(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】固体絶縁スイッチ
(51)【国際特許分類】
H02H 3/16 20060101AFI20240404BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20240404BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20240404BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240404BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240404BHJP
H03K 17/04 20060101ALN20240404BHJP
H03K 17/081 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
H02H3/16 A
H01H33/59 C
H01H33/59 H
H03K17/08 C
H03K17/16 M
H03K17/687 A
H03K17/04 E
H03K17/081
(21)【出願番号】P 2022562323
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2021003887
(87)【国際公開番号】W WO2021241871
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0065318
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【復代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】シム,ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ウォンヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソンヒ
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-095611(JP,A)
【文献】特開平10-126961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08 - 3/253
H01H 33/28 - 33/59
H03K 17/00 - 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが直列に配置される主回路部と、
一端は前記第1半導体スイッチの前段に接続され、他端は前記第2半導体スイッチの後段に並列接続されるスナバ回路と、
一端は前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチ間の共通接点に接続され、他端は接地に接続されるフリーホイーリング回路とを含
み、
前記スナバ回路のコンデンサは、前記第1半導体スイッチの前段に接続され、
前記スナバ回路の抵抗の一端は、前記コンデンサと直列に接続され、他端は、第2半導体スイッチの後段に接続されるように構成されることを特徴とする、
固体絶縁スイッチ。
【請求項2】
前記固体絶縁スイッチは、A系統とB系統間に接続され、
遮断完了後の電源からの物理的絶縁を確保するように、電源側の前段と後段に並列に接続される第1機械式スイッチをさらに含み、
前記第1半導体スイッチ及び前記第2半導体スイッチの遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により前記第1機械式スイッチを開放して前記固体絶縁スイッチの物理的絶縁を維持することを特徴とする、
請求項1に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項3】
前記第1半導体スイッチは、第1MOSFET素子と第1逆方向ダイオードが並列に接続され、前記第2半導体スイッチは、第2MOSFET素子と第2逆方向ダイオードが並列に接続され、
前記第1MOSFET素子と前記第2MOSFET素子は、N-channel MOSFET素子であり、
前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチは、対向する逆方向に直列接続され、双方向に流れる事故電流を遮断するように構成され、
前記第1逆方向ダイオードのカソードとアノードは、それぞれ前記第1MOSFET素子のドレイン(drain)とソース(source)に接続され、
前記第2逆方向ダイオードのカソードとアノードは、それぞれ前記第2MOSFET素子のドレインとソースに接続されることを特徴とする、
請求項1に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項4】
第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが直列に配置される主回路部と、
一端は前記第1半導体スイッチの前段に接続され、他端は前記第2半導体スイッチの後段に並列接続されるスナバ回路と、
一端は前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチ間の共通接点に接続され、他端は接地に接続されるフリーホイーリング回路とを含み、
前記フリーホイーリング回路は、
前記接地に接続されるように構成される抵抗と、
