(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240404BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022516496
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017118
(87)【国際公開番号】W WO2021214846
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史宏
(72)【発明者】
【氏名】田邉 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】濱埜 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】冨山 清隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 宏義
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-14098(JP,A)
【文献】特開2009-130967(JP,A)
【文献】特開2006-81312(JP,A)
【文献】特開2007-300694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、強電部に配置された第1回路を有し、
前記主回路基板は、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、
前記直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路と、を前記強電部に配置し、
前記第2基板は、
弱電部に配置された第2回路を備え、
前記第1基板は、
前記主回路基板と前記第2基板に接続され、
前記強電部と前記弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、
前記強化絶縁領域に配置され、前記直流電圧を受電し、前記第1回路および前記第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、
前記強化絶縁領域に配置され、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子と、
を備え、
前記電力変換装置は、さらに、
前記主回路基板に接続された第3基板を備え、
前記第1回路は、前記第3基板に実装され、前記インバータ回路に駆動信号を出力する駆動回路を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、強電部に配置された第1回路を有し、
前記主回路基板は、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、
前記直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路と、を前記強電部に配置し、
前記第2基板は、
弱電部に配置された第2回路を備え、
前記第1基板は、
前記主回路基板と前記第2基板に接続され、
前記強電部と前記弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、
前記強化絶縁領域に配置され、前記直流電圧を受電し、前記第1回路および前記第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、
前記強化絶縁領域に配置され、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子と、
を備え、
前記第1基板は、前記主回路基板に立設され、
前記主回路基板は、前記交流電圧を受電する端子台を備え、
前記第1基板は、前記端子台の側面に対面する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、強電部に配置された第1回路を有し、
前記主回路基板は、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、
前記直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路と、を前記強電部に配置し、
前記第2基板は、
弱電部に配置された第2回路を備え、
前記第1基板は、
前記主回路基板と前記第2基板に接続され、
前記強電部と前記弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、
前記強化絶縁領域に配置され、前記直流電圧を受電し、前記第1回路および前記第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、
前記強化絶縁領域に配置され、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子とを備え、
前記第1基板は、前記主回路基板に立設され、
前記第1基板と前記第2基板は略垂直に配置され、前記第2基板は前記主回路基板と対面し、
前記第2基板に対し略水平に接続された第4基板を備え、
前記第4基板は、前記インバータ回路を操作するための操作部、若しくは前記インバータ回路の動作状態を出力する表示部の内少なくともひとつを備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、強電部に配置された第1回路を有し、
前記主回路基板は、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、
