(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240404BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240404BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L21/56 R
C09J7/35
H05K3/28 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003428
(22)【出願日】2023-01-13
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520378377
【氏名又は名称】毅力科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ELEADTK CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】劉 劭祺
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-124413(JP,A)
【文献】特開2009-278058(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107969073(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0343004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
C09J 7/35
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記電子モジュール及び前記電子モジュール上に配置された保護材をチャンバ内に配置することであって、前記保護材と前記電子モジュールとが互いに接触している、配置することと、
第1の加熱手順を前記チャンバ内の前記保護材に実施して、前記電子モジュール上に配置された前記保護材を軟化させ、第1の増圧手順を前記チャンバに実施することであって、前記第1の増圧手順における圧力が1気圧より大きい、実施することと、
前記保護材を軟化させた後、前記第1の加熱手順を維持しながら揺動式減圧手順を前記チャンバに実施することであって、前記揺動式減圧手順が前記チャンバ内の圧力を1気圧より小さい複数の低圧の間で交互に変化させることを含む、実施することと;
前記第1の加熱手順を維持しながら第2の増圧手順を前記チャンバに実施することであって、前記第2の増圧手順における圧力が前記第1の増圧手順における前記圧力より小さく、1気圧より大きい、実施することと、
第2の加熱手順を前記チャンバ内の前記保護材に実施して、前記電子モジュールを覆っている前記保護材を硬化させ、これによって、前記電子モジュールを覆っている前記保護フィルムを形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記揺動式減圧手順において、前記低圧が、基準低圧及び複数の可変低圧を含み、前記基準低圧の圧力が、前記可変低圧の圧力より大きく、前記可変低圧が、時間経過に伴って徐々に低下していき、前記可変低圧が、前記基準低圧と交互した結果、隣接する2つの時系列に含まれる前記可変低圧のうちの2つが、最初に前記基準低圧に戻る、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記チャンバが前記可変低圧のそれぞれに留まっている時間が、前記チャンバが前記基準低圧に留まっている時間より長い、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記第1の増圧手順及び前記揺動式減圧手順を実施した後で、前記第2の増圧手順を実施する前に、前記第1の増圧手順及び前記揺動式減圧手順を前記チャンバに繰り返し実施することをさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
2回目の前記揺動式減圧手順における前記低圧の圧力差が、1回目の前記揺動式減圧手順における前記低圧の前記圧力差より大きい、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記第1の増圧手順及び前記揺動式減圧手順を前記チャンバに繰り返し実施した後で、前記第2の増圧手順を実施する前に、前記第1の増圧手順及び減圧手順を前記チャンバに実施することであって、前記減圧手順における圧力が前記揺動式減圧手順における圧力より小さい、実施することをさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記チャンバが前記減圧手順における前記圧力に留まっている時間が、前記チャンバが前記揺動式減圧手順における前記圧力に留まっている時間より長い、方法。
【請求項8】
請求項4に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
