(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20240404BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20240404BHJP
B23Q 1/64 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B23Q1/00 E
B23Q1/01 T
B23Q1/64 D
(21)【出願番号】P 2023534436
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026096
(87)【国際公開番号】W WO2023286111
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西木 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】伊海 恵介
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-058254(JP,A)
【文献】特開2021-062438(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189613(WO,A1)
【文献】特開平08-309632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00- 1/76
B23Q11/10-11/14
F16L27/00-27/12
F16L39/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
前記支持部により、水平方向、または、水平方向に対して斜め方向に延びる所定軸を中心に回動可能に支持されることによって、前記所定軸を中心に旋回動作する旋回動作部とを備え、
前記旋回動作部は、前記所定軸からその半径方向外側に離れた位置に配置され、ワークを着脱可能に保持するためのワーク保持部を有し、さらに、
前記旋回動作部に固定され、前記旋回動作部とともに前記所定軸を中心に旋回動作をする可動部と、前記支持部に固定され、前記可動部と組み合わされる固定部とを有し、前記所定軸の軸上に配置され、前記可動部および前記固定部の間において、流体の流路を接続するための流路接続部と、
流体圧を発生させる流体圧発生部と、
前記流体圧発生部から前記固定部に向けて流体を供給する第1流路と、
前記流路接続部において前記第1流路と連通し、前記可動部から前記ワーク保持部に向けて流体を供給する第2流路と、
前記第2流路の経路上に設けられ、前記ワーク保持部に向かう流体流れを制御する複数のバルブとを備え
、
前記第2流路は、前記第1流路と連通する位置から延びる主流路と、前記主流路から分岐し、各々が前記主流路および前記ワーク保持部の間で延びる複数の分岐流路とを含み、
複数の前記分岐流路の経路上には、それぞれ、複数の前記バルブが設けられる、工作機械。
【請求項2】
前記旋回動作部は、前記所定軸の軸方向に延び、前記支持部により回動可能に支持される被支持部と、前記被支持部から、前記所定軸の軸方向、かつ、前記所定軸の半径方向外側に延び、前記ワーク保持部が搭載されるアーム部とさらに有し、
前記アーム部には、前記被支持部および前記ワーク保持部の間で延びる第2中空部が設けられ、
複数の前記バルブは、前記第2中空部に配置される、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記バルブは、前記ワーク保持部に向かう空気流れを制御する空圧バルブである、請求項
2に記載の工作機械。
【請求項4】
支持部と、
前記支持部により、水平方向、または、水平方向に対して斜め方向に延びる所定軸を中心に回動可能に支持されることによって、前記所定軸を中心に旋回動作する旋回動作部とを備え、
前記旋回動作部は、前記所定軸からその半径方向外側に離れた位置に配置され、ワークを着脱可能に保持するためのワーク保持部を有し、さらに、
前記旋回動作部に固定され、前記旋回動作部とともに前記所定軸を中心に旋回動作をする可動部と、前記支持部に固定され、前記可動部と組み合わされる固定部とを有し、前記所定軸の軸上に配置され、前記可動部および前記固定部の間において、流体の流路を接続するための流路接続部と、
流体圧を発生させる流体圧発生部と、
前記流体圧発生部から前記固定部に向けて流体を供給する第1流路と、
前記流路接続部において前記第1流路と連通し、前記可動部から前記ワーク保持部に向けて流体を供給する第2流路と、
前記第2流路の経路上に設けられ、前記ワーク保持部に向かう流体流れを制御する複数のバルブとを備え、
前記旋回動作部は、前記所定軸の軸方向に延び、前記支持部により回動可能に支持される被支持部をさらに有し、
前記被支持部は、前記所定軸の軸方向における端部に配置される端面を有し、
複数の前記バルブは、前記所定軸を中心とする周方向に並んで前記端面に接続される
