(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/36 20120101AFI20240404BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
G06Q20/36
G06Q10/00
(21)【出願番号】P 2023155525
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-536445(JP,A)
【文献】特表2019-536134(JP,A)
【文献】特表2019-511150(JP,A)
【文献】特表2023-538701(JP,A)
【文献】国際公開第2021/132454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが同一のユーザと関連付けられている複数のトークンを構成要素とするトークン群が実行する情報処理方法であって、
前記トークン群は、
前記ユーザの収入に相当する資金を管理するためのスマートコントラクトである収入管理コントラクトが実装された収入管理トークンと、
前記ユーザの支払にかかる支払額と、当該支払の期限である支払期限と、支払先とを管理するためのスマートコントラクトである支払管理コントラクトが実装された支払管理トークンと、
前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を前記支払管理トークンに移動するためのスマートコントラクトである資金移動コントラクトが実装されている資金移動トークンと、を含み、
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトが、
資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び前記支払額とに基づいて、各支払管理トークンに分配するステップと、を実行し、
前記支払管理トークンに実装された前記支払管理コントラクトが、
前記支払管理トークンの支払期限の到来を契機として、前記支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち前記支払額に相当する資金を前記支払先に移転するステップを実行する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトが、
(1)1又は複数の支払管理トークンのうちのいずれかの支払管理トークンに定められている支払期限となること、又は、
(2)前記収入管理トークンに貯蓄されている資金があらかじめ定められた所定の金額以上となること、
のいずれか一方の条件を満たすことを条件として、前記資金移動タイミングが到来したと判定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記収入管理トークンは、前記ユーザに収入があることを契機として生成され、
前記支払管理トークンは、前記ユーザの支払が確定することを契機として生成される、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記支払管理トークンに定められた支払が完了する前に当該支払管理トークンに定められた支払のための移動と当該支払管理トークンに対して設定された優先度よりも高い優先度が設定された他の支払管理トークンへの移動を除いて、当該支払管理トークンに貯蓄されている資金の移動を禁止する、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記支払管理トークンは、当該支払管理トークンに設定されている支払先が管理する情報処理装置による指示によって生成される、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記支払管理トークンに対して設定されている優先度は、前記ユーザが編集可能な優先度データベースに登録されており、
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記優先度データベースを参照して前記支払管理トークンに設定されている優先度を取得する、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記各支払管理トークンに分配するステップにおいて、前記到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金に加えて前記支払管理トークンに定められた支払が完了した後に当該支払管理トークンに残っている余剰資金も、支払前の前記各支払管理トークンに分配する、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
それぞれが同一のユーザと関連付けられている複数のトークンを構成要素とするトークン群であって、前記ユーザの収入に相当する資金を管理するためのスマートコントラクトである収入管理コントラクトが実装された収入管理トークンと、前記ユーザの支払にかかる支払額と、当該支払の期限である支払期限と、支払先とを管理するためのスマートコントラクトである支払管理コントラクトが実装された支払管理トークンと、前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を前記支払管理トークンに移動するためのスマートコントラクトである資金移動コントラクトが実装されている資金移動トークンと、を含むトークン群が記憶されているブロックチェーンにアクセスする機能と、
