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特許7466061冷凍サイクルの遮断弁制御装置及び空気調和装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】冷凍サイクルの遮断弁制御装置及び空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F25B49/02 520M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023528887
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023068
(87)【国際公開番号】W WO2022264368
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】澤村 充
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/110425(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/054199(WO,A1)
【文献】特開平7-280319(JP,A)
【文献】特開2016-31167(JP,A)
【文献】実開平5-4220(JP,U)
【文献】特開2005-121333(JP,A)
【文献】特開平4-39558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機及び室外機を含む冷凍サイクルに使用されている冷媒の漏洩を検知する漏洩検知部と、
前記室内機と前記室外機との間を接続する配管に配置され、電力を供給することで開閉可能な遮断弁と、
この遮断弁に電力を供給する交流電源の停電を検知する停電検知部と、
前記停電の発生時に代替して電源を供給可能に構成されるバックアップ電源と、
前記漏洩検知部が冷媒の漏洩を検知すると、前記遮断弁を閉に制御する遮断弁制御回路とを備え、
前記遮断弁制御回路は、前記停電検知部が一定時間の間停電の検知を継続している際に、前記遮断弁を閉じるように制御する冷凍サイクルの遮断弁制御装置。
【請求項2】
前記遮断弁は、モータで駆動され、弁を全閉から全開の間で開度が制御可能な電子制御弁であり、
前記遮断弁制御回路は、電源投入時に前記バックアップ電源の充電量を取得すると、前記充電量に応じて前記電子制御弁の開度を変化させる請求項1記載の冷凍サイクルの遮断弁制御装置。
【請求項3】
室内に設置される室内機と、
室外機と、
前記室内機が設置される室内に設置され、前記室内機と前記室外機からなる冷凍サイクルに使用されている冷媒の漏洩を検知する漏洩検知部と、
前記室内機と前記室外機との間を接続する配管の途中に設けられ、電力により前記室内機と前記室外機の間の冷媒の流れを開放もしくは遮断する遮断弁を備えた遮断弁装置とを備え、
前記遮断弁装置は、前記遮断弁に電力を供給する交流電源の停電を検知する停電検知部と、
前記停電の発生時に代替して前記遮断弁に電力を供給可能なバックアップ電源と、
前記漏洩検知部が冷媒の漏洩を検知すると前記遮断弁を閉に制御し、前記停電検知部が一定時間の間停電の検知を継続している際に、前記遮断弁を閉じるように制御する遮断弁制御回路とを備えた空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和装置などの冷凍サイクルに使用されている冷媒の屋内への漏洩を検知すると、その屋内に設置された室内機に繋がる配管中に設けた遮断弁を閉じる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばR32のようなA2L冷媒を使用する冷凍サイクル装置については、IEC60335において安全を図る目的で、冷媒の漏洩を検知する機器と、冷媒の漏洩を止めるための遮断弁又は換気扇とを備え、停電中に冷媒の漏洩が発生してもその漏洩量を最小限とするために、上記の遮断弁を閉じることが要求されている。このような安全装置においては、停電発生時には冷媒の漏洩が検知できないため、例えば特許文献1,2には、冷凍サイクル装置に予備電源を備え、停電発生時には、この予備電源によって遮断弁を閉じることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2018/078729号
