(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】工具クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20240404BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B23B31/117 601D
B23Q3/12 B
(21)【出願番号】P 2023546615
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021032973
(87)【国際公開番号】W WO2023037434
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 功男
(72)【発明者】
【氏名】水越 健一
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206343946(CN,U)
【文献】特表平5-500031(JP,A)
【文献】特開2001-150211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-31/39;
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸を中心に配置されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、工具を前記所定軸の軸方向に沿った第1方向に引き込むことにより工具のクランプ状態を得る第1位置と、工具を前記所定軸の軸方向に沿った第2方向に押し出すことにより工具のアンクランプ状態を得る第2位置との間で、前記所定軸の軸方向にスライド可能なドローバと、
前記所定軸の軸上に配置され、前記ドローバを前記第2位置から前記第1位置にスライドさせるために前記第1方向にストロークし、前記ドローバを前記第1位置から前記第2位置にスライドさせるため前記第2方向にストロークするピストンと、
前記所定軸の半径方向において前記ハウジングおよび前記ピストンの間に介挿され、前記ドローバとともに前記所定軸の軸方向にスライド可能で、かつ、前記ドローバに対して前記所定軸の半径方向にスライド可能なように、前記ドローバにより支持される中間部材とを備え、
前記ハウジングは、前記第1方向に向けた前記ピストンのストローク時、前記中間部材を、前記第1方向かつ前記所定軸の半径方向外側に向けて案内するように構成され、
前記ピストンは、
前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど前記所定軸を中心とする直径が小さくなる第1テーパ面を有する第1テーパ部と、
第1段差面を有し、前記第1方向における前記第1テーパ部の端部に接続され、前記第1テーパ部に対して前記所定軸の半径方向内側に向けた段差をなす第1段差部と、
前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど前記所定軸を中心とする直径が小さくなる第2テーパ面を有し、前記所定軸の軸方向において、前記第1テーパ部の反対側から前記第1段差部に接続される第2テーパ部と、
第2段差面を有し、前記第1方向における前記第2テーパ部の端部に接続され、前記第2テーパ部に対して前記所定軸の半径方向内側に向けた段差をなす第2段差部とを有し、
前記所定軸に対して前記第1テーパ面がなす角度a(0°<a<90°)は、前記所定軸に対して前記第2テーパ面がなす角度b(0°<b<90°)と等しく、
前記第1段差面および/または前記第2段差面は、前記所定軸に沿って延在し、前記第1方向に向かうほど前記所定軸を中心とする直径が小さくなるテーパ形状を有し、前記所定軸に対して、テーパ形状を有する前記第1段差面および/または前記第2段差面がなす角度c(0°<c<90°)は、前記角度aおよび前記角度bの各々よりも大きく、
前記中間部材は、
前記所定軸に沿って延在し、前記第2方向に向かうほど前記所定軸を中心とする直径が大きくなり、前記ドローバが前記第1位置に配置される場合に前記第2テーパ面と接触する第3テーパ面を有する第3テーパ部と、
前記ドローバが前記第1位置に配置される場合に、前記所定軸の軸方向において前記第1段差面と対向し、前記ドローバが前記第2位置に配置される場合に、前記所定軸の軸方向において前記第2段差面と対向する第3段差面を有し、前記第2方向における前記第3テーパ部の端部に接続され、前記第3テーパ部に対して前記所定軸の半径方向外側に向けた段差をなす第3段差部と、
前記所定軸に沿って延在し、前記第2方向に向かうほど前記所定軸を中心とする直径が大きくなり、前記ドローバが前記第1位置に配置される場合に前記第1テーパ面と接触する第4テーパ面を有し、前記所定軸の軸方向において、前記第3テーパ部の反対側から前記第3段差部に接続される第4テーパ部と、
前記ドローバが前記第2位置に配置される場合に、前記所定軸の軸方向において前記第1段差面と対向する第4段差面を有し、前記第2方向における前記第4テーパ部の端部に接続され、前記第4テーパ部に対して前記所定軸の半径方向外側に向けた段差をなす第4段差部とを有し、
前記所定軸に対して前記第3テーパ面がなす角度d(0°<d<90°)は、前記所定軸に対して前記第4テーパ面がなす角度e(0°<e<90°)と等しく、
前記第3段差面は、前記第2段差面がテーパ形状を有する場合に、前記所定軸に沿って延在し、前記第2方向に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状を有し、前記ドローバが前記第1位置および前記第2位置の間でスライドする間に前記第2段差面と接触し、
前記第4段差面は、前記第1段差面がテーパ形状を有する場合に、前記所定軸に沿って延在し、前記第2方向に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状を有し、前記ドローバが前記第1位置および前記第2位置の間でスライドする間に前記第1段差面と接触し、
前記所定軸に対して、テーパ形状を有する前記第3段差面および/または前記第4段差面がなす角度f(0°<f<90°)は、前記角度dおよび前記角度eの各々よりも大きい、工具クランプ装置。
【請求項2】
前記第3段差面は、前記ドローバが前記第1位置に配置された場合に、前記第1段差面と非接触とされる、請求項1に記載の工具クランプ装置。
【請求項3】
前記中間部材は、前記ドローバが前記第2位置に配置される場合に、前記ピストンと非接触とされる、請求項1または2に記載の工具クランプ装置。
【請求項4】
前記ハウジングおよび前記中間部材は、それぞれ、前記所定軸の軸方向に沿って前記所定軸を中心とする直径が変化し、互いに対向する第5テーパ面および第6テーパ面を有し、