アノードが前記抵抗に接続され、カソードが前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチ間の共通接点に接続されるように構成される順方向ダイオードとを含むことを特徴とする、
固体絶縁スイッチ。
【請求項5】
前記A系統における事故発生時に、
前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記フリーホイーリング回路と前記第1半導体スイッチの第1ダイオードにより消去され、
前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路により消去されることを特徴とする、
請求項2に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項6】
前記B系統における事故発生時に、
前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記フリーホイーリング回路と前記第2半導体スイッチの第2ダイオードにより消去され、
前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路により消去されることを特徴とする、
請求項2に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項7】
遮断完了後の前記A系統及びB系統からの物理的絶縁を確保するように、前記B系統の前段と後段に並列に接続される第2機械式スイッチをさらに含み、
前記第1半導体スイッチ及び前記第2半導体スイッチの遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により前記第2機械式スイッチをさらに開放して前記固体絶縁スイッチの物理的絶縁を維持することを特徴とする、
請求項2に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項8】
前記固体絶縁スイッチと並列に接続されるアレスタをさらに含み、
前記A系統における事故発生時に、前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路と前記アレスタにより消去され、
前記B系統における事故発生時に、前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路と前記アレスタにより消去されることを特徴とする、
請求項2に記載の固体絶縁スイッチ。
【請求項9】
前記スナバ回路は、
前記スナバ回路のコンデンサ及び前記抵抗と並列に接続される第2コンデンサ及び第2抵抗をさらに含み、
前記第2コンデンサの一端は、前記第1半導体スイッチの前段に接続され、
前記第2抵抗の一端は、前記第2半導体スイッチの後段に接続されることを特徴とする、
請求項
1に記載の固体絶縁スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体絶縁スイッチに関し、より具体的には、半導体を用いた固体絶縁スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から銅ベースの発電機、変圧器、遮断器などの電力機器を用いていた電力系統において、電力用半導体を用いた新たな概念の電力システムの導入により、従来とは異なる方式の保護機器の必要性が高まっている。
【0003】
従来の機械式遮断器においては、系統に故障が発生した場合に、故障判断、遮断器接点ラッチ動作、遮断器接点開放及び接点間アーク消滅から完全に遮断されるまで数十msec以上かかり、その間故障電流が系統に流れる。よって、従来の系統の電力機器は、このような故障電流による熱的、機械的衝撃に耐えれるように設計されることが求められていた。しかし、電力用半導体で構成されている電力変換器を用いた系統においては、銅ベースの電力機器に比べて電流通電容量が非常に少ないので、故障の際に故障電流の高速遮断が一層求められる。
【0004】
また、直流においては、交流とは異なり、電流零点がないので、従来の接点を開放して遮断する方式は、接点開放後に発生するアーク電流を消滅させることが困難である。
【0005】
そこで、半導体を用いた固体絶縁スイッチは、高速電流遮断が可能であるので、上記問題を解決する好ましい方法として提案されている。
【0006】
一般に、半導体素子を用いた固体絶縁スイッチは、電力用半導体素子と、遮断の瞬間に系統のインダクタンスにより蓄積されたエネルギーを消去するためのアレスタとから構成される。
【0007】
図1は従来の固体絶縁スイッチ100を示す回路図である。以下、
図1を参照して、従来の固体絶縁スイッチ100の動作過程について説明する。電源側又は負荷側線路の任意の地点で故障が検出されると、ゲート回路により半導体スイッチ素子101、102がoff状態になる。ここで、両側の系統のインダクタンスL1、L2に蓄積されたエネルギーにより固体絶縁スイッチ100の両端で電圧が上昇し、アレスタ103の動作電圧以上になると、アレスタ103が導通して電圧上昇を抑制し、アレスタ103からエネルギーが発散される。
【0008】