、工作機械。
【請求項5】
前記被支持部には、前記所定軸の軸上で延び、前記端面に開口する第1中空部が設けられ、さらに、
前記第1中空部に挿入され、前記ワーク保持部に向けて延びる配線を備える、請求項
4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記バルブは、前記ワーク保持部に向かう油流れを制御する油圧バルブである、請求項
4または5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、国際公開第2017/080760号(特許文献1)には、機械ベッドと、機械ベッド上に設けられ、Z軸方向に移動可能なワーク位置決め装置とを備える工作機械が開示されている。ワーク位置決め装置は、水平方向に平行な軸を中心にして旋回可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、ワークを着脱可能に保持するためのワーク保持部が、水平方向に平行な軸(A軸)を中心に旋回可能に設けられた工作機械が知られている。このような工作機械においては、ワーク保持部に対して油または空気等の流体を供給する場合に、固定側と旋回側との間で流体の流路を接続するための流路接続部として回転継手が用いられている。
【0005】
しかしながら、近年、治具に対する油圧供給などによって、ワーク保持部に対する流体供給のポート数が増えており、回転継手の大型化(長軸化)を招いている。これにより、回転継手を配置するスペースを確保することが困難になったり、回転継手における摺動抵抗が増大したりする問題が生じている。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ワーク保持部に対して供給される流体の流路上で用いられ、固定側と旋回側との間で流体の流路を接続するための流路接続部を小型化することが可能な工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った工作機械は、支持部と、支持部により、水平方向、または、水平方向に対して斜め方向に延びる所定軸を中心に回動可能に支持されることによって、所定軸を中心に旋回動作する旋回動作部とを備える。旋回動作部は、所定軸からその半径方向外側に離れた位置に配置され、ワークを着脱可能に保持するためのワーク保持部を有する。工作機械は、旋回動作部に固定され、旋回動作部とともに所定軸を中心に旋回動作をする可動部と、支持部に固定され、可動部と組み合わされる固定部とを有し、所定軸の軸上に配置され、可動部および固定部の間において、流体の流路を接続するための流路接続部と、流体圧を発生させる流体圧発生部と、流体圧発生部から固定部に向けて流体を供給する第1流路と、流路接続部において第1流路と連通し、可動部からワーク保持部に向けて流体を供給する第2流路と、第2流路の経路上に設けられ、ワーク保持部に向かう流体流れを制御する複数のバルブとを備える。
【0008】
このように構成された工作機械によれば、複数のバルブが、流体圧発生部からワーク保持部に供給される流体流れにおいて、流路接続部よりも下流側に配置されるため、流路接続部において所定軸の軸方向に並ぶ流路数を少なくすることができる。これにより、所定軸の軸方向において流路接続部を小型化することができる。
【0009】
また好ましくは、旋回動作部は、所定軸の軸方向に延び、支持部により回動可能に支持される被支持部をさらに有する。被支持部は、所定軸の軸方向における端部に配置される端面を有する。複数のバルブは、所定軸を中心とする周方向に並んで端面に接続される。
【0010】
このように構成された工作機械によれば、複数のバルブが所定軸の軸周りに集約されるため、バルブのメンテナンス性を高めることができる。また、複数のバルブの設置に起因した、旋回動作部の旋回動作に伴うアンバランスを小さく抑えることができる。
【0011】
また好ましくは、被支持部には、所定軸の軸上で延び、端面に開口する第1中空部が設けられる。工作機械は、第1中空部に挿入され、ワーク保持部に向けて延びる配線をさらに備える。
【0012】
このように構成された工作機械によれば、被支持部の端面に接続される複数のバルブが、第1中空部に配索される配線と離れて配置されるため、バルブおよび配線間の干渉を容易に防ぐことができる。
【0013】
また好ましくは、バルブは、ワーク保持部に向かう油流れを制御する油圧バルブである。
【0014】
このように構成された工作機械によれば、バルブが大重量の油圧バルブである場合であっても、複数のバルブの設置に起因した、旋回動作部の旋回動作に伴うアンバランスを小さく抑えることができる。
【0015】
また好ましくは、旋回動作部は、所定軸の軸方向に延び、支持部により回動可能に支持される被支持部と、被支持部から、所定軸の軸方向、かつ、所定軸の半径方向外側に延び、ワーク保持部が搭載されるアーム部とさらに有する。アーム部には、被支持部およびワーク保持部の間で延びる第2中空部が設けられる。複数のバルブは、第2中空部に配置される。
