するという概念に基づいている。これは、同じ数のインバータセルを用いて(同一の直流電圧を給電される同じ数のインバータセルを用いて設定できるよりも)著しく高い数の電圧レベルを設定できるという利点を提供し、このように、同じ数のインバータセルを用いて出力電圧のより良い波形を達成することができ、これは、さらに、より良いダイナミックレンジという利点に関連している。
【0012】
このように少なくとも2つのグループに分けることで、本発明は一見相反する2つの利点を兼ね備える。具体的には、第1に、低い電圧(LVC)が給電されるグループの複数のインバータセルを切り替えることにより、小さな電圧又は電圧差でも高速で細かく設定することができる。また、高電圧(HVC)グループの複数のインバータセルを切り替えることで、高速で大きな電圧ジャンプを可能にする。このように、本発明は、ヘビーデューティチャンネルを有する、いわば2チャンネル構造となっている。高電圧(HVC)グループの複数のインバータセルが配置されるヘビーデューティチャンネルと、低電圧(LVC)グループの複数のインバータセルが配置されるダイナミックチャンネルを持つ、いわば2チャンネル構造である。低電圧(LVC)群の複数のインバータセルを頻繁に、かつ電圧レベルに対して細かくクロックすることで、低電圧でもより細かい分解能を実現することができる。一方、高電圧(HVC)グループのインバータセルを切り替えることで、大きな電圧や大きな電圧ジャンプも素早く設定することができる。このようにして、時間的変化に関してだけでなく、電圧スパン及び電圧値に関してもダイナミックレンジの改善が達成される。従って、本発明による配置は、特に電気外科手術用発生装置においてモードとして知られているものにとって重要であるように、変調された電圧信号を発生するためにも適している。
【0013】
複数のインバータセルは、好ましくは少なくとも2つのグループに分けられ、そのうちの第1のグループ(LVC)には、異なる第2のグループ(HVC)よりも低い直流電圧が給電される。この意味で、第1グループは低電圧インバータセルで構成され、第2グループは高電圧インバータセルで構成される。これにより、高電圧インバータセル(HVC)を適切に動作させることで、大きな電圧でも高速に設定することができる。対照的に、低電圧インバータセル(LVC)は、その低い給電電圧のために、低電圧インバータセル(LVC)のスイッチング損失がアンバランスに低く、従ってこれらは、高電圧インバータセル(HVC)よりも頻繁なスイッチングにかなりよく耐え、この場合にも低いスイッチング損失が発生するという利点を提供する。例えば、低電圧インバータセル(LVC)が高電圧インバータセルの4分の1の電圧(例えば、HVCの48VではなくLVCの12V)に構成されている場合、低電圧インバータセル(LVC)のスイッチング損失は高電圧インバータセル(HVC)の16分の1しか寄与しないことになる。このように、低電圧インバータセル(LVC)は、出力する電圧を細かく設定するのに適しているだけでなく、その設定も極めて迅速に行うことができる。また、複数のインバータセルが好ましくは異なる他の直流電圧で給電される他のグループを設けてもよいことが理解されよう。
【0014】
グループは、好ましくは、複数のインバータセルが、異なる第2のグループの複数のインバータセル(HVC)よりも低い直流電圧(LVC)で給電される第1のグループを含む。
【0015】
以下に、使用されるいくつかの用語について説明を行う。
【0016】
電気外科手術用発生装置の分野では、「高周波」周波数は、典型的には、200kHz~4000kHzの範囲にあると理解される。任意選択で、有利な実施形態では、超音波範囲もカバーされ得る。超音波範囲は、20kHzから200kHzの間の周波数範囲を意味すると理解される。
【0017】
「高電圧」は、典型的には、10kVまでの電圧、好ましくは5000Vまでの電圧を意味すると理解される。
【0018】
電気外科手術用発生装置によって提供される電力は、典型的には、1~500ワットの間の範囲である。ここで、負荷インピーダンスは、大きく変化し得、出力電圧及び電力出力は、それに応じて、同様に、大きくかつ迅速に変化し得る。
【0019】
「異なる」直流電圧は、異なる電圧絶対値を有する直流電圧を意味すると理解され、極性の単純な反転は、この意味において、異なる直流電圧ではない。
【0020】
ここでは、複数のインバータセルが出力する電圧を1レベル上げる、又は1レベル下げることと同義語として、複数のインバータセルに対して活性化(アクティブ化)/スイッチオン、非活性化(非アクティブ化)/スイッチオフという用語を用いている。
【0021】
好都合なことに、複数のインバータセルはバイポーラ構成を有し、少なくとも3つの異なる出力電圧レベル、具体的には正、負及びゼロを出力するように構成されている。これにより、簡単な手段で電圧レベルの数を増やすことができ、さらに、交流電圧の対称的なバイポーラ発電を実現することができる。また、複数のインバータセルの「極性反転」によって、つまり、それぞれのインバータセルの出力電圧の場合、プラスからマイナス(又はその逆)に切り替わるときに、電圧を一度に2レベル変化させることも可能である。
【0022】
さらに有利には、個々の高電圧インバータセルによって発生される電圧の絶対値(HVC)と個々の低電圧インバータセルによって発生される電圧の絶対値(LVC)との間に一定の比率が存在することが設けられる。これは、好都合なことに、2つのインバータセルのグループの直流電圧給電を連結するように構成することによって達成され得る。ここでは、低電圧インバータセル(LVC)の電圧給電を、高電圧インバータセル(HVC)の直流電圧源からレシオメトリック電圧変換器によって発生することが特に有利である。このため、実際の直流電圧源は1つで済みます。一方、このことは、高電圧インバータセル(HVC)のための直流電圧が、直流電圧、つまり低電圧インバータセル(LVC)のための電圧出力と一定の比率にあることを意味する。ここでは、2つのグループのインバータセル用の直流電圧源間の比率が、整数倍の電圧であることが特に好ましい。これにより、直列接続された複数の低電圧インバータセル(LVC)から、1つの高電圧インバータセル(HVC)の電圧レベルが正確に得られるようになり、具体的には電圧倍数に相当する数の低電圧インバータセル(LVC)が得られる。これにより、電圧変化時に、複数の低電圧インバータセル(LVC)の代わりに、1つの高電圧インバータセル(HVC)(場合によっては、さらに低電圧インバータセル-LVCに接続)を切り替えることができ、従って、より少ない切り替え手順で大きな電圧ジャンプを実現することができるようになる。整数の電圧倍率は少なくとも4であることが好都合であることが示されている。
【0023】
