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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
   F16B 45/02 20060101AFI20240404BHJP
   A45C 13/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16B45/02 Z
A45C13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022577963
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003336
(87)【国際公開番号】W WO2022162890
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堺 朝比古
(72)【発明者】
【氏名】吉江 謙一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直幸
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-240634(JP,A)
【文献】実開平01-014013(JP,U)
【文献】特開昭60-215117(JP,A)
【文献】特開平11-131821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 45/02
A45C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結具本体(10)および取付体(30)の二部材で構成される連結具であって、
前記連結具本体(10)および前記取付体(30)の一方は一対の連結穴部(15,15)を有し、
前記連結具本体(10)および前記取付体(30)の他方は前記一対の連結穴部(15,15)の間に配置されて当該一対の連結穴部(15,15)と連結する連結軸部(35)を有し、
前記連結具本体(10)は、前記取付体(30)に対して、前記連結軸部(35)の軸回りの回転方向(R)に回転可能に且つ前記一対の連結穴部(15,15)の間の間隙(16)に沿った揺動方向(A)に揺動可能に配置され、
前記一対の連結穴部(15,15)には、円形開口(191)を有する連結穴(19)が形成され、
前記連結軸部(35)には、前記連結部(15,15)に対する上下左右の遊びをもって前記連結穴(19)に配置されると共に当接平坦面(1)を有する球状の膨出部(37)が形成され、
前記連結穴部(15,15)は、前記連結穴(19)の一部を形成すると共に、前記連結具本体(10)および前記取付体(30)の引張方向において、前記膨出部(37)の前記当接平坦面(41)側に突出して配置される当接平坦面(21)を有し、
前記連結穴部(15,15)の前記当接平坦面(21)および前記膨出部(37)の前記当接平坦面(41)には、前記引張方向において、当該引張方向に直交し且つ前記一対の連結穴部(15,15)の間の間隙(16)に沿った方向に連続して互いに面接触する連結具。
【請求項2】
前記連結具本体(10)が前記一対の連結穴部(15,15)を有し、
前記取付体(30)が前記連結軸部(35)を有する請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記連結軸部(35)は、端部が前記膨出部(37)に連続し且つ前記一対の連結穴部(15,15)の間の間隙(16)に配置された軸部(36)を有し、
前記軸部(36)の周面から前記膨出部(37)の当接平坦面(41)の少なくとも一部(42)の縁部までの寸法は、前記一対の連結穴部(15,15)の間の間隙寸法(W
)から前記軸部(36)の径寸法(D)を差し引いた寸法よりも大きい請求項1または請求項2に記載の連結具。
【請求項4】
前記一対の連結穴部(15,15)には、その前記当接平坦面(21)と前記連結穴部(15,15)の外側面(151)とに連続する傾斜面(22)が形成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項5】
前記連結具本体(10)は、前記一対の連結穴部(15,15)に対して下方に設けられたフック部(11)を有し、
前記取付体(30)は、前記連結軸部(35)に対して上方に設けられた取付環部(31)を有し、
