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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240404BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01F12/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022206170
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019032401の分割
【原出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2023029437
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 良平
(72)【発明者】
【氏名】村山 昌章
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-245308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
A01F 12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を収穫して貯留する貯留部を有する作業車両の自動走行システムにおいて、
自動走行中の前記作業車両が前記貯留部の作物を排出する際に停止する所定停止位置を設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記貯留部の作物が排出される所定排出位置に基づいて前記所定停止位置を設定する、自動走行システム。
【請求項2】
前記制御部は、事前に設定された前記所定停止位置を前記所定排出位置に基づいて修正する、請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定排出位置と前記作業車両との距離が所定距離となるように前記所定停止位置を設定する、請求項1または2に記載の自動走行システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定排出位置と前記作業車両との距離が前記所定距離となるように前記所定停止位置での前記作業車両の向きを設定する、請求項3に記載の自動走行システム。
【請求項5】
前記所定距離は、前記作業車両に備えられた前記作物を排出する排出オーガの長さに基づいて設定される、請求項3または4に記載の自動走行システム。
【請求項6】
前記所定排出位置は、測位位置情報に基づいて設定される、請求項1~5のいずれかに記載の自動走行システム。
【請求項7】
作物を収穫して貯留する貯留部を有する作業車両の自動走行方法において、
自動走行中の前記作業車両が前記貯留部の作物を排出する際に停止する所定停止位置を、前記貯留部の作物が排出される所定排出位置に基づいて設定する、自動走行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバインなどの作業車両の自動走行を実現する自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインなどの収穫機は、収穫した穀粒を貯留するグレンタンクを有し、グレンタンクが満タンになれば、グレンタンクからトラックなどの搬送車へ穀粒を排出する作業が必要となる。排出作業に関して特許文献1には、コンバインの自動走行時にグレンタンクが所定量以上になると、圃場における所定停止位置(搬送車近傍)まで自動的に移動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-170223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献によれば、コンバインは自動的に所定停止位置まで移動して停止するが、圃場環境によっては所定停止位置で排出オーガを昇降及び旋回させても搬送車のコンテナに排出オーガが届かず、コンテナに穀粒を排出できない場合がある。この場合、ユーザはコンバインを手動運転してコンバインの位置を変更しなければならず、手間が生じる。
【0005】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、作物の排出に適した位置で作業車両を停止させることが可能な自動走行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る自動走行システムは、
作物を収穫して貯留する貯留部を有する作業車両の自動走行システムにおいて、
自動走行中の前記作業車両が前記貯留部の作物を排出する際に停止する所定停止位置を設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記貯留部の作物が排出される所定排出位置に基づいて前記所定停止位置を設定する。
本開示に係る自動走行方法は、
作物を収穫して貯留する貯留部を有する作業車両の自動走行方法において、
