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  • 特許-燃料改質装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】燃料改質装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 33/00 20060101AFI20240404BHJP
   F23K 5/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F02M33/00 D
F23K5/08 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022547355
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034691
(87)【国際公開番号】W WO2022054271
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501359238
【氏名又は名称】水素パワー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303041928
【氏名又は名称】末松 満
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】阿部 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】阿部 鋼司
(72)【発明者】
【氏名】末松 満
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-147901(JP,A)
【文献】特開2001-201012(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011851(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0265737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 33/00
F23K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置への液体燃料の供給配管のバイパス管に設置され、スリットを有し、該スリットによって該スリットを通過する液体燃料にキャビテーションを生じさせることにより、該液体燃料由来の微細気泡を生じさせるノズルと、
前記バイパス管において前記ノズルの下流側に配置され、前記供給配管から液体燃料を吸引するポンプを備え、該ポンプの下流側が前記供給配管において前記バイパス管の分岐部の流側に接続されることを特徴とする燃料改質装置。
【請求項3】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給路の途中に配置され、液体燃料中に該液体燃料由来の微細気泡を生じさせ、燃焼性の高い燃料に改質してボイラー等の燃焼装置に送出する燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料を燃焼性の高い燃料に改質して燃焼装置に送出する燃料改質装置として、特許文献1には、貯留槽内に外気を供給するためのエアーポンプと、貯留槽の上部に接続されてミスト状の燃料及び気体を排出する排気管と、排気管から排出されたミスト状の燃料及び気体を分離する気液分離器と、気液分離器で分離された燃料を貯留槽内に戻すための燃料戻し管と、気液分離器で分離された気体の浄化を行うエアフィルタ等を備える燃料改質装置が開示される。この燃料改質装置によれば、拡径したバブルを外部へ排出することができると共に、外気を供給することで燃焼事故発生のリスクを低減することができる。
【0003】
しかし、上記特許文献1に記載の燃料改質装置では、気液分離器やエアフィルタを設ける必要があるために製造コストが増加すると共に、酸素等の微細気泡に用いる気体を損失するという問題があった。さらに、気液分離器や、エアフィルタに異常が生じた場合等には、ミスト状の燃料が外部に漏出するおそれも否定できない。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献2において、液体燃料を加圧するポンプと、ポンプによって加圧された液体燃料と、気体とが供給され、液体燃料と気体とを混合撹拌して液体燃料中に気体の微細気泡を生じさせた後貯留槽に吹き込むノズルと、貯留槽に貯留された改質燃料を抜き出して燃焼装置に供給する改質燃料供給手段とを備え、製造コストが低く、燃料漏れ等のリスクを低減し、改質燃料を燃焼装置に安定して効率よく供給することのできる燃料改質装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許5597326号
【文献】日本国実用新案登録第3203452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2記載の燃料改質装置は有効であるが、この装置には液体燃料とは別に気体を供給する必要があると共に、液体燃料と気体とを混合撹拌したり、貯留槽に貯留された改質燃料を抜き出すための手段が必要となり、装置が複雑化するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、液体燃料とは別に気体を供給する必要がなく、構成が簡単で安定して改質燃料を燃焼装置に送出することのできる燃料改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料改質装置は、燃焼装置への液体燃料の供給配管のバイパス管に設置され、スリットを有し、該スリットによって該スリットを通過する液体燃料にキャビテーションを生じさせることにより、該液体燃料由来の微細気泡を生じさせるノズルと、前記バイパス管において前記ノズルの下流側に配置され、前記供給配管から液体燃料を吸引するポンプを備え、該ポンプの下流側が前記供給配管において前記バイパス管の分岐部の上流側に接続されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、液体燃料由来の微細気泡を生じさるため、液体燃料とは別に気体を供給する必要がなく、液体燃料と気体とを混合撹拌したり、貯留槽や貯留槽から改質燃料を抜き出すための手段も不要となる。そのため、装置構成を簡略化することができ、安定して改質燃料を燃焼装置に送出することが可能となる。