両方のグループの複数のインバータセルを駆動するために、高電圧インバータセル(HVC)の動作を複数の低電圧インバータセル(LVC)の動作に選択的に置き換えることによって高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング周波数を低減するように構成された変調器を好都合にも設ける。本発明は、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングは、これらのセルにとって(低電圧インバータセル-LVCの負荷と比較して)かなり大きな負荷であるというここでの発見を利用している。このため、低電圧インバータセル(LVC)のスイッチングに比べ、スイッチング損失が非常に大きくなる。驚くべきことに、同じ電圧(例えば48V)を、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングで実現するのではなく、12Vの低電圧インバータセル(LVC)4個のスイッチングで実現する場合にも、このようなことが起こる。この関係は、一見逆説的だが、スイッチング損失と複数のインバータセルの直流電流電源の電圧値との間に二次関係があることから、このような関係が成り立っているのである。高電圧インバータセル(HVC)をスイッチングすると、アンバランスな損失が生じますが、低電圧インバータセル(LVC)をより多く(すなわち電圧倍数に従って)スイッチングすることによって低減することが可能である。
【0024】
変調器は、好ましくは、基準信号が適用され、基準信号を変調器に適用される電圧レベル信号に変換するように構成されたタップ切替装置と相互作用する。これにより、マルチレベルインバータのインバータセルを駆動するために使用される基準信号の再現可能かつ明確な離散化が達成され、発生されるAC電圧の少なくとも1つの電圧値(一般に波形も)が特定される。従って、各電圧レベルについて、いくつの高電圧インバータセル(HVC)と低電圧インバータセル(LVC)を切り替える必要があるか、それ自体で明確に判断することが可能である。従って、切り替えられるべき高電圧インバータセル(HVC)の数は、例えば、個々の高電圧インバータセル(HVC)の定格電圧による電圧レベルの除算の整数成分に対応し、余りは微調整のための低電圧インバータセル(LVC)の数を定義する。
【0025】
変調器がさらに、少なくとも1つの予め定義可能なパラメータに基づいて、切り替えられるべき高電圧インバータセル(HVC)の数を変化させ、切り替えられるべき低電圧インバータセル(LVC)の数をさらに決定し、補償目的のためにこれらを対向的に切り替えるように構成されていることは、好都合である。本発明のこの特に有利な態様によれば、出力すべき所定の電圧のために、一方では高電圧インバータセルの数、他方では低電圧インバータセルの数が厳密に予め定められているのではなく、むしろ選択的に変化させることが望ましい。従って、変調器は、(ある電圧に対して)切り替えられる高電圧インバータセルの数に関してある程度の曖昧さを提供し、その結果、切り替えられる低電圧インバータセルの数もまた変化することになる。スイッチングされるべき高電圧又は低電圧インバータセルの数に出力されるべき電圧信号を実装するときのこの変動のために、本発明は、設定点電圧信号の厳密に決定された実装から生じる数を、高電圧及び低電圧インバータセルに対して変化させる変調器が設けられる。この変動は、それぞれの数値の歪みであると考えることもできる。変調器は、高電圧インバータセル(HVC)と低電圧インバータセル(LVC)を厳密に決定論的に分割した結果、数値を歪めているのである。従って、決定論的な分割の方法論的な歪みとも言うことができる。
【0026】
一般的なデジタル駆動信号の設定値電圧信号の通常の実装とは異なる、このような変動から生じる曖昧さには、多くの利点がある。
【0027】
高電圧インバータセル(HVC)をスイッチングすることで大きな電圧ジャンプを素早く実現し、低電圧インバータセル(LVC)を用いることで基準信号の波形プロファイルに正確に一致させることが可能である。精密なマッチングを実現するには、複数のインバータセルの切り替えを頻繁に行う必要があるが、通常はスイッチング損失の少ない低電圧インバータセル(LVC)の切り替えで十分である。スイッチング損失の点でかなり高価な高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングは、変調器によって周波数的に低減することができる。例えば、HVCセルを一度オンにしたら、その後はできるだけ長くオンにしておくというパターンに沿ったスイッチング規則である。これにより、スイッチング損失を効率的に低減することが可能となり、その結果、スイッチング速度、ひいてはダイナミックレンジを向上させることができるのである。この場合、冗長な複数のインバータセル、特に低電圧インバータセル(LVC)が多いほど、変調器による変動の自由度が増すことが理解されるでしょう。これらの数が多ければ多いほど、電圧変化の際に高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングをより長く遅延させるか、又は回避することができる。従って、低電圧インバータセル(LVC)は、高電圧と低電圧の比率で定義される数よりも多く、冗長的に設けることが好都合である。
【0028】
例えば、高電圧インバータセル(HVC)の電圧が48Vで、低電圧インバータセル(LVC)の電圧が12Vであれば、高電圧インバータセル(HVC)の1つを点灯させる代わりに、低電圧インバータセル(LVC)の4つを点灯させて同じ電圧上昇を達成することが可能である。電圧上昇が60Vであっても、少なくとも1つの冗長な(5番目の)低電圧インバータセル(LVC)が利用可能で、この目的のためにスイッチオンすることができる場合、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチオフすることも可能である。このことは、負電圧の場合にも同様に適用される。これはさらに、電圧の上昇の代わりに電圧の低下が並置されている場合にも適宜適用される。例えば72Vの電圧が出力され、このために1つの高電圧インバータセル(HVC)と2つの低電圧インバータセル(LVC)がスイッチオンされる場合、電圧を36V下げるために、スイッチオンされた低電圧インバータセル(LVC)のうち2つをスイッチオフし、3つ目を12Vの負の電圧で動作することにより、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチ(つまり既にスイッチオンされているものをスイッチオフ)しないことが可能である。これにより、高電圧インバータセル(HVC)(スイッチング損失が大きい)を切り替えることなく、全体として36Vの電圧低減を実現することができる。これは、36Vの電圧低減が段階的に行われる場合にも当てはまる。電圧レベルが変化した場合、変調器はその変化をLVCの切り替えによって行うか、HVCとこの例では3つのLVCの切り替えによって行うか決定する。