前記ブロックチェーンから読み出した前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトを実行することにより、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び前記支払額とに基づいて、各支払管理トークンに分配する機能と、を実現させ、
前記ブロックチェーンから読み出した前記支払管理トークンに実装された前記支払管理コントラクトを実行することにより、前記支払管理トークンの支払期限の到来を契機として、前記支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち前記支払額に相当する資金を前記支払先に移転する機能を実現させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法及びプログラムに関し、特に家計を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭の収入及び支出等の家計管理をするための技術は種々提案されている。例えば、特許文献1には、収支の全体を把握し、支出が発生した場合のシミュレーションを行うための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術では、ユーザが携帯電話等のアプリケーションを起動し、収入計画及び支出計画等を入力することが求められている。しかしながら、収入計画や支出計画を正確に入力することはユーザにとって負担となり得るし、これらの計画が必ずしもいつも正確に入力されるとは限らない。収入計画や支出計画が正確でない場合には、家計管理の精度も期待できない。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、家計管理の正確性を向上させるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、それぞれが同一のユーザと関連付けられている複数のトークンを構成要素とするトークン群が実行する情報処理方法である。この情報処理方法において、前記トークン群は、前記ユーザの収入に相当する資金を管理するためのスマートコントラクトである収入管理コントラクトが実装された収入管理トークンと、前記ユーザの支払にかかる支払額と、当該支払の期限である支払期限と、支払先とを管理するためのスマートコントラクトである支払管理コントラクトが実装された支払管理トークンと、前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を前記支払管理トークンに移動するためのスマートコントラクトである資金移動コントラクトが実装されている資金移動トークンと、を含んでいる。前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトが、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び前記支払額とに基づいて、各支払管理トークンに分配するステップと、を実行し、前記支払管理トークンに実装された前記支払管理コントラクトが、前記支払管理トークンの支払期限の到来を契機として、前記支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち前記支払額に相当する資金を前記支払先に移転するステップを実行する。
【0007】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトが、(1)1又は複数の支払管理トークンのうちのいずれかの支払管理トークンに定められている支払期限となること、又は、(2)前記収入管理トークンに貯蓄されている資金があらかじめ定められた所定の金額以上となること、のいずれか一方の条件を満たすことを条件として、前記資金移動タイミングが到来したと判定してもよい。
【0008】
前記収入管理トークンは、前記ユーザに収入があることを契機として生成されてもよく、前記支払管理トークンは、前記ユーザの支払が確定することを契機として生成されてもよい。
【0009】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記支払管理トークンに定められた支払が完了する前に当該支払管理トークンに定められた支払のための移動と当該支払管理トークンに対して設定された優先度よりも高い優先度が設定された他の支払管理トークンへの移動を除いて、当該支払管理トークンに貯蓄されている資金の移動を禁止してもよい。
【0010】
前記支払管理トークンは、当該支払管理トークンに設定されている支払先が管理する情報処理装置による指示によって生成されてもよい。
【0011】
前記支払管理トークンに対して設定されている優先度は、前記ユーザが編集可能な優先度データベースに登録されていてもよく、前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記優先度データベースを参照して前記支払管理トークンに設定されている優先度を取得してもよい。
【0012】
