(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/50 20240101AFI20240404BHJP
【FI】
G06Q50/50
(21)【出願番号】P 2023011947
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】堀 健一
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-198021(JP,A)
【文献】特開2006-197511(JP,A)
【文献】特開2009-212910(JP,A)
【文献】特開2012-134750(JP,A)
【文献】特開平11-127471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00、
H04W 4/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を取得する履歴取得部と、
前記利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する算出部と、
前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を決定する決定部と、を備え、
前記決定部は、前記請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額を増加させる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記利用履歴は、前記第1通信回線と前記第2通信回線とのそれぞれについて、通信回線が利用可能であることを示す利用継続状態と、通信回線が利用不可であることを示す利用中断状態との少なくとも2つの通信状態とが時刻と関連付けられており、
前記算出部は、前記第1通信回線と前記第2通信回線とのそれぞれが同時に前記利用継続状態となっている時間の累計を前記重複利用時間として算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記利用契約に定められた時間単価を前記重複利用時間に乗じて得られる額を、前記利用契約に定められた固定額に加算することで前記請求額を決定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記利用契約の契約者が利用する端末から、前記第1通信回線と前記第2通信回線との少なくとも一方の通信状態の変更を受け付ける状態変更受付部をさらに備える、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1通信回線は陸上局と接続する通信回線であり、前記第2通信回線は宇宙局と接続する通信回線である、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサが、
通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出するステップと、
前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を、請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額が増加するように決定するステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する機能と、
前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を、請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額が増加するように決定する機能と、を実現させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術の急速な発展により、携帯電話をはじめとする各種通信端末、自動車やドローン等にも無線通信機能が搭載されるようになってきている。これに伴い、通信回線を利用するユーザは、2以上の複数の無線通信回線を利用するための通信契約を通信事業者と結ぶことも一般的となってきている。
【0003】
無線通信サービスにおいては、サービスの契約単位となるSIM毎に課金額が決定される(例えば、特許文献1を参照)。このため、複数の無線通信回線を利用するための通信契約を通信事業者と結んだユーザは、通信回線の利用頻度にかかわらず、通信回線分の基本利用料を支払う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害時や休日のレジャー等の日常使いではない目的のために利用することを目的とした通信契約や、自動車やドローン等を無線通信で遠隔操作する際のバックアップ用の通信のための通信契約をユーザが結ぶこともある。この場合、ユーザは利用頻度が低い通信回線を維持するために、日常使いの通信回線と同様の維持費がかかることになる。このため、維持費を理由にユーザが複数の通信回線の契約を結ぶことを躊躇しないとも限らない。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数の無線通信に係る利用料の新たな算出手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を取得する履歴取得部と、前記利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する算出部と、前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を決定する決定部と、を備える。ここで前記決定部は、前記請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額を増加させる。
【0008】
前記利用履歴は、前記第1通信回線と前記第2通信回線とのそれぞれについて、通信回線が利用可能であることを示す利用継続状態と、通信回線が利用不可であることを示す利用中断状態との少なくとも2つの通信状態とが時刻と関連付けられていてもよく、前記算出部は、前記第1通信回線と前記第2通信回線とのそれぞれが同時に前記利用継続状態となっている時間の累計を前記重複利用時間として算出してもよい。