【文献】特開2020-134005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献には予備電源を備えることのみしか記載がなく、停電時にどのような手順によって開閉弁を全閉するかについては、具体的な記載がない。冷凍サイクル装置のように各々の構成部が個別に電源に接続される装置の停電には様々な発生態様や発生個所があることから、停電の発生を検知した場合でも、直ちに開閉弁を閉じる制御を行う必要が無いこともあり得る。また、バッテリ等の予備電源は、無尽蔵に電力を供給できるわけではなく、実際に冷媒が漏洩した時に遮断弁を閉じるために、普段は極力電力を消費しない状態にしておく必要がある。
そこで、状況に対応して適切に開閉弁を閉じる制御を行うことができる冷凍サイクルの遮断弁制御装置及び空気調和装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷凍サイクルの遮断弁制御装置は、室内機及び室外機を含む冷凍サイクルに使用されている冷媒の漏洩を検知する漏洩検知部と、
前記室内機と前記室外機との間を接続する配管に配置され、電力を供給することで開閉可能な遮断弁と、
この遮断弁に電力を供給する交流電源の停電を検知する停電検知部と、
前記停電の発生時に代替して電源を供給可能に構成されるバックアップ電源と、
前記漏洩検知部が冷媒の漏洩を検知すると、前記遮断弁を閉に制御する遮断弁制御回路とを備え、
前記遮断弁制御回路は、前記停電検知部が一定時間の間停電の検知を継続している際に、前記遮断弁を閉じるように制御する。
また、実施形態の空気調和装置は、室内に設置される室内機と、
室外機と、
前記室内機が設置される室内に設置され、前記室内機と前記室外機からなる冷凍サイクルに使用されている冷媒の漏洩を検知する漏洩検知部と、
前記室内機と前記室外機との間を接続する配管の途中に設けられ、電力により前記室内機と前記室外機の間の冷媒の流れを開放もしくは遮断する遮断弁を備えた遮断弁装置とを備え、
前記遮断弁装置は、前記遮断弁に電力を供給する交流電源の停電を検知する停電検知部と、
前記停電の発生時に代替して前記遮断弁に電力を供給可能なバックアップ電源と、
前記漏洩検知部が冷媒の漏洩を検知すると前記遮断弁を閉に制御し、前記停電検知部が一定時間の間停電の検知を継続している際に、前記遮断弁を閉じるように制御する遮断弁制御回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態であり、冷凍サイクルシステムの構成を示す図である。
図2図2は、遮断弁制御装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、遮断弁制御装置,室内機及び冷媒検知警報器間における制御シーケンスであり、定常動作を示す図である。
図4図4は、同冷媒漏洩動作を示す図である。
図5図5は、同停電時動作(1)を示す図である。
図6図6は、同停電時動作(2)を示す図である。
図7図7は、同停電時動作(3)を示す図である。
図8図8は、遮断弁制御装置の制御回路における処理内容を示すフローチャートである。
図9図9は、交流電源に発生した停電が一定時間以上継続する場合に対応したタイミングチャートである。
図10図10は、交流電源に瞬停が発生した場合に対応したタイミングチャートである。
図11図11は、第2実施形態であり、遮断弁制御装置の制御回路が図3に示す「弁開動作」を行う場合の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置は、例えば、屋内に設置される室内機1,屋外に設置する室外機2,これらを接続する冷媒配管10、11からなる空気調和装置である。この空気調和装置は、さらに、冷媒配管10、11の途中に介在する遮断弁装置3及び冷媒検知警報器4を備えている。室内機1は、室内制御回路5,ファン6,熱交換器7及び開閉弁8を有しており、室内制御回路5は、室内熱交換器に通風するファン6及び冷媒の流通を切り替える開閉弁8を制御する。また、室内制御回路5は、通信ライン9を介して屋外の室外機2の図示しない室外制御回路と通信を行う。なお、遮断弁装置3は室内機1内に組み込むことも可能であるが、組み込んだ場合、室内機1が大型化してしまう。このため、遮断弁装置3は、室内機1近傍の天井裏や床下に設置することが望ましい。
【0008】