前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトは、前記各支払管理トークンに分配するステップにおいて、前記到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金に加えて前記支払管理トークンに定められた支払が完了した後に当該支払管理トークンに残っている余剰資金も、支払前の前記各支払管理トークンに分配してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、それぞれが同一のユーザと関連付けられている複数のトークンを構成要素とするトークン群であって、前記ユーザの収入に相当する資金を管理するためのスマートコントラクトである収入管理コントラクトが実装された収入管理トークンと、前記ユーザの支払にかかる支払額と、当該支払の期限である支払期限と、支払先とを管理するためのスマートコントラクトである支払管理コントラクトが実装された支払管理トークンと、前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を前記支払管理トークンに移動するためのスマートコントラクトである資金移動コントラクトが実装されている資金移動トークンと、を含むトークン群が記憶されているブロックチェーンにアクセスする機能と、前記ブロックチェーンから読み出した前記資金移動トークンに実装された前記資金移動コントラクトを実行することにより、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する前記収入管理トークンに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び前記支払額とに基づいて、各支払管理トークンに分配する機能と、を実現させ、前記ブロックチェーンから読み出した前記支払管理トークンに実装された前記支払管理コントラクトを実行することにより、前記支払管理トークンの支払期限の到来を契機として、前記支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち前記支払額に相当する資金を前記支払先に移転する機能を実現させる。
【0014】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、家計管理の正確性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置において実行される処理の概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る優先度及び残高充当カーブを説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係る分配部による資金の分配を説明するための図である。
【
図5】実施の形態に係る分配部による資金の分配の別の例を説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
実施の形態に係る情報処理装置は、ブロックチェーンを構成する複数のノードのうちの1つの装置である。実施の形態に係るブロックチェーンは、スマートコントラクト機能を有するトークンを管理している。実施の形態に係る情報処理装置は、このスマートコントラクト機能を用いることで、ユーザの収入及び支出の管理を含む家計管理の自動化を実現している。
【0019】
図1は、実施の形態に係る情報処理装置1において実行される処理の概要を説明するための図である。
図1に示す例では、第1情報処理装置1a、第2情報処理装置1b、第3情報処理装置1c、第4情報処理装置1d、及び第5情報処理装置1eの5つの情報処理装置1からブロックチェーンBが構成されている。なお、ブロックチェーンBを構成する情報処理装置1の数は5つに限らない。ブロックチェーンBを構成する情報処理装置1の数は3以上であればよく、奇数であると好ましい。また、ブロックチェーンBはパブリックブロックチェーンでなくてもよく、プライベートブロックチェーン又はコンソーシアムブロックチェーンであってもよい。
【0020】
実施の形態に係るブロックチェーンBは、上述した複数の情報処理装置1によって自律分散的にトークンが管理され、共有されている。ブロックチェーンBにおいてこれらのトークンの生成、修正、消去等はトランザクションに記録され、いくつかのトランザクションがまとめられたブロックを直列的に、いわばチェーン状に連結した形で保持されている。ブロックチェーンBにおいてこのブロックの連結は、例えばPoW(Proof of Work)等の既知のコンセンサスアルゴリズムによって管理されており、一般にブロックチェーンBに保持されたデータを改ざんすることは困難とされている。これは、ブロックチェーンBで実行されるプログムであるスマートコントラクトも同様であり、ひとたびブロックチェーンBに記録された後は改ざんすることが困難とされている。
【0021】
実施の形態に係るブロックチェーンBは、ユーザに関連付けられてそのユーザの家計管理をするための複数種類のトークンを記録している。情報処理装置1は、ユーザと関連付けられている各トークンが備える情報を、スマートコントラクト機能を利用して自動的に処理することにより、そのユーザの家計管理を実現する。
【0022】
具体的には、実施の形態に係るブロックチェーンBは、収入管理トークン、資金移動トークン、及び支払管理トークンの3種類のトークンを構成要素とするトークン群を備えている。ブロックチェーンBが家計管理の対象とする各ユーザは、それぞれ固有のユーザ識別子によって管理されており、収入管理トークン、資金移動トークン、及び支払管理トークもそれぞれ同一のユーザ識別子と関連付けられている。
図1に示す例では、ユーザ識別子がUID00001であるユーザには、2つの収入管理トークンTi(第1収入管理トークンTi1と第2収入管理トークンTi2)と、1つの資金移動トークンTtと、1つの支払管理トークンTpとが関連付けられている。
【0023】
ここで、収入管理トークンTiは、そのトークンが関連付けられているユーザの収入に相当する資金を管理するためのスマートコントラクトである収入管理コントラクトCiが実装されている。収入管理トークンTiは、ユーザに収入があったタイミング(例えば、給与の振込、有価証券の売却、家賃収入等)でブロックチェーンBに生成され、トランザクションには収入に相当する資金の額を示す情報が記録される。
【0024】