1回目の前記第1の増圧手順における前記圧力が、2回目の前記第1の増圧手順における前記圧力と同じ又は異なる、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記第2の加熱手順が実施されるとき、同時に、第3の増圧手順が前記チャンバに実施される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記電子モジュールが、複数の電子素子を備え、前記電子モジュールを覆っている前記保護フィルムの表面の外形が、前記電子素子の外形に合致する、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法であって、
前記電子モジュールが、複数の電子素子を備え、前記電子モジュールを覆っている前記保護フィルムの表面が、平坦であり、前記電子素子の外形に合致しない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保護フィルムを形成するための方法に関し、より特定すると、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子デバイス用に使用されるマザーボード上には、サイズが異なる電子素子がある。慣例的な方法は、機械式又は手動式の方法によって保護グルー(protective glue)をマザーボードに付着させて、マザーボード及びマザーボード上の電子素子を保護することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の方法では、保護グルーの密着が困難であるため、大抵の場合、保護グルーとマザーボードとの間又は保護グルーと電子素子との間に気泡が残留する。したがって、前述の方法では、大抵の場合、水蒸気で覆われることになり、これにより、電子素子の可使時間が短くなり、又は信頼性の問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、保護グルーと電子素子との間に気泡が残留する可能性を効果的に低下させることができる、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法を提供する。
【0005】
本開示における電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法は、次のものを含む。電子モジュール及び電子モジュール上に配置された保護材を、チャンバ内に配置する。保護材と電子モジュールとは、互いに接触している。第1の加熱手順をチャンバ内の保護材に実施して、電子モジュール上に配置された保護材を軟化させ、第1の増圧手順をチャンバに実施する。第1の増圧手順における圧力は、1気圧より大きい。保護材を軟化させた後、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに揺動式減圧手順(oscillating decompression procedure)を実施する。揺動式減圧手順は、チャンバ内の圧力を1気圧より小さい複数の低圧の間で交互に変化させることを含む。第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに第2の増圧手順を実施する。第2の増圧手順における圧力は、第1の増圧手順における圧力より小さく、1気圧より大きい。第2の加熱手順をチャンバ内の保護材に実施して、電子モジュールを覆っている保護材を硬化させ、これによって、電子モジュールを覆っている保護フィルムを形成する。
【0006】
本開示の一実施形態において、揺動式減圧手順において、低圧は、基準低圧及び複数の可変低圧を含む。基準低圧の圧力は、可変低圧の圧力の圧力より大きい。可変低圧は、時間経過に伴って徐々に低下していく。可変低圧は、基準低圧と交互した結果、隣接する2つの時系列に含まれる可変低圧のうちの2つが、最初に基準低圧に戻る。
【0007】
本開示の一実施形態において、チャンバが可変低圧のそれぞれに留まっている時間は、基準低圧に留まっている時間より長い。
【0008】
本開示の一実施形態において、第1の増圧手順及び揺動式減圧手順を実施した後で、第2の増圧手順を実施する前に、本方法は、次のことをさらに含む。第1の増圧手順及び揺動式減圧手順を、チャンバに繰り返し実施する。
【0009】
本開示の一実施形態において、2回目の揺動式減圧手順における低圧の圧力差は、1回目の揺動式減圧手順における低圧の圧力差より大きい。
【0010】
本開示の一実施形態において、第1の増圧手順及び揺動式減圧手順をチャンバに繰り返し実施した後で、第2の増圧手順を実施する前に、本方法は、次のことをさらに含む。第1の増圧手順及び減圧手順をチャンバに実施する。減圧手順における圧力は、揺動式減圧手順における圧力より小さい。
【0011】
本開示の一実施形態において、チャンバが減圧手順における圧力に留まっている時間は、チャンバが揺動式減圧手順における圧力に留まっている時間より長い。
【0012】
本開示の一実施形態において、1回目の第1の増圧手順における圧力は、2回目の第1の増圧手順における圧力と同じ又は異なる。
【0013】
本開示の一実施形態において、第2の加熱手順が実施されるとき、同時に、第3の増圧手順がチャンバに実施される。