前記直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路と、を前記強電部に配置し、
前記第2基板は、
弱電部に配置された第2回路を備え、
前記第1基板は、
前記主回路基板と前記第2基板に接続され、
前記強電部と前記弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、
前記強化絶縁領域に配置され、前記直流電圧を受電し、前記第1回路および前記第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、
前記強化絶縁領域に配置され、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子と、
を備え、
前記電力変換装置は、さらに、
前記インバータ回路を冷却する放熱フィンと、
前記放熱フィンに固定され、前記インバータ回路の形状に合わせた開口部を備えるモジュールケースと、
前記モジュールケースに接合されるように構成された本体ケースを備え、
前記本体ケースは、前記第1基板を固定する第2固定手段を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、強電部に配置された第1回路を有し、
前記主回路基板は、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、
前記直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路と、を前記強電部に配置し、
前記第2基板は、
弱電部に配置された第2回路を備え、
前記第1基板は、
前記主回路基板と前記第2基板に接続され、
前記強電部と前記弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、
前記強化絶縁領域に配置され、前記直流電圧を受電し、前記第1回路および前記第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、
前記強化絶縁領域に配置され、前記第1回路と前記第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子と、
を備え、
前記電力変換装置は、さらに、
前記インバータ回路を冷却する放熱フィンと、
前記放熱フィンに固定され、前記インバータ回路の形状に合わせた開口部を備えるモジュールケースと、
前記第2基板に対し略水平に接続された第4基板と、
前記放熱フィンに固定され、前記インバータ回路の形状に合わせた開口部を備えるモジュールケースと、
前記モジュールケースに接合されるように構成された本体ケースと、
前記本体ケースに接合されるように構成された前面カバーを備え、
前記前面カバーは、前記第4基板を固定する第3固定手段を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記第1回路は、前記インバータ回路に駆動信号を出力する駆動回路であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記第2回路は、外部装置との間で信号を授受する通信回路であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項2から3の何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記第1基板は、前記主回路基板の、前記インバータ回路が実装された面と反対側の面に配置されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項2から3の何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記主回路基板と前記第1基板の双方と接触し互いに固定する第1固定手段を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項4から5の何れか一項に記載の電力変換装置であって、
前記主回路基板と前記第1基板の双方と接触し互いに固定する第1固定手段を備え
前記放熱フィン、前記モジュールケース、前記第1固定手段、前記主回路基板のうちいずれか3つ以上の部品が、同一ねじで共締めされることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに交流電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用電力変換装置は、数百Vの系統電圧を受電し、用途に応じて数百W~数百kWの電力を出力する。このため、これらの電圧、電流に耐えることが可能な強電系の回路部(以降強電部と呼称する)を有する。一方、当該電力変換装置の運転・停止等の指令は、装置の使用者やPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の外部装置により、当該電力変換装置の外部から与えられる。そのため、装置の使用者と強電部のインターフェースとして、弱電系の回路部(以降弱電部と呼称する)を有しており、種々の信号を強電部と弱電部で授受しながら、モータ駆動用電力変換装置は、使用者の意図した動作を実現する。
【0003】
