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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/00 20060101AFI20240404BHJP
   F16G 1/10 20060101ALI20240404BHJP
   F16G 1/12 20060101ALI20240404BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16G1/00 C
F16G1/10
F16G1/12
G06K19/077 220
G06K19/077 248
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023554059
(86)(22)【出願日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2023029584
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022157371
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新居 俊男
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118297(JP,A)
【文献】特開2011-205384(JP,A)
【文献】特開2007-094666(JP,A)
【文献】特開2010-056683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/00
F16G 1/10
F16G 1/12
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、前記ベルト本体に設けられたRFIDタグとを備え、
前記ベルト本体は、導電性を示す材料で構成された芯体層と、前記芯体層に積層されたゴム層とを有し、
前記ゴム層の比誘電率が909MHzにおいて30以下であり、
前記RFIDタグは、下記タイプA又はBのRFIDタグであり、
タイプA:誘電体層と、前記誘電体層の表面から裏面にかけてループ状に形成された放射素子と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えるRFIDタグ
タイプB:誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成された接地導体と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えるRFIDタグ
そして、前記RFIDタグは、前記誘電体層の裏面が前記芯体層に対向するように前記ゴム層に設けられている、ベルト。
【請求項2】
前記芯体層が、炭素繊維で構成された芯体層である、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記芯体層が、金属材料で構成された芯体層である、請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記RFIDタグが前記タイプBのRFIDタグである場合、
前記放射素子と、前記接地導体とを電気的に接続する2つの接続部が前記誘電体層に設けられており、
前記放射素子と前記2つの接続部と前記接地導体とが逆Fアンテナを構成している、請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
前記RFIDタグの交信周波数帯がUHF帯である、請求項1に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2022-157371号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ベルトに関し、具体的には、RFIDタグを備えるベルトに関する。
【背景技術】
【0003】
伝動ベルトや搬送ベルトなどのベルトは、ベルト駆動システムを備える各種製品に使用されている。伝動ベルトや搬送ベルトは、通常、無端状にされ、該ベルトを駆動プーリーと従動プーリーとを含む複数のプーリーに巻き掛けられて用いられる。また、ベルト駆動システムでは、ベルトが無端状ではなく、帯状で利用される場合もある。そのような場合も、多くの場合、ベルトがプーリーに巻き掛けられて用いられる。
【0004】
この種のベルトは、一定時間のベルト走行中にプーリーによる曲げ伸ばしを数多く受けることになる。よって、ベルト駆動システムでは、通常、故障による事故などを防止するための点検が行われる。例えば、ベルトの損傷による事故を未然に防止するために、ベルトの状態を定期的に点検することが行われる。
【0005】
近年、ベルト駆動システムの点検を簡便にするために、RFIDタグを用いることが試みられている。RFIDタグは、ICチップと、該ICチップに接続された放射素子とを備えており、RFIDリーダライタとの無線通信によって、ICチップ内の情報を発信可能に構成されている。よって、RFIDタグを備えるベルトによれば、ICチップ内に蓄積したベルト情報を非接触で読み取ることが可能となる。
【0006】