しかし、この場合、アレスタ103のみで系統全体から発生するエネルギーを消去するには限界があり、十分にエネルギーを消去するためには、エネルギー容量が増大するように、アレスタを並列に構成しなければならない。ここで、アレスタ毎に偏差があるので、その不均一により損傷が発生することがあり、また、好ましい電圧のアレスタを選定することも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題及び他の問題を解決するためになされたものであり、直流回路において双方向の事故電流を高速で遮断するために、半導体素子を用いた双方向固体絶縁スイッチを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、事故電流遮断時に系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーから半導体素子を保護するために、スナバ回路と、フリーホイーリング回路とを含む固体絶縁スイッチを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、事故電流遮断後の物理的な絶縁のために、エアギャップスイッチ(機械式スイッチ)を含む固体絶縁スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的又は他の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチは、第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが直列に配置される主回路部と、一端は前記第1半導体スイッチの前段に接続され、他端は前記第2半導体スイッチの後段に並列接続されるスナバ回路と、一端は前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチ間の共通接点に接続され、他端は接地に接続されるフリーホイーリング回路とを含むことを特徴とする。
【0013】
一実施形態において、前記固体絶縁スイッチは、A系統とB系統間に接続され、遮断完了後の電源からの物理的絶縁を確保するように、電源側の前段と後段に並列に接続される第1機械式スイッチをさらに含み、前記第1半導体スイッチ及び前記第2半導体スイッチの遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により前記第1機械式スイッチを開放して前記固体絶縁スイッチの物理的絶縁を維持することを特徴とする。
【0014】
一実施形態において、前記第1半導体スイッチは、第1MOSFET素子と第1逆方向ダイオードが並列に接続され、前記第2半導体スイッチは、第2MOSFET素子と第2逆方向ダイオードが並列に接続され、前記第1MOSFET素子と前記第2MOSFET素子は、N-channel MOSFET素子であり、前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチは、対向する逆方向に直列接続され、双方向に流れる事故電流を遮断するように構成され、前記第1逆方向ダイオードのカソードとアノードは、それぞれ前記第1MOSFET素子のドレイン(drain)とソース(source)に接続され、前記第2逆方向ダイオードのカソードとアノードは、それぞれ前記第2MOSFET素子のドレインとソースに接続されることを特徴とする。
【0015】
一実施形態において、前記スナバ回路のコンデンサは、前記第1半導体スイッチの前段に接続され、前記スナバ回路の抵抗の一端は、前記コンデンサと直列に接続され、他端は、第2半導体スイッチの後段に接続されるように構成されることを特徴とする。
【0016】
一実施形態において、前記フリーホイーリング回路は、前記接地に接続されるように構成される抵抗と、アノードが前記抵抗に接続され、カソードが前記第1半導体スイッチと前記第2半導体スイッチ間の共通接点に接続されるように構成される順方向ダイオードとを含むことを特徴とする。
【0017】
一実施形態において、前記A系統における事故発生時に、前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記フリーホイーリング回路と前記第1半導体スイッチの第1ダイオードにより消去され、前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路により消去されることを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、前記B系統における事故発生時に、前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記フリーホイーリング回路と前記第2半導体スイッチの第2ダイオードにより消去され、前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路により消去されることを特徴とする。
【0019】
一実施形態において、遮断完了後の前記A系統及びB系統からの物理的絶縁を確保するように、前記B系統の前段と後段に並列に接続される第2機械式スイッチをさらに含み、前記第1半導体スイッチ及び前記第2半導体スイッチの遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により前記第2機械式スイッチをさらに開放して前記固体絶縁スイッチの物理的絶縁を維持することを特徴とする。
【0020】
一実施形態において、前記固体絶縁スイッチと並列に接続されるアレスタをさらに含み、前記A系統における事故発生時に、前記B系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路と前記アレスタにより消去され、前記B系統における事故発生時に、前記A系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーは、前記スナバ回路と前記アレスタにより消去されることを特徴とする。
【0021】