ここで、モータ駆動用電力変換装置には、当該装置の運用に関わる人々の安全を確保するための処置を講じる必要がある。種々の安全規格(例えばIEC規格やUL規格)では、電気的安全性の一部として、系統電圧やモータの電圧といった強電部と、人が接触する可能性がある弱電部との間に、感電を防止するための措置として強化絶縁と称する電気的絶縁の要求事項が定義されている。強化絶縁を実現するためには、実装基板上では各規格で定められた所定の絶縁距離を設ける必要があるため、基板面積を増大させる要因となっている。そのため、強化絶縁境界部分の面積を可能な限り低減し、電力変換装置を構成することが、基板面積の省スペース化、装置の小型化を実現する上で有効である。
【0004】
特許文献1には、電流制御用マイクロコンピュータ、主制御用マイクロコンピュータの2種のマイコンを備えた電力変換装置における強化絶縁の取り方が記されている。特許文献1の
図1によると、制御用の電源回路はドライブ部に配置され、電源回路で生成された電源電圧が、電流制御用マイクロコンピュータと主制御用マイクロコンピュータに供給されている。また、電流制御用マイクロコンピュータと主制御用マイクロコンピュータ間は、通信回路に設けられたフォトカプラなどの絶縁素子を用いて強化絶縁されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には2種のマイコンが実装されており、電流制御用マイクロコンピュータは強電部に、主制御用マイクロコンピュータは弱電部に、それぞれ配置され、互いに強化絶縁されている。また、電源回路はドライブ部に実装されている。ここで、電源回路の出力には、強電部(電流制御用マイクロコンピュータ)用の電源ラインと、弱電部(主制御用マイクロコンピュータ)用の電源ラインの双方が配置され、強化絶縁境界部がドライブ部、電流制御部と複数の基板を跨いで配置されている。先に述べた様に強化絶縁境界部は可能な限り小さくするのが好ましく、強化絶縁境界部が基板間を跨ぐ構成は、回路基板の大型化を招くという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、強化絶縁境界部が複数の基板を跨ぐ構成を回避し、回路基板の小型化を実現した電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為本発明で述べる電力変換装置では、主回路基板と、第1基板と、第2基板とを有する。主回路基板は、交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流回路と、直流電圧を逆変換し交流電力を出力するインバータ回路とを、強電部に配置し、第2基板は、弱電部に配置された第2回路を備え、第1基板は、主回路基板と第2基板に接続され、強電部に配置された第1回路と、強電部と弱電部とを強化絶縁するための強化絶縁領域と、強化絶縁領域に配置され、直流電圧を受電し、第1回路および第2回路に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランスと、強化絶縁領域に配置され、第1回路と第2回路との間で信号を授受させる絶縁素子とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強化絶縁境界部が複数の基板を跨ぐ構成を回避することが可能となり、回路基板の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における電力変換装置のブロック図である。
【
図2】実施例1における、他の電力変換装置のブロック図である。
【
図3】実施例1における、他の電力変換装置のブロック図である。
【
図4】実施例1における電力変換装置の斜視図である。
【
図5】実施例1における電力変換装置の下面図である。
【
図6】実施例2における電力変換装置の斜視図である。
【
図7】実施例2における他の電力変換装置の斜視図である。
【
図8】実施例3における電力変換装置の斜視図である。
【
図9】実施例3における電力変換装置の下面図である。
【
図10】実施例4における電力変換装置のブロック図である。
【
図11】第4基板を追加した場合の電力変換装置の斜視図である。
【
図12】第4基板を追加した場合の電力変換装置の下面図である。
【
図14】放熱フィンとモジュールケースを示した図である。
【
図18】電源回路に用いられるフライバックコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図17は、特許文献1に記載された電力変換装置のブロック図である。
図17に示す様に従来の電力変換装置は、主回路基板101、第1基板102、第2基板103の3枚で構成される。主回路基板101は、整流回路111、平滑コンデンサ112、インバータ回路113といった主回路部品と、電源回路123が実装され、端子台114からモータへ駆動電流を供給する。第1基板102は、インバータ回路113の電流を検出し、駆動信号をインバータ回路113に出力する駆動回路125が実装される。第2基板103は、外部装置と電力変換装置間の通信を担う通信回路131が実装される。
【0013】
駆動回路125、通信回路131は互いに強化絶縁(図の点線領域)されており、絶縁素子であるフォトカプラ121、122を介して信号を互いに受け渡している。また、電源回路123は、平滑コンデンサ112の両端電圧Vdc1を受電し、駆動回路125に電源電圧Vdc2を、通信回路131に電源電圧Vdc3を供給している。
【0014】
図18に、電源回路123として一般的に用いられるフライバックコンバータの回路図を示す。