支払管理トークンTpは、そのトークンが関連付けられたユーザの支払にかかる支払額と、その支払の期限である支払期限と、支払先とを管理するためのスマートコントラクトである支払管理コントラクトCpが実装されている。支払管理トークンTpは、ユーザの支払が確定したタイミング(例えば、家賃や光熱費のようにあらかじめ決まった支払、カード決済、BNPL(Buy Now Pay Later)として知られる決済方式による支払等)でブロックチェーンBに生成され、トランザクションにはその支払に用いられる資金の額を示す情報が記録される。
【0025】
資金移動トークンTtは、収入管理トークンTiに貯蓄されている資金を支払管理トークンTpに移動するためのスマートコントラクトである資金移動コントラクトCtが実装されている。資金移動トークンTtはユーザがブロックチェーンBにユーザ登録したときに生成される。資金移動トークンTtは、後述するアルゴリズムに基づいて、各支払管理トークンTpの支払期日の前に支払額に相当する資金を収入管理トークンTiに貯蓄されている資金から段階的に移動させる。
【0026】
実施の形態に係るブロックチェーンBが管理する収入管理トークンTi及び支払管理トークンTpは、それぞれ法定通貨と交換可能な暗号資産として資金を管理する。実施の形態に係る情報処理装置1は、ブロックチェーンBを構成する1つのノードとしてスマートコントラクトを実行することにより、ユーザの収入を管理し、その収入を原資として積立てと支払いとを実行する。これにより、ユーザは不定期に発生する収入や支払いを逐一登録することなく、収入と支出とを自動で正確に管理することができる。スマートコントラクトはトークンに関連付けられているため、実施の形態に係るブロックチェーンBは、それぞれが同一のユーザと関連付けられている複数のトークンを構成要素とするトークン群が家計管理を実行すると捉えることもできる。
【0027】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1はブロックチェーンBを構成する1つのノードであり、各ノードはいずれも同様の機能構成を有している。情報処理装置1は、記憶部10と通信部11と制御部12とを備える。
【0028】
図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0029】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)や、スマートコントラクトを実現するプログラム、当該プログラムの実行時に参照される各種トークン等の種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0030】
通信部11は、情報処理装置1が外部の装置と通信するための通信インターフェースであり、LAN(Local Area Network)モジュールやWi-Fi(登録商標)モジュール等の既知の通信モジュールで実現されている。以下、本明細書において、情報処理装置1が外部の装置と通信するときは通信部11を介することを前提として通信部11の記載を省略することがある。
【0031】
制御部12は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。制御部12は、記憶部10に記憶された資金移動コントラクトCtを実行することによって、分配部120、判定部121、移動管理部122、及び取得部123として機能する。また、制御部12は、記憶部10に記憶された収入管理コントラクトCiを実行することによって収入資金管理部124として機能する。さらに、制御部12は、記憶部10に記憶された支払管理コントラクトCpを実行することによって、移転部125及び支払資金管理部126として機能する。
【0032】
情報処理装置1は、ユーザの収入を収入管理トークンTiで管理し、ユーザの支払を支払管理トークンTpで管理する。情報処理装置1は、ユーザに収入があることを契機として収入管理トークンTiを生成し、ブロックチェーンBを構成する他の情報処理装置1と共有する。例えば、ユーザに10万円の収入があった場合、情報処理装置1は、新たに収入管理トークンTiを生成するとともに、その収入管理トークンTiが10万円に相当する資金を有することを生成日時とともにトランザクションに記録する。
【0033】
また、情報処理装置1は、ユーザの支払が確定することを契機として支払管理トークンTpを生成し、ブロックチェーンBを構成する他の情報処理装置1と共有する。例えば、ユーザに3万円の支払が確定した場合、その支払額(3万円に相当する資金)、支払期日、及び支払に充当するための資金の額をトランザクションに記録する。支払管理トークンTpの生成直後には支払管理トークンTpには支払に充当できる資金が移動されていないため、支払に充当するための資金の額は0となる。
【0034】
なお、支払管理トークンTpは、支払管理トークンTpに設定されている支払先が管理する情報処理装置(不図示)がブロックチェーンBに指示することによって生成される。例えば、ユーザがEC(Electronic Commerce)サイト等でBNPLの決済方式で商品を購入した場合、ECサイトを管理するサーバがブロックチェーンBに指示して支払管理トークンTpを生成させる。また、家賃や光熱費等のように契約によって定期的な支払を管理する支払管理トークンTpは、不動産管理業者やインフラ提供業者のサーバがユーザとの契約時にブロックチェーンBに指示して支払管理トークンTpを生成させ、その支払管理トークンTpは契約が終了するまで支払の管理を担う。
【0035】