一実施形態において、前記スナバ回路は、前記スナバ回路のコンデンサ及び前記抵抗と並列に接続される第2コンデンサ及び第2抵抗をさらに含み、前記第2コンデンサの一端は、前記第1半導体スイッチの前段に接続され、前記第2抵抗の一端は、前記第2半導体スイッチの後段に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明は、直流回路において双方向の事故電流を高速で遮断するために、半導体素子を用いた双方向固体絶縁スイッチを提供することができる。
【0023】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明は、事故電流遮断時に系統のインダクタンス成分により発生するエネルギーから半導体素子を保護するために、スナバ回路と、フリーホイーリング回路とを含む固体絶縁スイッチを提供することができる。
【0024】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明は、事故電流遮断後の物理的な絶縁のために、エアギャップスイッチ(機械式スイッチ)を含む固体絶縁スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来の固体絶縁スイッチ100を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200の回路を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路における正常状態の電流の流れの一例を示す図である。
【
図4a】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図4b】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図4c】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図5a】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図5b】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図5c】両側の系統における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ200回路の具体的な動作の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による回路の両端にエアギャップスイッチを備える例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態によるアレスタをさらに備える例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前述した本発明の目的、それを達成する本発明の構成及びその作用効果は、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明することにより、さらに明確に理解されるであろう。
【0027】
添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明するが、図面番号に関係なく、同一又は類似の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明の実施形態について説明するにあたり、関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の実施形態の要旨を不明にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。さらに、添付図面は本発明の実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示される技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲におけるあらゆる変更、均等物又は代替物が含まれるものと理解すべきである。
【0028】
第一、第二などの序数を含む用語は様々な構成要素の説明に用いられるが、前記構成要素は前記用語により限定されるものではない。前記用語は、一構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられる。
【0029】
また、本明細書における構成要素の「前段」及び「後段」とは、正常状態で電流の流れる方向を基準としたものである。例えば、電源の正極と負極間にスイッチが設置される場合、正常状態においては「電源の正極-スイッチの前段-スイッチ-スイッチの後段-電源の負極」の順に流れる。
【0030】
図1は従来の固体絶縁スイッチ100を示す回路図である。
【0031】
一般に、双方向直流系統において半導体素子を用いた固体絶縁スイッチ100は、事故電流遮断のための電力用半導体モジュール101、102と、事故電流遮断の瞬間に系統のインダクタンス成分L1、L2により発生するエネルギーを消去するためのアレスタ(SA)103とから構成される。
【0032】
ここで、電力用半導体モジュール101、102は、双方向の事故電流を遮断するために対向する逆方向に配置される。また、アレスタ(SA)103は、系統のインダクタンス成分L1、L2により発生するエネルギーが半導体モジュールに流入して半導体素子に損傷を与えることを防止するために、電力用半導体モジュール101、102と並列に接続されるように構成される。
【0033】
以下、