図18に示す様に電源回路123は、絶縁トランス124、整流ダイオード201、202、平滑コンデンサ203、204、MOSFET205で構成される。絶縁トランス124は、1次巻線1241の一方の端子に電圧Vdc1が接続され、他方の端子にMOSFET205のドレイン端子が接続される。絶縁トランス124の1次巻線1241には、MOSFET205のスイッチングによりパルス電圧が入力され、絶縁トランス124の巻き数比に応じた電圧を2次巻線1242、1243から出力する。2次巻線1242、1243から出力された電力は、必要に応じて電圧変換回路によって電圧変換され、駆動回路125、通信回路131等の負荷によって消費される。また、強電部に配置されている1次巻線1241、2次巻線1242と、弱電部に配置されている2次巻線1243は互いに強化絶縁される。
【0015】
特許文献1に記載された電力変換装置では、フォトカプラ121、122が第1基板102に実装されているのに対し、電源回路123が主回路基板101に実装されているため、強化絶縁境界部は
図17に示す様に、主回路基板101と第1基板102を跨ぐ形で配置される。従って、強化絶縁境界部を複雑に配置する必要があり、回路基板の大型化を招の要因となっている。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1における電力変換装置のブロック図である。
図1に示す様に実施例1で述べる電力変換装置は、主回路基板101、第1基板102、第2基板103の3枚で構成される。主回路基板101は、整流回路111、平滑コンデンサ112、インバータ回路113といった主回路部品が実装される。つまり、主回路部品は強電部に配置される。第1基板102は、駆動信号をインバータ回路113に出力する駆動回路125、電源回路123の構成部品である絶縁トランス124が実装される。電源回路123の詳細は、
図18に記載した通りであり、電源回路123の構成部品に絶縁トランス124がある。第2基板103は、外部装置と駆動回路間の通信を担う通信回路131が実装される。つまり、通信回路131は、弱電部に配置される。第1基板102には、強化絶縁領域(
図1の点線領域)が設けられ、この強化絶縁領域に、直流電圧を受電し、種々の負荷に電力を供給する電源回路の構成部品である絶縁トランス124と、駆動回路125と通信回路131との間で信号を授受させる絶縁素子であるフォトカプラ121、122とが配置される。強化絶縁領域は、第1基板102上で、強電部と弱電部とを各規格で定められた所定の距離をとることで形成される。
【0017】
これにより、強化絶縁を構成する為の絶縁素子である絶縁トランス124、フォトカプラ121、122が全て同一基板に実装されるため、第1基板102内で強化絶縁が完結する。
【0018】
尚、駆動回路125、通信回路131のいずれか一方は、マイコンを含んで構成する事が望ましい。例えば、駆動回路125にマイコンを実装し、外部装置との通信信号を通信回路131にて処理し、フォトカプラ121、122を介して駆動回路125内に実装されたマイコンと通信しても良い。また、通信回路131にマイコンを実装し、インバータ回路の電流を駆動回路125で演算した後、フォトカプラ121、122を介して通信回路131内に実装されたマイコンに伝達し、当該マイコンからフォトカプラ121、122を介してインバータ回路へ駆動信号を出力しても良い。また、特許文献1と同様に、駆動回路125、通信回路131の双方にマイコンを実装しても良い。
【0019】
また、実施例1の特徴である第1基板上に絶縁トランス124、フォトカプラ121、122が設けられた構成を満足していれば、駆動回路125は、第1基板102上に限らず強電部の何処かに実装されていれば良い。例えば、
図2に示す様に、主回路基板101上に実装しても良いし、
図3に示す様に、主回路基板101に接続される第3基板104を設け、第3基板104に実装しても良い。また、図示しないが通信回路131も同様に、第2基板103上に限らず弱電部の何処かに実装されていれば良い。
【0020】
以上の通り、実施例1によれば、強化絶縁を構成する為の絶縁素子である絶縁トランス124、フォトカプラ121、122が全て同一基板に実装されるため、第1基板102内で強化絶縁が完結し、基板を小型化することができる。
【実施例2】
【0021】
次に、実施例2について述べる。基本的な基板構成は、
図1~3に説明された実施例1と同じであり、本実施例では
図4~
図7を用いて、主回路基板101と第1基板102の接続部に関し具体例を述べる。
【0022】
図4、
図5は本実施例における電力変換装置の基本構成図であり、
図4は
図1に示す基板構成における斜視図、
図5は下面図である。実施例1と同様に、主回路基板101は主に、系統電圧を受電しモータ駆動用の交流電力を出力する電力変換機能を担っており、主回路基板101上に設けられた端子台114で系統電圧を受電し、整流回路111(
図5参照)、平滑コンデンサ112、インバータ回路113を経て端子台114から交流電力をモータに出力する。端子台114と平滑コンデンサ112は主回路基板101の電力変換装置の前面側(
図4の前方向)に配置される。
図13に電力変換装置の斜視図を示しているが、表示部141または操作部142を備えた表示パネルが電力変換装置の前面となる。また、整流回路111とインバータ回路113は電力変換装置の後部側に配置され、後述する放熱フィンと接合される。第1基板102は、駆動回路125、フォトカプラ121、122、電源回路123の構成部品である絶縁トランス124が実装される。
【0023】