室内機1の熱交換器7は、液側の配管10及びガス側の配管11を介して室外機2に接続されており、この配管中を冷媒が流通することで冷凍サイクルが形成される。室内機1の開閉弁8は、液側となる配管10側に配置されている。また、室内機1と室外機2との間の配管10及び11には、遮断弁装置3が介在している。室内機1からは配管10により、例えばR32のような冷媒液が室外機2に送出され、室外機2からは配管11により、冷媒液が高圧ガス化したものが室内機1に戻る。なお、複数の室内機1が1台の室外機2の冷媒配管に並列に接続されるいわゆるマルチタイプで、且つ、各室内機1の暖房と冷房との組み合わせを自由に選択できる冷暖同時マルチエアコンに適用する場合は、室内機1と室外機3が3本の配管によって接続されるため、遮断弁12,13に加えて3本目の配管途中にも遮断弁を設ける必要がある。
【0009】
遮断弁装置3は、配管10及び11にそれぞれ介在する遮断弁12及び13,開閉表示ランプ14,これらを制御する遮断弁制御回路15及びバックアップ電源16を備えている。遮断弁制御回路15は、通信バス17を介して室内機1の室内制御回路5に接続されており、両者間で通信が行われる。バックアップ電源16は、例えばリチウム電池のような二次電池やスーパーキャパシタ等で構成されている。バックアップ電源16は、常には遮断弁装置3が接続されている交流電源18より充電が行われており、交流電源18に停電が発生した際に遮断弁装置3を動作させるために使用される。開閉表示ランプ14は、遮断弁12及び13の開閉状態に応じて点消灯状態が制御される。遮断弁12及び13は、モータ駆動により弁の開閉を制御する電子制御弁、いわゆるパルスモータバルブ(PMV)である。なお、開閉弁8も同様の電子制御弁を使用することができる。
【0010】
漏洩検知部に相当する冷媒検知警報器4は、空気中の所定濃度の冷媒を検知するガスセンサ19,警報ランプ20,警報ブザー21,検知状態解除スイッチ22及び室内機1と通信を行うための図示しない制御回路を備えている。ガスセンサ19は、配管10又は11よりガス化した冷媒が漏出した際にそのガスを検知すると漏洩検知信号を出力する。これにより、警報ランプ20を点灯させると共に、警報ブザー21を鳴動させる。また、冷媒検知警報器4も通信バス17に接続されており、上記制御回路は、漏洩検知信号を室内機1の室内制御回路5に出力する。尚、通信バス17は電源ラインも備えており、冷媒検知警報器4は、室内機1より通信バス17を介して動作用の電源供給を受けている。冷媒検知警報器4は、一般に室内機1が設置された被空調室内に設置される。なお、室内機1の内部に冷媒検知警報器4を組み込んでも良い。
【0011】
図2は、遮断弁装置3の詳細な構成を示す機能ブロック図である。制御部に相当する遮断弁制御回路15は、例えばMCU(Micro Control Unit)で構成されている。電源回路23はAC-DCコンバータであり、入力される交流電源18より例えば12Vの直流電源を生成して、DC-DCコンバータ24,弁駆動回路25及び充電回路26等に供給する。DC-DCコンバータ24は、12Vの直流電源を降圧して生成した5Vの直流電源を遮断弁制御回路15に供給する。
【0012】
弁駆動回路25は、遮断弁制御回路15からの制御信号に応じて、遮断弁12及び13を開閉駆動するための駆動信号を出力する。充電回路26は、12Vの直流電源を適正な電圧に降圧してバックアップ電源16を充電する。停電検知部に相当する停電検知回路27は、例えばフォトカプラを有しており、その入力側は交流電源18に接続され、出力側は遮断弁制御回路15に接続されている。交流電源18が電源の供給を継続していれば、それに伴い遮断弁制御回路15には、停電検知回路27からの出力信号が継続的に入力される。交流電源18に停電が発生すると、遮断弁制御回路15には上記出力信号の入力が停止されるので、それが停電検知信号となり、遮断弁制御回路15には割込み信号として入力される。ここで、室内機1の電源18と遮断弁装置3の電源18は同じ商用交流電源でも良いし、別電源でも良い。それぞれに別電源を敷設した場合には、室内機1の停電と遮断弁装置3も停電が個別に発生する事態も想定される。
【0013】
バックアップ電源16から直流12Vラインへの電源供給は放電回路28を介して行われ、放電回路28は、遮断弁制御回路15により制御される。すなわち、電源18から遮断弁装置3に対して電力供給があれば放電回路28からバックアップ電源16に充電が行われ、電源18が停電等で遮断弁装置3への電力供給が停止するとバックアップ電源16から遮断弁制御回路15に対する給電が開始される。尚、開閉表示ランプ14の図示は省略している。また、通信バス17には、リモコン30が接続されている。