図1を参照して、従来の固体絶縁スイッチ100の動作過程について説明する。電源側又は負荷側線路の任意の地点で故障が検出されると、ゲート回路により半導体スイッチ素子101、102がoff状態になる。ここで、両側の系統のインダクタンス成分L1、L2に蓄積されたエネルギーにより電力用半導体スイッチ101、102の両端で電圧が上昇する。
【0034】
ここで、アレスタ103の動作電圧以上になると、アレスタ103が導通して電圧上昇を抑制し、アレスタ103からエネルギーが発散される。
【0035】
しかし、前述したアレスタ103のみで系統全体から発生するエネルギーを消去するには限界があり、十分にエネルギーを消去するためには、エネルギー容量が増大するように、アレスタを並列に構成しなければならない。ここで、アレスタ毎に偏差があるので、その不均一により損傷が発生することがあり、また、好ましい電圧のアレスタを選定することも困難である。
【0036】
よって、本発明においては、電力用半導体モジュールを用いて双方向直流系統において発生する事故電流を高速で遮断することにより系統の電力機器を保護すると共に、事故電流遮断時に両側の系統のインダクタンス成分によるエネルギーを効果的に消去し、迅速かつ安全に事故電流を遮断することのできる固体絶縁スイッチの回路を提案する。
【0037】
図2は本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200の回路を示す回路図である。
【0038】
図2に示すように、固体絶縁スイッチ200は、A系統1とB系統2間に、第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212が直列に配置される主回路部210を含む。
【0039】
ここで、第1インダクタ(L1)11がA系統1のインダクタンス成分を示し、第2インダクタ(L2)21がB系統2のインダクタンス成分を示す。
【0040】
本発明の実施形態による、
図2の固体絶縁スイッチ200回路において、A系統1を電源側と仮定し、B系統2を負荷側と仮定すると、正常状態における電流は、電源の正極から流出し、負荷を経て電源の負極に流入する流れを形成する。
【0041】
なお、本発明の実施形態によれば、第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212は、それぞれターンオン/ターンオフが可能なN-channel MOSFET素子と逆方向ダイオードが並列に接続されるように構成される。
【0042】
ここで、前述した半導体スイッチの素子は、N-channel MOSFET素子に限定されるものではなく、ゲート電圧によりターンオン/ターンオフが可能なものであれば、例えばIGBT、GTO、IGCTなどのいかなる素子であってもよいことは言うまでもない。
【0043】
ここで、N-channel MOSFET素子と並列に接続されるダイオードは、事故電流遮断時の逆電圧によりMOSFET素子が損傷することを防止するために、逆方向に配置される。また、第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212は、対向する逆方向に直列接続され、双方向に流れる事故電流を全て遮断できるように構成されることを特徴とする。
【0044】
さらに、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路は、コンデンサ(Cs)221と抵抗(Rs)222が直列に配置されるスナバ回路220が主回路部210と並列に接続されるように構成される。ここで、コンデンサ(Cs)221の前段は第1半導体スイッチ211の前段に接続され、コンデンサ(Cs)221に直列接続される抵抗(Rs)222は第2半導体スイッチ212の後段に接続される。
【0045】
このように構成されるスナバ回路220は、B系統2における事故発生時にはA系統1のインダクタンス成分11により発生するエネルギーを消去することができ、A系統1における事故発生時にはB系統2のインダクタンス成分21により発生するエネルギーを消去することができる。
【0046】
例えば、B系統2の任意の線路において事故が発生して事故電流が検出されると、第1半導体スイッチ211のゲート回路により第1半導体スイッチがoff状態になる。ここで、A系統1のインダクタンス成分(L1)11により発生するエネルギーが第1半導体スイッチ211を損傷させるという問題が生じ得る。
【0047】
よって、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200においては、コンデンサ(Cs)221と、抵抗(Rs)222とから構成されるスナバ回路220を第1半導体スイッチ211及び第2半導体スイッチ212と並列に備え、前述したエネルギーにより発生する電流が前記スナバ回路220に流れるようにする。こうすることにより、前記エネルギーは、コンデンサ(Cs)221の内部抵抗と抵抗(Rs)222において消費されるので、半導体スイッチの損傷を防ぐことができる。
【0048】
また、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200は、順方向ダイオード(Dfw)231と抵抗(Rfw)232が直列に接続されるフリーホイーリング回路230をさらに含むように構成される。
【0049】
ここで、抵抗(Rfw)232の一端は回路の接点に接続され、前記順方向ダイオード(Dfw)231のカソードは抵抗(Rfw)232の他端に接続され、アノードは第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212間の共通接点に接続される。
【0050】