【0009】
前記決定部は、前記利用契約に定められた時間単価を前記重複利用時間に乗じて得られる額を、前記利用契約に定められた固定額に加算することで前記請求額を決定してもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、前記利用契約の契約者が利用する端末から、前記第1通信回線と前記第2通信回線との少なくとも一方の通信状態の変更を受け付ける状態変更受付部をさらに備えてもよい。
【0011】
前記第1通信回線は陸上局と接続する通信回線であってもよく、前記第2通信回線は宇宙局と接続する通信回線であってもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出するステップと、前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を、請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額が増加するように決定するステップと、を実行する。
【0013】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を参照して、前記第1通信回線と前記第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する機能と、前記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を、請求額算出期間における前記重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、前記請求額が増加するように決定する機能と、を実現させる。
【0014】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の無線通信に係る利用料の新たな算出手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置が実行する処理の概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る決定部が請求額の決定のために参照するデータベースのデータ構造を模式的に示す図である。
【
図4】状態変更受付部がユーザの端末の表示部に表示させる通信状態変更画面の一例を模式的に示す図である。
【
図5】通信回線の利用予定期間を格納する予定データベースのデータ構造を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1の変形例に係る通信網の概要を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
図1(a)-(b)は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する処理の概要を説明するための図である。以下、
図1を参照して、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する処理の概要を述べる。
【0019】
実施の形態に係る情報処理装置1は、無線通信サービスを利用するために通信事業者と無線通信の利用契約を結んでいるユーザUに課する通信料金の請求額を決定するための装置である。実施の形態に係る情報処理装置1は2以上の通信回線の利用契約を結んでいるユーザUに対しては、請求額を決定する単位として定められた期間である請求額算出期間(例えば1ヶ月)において2以上の通信回線が同時に利用されている時間を算出し、この時間が長いほど請求額を増加させる。逆にいうと、ユーザUが2以上の通信回線の利用契約を結んでいても、2以上の通信回線を同時に利用しない場合(例えば、常に1つの通信回線のみを利用した場合)は、情報処理装置は同時利用に係る請求額の加算をしないことになる。
【0020】
図1(a)は2つの通信装置A(第1通信装置A1及び第2通信装置A2)の利用態様の一例を模式的に示す図であり、
図1(b)は2つの通信装置Aの利用状態の時間変化を模式的に示す図である。前提として、第1通信装置A1及び第2通信装置A2は、それぞれ通信事業者から発行されたSIM(Subscriber Identity Module)カードを挿入することで基地局等から識別可能となり、無線通信を実現することができる装置である。ユーザUは、第1通信装置A1及び第2通信装置A2を利用するために、通信事業者と通信回線の利用契約をして2つのSIMカードを取得している。なお、SIMカードは、通信装置Aに組み込まれているSIM、例えばeSIM(Embedded SIM)であってもよい。
【0021】
図1(a)に示す例では、ユーザUは、日常において自宅H内で通信サービスを利用するためのホームルータ(第1通信装置A1)を利用するとともに、災害時の備えや休日のレジャーのために持ち運びを前提としたポータブルルータ(第2通信装置A2)を利用している。このため、
図1(b)に示すように、第1通信装置A1は、基本的に常に利用継続状態となっている。一方第2通信装置A2は、基本的には利用中断状態となっており、必要に応じて利用継続状態となっている。以下、本明細書において、第1通信装置A1が要する通信回線を第1通信回線、第2通信装置A2が利用する通信回線を第2通信回線と記載する。
【0022】
第1通信装置A1は、ユーザUの自宅H内に据え置かれて利用することが想定されている。第2通信装置A2は、ルータ機能が実装された大容量ポータブル電源である。大容量ポータブル電源は電源設備のないキャンプ場等のアウトドアでの使用や、災害時又は停電時等の電力供給が止まっているときの電源としての利用が想定されている。第2通信装置A2はそのような大容量ポータブル電源にルータ機能が追加されているため、電源設備のない場所に置いても長時間にわたって通信機能を提供することができる。なお、
図1(a)はあくまでも一例であり、例えば第2通信装置A2はバッテリを備えた通常のモバイルルータであってもよく、第1通信装置A1及び第2通信装置A2はそれぞれ無線通信機能を有する装置であればどのようなものでもよい。
【0023】