【0014】
本開示の一実施形態において、電子モジュールは、複数の電子素子を備え、電子モジュールを覆っている保護フィルムの表面の外形は、電子素子の外形に合致する。
【0015】
本開示の一実施形態において、電子モジュールは、複数の電子素子を備え、電子モジュールを覆っている保護フィルムの表面が、平坦であり、電子素子の外形に合致しない。
【発明の効果】
【0016】
上記を踏まえて、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法において、第1の加熱手順をチャンバ内の保護材に実施して、電子モジュール上に配置された保護材を軟化させ、第1の増圧手順をチャンバに実施し、この結果、電子モジュールと保護材との間にある気泡が、保護材の表面に近い位置にまで上昇する。次に、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに揺動式減圧手順を実施する。揺動式減圧手順は、チャンバ内の圧力を1気圧より小さい低圧の間で交互に変化させることを含む。揺動式減圧手順において、保護材の中で表面の近くにある気泡は、チャンバ内の圧力の変化に応じて気泡のサイズが前後に変化することにより、破裂する。次いで、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに第2の増圧手順を実施する。第2の増圧手順における圧力は、第1の増圧手順における圧力より小さく、1気圧より大きい。第2の増圧手順において、軟化した保護材は、圧縮して平坦化することができる。最後に、第2の加熱手順が、電子モジュールを覆っている保護材を硬化させて、電子モジュールを覆っている保護フィルムを形成するように、チャンバ内の保護材に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態による、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法のステップの概略図である。
【
図2A】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの1つの概略図である。
【
図2B】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの1つの概略図である。
【
図2C】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの1つの概略図である。
【
図3A】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの別の1つの概略図である。
【
図3B】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの別の1つの概略図である。
【
図3C】
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの別の1つの概略図である。
【
図4A】
図1の方法における、時間と温度との関係の概略図である。
【
図4B】
図1の方法における、時間と圧力との関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本開示の一実施形態による、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法のステップの概略図である。
図2A~
図2Cは、
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの1つの概略図である。
図3A~
図3Cは、
図1において電子モジュール上に保護フィルムを形成する流れ図のうちの別の1つの概略図である。
図4Aは、
図1の方法における、時間と温度との関係の概略図である。
図4Bは、
図1の方法における、時間と圧力との関係の概略図である。
【0019】
まず
図1、
図2A及び
図3Aを参照すると、この実施形態における電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法100は、次のステップを含む。最初に、ステップ110において、電子モジュール10並びに電子モジュール10上に配置された保護材20(
図2A)及び22(
図3A)を、チャンバ30内に配置する。保護材20及び22と、電子モジュール10とは、互いに接触している。
【0020】
図2Aにおいて、電子モジュール10は、回路基板12及び回路基板12上に配置された複数の電子素子13~17を備え、電子素子13~17は、異なる高さを有する。保護材20は、電子素子13~17より上に配置されており、保護材20の範囲は、回路基板12の範囲を超えない。
【0021】
図3Aの実施形態と
図2Aの実施形態との差異は、
図3Aにおいては、保護材22が多層構造であってもよく、この結果、保護材22がより厚い厚さを有するという点である。
【0022】
次に、ステップ120において、第1の加熱手順をチャンバ30内の保護材20及び22に実施して、電子モジュール10上に配置された保護材20及び22を軟化させ、第1の増圧手順をチャンバ30に実施する。第1の増圧手順における圧力は、1気圧より大きい。この段階における第1の加熱手順は、保護材20及び22を軟化させ、