【0029】
さらに有利には、変調器はイネーブル信号を介して動作され、基準信号の変化を識別し、イネーブル信号を変調器に適用するように構成された変化検出器が設けられる。基準信号が変化しない場合、変調器は切り替えを行う必要がなく、むしろ基準信号が変化したときにのみ切り替えが行われる。これは、変化検出器によって識別される。変化検出器は変調器と相互作用し、変化が確認されると、変調器にイネーブル信号が印加される。これにより、変調器の活動は、基準信号の変化が生じた場合に限定される。しかし、代替又は追加として、変化検出器がタップ切替装置によって発生された(電圧)レベル信号を監視するように構成してもよい。これにより、基準信号の変化が(電圧)レベル信号の変化にもつながるような場合、変調器の活動が低減される。
【0030】
複数のインバータセルは、好都合なことに、それぞれ出力に電位差解消を備える。本発明は、ここで、交流電圧が定義上複数のインバータセルの出力に存在するという事実を利用する。つまり、(入力で必要とされるような絶縁された個々の直流電圧源と比較して)少しの支出で、簡単で安価なトランスを使用して複数のインバータセルが最終的に出力する電圧の信頼できる電位分離を達成することが可能であるということである。
【0031】
さらに好ましくは、定義可能なパラメータは高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング周波数を含み、変調器はこのスイッチング周波数を最小にするように構成される。高電圧インバータセル(HVC)の電圧が高いため、スイッチングによる電力損失がアンバランスに大きいことがさらに考慮され得る。例えば48V対12Vのように、4対1の電圧比で低電圧インバータセル(LVC)の1つをスイッチングする場合と比較して、高電圧インバータセル(HVC)の1つをスイッチングすると、約16倍のスイッチング電力損失をもたらすことを意味する二次関係さえある。予め定義可能なパラメータは、複数のインバータセルの電力損失のメトリックを構成し、変調器は、高電圧インバータセル(HVC)の動作によって生じる電力損失を低電圧インバータセル(LVC)の動作によって生じる電力損失に適応させるように構成されていることが好都合である。これは効率に有利なだけでなく、複数のインバータセル内のスイッチング素子の熱応力を緩和するという点でもかなりの利点がある。
【0032】
さらに好都合なことに、電圧変化のための少なくとも2つの代替スイッチング規則が変調器に実装され、これらは両方とも同じ電圧変化をもたらすが、異なる数のHVCをスイッチングすることである。電圧変化の場合、変調器はこれらのスイッチング規則から選択を行うことができる。これらのスイッチング規則は予め定義されているため、スイッチング規則を用いて変調器の適切な動作をプログラムすることができる。例えば12Vの電圧上昇に対して、このような2つの代替スイッチング規則「a)」及び「b)」の一例は、スイッチング規則a)に従って、低電圧インバータセル(LVC)の開始値が12Vの1レベル分増加し、高電圧インバータセル(HVC)では変化が起きない。あるいは、スイッチング規則b)に従って、低圧インバータセル(LVC)の出力電圧を3レベル、加算36V減少させ、同時に高電圧インバータセル(HVC)の出力電圧を1レベル、すなわち48V増加させ、これは最終的に12Vの所望の増加を意味する。スイッチング規則b)は、高電圧インバータセル(HVC)の1つをスイッチングする結果、スイッチング規則a)の場合よりも大幅に高いスイッチング損失が発生するため、明らかに高価な規則となる。これを達成するために、スイッチング規則は、好ましくは、電圧上昇の場合、代替スイッチング規則の1つに従って、高電圧インバータセル(HVC)の数は同じままで、低電圧インバータセル(LVC)の1つが起動するように実装される(スイッチング規則a))。又は、代替スイッチング規則の他の(スイッチング規則b))に従って、スイッチングされた高電圧インバータセル(HVC)の数が1つ増加し、複数の低電圧インバータセル(LVC)が反対方向にスイッチングされる。ここで、この複数の数は、電圧の倍数から1を引いた値に相当する。これは、低電圧インバータセル(LVC)が出力できる電圧のステップダウンに対応する1レベル分の電圧上昇の場合である。このような複数のレベルを含むより大きな電圧変化に対しては、スイッチング規則に実装された方式が適宜適用される。
【0033】
これは、電圧降下の場合にも同様に適用される。ここで、好ましくは、代替スイッチング規則の1つに従って、高電圧インバータセル(HVC)の数は変わらず、低電圧インバータセル(LVC)の1つが非アクティブにされる。又は、代替スイッチング規則の他方に従って、スイッチングされた高電圧インバータセル(HVC)の数が1つ減少し、複数の低電圧インバータセル(LVC)が対向してスイッチングされる。ここで、この複数の数は、電圧の倍数から1を引いた数に相当する。電圧の上昇について既に上で説明したように、これは、複数のレベルを含むより大きな電圧変化に適宜適用される。
【0034】
スイッチング規則には、それぞれのスイッチング範囲が好都合に割り当てられる。ここで、スイッチングレンジは、出力電圧の正極性と負極性で異なることが好ましい。これにより、インバータが出力する電圧の極性を考慮することができる。スイッチング範囲は、スイッチング規則の値の範囲を定義する。出力電圧が正の場合は、高電圧インバータセル(HVC)の昇圧をできるだけ遅らせるという便宜的な規則がある。一方、出力電圧が負の値でゼロ方向にゆっくり上昇する場合は、ヒステリシスを考慮し、できるだけ早く高電圧インバータセル(HVC)の増設を切り替えることが好都合である。一方、出力電圧がゼロからさらに離れた負の値になった場合は、できるだけ長くスイッチングを延期し、代わりに低電圧インバータセル(LVC)をスイッチングすることが好都合である。このため、電圧がゼロの方向に戻ると同時に、できるだけ早い段階で高電圧インバータセル(HVC)のスイッチを再び切る。これにより、高電圧インバータセル(HVC)の変圧器が飽和する危険性に効果的に対抗することが可能となる。
【0035】
小さな電圧変化の際に、高電圧インバータセル(HVC)の不必要に頻繁なオン・オフを回避するために、ヒステリシスが任意に設けられることが好ましい。特に、電圧の上昇と下降の間で複数回変化する場合に、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングをブロックすることが好都合である。電圧の増加又は減少が高電圧インバータセル(HVC)の電圧値を超える場合、好ましくは追加の低電圧インバータセル(LVC)がスイッチングされる。