このように構成されるフリーホイーリング回路230は、B系統2における事故発生時にはB系統2のインダクタンス成分21により発生するエネルギーを消去することができ、A系統1における事故発生時にはA系統1のインダクタンス成分11により発生するエネルギーを消去することができる。
【0051】
例えば、B系統2の任意の線路において事故が発生して事故電流が検出されると、第1半導体スイッチ211のゲート回路により第1半導体スイッチがoff状態になり、B系統2のインダクタンス成分21によりエネルギーが蓄積される。
【0052】
ここで、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路においては、前記エネルギーにより発生する電圧により流れる電流が前述したフリーホイーリング回路230に流れ、フリーホイーリング回路230の抵抗(Rfw)232及びダイオード(Dfw)231、並びに第2半導体スイッチ212の第2ダイオードにおいてエネルギーが消費される。
【0053】
また、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200は、事故電流遮断完了後の電源からの物理的絶縁を確保するために、電源側の前段と後段に並列に接続される第1エアギャップスイッチ(第1機械式スイッチ)240をさらに含むように構成される。
【0054】
第1半導体スイッチ211及び第2半導体スイッチ212の遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により第1エアギャップスイッチ240を開放して固体絶縁スイッチ200の物理的絶縁を維持する。
【0055】
図3~
図5は本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路における正常状態と故障発生による具体的な動作の一例を示す図である。
【0056】
まず、
図3は本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路における正常状態の電流の流れの一例を示す図である。
【0057】
図3の回路において、A系統1を電源側と仮定し、B系統2を負荷側と仮定すると、回路の電源の正極から流出した電流は、電源側のインダクタンス成分を示す第1インダクタ(L1)11を経て、双方向通電が可能な第1半導体スイッチ211及び第2半導体スイッチ212を介して、負荷側のインダクタンス成分を示す第2インダクタ(L2)21を経て、電源の負極に流入する正常な電流の流れを形成する。
【0058】
図4aに示すように、B系統2の任意の地点において事故が発生すると、事故電流を検知した半導体スイッチがturn-offし、事故電流が直ちに遮断される。
【0059】
ここで、
図4bに示すように、第1半導体スイッチ211が瞬間的にturn-offすると、A系統1のインダクタ11により正常電流の流れと同一方向のエネルギーが発生して第1半導体スイッチ211に流入し、半導体素子に損傷を与える。
【0060】
しかし、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200の回路においては、第1半導体スイッチ211に備えられる逆方向ダイオードにより、前記エネルギーによる電流は、第1半導体スイッチ211に向かうのではなく、第1半導体スイッチ211と並列に接続されるスナバ回路220に流れる。すなわち、前記電流は、スナバ回路220のコンデンサ(Cs)221と抵抗(Rs)222に流れるので、前記エネルギーは、コンデンサ(Cs)221の内部抵抗と抵抗(Rs)222により完全に消失する。
【0061】
一方、B系統2のインダクタ21に蓄積されたエネルギーにより発生する電流は、一端は第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212間の共通接点に接続され、他端は接地に接続されるフリーホイーリング回路230に流れる。すなわち、前記電流は、フリーホイーリング回路230の抵抗(Rfw)232とダイオード(Dfw)231を経て、第2半導体回路212のダイオードに流れる。こうすることにより、前記エネルギーは、フリーホイーリング回路230の抵抗(Rfw)232、ダイオード(Dfw)231、及び第2半導体回路212のダイオードにおいて消失する。
【0062】
最後に、
図4cに示す第1エアギャップスイッチ(第1機械式スイッチ)240を開放し、電源からの完全な物理的絶縁を行う。
【0063】
一方、
図5a~
図5cはA系統1における短絡事故発生時の固体絶縁スイッチ220回路における電流の流れを示す図である。この場合は、A系統1が負荷側であり、B系統2が電源側である。
【0064】
図5aに示すように、A系統1の任意の地点において事故が発生すると、事故電流を検知した半導体スイッチがturn-offし、事故電流が直ちに遮断される。
【0065】
ここで、
図5bを参照して、電流の流れについて説明する。第2半導体スイッチ212が瞬間的にturn-offすると、B系統2のインダクタンス成分(L2)21により蓄積されたエネルギーが第2半導体スイッチ212に流入し、半導体素子に損傷を与える。
【0066】
しかし、第2半導体スイッチ212に備えられる逆方向ダイオードにより、前記エネルギーによる電流は、第2半導体スイッチ212に向かうのではなく、第2半導体スイッチ212と並列に接続されるスナバ回路220に流れる。すなわち、前記電流は、スナバ回路220の抵抗(Rs)222とコンデンサ(Cs)221に流れ、前記エネルギーは、抵抗(Rs)222とコンデンサ(Cs)221の内部抵抗により完全に消失する。
【0067】