【0016】
このように構成された工作機械によれば、複数のバルブがスペースの制約が大きい所定軸の軸周りから離れて配置されるため、複数のバルブの設置のためのスペースを容易に確保することができる。
【0017】
また好ましくは、バルブは、ワーク保持部に向かう空気流れを制御する空圧バルブである。
【0018】
このように構成された工作機械によれば、空圧バルブは軽量であるため、複数のバルブが所定軸の軸周りから離れて配置される場合であっても、バルブの設置に起因した、旋回動作部の旋回動作に伴うアンバランスの増大を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、この発明に従えば、ワーク保持部に対して供給される流体の流路上で用いられ、固定側と旋回側との間で流体の流路を接続するための流路接続部を小型化することが可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施の形態1における工作機械(テーブルの基準姿勢時)を示す斜視図である。
【
図2】この発明の実施の形態1における工作機械(テーブルの反転姿勢時)を示す斜視図である。
【
図3】
図1および
図2中のテーブルを部分的に示す断面図である。
【
図4】
図3中の矢印IVに示される方向に見たテーブルを示す図である。
【
図5】
図3中のテーブルにおいて、被支持部およびワーク保持部の間の連結構造を示す断面図である。
【
図6】
図3中のテーブルに対する油圧経路を模式的に示す図である。
【
図7】比較例における油圧経路を模式的に示す図である。
【
図8】この発明の実施の形態2における工作機械のテーブルを部分的に示す断面図である。
【
図9】
図8中のテーブルにおいて、被支持部およびワーク保持部の間の連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における工作機械(テーブルの基準姿勢時)を示す斜視図である。
図2は、この発明の実施の形態1における工作機械(テーブルの反転姿勢時)を示す斜視図である。図中には、工作機械の外観をなすカバー体を透視することによって、工作機械の内部構造が示されている。
【0023】
図1および
図2を参照して、本実施の形態における工作機械100は、ワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうマシニングセンタであり、より特定的には、工具の回転中心軸が水平方向に延びる横形マシニングセンタである。工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerical Control)工作機械である。
【0024】
本明細書においては、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸に平行な軸を「Z軸」といい、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸に直交する軸を「X軸」といい、鉛直方向に平行な軸を「Y軸」という。
図1および
図2の紙面における斜め左下の手前方向が「+Z軸方向」であり、斜め右上の奥方向が「-Z軸方向」である。
図1および
図2の紙面における斜め右下の手前方向が「+X軸方向」であり、斜め左上の奥方向が「-X軸方向」である。上方向が「+Y軸方向」であり、下方向が「-Y軸方向」である。
【0025】
まず、工作機械100の全体構造について説明する。工作機械100は、ベッド11と、コラム21と、サドル31と、クロススライド41と、工具主軸91と、テーブル51とを有する。
【0026】
ベッド11は、コラム21、サドル31、クロススライド41、工具主軸91およびテーブル51等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置されている。ベッド11は、鋳鉄等の金属からなる。
【0027】
ベッド11は、第1周壁部12と、第2周壁部13とを有する。第1周壁部12および第2周壁部13は、上面視した場合のベッド11の周縁に設けられている。第1周壁部12および第2周壁部13は、X軸方向におけるベッド11の両端部に設けられている。第1周壁部12は、-X軸方向におけるベッド11の端部に設けられている。第2周壁部13は、+X軸方向におけるベッド11の端部に設けられている。第1周壁部12および第2周壁部13は、上方に向けて立ち上がる壁形状をなしながらZ軸方向に沿って延びている。
【0028】
第1周壁部12は、第1頂面12aを有する。第2周壁部13は、第2頂面13aを有する。第1頂面12aおよび第2頂面13aは、X軸-Z軸平面に平行な平面である。第1頂面12aおよび第2頂面13aは、上方を向いている。
【0029】
コラム21は、ベッド11上に立設されている。コラム21は、全体として、ベッド11から上方に向けて立ち上がる門型形状を有する。コラム21は、ベッド11に対して固定されている。コラム21は、-Z軸方向におけるベッド11の端部に配置されている。
