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特許7465932計時器のための胴に裏蓋を締結するデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】計時器のための胴に裏蓋を締結するデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/11 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G04B37/11 D
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160023
(22)【出願日】2022-10-04
(65)【公開番号】P2023084661
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】21212693.2
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・アリマン
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・シャルトレル
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-17731(JP,A)
【文献】特表2017-507333(JP,A)
【文献】実開昭55-80776(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計の胴に裏蓋を締結するデバイス(100)であって、前記裏蓋(2)は、前記胴(1)の全体または一部を覆うように構成されたカバー(21)を形成する肩部(20)と、前記胴(1)内に載置されるように構成された本体(22)とを有し、当該デバイスは、前記裏蓋(2)と、前記胴(1)との間に、前記胴と一体化するように取り付けられるリング(3)と、前記裏蓋と一体化し、前記リングおよび前記胴と協働するように構成された少なくとも1つのピン(4)とを備え、
当該リング(3)は、前記ピン(4)と協働するように構成された少なくとも1つの凹部(5)を備え、当該ピン(4)は前記凹部(5)内で、前記裏蓋(2)が自由な挿入位置と称する第1位置と、前記裏蓋(2)が係止され、前記胴(1)に対して角度的に位置決めされた係止位置と称する第2位置との間で摺動可能であり、当該凹部(5)は、少なくとも1つの凸部(55)を備え、前記凸部は引っ掛かりを形成し、前記凸部(55)を前記ピン(4)が通過する際に、トルクを増加することを特徴とする、デバイス(100)。
【請求項2】
前記ピン(4)は、前記裏蓋(2)上に取り付けられ、当該ピン(4)は、本体(42)と、頭部(41)と、脚部(43)とを有し、前記本体および前記脚部は、前記頭部よりも小さい直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(1)に裏蓋(2)を締結するデバイス(100)。
【請求項3】
前記胴(1)は、前記リング(3)を収容するための肩部(10)を備え、当該肩部(10)は、前記リングを、締結手段を介して前記胴に固定するように、少なくとも1つの孔(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(1)に裏蓋(2)を締結するデバイス(100)。
【請求項4】
前記胴(1)は、前記ピンの前記頭部(41)と協働するように構成された、少なくとも1つの空洞(15)を備え、前記ピン(4)の前記頭部(41)は前記空洞(15)内を摺動することを特徴とする、請求項2に記載の腕時計の胴(1)に裏蓋(2)を締結するデバイス(100)。
【請求項5】
前記リング(3)は、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリマー系材料、またはさらにエラストマ材料などの弾性変形可能材料製であることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(1)に裏蓋(2)を締結するデバイス(100)。
【請求項6】
前記ピン(4)は、金属または合金製である、請求項1に記載の腕時計の胴に裏蓋を締結するデバイス(100)。
【請求項7】