自動走行中の前記作業車両が前記貯留部の作物を排出する際に停止する所定停止位置を、前記貯留部の作物が排出される所定排出位置に基づいて設定する。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、所定排出位置に基づいて作物の排出に適した位置で作業車両を停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コンバインの全体構成を示す側面図
図2】コンバインの制御構成を示すブロック図
図3】収穫作業をするコンバインの経路、所定停止位置及び所定排出位置を示す平面図
図4A】システムが実行する圃場登録処理を示すフローチャート
図4B】システムが実行する圃場登録処理を示すフローチャート
図5A】所定停止位置におけるコンバイン1の向き及び排出オーガの位置の一例を示す図
図5B】所定停止位置におけるコンバイン1の向き及び排出オーガの位置の一例を示す図
図5C】所定停止位置におけるコンバイン1の向き及び排出オーガの位置の一例を示す図
図6】所定停止位置への移動を開始する条件が成立したときの未収穫領域と、走行済みの経路を示す図
図7】所定停止位置への移動経路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び図2を参照して、作業車両としてコンバインを例とした場合の実施形態について説明する。図1は、作業車両としてのコンバイン1の全体構成を示す側面図である。図2は、コンバイン1の制御構成を示すブロック図である。コンバイン1は、自律して走行及び作業が可能なコンバイン(自律型コンバイン)である。
【0010】
コンバイン1は、自脱形コンバインである。コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、及び、操縦部9を備える。
【0011】
コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6のグレンタンク11に貯える。グレンタンク11に貯えられた穀粒は、排出オーガ12によって排出される。また、脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8のエンジン13から、これら走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力が供給される。操縦部9は、運転席14やステアリングハンドル15等の運転操作具を内装するキャビン16を備える。
【0012】
コンバイン1は、測位衛星からの信号を受信して測位する測位ユニット20を備える。測位ユニット20は、移動測位アンテナ22と、データ受信アンテナ23と、を有する。移動測位アンテナ22及びデータ受信アンテナ23は、キャビン16に配置されている。一方、固定測位アンテナ32と、データ通信アンテナ33とが所定位置に配置されている。コンバイン1は、RTK-測位方式を用いて位置情報を取得している。
【0013】
コンバイン1の制御部40は、CPU等のコンピュータからなる処理部41と、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部42とを有する。処理部41は、ROMに格納されているプログラム等をRAM上に読み出したうえで、これを実行することができる。記憶部42には、グレンタンク11の容量、刈取部3の幅等のコンバイン1の各諸元情報が記憶されている。
【0014】
制御部40は、制御プログラムを処理部41が実行することにより、各種構成要件の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、制御部40は、外部とのデータ通信用の通信部43を有する。制御部40は、通信部43を通じて、他の作業車両(コンバインや、収穫物を搬送するトラック等)、携帯端末等の外部構成と通信可能である。
【0015】
コンバイン1は、制御部40の入力側の構成として、測位ユニット20と、エンジン13の回転数を検出するエンジン回転センサ51と、コンバイン1の走行速度を検出する走行速度センサ52と、コンバイン1の機体の変位情報として3方向の加速度を検出するジャイロセンサ53と、コンバイン1の進行方向を検出する方位センサ54と、ステアリングハンドル15の回転角を検出するステアリングセンサ55と、グレンタンク11に貯留される穀粒の量を検出する穀粒センサ56と、を有する。
【0016】
制御部40の出力側の構成は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とである。制御部40は、入力される測位ユニット20からの位置情報及び各種センサによって検出される運転状況(例えばエンジン13の運転状態、機体の姿勢方位、グレンタンク11内の穀粒量等)に基づいて、適宜、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを制御する。このようにして、コンバイン1は、所定の経路に沿って自律的に走行及び作業を実行するように制御されている。
【0017】