例えば、特許文献1には、RFIDタグと該RFIDタグに接続された圧力センサとを備え、圧力センサが検知したデータをICチップのメモリに蓄積するように構成された伝動ベルトが記載されている。そして、RFIDリーダライタでRFIDタグから読み取られた圧力データをベルトの状態確認のための情報として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許第6741889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のようなベルトには、抗張力を発揮させるための芯体層が備えられている。かかる芯体層としては、例えば、炭素繊維で構成されたものが知られている。炭素繊維で構成された芯体層を備えるベルトは、耐久性に優れており、工作機械や大型農機などの高負荷がかかる伝動ベルトに好適である。
【0009】
しかしながら、炭素繊維で構成されたベルトにRFIDタグを設けた場合、炭素繊維の電磁波を吸収する性質によって、通信性能が著しく低下するおそれがある。なお、この現象は、炭素繊維以外の金属材料などの他の導電性を示す材料によって芯体層が構成される場合にも同様に生じ得る。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、芯体層が導電性を示す材料で構成されている場合であってもRFIDタグが通信可能なベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るベルトは、
ベルト本体と、前記ベルト本体に設けられたRFIDタグとを備え、
前記ベルト本体は、導電性を示す材料で構成された芯体層、好ましくは、炭素繊維又は金属材料で構成された芯体層を有し、
前記RFIDタグは、下記タイプA~CのいずれかのRFIDタグであり、
タイプA:誘電体層と、前記誘電体層の表面から裏面にかけてループ状に形成された放射素子と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えるRFIDタグ
タイプB:誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成された接地導体と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えるRFIDタグ
タイプC:誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成されて前記誘電体層の表面側からの電磁波を前記放射素子に向かって反射する金属層とを備えるRFIDタグ
そして、前記誘電体層の裏面が前記芯体層に対向するように前記RFIDタグが設けられている。
【0012】
本発明の一態様に係るベルトは、前記RFIDタグが前記タイプBのRFIDタグである場合、
前記放射素子と、前記接地導体とを電気的に接続する2つの接続部が前記誘電体層に設けられており、
前記放射素子と前記2つの接続部と前記接地導体とが逆Fアンテナを構成している。
【0013】
本発明の一態様に係るベルトは、前記RFIDタグの交信周波数帯がUHF帯である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態のベルトを備えるベルト駆動システムの概略図である。
図2】一実施形態のベルトの概略的な断面図である。
図3】一例としてのタイプAのRFIDタグの斜視図である。
図4】一例としてのタイプBのRFIDタグの斜視図である。
図5】タイプBのRFIDタグの変形例の概略断面図である。
図6】一例としてのタイプCのRFIDタグの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るベルトについて説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のベルト1は、ベルト駆動システム100を構成するものである。ベルト駆動システム100は、複数のプーリー2と、複数のプーリー2に巻き掛けられたベルト1とを備えている。本実施形態のベルト1は、プーリー間で動力を伝動するために用いられる伝動ベルトである。本実施形態のベルト1は、長さ方向と、長さ方向に直交する幅方向と、長さ方向及び幅方向の両方に直交する厚さ方向とを有する。
【0017】
本実施形態のベルト1は、無端状でありプーリーに巻き掛けられる際に該プーリーに当接される内周面と、該内周面とは反対の面となる外周面とを備えている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態のベルト1は、厚さ方向に重なる複数のゴム層で構成されたベルト本体10と、ベルト本体10に埋設されたRFIDタグ20とを備えている。
【0019】
本実施形態のベルト本体10は、内向きに突出した複数の突部を備えている。すなわち、本実施形態のベルト本体10は、内周面側に複数の突部を備えている。複数の突部は、長さ方向に一定のピッチで備えられている。また、隣り合う突部の間には、凹部が形成されている。本実施形態のベルト本体10は、長さ方向(周方向)に突部と凹部とが交互に繰り返される形状を内周面側に有する。なお、本発明のベルトは、ここに記載の態様のベルト本体を備えるものに限定されない。
【0020】
本実施形態のベルト本体10は、各プーリー2と歯合する歯部111を有する内側ゴム層11と、外周側の表面をなす外側ゴム層12と、炭素繊維製の心線131で構成された芯体層13とを有する。また、本実施形態のベルト本体10は、内側ゴム層11を補強する補強層14を備えている。補強層14は、ベルト本体10の内周面をなしている。
【0021】
上記の通り本実施形態で例示するベルト1は、複数の歯を備えた歯付ベルトであり、該歯付ベルトの歯は、内側ゴム層11の歯部111と、内側ゴム層11の内周面側の凹凸形状に追従するように歯部111を内周面側から覆う補強層14とによって構成されている。