前記凹部(5)は、前記リング(3)に沿って延在し、前記ピン(4)は、前記凹部(5)を通じて摺動するように通過することを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴に裏蓋を締結するデバイス(100)。
【請求項8】
前記凹部(5)は、第1および第2端(51、52)と、2つの壁(53)とを有し、前記2つの壁(53)の間の距離は、前記ピンの前記本体(42)の直径と同等であり、これにより、前記ピンがガイドされ、軸方向に保持されることを特徴とする、請求項1に記載の締結デバイス(100)。
【請求項9】
前記第1端(51)は、前記ピン(4)を挿入するための空間を形成し、前記第2端(52)は、停止部を形成し、前記ピンを定位置に保持することを特徴とする、請求項8に記載の締結デバイス(100)。
【請求項10】
前記第1端(51)は、前記ピン(4)の頭部と同様の寸法を有し、前記第2端(52)は、前記ピンの前記本体(42)と同様の寸法を有することを特徴とする、請求項8に記載の締結デバイス(100)。
【請求項11】
前記凸部(55)は、前記凹部(5)の前記2つの壁(53)の内の1つに形成されることを特徴とする、請求項8に記載の締結デバイス(100)。
【請求項12】
前記凹部(5)は、複数の凸部(55)を備え、各凸部(55)間の距離は等距離であることを特徴とする、請求項1に記載の締結デバイス(100)。
【請求項13】
前記凹部(5)は、複数の凸部(55)を備え、各凸部(55)間の距離は減少することを特徴とする、請求項1に記載の締結デバイス(100)。
【請求項14】
前記デバイスは、前記裏蓋上に角度を空けて分散され、等間隔で配置される、少なくとも3つのピン(4)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の締結デバイス(100)。
【請求項15】
請求項1に記載の締結デバイス(100)を備えることを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計の胴に裏蓋を締結するデバイスに関する。
【0002】
本発明は、そのようなデバイスを含む、特に腕時計である計時器にも関する。
【背景技術】
【0003】
腕時計および同様の装置の外部部品は、特に耐水性、剛性、見た目のような多くの制約が課され、ガスケット交換、クリーニング、潤滑、または延いては修理のための販売後対応に帰結せざるを得ないような、不慮の分解が一切防止されるように製造される必要がある。
【0004】
さらに一部の外部部品または制御コンポーネントは、独自の参照、停止、または作動位置の場所、あるいはさらに表示または目盛りを読みやすくするため、あるいは傾斜面の連続性を保証する、さらに/あるいは装飾のために、互いに角度を空けて配向される必要がある。この角度配向は、コンポーネントをしっかりと締めること、およびガスケットの完全な耐水性とともに首尾よく実行するのは、多くの場合困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、角度配向が容易な外部部品コンポーネントの、耐水性があり、安全な組立体の製造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、腕時計の胴に、裏蓋を締結するデバイスに関する。裏蓋は、胴の全体または一部を覆うように構成されたカバーを形成する肩部と、胴内に載置されるように構成された本体とを有する。当該デバイスは、裏蓋と、胴との間に、胴と一体化するように取り付けられるリングと、裏蓋と一体化し、リングおよび胴と協働するように構成された少なくとも1つのピンとを備える。
【0007】
本発明によると、当該リングは、ピンと協働するように構成された少なくとも1つの凹部を備える。当該ピンは凹部内で、裏蓋が自由な挿入位置と称する第1位置と、裏蓋が係止され、胴に対して角度的に位置決めされた係止位置と称する第2位置との間で摺動可能である。当該凹部は、少なくとも1つの凸部を備え、凸部は引っ掛かりを形成し、凸部をピンが通過する際に、トルクを増加する。
【0008】
本発明のその他有利な形態によると、
・ピンは、裏蓋上に取り付けられ、当該ピンは、本体と、頭部と、脚部とを有し、本体および脚部は、頭部よりも小さい直径を有し、
・胴は、リングを収容するための肩部を備え、当該肩部は、リングを、締結手段を介して胴に固定するように、少なくとも1つの孔を有し、