【0036】
有利には、スイッチング範囲の限界は、動作中に、好ましくは、高電圧インバータセル(HVC)及び低電圧インバータセル(LVC)の状態変数、特にそれぞれのスイッチオン時間、磁束及び/又は温度に基づいて動的に変更可能である。これにより、複数のインバータセルとそのコンポーネントの動作状態を考慮することができる。例えば、複数のインバータセルの磁束は、特にインバータセルの飽和を回避するために監視されることがある。この場合、正電圧を出力するためのスイッチング状態が、負電圧を出力するためのスイッチング状態と正確に同じ長さになるように選択されることがある。これにより、バランスをとることができる。このことは、高電圧インバータセル(HVC)にとって特に重要である。なぜなら、高電圧インバータセルは、定義上、より高い電圧が給電され、スイッチング頻度が低い(はず)であり、これにより、負荷分散のリスクが高まるからである。
【0037】
高電圧インバータセル(HVC)及び/又は低電圧インバータセル(LVC)の磁束を確認し、蓄積するための監視ユニットをオプションで設けることができる。このようにして、それぞれのインバータセルの磁束を監視し、磁束が再びバランスするまで、好ましくは反対の電圧極性で切り替えられることによって、複数のインバータセルの飽和を回避することが可能である。監視ユニットと相互作用し、電圧上昇時には、高電圧インバータセル(HVC)又は低電圧インバータセル(LVC)のうち、まず磁束が低いものを切り替え、電圧低下時には、まず磁束が高いものを切り替えるように構成された補償ユニットが有利に設けてもよい。これにより、効率的に補償を行うことができ、その結果、個々のインバータセルの過負荷とそれに伴う故障の危険性を効果的に防止することができる。
【0038】
この目的のために、さらに有利には、高電圧インバータセル(HVC)又は低電圧インバータセル(LVC)のスイッチオン時間モニターが設けられ、HVC及びLVCの正又は負の電圧出力期間を確認し、それぞれのプリセット可能限界値を超えた場合に、それぞれのインバータセル(HVC又はLVC)を非アクティブ化することが可能である。これにより、個々のインバータセルの滞留時間を効果的に制御して制限することができる。複数のインバータセルの1つ、特に高電圧インバータセル(HVC)が長時間オンになっている場合、それは使用されず、むしろアイドルモードに切り替えられ、代わりに高電圧インバータセル(HVC)の別の負荷の少ないものが動作させられる。
【0039】
好ましくは、マルチレベルインバータを駆動するための基準信号を発生するように構成された、マルチレベルインバータ用の制御信号発生装置が設けられる。前記基準信号は、前記電気外科手術用発生装置が出力すべき交流電圧のパターンであり、特に、振幅、周波数、波形及び/又はデューティサイクルに関する。ここで、波形は、所望により自由に設定可能であることが好ましい。このような基準信号を用いることにより、マルチレベルインバータに対して、発生させるべき電圧と電圧プロファイルに関する正確な仕様を与えることが可能となる。これにより、出力される電圧の振幅や波形を積極的に制御することができる。
【0040】
基準信号が印加され、その出力で変調器に作用し、特に高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングを低減又は防止するピーク検出器が好都合に設けられる。このことは、有利には、基準信号によって、マルチレベルインバータの出力信号に対する将来の期待値に関する情報が利用可能になるように行われる。この将来に関する情報信号は、ピーク検出器によって評価され、複数のインバータセルをより良く駆動するために使用される可能性がある。例えば、特定の時間における基準信号から、電圧上昇がほぼ終了し、正弦波がその最大値に達した後、すぐに後退することが判明した場合、電圧上昇の最後の段階において、すぐに発生する電圧降下を考慮して、ピーク検出器によって別の高電圧インバータセル(HVC)の起動が阻止されることがある。代わりに低電圧インバータセル(LVC)(スイッチング損失が少ない)の別の1つを動作させることができる。これにより、特に高電圧インバータセル(HVC)の不要なスイッチング手順を、最大電圧に達する前に効果的に回避することができるという利点がある。ピーク電圧に到達するために、利用可能な(冗長な)低電圧インバータセル(LVC)が代わりに使用される。
【0041】
本発明は、有利な一実施形態を参照して、例によって以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】接続された電気外科手術器具を有する一例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置の概略図である。
図2a】カスケード接続された複数のインバータセルを有する図1による電気外科手術用発生装置のマルチレベルインバータのための例示的な実施形態のブロック図である。
図2b図1による電気外科手術用発生装置のマルチレベルインバータを示す。
図3】複数のインバータセルのうちの2つの模式的な回路図である。
図4a】高電圧及び低電圧インバータセルを駆動するための変調器付きセレクタの例のブロック図である。
図4b】高電圧及び低電圧インバータセルを駆動するための変調器付きセレクタの例のブロック図である。
図5】電圧レベルによる基準信号を実施するための高電圧インバータセルと低電圧インバータセルの切り替えの簡略化された例を示す図である。
図6a】基準信号を実現するための高電圧インバータセルと低電圧インバータセルのスイッチングについて、より複雑な別の例を示す図である。
図6b】基準信号を実現するための高電圧インバータセルと低電圧インバータセルのスイッチングについて、より複雑な別の例を示す図である。
図7】出力電圧の極性及び基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに基づく変調器のスイッチング規則を含むテーブルを示す図である。
図8図7に対する変形例として、変調器のための変更可能なスイッチング規則を含むテーブルを示す。
図9a】複数のインバータセルにおける磁気飽和を考慮しない場合及び考慮した場合の、高電圧及び低電圧インバータセルの例示的なスイッチングプロファイルを示す図である。