自動走行の前提として、図3に示すように、自動走行作業車両1が走行する所定の経路P1が予め設定されている。所定の経路P1は、同図に示すように、複数の動線(作業経路)(L1、L2、L3、L4、L5、…)で構成されており、一つの動線が始点及び終点を有する。各々の動線は順序関係を有する。同図に示すように、作業領域となる圃場情報Fが記憶されている。圃場情報Fは、地図状に構成されている。圃場情報Fとして、作業範囲となる圃場の外周の位置情報(地図情報)及び所定停止位置F0が予め設定されている。所定停止位置F0の近傍には、トラックなどの搬送車TRが配置され、各コンバインからの作物の排出を受ける。搬送車TRのコンテナが存在する位置には、作物が排出される所定排出位置F1が設定される場合がある。圃場の外周の位置情報は、コンバイン1を経路P0に沿って実際に走行させることで記憶可能である。所定停止位置F0及び所定停止位置F0におけるコンバイン1の方位(向き)は、コンバイン1を実際に走行させて停止した状態で所定操作をすることで記憶可能である。また、所定停止位置F0及び所定停止位置F0におけるコンバイン1の向きは、タブレット等の操作部を介して指定可能である。また、指定された所定停止位置F0及び所定排出位置F1に基づきコンバイン1の好ましい向きを算出することも可能である。なお、図中にて東西南北を示しているが、これは例示である。
【0018】
<事前設定>
圃場情報F及び所定停止位置F0等の設定方法を、図4A及び図4Bを用いて説明する。
図4のS100に示すように、制御部40は、図3に示す矢印P0に沿って回り刈りしながら圃場の外周の位置情報を測位しつつ登録する。次のステップS101において、制御部40は、実機の停止位置及び向きを記憶する操作がなされたかどうかを判定する。実機の停止位置及び向きを記憶する操作としては、例えば、貯留部6からの作物を排出する排出オーガ12を駆動するための排出クラッチをONにすること、所定のボタンへの操作、タブレット等の操作部への操作などが挙げられる。ステップS101において操作がなされていないと判定した場合には(S101:NO)、後述するステップS105の処理へ移行する。ステップS101において操作がなされたと判定した場合には(S101:YES)、制御部40は、現在の車両(コンバイン1)の位置及び向きを所定停止位置F0及び方位(向き)として記憶する。例えば図5Aに示す例であれば、コンバイン1の現在位置が所定停止位置F0として記憶され、コンバイン1の向き(西を向く矢印で示す)が所定向きとして記憶される。例えば図5Bに示す例であれば、コンバイン1の現在位置が所定停止位置F0として記憶され、コンバイン1の向き(東を向く矢印で示す)が所定向きとして記憶される。例えば図5Cに示す例であれば、コンバイン1の現在位置が所定停止位置F0として記憶され、コンバイン1の向き(南を向く矢印で示す)が所定向きとして記憶される。
【0019】
次に制御部40は、ステップS103において、実機のオーガ位置を記憶する操作がなされたか否かを判定する。実機のオーガ位置を記憶する操作としては、例えば、貯留部6からの作物を排出する排出オーガ12を駆動するための排出クラッチをONにすること、所定のボタンへの操作又はタブレット等の操作部への操作などが挙げられる。ステップS103において操作がなされたと判定した場合には(S103:YES)、制御部40は、次のステップS104において現在のオーガ位置を、排出時オーガ位置として記憶する。図5A図5B及び図5Cに示す例では、排出時オーガ位置は、排出オーガ12の長さ、排出オーガ12の上昇角度及び旋回角度で表される。排出オーガ12が伸縮しない場合には排出オーガ12の長さは省略可能である。上昇角度は、側面視において水平方向に対する排出オーガ12の角度であり、旋回角度は、平面視においてコンバイン1の正面に対する排出オーガ12の角度である。ステップS103において操作がなされていないと判定された場合には(S103:NO)、ステップS105の処理へ移行する。
【0020】
ステップS105において位置情報P0で表現される圃場範囲を含む圃場情報Fが登録されているかを判定し、圃場範囲が登録されていると判定されるまでステップS100から処理を繰り返す。圃場範囲が登録されている場合(S105:YES)には、次のステップS106の処理へ移行する。
【0021】
ステップS106において、制御部40は、タブレット等の操作部を介して所定停止位置F0及びコンバイン1の向きを指定する操作がなされか否かを判定し、操作がなされたと判定した場合(S106:YES)には、次のステップS107にて制御部40は、指定された停止位置及び向きを所定停止位置F0及び所定向きとして記憶し、次のステップS108へ移行する。ステップS106にて指定する操作がなされていないと判定した場合には(S106:NO)、次のステップS108へ移行する。
【0022】
ステップS108において、制御部40は、タブレット等の操作部を介して排出時オーガ位置を指定する操作がなされたか否かを判定し、操作がなされたと判定した場合には(S108:YES)、ステップS109において、制御部40は、指定された位置を排出時オーガ位置として記憶し、次のステップS110へ移行する。ステップS108にて操作がなされていないと判定した場合(S108:NO)には、ステップS110へ移行する。