前記ドローバが前記第2位置に配置される状態において、前記所定軸の軸方向における、前記第5テーパ面および前記第6テーパ面の対向部と、前記第3段差面および前記第2段差面の対向部との間の距離が、前記所定軸の軸方向における、前記第5テーパ面および前記第6テーパ面の対向部と、前記第4段差面および前記第1段差面の対向部との間の距離よりも小さい場合に、前記第3段差面および前記第2段差面がテーパ形状を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の工具クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工具クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2004-314299号公報(特許文献1)には、工具のクランプ機構を備えたマシンスピンドルが開示されている。クランプ機構は、軸線方向に移動可能な第1引っ張り棒と、軸線方向における第1引っ張り棒の移動に伴って、軸線方向、かつ、半径方向に相対移動し、工具のクランプ力を増加させる第1楔部材および第2楔部材と、軸線方向における第1引っ張り棒の移動に伴って、工具を軸線方向に引き込み、工具のクランプを行なうクランプ部材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、ピストン(第1引っ張り棒)のその軸線方向におけるストロークに伴って楔力を発生させ、工具のクランプ力を得る工具クランプ装置が知られている。
【0005】
このような工具クランプ装置においては、楔力を発生させるためのテーパ面同士の接触面積が小さいと、テーパ面に作用する面圧が過大となる。この場合、テーパ面にひび割れまたは削れ等が発生するという問題が生じる。一方、ピストンの軸線方向における装置の大型化を防ぐべく、より小さいピストンストロークで所望の楔力を得ることが求められる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ピストンおよび中間部材に作用する面圧を小さく抑えつつ、より小さいピストンストロークで所望の楔力を得ることが可能な工具クランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った工具クランプ装置は、所定軸を中心に配置されるハウジングと、ハウジング内に収容され、工具を所定軸の軸方向に沿った第1方向に引き込むことにより工具のクランプ状態を得る第1位置と、工具を所定軸の軸方向に沿った第2方向に押し出すことにより工具のアンクランプ状態を得る第2位置との間で、所定軸の軸方向にスライド可能なドローバと、所定軸の軸上に配置され、ドローバを第2位置から第1位置にスライドさせるために第1方向にストロークし、ドローバを第1位置から第2位置にスライドさせるため第2方向にストロークするピストンと、所定軸の半径方向においてハウジングおよびピストンの間に介挿され、ドローバとともに所定軸の軸方向にスライド可能で、かつ、ドローバに対して所定軸の半径方向にスライド可能なように、ドローバにより支持される中間部材とを備える。ハウジングは、第1方向に向けたピストンのストローク時、中間部材を、第1方向かつ所定軸の半径方向外側に向けて案内するように構成される。
【0008】
ピストンは、所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど所定軸を中心とする直径が小さくなる第1テーパ面を有する第1テーパ部と、第1段差面を有し、第1方向における第1テーパ部の端部に接続され、第1テーパ部に対して所定軸の半径方向内側に向けた段差をなす第1段差部と、所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど所定軸を中心とする直径が小さくなる第2テーパ面を有し、所定軸の軸方向において、第1テーパ部の反対側から第1段差部に接続される第2テーパ部と、第2段差面を有し、第1方向における第2テーパ部の端部に接続され、第2テーパ部に対して所定軸の半径方向内側に向けた段差をなす第2段差部とを有する。
【0009】
所定軸に対して第1テーパ面がなす角度a(0°<a<90°)は、所定軸に対して第2テーパ面がなす角度b(0°<b<90°)と等しい。第1段差面および/または第2段差面は、所定軸に沿って延在し、第1方向に向かうほど所定軸を中心とする直径が小さくなるテーパ形状を有する。所定軸に対して、テーパ形状を有する第1段差面および/または第2段差面がなす角度c(0°<c<90°)は、角度aおよび角度bの各々よりも大きい。
【0010】
中間部材は、所定軸に沿って延在し、第2方向に向かうほど所定軸を中心とする直径が大きくなり、ドローバが第1位置に配置される場合に第2テーパ面と接触する第3テーパ面を有する第3テーパ部と、ドローバが第1位置に配置される場合に、所定軸の軸方向において第1段差面と対向し、ドローバが第2位置に配置される場合に、所定軸の軸方向において第2段差面と対向する第3段差面を有し、第2方向における第3テーパ部の端部に接続され、第3テーパ部に対して所定軸の半径方向外側に向けた段差をなす第3段差部と、所定軸に沿って延在し、第2方向に向かうほど所定軸を中心とする直径が大きくなり、ドローバが第1位置に配置される場合に第1テーパ面と接触する第4テーパ面を有し、所定軸の軸方向において、第3テーパ部の反対側から第3段差部に接続される第4テーパ部と、ドローバが第2位置に配置される場合に、所定軸の軸方向において第1段差面と対向する第4段差面を有し、第2方向における第4テーパ部の端部に接続され、第4テーパ部に対して所定軸の半径方向外側に向けた段差をなす第4段差部とを有する。
【0011】
所定軸に対して第3テーパ面がなす角度d(0°<d<90°)は、所定軸に対して第4テーパ面がなす角度e(0°<e<90°)と等しい。第3段差面は、第2段差面がテーパ形状を有する場合に、所定軸に沿って延在し、第2方向に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状を有し、ドローバが第1位置および第2位置の間でスライドする間に第2段差面と接触する。第4段差面は、第1段差面がテーパ形状を有する場合に、所定軸に沿って延在し、第2方向に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状を有し、ドローバが第1位置および第2位置の間でスライドする間に第1段差面と接触する。所定軸に対して、テーパ形状を有する第3段差面および/または第4段差面がなす角度f(0°<f<90°)は、角度dおよび角度eの各々よりも大きい。
【0012】
このように構成された工具クランプ装置によれば、ドローバが第1位置に配置される場合に、ピストンの第2テーパ面および中間部材の第3テーパ面が接触し、ピストンの第1テーパ面および中間部材の第4テーパ面が接触することにより、工具のクランプ状態において、ピストンおよび中間部材の間におけるテーパ面同士の接触面積を増大させることができる。これにより、ピストンおよび中間部材に作用する面圧を小さく抑えることができる。