前記一対の連結穴部(15,15)および前記膨出部(37)の当接平坦面(21,41)は、上下方向に直交する方向に沿った面内に形成される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッグ類におけるベルトや紐として用いられるなす環などの連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、D環等の係合環が係合されるフック部を有した本体部と、ベルトや紐に取り付けられる取着体部とを有した合成樹脂製のなす環が知られている(特許文献1参照)。
取着体部は、その基部から下方に延びた首部と、首部に連続した略球状の膨出部とを有している。
【0003】
本体部は、そのフック部が下方に連続した基部と、この基部から上方に延出した一対の係止体とを有している。一対の係止体には横方向に貫通した円形状の貫通孔がそれぞれ形成されている。本体部は、前述した貫通孔に取着体部の膨出部が配置され、一対の係止体の間に取着体部の首部が配置されることで取着体部と連結する。この本体部は、取着体部に対して、首部の軸回りの回転方向と、一対の係止体の間に形成される間隙に沿った揺動方向との二方向に可動である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平4-35161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したように本体部および取着体部の二部材構成で本体部が二方向に可動とされるなす環においては、取着体部の膨出部の上部には首部の軸方向に交差する方向に沿った平坦面が形成されている一方、本体部の係止体の上部には貫通孔を画成する円弧面が形成されている。このため、なす環に上下方向の引張力が加えられた際、本体部における前記円弧面に対しては、取着体部における前記平坦面の縁部の一部が接触するだけであるので、なす環の引張耐性を向上させることが困難である。
【0006】
本発明の目的は、引張耐性を向上できるなす環などの連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の連結具は、連結具本体および取付体を備え、前記連結具本体および前記取付体の一方は一対の連結穴部を有し、前記連結具本体および前記取付体の他方は前記一対の連結穴部の間に配置されて当該一対の連結穴部と連結する連結軸部を有し、前記連結具本体は、前記取付体に対して、前記連結軸部の軸回りの回転方向および前記一対の連結穴部の間の間隙に沿った揺動方向に可動に配置され、前記一対の連結穴部には連結穴が形成され、前記連結軸部には前記連結穴に配置される膨出部が形成され、前記連結穴部および前記膨出部には、前記連結具本体および前記取付体の引張方向において互いに面接触する当接平坦面が形成されている。
本発明の連結具によれば、連結具の使用時に連結具本体および取付体に引張力が加えられた場合には、連結穴部および膨出部の当接平坦面同士が面接触するので大きな引張力に耐えることができる。
【0008】
本発明の連結具では、前記当接平坦面は、前記引張方向に直交し且つ前記一対の連結穴部の間の間隙に沿った方向に連続して互いに面接触してもよい。
【0009】
本発明の連結具では、前記連結具本体が前記一対の連結穴部を有し、前記取付体が前記連結軸部を有してもよい。
【0010】
本発明の連結具では、前記連結軸部は、端部が前記膨出部に連続し且つ前記一対の連結穴部の間の間隙に配置された軸部を有し、前記軸部の周面から前記膨出部の当接平坦面の少なくとも一部の縁部までの寸法は、前記一対の連結穴部の間の間隙寸法から前記軸部の径寸法を差し引いた寸法よりも大きくてもよい。
【0011】
本発明の連結具では、前記当接平坦面(連結具本体の当接平坦面)は、前記当接平坦面(取付体の当接平坦面)と面接触可能に当該当接平坦面(取付体の当接平坦面)側に突出して配置されてもよい。
【0012】
本発明の連結具では、前記一対の連結穴部には、その前記当接平坦面と前記連結穴部の外側面とに連続する傾斜面が形成されていてもよい。
【0013】
本発明の連結具では、前記連結具本体は、前記一対の連結穴部に対して下方に設けられたフック部を有し、前記取付体は、前記連結軸部に対して上方に設けられた取付環部を有し、前記一対の連結穴部および前記膨出部の当接平坦面は、上下方向に直交する方向に沿った面内に形成されてもよい。
【0014】
本発明によれば、引張耐力を向上できるなす環などの連結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る連結具を示す正面図。
図2】前記実施形態に係る連結具を示す側面図。
図3】前記実施形態に係る連結具の要部を側方から示す説明図。
図4】前記実施形態に係る連結具の要部を上方から示す説明図。