【0014】
次に、本実施形態の作用について図3から図10を参照して説明する。図3から図7は、遮断弁装置3,室内機1及び冷媒検知警報器4間における制御シーケンスを示す。
【0015】
<定常動作>
図3に示す定常動作では、各機器に交流電源18が投入されて起動すると、通信バス17を介して室内機1及び遮断弁装置3間と、室内機1及び冷媒検知警報器4間との間で「初期通信」が行われる。その後、遮断弁装置3は、「弁初期動作」として遮断弁12及び13を閉じるが、室内機1より「弁開指令」を受信すると、遮断弁12及び13を開く。冷媒検知警報器4は、室内機1に冷媒漏洩検知の有無を通知する「状態送信定期通信」を行う。
【0016】
<冷媒漏洩動作>
図4に示す冷媒漏洩動作では、冷媒検知警報器4が冷媒の漏洩を検知すると、検知したことを室内機1に通知するため通信バス17を介して「冷媒漏洩送信」を行う。室内機1は、その通知を受信すると、遮断弁装置3に「弁閉指令」を送信する。遮断弁装置3は「弁閉指令」を受信すると、遮断弁12及び13を閉じる。これらの動作によって、室内機1は冷凍サイクルから切り離され、室内機1内に存在する以上の量の冷媒は被空調室内に漏洩しなくなる。冷媒は主として室外機2に大量に保有されるため、室内に漏洩する冷媒が室内機1の内部に保有する冷媒のみであれば、室内への大量の冷媒漏洩は防止できる。
【0017】
<停電時動作(1)(全機器停電時)>
図5に示す停電時動作(1)では、冷媒検知警報器4は直ちに「システム停止」となる。室内機1は「停電検知」してから「システム停止」となる。遮断弁装置3では、停電検知回路27により「停電検知」が行われ、遮断弁制御回路15は放電回路28を介してバックアップ電源16からの給電をONにする。その後、「一定時間経過待ち」をしてから遮断弁12及び13を閉じる。
【0018】
<停電時動作(2)(装置3のみ停電時)>
図6に示す停電時動作(2)では、遮断弁装置3の動作は図5と同じであるが、遮断弁制御回路15は、バックアップ電源16からの給電により動作している期間は、室内機1との通信を停止する。室内機1及び冷媒検知警報器4は「通常動作」を継続するが、室内機1は、遮断弁装置3との通信が途絶したことを検知すると「通信異常発生」と判断する。そして、「異常発報」を行うと「システム停止」に移行する。それに伴い、ステータスが「システム停止」となっていることを冷媒検知警報器4に送信し、冷媒検知警報器4も「システム停止」となる。
【0019】
<停電時動作(3)(室内機1のみ停電時)>
図7に示す停電時動作(3)では、室内機1及び冷媒検知警報器4の動作は図5と同じである。遮断弁装置3は「通常動作」を継続するが、室内機1との通信が途絶したことを検知すると「通信異常発生」と判断する。すると、遮断弁12及び13を閉じて「システム停止」に移行する。
【0020】
図8は、遮断弁制御回路15における処理内容を示すフローチャートである。遮断弁制御回路15は、電源遮断,つまり停電を検知したか否かを判断する(S1)。停電を検知しなければ(NO)、室内機1との通信が途絶したか否か(S7)、冷媒検知警報器4よりガス検知信号を受信したか否か(S8)を順次判断する。ステップS7及びS8で何れも「NO」と判断すると、室内機1の室内制御回路5からの指示に従い遮断弁12及び13を開閉して、フラグFを初期値である「0」にセットする(S10)。
【0021】
ステップS1で電源遮断を検知すると(YES)、「F=0」か否かを判断する(S2)。「F=0」であれば(YES)「F=1」にセットしてから、停電状態が継続していることを確認するために用いるタイマTによるカウントをスタートさせて(S3)、タイマTのカウントを行う(S4)。
【0022】
続いて、タイマTのカウント値Tが閾値Ts以上か否かを判断する(S5)。閾値Tsは前記の「一定時間」に相当し、例えば数分程度に設定する。カウント値Tが閾値Ts未満であれば(NO)、ステップS1に戻る。一方、カウント値Tが閾値Ts以上であれば(YES)、室内機1に対して停電を報知して(S5a)から、遮断弁12及び13を閉じる(S6)。また、ステップS7で(YES)と判断した場合もステップS6に移行する。ステップS8で(YES)と判断した場合は、やはり遮断弁12及び13を閉じて待機状態に移行する(S9)。