・胴は、ピンの頭部と協働するように構成された、少なくとも1つの空洞を備え、ピンの頭部は空洞内を摺動し、
・リングは、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリマー系材料、またはさらにエラストマ材料などの弾性変形可能材料製であり、
・ピンは金属または合金製であり、
・凹部は、リングの半径に応じて延在し、ピンは、凹部を通じて摺動するように通過し、
・凹部は、第1および第2端と、2つの壁とを有し、2つの壁の間の距離は、ピンの本体の直径と同等であり、これにより、ピンがガイドされ、軸方向に保持され、
・第1端は、ピンを挿入するための空間を形成し、第2端は、停止部を形成し、ピンを定位置に保持し、
・第1端は、ピンの頭部と同様の寸法を有し、第2端は、ピンの本体と同様の寸法を有し、
・凸部は、凹部の2つの壁の内の1つに形成され、
・凹部は、複数の凸部を備え、各凸部間の距離は等距離であり、
・凹部は、複数の凸部を備え、各凸部間の距離は減少し、
・デバイスは、裏蓋上に角度を空けて分散され、等間隔で配置される、少なくとも3つのピンを備える。
【0009】
本発明はさらに、そのような締結デバイスを備える計時器に関する。
【0010】
単に図解するための非限定的な例として呈される本発明の特定の実施形態についての以下の説明、および次の添付図面から、本発明のその他特徴および利点がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る締結デバイスの展開斜視図である。
図2a】それぞれ、本発明に係る締結デバイスの裏蓋および胴の斜視図である。
図2b】それぞれ、本発明に係る締結デバイスの裏蓋および胴の斜視図である。
図3a】それぞれ、本発明に係る締結デバイスのリングおよびピンの斜視図である。
図3b】それぞれ、本発明に係る締結デバイスのリングおよびピンの斜視図である。
図3c】本発明に係る締結デバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、角度配向が容易で、位置が保証され、コンポーネント数が最少に抑えられた、外部部品コンポーネントの、耐水性があり、安全な組立体の製造を提案する。
【0013】
図1から3cは、腕時計の胴に対する、裏蓋の取り付けおよび角度配向の非限定的な例を示す。
【0014】
本発明は、胴内に取り付けられるリング3と、裏蓋と一体化され、リング3と協働するように構成された少なくとも1つのピン4と、裏蓋2上に取り付けられるガスケットとを備える、腕時計の胴1に裏蓋2を締結するデバイス100に関する。当然、逆の取り付けも可能であり、リング3が中実または透明であり得る裏蓋2に取り付けられる一方、ピン4が胴1に取り付けられてもよい。
【0015】
裏蓋2は、第1の分解状態での挿入位置から、第2の組立および係止位置へと変更するように構成される。図2aに示すように、裏蓋2は、カバーに対して若干隆起し、裏蓋の外周に溝20を形成する肩部21を有する。裏蓋2は、胴1の全体または一部を覆うように構成され、胴1の空き空間14内に載置されるように構成された本体22を備える。
【0016】
本発明によると、この締結デバイスは、裏蓋2と、胴1との間に軸挿入され、そのうちの一つに対して回転可能に締結されるように構成され、リング3の凹部5内で摺動する少なくとも1つのピン4を含む。
【0017】
このピン4は、スロット41が設けられた頭部40と、本体42と、脚部43とを備える。ピン4は、裏蓋2と一体化されるように、それにねじ込まれる。図示のとおり、本体42、頭部40、および脚部43は円筒形で、頭部40の直径は本体42および脚部43の直径よりも大きい。ピン4が裏蓋2にねじ込まれるために、裏蓋2は、ピン4の脚部43を収容する、少なくとも1つのねじ切りされた孔を備える。ピン4は好ましくは、金属または鋼鉄などの合金材料製である。当然、ピンの締結のために、例えば星または十字形等の、スロット以外の形も使用可能である。
【0018】
図3aに示すように、リング3は部材30で形成され、ピン4と協働するように構成された少なくとも1つの凹部5を備える。ピン4は、凹部5内で、裏蓋2が自由な挿入位置と称する第1位置と、裏蓋2が係止され、胴1に対して角度的に位置決めされた、係止位置と称する第2位置との間で摺動するように構成される。凹部5は、少なくとも1つの凸部55を備え、凸部55は引っ掛かりを形成し、凸部55をピン4が通過する際に、トルクを増加する。このような構成はさらに、ゆるみに対する、さらにその結果としての耐水性の喪失に対する安全性を保障する。