【0013】
また、所定軸に対して、テーパ形状を有する第1段差面および/または第2段差面がなす角度cが、角度aおよび角度bの各々よりも大きく、所定軸に対して、テーパ形状を有する第3段差面および/または第4段差面がなす角度fが、角度dおよび角度eの各々よりも大きいため、所定軸の軸方向におけるピストンのストローク長さを小さく抑えつつ、所定軸の半径方向における中間部材のスライド長さを十分に確保することができる。これにより、より小さいピストンストロークで所望の楔力を得ることができる。
【0014】
また好ましくは、第3段差面は、ドローバが第1位置に配置された場合に、第1段差面と非接触とされる。
【0015】
このように構成された工具クランプ装置によれば、ドローバが第1位置に配置された場合に、ピストンの第2テーパ面および中間部材の第3テーパ面が接触し、ピストンの第1テーパ面および中間部材の第4テーパ面が接触する状態をより確実に得ることができる。
【0016】
また好ましくは、中間部材は、ドローバが第2位置に配置される場合に、ピストンと非接触とされる。
【0017】
このように構成された工具クランプ装置によれば、工具のアンクランプ状態において、ピストンが中間部材による拘束から完全に解かれるため、ピストンにより工具を第2方向により確実に押し出すことができる。これにより、工具のアンクランプ動作を円滑に実行させることができる。
【0018】
また好ましくは、ハウジングおよび中間部材は、それぞれ、所定軸の軸方向に沿って所定軸を中心とする直径が変化し、互いに対向する第5テーパ面および第6テーパ面を有する。ドローバが第2位置に配置される状態において、所定軸の軸方向における、第5テーパ面および第6テーパ面の対向部と、第3段差面および第2段差面の対向部との間の距離が、所定軸の軸方向における、第5テーパ面および第6テーパ面の対向部と、第4段差面および第1段差面の対向部との間の距離よりも小さい場合に、第3段差面および第2段差面がテーパ形状を有する。
【0019】
このように構成された工具クランプ装置によれば、テーパ形状を有する第3段差面および第2段差面が接触する時、所定軸の軸方向における、中間部材およびピストンの間で面圧が作用する位置と、中間部材およびハウジングの間で面圧が作用する位置との間の距離が小さいため、工具のクランプ動作およびアンクランプ動作に伴って、中間部材に対して過大な負荷が加わることを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、この発明に従えば、ピストンおよび中間部材に作用する面圧を小さく抑えつつ、より小さいピストンストロークで所望の楔力を得ることが可能な工具クランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態における工具クランプ装置を用いた工作機械を示す斜視図である。
【
図2】刃物台における工具の自動交換位置を示す側面図である。
【
図3】刃物台における工具のワーク加工位置を示す側面図である。
【
図5】
図1中の工具ホルダ(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図6】
図1中の工具ホルダ(クランプ状態)を示す断面図である。
【
図7】
図4から
図6中のドローバおよび中間部材を示す斜視図である。
【
図8】
図5中の2点鎖線VIIIにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(アンクランプ状態)を示す断面図である。
【
図9】工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
【
図10】
図6中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態における工具クランプ装置を用いた工作機械を示す斜視図である。
図1中では、工作機械の外観をなすカバー体が透視されることにより、工作機械の内部構造が示されている。
【0024】
図1を参照して、工作機械10は、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋盤である。工作機械10には、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうミーリング機能が備わっている。
【0025】
工作機械10は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerical Control)工作機械である。
【0026】
まず、工作機械10の全体構造について説明する。工作機械10は、ベッド11と、主軸台21と、刃物台31と、自動工具交換装置18(後出の
図2を参照)とを有する。
【0027】
ベッド11は、主軸台21、刃物台31および自動工具交換装置18等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面上に設置される。ベッド11は、鋳鉄などの金属から形成されている。
【0028】
主軸台21は、ベッド11に取り付けられている。主軸台21は、主軸(不図示)を有する。主軸は、水平方向に延びるZ軸に平行な中心軸101を中心に回転駆動する。主軸の先端には、ワークを着脱可能に保持可能なチャック機構が設けられている。チャック機構に保持されたワークは、主軸の回転駆動に伴って、中心軸101を中心に回転する。
【0029】
刃物台31は、カバー体(不図示)によって区画形成される加工エリア内に設けられている。刃物台31は、タレット型刃物台であり、Z軸に平行な中心軸(旋回中心軸)102を中心に旋回可能である。
【0030】
刃物台31は、刃物台ベース32と、タレット33と、複数の工具ホルダ121とを有する。刃物台ベース32には、刃物台31を旋回駆動させるためのモータ等が搭載されている。刃物台ベース32は、後述する横送り台に取り付けられている。
【0031】
タレット33は、刃物台ベース32から、Z軸方向において主軸台21に近接する方向に突出するように設けられている。タレット33は、旋回中心軸102の軸方向が厚み方向となる円盤形状を有する。タレット33は、旋回中心軸102を中心に旋回可能である。
【0032】
複数の工具ホルダ121は、タレット33に装着されている。複数の工具ホルダ121は、ボルトを用いてタレット33に締結されている。複数の工具ホルダ121は、旋回中心軸102の周方向に並んで設けられている。各工具ホルダ121は、工具を保持可能なように構成されている。
【0033】
なお、複数の工具ホルダ121は、回転工具を保持するための工具ホルダと、固定工具を保持するための工具ホルダとを含む。回転工具は、回転しながらワークを加工する工具であり、ドリル、エンドミルまたはリーマ等である。固定工具は、回転するワークを加工する工具であり、外径切削用バイト、内径切削用バイト、端面切削用バイトまたは突っ切りバイト等である。