図1(b)において、「利用継続状態」は、通信装置Aが基地局B等を介して無線通信が可能となっている状態、言い換えると通信装置Aが第1通信回線を利用可能な状態をいう。例えば、第1通信装置A1が利用継続状態となっている場合、第1通信装置A1の周囲において第1通信装置A1と接続している通信機器(例えばスマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)、ゲーム機、スマート家電等)は、第1通信装置A1及び基地局Bを経由する第1通信回線を利用することができる。
【0024】
また、「利用中断状態」は、通信装置Aによる通信回線の利用が許可されておらず利用不可となっている状態をいう。通信装置Aが利用中断状態になっている場合、その通信装置Aに挿入されているSIMカードに関する通信契約が有効であっても、通信装置Aは通信回線を利用することができない。なお、通信装置Aの所有者であるユーザUは、通信装置Aの通信状態をいつでも変更することができる。
【0025】
図1(a)に示す例では、ユーザUは第2通信装置A2をキャンプ場に持ち込んで利用した場合の例を示している。具体的には、
図1(b)における時刻T1から時刻T2に至るまでの間、ユーザUはキャンプ場において第2通信回線を利用継続状態としている。時刻T1から時刻T2に至るまでの間、第1通信装置A1はユーザUの自宅Hにおいて利用継続状態となっており、この間は2つの通信回線が同時に利用継続状態となっている。
図1(b)においては、2つの通信回線が同時に利用継続状態である重複利用の期間は斜線で示されている。
【0026】
図1(b)において、時刻T3においてユーザUの自宅Hを含む地域に停電があり、第1通信装置A1の電力の供給が止まって第1通信回線は利用中断状態となった。時刻T3の後の時刻T4においてユーザUは第2通信装置A2を稼働させ、第2通信回線が利用継続状態となった。ユーザUの自宅Hを含む地域に停電は時刻T5において復旧し第1通信装置A1は利用継続状態に移行したため、第1通信回線と第2通信回線とが同時に利用継続状態となった。その後、時刻T6においてユーザUは第2通信装置A2を停止して第2通信回線を利用中断状態に変更した。以上より、時刻T5から時刻T6に至るまでの間も2つの通信回線は同時に利用継続状態となった。
【0027】
ユーザUと通信事業者とが2つの通信回線の利用契約を個別に結んだ場合、実施の形態に係る情報処理装置1は、それぞれの通信回線毎にユーザUに対する通信料金の請求額を決定する。例えば、各利用契約が、通信回線の利用量に関わらず定額である場合、情報処理装置1は、2つの通信回線分の請求額として定額の2倍の額をユーザUに対する請求額として決定する。
【0028】
これに対し、ユーザUが2つの通信回線を関連付けて通信事業者と契約した場合、情報処理装置1は、基本料金とし2回線分の定額(すなわち定額の2倍の額)よりも少ない額を基本料金とし、重複利用の時間を従量課金としてユーザUに対する請求額を決定する。
【0029】
一例として、情報処理装置1は、ユーザUが2つの通信回線を関連付けて通信事業者と契約したときの基本料金は1つの通信回線の定額と同じ料金とする場合を考える。このとき、請求額算出期間においてユーザUが2つの通信装置Aを同時に利用しなかった場合には、情報処理装置1は、ユーザに対する基本料金として1つの通信回線の定額と同額をユーザUに対する請求額とする。この場合、ユーザUは、利用頻度が低い通信回線を契約しても、従来と同等の維持費に抑えることができるとともに、必要に応じて2つの通信回線を利用することもできる。このため、情報処理装置1は、利用頻度が低い通信回線を維持することに対するユーザUの経済的及び心理的な負担を減らすことができる。このように、実施の形態に係る情報処理装置1は、複数の無線通信に係る利用料の新たな算出手法を提供することができる。
【0030】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部10と通信部11と制御部12とを備える。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってもよい。
図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0031】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0032】
通信部11は、情報処理装置1が外部の装置と通信するための通信インターフェースであり、LAN(Local Area Network)モジュールやWi-Fi(登録商標)モジュール等の既知の通信モジュールで実現されている。以下、本明細書において、情報処理装置1が外部の装置と通信するときは通信部11を介することを前提として通信部11の記載を省略することがある。
【0033】
制御部12は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって履歴取得部120、算出部121、決定部122、及び状態変更受付部123として機能する。
【0034】
図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部12を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0035】
履歴取得部120は、通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を取得する。利用履歴は、記憶部10に格納されており、履歴取得部120は記憶部10から利用履歴を読み出して取得する。なお、利用履歴は情報処理装置1とは異なる他の記憶装置(不図示)に格納されていてもよい。この場合、履歴取得部120は、通信部11を介して他の記憶装置から利用履歴を読み出して取得する。この場合であっても、利用履歴は記憶部10に一時的に格納されることになる。
【0036】
算出部121は、履歴取得部120が取得した利用履歴を参照して、第1通信回線と第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する。