図5】前記実施形態に係る連結具の要部を上方から示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図5において、本実施形態に係る連結具1は、例えば肩掛けベルトを有するショルダーバックなどにおいて肩掛けベルトを着脱するなす環などとして用いられるものであり、合成樹脂製の連結具本体10および取付体30を備えている。
以下の説明において、X軸方向を連結具1の上下方向とし、X軸方向に直交するY軸方向を連結具1の左右方向とし、X,Y軸方向に直交するZ軸方向を連結具1の前後方向(厚さ方向)とする。
【0017】
連結具本体10は、バッグ類に装着されたD環などの係合環が掛けられるフック部11と、フック部11に対して上方に設けられた一対の連結穴部15,15とを有しており、連結穴部15,15が取付体30の後述する連結軸部35と連結する。
【0018】
フック部11は、その基部12から下方に延出したフック片13および抜止片14を有している。抜止片14はY軸方向に揺動可能であり、その先端は前記揺動によってフック片13の先端に当接および離間する。フック部11には、フック片13および抜止片14の先端の間に前述した係合環を通すことで当該係合環が掛けられる。
【0019】
連結穴部15,15は、Z軸方向において間隙16を隔てて互いに対向して配置されており、互いに概略同様に形成されている。連結穴部15は、基部12から上方に延出した左右一対の側片部17,17と、側片部17,17に連続した当接片部18とを有しており、側片部17,17および当接片部18によって円形開口191を有した連結穴19を形成している。連結穴19はZ軸方向に貫通している。なお、円形開口191は、真円に限らず楕円形状であってもよく、本実施形態では、当接片部18が後述するように厚肉化されているので完全な円形状とはならない。また、連結穴19の開口は、円形開口191でなくてもよく、多角形状等の種々の開口形状であってもよい。
【0020】
図3に示すように、当接片部18は下方側(当接平坦面41側、フック部11側)に突出している。つまり、本実施形態では、当接片部18は側片部17,17よりも厚肉とされており、このため、当接平坦面21は、後述する当接平坦面41と面接触できるようにフック部11側に突出して配置されている。当接片部18のうち連結穴19を形成する面は、X軸方向に直交する方向に沿った矩形面状の当接平坦面21と、当接平坦面21のZ軸方向における外側の縁部および連結穴部15の外側面151に連続した傾斜面22とによって形成されている。傾斜面22は、当接平坦面21から外側面151に向かって斜め上向きに傾斜している。
【0021】
取付体30は、ベルトや紐などが取り付けられる取付環部31と、取付環部31の基部32から下方に延出した連結軸部35とを有している。連結軸部35は、基部32に連続したX軸方向に沿った略楕円柱状の軸部36と、軸部36の下端部(端部)に連続した略球状の膨出部37とを有している。
【0022】
に示すように、軸部36のX軸方向における長さ寸法は、当接片部18のX軸方向における厚さ寸法よりも大きい。また、図4に示すように、軸部36の軸心Cを通るZ軸方向における寸法D(径寸法)は、間隙16のZ軸方向における幅寸法W(間隙寸法)よりも小さい。この軸部36は、連結穴部15,15の間の間隙16に配置されている。なお、本実施形態では、幅寸法Wは間隙16の最大幅部分における寸法である。
【0023】
膨出部37は、連結穴部15,15に対する上下左右の遊び(隙間)をもって連結穴19に配置されている。膨出部37の上部には、X軸方向に直交する方向に沿った当接平坦面41が形成されており、当接平坦面41は当接片部18の当接平坦面21に対してX軸方向に対向する。
【0024】
当接平坦面41は、図4に示すように軸部36の周囲に配設されており、四つの角部42を有して角丸四角形状に形成されている。当接平坦面41の対角線上に位置する角部42間の寸法は、間隙16の幅寸法Wよりも大きい。このため、軸部36に対してZ軸方向における両側にある状態の角部42は、当接片部18の下方に配置され、図3に示すように当接平坦面21に対してX軸方向に対向する。このため、連結具本体10および取付体30に引張方向(X軸方向)の引張力が加えられた際に、当接平坦面41は当接平坦面21とY軸方向(X軸方向に直交し且つ一対の連結穴部15,15の間の間隙16に沿った方向)に連続して面接触し、この面接触によって連結具本体10の取付体30に対する分離を抑制する。
【0025】