本実施例で述べる電力変換装置では、主回路基板101と第1基板102が概ね垂直に立設される。第1基板102は、主回路基板101の整流回路111、インバータ回路113が実装された面と反対側の面に実装される。つまり、第1基板102は、整流回路111、インバータ回路113が実装された部分の電力変換装置前面側に空間を確保する様に、主回路基板101の製品側面側に実装される。また、第1基板102は、主回路基板101の端子台114の側面に対面するように配置される。これにより、主回路基板101に重ねるように平行に、第1基板102を実装する場合と比較し、主回路基板101の製品前面側の空間に、自然対流による気流を確保することができ、整流回路111、インバータ回路113の冷却性能を確保できる。
【0024】
絶縁トランス124は、第1基板102の電力変換装置内側面に配置され、先に述べた自然対流の気流により冷却される。また、第1基板102の実装面積を拡大したい場合は、端子台114の側面に対面する箇所にも、第1基板102を設けても良い。
【0025】
また、主回路基板101と第1基板102間は平滑コンデンサ112の電圧Vdc1(数百V)と、駆動回路125からインバータ回路113に出力される駆動信号等(数V程度)を同時に伝達する必要がある。これらの配線が近接した場合、低電圧ラインへのノイズの重畳による回路の誤動作が懸念される。そのため、
図4に示す様に、低電圧伝送用コネクタ115と高電圧伝送用コネクタ116を設ける等、信号の種類に応じて複数のコネクタを配置しても良い。
【0026】
また、
図4、
図5では主回路基板101と第1基板102間を基板対基板コネクタ(115、116)で接続している。これにより、主回路基板101に対し電力変換装置前面側から第1基板102を差し込むことで電力変換装置を構成できるため、はんだ付けの工程が無く容易に組み立てることができる。しかしながら、主回路基板101と第1基板102が電気的に接続されていれば構成は問わず、例えばピンヘッダを用いてはんだ付けしても良いし、主回路基板101と第1基板102間を直接はんだ付けで接続しても良い。
【0027】
また、
図4、
図5に示す様に、第1基板102は主回路基板101と基板対基板コネクタ115、116で物理的に接続されるが、耐震性を更に向上させる場合は、基板間固定部117、118を設けても良い。具体的には、基板間固定部117、118は、主回路基板101とねじ止め若しくははんだ付けで固定され、第1基板102とはんだ付け、若しくは基板間固定部117、118に設けられたクリップに基板を挟み込む、等の手法により接触して固定される。
【0028】
図6、
図7は実施例2における電力変換装置の基本構成図であり、
図6は、
図2に示す基板構成における斜視図、
図7は、
図3に示す基板構成における斜視図である。
図6に示す様に、
図2に示した基板構成では、
図4、
図5に示す構成と同様に、第1基板102が主回路基板101に対し立設されており、駆動回路125は主回路基板101に実装されている。また、
図7に示す様に、
図3に示した基板構成では、
図4~
図6に示す構成と同様に、第1基板102が主回路基板101に対し立設されており、更に第3基板104は基板対基板コネクタ119により、主回路基板101に対し立設される。これにより、インバータ回路113の製品前面側の自然対流による気流が通る空間を削減せずに駆動回路125を強電部に実装できる。
【0029】
尚、基板対基板コネクタ119は電気的に接続されていれば構成は問わず、例えばピンヘッダを用いてはんだ付けしても良いし、主回路基板101と第3基板104間を直接はんだ付けで接続しても良い。
【0030】
実施例2によれば、強化絶縁を構成する為の絶縁素子である絶縁トランス124、フォトカプラ121、122が全て同一基板に実装されるため、第1基板102内で強化絶縁が完結し、基板を小型化することができる。
【0031】
また、実施例2によれば、第1基板102が主回路基板101に対して概ね垂直に接続されるため、主回路基板101実装される整流回路111、インバータ回路の熱を対流させることができ、冷却効率を向上させることができる。
【実施例3】
【0032】
次に、実施例3について述べる。基本的な基板構成は
図1~
図3に説明された実施例1と同じであり、本実施例では
図8、
図9を用いて第1基板102と第2基板103の接続部に関し具体例を述べる。
【0033】
図8、
図9は、実施例3における電力変換装置の基本構成図であり、
図8は斜視図、
図9は下面図である。
図8、
図9に示す様に、本実施例で述べる電力変換装置は、第2基板103を主回路基板101に対し概ね並行に配置させ、主回路基板101と第2基板103の間に、第1基板102を主回路基板101、第2基板103の双方に対し概ね垂直に配置する。
【0034】
第2基板103は、外部装置と電力変換装置の間の通信を担う通信回路131と、外部装置と電力変換装置のインターフェースである端子台132が実装される。使用者は外部装置と端子台132を電線で接続し、所望の通信系を構築する。
【0035】
ここで、主回路基板101と第2基板103はいずれも端子台(114、132)を備えていることから、使用者の作業性を考慮すると、いずれの基板も製品前面(電力変換装置前面)に対し並行に配置するのが望ましい。また、主回路基板101、第2基板103の間の信号の授受を、第1基板102が担うことで、主回路基板101と第2基板103間の信号伝送手段を簡素化できるため、全体として小型な電力変換装置を構成することが可能となる。
【0036】
また、使用者が端子台132に電線を接続する際、製品前面から後方に向けて外力が加わる。ここで、主回路基板101と第1基板102間を実施例2で述べた手法により固定し、且つ第1基板102と第2基板103間を半田付け、ピンヘッダ、基板対基板コネクタ等で固定した場合、当該外力が第2基板103を介して第1基板102、主回路基板101に伝達されるため、基板間の接続部の破損若しくは基板の破損が懸念される。