【0022】
外側ゴム層12は、帯状に形成されている。
【0023】
内側ゴム層11及び外側ゴム層12を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、シリコンゴム(SR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(ACR)、フッ素ゴム(FR)等が挙げられる。ゴム成分は、1種単独で用いられてもよく、複数種を組み合わせて用いられてもよい。
【0024】
前記ゴム組成物は、ゴム成分以外の添加剤を含有していてもよい。かかる添加剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等の充填材、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の難燃剤、硫黄、有機過酸化物等の架橋剤、酸化亜鉛等の加硫促進剤、ジオクチルアジペート等の可塑剤、パラフィンオイル等の硬さ調整剤、ベンズイミダゾール系化合物等の老化防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0025】
内側ゴム層11及び外側ゴム層12の比誘電率は、1以上30以下であることが好ましく、10以上30以下であることがより好ましい。なお、各ゴム層の比誘電率は、909MHzにおける比誘電率を意味するものとし、次の測定方法によって測定することができる。まず、測定装置としては、インピーダンスアナライザ(HEWLETT PACKARD製、型番4291B RF)を用いる。そして、各ゴム層から切り出した試験片(厚み3mm以下、φ15mm以上)の厚み(マイクロメータで測定)を測定装置に入力する。次に、試験片を高インピーダンステストヘッド測定部にセットし、1MHzから1GHzにわたる比誘電率のグラフを得る。このグラフから909MHzにおける比誘電率を読み取り、各ゴム層の比誘電率とする。
【0026】
本実施形態の芯体層13は、上記のように、炭素繊維製の心線131によって構成されている。すなわち、芯体層13は、炭素繊維による導電性を示す層である。心線を構成する繊維は、炭素繊維の他に、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維等の合成繊維、ガラス繊維等を含んでいてもよい。心線を構成する繊維の総質量に対する炭素繊維の質量割合は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。本実施形態の心線131は、炭素繊維のみからなる。なお、前記芯体層は、帆布によって構成されていてもよい。
【0027】
補強層14は、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編布、不織布等の布材により構成されている。
【0028】
本実施形態のベルト駆動システム100は、ベルト本体10の外周面に対向するように配置されたRFIDリーダライタ(RFIDリーダであってもよい)を備えている。本実施形態のベルト駆動システム100は、データの送受信に860~960MHzの電磁波、すなわち、UHF帯の電磁波を使用するものである。
【0029】
[タイプAのRFIDタグ]
本実施形態のRFIDタグ20は、タイプAのRFIDタグである。図3に示すように、RFIDタグ20は、芯体層13に沿って延在する誘電体層21と、前記誘電体層21の表面211から裏面212にかけてループ状に形成された放射素子22と、前記誘電体層21の表面211に搭載され且つ前記放射素子22に接続されたICチップ23とを備えている。言い換えれば、タイプAのRFIDタグ20は、前記誘電体層21と、前記誘電体層21の表面211に搭載されたICチップ23と、前記誘電体層21に形成され前記ICチップ23を介してループ状に形成された前記放射素子22とを備えている。
【0030】
タイプAの誘電体層21は、樹脂によって構成されている。前記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などが挙げられる。また、タイプAの誘電体層の比誘電率(909MHz)は、4~20が好ましく、4~15がより好ましい。なお、当該比誘電率は、内側ゴム層11及び外側ゴム層12の比誘電率と同様にして測定することができる。
【0031】
前記放射素子22は、前記誘電体層21の表面211への金属線や金属箔の接着、前記誘電体層21への導電性インクの塗布、前記誘電体層21へのエッチング加工等によって形成され得る。該金属としては、銅、アルミニウム、又は銀等が挙げられる。
【0032】
前記放射素子22は、前記誘電体層21とともにループアンテナを構成している。すなわち、前記放射素子22は、構造上、前記誘電体層21の表面211に搭載された前記ICチップ23から互いに反対方向に向かって延びる一対の表面パターン221と、前記誘電体層21の各側面に形成された一対の側面パターン222と、前記誘電体層21の裏面212に形成された裏面パターン223とを有する。そして、前記表面パターン221、前記側面パターン222、及び前記裏面パターン223は、途切れることなく互いにつながっていることによって、前記誘電体層21とともにループアンテナを構成している。
【0033】