【0034】
刃物台31は、サドル16および横送り台(不図示)を介して、ベッド11に取り付けられている。サドル16は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸方向に移動可能である。横送り台は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸に直交し、鉛直方向に対して傾斜するX軸方向に移動可能である。サドル16および横送り台が、それぞれ、Z軸方向およびX軸方向に移動することによって、工具ホルダ121に保持された工具によるワークの加工位置をZ軸-X軸平面内で移動させることができる。
【0035】
図2は、刃物台における工具の自動交換位置を示す側面図である。
図3は、刃物台における工具のワーク加工位置を示す側面図である。
【0036】
図1から
図3を参照して、タレット33が旋回中心軸102を中心に旋回することによって、工具ホルダ121に保持された工具が旋回中心軸102の周方向に移動する。自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)18は、工具を把持可能なダブルアーム等を有しており、加工エリア内の刃物台31と、加工エリア外の工具マガジン(不図示)との間で工具を交換可能なように構成されている。
【0037】
図2に示されるように、自動工具交換装置18は、刃物台31の機械前方側に設けられている。自動工具交換装置18により刃物台31における工具を交換する場合、交換対象となる工具を保持する工具ホルダ121は、図中の工具自動交換位置Jに位置決めされる。
図3に示されるように、刃物台31における工具によりワークWの加工を行なう場合、加工に用いられる工具を保持する工具ホルダ121は、図中のワーク加工位置Kに位置決めされる。
【0038】
なお、上記の工具自動交換位置Jおよびワーク加工位置Kの各位置は、特に限定されるものではない。たとえば、自動工具交換装置18が機械後方側に設けられる場合、工具自動交換位置Jは、
図3に示されるワーク加工位置Kから180°ずれた位置であってもよい。
【0039】
本実施の形態における工具クランプ装置100は、工具ホルダ121に内蔵されている。工具クランプ装置100は、工具をクランプ可能なように構成されている。
【0040】
続いて、工具クランプ装置100のより具体的な構造を説明する。
図4は、
図1中の工具ホルダを示す斜視図である。
図5は、
図1中の工具ホルダ(アンクランプ状態)を示す断面図である。
図6は、
図1中の工具ホルダ(クランプ状態)を示す断面図である。
【0041】
図5および
図6中には、工具ホルダ121により保持される工具Tのシャンク部分が示されている。
【0042】
図4から
図6を参照して、工具Tは、工具ホルダ121に対して、所定軸210に沿った矢印310に示される方向に挿入される。工具Tは、工具ホルダ121から、所定軸210に沿った矢印320に示される方向に引き抜かれる。
【0043】
工具クランプ装置100は、ハウジング51と、ドローバ61と、複数のコレット46と、ピストン81と、シリンダ91と、複数の中間部材71とを有する。
【0044】
ハウジング51は、所定軸210を中心に配置されている。ハウジング51は、全体として、所定軸210を中心とする筒形状を有する。所定軸210は、
図1から
図3中に示される旋回中心軸102の半径方向に延びる仮想上の直線である。
【0045】
ハウジング51には、第1挿入孔52が設けられている。第1挿入孔52は、所定軸210を中心に配置されている。第1挿入孔52は、工具Tの挿入方向における手前側の端部で開口している。第1挿入孔52は、工具Tの挿入方向においてハウジング51を貫通している。
【0046】
図7は、
図4から
図6中のドローバおよび中間部材を示す斜視図である。
図4から
図7を参照して、ドローバ61は、ハウジング51内に収容されている。ドローバ61は、第1挿入孔52に挿入されている。ドローバ61は、所定軸210を中心に配置されている。
【0047】
ドローバ61は、
図6に示される第1位置PAと、
図5に示される第2位置PBとの間で、所定軸210の軸方向にスライド可能である。ドローバ61は、
図6に示される第1位置PAにスライドした場合に、工具Tを所定軸210の軸方向に沿った第1方向Da(矢印310に示される方向)に引き込むことによって、工具Tのクランプ状態を得る。ドローバ61は、
図5に示される第2位置PBにスライドした場合に、工具Tを所定軸210の軸方向に沿った第2方向Db(矢印320に示される方向)に押し出すことによって、工具Tのアンクランプ状態を得る。
【0048】
第1方向Daは、工具ホルダ121に対する工具Tの挿入方向に対応している。第2方向Dbは、工具ホルダ121からの工具Tの引き抜き方向に対応している。
【0049】
ドローバ61は、小径部66と、大径部67とを有する。小径部66および大径部67は、所定軸210の軸方向に連なっている。小径部66および大径部67は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。所定軸210を中心とする小径部66の直径は、所定軸210を中心とする大径部67の直径よりも小さい。
【0050】
ドローバ61は、大径部67が第1挿入孔52を規定するハウジング51の内周面と摺接することによって、所定軸210の軸方向にスライド可能なように支持されている。
【0051】
小径部66の外周上には、複数のコレット46が設けられている。複数のコレット46は、所定軸210の軸方向に沿った第1方向Daおよび第2方向Dbにおけるドローバ61のスライド動作に伴って、所定軸210を中心とする半径方向に変形可能なように構成されている。
【0052】
ドローバ61が
図6に示される第1位置PAにスライドした場合に、複数のコレット46は、所定軸210を中心に拡径するように変形する。工具Tが、複数のコレット46により把持され、ドローバ61により第1方向Daに引き込まれることによって、工具Tのクランプ状態が得られる。一方、ドローバ61が
図5に示される第2位置PBにスライドした場合に、複数のコレット46は、所定軸210を中心に縮径するように変形する。複数のコレット46による工具Tの把持が解除され、ドローバ61により第2方向Dbに押し出されることによって、工具Tのアンクランプ状態が得られる。
【0053】
図5から
図7に示されるように、ドローバ61には、第2挿入孔62と、複数の開口部63とが設けられている。第2挿入孔62は、大径部67に設けられている。第2挿入孔62は、所定軸210を中心に配置されている。第2挿入孔62は、工具Tの挿入方向における奥側の端部で開口し、工具Tの挿入方向における手前側の端部で底部をなしている。
【0054】