【0019】
リングにおいて、凹部5を収容する部分の剛性を上げるため、この部分をリングの他部よりも幅を広くし、この厚い部分で、リング5を、裏蓋2と胴1との間で圧縮する。
【0020】
リング3は、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリマー系材料、またはさらにエラストマから選択される材料製であり得る。公知のエラストマの例としては、asutane(登録商標)またはハイトレル(登録商標)が挙げられる。選択された材料、ピンとの干渉形状、そしてピンの材料により、最大締結トルクが決定可能となる。好ましくはポリマー弾性材料などである、リング3の利点としては、製造することと、破損または摩耗の際に交換が容易であることが挙げられる。
【0021】
リング3は、孔31を通ってリング3に通され、胴1の孔13内にねじ込まれるねじ6を介して胴1に締結される。有利には、ねじ6の頭部は、孔31と、リング3の表面とに形成される座ぐりに載置される。リング3は、胴1の肩部10の裏側12と壁11とに接して載置される。リング3の表面が、胴1の縁と面一となるように、肩部の寸法は、リングと同様である。有利には、肩部10の裏側12は、胴の半径に応じて延在する少なくとも1つの空洞15を有する。空洞15の位置は、取り付けられたリングの凹部5の位置に対応する。空洞15の幅は、凹部5の幅よりも大きく設けられている。凹部の幅は、ピン4の本体42の寸法と同等である。空洞15の幅は、最低でもピン4の頭部40の幅と同等である。これにより、ピン4は空洞15内で移動可能で、凹部5内で軸方向に保持可能である。なお、空洞15の長さが、ピン4の移動長さを定義する。
【0022】
第1の挿入分解位置において、胴1と、裏蓋2とは互いに、第1角度方向の関係となる。
【0023】
本発明によると、裏蓋2は、Oリングガスケット(不図示)などの径方向耐水手段を、胴1と、裏蓋2との間の界面に備える。ガスケットは、カバーの溝20内に載置され、これにより、裏蓋の外周の肩部21により形成された空間を埋める。第1の挿入分解位置から、第2の組立および係止位置への遷移は、作業者が加える負荷、即ち、Oリングガスケットの抵抗力を上回り、裏蓋2と、胴1とを組み付ける軸方向の負荷、ならびにこれらを角度配向位置に配置するトルクの作用下で実行される。
【0024】
第2の組立ておよび係止位置において、胴1および裏蓋2は、互いに、第1角度方向とは異なる第2角度方向となる。裏蓋2および胴1は、差込み嵌合によって軸方向に保持される。
【0025】
有利には、特に軸方向D回りの、差込み嵌合による裏蓋2および胴1の固着は、可逆的であり、裏蓋および胴の分解を可能にする。本発明に特定の方式では、この分解は、作業者からの組立ての間に加えたのと同様の負荷を必要とし、この分解は、好ましくは、例えば、裏蓋2の可視面に配設した孔または外周切欠きと協働する特殊工具の使用を必要とする。そのような組立てにより、着用者による裏蓋の分解、または不適切な扱いもしくは衝撃の後の分解を防止することを可能にする。
【0026】
ピンの本体42は、リング3の凹部5が含む、凸部55などの、少なくとも1つの対応する隆起と協働するように構成される。図3aに示すように、リング3は、リング3の半径に応じて延在し、ピン4の本体42の直径と同等の幅寸法を有する少なくとも1つの凹部5を備える。これにより、ピン4が凹部5内で摺動する。凹部5は、第1端51と、第2端52と、2つの壁53とを備える。
【0027】
したがって、凹部5内の凸部55をピン4が通過すると必ず、胴1と、裏蓋2との間の相対回転移動に抗しやすい抵抗トルクが生成される。
【0028】
好ましい実施形態によると、凹部5は、ピン4の通過の際に、連続的な抵抗に抗するように構成された、複数の凸部55を備える。本発明によると、裏蓋2と、胴1との回転の際に、増加する抵抗に抗するように、同じ凹部5の中で、連続した凸部55間の角距離は減少する。一定の抵抗トルクに抗するように、連続した凸部55の間の角距離は、一定でもあり得る。
【0029】