【0023】
ステップS110において、制御部40は、所定停止位置F0におけるコンバイン1(車両)の向きが未設定であるか否かを判定する。向きが未設定でない場合には(S110:NO)、ステップS112の処理へ移行する。向きが未設定である場合(S110:YES)には、次のステップS111において、制御部40は、所定停止位置F0におけるコンバイン1の向きを算出し、次にステップS112の処理へ移行する。コンバイン1の向きの算出方法は、所定停止位置F0において車両(コンバイン1)の右後隅(排出オーガ12の基端部)と、所定排出位置F1とが最も近くなる車両の向きを算出する。条件を満たす向きが複数存在する場合には、移動距離、旋回回数、所要時間及び旋回時間の少なくとも1つが少ない向きを選択する。なお、向きが未設定となる前提として、所定排出位置F1と所定停止位置F0とがユーザにより指定されるが向きが未設定となる場合、所定排出位置F1のみがユーザ又は搬送車TRの測位により指定され、所定排出位置F1及び向きが未設定となる場合が挙げられる。
【0024】
ステップS112において、制御部40は、排出時オーガ位置が未設定であるか否かを判定する。排出時オーガ位置が未設定でない場合には(S112:NO)、処理を終了する。一方、排出時オーガ位置が未設定である場合には(S112:YES)、次のステップS113において、制御部40は、排出時オーガ位置を算出する。排出時オーガ位置の算出方法は、所定停止位置F0(又は車両の測位情報)と、搬送車TRの測位情報(又は所定排出位置F1)に基づき、排出時オーガ位置(排出オーガ12の長さ、排出オーガ12の上昇角度及び旋回角度)を算出する。
【0025】
<自動走行>
自動走行について、制御部40は、図3に示す所定の経路P1に沿ってコンバイン1(自動走行車両)を走行させ収穫作業させる。また、制御部40は、移動条件成立に応じてコンバイン1を所定停止位置F0まで自動走行させる。自動走行作業車両1を所定停止位置F0へ向けて移動開始させるための移動条件として、例えば、貯留部6(グレンタンク11)の容量が第1所定量以上になったこと、貯留部6の容量が第1所定量未満であり且つ次の経路で収穫が見込まれる量を加算すれば第1所定量以上となること、貯留部6の貯留量によらずユーザが指定した任意のタイミング、又は、ユーザによる移動指示操作がなされたこと等が挙げられる。次の経路で収穫が見込まれる量は、現時点の経路における単位距離あたりの収穫量で算出可能である。単位距離あたりの収穫量は、走行速度センサ52で検出される車速及び穀粒センサ56で検出される穀粒の量で算出可能である。また、上記移動開始の条件として、貯留部6の容量が第1所定量未満であり且つ次の経路での収穫予定量を加算すれば第1所定量以上となるが、現経路の終点から所定停止位置F0までの距離と、次の経路の終点から所定停止位置F0までの距離との比較結果によって現経路の終点から所定停止位置F0への移動を開始すると判定してもよい。比較は、単純な大小関係、距離の差と閾値との大小関係などが採用可能である。例えば、現経路の終点から所定停止位置F0までの距離が、次の経路の終点から所定停止位置F0までの距離よりも短い場合に、現経路の終点から所定停止位置F0へ移動を開始するとしてもよい。図6は、上記移動開始の条件が成立したのが経路L5の終点PEであるとして説明する。
【0026】
図7に示すように、制御部40は、自動走行作業車両1を移動開始位置PEから所定停止位置F0まで自動走行させ、所定停止位置F0における自動走行作業車両1の向きを所定向きに制御するための経路(P2、P3、P4)を生成する。経路(P2、P3、P4)は、圃場Fの外周P0内であって、未収穫領域Ar1を除く領域に自動で生成される。未収穫領域Ar1は、実際にコンバイン1が走行した経路と圃場情報Fとにより算出可能である。図7では、3つの経路P2、P3、P4を例示している。経路P2は、所定停止位置F0での自動走行作業車両1の向きが左向きである場合(図5A参照)の経路である。経路P3は、所定停止位置F0での自動走行作業車両1の向きが右向きである場合(図5B参照)の経路である。経路P4は、所定停止位置F0での自動走行作業車両1の向きが下向きである場合(図5C参照)の経路である。経路(P2、P3、P4)の生成は、制御部40が行ってもよいし、外部(サーバ、別の作業車両1)に設けられた経路生成部が生成してもよい。なお、経路P4は、刈取部3を未収穫領域Ar1に向け、その後後退する動作を含む経路であるが、場合によって未収穫領域Ar1を踏んでしまうおそれがある。その場合には、経路P4を選択できない旨を報知するか、他の経路を提示するか、経路P4に必要な領域を確保するあめの刈り取りを行うようにすることが挙げられる。
【0027】