図9b】複数のインバータセルにおける磁気飽和を考慮しない場合及び考慮した場合の、高電圧及び低電圧インバータセルの例示的なスイッチングプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の1つの例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置を図1に示す。参照数字1によってその全体が参照される電気外科手術用発生装置は、電気外科手術器具16のための出力ポート14を備えるハウジング11を備え、図示された例示的な実施形態では、これは電気メスである。これは、高電圧接続ケーブルの接続プラグ15を介して電気外科手術用発生装置1の出力ポート14に接続される。電気外科手術器具16に出力する電力は、電力制御装置12を介して変更することができる。
【0044】
電気外科手術器具1に電力を給電するために、主電源接続ケーブル(図示せず)を介して、公共グリッドに接続することができ、そこから給電される直流電圧源2が設けられる。直流電圧源2は、図示された例示的な実施形態では、電源装置である。それは整流器を含み、直流リンク回路20に直流電圧を給電し、その値は好ましくは固定であり、例えば48ボルトである。しかしながら、直流電圧の値が0~約400ボルトの間で可変であることを否定すべきではない。ここで、直流電圧の絶対値は、特に、設定電力、電気外科手術器具16の種類及び/又はその負荷インピーダンスに依存することがあり、これは、ひいては、処置される組織の種類に依存する。しかしながら、内部電源装置は必要ではなく、つまり、直流電圧給電はまた、外部電源装置によって実施されてもよく、又は、例えば車両における24ボルト又は静止用途における48ボルトのような直接直流給電のための規定又は装置設置がなされる。
【0045】
インバータは、直流リンク回路20によって給電され、給電された直流電圧から、200kHz~4MHzの範囲の所定の周波数で、高電圧範囲の高周波交流電圧を発生させるものである。このインバータは、以下でさらに詳細に説明するように、マルチレベルインバータ4の構造形態で構成されている。マルチレベルインバータ4によって発生されるべき高周波交流電圧の周波数及び波形は、この場合、制御信号発生装置40(図4a及び図4b参照)によって発生された基準信号43に基づいてインバータコントローラ41によって予め定義される。マルチレベルインバータ4によって発生された高周波交流電圧は、出力線13、出力電圧を数キロボルトの範囲に昇圧するための出力トランス7及びローパスフィルタ8を経由し、ブロッキングキャパシタ17によって望ましくないDC電流成分から保護されて、電気外科手術用器具16の接続用に出力ポート14で出力される。マルチレベルインバータ4によって発生され出力される高電圧の電圧及び電流は、さらに、複合電圧及び電流センサ18によって測定される。そして、測定された信号は処理ユニット19に給電され、処理ユニットは出力電圧、電流及び電力に関する対応するデータを電気外科手術用発生装置1の動作コントローラ10にフィードバックとして適用し、その一部は制御信号発生装置40と通信する。電力コントローラ12もまた、動作コントローラ10に接続されている。動作コントローラ10は、さらに、典型的には記憶された電圧/時間プロファイルであるモードとして知られる様々なものを設定するように構成されている。ユーザがモードを選択するための選択スイッチ12’が設けられる。操作コントローラ10はさらに、制御信号発生装置40と相互作用し、特に振幅、周波数、波形及びデューティサイクルに関して、出力すべきAC電圧のための基準信号43を発生し、インバータコントローラ41に出力するように構成されている。
【0046】
マルチレベルインバータ4は、インバータコントローラ41によって駆動される直列接続された複数のインバータセル5で構成されている。複数のインバータセル5は、2つのグループI及びIIに分けられ、グループごとに、異なる値の直流電圧が給電される。第1のものは「グループI」と呼ばれ、低電圧インバータセル(LVC)、具体的には図2a及び図2bの例では3つのインバータセル5-1、5-2~5-3で構成される。これらは、直流電圧が低く、一例では、12Vの直流電圧源から給電される。高電圧インバータセル(HVC)のグループも形成され、これは「グループII」と呼ばれ、図2a及び図2bに示される例では2つのインバータセル5-4、5-5を含み、これらにはより高い直流電圧、例では48Vが給電されている。2つのグループIとIIが出力する電圧は、トランス6によって加算される(図4a及び図4bを参照)。さらに、駆動するインバータセル5、特に駆動するグループIIからの高電圧インバータセル(HVC)の数「m」と駆動するグループIからの低電圧インバータセル(LVC)の数「n」を定義するセレクタ3が設けられる。
【0047】
ここで、図2aを参照する。そこに図示されている例示的な実施形態では、定義された直流電圧を有する直流電圧源が、複数のインバータセル5のそれぞれの入力(図面では左側に図示されている)に接続されている。それぞれのインバータセル5は、そこから交流電圧を発生し、それが交流電圧の形態でそれぞれのインバータセル5の出力(図面では右側に図示)に出力される。インバータセルの数は、特に限定されず、それ自体所望のものである。複数のインバータセル5は、図2aにおいて、「5-1」、「5-2」~「5-5」と連続した番号を付しているが、この番号5は一例であり、任意の数の少なくとも2つのインバータセルが設けられていてもよい。それぞれのインバータセル5の入力で印加される直流電圧は、任意に、バスバー50を介して電位的に結合される。それぞれのインバータセル5の出力で出力される交流電圧は、それに応じて「V_1」、「V_2」から「V_5」までと表記される。複数のインバータセル5の直列接続により、それらの出力電圧が加算され、最終的に全体の出力電圧として与えられる。
【0048】
【数1】
【0049】
直流電圧源が1つだけの単純な構造に比べ、本発明によれば、直流電圧源が1つだけでなく多く(例では2つ)必要になるため、直流電圧源の出費は増加することになる。しかし、これを補うために、電圧レベルの数は大幅に増加し、具体的には、1つの直流電圧源で11の電圧レベルから、23の電圧レベルではその2倍以上となる。その結果、実現できる電圧レベルの数は、次の式で表される。
【0050】
2*(mHVc*r+nLVc)+1,
【0051】
ここで、mHVcは直流電圧の高いインバータセルの数(上記の例ではm=2)を表し、nLVcは直流電圧の低いインバータセルの数(上記の例ではn=3)を表し、rは直流電圧の高いものと低いものの比(上記の例ではr=4)を表す。
【0052】