【0023】
図9は、交流電源18に発生した停電が一定時間以上継続する場合に対応したタイミングチャートであり、図10は、発生した停電が一定時間内に解消されて復帰する、所謂瞬停が発生した場合に対応したタイミングチャートである。図9に示すように、(1)交流電源18に停電が発生したことを検知すると、(2)遮断弁制御回路15は放電回路28を介してバックアップ電源16からの給電を開始させる。これにより12V電源の電圧は迅速に復帰する。
【0024】
ここで、従来は停電を検知しているので、遮断弁制御回路15が即座に、すなわち破線で示すタイミングで遮断弁12及び13を閉じることになるが、本実施形態では、図8におけるステップS1~S8のループを回っている間に一定時間が経過して(T≧Ts)になった際に、その時点で(3)遮断弁制御回路15は遮断弁12及び13を閉じる。この動作によって、万が一、停電時に冷媒が漏洩しても、被空調室に対して室内機1の保有する冷媒量以上の漏洩は防止できる。
【0025】
一方、図10に示す極めて短時間の瞬時停電、いわゆる瞬停、の発生時には、この一定時間が経過する以前に(3)交流電源18からの電源供給が復帰しているので、遮断弁制御回路15は遮断弁12及び13を閉じる動作を実行しない。例えば、遮断弁制御回路15のみが動作している場合の消費電流値は10mA程度であるのに対し、遮断弁12及び13を開閉させる際の消費電流値は500mA程度である。したがって、一定時間の間に遮断弁制御回路15のみを動作させたとしても、遮断弁12及び13を閉じる動作を実行させなければ電力消費は小さくなるので、バックアップ電源16の消耗を抑制できる。
【0026】
以上のように本実施形態によれば、冷媒検知警報器4のガスセンサ19は、室内機1及び室外機27を含む冷凍サイクルに使用されている冷媒の漏洩を検知する。遮断弁12及び13は、室内機1と室外機2との間を接続する配管10及び11に配置され、停電検知回路27は交流電源18に発生した停電を検知する。
【0027】
バックアップ電源16は、前記停電の発生時に交流電源18に代替して電源を供給可能に構成され、遮断弁制御回路15は、停電検知回路27が停電を検知するとバックアップ電源16からの電源供給を開始させ、一定時間の経過後においても停電検知回路27が継続して停電を検知していることを確認すると、遮断弁12及び13を閉じるように制御する。したがって、図10に示す瞬停の発生時には、遮断弁制御回路15は遮断弁12及び13を閉じる動作を行わないので、バックアップ電源16の消耗を抑制できる。
【0028】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。この実施形態においても遮断弁12及び13は、第1実施形態と同様にモータで駆動することによって弁を全閉から全開の間で開度が制御可能な電子制御弁が用いられる。図11に示す第2実施形態は、遮断弁制御回路15が図3に示す「弁開動作」を行う場合の制御内容を示す。遮断弁制御回路15は、室内機1より遮断弁「開」の指示があると(S11;YES)、その時点で遮断弁12及び13が全開になっているか否かを判断する(S12)。全開になっていなければ(NO)、バックアップ電源16の電池残量Hを検出する(S13)。尚、電池残量Hは、遮断弁制御回路15が計算して求めても良い。
【0029】
続いて、遮断弁制御回路15は、電池残量Hに基づいて遮断弁12及び13を全閉状態にするまでに駆動可能な弁開度X(%)を算出する(S14)。そして、遮断弁12及び13の開度が上記のX(%)となるまで遮断弁12及び13を開く(S15)。
【0030】
すなわち、電源18からの電力供給はあるが、バックアップ電源16の電池残量Hが少ない状態の場合に、遮断弁12及び13が全開になっていると、その直後に停電や冷媒漏洩が発生してバックアップ電源16からの給電に切り替えた際に、バックアップ電源16の電力不足で遮断弁12及び13を全閉状態にできなくなるおそれがある。そこで、第2実施形態のように制御すれば、電池残量Hに応じて遮断弁12及び13の開度を決定するので、バックアップ電源16からの給電に切り替えた場合でも、遮断弁12及び13を確実に全閉状態にできる。
【0031】
遮断弁は、モータで駆動する電子制御弁に限られず、電力を用いて開閉可能な弁であれば良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11