制御部40は、所定停止位置F0にて所定向きに自動走行作業車両1を停止させた後、所定排出位置F1に向けて排出オーガ12の昇降及び旋回を実行するように構成されている。具体的には、制御部40は、予め設定された排出時オーガ位置(排出オーガ12の長さ、排出オーガ12の上昇角度及び旋回角度)になるように、排出オーガ12を昇降及び旋回、伸縮させる。排出オーガ12の好ましい動作順序は、まず、自動走行作業車両1のキャビン16に接触しない高さ(機体情報により予め設定される)まで排出オーガ12を上昇させ、その後、排出オーガ12を予め設定された旋回角度まで旋回させて所定排出位置F1の上方に排出オーガ12の排出口を位置させて、排出オーガ12を予め設定された上昇角度まで下降させることが好ましい。搬送車TRにコンテナが積載されていることが判明している場合には、搬送車TRの高さデータに対してコンテナデータに相当する補正値で補正することが好ましい。また、自動走行作業車両1のキャビン16の高さ位置と排出オーガ12の基端部の位置との差値が予め設定されている場合には、当該差値とコンバイン1の姿勢とに基づきコンバイン1の高さ位置を補正し、補正した高さ位置に基づき排出オーガ12の昇降及び旋回を制御するようにしてもよい。
【0028】
なお、設定された所定停止位置F0と、圃場の外周と、搬送車TRの位置(所定排出位置F1)とに基づき、排出オーガ12の基端と所定排出位置F1との距離が、排出オーガ12の長さよりも短い場合には、所定停止位置F0が所定排出位置F1に対して近すぎることになる。制御部40は、搬送車TRの測位位置を通信により取得できる場合には、搬送車TRの測位位置と圃場の外周との距離、排出オーガ12の長さに基づき、所定停止位置F0を自動的に修正するように構成されていることが好ましい。
【0029】
以上のように本実施形態の自動走行システムは、
作物を収穫して貯留する貯留部6を有する自動走行作業車両1と、
自動走行作業車両1を圃場内で自動走行させる制御部40と、を備え、
制御部40は、自動走行作業車両1を所定の経路P1に沿って収穫作業させると共に、移動条件成立に応じて自動走行作業車両1を所定停止位置F0まで自動走行させ、所定停止位置F0における自動走行作業車両1の向きを所定向きに制御して自動走行作業車両1を停止させるように構成されている。
【0030】
この構成によれば、自動走行作業車両1を所定停止位置F0で停止させる際に、向きを制御して自動走行作業車両1を停止させるので、所定停止位置F0にてユーザが手動走行で自動走行作業車両1の向きを変える必要がなく、利便性を向上させることが可能となる。よって、所定停止位置F0において作物の排出に適した向きで作業車両1を停止させることが可能となる。
【0031】
本実施形態において、所定停止位置F0における自動走行作業車両1の向きは、指定可能に構成されている。
【0032】
この構成によれば、ユーザが所定停止位置F0における自動走行作業車両1の向きを指定でき、ユーザの好みに応じた向きに制御することが可能となる。
【0033】
本実施形態において、制御部40は、圃場に対する所定排出位置F1に基づいて所定停止位置F0における自動走行作業車両1の向きを算出するように構成されている。
【0034】
この構成によれば、所定排出位置F1に最適となる自動走行作業車両1の向きが自動的に算出されるため、ユーザの利便性とを向上させつつ自動走行作業車両1の向きの適切な制御を実現可能となる。
【0035】
本実施形態において、自動走行作業車両1は、貯留部6から作物を排出するための排出オーガ12を有し、制御部40は、自動走行作業車両1を所定停止位置F0に停止させた後、所定排出位置F1に向けて排出オーガ12の昇降及び旋回を実行するように構成されている。
【0036】
この構成によれば、自動走行作業車両1の所定停止位置F0への停止後、排出オーガ12の昇降、旋回動作も自動で実行されるので、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0037】
本開示は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0038】
例えば、制御部40により、移動開始位置PEから所定停止位置F0まで自動走行させているが、有人の場合には、経路P2、P3、P4に沿った走行をガイダンスするように構成してもよい。
【0039】
複数の作業車両が存在する場合には、有人の作業車両1にて所定停止位置F0、所定停止位置F0での作業車両1の向き及び排出時オーガ位置を記憶し、その後、無人の作業車両1に所定停止位置F0、所定停止位置F0での作業車両1の向き及び排出時オーガ位置を送信して、無人の作業車両1では受信したデータに基づき自動走行するように構成することが挙げられる。
【0040】
上記では、所定停止位置F0及び所定排出位置F1が事前に設定されるが、搬送車TRが移動することがあるので、所定停止位置F0及び所定排出位置F1が一旦設定されたとしても、更に所定停止位置F0及び所定排出位置F1を変更可能にすることが好ましい。例えば、実機が排出クラッチをオンにして排出オーガ12を駆動し排出作業を行うので、そのときの実機の位置と向きを記録することが挙げられる。排出作業を検出して所定停止位置F0及び所定排出位置F1を自動的に更新することも挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 コンバイン(自動走行作業車両)
6 貯留部
12 排出オーガ
40 制御部
F0 所定停止位置
F1 所定排出位置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7