複数の開口部63は、大径部67に設けられている。複数の開口部63は、所定軸210の周方向に互いに間隔を開けて設けられている。複数の開口部63は、所定軸210の周方向において等間隔に設けられている。各開口部63は、所定軸210の半径方向においてドローバ61(大径部67)を貫通し、第2挿入孔62に連通している。
【0055】
ピストン81は、所定軸210の軸上に配置されている。ピストン81は、所定軸210の軸上で延びている。ピストン81は、所定軸210の軸方向において、ドローバ61と並んで設けられている。ピストン81は、ドローバ61よりも、工具Tの挿入方向の奥側に配置されている。
【0056】
ピストン81は、ドローバ61に接続されている。ピストン81は、複数の中間部材71を介して、ドローバ61と接続されている。
【0057】
ピストン81は、ドローバ61を
図5に示される第2位置PBから
図6に示される第1位置PAにスライドさせるために、第1方向Daにストロークする。ピストン81は、ドローバ61を
図6に示される第1位置PAから
図5に示される第2位置PBにスライドさせるため第2方向Dbにストロークする。
【0058】
ピストン81は、先端部82と、胴部84と、基部83とを有する。先端部82、胴部84および基部83は、所定軸210の軸方向に連なっている。先端部82、胴部84および基部83は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。
【0059】
所定軸210に直交する平面により切断された場合の基部83の断面積は、所定軸210に直交する平面により切断された場合の胴部84の断面積よりも大きい。胴部84は、所定軸210の軸方向における先端部82および基部83の間で、所定軸210の半径方向内側に向けてくびれた形状を有する。
【0060】
先端部82は、第2挿入孔62に挿入されている。先端部82は、第2挿入孔62の内部で、所定軸210の軸方向にスライド動作が可能なように設けられている。胴部84は、先端部82および基部83の間で延びている。胴部84は、第2挿入孔62の内部から外部に延出し、基部83に接続されている。
【0061】
シリンダ91は、全体として、所定軸210を中心とする筒形状を有する。ピストン81は、基部83がシリンダ91に挿入されることによって、所定軸210の軸方向にスライド可能なように支持されている。シリンダ91は、基部83とともに、第1油圧室92および第2油圧室93を区画形成している。
図5に示されるように、第1油圧室92に油が供給されることによって、ピストン81は、所定軸210の軸方向に沿った第2方向Dbに向けてストロークする。
図6に示されるように、第2油圧室93に油が供給されることによって、ピストン81は、所定軸210の軸方向に沿った第1方向Daに向けてストロークする。
【0062】
中間部材71は、所定軸210の半径方向においてハウジング51およびピストン81の間に介挿されている。中間部材71は、ドローバ61とともに所定軸210の軸方向にスライド可能で、かつ、ドローバ61に対して所定軸210の半径方向にスライド可能なように、ドローバ61により支持されている。
【0063】
中間部材71は、金属製のブロック体からなる。複数の中間部材71は、それぞれ、複数の開口部63に配置されている。複数の中間部材71は、所定軸210の周方向に互いに間隔を開けて設けられている。複数の中間部材71は、所定軸210の周方向において等間隔に設けられている。中間部材71は、所定軸210の軸方向におけるスライド動作が規制され、かつ、所定軸210の半径方向におけるスライド動作が許容されるように、開口部63に配置されている。
【0064】
中間部材71は、第2挿入孔62の内部において、ピストン81(先端部82)と接触している。中間部材71は、第2挿入孔62の外部において、ハウジング51と接触している。
【0065】
図8は、
図5中の2点鎖線VIIIにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(アンクランプ状態)を示す断面図である。
図9は、工具クランプ装置(アンクランプ状態からクランプ状態への移行時)を示す断面図である。
図10は、
図6中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲の工具クランプ装置(クランプ状態)を示す断面図である。
【0066】
図8から
図10中には、所定軸210を含む平面により切断された場合の工具クランプ装置100の断面が示されている。
【0067】
図5から
図10を参照して、ハウジング51は、第1方向Daに向けたピストン81のストローク時、中間部材71を、第1方向Daかつ所定軸210の半径方向外側に向けて案内するように構成されている。
【0068】
ハウジング51は、第5テーパ面57を有する。第5テーパ面57は、所定軸210の軸方向に沿って所定軸210を中心とする直径が変化するように構成されている。
【0069】
第5テーパ面57は、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第5テーパ面57は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。第5テーパ面57は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合のハウジング51の断面において、第5テーパ面57は、直線状に延びている。
【0070】
中間部材71は、第6テーパ面77を有する。第6テーパ面77は、所定軸210の軸方向に沿って所定軸210を中心とする直径が変化するように構成されている。
【0071】
第6テーパ面77は、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第6テーパ面77は、第1方向Daに向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。第6テーパ面77は、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど大きくなる直径(外径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、第6テーパ面77は、直線状に延びている。
【0072】
第5テーパ面57および第6テーパ面77は、互いに対向している。所定軸210に対する第6テーパ面77の傾きは、所定軸210に対する第5テーパ面57の傾きに対応している。所定軸210に対して第5テーパ面57(第6テーパ面77)がなす角度は、たとえば、10°以上45°以下の範囲であってもよいし、20°以上35°以下の範囲であってもよい。
【0073】