資金移動コントラクトCtによって実現される分配部120は、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいてブロックチェーンBに存在する収入管理トークンTiを検索する。分配部120は、検索した各収入管理トークンTiに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンTpそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び支払額とに基づいて、各支払管理トークンTpに分配する。
【0036】
ここで、資金移動のタイミングは、ユーザが収入として得た資金を支払のためにいわば積み立てるタイミングであり、収入管理トークンTiの資金の一部又は全部を、その時点で存在する支払管理トークンTpに振り分けるタイミングである。資金移動のタイミングの具体的な判定手法については後述する。
【0037】
収入管理トークンTiの資金が支払管理トークンTpに移動すると、収入管理コントラクトCiによって実現される収入資金管理部124は、資金の移動があった日時、移動先の支払管理トークンTpの識別子、及び資金移動後に残った資金の額をトランザクションに記録する。同様に、支払管理コントラクトCpによって実現される支払資金管理部126は、資金の移動があった日時、移動元の収入管理トークンTiの識別子、及び資金移動後の資金の額をトランザクションに記録する。
【0038】
支払管理トークンTpそれぞれに対して設定された優先度は、資金移動のタイミングにおいて、支払管理トークンTpに分配される資金の多少を決定するために参照されるパラメータである。詳細は後述するが、優先度が高く、かつ支払額に対する貯蓄額の割合が低い支払管理トークンTpほど、多くの資金が分配される。
【0039】
支払管理コントラクトによって実現される移転部125は、支払管理トークンTpの支払期限の到来を契機として、支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち支払額に相当する資金を支払先に移転する。具体的には、移転部125は、支払先がブロックチェーンBが扱う暗号資産を受け入れる場合、移転部125は、支払額に相当する暗号資産を支払先のウォレット等に移動する。支払先がブロックチェーンBが扱う暗号資産を受け入れない場合、移転部125は、支払額に相当する暗号資産を法定通貨に換金した後に、銀行等のシステムを利用して支払先の口座に振り込む。支払資金管理部126は、資金の移動があった日時、支払先の識別子、及び資金移動後の資金の額をトランザクションに記録する。
【0040】
このように、実施の形態に係る情報処理装置1は、ユーザの収入の管理から支払までをスマートコントラクト機能を用いて自動化することにより、収入及び支払の入力漏れを抑制でき、家計管理の正確性を向上することができる。
【0041】
資金移動のタイミングについて説明する。資金移動コントラクトCtによって実現される判定部121は、以下の2つの条件のうちのいずれか一方の条件を満たすことを条件として、資金移動タイミングが到来したと判定する。1つ目の条件は、1又は複数の支払管理トークンTpのうちのいずれかの支払管理トークンTpに定められている支払期限となることである。2つ目の条件は、収入管理トークンTiに貯蓄されている資金があらかじめ定められた所定の金額以上となることである。
【0042】
1つ目の条件に関し、分配部120は、資金移動のタイミングの到来毎に収入管理トークンTiの資金を段階的に支払管理トークンTpに移動する。移転部125は、支払期限が到来した支払管理トークンTpの資金を支払先に移転する必要があるが、支払管理トークンTpの資金が支払額に到達している保証はない。そこで、分配部120は、いずれかの支払管理トークンTpの支払期限が到来したときに資金移動をすることにより、支払管理トークンTpに蓄積された資金が支払額以上となる確率を高めることができる。
【0043】
2つ目の条件に関し、ユーザの収入は必ずしも定期的に発生するわけではなく、突発的に発生し得る。このため、仮に資金移動のタイミングを定期的に設けたとしても、そのタイミングで収入管理トークンTiに資金が蓄積されている保証はない。そのため、判定部121は、収入管理トークンTiの資金を監視し、収入管理トークンTiにある程度資金が貯まったときを資金移動のタイミングとする。
【0044】
したがって、「あらかじめ定められた所定の金額」とは、判定部121が資金移動のタイミングを判定する際に参照するタイミング決定用閾額であり、ユーザが自由に設定できる額である。ただし、所定の金額の設定額が高すぎると資金移動のタイミングの頻度は減るため、ユーザの収入の過去の統計データに基づいて判定部121は所定の金額の設定額の上限値を定めてもよい。上限値の一例としては、判定部121は、所定の期間(例えば1ヶ月間)のユーザの収入の平均値の20%である。
【0045】
ところで、支払管理トークンTpに貯蓄されている資金はその支払管理トークンTpの支払のために貯蓄するものであり、ユーザが自由に移動できると支払期限が到達したときに支払に支障を来しかねない。そのため、支払管理トークンTpに貯蓄されている資金は原則として移動を禁止されるべきである。
【0046】
このため、資金移動コントラクトCtによって実現される移動管理部122は、支払管理トークンTpに定められた支払が完了する前には支払管理トークンTpに貯蓄されている資金の移動を禁止する。これにより、移動管理部122は、支払管理トークンTpによって支払が達成できる確率を高めることができる。
【0047】