【0037】
そこで、
図9に示す様に、第1基板102と第2基板103間の信号を、基板対ケーブルコネクタ126、133及びケーブル127を用いて伝送する。これにより第2基板103に加わる外力は第1基板102に影響を及ぼさないため、第1基板102と第2基板103間を固定した場合に比べて、耐久性に優れた電力変換装置を構成することが可能となる。
【0038】
尚、第1基板102と第2基板103間の接続部は、外力を逃げる構成であればケーブルを用いる必要は無く、例えば基板対基板可動(フローティング)コネクタを適用しても良い。
【0039】
また、本実施例では
図1に示した基板構成、
図4に示した、主回路基板101、第1基板102の構成を基に第3基板104の配置について説明したが、
図2、
図3に示した基板構成、
図5、
図6に示した基本構成図に対し第3基板104を設けた場合でも、第1基板102に対し概ね垂直に配置することで同様の効果を得る。
【実施例4】
【0040】
【0041】
図10は、本実施例における電力変換装置のブロック図である。実施例4で述べる電力変換装置では、実施例1~3に述べた電力変換装置に対し、更に表示部141または操作部142を備えた第4基板105が追加されている。
【0042】
表示部141は、周波数、設定値等のデータを表示する7セグLED、インバータが運転中に点灯する運転中ランプ等で構成され、また、操作部142は、インバータを運転する際に押下するRUNキー、インバータを減速・停止する際に押下する停止キー等で構成される。表示部141、操作部142を備えることにより、装置の使用者の作業性が向上する。
【0043】
図11、
図12は、
図1、
図4、
図5、
図8、
図9に示す構成に対し、第4基板を追加した場合の電力変換装置の基本構成図であり、
図11は斜視図、
図12は下面図である。使用者の作業性を考慮すると、表示部141及び操作部142は、主回路基板101、第2基板103と同様に製品前面に対し並行に配置するのが望ましいことから、
図11、
図12に示す様に第4基板105は第2基板103に対し基板対基板コネクタ134を介して概ね並行に接続される。
【実施例5】
【0044】
【0045】
図13は、実施例5における電力変換装置の構成図である。本実施例で述べる電力変換装置では、実施例4に述べた電力変換装置に対し、各基板101~105を保護するケース206~208及び放熱フィン209が追加されている。
【0046】
図14は、
図13から放熱フィン209とモジュールケース208を抜き出し図示した物である。放熱フィン209は、主回路基板101に実装された整流回路111、インバータ回路113から生じた熱を放出する目的で配置されており、整流回路111、インバータ回路113は、放熱フィン209に固定される。また、モジュールケース208は整流回路111、インバータ回路113を放熱フィン209に取り付ける際、取り付け位置を簡単に確定できる様、予め整流回路111、インバータ回路113が実装される部分に開口部が設けられており、放熱フィン209に固定される。
【0047】
ここで、モジュールケース208-放熱フィン209間をねじで固定した場合、当該ねじで他の部品と共締めすることも可能である。例えば、実施例2で述べた基板間固定部117、118と第1基板をねじ止めにより固定する場合、基板間固定部117、118、第1基板102、モジュールケース208、放熱フィン209を同一のねじで締結することでねじ本数を削減できる。
【0048】
尚、
図13、
図14には図示していないが、電力変換装置の放熱性能を更に向上させるため、放熱フィン209に対し、冷却ファンを更に追加しても良い。
【0049】
図15は、
図13から本体ケース207を抜き出し図示した物である。本体ケース207は、各基板101~103を外部から保護しており、モジュールケース208若しくは放熱フィン209と接合されるように構成されている。
【0050】
先に述べた様に第1基板102は、主回路基板101と基板対基板コネクタ115、116若しくは基板間固定部117、118により固定されているが、更に耐震性を補強する場合は、本体ケース207に、第1基板102を固定する固定部2071を設けても良い。具体的には、第1基板102を本体ケース207にねじ止め、若しくは固定部2071に設けられた隙間に挟み込む、等の手法により接触して固定される。また、第2基板103は、本体ケース207にねじ止め、若しくは固定部2072に設けられた隙間に挟み込む、等の手法により固定される。
【0051】
図16は、
図13から前面カバー206を抜き出し図示した物である。前面カバー206は第4基板105、表示部141、操作部142を外部から保護しており、本体ケース207と接合されるように構成されている。また、第4基板105は、前面カバー206に接触して固定され、前面カバー206を本体カバー207に接合した際に、コネクタ134が嵌合する様に構成される。
【符号の説明】
【0052】
101、102、103、104、105:基板
111:整流回路
112:平滑コンデンサ
113:インバータ回路
114、132:端子台
115、116、119、126、133、134:基板間接続部
117、118:基板間固定部
121、122:フォトカプラ
123:電源回路
124:絶縁トランス
1241:1次巻線
1242、1243:2次巻線
125:駆動回路
127:ケーブル
131:通信回路
141:表示部
142:操作部
201、202:整流ダイオード
203、204:平滑コンデンサ
206、207、208:ケース
209:放熱フィン
2071、2072:ケース207に設けられた基板固定部