【0030】
サドル31は、コラム21により支持されている。サドル31は、+Z軸方向を向くコラム21の前面に設けられている。サドル31は、全体として、ベッド11から上方に向けて立ち上がる門型形状を有する。サドル31は、コラム21等に設けられた送り装置22,23およびガイド部26,27によって、コラム21に対してX軸方向に移動可能である。
【0031】
クロススライド41は、サドル31により支持されている。クロススライド41は、+Z軸方向を向くサドル31の前面に設けられている。クロススライド41は、全体として、X軸-Y軸平面に平行な板形状を有する。クロススライド41は、サドル31等に設けられた送り装置42,43およびガイド部46,47によって、サドル31に対してY軸方向(上下方向)に移動可能である。
【0032】
工具主軸91は、クロススライド41により支持されている。工具主軸91は、クロススライド41に対して固定されている。工具主軸91は、クロススライド41から+Z軸方向に向けて突出している。
【0033】
工具主軸91は、Z軸に平行な中心軸110を中心にして、モータ駆動により回転可能である。工具主軸91には、工作機械100におけるワーク加工のための工具が保持される。工具主軸91の回転に伴って、工具主軸91に保持された工具が中心軸110を中心に回転する。
【0034】
テーブル51は、ベッド11上に設けられている。テーブル51は、コラム21、サドル31およびクロススライド41から+Z軸方向に離れた位置に設けられている。テーブル51は、ワークを保持するための装置である。テーブル51は、Z軸方向において工具主軸91と対向する位置にワークを保持する。
【0035】
テーブル51は、ベッド11等に設けられた送り装置52,53およびガイド部56,57,58,59によって、ベッド11に対してZ軸方向に移動可能である。テーブル51は、モータ駆動によって、X軸方向に平行な旋回中心軸120を中心に旋回動作が可能である。テーブル51は、モータ駆動によって、旋回中心軸120に直交する回転中心軸130を中心に回転動作が可能である。
【0036】
なお、図示されていないが、ベッド11から-X軸方向に隣り合う位置には、複数の工具を格納するための工具マガジンが設けられている。工具マガジンに格納される工具と、工具主軸91に保持される工具とは、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)によって交換される。
【0037】
続いて、テーブル51の構造について説明する。
図3は、
図1および
図2中のテーブルを部分的に示す断面図である。
【0038】
図1から
図3を参照して、工作機械100(テーブル51)は、旋回動作部221と、テーブルベース71とを有する。
【0039】
旋回動作部221は、テーブル51において、旋回中心軸120を中心に旋回動作する部分である。旋回中心軸120は、水平方向(X軸方向)に延びている。テーブルベース71は、ベッド11上で後述する支持部72を支持している。
【0040】
旋回動作部221は、ワーク保持部61を有する。ワーク保持部61は、旋回中心軸120からその半径方向外側に離れた位置に配置されている。ワーク保持部61は、X軸方向において、第1周壁部12および第2周壁部13の間に設けられている。
【0041】
ワーク保持部61は、ワークを着脱可能に保持可能である。ワーク保持部61には、パレットPが着脱可能に装着されている。ワーク保持部61は、パレットPをクランプするためのクランプ機構部と、パレットPを、回転中心軸130を中心に回転させるための回転機構部と、回転中心軸130を中心とするパレットPの回転を規制するためのブレーキ機構部とが内蔵されている。
【0042】
パレットP上には、たとえば、ワークが取り付けられるイケール等の治具が搭載される。ワーク保持部61に保持されたワークは、旋回中心軸120を中心とする旋回動作部221の旋回動作に伴って、旋回中心軸120の周方向に移動する。
【0043】
テーブルベース71は、第1テーブルベース71Jと、第2テーブルベース71Kとから構成されている。第1テーブルベース71Jおよび第2テーブルベース71Kは、X軸方向において、互いに離れて設けられている。第1テーブルベース71Jおよび第2テーブルベース71Kは、X軸方向において分断されている。第1テーブルベース71Jには、送り装置52、ガイド部56およびガイド部58が接続されている。第2テーブルベース71Kには、送り装置53、ガイド部57およびガイド部59が接続されている。
【0044】
工作機械100(テーブル51)は、支持部72をさらに有する。支持部72は、第1テーブルベース71Jおよび第2テーブルベース71Kの各々に設けられている。支持部72は、第1頂面12aおよび第2頂面13aの各頂面上に設けられている。旋回動作部221は、支持部72によって、旋回中心軸120を中心に回動可能なように支持されている。