凸部の配置に関する複数の構成が実現され得る。第1実施形態によると、1つまたは複数の凸部55が、凹部5の単一の側壁上に存在する。第2実施形態によると、1つまたは複数の凸部55が、凹部5の2つの側壁上に配置され、各壁の凸部55は互いに対向して配置される。第3実施形態によると、1つまたは複数の凸部55が、凹部5の2つの側壁上に配置され、各壁の凸部55は互いにずれている。同様に、対向する凸部55の間の距離は、抵抗トルクが増加していくように、可変であり得る。
【0030】
凹部5の第1端51は、ピン4の頭部40を挿入するための空間を形成する。第2端52は、止め具を形成し、凹部5内でピン4を定位置に保持する。このため、第1端51は、ピン4の頭部40よりも若干大きな寸法を有し、第2端52は、ピン4の本体42と同様の寸法(最低製造公差まで下げる)を有する。
【0031】
協働する凹部5および凸部55の数、凸部および追加ピン4の寸法が大きいほど、抵抗力が重要となることが理解できよう。この観点から、連続する凸部55の数、および/またはピンおよび凹部の数を調整できる。本発明の好ましい実施形態によると、リング3は、一定の角度を空けて分散された3つの凹部5を備え、裏蓋2は、これに対応する3つのピン4を備える。
【0032】
当然、この構成は逆にできる。即ち、リング3が裏蓋2と一体化され、ピン4が胴1と一体化される。
【0033】
6つの締結ねじ6を省略して、胴1に締結されるさらなるピン4を3つ追加することが考えられる。これにより、3つのさらなる溝が追加され、この二重差込み部を介して、軸Dに対し、分解に対する抵抗が提供される。
【0034】
さらに、胴に2つのピンを設け、裏蓋に2つピンを設け、形成する溝を4つのみにすることも考えられる。
【0035】
組立て時、作業者は、ピン(複数可)4の頭部40を、凹部(複数可)5の第1端51に対応するように、裏蓋2を胴1上に配置する。これにより、裏蓋2のカバー20を、胴1の下縁16の近くに配置するために、また、ガスケットにより耐水性を保証するためにピンが空洞15の裏側に当接するまで、作業者が、裏蓋2において軸Dに沿った並進移動を実現する際に、ピン4が凹部内に差し込まれる。Oリングガスケットの摩擦により、第1抵抗を提供可能となる。ピン4の高さは、空洞15の裏側から裏蓋2までの距離よりも若干大きい。これにより、裏蓋2と胴1との接触が防止可能となり、裏蓋と胴との間に、0.02mmから0.04mmの遊びが存在する。
【0036】
その後、作業者は漸進的トルクを加え、胴1と、裏蓋2との間の相対回転を実現する。この回転時、組立てを行う作業者に、ピン4の本体42の凹部5の第1凸部55との協働による、第2抵抗が加わる。したがって、凸部55の完全な通過時に、抵抗トルクが漸進的に増加する。
【0037】
第1の形態において、ピン4と協働する第1凸部55は単一である。第2の形態において、凹部5は、複数の凸部55を備え、したがって、回転時に、作業者は断続的に負荷を与える。蓄積された抵抗トルクのピークは、引っ掛かりを通過するたびに増大し、配向角度において、最大値に達する。したがって、作業者は、裏蓋を回転することによってケースを閉じるほどに凸部および「ピン/凸部」干渉が強くなるという事実により、抵抗が強まっていくと感じる。
【0038】
図1および図3aに示すように、リング3は120°で分散された3つの凹部5を備える。各凹部5は、当該凹部5に対応するピン4と協働するように構成される。したがって、裏蓋2は、120°で分散された3つのピン4を備え、作業者は、120°間隔の3つのピン4が同時に凸部55を通過する際に、引っ掛かりを一度通過したように感じる。
【0039】
裏蓋2が胴1に配置されると即、耐水性が発現する。そして本発明に係る機構は、凸部が単一だった以前の場合のように、裏蓋が胴内に挿入されると即、ガスケットによる耐水性が保証され、その後、作業者の意図的動作がなければ、緩むことはないように構成される。
【0040】
実際、各凸部の通過の際に十分に単純な角度移動が生じるように、少なくとも2つ、好ましくは3つ、または4つでもあり得る一連の凸部によるとても良い結果が得られる。
【0041】
本発明では、組立ての際に、そして分解の際にも、抵抗が増加するように、複数の凸部を順次越えることが必要である。これにより、特に機械的停止部上の最終配向位置から、何らかの唐突な負荷がかかっても、最悪の場合でも、単一の凸部55を越えるだけであり、完全な解体は生じず、視覚的なずれが生じ、何よりも耐水性の喪失や腕時計内の汚染のリスクが生じない。図示の例では、作業者が順次3つの閾値を超えても、ずれにより見た目に視認可能だが、耐水性は常に保証される。耐水性の喪失のためには、作業者は、ガスケットの圧縮が解消されるように、裏蓋2を部分的に取り外す必要がある。