図1(b)に示した例では、時刻T1から時刻T2までの間と、時刻T5から時刻T6までの間の時間の合計が重複利用時間である。
【0037】
決定部122は、利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を決定する。具体的には、決定部122は、請求額算出期間における重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、請求額を増加させる。
【0038】
図3(a)-(b)は、実施の形態に係る決定部122が請求額の決定のために参照するデータベースのデータ構造を模式的に示す図である。具体的には、
図3(a)は利用履歴を格納するデータベースのデータ構造を示す図であり、
図3(b)は契約情報を格納するデータベースのデータ構造を示す図である。
図3(a)-(b)に示すデータは記憶部10に記憶されている。
【0039】
図3(a)に示すように利用履歴は、ユーザUを特定するためのユーザ識別子と、ユーザUが利用契約をしている通信回線の利用実績とを紐づけて記録している。
図3(a)に示す例では、ユーザ識別子がUID0001であるユーザUは、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)がxxxxxとyyyyyとでそれぞれ識別される2つの通信回線を利用している。ここで、IMSIは、ユーザUが通信事業者から取得したSIMカードに記録されている。
【0040】
図3(b)に示すように、ユーザ識別子がUID0001であるユーザUは、IMSIがxxxxxとyyyyyとでそれぞれ識別される2つの通信回線をペア契約として関連付けて通信事業者と契約している。このため、
図3(a)に示すように、利用履歴には第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれについて、通信回線が利用可能であることを示す利用継続状態と、通信回線の利用が許可されないことを示す利用中断状態との少なくとも2つの通信状態が時刻と関連付けられている。利用履歴にはさらに、2つの通信回線の重複利用期間も格納されている。
【0041】
算出部121は、利用履歴において第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれが同時に利用継続状態となっている時間の累計を重複利用時間として算出する。
図3(a)は2022年11月の利用履歴が示されており、ユーザ識別子がUID0001であるユーザUは、2022年11月8日10時12分32秒から2022年11月10日17時24分51秒までの間と、2022年11月17日22時58分37秒から2022年11月17日23時12分9秒までの間とで、2つの通信回線を重複利用している。このため算出部121は、2022年11月8日10時12分32秒から2022年11月10月17時24分51秒までの間の55時間12分19秒と、2022年11月17日22時58分37秒から2022年11月17日23時12分9秒までの間の13分32秒との、合わせて55時間25分51秒を重複利用時間として算出する。
【0042】
図3(b)に示すように、ユーザ識別子がUID0001であるユーザUは、2つの通信回線をペア契約することにより、基本料金が割引となる契約を通信事業者と結んでいる。この場合、決定部122は、利用契約に定められた時間単価を重複利用時間に乗じて得られる額を、利用契約に定められた固定額に加算することでユーザUに対する請求額を決定する。このとき、利用契約に定められた固定額は、ユーザUが2つの通信回線を関連付けずに個別に契約したときに請求される請求額よりも低額となっており、一例としてはユーザUが1つの通信回線を利用する場合に請求される請求額と同一となっている。ユーザUは、2つの通信回線の重複利用時間が0となるようにそれぞれ単独で利用した場合には、請求額算出期間における請求額を定額とすることができる。このように、ユーザUは2つの通信回線の重複利用時間を管理することで、通信回線の利用額を管理することができる。なお、関連付ける2つの通信回線は同一の通信事業者によって提供される必要はなく、例えば、第1通信回線を提供している通信事業者と第2通信回線を提供している通信事業者が同一ではないが協業している(各通信事業者の通信回線の契約の関連付けを各通信事業者間で共通するユーザ識別子を用いて管理している)場合であってもよい。
【0043】
これを実現するために、状態変更受付部123は、通信事業者との契約者であるユーザUが利用する端末から、第1通信回線と第2通信回線との少なくとも一方の通信状態の変更を受け付ける。
【0044】
図4は、状態変更受付部123がユーザUの端末Tuの表示部に表示させる通信状態変更画面の一例を模式的に示す図である。
図4は、ユーザUの端末Tuがタブレット端末である場合の例を示している。
図4に示すように、状態変更受付部123は、ユーザUが契約で関連付けている通信回線のうち通信状態を変更するための通信回線を選択するための選択インターフェースI1を端末Tuの表示部に表示させる。ユーザUは2つの通信回線の利用契約をしており、これらは11桁の数字の列で識別されている。
図4に示す例では、ユーザUが「YYY-YYYY-YYYY」で識別される通信回線を選択していることを示している。なお、「YYY-YYYY-YYYY」で識別される通信回線のIMSIは
図3に示すyyyyyであり、「XXX-XXXX-XXXX」で識別される通信回線のIMSIは
図3に示すxxxxxである。
【0045】
状態変更受付部123は、ユーザUが選択した通信回線の状態を「利用中断状態」とする期間を入力するための期間設定インターフェースI2も端末Tuの表示部に表示させる。
図4に示す例は、ユーザUは「YYY-YYYY-YYYY」で識別される通信回線を、11月8日10時00分から11月10日17時30分まで“以外”の期間を中断すること、すなわち、11月8日10時00分から11月10日17時30分の間のみ利用継続状態とすることを示している。なお、ユーザUは、「無期限で中断する」というチェックボックスをチェックすることにより、選択した通信回線を無期限で利用中断状態とすることができる。これにより、ユーザUは、利用頻度が低い通信回線を無期限で利用中断状態に設定することで重複利用の発生を防止し、請求額を抑制することができる。