第1方向Daに向けたピストン81のストローク時、すなわち、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時に、第5テーパ面57および第6テーパ面77は、互いに接触する。これにより、中間部材71は、ハウジング51により、第1方向Daかつ所定軸210の半径方向外側に向けて案内される。第5テーパ面57および第6テーパ面77は、工具Tのクランプ状態において接触している。
【0074】
ピストン81は、第1テーパ部410と、第1段差部460と、第2テーパ部420と、第2段差部470とを有する。
【0075】
第1テーパ部410、第1段差部460、第2テーパ部420および第2段差部470は、先端部82に設けられている。第1テーパ部410、第1段差部460、第2テーパ部420および第2段差部470は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に並んでいる。
【0076】
第1テーパ部410は、第1テーパ面410pを有する。第1テーパ面410pは、所定軸210に沿って延在している。第1テーパ面410pは、第1方向Daに向かうほど所定軸210を中心とする直径が小さくなるように構成されている。
【0077】
第1テーパ面410pは、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第1テーパ面410pは、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合のピストン81の断面において、第1テーパ面410pは、直線状に延びている。
【0078】
第1段差部460は、第1方向Daにおける第1テーパ部410の端部に接続されている。第1段差部460は、第1テーパ部410に対して所定軸210の半径方向内側に向けた段差をなしている。
【0079】
第1段差部460は、第1段差面460pを有する。第1段差面460pは、所定軸210を中心に周回し、第1方向Daに向かうほど所定軸210を中心とする直径が小さくなるテーパ形状の外周面からなる。第1段差面460pの形状は、特に限定されず、たとえば、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に直交するリング形状の平面から構成されてもよい。
【0080】
第2テーパ部420は、所定軸210の軸方向において、第1テーパ部410の反対側から第1段差部460に接続されている。第1段差部460は、所定軸210の軸方向において、第1テーパ部410および第2テーパ部420の間に設けられている。
【0081】
第2テーパ部420は、第2テーパ面420pを有する。第2テーパ面420pは、所定軸210に沿って延在している。第2テーパ面420pは、第1方向Daに向かうほど所定軸210を中心とする直径が小さくなるように構成されている。
【0082】
第2テーパ面420pは、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第2テーパ面420pは、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合のピストン81の断面において、第2テーパ面420pは、直線状に延びている。
【0083】
第2段差部470は、第1方向Daにおける第2テーパ部420の端部に接続されている。第2テーパ部420は、所定軸210の軸方向において、第1段差部460および第2段差部470の間に設けられている。第2段差部470は、第2テーパ部420に対して所定軸210の半径方向内側に向けた段差をなしている。
【0084】
第2段差部470は、第2段差面470pを有する。第2段差面470pは、所定軸210に沿って延在している。第2段差面470pは、第1方向Daに向かうほど所定軸210を中心とする直径が小さくなるテーパ形状を有する。
【0085】
第2段差面470pは、所定軸210を中心に周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす外周面からなる。第2段差面470pは、工具Tの挿入方向における手前側から奥側に向かうほど小さくなる直径(外径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合のピストン81の断面において、第2段差面470pは、直線状に延びている。
【0086】
図9に示されるように、所定軸210に対して第1テーパ面410pがなす角度a(0°<a<90°)は、所定軸210に対して第2テーパ面420pがなす角度b(0°<b<90°)と等しい。角度aおよび角度bの各々は、0°を越え10°以下の範囲であってもよいし、0°を越え5°以下の範囲であってもよい。角度aおよび角度bの各々は、たとえば、4°である。
【0087】
所定軸210に対して第2段差面470pがなす角度c(0°<c<90°)は、角度aおよび角度bの各々よりも大きい(c>a,c>b)。角度cは、10°を越え60°以下の範囲であってもよいし、30°以上45°以下の範囲であってもよい。角度cは、たとえば、40°である。
【0088】
角度cは、所定軸210に対して第5テーパ面57(第6テーパ面77)がなす角度よりも大きい。角度cは、所定軸210に対して第5テーパ面57(第6テーパ面77)がなす角度以下であってもよい。
【0089】
中間部材71は、第3テーパ部430と、第3段差部480と、第4テーパ部440と、第4段差部490とを有する。第3テーパ部430、第3段差部480と、第4テーパ部440および第4段差部490は、挙げた順に、工具Tの挿入方向における奥側から手前側に並んでいる。
【0090】
第3テーパ部430は、第3テーパ面430qを有する。第3テーパ面430qは、所定軸210に沿って延在している。第3テーパ面430qは、第2方向Dbに向かうほど所定軸210を中心とする直径が大きくなるように構成されている。
【0091】
第3テーパ面430qは、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第3テーパ面430qは、工具Tの挿入方向における奥側から手前側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、第3テーパ面430qは、直線状に延びている。
【0092】
第3段差部480は、第2方向Dbにおける第3テーパ部430の端部に接続されている。第3段差部480は、第3テーパ部430に対して所定軸210の半径方向外側に向けた段差をなしている。
【0093】
第3段差部480は、第3段差面480qを有する。第3段差面480qは、所定軸210に沿って延在している。第3段差面480qは、第2方向Dbに向かうほど直径が大きくなるテーパ形状を有する。
【0094】
第3段差面480qは、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第3段差面480qは、工具Tの挿入方向における奥側から手前側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、第3段差面480qは、直線状に延びている。