一方、A系統1のインダクタ11に蓄積されたエネルギーにより発生する電流は、一端は第1半導体スイッチ211と第2半導体スイッチ212間の共通接点に接続され、他端は接地に接続されるフリーホイーリング回路230に流れる。すなわち、前記電流は、フリーホイーリング回路230の抵抗(Rfw)232とダイオード(Dfw)231を介して、第1半導体回路211のダイオードに流れる。
【0068】
こうすることにより、前記エネルギーは、フリーホイーリング回路230の抵抗(Rfw)232、ダイオード(Dfw)231、及び第1半導体回路211のダイオードを経て消失する。
【0069】
最後に、
図5cに示す第1エアギャップスイッチ240を開放し、電源からの物理的絶縁を行う。
【0070】
前述したように、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200に備えられるスナバ回路220は、B系統2における短絡事故発生時にはA系統1のインダクタンス成分によるエネルギーを消去することができ、A系統1における短絡事故発生時にはB系統2のインダクタンスによるエネルギーを消去することができる。
【0071】
また、固体絶縁スイッチ200に備えられるフリーホイーリング回路230は、B系統2における短絡事故発生時にはB系統2のインダクタンス成分によるエネルギーを消去することができ、A系統1における短絡事故発生時にはA系統1のインダクタンスによるエネルギーを消去することができる。
【0072】
すなわち、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200の回路構造によれば、A系統1又はB系統2における短絡事故発生時に両側の系統のインダクタンス成分によるエネルギーを消去するために、両側にそれぞれスナバ回路とフリーホイーリング回路を別途に備えなくても、両側の系統のインダクタンス成分によるエネルギーが同時に安定して消去されるという効果がある。
【0073】
一方、
図6は本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200回路の両端にエアギャップスイッチ(機械式スイッチ)を備える例を示す図である。
【0074】
新再生のように電源が両方に存在する場合は、事故電流遮断後に両側の電源からの物理的絶縁を確保するために、第1エアギャップスイッチ(第1機械式スイッチ)240及び第2エアギャップスイッチ(第2機械式スイッチ)241がA系統1及びB系統2の前段及び後段にそれぞれ並列に接続されるように構成する。
【0075】
よって、第1半導体スイッチ211及び第2半導体スイッチ212の遮断動作後に、別途の信号又は時間遅延により第1エアギャップスイッチ240及び第2エアギャップスイッチ241を同時に開放して双方向の物理的絶縁を維持する。
【0076】
図7は本発明の実施形態によるアレスタをさらに備える例を示す図である。
【0077】
図7に示すように、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200は、前段はスナバ回路220の前段に、後段はスナバ回路220の後段に並列に接続されるアレスタ250をさらに含む。
【0078】
よって、B系統2における事故電流発生時に、A系統1のインダクタンス成分により発生するエネルギーの電流がスナバ回路220とアレスタ250に分かれて流れるので、スナバ回路220の負担が低減される。
【0079】
また、前記アレスタ250は、A系統1における事故電流発生時には、B系統2のインダクタンス成分により発生するエネルギーをスナバ回路220と共に消去する機能を果たす。
【0080】
一方、図示していないが、本発明の実施形態による固体絶縁スイッチ200のスナバ回路220は、コンデンサ(Cs)221及び抵抗(Rs)222と並列に接続される第2コンデンサ及び第2抵抗をさらに含むように構成されてもよい。ここで、第2コンデンサの一端は第1半導体スイッチ211の前段に接続され、第2抵抗の一端は第2半導体スイッチ212の後段に接続される。
【0081】
こうすることにより、B系統2における事故発生時に、A系統1のインダクタンス成分により発生するエネルギーによる電流がスナバ回路220内の2つのコンデンサと2つの抵抗にそれぞれ分けて流れる。このような回路構造により、時定数を調節して事故電流発生時のエネルギーを迅速に消去できるという利点がある。
【0082】
前述したように、本発明による固体絶縁スイッチは、半導体スイッチ素子を用いて双方向の事故電流を遮断すると共に、遮断時に両側の系統のインダクタンスによるエネルギーを同時に安定して消去して半導体スイッチを保護するためのスナバ回路及びフリーホイーリング回路を含むように構成される。
【0083】
また、前述したスナバ回路及びフリーホイーリング回路は、モジュールの形態で構成され、固体絶縁スイッチの付属装置として構成される。すなわち、系統のインダクタンスの状況に応じて、固体絶縁スイッチ回路にモジュールの形態で追加装着又は組み合わせが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0084】
前述した実施形態は本発明を実現する実施形態であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な変更及び変形を行うことができるであろう。よって、本発明に開示される実施形態は、本発明の技術思想を説明するためのものであり、これらの実施形態に本発明が限定されるものではない。すなわち、本発明の保護範囲は請求の範囲により解釈されるべきであり、それと均等の範囲内のあらゆる技術思想が本発明に含まれるものと解釈されるべきである。