本実施形態のベルト1では、前記放射素子22の前記裏面パターン223が芯体層13に対向するように、RFIDタグ20がベルト本体10の外側ゴム層12に埋設されている。言い換えれば、前記誘電体層21の裏面212が芯体層13に対向するようにRFIDタグ20が外側ゴム層12に埋設されている。これによって、本実施形態のベルト1のように、芯体層13が炭素繊維で構成されているベルト1であっても、RFIDタグ20がRFIDリーダライタと通信可能となる。また、本実施形態のベルト1は、RFIDタグ20がループアンテナを採用しているため、UHF帯における比較的広範囲の電磁波による通信が可能である。
【0034】
前記ICチップ23は、前記放射素子22と電気的に接続する一対の端子を有する。すなわち、前記ICチップ23は、該一対の端子を介して前記放射素子22と電気的に接続されている。前記放射素子22は、RFIDリーダライタからの電磁波によって電流が生じるように構成されており、前記ICチップ23は、この電流で駆動するように前記放射素子22とのインピーダンス整合がとられている。すなわち、本実施形態のRFIDタグ20は、パッシブ型である。また、前記ICチップ23は、ベルト1の状態に関する情報などのデータを格納するメモリを有する。そして、前記ICチップ23は、RFIDリーダライタから送信されるデータを受信するとともに、前記メモリに格納された情報をRFIDリーダライタへ送信するように構成されている。なお、前記RFIDタグは、バッテリを備えたアクティブ型であってもよい。
【0035】
本実施形態のICチップは、センサ一体型のICチップであり、温度センサと、該温度センサの駆動を制御する制御回路とを備えている。前記温度センサと前記制御回路とは、配線によって電気的に接続されている。また、前記配線は、導電性接着剤によって前記温度センサ及び前記制御回路に接着されている。前記導電性接着剤は、銀粒子等の金属粒子と、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の硬化性樹脂とを含む。なお、ICチップは温度センサを備えていなくてもよく、その代わりに、ベルト1は、前記ICチップに電気的に接続された温度センサをICチップの外部に備えていてもよい。
【0036】
前記温度センサは、温度変化により抵抗値が変化するサーミスタで構成されている。前記サーミスタは、温度の上昇により抵抗値が減少するNTCサーミスタやCTRサーミスタのようなサーミスタであってもよく、温度の上昇により抵抗値が増大するPTCサーミスタのようなサーミスタであってもよい。前記温度センサは、前記サーミスタの抵抗値の変化に応じた電圧又は電流を出力するように構成されている。そして、本実施形態のICチップは、前記温度センサが出力した電圧又は電流の数値を、前記制御回路によって温度値に変換するように構成されている。なお、前記温度センサは、熱電対で構成されていてもよい。該熱電対は、成分の異なる2種類の金属線どうしが接続されて対にされており、これらの金属線の接続点において温度変化に応じた熱起電力を出力するものである。
【0037】
次に、本発明に用いられ得るタイプB及びタイプCのRFIDタグについて説明する。
【0038】
[タイプBのRFIDタグ]
図4に示すように、タイプBのRFIDタグ20は、芯体層13に沿って延在する誘電体層21と、前記誘電体層21の表面211に形成された板状の放射素子22と、前記誘電体層21の裏面212に形成された板状の接地導体24と、マイクロストリップライン25を介して前記放射素子22に接続され且つ接続部26を介して前記接地導体24に接続されたICチップ23とを備えている。すなわち、タイプBのRFIDタグは、前記誘電体層21と前記放射素子22と前記接地導体24とで構成されたパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)を備えている。前記接地導体24は、前記誘電体層21を介して前記放射素子22と対向するように配されている。通常、前記接地導体24の面積は、前記放射素子22の面積よりも大きくされている。
【0039】
タイプBの誘電体層21の比誘電率(909MHz)は、1よりも大きいことが好ましく、4~20が好ましく、4~15がより好ましい。なお、当該比誘電率は、内側ゴム層11及び外側ゴム層12の比誘電率と同様にして測定することができる。これによって、タグの小型化が可能となり、タグに起因するベルト本体10の損傷が抑制される。かかる誘電体層21を構成する素材としては、例えば、ポリフェニレンサルフィド(PPS樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などであってもよく、アルミナなどのセラミック材料であってもよい。
【0040】
前記放射素子22は、マイクロストリップライン25が接続された第1領域224と、マイクロストリップライン25とは反対側において前記第1領域224につながっている第2領域225とを有する。前記第1領域224と前記第2領域225との間には、マイクロストリップライン25と直交するように延びる一対のスリット226が形成されている。
【0041】
前記ICチップ23は、前記誘電体層21の側面に搭載されている。なお、前記ICチップ23は、前記誘電体層21の表面又は裏面に搭載されていてもよく、前記誘電体層21に埋設されていてもよい。
【0042】
次に、図5を参照しつつ、タイプBのRFIDタグの変形例について説明する。タイプBの変形例のタグは、芯体層13に沿って延在する誘電体層21と、該誘電体層21の表面211に形成された板状の放射素子22と、前記誘電体層21の裏面212に形成された板状の接地導体24と、前記放射素子22又は前記接地導体24に実装されたICチップ23と、前記誘電体層21を貫通するように延びて前記放射素子22と前記接地導体24とを接続する接続部たる短絡線26と、前記誘電体層21を貫通するように延びて前記放射素子22と前記接地導体24とを接続する接続部たる給電線27とを備えている。