また、スリットによって該スリットを通過する液体燃料にキャビテーションを生じさせることにより前記微細気泡を生じさせることができ、簡単な構成で連続して効率よく微細気泡を生じさせることができる。
さらに、前記ノズルを前記供給配管のバイパス管に設置し、該ノズルの下流側に、前記供給配管から液体燃料を吸引するポンプを設け、該ポンプの下流側を前記供給配管に接続してもよい。これにより、ポンプを運転しない場合には、液体燃料をそのまま燃焼装置に送出することができ、安定運転を継続することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、液体燃料とは別に気体を供給する必要がなく、構成が簡単で安定して改質燃料を燃焼装置に送出することのできる燃料改質装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる燃料改質装置の全体構成を示す概略図である。
図2図1の燃料改質装置のノズルを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図3】本発明にかかる燃料改質装置によって液体燃料に生じた微細気泡の粒子径及び数量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかる燃料改質装置の一実施の形態を示し、この燃料改質装置1は、軽油、A重油、灯油等の液体燃料の燃料タンクからボイラー、内燃機関等の燃焼装置への供給配管2に設けたバイパス管3に設置され、供給配管2を流れる液体燃料Lに、該液体燃料L由来の微細気泡を生じさせるノズル4と、ノズル4の下流側にポンプ5と、ポンプ5を駆動するモータ6と、バルブ7、8を備える。
【0016】
ノズル4は、図2に示すように、流入口4b及び流出口4cを有する円筒状の本体4aに円板4dが挿入、固定される。本体4aの内部はテーパ状に形成され、流入口4b側の傾斜面4eの方が、流出口4c側の傾斜面4fよりも傾斜角度が大きい。また、円板4dには、十字状のスリット4gが形成されている。
【0017】
ポンプ5は、供給配管2からバイパス管3へ液体燃料Lを引き込むために設けられ、ポンプ5が停止している場合には、液体燃料Lはバイパス管3を介さないで直接燃料タンクから燃焼装置に送られる。
【0018】
次に、上記構成を有する燃料改質装置1の動作について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0019】
燃料タンクから供給配管2を介して燃焼装置へ液体燃料Lを流すと共に、モータ6によってポンプ5を運転してバイパス管3に液体燃料Lを引き込む。バイパス管3に流入した液体燃料Lは、ノズル4のスリット4gを通過する際にキャビテーションを生じ、液体燃料L由来の微細気泡が生じる。ノズル4スリット4gを通過する際に圧力が急激に低くなったときに、溶存気体だけでなく液体燃料Lそのものが気化して連続して微細気泡が生じる。
【0020】
図3は、燃料改質装置1のバイパス管3を1回通過した液体燃料Lの1mL中の微細気泡の粒子径及び数量を示す。微細気泡の数は合計で3億個を超える。微細気泡は、1μm未満であり、0.2μm(=200nm)以下に集中している。最頻値は、0.103μm(=103nm)である。
【0021】
改質燃料は、バルブ8を通過した後、燃焼装置に供給されて燃焼する。改質燃料は、上述のような微細気泡を含むものであり、燃料の比表面積が大幅に増加しているため、燃料と空気(酸素)の接触面積が大きくなり、燃焼効率が上昇し、完全燃焼が可能となる。また、燃料の比表面積が増加すると燃焼時間が短くなり、炎が広がりにくくなるため、より効率的にエネルギを動力に変換することができる。尚、上記微細気泡は、30秒~1分間程度で浮上・重合して消滅するので、この燃料改質装置1を燃焼装置の直前、特に燃料フィルタと燃焼装置の間に配置することが望ましい。また、燃焼装置での燃料消費量は、燃料改質装置1の燃料処理量よりも小さくすることで、燃料改質装置1の効果を十分に発揮させることができる。
【0022】
液体燃料Lの改質を停止するには、ポンプ5を駆動するモータ6を停止すればよく、これによって液体燃料Lが直接燃焼装置に送られる。また、液体燃料Lの改質中にモータ6が停止してポンプ5の運転が停止した場合でも、液体燃料Lの改質がなされないだけで液体燃料Lはそのまま燃焼装置に送られるので安全である。
【0023】
燃料として軽油を用い、上記構成を有する燃料改質装置1で燃料改質を行った場合と行わない場合とで自動車の走行試験を行ったところ、単位距離当たりの燃料消費量が20.5%程度改善した。また、A重油や灯油を用いた燃焼装置でも同様の効果を奏した。
【0024】
尚、上記実施の形態においては、ノズル4のスリット4gを十字状に形成したが、他の形状のスリットを用いることもできる。また、スリット4gを通過する液体燃料Lにキャビテーションを生じさせることにより微細気泡を生じさせたが、微細気泡を生じさせる手段はこれに限定されず、他の手段を用いることもできる。
【0025】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上述した本発明の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 燃料改質装置
2 供給配管
3 バイパス管
4 ノズル
5 ポンプ
6 モータ
7、8 バルブ
図1
図2
図3