図3Bの多層構造保護材22は、一体化する。
図2B及び
図3Bに示されているように、軟化した保護材20及び22は、回路基板12と接触するようにつぶれ、複数の気泡40が保護材20及び22と、電子素子13~17との間に形成される。第1の増圧手順は、電子モジュール10と保護材20及び22との間にある気泡40が、
図2B及び
図3Bに示された位置から、保護材20及び22の表面に近い位置にまで徐々に上昇していくことができるように構成される。
【0023】
この実施形態において、第1の加熱手順の温度は、例えば130度であり、圧力は、例えば11気圧であり、すなわち、外部応力との圧力差は、10気圧である。第1の増圧手順は、10~25分間実施することができる。当然ながら、第1の増圧手順及び第1の加熱手順の値は、前述の値に限定されない。
【0024】
次いで、ステップ130において、保護材20及び22を軟化させた後、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバ30に揺動式減圧手順を実施する。揺動式減圧手順は、チャンバ30内の圧力を1気圧より小さい複数の低圧の間で交互に変化させることを含む。
【0025】
図4Bに示されているように、圧力は最初に1気圧未満に低下し、次いで、1気圧未満であるという前提のもとで、圧力の大きさを変化させるための揺動を実施し、次いで、圧力を高圧に上昇させた後、1気圧未満に低下させて、圧力の大きさを変化させるための揺動を実施し、この揺動を数回繰り返す。すなわち、この実施形態において、第1の増圧手順及び揺動式減圧手順がチャンバ30に繰り返し実施される。当然ながら、繰り返しの有無及び繰り返しの回数は、図面によって限定されない。
【0026】
図4Bによれば、この実施形態において、具体的には、揺動式減圧手順が3回実施されるが、揺動式減圧手順においては毎回、基準低圧と複数の可変低圧との間で揺動が起きる。基準低圧の圧力は、可変低圧の圧力より大きく、可変低圧は、時間経過に伴って徐々に低下していく。可変低圧は、基準低圧と交互した結果、隣接する2つの時系列に含まれる可変低圧のうちの2つが、最初に基準低圧に戻る。
【0027】
1回目の揺動に関しては、圧力と時間との関係は、表1に示されている。チャンバ30が可変低圧のそれぞれに留まっている時間は、チャンバ30が基準低圧に留まっている時間より長い。この実施形態において、具体的には、基準低圧は、380torrであり、0秒間続き、可変低圧は、270torrから210torrに徐々に低下していき、毎回30秒間持続する。このプロセスにおいては、保護材20及び22の中で表面の近くにある気泡40は、チャンバ30内の圧力の変化に応じて気泡40のサイズが前後に変化することにより、破裂する。
【表1】
【0028】
次に、チャンバ30に2回目の第1の増圧手順が実施される。例えば、2回目の第1の増圧手順における圧力は10気圧であり、6分間持続する。この実施形態において、2回目の第1の増圧手順における圧力は、1回目の第1の増圧手順における圧力と同じである。しかしながら、他の複数の実施形態において、2回目の第1の増圧手順における圧力は、1回目の第1の増圧手順における圧力と異なってもよい。
【0029】
次いで、2回目の揺動式減圧手順が実施される。2回目の揺動式減圧手順の目的は、1回目の揺動式減圧手順において破裂しなかった気泡40を、この手順において破裂できるようにすることである。2回目の揺動式減圧手順における低圧の圧力差は、1回目の揺動式減圧手順における低圧の圧力差より大きい。保護材20及び22の材料特性により、硬化反応している保護グルー材料の粘度は、時間に伴って同じ温度で増大していき、この結果、気泡40の破裂がより困難になる。したがって、圧力差を大きくすることにより、気泡40の体積変化の範囲が広がるが、これは、気泡40を破裂させるのに役立つものである。
【0030】
2回目の揺動式減圧手順における圧力及び時間は、下記の表2に示されている。この実施形態において、基準低圧は、380torrであり、0秒間続き、可変低圧は、210torrから130torrに徐々に低下していき、毎回30秒間持続する。
【表2】
【0031】
次に、3回目の第1の増圧手順がチャンバ30に実施される。例えば、3回目の第1の増圧手順における圧力は10気圧であり、6分間持続する。次いで、3回目の揺動式減圧手順が実施される。3回目の揺動式減圧手順における圧力及び時間は、下記の表3に示されている。この実施形態において、基準低圧は、380torrであり、0秒間続き、可変低圧は、130torrから30torrに徐々に低下していき、毎回40秒間持続する。
【表3】
【0032】
次いで、4回目の第1の増圧手順がチャンバ30に実施される。4回目の第1の増圧手順における圧力は10気圧であり、6分間持続する。その後、減圧手順が実施される。この実施形態において、減圧手順における圧力は、揺動式減圧手順における圧力より小さく、チャンバ30が減圧手順における圧力に留まっている時間は、チャンバ30が揺動式減圧手順における圧力に留まっている時間より長い。具体的には、減圧手順における圧力は30torrであり、時間は300秒である。このステップにおいて、残りの気泡40は、真空に近い比較的小さい圧力(大きな負圧の値)を比較的長い時間にわたって用いることによって直接膨張させて、破裂させることができる。