なお、2つの直流電圧源は電位的に互いに絶縁されている必要はなく、図2aにバスバー50によって実装されているように、共通の基準電位を共有してもよい。これはまた、DC-DCコンバータ42、特にDC-DC降圧コンバータによって、例えばリンク回路20の直流電圧であってよい、より高い直流電圧からより低い直流電圧を発生することを可能とする。本実施例では、これは、図2bに示されるように、4:1の降圧比を有するレシオメトリック給電用に構成されるであろう。レシオメトリック電源の利点は、高い直流電圧の変化や変動が低い直流電圧に比例して反映され、相対的な階調が維持されることである。これにより、例えば従来は12Vインバータセルをさらに起動することで出力電圧を12V上昇させていたが、48Vインバータセルを起動し、3つの12Vインバータセルを休止させるという2通りの方法で、出力電圧を上昇させることができる。
【0053】
個々のインバータセル5の構造とそれらの相互作用は、例として図3による概略回路図に示されている。2つのインバータセル5-1及び5-5の全体(それらの電圧が合計又は加算される)がカスケード配置でそこに示されているが、これはこのように異なる値の直流電圧でそれらの給電を説明するためでもある。48ボルトの給電電圧Vinを有する共通の直流電圧源2が、画像の左側の端に図示されている。これには、安定化キャパシタ23が割り当てられている。それによって、2つのインバータセル5-3,5-4に直流電圧が給電される。以下ではまず、48ボルトが給電されるインバータセル5-5のスイッチングについて言及する。電流弁として動作する4つの電力スイッチがH型ブリッジ構成で設けられる。電力スイッチは電力半導体スイッチであり、例えばIGBT、MOSFET、GaNFETとして構成される。電力スイッチ51,53は直列に接続されて第1のブランチを形成し、電力半導体52,54は同様に直列に接続されて第2のブランチを形成している。2個のブランチのセンタータップは、第1のトランス6-5の一次巻線61の両端に導出されて接続されている。トランス6-5はさらに二次巻線62を有し、変圧比は1:1である(特に前置増幅を達成するために、例えば1:2の変圧比で別の変圧比を設けてもよいことが指摘される)。出力線13は、二次巻線62に接続され、電気外科手術用発生装置1の出力ポート14につながる(場合によっては、図3には図示されていないローパスフィルタ8、及び出力トランス7を介して、図1参照)。
【0054】
第1のブランチの2つの電力スイッチ51,53は、共通の信号C1.aによって駆動され、ここでこの信号は、反転された形で電力スイッチ53に給電される。第2のブランチの2つの電力スイッチ52、54は、それに応じて同様に共通の信号C1.bによって駆動され、この信号は反転した形で電力スイッチ52に給電される。信号C1.a及びC1.bは、インバータコントローラ41によってそれ自体既知の方法で発生される。すなわち、C1.aのハイ信号の場合、電源スイッチ51はオン状態に、電源スイッチ53はオフ状態にされ、すなわち第1の電源分岐はトランス6-1の一次巻線61の上部接続部に正電位を印加する。従って、C2.bのハイ信号の場合、第2の電源ブランチでは、電源スイッチ54がオン状態とされ、電源スイッチ52がオフ状態とされる。このようにして、第2の電源ブランチは、一次巻線61の下側接続部に負電位を印加する。C1.a又はC1.bのロー信号の場合、これはそれに応じて逆に適用され、すなわち一次巻線61における極性が逆転する。このようにして、インバータセル5-1によって交流電圧が発生され、トランス6-1の一次巻線61に印加される。
【0055】
第2のインバータセル5-1は、同一の構造を有するが、直流電圧源2からレシオメトリックDC-DCコンバータ42を介して給電され、入力電圧の1/4に低減させることをもたらす。従って、12ボルトの直流電圧を出力し、この電圧は、第1のインバータセル5-5とそれ自体同一の方法で第2のインバータセル5-1に給電される。従って、図中の同一の要素には同一の参照数字が使用されている。それは、インバータコントローラ41によって発生される制御信号C2.a及びC2.bの方法によって、例えば、それ自体既知のパルス幅変調(PWM)の方法によって、上述したものに対応する方法で駆動される。従って、それは同様に、その出力において、第2のトランス6-1の一次巻線61に印加される交流電圧を出力する。DC-DCコンバータ42の構成に応じて、2つのインバータセル5-1,5-5は、電位の点で接続される。つまり、インバータセル5-1,5-5が直接出力する交流電圧は、互いに電位で結ばれているため、容易に加算することができない。しかし、この出力交流電圧は、トランス6-1,6-5のそれぞれに給電されるので、トランス6-1,6-5が出力する交流電圧はそれぞれ無電位であり、互いに加算して共通の出力電圧を与え、出力線13に印加することが容易に可能である。しかし、インバータセル5-1,5-5がDC-DCコンバータの適切な構成により電位的に切り離されている場合、このトランスを用いずに直列接続により出力交流電圧を直接加算することもできる。
【0056】
このようにして(及び他のインバータセル5-2~5-4によって)発生され加算された全体の電圧は、出力線13を介して出力され、その末端にはローパスフィルタ8が配置される。これは、例えば、インダクタとキャパシタとを含む二次フィルタとして構成することができる。トランス6-1~6-nの浮遊インダクタンスもローパスフィルタのインダクタンスに寄与し、おそらく少なくとも部分的にインダクタに取って代わる可能性があることが指摘される。ローパスフィルタ8は、マルチレベルインバータ4の複数のインバータセル5内の電力スイッチのスイッチング周波数に起因する発生交流電圧の干渉がフィルタリングされるように調整される。ローパスフィルタ8の出力は、出力トランス7の一次巻線に印加され、二次巻線に接続された出力ポート14のガルバニ絶縁をもたらす。さらに、ブロッキングキャパシタ17が設けられる。これは、手術用器具16への直流電流成分の出力を防止するための安全素子として機能する。
【0057】
制御信号発生装置40は、特に動作電圧10の仕様に基づいて、マルチレベルインバータ4を駆動するための基準信号43を発生する。これは、典型的には正弦波であり、特定の周波数と振幅を有する交流電圧信号である。基準信号43はセレクタ3に印加され、セレクタ3はそこから駆動すべきインバータセル5の数と種類(HVC又はLVC)を決定し、具体的にはIグループの低電圧インバータセル(LVC)とIIグループの高電圧インバータセル(HVC)によって分解される。このため、セレクタ3は、タップ切替装置31と変調器33とで構成されている。タップ切替装置31は、典型的には連続的な基準信号43を電圧レベル信号に変換するためのものである。これは、電圧レベルの数を示す離散的な信号であり、具体的には、典型的には、グループIからの低電圧インバータセル(LVC)の電圧から生じる値、すなわち、本例では12Vのレベルで表される。このような連続的な基準信号43及びそこから12Vのレベルで表されるレベル信号の一例が、図6aに示されている。目盛りのついた波形は、電圧レベル信号を示しており、従って、連続的な波形によって表される基準信号43の離散化を形成する。