軸部36の周面から当接平坦面41の角部42(突部)の縁部までの寸法S(軸心Cを通る直線上の寸法)は、間隙16の幅寸法Wから軸部36の寸法Dを差し引いた寸法よりも大きい。このため、例えば図5に示すように、軸部36がZ軸方向に移動して連結穴部15,15の一方側に寄った状態となっても、軸部36に対してZ軸方向における両側にある角部42が連結穴部15,15の当接平坦面21に面接触可能な配置を維持する。また、連結具本体10が取付体30に対して軸部36の軸回りの回転方向Rに回転しても、当接平坦面41の対角線上にある角部42が連結穴部15,15の当接平坦面21に対向し続ける。
【0026】
前述したように、連結具1は、連結具本体10および取付体30の二部材で構成されており、連結具本体10は、取付体30に対して、回転方向Rおよび間隙16に沿った揺動方向Aの二方向に可動に配置されている。
【0027】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る連結具1によれば、連結具本体10および取付体30に引張力が加えられた場合には、連結穴部15,15に形成された当接平坦面21と、膨出部37に形成された当接平坦面41とがY軸方向に連続して互いに面接触するので、例えば当接平坦面21が円弧面で形成される場合と比べて、接触領域が大きく、X軸方向に交差する方向の力も生じにくいので、連結穴部15,15および連結軸部35の連結状態を好適に保つことができ、連結具1の引張耐性を向上できる。
【0028】
連結軸部35は、端部が膨出部37に連続し且つ連結穴部15,15の間の間隙16に配置された軸部36を有し、軸部36の周面から膨出部37の当接平坦面41の少なくとも一部(角部42)の縁部までの寸法Sは、間隙16の幅寸法Wから軸部36の寸法Dを差し引いた寸法よりも大きい。このため、間隙16において軸部36がZ軸方向に移動しても、前記一部が当接平坦面21に面接触可能な配置となるので、連結具本体10および取付体30の分離を抑制できる。
【0029】
当接平坦面21は、当接平坦面41と面接触可能に当該当接平坦面41側(フック部11側)に突出して配置されている。
【0030】
連結穴部15,15には、その当接平坦面21と連結穴部15,15の外側面151とに連続する傾斜面22が形成されている。このように、連結穴部15,15に当接平坦面21を形成しても、外側面151には当接平坦面21ではなく傾斜面22を連続させるので、連結穴19の外側面151における開口を円形状の円形開口191とすることができ、また他の開口形状にも対応可能とすることができて、外観の向上を図ることができる。
【0031】
連結穴部15,15および膨出部37の当接平坦面21,41は、X軸方向に直交する方向に沿った面内に形成されている。このため、連結具本体10および取付体30がX軸方向に引張され、当接平坦面21,41が圧接しても、X軸方向に交差する方向の力が生じにくい連結具1を構成できる。
【0032】
[変形例]
前記実施形態では、連結具本体10が連結穴部15,15を有し且つ取付体30が連結軸部35を有しているが、これとは逆に、連結具本体10が連結軸部35を有し且つ取付体30が連結穴部15,15を有してもよい。
【0033】
前記実施形態では、当接平坦面41が四つの角部42を有して角丸四角形状に形成されているが、これに限らない。当接平坦面41は、当接平坦面21に面接触可能な形状であればよく、前記実施形態とは異なる多角形状であってもよく、また円形状であってもよい。
【0034】
前記実施形態では、当接平坦面21と外側面151との間に傾斜面22が形成されているが、この傾斜面22を省略し、当接平坦面21を外側面151に連続させてもよい。
【0035】
前記実施形態では、当接平坦面21,41はX軸方向に直交する方向に沿って形成されているが、これに限らない。当接平坦面21,41は互いに面接触可能な平坦面であればよく、このため、X軸方向に交差する方向に沿って形成されていてもよい。
【0036】
前記実施形態では、連結具本体10を下方に配置し且つ取付体30を上方に配置して説明したが、実際に使用される連結具1は、前述した配置に限らず、上下逆向きに使用されることもある。
【符号の説明】
【0037】
1…連結具、10…連結具本体、11…フック部、12,32…基部、13…フック片、14…抜止片、15…連結穴部、151…外側面、16…間隙、17…側片部、18…当接片部、19…連結穴、191…円形開口、21,41…当接平坦面、22…傾斜面、30…取付体、31…取付環部、35…連結軸部、36…軸部、37…膨出部、42…角部、A…揺動方向、C…軸心、D,S…寸法、R…回転方向、W…幅寸法。
図1
図2
図3
図4
図5