一方で、移動管理部122は、その支払管理トークンTpに定められた支払のための移動とその支払管理トークンTpに対して設定された優先度よりも高い優先度が設定された他の支払管理トークンへの移動については許可する。例えば、ある支払管理トークンTpに設定された優先度よりも高い優先度が設定された他の支払管理トークンTpの支払期限が到来したときに、その支払管理トークンTpに貯蓄されている資金が支払額に到達していないとする。移動管理部122が支払期限が到来する前の支払管理トークンTp間での資金の移動を一切禁止すると、優先度の高い支払が滞ることになりかねない。
【0048】
そこで、移動管理部122は、支払期限が到来した支払管理トークンTpの資金が不足している場合には、その支払管理トークンTpに設定されている優先度よりも低い優先度が設定された支払管理トークンTpからの資金の移動を許可する。これにより、移動管理部122は、高い優先度が設定された支払管理トークンTpの支払が達成できる確率を高めることができる。
【0049】
続いて、分配部120による資金の分配について説明する。上述したように、分配部120は、資金移動タイミングの到来を契機として、各収入管理トークンTiに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいてブロックチェーンB上に存在する支払管理トークンTpそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び支払額とに基づいて分配する。
【0050】
図3(a)-(b)は、実施の形態に係る優先度及び残高充当カーブを説明するための図である。具体的には、
図3(a)は、支払管理トークンTpの優先度とその支払項目とを関連付けて格納する優先度データベースDのデータ構造を模式的に示す図である。優先度データベースDは、例えばブロックチェーンBを構成する情報処理装置1のうちの少なくとも1つの情報処理装置1が、ユーザが編集可能な態様で記憶している。
【0051】
図3(a)に示すように、優先度データベースDは、ユーザ識別子毎にそのユーザ識別子で特定されるユーザに関連付けられている支払管理トークンTpを示すトークン識別子と、支払管理トークンTpに設定されている優先度と、支払管理トークンTpの支払項目とを関連付けて記憶している。
図3(a)は、ユーザ識別子がUID00001のユーザには少なくとも3つの支払管理トークンTp(トークン識別子はそれぞれTID9043852、TID5619438、及びTID1534980)が関連付けられており、それえらの優先度は順に7、6、1である。また、3つの支払管理トークンTpの支払項目は、それぞれ家賃、家電支払、及び任意積立である。
【0052】
実施の形態に係る優先度データベースDにおいて、優先度は1から7までの整数で表されており、数字が大きいほど優先度が高いことを表している。
図3(a)に示す例では、トークン識別子がTID9043852である支払管理トークンTpの支払項目は家賃であり、設定されている優先度は最も高い7である。また、トークン識別子がTID1534980である支払管理トークンTpはユーザが任意に設定した積立が目的となっており、最も低い優先度である1が設定されている。すなわち、
図3(a)に示す例では、ユーザが任意に設定した積立よりも、家賃の支払いの方が優先度が高いことを示している。
【0053】
図3(b)は、支払管理トークンTpに貯蓄する資金の量を決定するために参照される残高充当カーブを模式的に示す図である。
図3(b)において縦軸は支払管理トークンTpに貯蓄される資金の額を示し、横軸は資金の積立に伴う移動量(詳細は後述する)を示す。
図3(b)には、1から7までの整数が付された7つの曲線が示されているが、それらは1から7までの各優先度に対応する残高充当カーブを示している。分配部120は、各支払管理トークンTpに設定されている優先度に対応する残高充当カーブを用いて、支払管理トークンTpに分配する資金の額を決定する。
【0054】
いま、支払額(すなわち、積立の目標となる最大貯蓄額)が同一であり、優先度がそれぞれ1から7までの7つの支払管理トークンTpが存在したと仮定し、
図3(b)に示すように、分配部120が7つの支払管理トークンTpそれぞれに同額の資金bを移動したとする。このとき、分配部120は、支払管理トークンTpそれぞれに設定された優先度に対応する残高充当カーブに沿って、貯蓄されている資金を示す印(
図3(b)では白抜きの丸)を移動させる。
【0055】
例えば、
図3(b)に示すように、優先度が7である残高充当カーブにおいては、資金bに対応する横軸方向の「移動量」は、a7である。同様に、優先度がm(mは1から7までの整数)である残高充当カーブにおいては、移動量はamで表されている。
図3(b)から明らかなように、支払管理トークンTpの貯蓄額が少ない場合には、優先度が高いほど残高充当カーブにおける移動量が小さい。
【0056】
以上を踏まえて、実施の形態に係る分配部120による資金の分配を説明する。
図4(a)-(c)は、実施の形態に係る分配部120による資金の分配を説明するための図であり、あるユーザに関して資金移動タイミングが到来したときにブロックチェーンB上に存在する3つの支払管理トークンTpに設定された優先度と資金の蓄積状況とを示す図である。具体的には、
図4(a)は優先度が7の支払管理トークンTpの残高充当カーブを示しており、
図4(b)は優先度が1の支払管理トークンTpの残高充当カーブを示しており、
図4(c)は優先度が4の支払管理トークンTpの残高充当カーブを示している。
【0057】
図4(a)-(c)において、白抜きの丸は資金移動前の支払管理トークンTpの貯蓄額を示し、白抜きの四角は資金移動後の支払管理トークンTpの貯蓄額を示している。
図4(a)に示す残高充当カーブにおいて、分配部120が資金をb
iだけ移動すると、資金移動の前後において残高充当カーブにおける移動量はa
iである。同様に、