【0033】
次に、ステップ140において、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバ30に第2の増圧手順を実施する。第2の増圧手順における圧力は、第1の増圧手順における圧力より小さく、1気圧より大きい。この実施形態において、第2の増圧手順は例えば、最初に圧力を20分間2気圧に増圧し、次いで圧力を5分間3気圧に増圧することである。前述のステップにおいては、気泡40の破裂により、保護材20及び22の表面が不均一になっており、この結果、保護材20及び22の流れを阻害するほどに高いものではない、より低い高圧(2~3気圧)を用いて、保護材20及び22の表面を平坦化することができる。
【0034】
さらに、特定の温度における保護材20及び22の粘度は時間に伴って徐々に増大していくため、第2の増圧手順は、2つの増圧ステップに分割されており、これは、保護材20及び22の表面を平坦化するのにより役立つものである。当然ながら、他の複数の実施形態において、第2の増圧手順は、1つのみの増圧ステップで実施することも可能である。さらに、第2の増圧手順は、より多くのステップで実施することも可能である。
【0035】
次に、ステップ150において、第2の加熱手順が、電子モジュール10を覆っている保護材20及び22を硬化させて、
図2C及び
図3Cに示されているような電子モジュール10を覆っている保護フィルム25を形成するように、チャンバ30内の保護材20及び22に実施される。保護材20及び22は、例えば、熱硬化性材料である。第2の加熱手順において、温度を175度に上昇させて、保護材20及び22を硬化させることができる。第2の加熱手順が実施されている間には、同時に、第3の増圧手順がチャンバ30に実施されている。この段階における圧力は、11気圧であってもよく、持続期間は、30分~60分間であってもよく、又は保護材20及び22に必要な最低限の硬化時間であってもよい。
【0036】
最後に、
図4A及び
図4Bに示されているように、温度を低下させ、圧力を低下させる。この段階における温度は、80度であり、圧力は、6気圧であってもよく、時間は、25分であってもよい。しかしながら、本開示は、前述のものに限定されない。
【0037】
図2Cにおいて、電子モジュール10を覆っている保護フィルム25の表面の外形は、電子素子13~17の外形に合致する。
図3Cにおいて、保護フィルム25が比較的厚いため、電子モジュール10を覆っている保護フィルム25の表面は平坦であってもよく、電子素子13~17の外形に合致しなくてもよい。さらに、
図2C及び
図3Cによれば、保護フィルム25は、回路基板12の側面又は裏面に流れ込むことなく、回路基板12の上面のみを覆う。
【0038】
重要な点としては、
図3Cの保護フィルム25の表面を平面構造として製造すべき場合においては、最初に使用される保護材22がより多くの層を有し、又はより厚いものであるため、保護材22の気泡40の除去が困難であることが挙げられる。この実施形態における電子モジュール10上に保護フィルム25を形成するための方法100は、揺動式減圧手順によって気泡40を効果的に除去することが可能であり、
図3Cの構造を完成させることができる。
【0039】
上記を踏まえて、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法において、第1の加熱手順をチャンバ内の保護材に実施して、電子モジュール上に配置された保護材を軟化させ、第1の増圧手順をチャンバに実施し、この結果、電子モジュールと保護材との間にある気泡が、保護材の表面に近い位置にまで上昇する。次に、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに揺動式減圧手順を実施する。揺動式減圧手順は、チャンバ内の圧力を1気圧より小さい低圧の間で交互に変化させることを含む。揺動式減圧手順において、保護材の中で表面の近くにある気泡は、チャンバ内の圧力の変化に応じて気泡のサイズが前後に変化することにより、破裂する。次いで、第1の加熱手順を維持しながら、チャンバに第2の増圧手順を実施する。第2の増圧手順における圧力は、第1の増圧手順における圧力より小さく、1気圧より大きい。第2の増圧手順において、軟化した保護材は、圧縮して平坦化することができる。最後に、第2の加熱手順が、電子モジュールを覆っている保護材を硬化させて、電子モジュールを覆っている保護フィルムを形成するように、チャンバ内の保護材に実施される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法を提供する。
【符号の説明】
【0041】
10:電子モジュール
12:回路基板
13~17:電子素子
20、22:保護材
25:保護フィルム
30:チャンバ
40:気泡
100:電子モジュール上に保護フィルムを形成するための方法
110~150:ステップ