【0043】
前記短絡線26及び前記給電線27のそれぞれは、前記誘電体層21に形成された貫通孔に充填された導電性ペーストによって形成されている。
【0044】
タイプBの変形例のRFDIタグは、前記放射素子22と前記接地導体24と前記接続部(前記短絡線26及び前記給電線27)とで構成される逆Fアンテナを備えている。これによって、タグが小型にされつつもUHF帯における比較的広範囲の電磁波による通信が可能となる。なお、前記ICチップ23は、前記短絡線26及び前記給電線27と同様に、前記誘電体層21に埋設されていてもよい。これによって、ベルト本体10の屈曲に起因する当該ICチップの端子や各接続部における接触不良が抑制される。
【0045】
タイプBの変形例のRFIDタグにおいては、前記放射素子22又は前記接地導体24にスリットが形成され、該スリットに前記ICチップ23が備えられている。この場合、前記ICチップ23の一対の端子は、両方が前記放射素子22に電気的に接続されていてもよく、一方の端子が前記放射素子22に電気的に接続され且つ他方の端子が前記接地導体24に電気的に接続されていてもよい。かかるRFIDタグは、前記放射素子22における前記スリットの近傍において電磁界が増強されるため、ベルト本体10に埋設された場合であっても十分に通信可能なものとなる。
【0046】
タイプBのRFIDタグが採用される場合、前記接地導体24が芯体層13に対向するように、RFIDタグが外側ゴム層12に埋設される。これによって、芯体層13が炭素繊維で構成されているベルト1であっても、RFIDタグがRFIDリーダライタと通信可能となる。
【0047】
[タイプCのRFIDタグ]
タイプCのRFIDタグは、芯体層13に沿って延在する誘電体層21と、前記誘電体層21の表面211に形成された放射素子22と、前記誘電体層21の裏面212に形成されて誘電体層21の表面側からの電磁波を前記放射素子22に向かって反射する金属層28とを備えている。前記放射素子22は、前記誘電体層21の表面211に載置されたベース29上に形成されている。タイプCのRFIDタグは、RFIDリーダライタからRFIDタグ(具体的には前記放射素子22)に向かって進行する電磁波である進行波と、RFIDリーダライタから送信された電磁波が前記金属層28で反射された反射波との合成波を前記放射素子22が受信するように構成されている。タイプCのRFIDタグは、前記誘電体層21によって前記進行波と前記反射波との位相差を生じさせて、前記進行波と前記反射波とが互いに相殺する効果を弱めることによって前記合成波を生成する。すなわち、タイプCのRFIDタグは、前記誘電体層21による波長短縮効果を利用して前記合成波を生成する。好ましくは、前記進行波と前記反射波とが強め合うように合成された合成波が生成するように、前記誘電体層21の材質及び厚み、前記放射素子22及び前記金属層28の位置関係が決定されている。これによって、前記放射素子22の利得が向上し、延いては、ベルト本体10に埋設し得るようにタグの小形化が可能となる。
【0048】
タイプCの誘電体層21の比誘電率は(909MHz)は、1よりも大きいことが好ましく、4~20が好ましく、4~15がより好ましい。なお、当該比誘電率は、内側ゴム層11及び外側ゴム層12の比誘電率と同様にして測定することができる。これによって、タグの小型化が可能となり、ベルト本体10に埋設し易くなる。かかる誘電体層21を構成する素材としては、例えば、ポリフェニレンサルフィド(PPS樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などであってもよく、アルミナなどのセラミック材料であってもよい。
【0049】
タイプCのRFIDタグが採用される場合、前記金属層28が芯体層13に対向するように、該RFIDタグが外側ゴム層12に埋設される。これによって、芯体層13が炭素繊維で構成されているベルト1であっても、RFIDタグがRFIDリーダライタと通信可能となる。
【0050】
上記のように、ベルト1ではRFIDタグ20がベルト本体10に埋設されている。この場合、芯体層13に接触しないようにRFIDタグ20が埋設されることが好ましい。これによって、金属層28を介した芯体層13への電波の吸収が抑制され、通信性能が向上する。
【0051】
次に、本発明のベルトの製造方法について、上記実施形態のベルト1の製造方法を例示して説明する。
【0052】
本実施形態に係るベルト1の製造方法は、未加硫ゴムシートを作製する材料準備工程と、前記未加硫ゴムシートを成形して一次成形体を得る一次成形工程と、前記一次成形体にRFIDタグ20を設置してタグ付一次成形体を得る設置工程と、前記タグ付一次成形体をさらに成形してベルト成形体(ベルト本体10)を得る二次成形工程と、を備える。
【0053】
前記材料準備工程では、前記ゴム成分に前記添加剤を配合した配合物を混練してゴム組成物を調製し、該ゴム組成物をカレンダー成形によってシート状に成形し、前記未加硫ゴムシートを作製する。本実施形態では、前記未加硫ゴムシートとして、内側ゴム層11を形成する内側ゴム層用シートと、外側ゴム層12を形成する外側ゴム層用シートと、各層を接着するための接着用ゴムシートとを作製する。この他、補強層14を形成するための補強シートを準備する。
【0054】