【0095】
第4テーパ部440は、所定軸210の軸方向において、第3テーパ部430の反対側から第3段差部480に接続されている。第3段差部480は、所定軸210の軸方向において、第3テーパ部430および第4テーパ部440の間に設けられている。
【0096】
第4テーパ部440は、第4テーパ面440qを有する。第4テーパ面440qは、所定軸210に沿って延在している。第4テーパ面440qは、第2方向Dbに向かうほど所定軸210を中心とする直径が大きくなるように構成されている。
【0097】
第4テーパ面440qは、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、所定軸210に対して傾斜するテーパ形状をなす内周面からなる。第4テーパ面440qは、工具Tの挿入方向における奥側から手前側に向かうほど大きくなる直径(内径)を有する。所定軸210を含む平面により切断された場合の中間部材71の断面において、第4テーパ面440qは、直線状に延びている。
【0098】
第4段差部490は、第2方向Dbにおける第4テーパ部440の端部に接続されている。第4テーパ部440は、所定軸210の軸方向において、第3段差部480および第4段差部490の間に設けられている。第4段差部490は、第4テーパ部440に対して所定軸210の半径方向外側に向けた段差をなしている。
【0099】
第4段差部490は、第4段差面490qを有する。第4段差面490qは、所定軸210の軸周りで所定の角度範囲で周回し、第2方向Dbに向かうほど所定軸210を中心とする直径が大きくなるテーパ形状の外周面からなる。第4段差面490qの形状は、特に限定されず、たとえば、所定軸210に直交する平面(端面)から構成されてもよい。
【0100】
図9に示されるように、所定軸210に対して第3テーパ面430qがなす角度d(0°<d<90°)は、所定軸210に対して第4テーパ面440qがなす角度e(0°<e<90°)と等しい。角度dおよび角度eの各々は、0°を越え10°以下の範囲であってもよいし、0°を越え5°以下の範囲であってもよい。角度dおよび角度eの各々は、たとえば、4°である。
【0101】
所定軸210に対して第3段差面480qがなす角度f(0°<f<90°)は、角度dおよび角度eの各々よりも大きい(f>d,f>e)。角度fは、10°を越え60°以下の範囲であってもよいし、30°以上45°以下の範囲であってもよい。角度fは、たとえば、40°である。
【0102】
所定軸210に対する第3テーパ面430qの傾きは、所定軸210に対する第2テーパ面420pの傾きに対応している。所定軸210に対する第4テーパ面440qの傾きは、所定軸210に対する第1テーパ面410pの傾きに対応している。所定軸210に対する第3段差面480qの傾きは、所定軸210に対する第2段差面470pの傾きに対応している。
【0103】
図6および
図10に示されるように、ドローバ61が第1位置PAに配置される場合、すなわち、工具Tのクランプ状態において、ピストン81の第1テーパ面410pと、中間部材71の第4テーパ面440qとが、互いに接触し、ピストン81の第2テーパ面420pと、中間部材71の第3テーパ面430qとが、互いに接触している。
【0104】
中間部材71の第3段差面480qは、所定軸210の軸方向においてピストン81の第1段差面460pと対向している。中間部材71の第3段差面480qは、ピストン81の第1段差面460pと非接触とされている。中間部材71の第3段差面480qと、ピストン81の第1段差面460pとは、所定軸210の軸方向において、互いに間隔を開けて対向している。
【0105】
中間部材71の第3段差面480qは、ピストン81の第2テーパ面420pに対して、所定軸210の半径方向外側に配置されている。ピストン81の第1段差面460pは、中間部材71の第4テーパ面440qに対して、所定軸210の半径方向内側に配置されている。ピストン81の第2段差面470pは、所定軸210の軸方向において、中間部材71(第3テーパ面430q)から第1方向Daにずれた位置に配置されている。中間部材71の第4段差面490qは、所定軸210の軸方向において、ピストン81(第1テーパ面410p)から第2方向Dbにずれた位置に配置されている。
【0106】
図5および
図8に示されるように、ドローバ61が第2位置PBに配置される場合、すなわち、工具Tのアンクランプ状態において、中間部材71の第3段差面480qは、所定軸210の軸方向において、ピストン81の第2段差面470pと対向している。中間部材71の第4段差面490qは、所定軸210の軸方向において、ピストン81の第1段差面460pと対向している。
【0107】
中間部材71は、ピストン81と非接触とされている。中間部材71の第3段差面480qは、ピストン81の第2段差面470pと非接触とされている。ピストン81の第2テーパ面420pと、中間部材71の第4テーパ面440qとは、互いに隙間を開けて対向している。
【0108】
中間部材71の第4段差面490qは、ピストン81の第2テーパ面420pに対して、所定軸210の半径方向外側に配置されている。ピストン81の第1テーパ面410pおよび第1段差面460pは、中間部材71(第4段差面490q)から第2方向Dbにずれた位置に配置されている。中間部材71の第3テーパ面430qは、ピストン81の第2段差面470pから第1方向Daにずれた位置に配置されている。
【0109】
図5から
図10に示されるように、ドローバ61が第1位置PAおよび第2位置PBの間でスライドする間、すなわち、工具Tのアンクランプ状態およびクランプ状態の間における移行時、中間部材71の第3段差面480qが、ピストン81の第2段差面470pと接触する。
【0110】
より具体的には、工具Tのアンクランプ状態からクランプ状態への移行時、まず、ピストン81の第2段差面470pと、中間部材71の第3段差面480qとを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる。続いて、ピストン81の第2テーパ面420pと、中間部材71の第3テーパ面430qとを接触させ、ピストン81の第1テーパ面410pと、中間部材71の第4テーパ面440qとを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる。
【0111】
ピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向外側にスライドしながら、所定軸210の軸方向にスライドする。このとき、ピストン81から中間部材71に対して所定軸210の半径方向外側に向けた力が付与されることによって、第6テーパ面77が第5テーパ面57に押し付けられ、工具Tのクランプ状態において、中間部材71と、ピストン81およびハウジング51との間に楔効果が発生する。これにより、シリンダ機構からピストン81に対する駆動力の供給が停止された場合であっても、工具Tのクランプ状態を保持することができる。