【0046】
図5は、通信回線の利用予定期間を格納する予定データベースのデータ構造を模式的に示す図であり、具体的には2022年11月の利用予定期間を示している。予定データベースに格納される情報は、状態変更受付部123がユーザUの端末Tuを介して設定されて各通信装置Aの図示しない記憶部に格納されるとともに、端末Tuにもそのコピーが保存される。
図4に示すようにユーザUは「YYY-YYYY-YYYY」で識別される通信回線(IMSIがyyyyyの通信回線)を、11月8日10時00分から11月10日17時30分まで“以外”の期間を中断するように設定したため、
図5ではIMSIがyyyyyの通信回線は、11月8日10時00分から11月10日17時30分のみ利用予定期間となっている。各通信装置Aは予定データベースの情報に基づいて状態変更を行い動作し、その結果が利用履歴として格納される。これにより、各通信装置Aは、ユーザUが意図的に操作することなく自律的に通信状態を変更することができる。
【0047】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図6は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0048】
履歴取得部120は、ユーザUと通信事業者との間で結ばれた通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を取得する(S2)。算出部121は、利用履歴を参照して、第1通信回線と第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する(S4)。
【0049】
決定部122は、利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、ユーザUに請求する請求額を増加させて請求額を決定する(S6)。情報処理装置1は、通信事業者と契約しているすべてのユーザUについて上記処理を繰り返すことにより、各ユーザUの請求額を決定する。
【0050】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、複数の無線通信に係る利用料の新たな算出手法を提供することができる。
【0051】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0053】
<第1の変形例>
上記では、契約で関連付けられる2つ通信回線がいずれも移動体通信網を利用する通信回線である場合について説明したが、通信回線は移動体通信網を利用する場合とは限らない。近年では、無線通信回線として地球上に設置された基地局等の陸上局を経由して通信するためのセルラー網のみならず、地球局を介して通信衛星等の宇宙局を経由して通信するための衛星通信網も利用されている。そこで、契約で関連付けられる2つ通信回線のうち少なくとも1つは衛星通信網を利用する通信回線であってもよい。
【0054】
図7は、第1の変形例に係る通信網の概要を模式的に示す図である。
図7に示す例では、
図1に示す例と異なる通信装置Aの一種であるドローンDが単体で2つの通信回線を利用する。具体的には、ドローンDは、陸上局(基地局B)と接続する移動体通信網の通信回線を第1通信回線とし、宇宙局(人工衛星S)及び宇宙局と無線通信を行う地球局Eと接続する衛星通信網の通信回線を第2通信回線として利用できる。ドローンDは、陸上局と通信可能な範囲を飛行するときは第1通信回線を利用して飛行のための制御情報を受信する。また、ドローンDは、例えば会場や山間部等で陸上局と通信できない場合には第2通信回線を利用して制御情報を受信して飛行することができる。
【0055】
<第2の変形例>
上記では、決定部122が、2つの通信回線の重複利用時間が長いほどユーザUへの請求額を高くする場合について説明した。これに加えて、決定部122は、ユーザUへの請求額があらかじめ定められた上限額に達した場合、上限額を請求額としてもよい。請求額上限額に達した場合、請求額算出期間が経過するまでの間、状態変更受付部123は、2つの通信回線のうちいずれか一方の通信回線の状態を利用中断状態に変更してもよい。
【0056】
上限額は、ユーザUの利便性とユーザUへの高額請求の抑制とを考慮して定めればよいが、例えば関連付けずに契約した場合にユーザUが支払うべき請求額とすればよい。具体的には、契約で関連付けている通信回線の数が2つであり、ユーザUが2つの通信回線を個別に契約した場合にはそれぞれ定額の請求額となる場合には、その定額の合計が上限額となる。これにより、第2の変形例に係る情報処理装置1は、利用頻度の低い通信回線の通信状態をユーザUが誤って利用中断状態に設定してしまう等の理由により、ユーザUへの請求額が高額となることを抑制できる。
【0057】
また、状態変更受付部123は、請求額算出期間の経過前にユーザUへの請求額が所定の額(例えば、上限額の7割)に到達した場合、その旨を示すメッセージをユーザUの端末Tuの表示部に表示させてもよい。これにより、状態変更受付部123は、ユーザUが意図しない理由で重複利用が発生している場合に、請求額が上限に達することを未然に抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・情報処理装置
10・・・記憶部
11・・・通信部
12・・・制御部
120・・・履歴取得部
121・・・算出部
122・・・決定部
123・・・状態変更受付部
A・・・通信装置
B・・・基地局
Tu・・・端末
【要約】
【課題】 複数の無線通信に係る利用料の新たな算出手法を提供する。
【解決手段】履歴取得部120は、通信回線の利用契約によって関連付けられている第1通信回線と第2通信回線とのそれぞれの利用履歴を取得する。算出部121は、利用履歴を参照して、第1通信回線と第2通信回線とが同時に利用されている時間の累計である重複利用時間を算出する。決定部122は、記利用契約において料金請求の単位として定められた請求額算出期間における請求額を決定する。ここで、決定部122は、請求額算出期間における重複利用時間が長い場合は、短い場合よりも、請求額を増加させる。
【選択図】
図2