【0045】
旋回動作部221は、被支持部271(
図3を参照)と、アーム部226とをさらに有する。被支持部271は、旋回中心軸120を中心に配置されている。被支持部271は、旋回中心軸120の軸方向に延びている。被支持部271は、支持部72の内部に設けられている。被支持部271は、旋回動作部221において、支持部72により回動可能に支持される部分である。
【0046】
図3に示されるように、被支持部271には、第1中空部291が設けられている。第1中空部291は、旋回中心軸120の軸上で延びている。第1中空部291は、旋回中心軸120の軸方向において、被支持部271を貫通している。
【0047】
アーム部226は、X軸方向において、第1周壁部12および第2周壁部13の間に跨がって設けられている。アーム部226は、第1周壁部12および第2周壁部13の各周壁部上において、被支持部271に接続されている。アーム部226は、第1周壁部12および第2周壁部13の間において、ワーク保持部61を支持している。
【0048】
アーム部226は、アーム中間部227と、アーム連結部228とを有する。アーム中間部227は、X軸方向において、第1周壁部12および第2周壁部13の間の中間部に設けられている。アーム連結部228は、アーム中間部227と、第1周壁部12および第2周壁部13の各周壁部上の被支持部271とを連結している。
【0049】
アーム中間部227は、旋回中心軸120の半径方向外側からワーク保持部61を支持している。アーム中間部227は、旋回中心軸120と平行に配置されている。ワーク保持部61に装着されたパレットPは、旋回中心軸120の半径方向外側であって、アーム中間部227の半径方向内側に配置されている。
【0050】
アーム連結部228は、旋回中心軸120の軸方向(X軸方向)において、アーム中間部227および被支持部271の間に設けられている。アーム連結部228は、ワーク保持部61から被支持部271に向けて、旋回中心軸120の半径方向内側、かつ、旋回中心軸120の軸方向に延びている。
【0051】
図3を参照して、支持部72は、ハウジング262と、ステータ263と、ブレーキ機構部265とを有する。
【0052】
ハウジング262は、旋回中心軸120を中心とするハウジング形状をなしている。被支持部271は、軸受け267を介して、ハウジング262に挿入されている。
【0053】
ステータ263は、ハウジング262に設けられている。ステータ263は、被支持部271に設けられたロータ(不図示)とともに、被支持部271に対して旋回中心軸120を中心とする回転力を付与するためのモータを構成している。ブレーキ機構部265は、ハウジング262に設けられている。ブレーキ機構部265は、旋回中心軸120を中心とする被支持部271の旋回動作を規制する。
【0054】
工作機械100(テーブル51)は、回転継手231をさらに有する。回転継手231は、旋回中心軸120の軸上に設けられている。回転継手231は、回転側である旋回動作部221(被支持部271)と、固定側である支持部72との間に介挿されている。回転継手231は、旋回動作部221(被支持部271)と、支持部72との間で、流体の流路を接続するために設けられている。
【0055】
回転継手231は、可動部236と、固定部237とを有する。可動部236は、旋回動作部221に固定されている。可動部236は、旋回動作部221とともに、旋回中心軸120を中心に旋回動作する。固定部237は、支持部72に固定されている。固定部237は、可動部236と組み合わされて、後述する複数の流体通路238を形成している。
【0056】
可動部236は、旋回中心軸120を中心に配置されている。可動部236は、全体として、旋回中心軸120を中心とする円筒形状を有する。可動部236は、旋回中心軸120の軸方向において、被支持部271と並んで設けられている。可動部236は、被支持部271に固定されている。
【0057】
固定部237は、旋回中心軸120を中心に配置されている。固定部237は、全体として、旋回中心軸120を中心とする円筒形状を有する。固定部237は、旋回中心軸120の半径方向において、可動部236と組み合わされている。固定部237は、軸受け232を介して、可動部236の外周上に嵌め合わされている。固定部237は、旋回中心軸120の軸方向において、ステータ263と並んで設けられている。固定部237は、ステータ263に固定されている。
【0058】
回転継手231には、複数の流体通路238が設けられている。各流体通路238は、固定部237および可動部236の境界において、固定側通路311と、固定側環状通路314と、可動側環状通路313と、可動側通路312とから構成されている。
【0059】
固定側環状通路314は、固定部237に設けられている。可動側環状通路313は、可動部236に設けられている。固定側環状通路314は、固定部237の内周面から凹み、旋回中心軸120を中心に環状に延びている。可動側環状通路313は、可動部236の外周面から凹み、旋回中心軸120を中心に環状に延びている。可動側環状通路313は、旋回中心軸120の半径方向において、固定側環状通路314と対向している。