【0042】
一実施形態によると、各凸部55間の距離は等距離で、その通過の際の抵抗トルクは同一である。
【0043】
有利な変形例において、各凸部間の距離は減少し、したがって作業者はかけるトルクを増加しなければならない。
【0044】
本発明は、時計学的に完全に適切な寸法であり、腕時計の直径に応じて、1.2Nm±0.2Nmに達し得る、高抵抗力を実現できるため、有利である。
【0045】
さらに、計時器に対し、かなり大きな特定の制限が課される場合、本発明に係る機構の分解には、図示の例において、単一の凸部を越えるのに、5から10°の大きな角度移動の際に、不慮に加わり得る力が継続される必要があり、複数の凸部が順次設けられる場合、安全性が保たれる。
【0046】
本発明によると、移動制限停止部を形成する第2端52により、角度配向が保証される。
【0047】
したがって、本発明によると、裏蓋と胴の、例えば、振動、連続的な膨張周期の影響、着用者の不適切な使用など、あらゆる予期せぬ不慮の分解が防止可能である。
【0048】
好ましくは、分解には、市販されていない特別な器具を必要とする。したがって、メンテナンスが、必要な資格を有する販売後作業員により実行されることが保証される。
【0049】
本発明は、胴及び裏蓋が、様々な膨張係数を有する様々な材料、またはさらに標準的な締結モードが可能ではない脆いもしくは硬い材料(セラミック、サファイア)から作製されるケースに極めて有用である。従来の構成は、胴とサファイアの裏蓋との組立体、または全体がセラミックのケース、金属とセラミックの組合せ等を含む。
【0050】
本発明の重要な利点は、裏蓋と胴との間のあらゆる接触/摩擦をなくすことであり、したがって、従来技術の場合のように、摩擦の跡が生じることを防止し、さらにそれを防止するためのグリースの添加を不要にする。
【0051】
本発明の別の重要な利点は、開放時、あらゆる耐水性の喪失前に、複数の切欠きの連続的な通過、及び少なくとも部分的に裏蓋を取り外す必要があることで、安全性が増大することである。
【0052】
本発明はさらに、そのような締結デバイスを備える、計時器または腕時計に関する。
【0053】
まとめると、本発明は、コンパクトな設計の締結デバイスを得て、腕時計の耐水性維持を保証し、あらゆる不慮の分解に対して保護可能となる。
【0054】
本発明はさらに、コンポーネントを、その作動位置に、完ぺきな方向で係止して保持されることを保証可能とする。
【0055】
本発明は多くの利点を実現する。
・例えば封止の圧縮が実行されると即、耐水性機能が保証される、裏蓋と胴との間の第1相対角度位置から、本発明の機構において、裏蓋と胴との間に、広い相対角度値範囲が存在する。ここで、例えば耐水性の維持が、例えば数度まで保証される。これは、例えば胴と裏蓋との部分組立体の場合の、一般的なねじ留めされた裏蓋と比較して重要である。この場合、数度ねじを緩めるだけで、耐水性は喪失し、クリーニングと新しいガスケットが必要となる。一方、本発明によると、分解時に、回転が継続し、最後の切欠きを通過するまで、耐水性の喪失や、胴1からの裏蓋2の取り外し(差込み部の分離に対応)開始が生じない。
・一連の切欠きによる閉鎖は、その取り付けに関する裏蓋の閉鎖トルクの範囲が広く、それは、特に凹部内に分散された凸部の数を増やすことにより十分で、許容範囲内となる。これは作業者からすると、閉鎖位置として知られる所望位置まで、閉鎖トルクを増やすように、螺入感も十分に感じられる。
・開放時の安全性が次の2つの要素により向上する。即ち、1つの切欠きを超えるのに、作業者は大きな正エネルギーを掛ける必要があり、耐水性の喪失まで、複数の切欠きを連続して通過する必要がある。
【符号の説明】
【0056】
1 胴
2 裏蓋
3 リング
4 ピン
5 凹部
6 ねじ
10 肩部
11 壁
12 裏側
14 空き空間
15 空洞
20 溝
21 肩部
30 部材
40 頭部
41 スロット
42 本体
43 脚部
51 第1端
52 第2端
53 壁
55 凸部
100 デバイス
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c