また、前記材料準備工程では、芯体層13を形成するための心線を液状の接着剤に浸漬した後、加熱し、接着処理された心線を得る。なお、芯体層13を形成するのに帆布を採用する場合、市販の帆布には接着処理がなされているため、市販の帆布をそのまま使用することができる。
【0055】
さらに、前記材料準備工程では、RFIDタグ20を接着処理する。該接着処理では、加硫接着剤(例えば、ロード社製のChemlok)をRFIDタグ20に塗布し、前記加硫接着剤に含まれる溶剤を乾燥により除去し、接着処理されたRFIDタグ20を得る。
【0056】
前記一次成形工程では、歯部111を成形するための歯部成形型を用いる。前記歯部成形型は、円筒状であり、軸方向に延びる歯部形成溝が周方向に所定の間隔を空けて形成されている。そして、前記一次成形工程では、前記歯部成形型に各シートを巻き付けて、円筒状の一次積層体を作製する。本実施形態の一次積層体は、前記歯部成形型に接触する前記補強シートと、該補強シートに巻き付けられた心線と、該心線を前記補強シートとともに挟み込むように巻き付けられた前記内側ゴム層用シートと、該内側ゴム層用シートに積層するように巻き付けられた離型紙と、該離型紙に積層されたゴムスリーブとで構成される。
【0057】
さらに、前記一次成形工程では、前記一次積層体の外面に圧力を加える外型を用いる。
【0058】
そして、前記外型を装着した前記一次積層体を高温高圧缶の中に配し、前記外型の圧力によって前記内側ゴム層用シートを前記歯部成形型の周面に向かって押し付けながら該内側ゴム層用シートを前記歯部形成溝に向かって流動させ、歯部が成形された一次成形体を作製する。
【0059】
本実施形態の一次成形工程では、前記歯部成形型の温度及び前記外型の温度が、前記内側ゴム層用シートのゴム成分を流動させる温度であり、且つ、前記内側ゴム層用シートに加硫が生じない温度に設定される。前記歯部成形型の温度及び前記外型の温度は、前記内側ゴム層用シートのゴム成分の種類により適宜変更され得るが、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。前記歯部成形型の温度及び前記外型の温度は、130℃以下であることが好ましい。なお、前記外型における前記一次成形体との接触面と、前記一次成形体の内側ゴム層用シートとの間には、前記ゴムスリーブが介在することとなるため、該内側ゴム層用シートのゴム成分を流動させる上では、前記歯部成形型の温度が比較的重要となる。
【0060】
前記一次成形工程では、前記歯部成形型の圧力及び温度が設定値となった時点から15分以上、前記一次積層体を処理することが好ましい。
【0061】
前記設置工程では、前記一次成形体にRFIDタグ20を設置する。このとき、RFIDタグ20の放射素子22(ループアンテナ)における前記裏面パターン223(若しくは前記接地導体24又は前記金属層28)が、前記心線と対向するように設置することが重要である。本実施形態では、前記一次成形体と、該一次成形体に巻き付ける一又は複数の前記接着用ゴムシートとの間にRFIDタグ20を設置する。すなわち、前記接着用ゴムシートと接するようにRFIDタグ20を設置する。このとき、前記一次成形体の表面を切削し、RFIDタグ20を設置するための溝を前記一次成形体に形成してもよい。次いで、巻き付けた前記接着用ゴムシートに前記外側ゴム層用シートを積層し、タグ付一次成形体を作製する。この他、前記一次成形体に巻き付ける第1接着用ゴムシートと、該第1接着用ゴムシートに積層するように巻き付ける第2接着用ゴムシートとの間に、RFIDタグ20を挟み込んだタグ付一次成形体を作製してもよい。あるいは、前記一次成形体に前記外側ゴム層用シートを直接巻き付けてもよく、この場合、前記一次成形体の周面上にRFIDタグ20を設置したタグ付一次成形体を作製してもよい。
【0062】
本実施形態の前記二次成形工程では、前記タグ付一次成形体に前記外側ゴム層用シートを巻き付け、さらに、離型紙を巻き付け、二次積層体を作製する。そして、前記外型を装着した前記二次積層体を高温高圧缶の中に配し、前記二次積層体を加硫することによって、内側ゴム層11及び外側ゴム層12を形成しつつ、芯体層13に内側ゴム層11及び外側ゴム層12を接着し、前記ベルト成形体(ベルト本体10)を得る。
【0063】
本実施形態の二次成形工程では、前記歯部成形型の温度が、前記未加硫ゴムシートにおいて加硫が生じる温度に設定される。前記歯部成形型の温度は、前記未加硫ゴムシートの加硫剤等の成分により適宜変更し得るが、165℃以上であることが好ましい。なお、前記二次成形工程においても、前記一次成形工程と同様に、各未加硫ゴムシートのゴム成分を加硫する上では、前記歯部成形型の温度が比較的重要となる。
【0064】
前記二次成形工程では、前記歯部成形型の温度が設定値となった時点から15分以上、前記二次積層体を処理することが好ましい。
【0065】
本実施形態の製造方法によれば、RFIDタグ20を設置する前に、成形時のゴムの流動が激しい内側ゴム層11(特に歯部111)を成形するため、ベルト1の成形時におけるRFIDタグ20の損傷が抑制される。
【0066】
本実施形態に係るベルト1は、
ベルト本体10と、ベルト本体10に設けられたRFIDタグ20とを備え、
ベルト本体10は、炭素繊維又は金属材料等の導電性を示す材料で構成された芯体層13を有し、
RFIDタグ20は、タイプA~CのいずれかのRFIDタグ20であり、
タイプA:誘電体層21と、該誘電体層21の表面211から裏面212にかけてループ状に形成された放射素子22と、前記放射素子22に接続されたICチップ23とを備えるRFIDタグ20