【0058】
タップ切替装置31はさらに、そのどの部分がグループIからの低電圧インバータセル(LVC)に、又はグループIIからの高電圧インバータセル(HVC)に逼迫しているかに関して、すでに予備的に分割を行ってもよい。一実施形態では、図4aに示されるように、これは例えば、基準信号43に従った電圧を達成するために必要な複数のインバータセルの基本数を最小化することによって達成され得る。このような分割は、グループIIからの高電圧インバータセル(HVC)の基本数がスイッチオンされるための信号「h」と、グループIからの低電圧インバータセル(LVC)の基本数がスイッチオンされるための信号「l」という2つの信号から構成されてもよい。これは特に、例えば84Vの電圧を発生するために、グループIIからのちょうど1つの高電圧インバータセル(HVC)とグループIからの3つの低電圧インバータセル(LVC)を駆動する必要があるような、純粋に数値的な分割であってよい。
【0059】
しかし、これらの基本数「h」、「l」は、駆動のために直接使用されるのではなく、変調器33によって変化させられる。変調器33は、グループIIの高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング周波数を低下させるためのものである。その代わりとして、グループIの低電圧インバータセル(LVC)がスイッチングされる。これについては、以下で詳しく説明する。変調器33による、切り替えられるグループIの低電圧インバータセル(LVC)に対する数「n」と切り替えられるグループIIの高電圧インバータセル(HVC)に対する数「m」への分割の結果は、状況によって異なり、本発明によれば曖昧なものである。
【0060】
このように変化させた、切り替えられるグループIからの低電圧インバータセル(LVC)の数「n」と、変化させた数「m」は、変調器33から出力信号として出力され、グループIからのインバータセルLVC又はグループIIからのインバータセルHVCに対するサブコントローラ45,46に印加される。これらは、それ自体既知の方法で、グループIのそれぞれのインバータセルLVC又はグループIIのHVCを制御する。サブコントローラ45,46は、グループIからの低電圧インバータセル(LVC)又はグループIIからの高電圧インバータセル(HVC)の個々のインバータセル5に関するスイッチングデータを取得する。これらのデータは、特に、スイッチング時間、スイッチング手順の回数、及び個々のインバータセル5とその変圧器6を通る磁束から構成される。これらは、データ線47,48を介して、対応する状態データを変調器33及び/又はその上流の適応モジュール36に送信する。
【0061】
変調器33は、必ずしも連続的に動作する必要はない。電圧レベル信号又は基準信号43に変化が生じたときに、特に切り替えるべき低電圧インバータセル(LVC)及び高電圧インバータセル(HVC)の数に電圧レベル信号を分割するために動作することで十分である場合がある。この目的のために、基準信号43を監視し、変化があった場合に変調器33を動作させる変化検出器32が任意に設けられる。
【0062】
図4bに示されるように、1つの代替実施形態では、タップ切替装置31’は、離散化された基準信号(レベル信号)44のみを出力するような、異なる構成を有している。変調器33は、そこから直接、切り替えられるべき高電圧インバータセル(HVC)の数「m」と切り替えられるべき低電圧インバータセル(LVC)の数とを決定する。これを、簡略化した例を参照して説明する。タップ切替装置31’は、基準信号43から離散的なレベル信号44を発生する。変調器33は、レベル信号44をレベル信号の最後の前の値と比較するように構成されている。この比較により、上昇、下降又は不変があることが判明する場合がある。これは、変化検出器32’の方法で検出される。数値「m」及び「n」の値は、上昇又は下降の場合にのみ、即ち、前回のレベル信号との比較において変化が生じた場合にのみ、調整される。これは、図7及び図8に示される例を参照して以下にさらに説明されるように、スイッチング規則によって達成される。
【0063】
図5には、高電圧インバータセル(HVC)による電圧発生の一例を破線で、低電圧インバータセル(LVC)による電圧発生をゼロ線に近い実線で示している。これらを合わせると、量子化された正弦波線によって示されるように、所望の正弦波プロファイルが得られる。グループIIの2つの高電圧インバータセル(HVC)は、半波につき1回だけオン/オフすればよく、それ以上の調整はグループIの低電圧インバータセル(LVC)を頻繁に切り替えることによって行われることがわかるでしょう。この場合、グループIのLVCは電圧を上昇させ(例えば0~0.25μsの区間で開始直後)、またインバータセルHVCが出力する一時的に高い電圧(例えば0.25~0.65μsと0.87~0.98μsの区間)を下げるために補償カウンタースイッチングにより電圧を下げます。高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング手順は、それによって回避することができ、その数は、従って減少することができ、HVCセルのスイッチングの結果として生じるかなりのスイッチング電力損失は、従ってまた減少することができる。
【0064】
より複雑な例として、より多くのインバータセルが図6bに示されている。ここで、スイッチングされるグループIIからの高電圧インバータセル(HVC)の数について生じる値「m」は、破線で図示され、スイッチングされるグループIからの低電圧インバータセル(LVC)の数については、実線の目盛り線「n」で図示される。m”で示された線のプロファイルでは、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチング活動が、特に基準信号の振幅最大値及びゼロクロスの領域で大幅に減少していることが明確に分かります。低電圧インバータセル(LVC)のスイッチング活動を優先させることにより、より高いスイッチング損失を有する高電圧インバータセル(HVC)は、免れることができる。
【0065】
これを達成するために、スイッチング規則34が変調器33に実装される。このスイッチング規則は、図4a及び図4bにも示されているように、グループIIに2つの高電圧インバータセル(HVC)、グループIに4つの低電圧インバータセルを有する例示的な構成に基づいている。スイッチング規則34は、立ち上がりの場合について、2つの可能な選択肢を提供する。