【0112】
本実施の形態では、工具Tのクランプ状態において、ピストン81の第2テーパ面420pおよび中間部材71の第3テーパ面430qが接触し、ピストン81の第1テーパ面410pおよび中間部材71の第4テーパ面440qが接触している。このような構成によれば、ピストン81および中間部材71の間におけるテーパ面同士の接触面積を増大させて、ピストン81および中間部材71に作用する面圧を小さく抑えることができる。これにより、ピストン81および中間部材71のテーパ面にひび割れまたは削れ等が発生することを防止できる。
【0113】
また、所定軸210に対して第2段差面470pがなす角度cが、所定軸210に対して第1テーパ面410pがなす角度aおよび所定軸210に対して第2テーパ面420pがなす角度bの各々よりも大きく、所定軸210に対して第3段差面480qがなす角度fが、所定軸210に対して第3テーパ面430qがなす角度dおよび所定軸210に対して第4テーパ面440qがなす角度eの各々よりも大きい。このため、ピストン81の第2段差面470pと、中間部材71の第3段差面480qとを接触させながら、ピストン81を第1方向Daに向けてストロークさせる間、所定軸210の軸方向におけるピストン81のストローク長さを小さく抑えつつ、所定軸210の半径方向における中間部材71のスライド長さを十分に確保することができる。これにより、所定軸210の軸方向において小型化された工具クランプ装置100において、所望の楔力を得ることができる。
【0114】
また、工具Tのクランプ状態において、中間部材71の第3段差面480qが、ピストン81の第1段差面460pと非接触とされている。このような構成により、ピストン81の第2テーパ面420pおよび中間部材71の第3テーパ面430qが接触し、ピストン81の第1テーパ面410pおよび中間部材71の第4テーパ面440qが接触する状態をより確実に得ることが可能となるため、テーパ面同士の片当たりに起因した面圧上昇を防ぐことができる。
【0115】
工具Tのクランプ状態からアンクランプ状態への移行時、まず、ピストン81の第2テーパ面420pと、中間部材71の第3テーパ面430qとを接触させ、ピストン81の第1テーパ面410pと、中間部材71の第4テーパ面440qとを接触させながら、ピストン81を第2方向Dbに向けてストロークさせる。続いて、ピストン81の第2段差面470pと、中間部材71の第3段差面480qとを接触させながら、ピストン81を第2方向Dbに向けてストロークさせる。
【0116】
ピストン81のストロークに伴って、中間部材71が、所定軸210の半径方向内側にスライドしながら、所定軸210の軸方向にスライドする。ピストン81から中間部材71に対する所定軸210の半径方向外側に向けた力の付与が解除されるとともに、第2方向Dbにおけるピストン81のストロークエンドにおいて、ドローバ61がピストン81により第2方向Dbに押し出される。
【0117】
中間部材71は、工具Tのアンクランプ状態において、ピストン81と非接触とされている。このような構成により、ピストン81が中間部材71による拘束から完全に解かれるため、ピストン81により工具Tを第2方向Dbにより確実に押し出すことができる。これにより、工具Tのアンクランプ動作を円滑に実行させることができる。
【0118】
図8に示されるように、ドローバ61が第2位置PBに配置される状態、すなわち、工具Tのアンクランプ状態において、所定軸210の軸方向における、第5テーパ面57および第6テーパ面77の対向部と、第3段差面480qおよび第2段差面470pの対向部との間の距離L1が、所定軸210の軸方向における、第5テーパ面57および第6テーパ面77の対向部と、第4段差面490qおよび第1段差面460pの対向部との間の距離L2よりも小さい。
【0119】
図8中では、第5テーパ面57および第6テーパ面77の対向部、第3段差面480qおよび第2段差面470pの対向部、ならびに、第4段差面490qおよび第1段差面460pの対向部の各々の、所定軸210の軸方向における中心位置を基準として、距離L1および距離L2が測定されている。
【0120】
このような構成において、工具Tのクランプ状態およびアンクランプ状態の間における移行時、第3段差面480qおよび第2段差面470pが接触するときに、所定軸210の軸方向における、中間部材71およびピストン81の間で面圧が作用する位置と、中間部材71およびハウジング51の間で面圧が作用する位置との間の距離を小さくすることができる。これにより、工具Tのクランプ動作およびアンクランプ動作に伴って、中間部材71に対して過大な負荷が加わることを防止できる。
【0121】
なお、本発明は、第1段差面460pおよび第4段差面490qがテーパ形状を有し、工具Tのアンクランプ状態およびクランプ状態の間における移行時、第4段差面490qが第1段差面460pと接触する構成であってもよいし、第3段差面480qおよび第2段差面470pと、第1段差面460pおよび第4段差面490qとの双方が、テーパ形状を有し、工具Tのアンクランプ状態およびクランプ状態の間における移行時、第3段差面480qが第2段差面470pと接触し、これと同時に、第4段差面490qが第1段差面460pと接触する構成であってもよい。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
この発明は、たとえば、工作機械に適用される工具ホルダに適用される。
【符号の説明】
【0124】
10 工作機械、11 ベッド、16 サドル、18 自動工具交換装置、21 主軸台、31 刃物台、32 刃物台ベース、33 タレット、46 コレット、51 ハウジング、52 第1挿入孔、57 第5テーパ面、61 ドローバ、62 第2挿入孔、63 開口部、66 小径部、67 大径部、71 中間部材、77 第6テーパ面、81 ピストン、82 先端部、83 基部、84 胴部、91 シリンダ、92 第1油圧室、93 第2油圧室、100 工具クランプ装置、101 中心軸、102 旋回中心軸、121 工具ホルダ、210 所定軸、410 第1テーパ部、410p 第1テーパ面、420 第2テーパ部、420p 第2テーパ面、430 第3テーパ部、430q 第3テーパ面、440 第4テーパ部、440q 第4テーパ面、460 第1段差部、460p 第1段差面、470 第2段差部、470p 第2段差面、480 第3段差部、480q 第3段差面、490 第4段差部、490q 第4段差面、Da 第1方向、Db 第2方向、J 工具自動交換位置、K ワーク加工位置、PA 第1位置、PB 第2位置、T 工具、W ワーク。