【0060】
固定側環状通路314および可動側環状通路313は、対をなして、旋回中心軸120を中心に環状に延びる通路を形成している。複数の、対をなす固定側環状通路314および可動側環状通路313が、旋回中心軸120の軸方向において、互いに間隔を開けて設けられている。
【0061】
固定側通路311は、固定部237に設けられている。固定側通路311は、旋回中心軸120の周方向における所定の位相位置で、固定側環状通路314の壁面に開口している。可動側通路312は、可動部236に設けられている。可動側通路312は、旋回中心軸120の周方向における所定の位相位置で、可動側環状通路313の壁面に開口している。
【0062】
流体通路238を流通する流体は、油であってもよいし、空気であってもよい。流体通路238を流通する油は、ワーク保持部61における各種の油圧機器を作動させるための作動油として用いられる。油圧機器は、たとえば、パレットPのクランプ機構部またはブレーキ機構部であってもよいし、パレットP上の治具に搭載されるワークのクランプ機構であってもよい。
【0063】
図4は、
図3中の矢印IVに示される方向に見たテーブルを示す図である。
図5は、
図3中のテーブルにおいて、被支持部およびワーク保持部の間の連結構造を示す断面図である。
【0064】
図3から
図5を参照して、アーム部226には、第2中空部292が設けられている。第2中空部292は、被支持部271およびワーク保持部61の間で延びている。第2中空部292は、アーム中間部227およびアーム連結部228の間で中空形状をなしている。第2中空部292は、第1中空部291と連通している。
【0065】
アーム中間部227には、開口部227pが設けられている。開口部227pは、回転中心軸130に直交する平面に平行な開口面をなしている。開口部227pがなす開口面は、回転中心軸130の軸方向において、ワーク保持部61と対向している。開口部227pは、第2中空部292を外部空間に開放している。アーム中間部227には、開口部227pを閉塞するための蓋体229が着脱可能に取り付けられている。
【0066】
工作機械100は、油圧ポンプ241と、第1流路246と、第2流路247と、複数の油圧バルブ251とをさらに有する。
【0067】
油圧ポンプ241は、油圧を発生させる。油圧ポンプ241は、工作機械100の機外に設置されている。
【0068】
第1流路246は、油圧ポンプ241から固定部237に向けて油を供給する。第2流路247は、回転継手231において第1流路246と連通している。第2流路247は、可動部236からワーク保持部61に向けて油を供給する。第1流路246および第2流路247は、油が流通可能な通路を形成している。
【0069】
第1流路246は、油圧ポンプ241および固定部237の間で延びる配管286と、固定部237に設けられ、上記の固定側通路311と連通する流体通路287とを含む。第2流路247は、可動部236および被支持部271に設けられ、上記の可動側通路312と連通する流体通路281と、被支持部271およびワーク保持部61の間で延びる配管282とを含む。配管282は、第2中空部292を配索されている。
【0070】
複数の油圧バルブ251は、ワーク保持部61に向かう油流れを制御する。複数の油圧バルブ251は、第2流路247の経路上に設けられている。複数の油圧バルブ251は、回転継手231よりも、油圧ポンプ241からワーク保持部61に向けて供給される油流れの下流側に設けられている。
【0071】
被支持部271は、端面272を有する。端面272は、旋回中心軸120の軸方向における被支持部271の端部に設けられている。端面272は、旋回中心軸120に交差する表面からなる。端面272は、旋回中心軸120に直交する平面からなる。端面272は、旋回中心軸120の軸方向において、ワーク保持部61と対向する側とは反対側に設けられている。第1中空部291は、端面272に開口している。
【0072】
複数の油圧バルブ251は、旋回動作部221に接続されている。複数の油圧バルブ251は、被支持部271に接続されている。複数の油圧バルブ251は、端面272に接続されている。複数の油圧バルブ251は、旋回中心軸120からその半径方向外側に離れた位置に設けられている。複数の油圧バルブ251は、旋回中心軸120を中心とする周方向に並んでいる。複数の油圧バルブ251は、旋回中心軸120の周方向において、互いに間隔を開けて設けられている。複数の油圧バルブ251は、旋回中心軸120の周方向において、等間隔で設けられてもよいし、不等間隔で設けられてもよい。
【0073】