図4(b)に示す残高充当カーブにおいて、分配部120が資金をb
jだけ移動すると、資金移動の前後において残高充当カーブにおける移動量はa
jである。
図4(c)に示す残高充当カーブにおいて、分配部120が資金をb
kだけ移動すると、資金移動の前後において残高充当カーブにおける移動量はa
kである。
【0058】
資金移動タイミングが到来したときに分配部120が移動可能な資金(すなわち、到来した資金移動タイミングにおいて存在する収入管理トークンTiに貯蓄されている資金のうち、分配部120が分配可能な資金)の総額がBであるとする。このとき、分配部120は、以下の式(1)を満たすようにai、aj、及びakを決定し、それに対応するbi、bj、及びbkを資金の移動量とする。
【0059】
【0060】
式(1)の定性的な意味は以下のとおりである。分配部120は、各支払管理トークンTp荷移動させる資金の総和がBとなり、かつ各残高充当カーブにおける横軸方向の移動量の総和が最小となるように資金の移動量を決定する。
図3(b)を参照して説明したように、支払管理トークンTpの貯蓄額が少ない場合には、優先度が高いほど残高充当カーブにおける移動量が小さくなる。これは、優先の高い残高充当カーブほど、貯蓄額が低いときの傾きが大きくなっていることに対応する。したがって、各残高充当カーブにおける移動量の総和が最小とするという条件は、優先度が高く、かつ貯蓄額が少ない支払管理トークンTpに多くの資金を移動させるための条件と解釈することもできる。このように、優先度毎に定められた残高充当カーブにそって資金を分配することにより、分配部120は、優先度が高く設定されている支払管理トークンTpほど、早い段階で多くの資金を移動させることができる。
【0061】
ところで、
図3(b)から明らかなように、優先度の高い残高充当カーブほど、貯蓄された資金が最大貯蓄額(すなわち、支払額)に近づくにつれて傾きが小さくなる。これは、式(1)に示す分配規則にしたがうと、優先度の高い残高充当カーブは、貯蓄されている資金が最大に近づくにつれて資金移動が少なくなることを意味する。少量の資金の蓄積によって移動量が大きくなるからである。
【0062】
そこで、分配部120は、残高充当カーブにおいて、現在貯蓄されている資金ではなく、n回(nは1以上の整数)前の資金移動時の貯蓄額からの移動量が最小となるように資金の移動量を決定してもよい。具体的には、分配部120は、以下の式(2)を満たすようにa(1)
i、a(1)
j、及びa(1)
kを決定し、それに対応するb(1)
i、b(1)
j、及びb(1)
kを決定する。
【0063】
【0064】
式(2)において、B(1)は、今回分配部120が移動可能な資金と1回前に分配部120が移動可能であった資金との総和である。また、b(1)
i、b(1)
j、及びb(1)
kは、1回前の資金の貯蓄額からの資金の増加量(移動量)であり、a(1)
i、a(1)
j、及びa(1)
kは、1回前の貯蓄額からの残高充当カーブにおける移動量(横軸方向の移動量)である。つまり、式(2)は、各支払管理トークンTpに貯蓄されている資金を1回前に戻し、かつ分配部120が分配可能な資金を1回前の額と今回の額とを総和して、式(1)にしたがって最適化すると捉えることもできる。
【0065】
図5(a)-(c)は、実施の形態に係る分配部120による資金の分配の別の例を説明するための図であり、
図4(a)-(c)に示す状態の1回前の資金移動時の貯蓄額からの移動量が最小となるように資金の移動量を決定する場合の例を説明するための図である。
図5(a)-(c)において、白抜きの三角は、1回前の資金移動のタイミングにおいて資金移動前の支払管理トークンTpの貯蓄額を示している。1回前であるため、当然ながら、各支払管理トークンTpにおける貯蓄額は最新の支払管理トークンTpの貯蓄額よりも低く、それに伴って残高充当カーブの傾きは大きくなる。このように、分配部120が過去の残高充当時(資金移動時)に遡って各支払管理トークンTpへの資金の移動量を決定することにより、高い優先度が設定された支払管理トークンTpへの資金の充当量を増やすことができる。なお、式(2)は、分配部120が1回前の貯蓄額をスタートとする場合を示しているが、2回以上前の貯蓄額をスタートとする場合も同様である。
【0066】
また、分配部120が1回以上前の過去の残高充当時(資金移動時)に遡って各支払管理トークンTpへの資金の移動量を決定することにより、後から生成された優先度の高い支払管理トークンTpにより多くの資金を移動することもできるようになる。例えば、1回前は優先度1と6の支払管理トークンTpのみが存在し、今回は優先度7の支払管理トークンTpが追加されたとする。この場合、分配部120が1回前に遡ることにより、2回分の資金移動量を割り当てることになるので、優先度が7の支払管理トークンTpにより多くの資金を積み立てることができる。
【0067】
このように、支払管理トークンTpに設定される優先度は残高充当カーブを決定し、ひいては支払管理トークンTpへの資金移動の振る舞いを決定するパラメータである。そのため、ユーザが支払の重要性を鑑みて、ユーザが支払管理トークンTpに設定されている優先度を変更できると便利である。
【0068】
そのため、支払管理トークンTpに対して設定されている優先度を登録している優先度データベースDはユーザが携帯電話等のユーザ端末を介して編集可能となっている。資金移動コントラクトCtによって実現される取得部123は、ユーザが編集可能な優先度データベースDを参照して支払管理トークンTpに設定されている優先度を取得する。これにより、実施の形態に係る情報処理装置1は、ユーザが設定した優先度を支払管理トークンTpへの資金移動の量に反映させることができる。