タイプB:誘電体層21と、該誘電体層21の表面211に形成された放射素子22と、前記誘電体層21の裏面212に形成された接地導体24と、前記放射素子22に接続されたICチップ23とを備えるRFIDタグ20
タイプC:誘電体層21と、該誘電体層21の表面211に形成された放射素子22と、前記誘電体層21の裏面212に形成されて前記誘電体層21の表面側からの電磁波を前記放射素子に向かって反射する金属層28とを備えるRFIDタグ20
そして、前記誘電体層21の裏面212が芯体層13に対向するようにRFIDタグ20が設けられている。
【0067】
かかる構成によれば、RFIDタグ20がタイプA~Cのいずれかであり且つ前記誘電体層21の裏面212が芯体層13に対向するように設けられることによって、芯体層13を構成する材料による電磁波の吸収の影響を受けにくくなる。よって、ベルト1に設けられたRFIDタグ20とRFIDリーダライタとが通信可能なものとなる。
【0068】
本実施形態に係るベルト1は、RFIDタグ20が前記タイプBのRFIDタグ20である場合、
前記放射素子22と、前記接地導体24とを電気的に接続する2つの接続部(前記短絡線26及び前記給電線27)が前記誘電体層21に設けられており、
前記放射素子22と前記2つの接続部と前記接地導体24とが逆Fアンテナを構成している。
【0069】
かかる構成によれば、ベルトに設置され易いようにRFIDタグ20が小型にされつつも、UHF帯における比較的広範囲の電磁波による通信が可能となる。
【0070】
本実施形態に係るベルト1は、RFIDタグ20の交信周波数帯がUHF帯である。
【0071】
かかる構成によれば、異なる周波数を採用する複数の地域における適用可能性を高めることができる。
【0072】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るベルトは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るベルトは、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るベルトは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、RFIDタグ20がベルト本体10に埋設されているが、本発明はこれに限定されず、ベルト本体の表面上(外周面上)にRFIDタグが載置されていてもよい。
【0074】
上記実施形態のベルト駆動システム100は、ベルト本体10の外周面に対向するように配置されたRFIDリーダライタを備えているが、この他、該システムは、ベルト本体10の内周面に対向するように配置されたRFIDリーダライタを備えていてもよい。この場合、前記RFIDタグは、芯体層13を介したベルト本体10の内周面側に設置されることとなり、具体的には、内側ゴム層11に埋設されることとなる。そして、前記RFIDタグ20は、前記誘電体層21の裏面212が芯体層13に対向するように内側ゴム層11に埋設される。例えば、タイプBのRFIDタグの場合、前記接地導体24が芯体層13に対向するように内側ゴム層11に埋設される。
【0075】
ベルトの種類に関し、本発明のベルトは、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルト等の伝動ベルトであってもよい。
【0076】
前記Vベルトは、内向きに突出した複数の突部を備えていてもよい。該複数の突部は、ベルト長さ方向に一定のピッチで設けられている。また、隣り合う突部の間には、凹部が形成されている。前記突部は、ベルト幅方向に平行するように形成されていてもよく、ベルト幅方向に対して斜めに延びるように形成されていてもよい。
【0077】
前記Vリブドベルトは、内向きに突出し且つベルト長さ方向にわたって形成された1又は複数の突条部を備えている。前記突条部は、ベルト長さ方向に直交する断面が略台形状である。
【0078】
また、本発明のベルトは、内向きに突出し且つベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた突部を内周面側に有し、且つ、外向きに突出し且つベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた突部を外周面側に有するダブルコグベルトであってもよい。
【0079】
さらに、本発明のベルトは、内向きに突出し且つベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた複数の突部を内周面側に有し、且つ、外向きに突出し且つベルト長さ方向にわたって形成された1又は複数の突条部を外周面側に有するサーペンタインベルトであってもよい。
【0080】
前記平ベルトは、前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層が帯状に形成されたものである。
【0081】
さらに、本発明のベルトは、搬送ベルトであってもよい。
【0082】
なお、金属製の材料で構成された芯体層を有するベルトが存在する。すなわち、金属製の芯体層は、金属による導電性を示す層である。そして、金属製の芯体層は、炭素繊維で構成された芯体層と同様に、RFIDタグの通信を阻害するおそれがある。これに対して、タイプA~CのRFIDタグは、金属製の芯体層を有するベルト本体を備えるベルトにも応用が可能であると考えられる。すなわち、金属製の芯体層を有するベルトにおける無線通信という課題に対するベルトとして、金属製の芯体層を有するベルト本体と、前記ベルト本体に設けられたRFIDタグとを備え、前記RFIDタグが、上記のタイプA~CのいずれかのRFIDタグであるベルトが考えられる。