工作機械100は、配線283をさらに有する。配線283は、第1中空部291に挿入されている。配線283は、第1中空部291および第2中空部292を挙げた順に通って、ワーク保持部61に向けて延びている。配線283は、ワーク保持部61における各種の電気機器に接続されている。電気機器は、たとえば、モータであってもよいし、各種のセンサであってもよい。
【0074】
図6は、
図3中のテーブルに対する油圧経路を模式的に示す図である。
図7は、比較例における油圧経路を模式的に示す図である。
【0075】
図6および
図7中には、一例として、Pポート、Tポート、AポートおよびBポートを有する方向切替弁である油圧バルブ251が4つ示されている。Pポートには、油圧ポンプ241から供給される油が流れる。Tポートには、タンク244に向けて回収される油が流れる。AポートおよびBポートは、ワーク保持部61における各種の油圧機器に供給されたり、油圧機器から回収されたりする油が流れる。
【0076】
図7を参照して、比較例では、複数の油圧バルブ251が、油圧ポンプ241から回転継手231の固定部237に向けて油を供給する第1流路246の経路上に設けられている。このような構成において、各油圧バルブ251のAポートおよびBポートの各ポートと、ワーク保持部61における油圧機器との間で流体通路が延び、これら2本の流体通路が油圧バルブ251の数を掛けただけ存在するため、回転継手231に8つの流体通路(238A~238H)を設ける必要がある。この場合、旋回中心軸120の軸方向における回転継手231の長さが大きくなり、回転継手231を配置するスペースを確保することが困難になったり、回転継手231における摺動抵抗が増大したりする。
【0077】
図6を参照して、これに対して、本実施の形態では、複数の油圧バルブ251が、回転継手231の可動部236からワーク保持部61に向けて油を供給する第2流路247の経路上に設けられている。このような構成では、回転継手231に、油圧ポンプ241からの油を複数の油圧バルブ251のPポートに向けて一括して供給するための流体通路238aと、複数の油圧バルブ251のTポートからの油を一括してタンク244に向けて回収するための流体通路238bとを設けることで足りるため、旋回中心軸120の軸方向における回転継手231の長さを小さくすることができる。
【0078】
図3および
図4に示されるように、複数の油圧バルブ251は、被支持部271の端面272に接続されている。このような構成によれば、複数の油圧バルブ251が旋回中心軸120の軸周りに集約されるため、油圧バルブ251のメンテナンス性を高めることができる。また、複数の油圧バルブ251の設置に起因した、旋回動作部221の旋回動作に伴うアンバランスを小さく抑制することができる。特に本実施の形態では、油圧バルブ251が大重量であるため、複数の油圧バルブ251の設置に起因したアンバランスを抑制することが重要である。
【0079】
また、本実施の形態では、配線283が、旋回中心軸120の軸上で延び、端面272に開口する第1中空部291に挿入されている。このような構成において、旋回動作部221の旋回動作時、第1中空部291に挿入された配線283が、旋回中心軸120の軸上に留まる一方、端面272に接続される複数の油圧バルブ251が、端面272における第1中空部291の開口の周りで旋回中心軸120の周方向に移動する。このため、旋回動作部221の旋回動作に伴って配線283および油圧バルブ251の間で干渉が生じることを防止できる。
【0080】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における工作機械100の構造についてまとめると、本実施の形態における工作機械100は、支持部72と、支持部72により水平方向に延びる所定軸としての旋回中心軸120を中心に回動可能に支持されることによって、旋回中心軸120を中心に旋回動作する旋回動作部221とを備える。旋回動作部221は、旋回中心軸120からその半径方向外側に離れた位置に配置され、ワークを着脱可能に保持するためのワーク保持部61を有する。工作機械100は、旋回動作部221に固定され、旋回動作部221とともに旋回中心軸120を中心に旋回動作をする可動部236と、支持部72に固定され、可動部236と組み合わされる固定部237とを有し、旋回中心軸120の軸上に配置され、可動部236および固定部237の間において、流体の流路を接続するための流路接続部としての回転継手231と、流体圧としての油圧を発生させる流体圧発生部としての油圧ポンプ241と、油圧ポンプ241から固定部237に向けて流体としての油を供給する第1流路246と、回転継手231において第1流路246と連通し、可動部236からワーク保持部61に向けて油を供給する第2流路247と、第2流路247の経路上に設けられ、ワーク保持部61に向かう油流れを制御する複数のバルブとしての油圧バルブ251とを備える。
【0081】