a)高電圧インバータセル(HVC)に関しては変更せずに、低電圧インバータセル(LVC)が出力する電圧を1レベル(12Vに相当)増加させる、もしくは、
b)低電圧インバータセル(LVC)が出力する電圧を3レベル(-36Vに相当)下げ、高電圧インバータセル(HVC)が出力する電圧を1レベル(+48Vに相当)上げる。
【0066】
a)、b)ともに1レベル、具体的には+12Vの電圧変化が生じる。b)では、高電圧インバータセル(HVC)の1つをスイッチングする必要があり、電圧給電との二次関係が4倍となるため、低電圧インバータセル(LVC)の1つと比較して16倍ものスイッチング損失が発生することになる。)これに低圧インバータセル(LVC)のスイッチング手順がさらに3つ加わります。従って、変形例b)は、スイッチング規則34の変形例a)に比べて19倍以上のエネルギー損失を意味する。
【0067】
これらの関係は、図7に示されるスイッチング規則34によって考慮される。ここで、電圧上昇の場合に関する左側の列を参照されたい。これには、2つの選択肢a)とb)が含まれる。入力パラメータは、出力電圧の極性及びグループIからの低電圧インバータセル(LVC)が出力する電圧であり、LVCの電圧レベルで表される。この場合、「1」は+12Vの出力電圧を表し、「4」は+48Vの出力電圧を表し、それに応じて「-4」は出力電圧-48Vを表す。次に、変調器33に実装されたスイッチング規則34は、出力電圧の正の極性に対して、グループIについて-4と3の間の電圧レベル(-48Vから+36Vに対応)の場合、スイッチング規則a)を使用し、すなわちグループIのLVCコンバータセルの出力電圧が12V増加する、ということを述べる。出力電圧の極性が負の場合、スイッチング規則の変形例a)では-4~-1、変形例b)では0~4という適切に調整されたスイッチングレンジが適用される。電圧降下の場合の適切なスイッチング規則は、図7の右側の列に示されています。この場合にも変形例a)及びb)が適用されるが、図7から分かるように、範囲が調整されている。
【0068】
変調器33は、さらに、ヒステリシスモジュール35を含んでいてもよい。これは、グループIIからの高電圧インバータセル(HVC)に関連してスイッチング周波数を取得し、過剰なスイッチング活動の場合にそれらのスイッチング手順を最小化するように構成されている。この目的のために、ヒステリシスモジュール35は、例えば、変形例b)が稀になるように範囲限界を変更するように、スイッチング規則34に作用する。
【0069】
スイッチング規則34及びそのスイッチング範囲は、適応モジュール36によって、特にそのインバータセル5を有するマルチレベルインバータ4の動作条件に基づいて適応されることができる。適応モジュール36は、補償ユニット38を有する監視ユニットで構成される。それは、グループI及びIIのそれぞれにおける個々のインバータセルにおける磁束を検出し、従って、スイッチング規則34のスイッチング範囲に作用する。スイッチング規則34のスイッチング範囲は、それによって動的に変更され得る。高電圧インバータセル(HVC)を通る全体の磁束が高すぎる場合、スイッチング範囲は、これらのセルが後にのみスイッチオンされ、早期に再びスイッチオフされるように変更される。図8による修正されたスイッチング規則34に示されるように、パラメータB及びDはこの目的のために変更され得る。一方、磁束が低すぎる場合は、パラメータA及びCを使用して、高電圧インバータセル(HVC)がより早くスイッチオンされ、より遅くのみ再びスイッチオフされるように、スイッチング範囲を変更することができる。それによって、磁束をバランスさせ、飽和を回避することが可能である。
【0070】
適応モジュール36は、さらにオプションのスイッチオン時間モニター39を含む。これは、低電圧インバータセル(LVC)と高電圧インバータセル(HVC)について別々に、正又は負の電圧出力の持続時間を取得する。特定のプリセット限界値を超えた場合、磁気飽和について前述した方法と同様の方法でスイッチング範囲を動的に調整することができる。しかしながら、対応する高負荷のインバータセルがある時間の間スイッチオフされるように構成されることも可能である。
【0071】
動的に変更されたスイッチング範囲を有する適応モジュール36の効果は、図9a及び図9bに示されている。図9aは、出発点として、図7に示されるような、スイッチング範囲が変更されていないスイッチング規則34に従ったスイッチング挙動を示す。補償ユニット38が、グループII内の高電圧インバータセル(HVC)を通る磁束が低すぎると特定した場合、適応モジュール36はパラメータCを、例えば値3だけシフトする。この結果、パラメータC=3で図9bに示されるように、修正されたスイッチング規則に従って適切に変化したスイッチング範囲となる。これは、高電圧インバータセル(HVC)が一度スイッチオンされると、線m’で示すように、より長くスイッチオンのまま、すなわちスイッチオフが遅延されることを意味する。この場合、スイッチオンに影響はない(パラメータAを変更することで実現可能)。低電圧インバータセル(LVC)のスイッチング活性は、線n’で示すように、それに応じて変化する。その結果、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチオン・スイッチオフ動作は、スイッチオフがかなり遅れるという意味で非対称になる。その結果、高電圧インバータセル(HVC)のスイッチオンとスイッチオフの挙動が非対称となり、スイッチオフのタイミングがかなり遅くなる。スイッチング規則34のスイッチング範囲を動的に変更することにより、高電圧インバータセル(HVC)内の磁束を増加させるという所望の目的が達成される。
【0072】
さらに、オプションのピーク検出器37が設けられる。そこには、基準信号43が印加される。これは、基準信号43における信号ピークの発生、例えば振幅がその最大値に達したときを識別するためのものである。これが識別されるならば、ピーク検出器37は、スイッチング規則34に従ったそれ自体による高電圧インバータセル(HVC)のスイッチングが遮断され、代わりに最後の電圧レベルを達成するために余剰低電圧インバータセル(LVC)がスイッチされるように変調器33に作用し得る。グループIのこのようなオプションの余剰LVCインバータセルは、図4a及び図4bにおいて破線で示されている。それによって、基準信号43のおかげで振幅の最大値が既知で単純であることを利用することができる。ピーク検出器37はこれを識別し、振幅最大値に近い高電圧インバータセル(HVC)5のスイッチング手順をブロックするか、少なくとも最小化するように変調器33に作用する。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b