【0083】
前記芯体層を構成する金属製の材料としては、例えば、スチールコードが挙げられる。
【実施例
【0084】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0085】
[ベルト本体の製造例]
(一次成形工程)
歯部成形型として、円筒状であり、軸方向に延びる歯部形成溝が周方向に所定の間隔を空けて形成された歯部成形型を用いた。まず、この歯部成形型に補強層を形成するための補強シートを巻き付けた後、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層用シートを補強シートに積層するように巻きつけた。次に、内側ゴム層用シートに炭素繊維製の心線を螺旋状に巻き付けた。さらに、心線の上から離型紙を巻き付けて、円筒状の一次積層体を作製した。
そして、外型を装着した一次積層体を高温押圧缶の中に配し、圧力を所定値に設定し且つ歯部成形型の温度を120℃に設定し、15分間、一次積層体を処理した。
(二次成形工程)
タグ付一次成形体に外側ゴム層を形成するための外側ゴム層用シートを巻き付けた後、離型紙を巻き付け、二次積層体を作製した。
そして、外型を装着した二次積層体を高温押圧缶の中に配し、圧力を所定値に設定し且つ歯部成形型の温度を165℃に設定し、15分間、二次積層体を加硫し、ベルト成形体(ベルト本体)を作製した。
なお、内側ゴム層及び外側ゴム層の比誘電率は、19.99(909MHz)であった。
【0086】
[通信性能の評価]
ベルト本体の表面(外周面)に下記に列挙したRFIDタグを載置した試験体、及び、ベルト本体の外側ゴム層の厚み方向途中に切り込みを形成し該切り込みに下記に列挙したRFIDタグを挟み込んだ試験体を作製した。なお、RFIDタグ2~5を備える試験体については、誘電体基板の裏面が芯体層に対向するように各RFIDタグを設置した。そして、各試験体について、テストグラム社製のUHFタグテスター(型番T-9000)を用い、1MHzから1GHzにわたって電磁波の受信効率(電波強度dbm)を測定した。結果は、表1に示したとおりである。
【0087】
[評価したRFIDタグ]
RFIDタグ1(タイプA~Cのいずれにも属さないもの):放射素子としてのダイポールアンテナと、ダイポールアンテナに接続したICチップとを備えるRFIDタグ
RFIDタグ2(タイプA):誘電体層に形成されたループ状の放射素子(ループアンテナ)を備えるRFIDタグ
RFIDタグ3(タイプB):セラミックスで構成された誘電体層の表面に形成された板状の放射素子と、誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体とを備え、これらがパッチアンテナを構成しているRFIDタグ
RFIDタグ4(タイプB):誘電体層の表面に形成された板状の放射素子と、誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体とを備え、これらがパッチアンテナを構成し且つ放射素子と接地導体とが2つの接続部を介して電気的に接続されて逆Fアンテナを構成しているRFIDタグ
RFIDタグ5(タイプB):発泡層で構成された誘電体層(比誘電率1)の表面に形成された板状の放射素子と、誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体とを備え、これらがパッチアンテナを構成しているRFIDタグ
RFIDタグ6(タイプB):誘電体層の表面に形成された板状の放射素子と、誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体とを備え、これらがパッチアンテナを構成し、且つ、放射素子には電磁界を強めるためのスリットが形成されているRFIDタグ
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1及び表2に示す結果から、本発明のベルトは、導電性の材料からなる芯体層を備える場合であっても、RFIDリーダライタとの通信が可能であることがわかる。なお、表2の電波強度は、値が低いほど通信性能が良好であることを示す指標である。
【符号の説明】
【0091】
1:ベルト、10:ベルト本体、11:内側ゴム層、111:歯部、12:外側ゴム層、13:芯体層、131:心線、14:補強層、20:RFIDタグ、21:誘電体層、211:表面、212:裏面、22:放射素子、221:表面パターン、222:側面パターン、223:裏面パターン、224:第1領域、225:第2領域、226:スリット、23:ICチップ、24:接地導体、25:マイクロストリップライン、26:短絡線、27:給電線、28:金属層、29:ベース、2:プーリー、100:ベルト駆動システム
【要約】
導電性を示す材料で構成された芯体層を有するベルト本体と、前記ベルト本体に設けられたRFIDタグとを備え、前記RFIDタグが特定のRIFDタグである。該RFIDタグは、例えば、次のタイプAのものであり、すなわち、誘電体層と、前記誘電体層の表面から裏面にかけてループ状に形成された放射素子と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えている。そして、本発明では、前記誘電体層の裏面が前記芯体層に対向するように前記RFIDタグが設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6