このように構成された、この発明の実施の形態1における工作機械100によれば、ワーク保持部61に対する油圧供給のポート数が増える場合であっても、旋回中心軸120の軸方向において回転継手231を小型化(短軸化)することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、水平方向に延びる旋回中心軸120を中心に旋回可能なテーブル51について説明したが、本発明を、水平方向に対して斜め方向(たとえば、水平方向に対して45°傾いた方向)に延びる旋回中心軸を中心に旋回可能なテーブルに適用してもよい。また、本発明における流路接続部は、回転継手に限られず、たとえば、固定側および回転側の間における流体の流路の接続構造を配管自体が構成するものであってもよい。
【0083】
(実施の形態2)
図8は、この発明の実施の形態2における工作機械のテーブルを部分的に示す断面図である。
図9は、
図8中のテーブルにおいて、被支持部およびワーク保持部の間の連結構造を示す断面図である。
図8および
図9は、それぞれ、実施の形態1における
図3および
図5に対応している。
【0084】
本実施の形態における工作機械は、実施の形態1における工作機械100と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0085】
図8および
図9を参照して、本実施の形態における工作機械は、コンプレッサ301と、第1流路321と、第2流路322と、複数の空圧バルブ351をさらに有する。
【0086】
コンプレッサ301は、空圧を発生させる。コンプレッサ301は、工作機械の機外に設置されている。第1流路321は、コンプレッサ301から回転継手231の固定部237に向けて空気を供給する。第2流路322は、回転継手231において第1流路321と連通している。第2流路322は、回転継手231の可動部236からワーク保持部61に向けて空気を供給する。第1流路246および第2流路247は、空気が流通可能な通路を形成している。
【0087】
複数の空圧バルブ351は、ワーク保持部61に向かう空気流れを制御する。複数の空圧バルブ351は、第2流路322の経路上に設けられている。複数の空圧バルブ351は、回転継手231よりも、コンプレッサ301からワーク保持部61に向けて供給される空気流れの下流側に設けられている。
【0088】
第2流路322は、被支持部271およびワーク保持部61の間で延びる配管326を含む。複数の空圧バルブ351は、配管326の経路上に設けられている。複数の空圧バルブ351は、第2中空部292に配置されている。複数の空圧バルブ351は、開口部227pがなす開口面と対向して設けられている。
【0089】
このような構成によれば、複数の空圧バルブ351が、回転継手231の可動部236からワーク保持部61に向けて空気を供給する第2流路322の経路上に設けられるため、実施の形態1と同様に、旋回中心軸120の軸方向における回転継手231の長さを小さくすることができる。
【0090】
また、複数の空圧バルブ351は、アーム部226の第2中空部292に配置されている。これにより、複数の空圧バルブ351がスペースの制約が大きい旋回中心軸120の軸周りから離れて配置されるため、複数の空圧バルブ351の設置のためのスペースを容易に確保することができる。この場合に、空圧バルブ351は、油圧バルブ251と比較して軽量であるため、複数の空圧バルブ351が旋回中心軸120の軸周りから離れて配置されるにも拘わらず、旋回動作部221の旋回動作に伴うアンバランスの増大を抑制することができる。
【0091】
このように構成された、この発明の実施の形態2における工作機械によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、マシニングセンタまたは複合加工機等の工作機械に適用される。
【符号の説明】
【0094】
11 ベッド、12 第1周壁部、12a 第1頂面、13 第2周壁部、13a 第2頂面、21 コラム、22,23,42,43,52,53 送り装置、26,27,46,47,56,57,58,59 ガイド部、31 サドル、41 クロススライド、51 テーブル、61 ワーク保持部、71 テーブルベース、71J 第1テーブルベース、71K 第2テーブルベース、72 支持部、91 工具主軸、100 工作機械、110 中心軸、120 旋回中心軸、130 回転中心軸、221 旋回動作部、226 アーム部、227 アーム中間部、227p 開口部、228 アーム連結部、229 蓋体、231 回転継手、232,267 軸受け、236 可動部、237 固定部、238,238a,238b,238A~238H,281,287 流体通路、241 油圧ポンプ、244 タンク、246,321 第1流路、247,322 第2流路、251 油圧バルブ、262 ハウジング、263 ステータ、265 ブレーキ機構部、271 被支持部、272 端面、282,286,326 配管、283 配線、291 第1中空部、292 第2中空部、301 コンプレッサ、311 固定側通路、312 可動側通路、313 可動側環状通路、314 固定側環状通路、351 空圧バルブ、P パレット。