【0069】
家賃のように支払額が固定されている場合には、資金移動によって各支払管理トークンTpの支払額と同一の額が貯蓄される。しかしながら、電気代等の光熱費や通信費等、定期的な支払が発生することは決まっていてもその額が変動する支払も存在する。このような支払のための支払管理トークンTpは、支払額を高めに設定してあり、支払期限が到来した支払管理トークンTpが支払いを済ませた後に、支払期限が到来した支払管理トークンTpに資金が残余することも起こりうる。
【0070】
そこで、資金移動コントラクトCtによって実現される分配部120は、到来した資金移動タイミングにおいて存在する収入管理トークンTiに貯蓄されている資金に加えて、支払管理トークンTpに定められた支払が完了した後に支払管理トークンTpに残っている余剰資金も、支払前の各支払管理トークンTpに分配する。これにより、分配部120は、ユーザの資金を余すことなく活用して支払にあてることができる。
【0071】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図6は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0072】
分配部120は、ブロックチェーンB上にあるユーザに関する支払管理トークンTpが存在するか否かを検索する(S2)。支払管理トークンTpがある場合(S4のYes)、分配部120は、資金移動のタイミングであるか否かを判定する(S6)。資金移動のタイミングでない間(S8のNo)、分配部120はステップ6に戻って資金移動のタイミングであるか否かの判定を繰り返す。
【0073】
資金移動のタイミングである場合(S8のYes)、分配部120は、収入管理トークンTiに貯蓄されている資金を、支払前の支払管理トークンTpそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンTpにすでに貯蓄されている貯蓄額及び支払額とに基づいて、各支払管理トークンTpに分配する(S10)。
【0074】
支払期限が到来した支払管理トークンTpがある場合(S12のYes)、移転部125は、支払期限が到来した支払管理トークンTpに設定されている支払先に支払額に相当する資金を移転し(S14)、情報処理装置1はステップS2の処理に戻る。
【0075】
支払期限が到来した支払管理トークンTpがない場合(S12のNo)、情報処理装置1はステップS6の処理に戻る。ステップS4においてブロックチェーンB上に支払管理トークンTpがない場合(S4のNo)、本フローチャートにおける処理は終了する。情報処理装置1は、ブロックチェーンBのユーザ毎に上記処理を定期的に繰り返すことで、各ユーザの家計管理を実行する。
【0076】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、家計管理の正確性を向上させることができる。
【0077】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0079】
<変形例>
上記では、ブロックチェーンBを構成する情報処理装置1が、各スマートコントラクトを実行する場合について説明した。これに替えて、ブロックチェーンBに登録しているユーザのユーザ端末が各スマートコントラクトを実行してもよい。具体的には、ユーザ端末にインストールされた家計管理用のアプリケーションがユーザ端末によって実行されることで、ブロックチェーンBにアクセスする。
【0080】
ユーザ端末は、ブロックチェーンBから読み出した資金移動トークンTtに実装された資金移動コントラクトCtを実行することにより、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する収入管理トークンTiに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンTpそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンTpにすでに貯蓄されている貯蓄額及び支払額とに基づいて、各支払管理トークンTpに分配する。ユーザ端末は、ブロックチェーンBから読み出した支払管理トークンTpに実装された支払管理コントラクトCpを実行することにより、支払管理トークンTpの支払期限の到来を契機として、支払管理トークンTpに貯蓄されている資金のうち支払額に相当する資金を支払先に移転する。
【0081】
このように、ユーザの家計管理の実行を各ユーザのユーザ端末に分散することにより、ブロックチェーンBを構成する情報処理装置1の負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 情報処理装置
10 記憶部
11 通信部
12 制御部
120 分配部
121 判定部
122 移動管理部
123 取得部
124 収入資金管理部
125 移転部
126 支払資金管理部
B ブロックチェーン
D 優先度データベース
【要約】
【課題】家計管理の正確性を向上させる。
【解決手段】資金移動トークンに実装された資金移動コントラクトが、資金移動タイミングの到来を契機として、到来した資金移動タイミングにおいて存在する収入管理トークンに貯蓄されている資金を、到来した資金移動タイミングにおいて存在する支払管理トークンそれぞれに対して設定された優先度と、各支払管理トークンにすでに貯蓄されている貯蓄額及び支払額とに基づいて、各支払管理トークンに分配する。支払管理トークンに実装された支払管理コントラクトが、支払管理トークンの支払期限の到来を契機として、支払管理トークンに貯蓄されている資金のうち支払額に相当する資金を支払先に移転する。
【選択図】
図2