(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20240405BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
D06F39/10 E
D06F39/08 321
D06F39/08 331
(21)【出願番号】P 2019073880
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-03-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】倉掛 敏之
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183277(JP,A)
【文献】特開2017-158817(JP,A)
【文献】特開2010-046124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/10
D06F 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物と洗濯水とを収容する洗濯槽と、
前記洗濯槽内の洗濯水を循環させる水路と、
前記水路に設けられ、前記水路を流れる洗濯水に含まれる異物を分離する遠心分離部と、前記水路を通して前記洗濯槽と前記遠心分離部との間で洗濯水を循環させるポンプ部と、洗濯運転を制御する制御部と、を備え、
前記遠心分離部は、前記水路に連通接続されたケースと、前記ケース内に回転可能に設けられた回転筒と、前記回転筒を回転させる回転筒モータとを有し、
前記制御部は、前記回転筒モータを制御して前記回転筒の回転速度を変化させるとき、前記回転筒の回転速度と、前記回転筒内における前記洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で変化させ、
前記所定値は、前記遠心分離部で分離された異物を、前記回転筒の内面に保持した状態で維持可能な速度差であ
って、
前記制御部は、前記洗濯水の循環停止時又は循環水量の減少時に、前記遠心分離部で分離された異物を前記回転筒の内面に保持可能な回転速度で前記回転筒モータを回転させる洗濯機。
【請求項2】
前記ポンプ部は、前記遠心分離部と別異に前記水路に設けられ、
前記制御部は、前記ポンプ部により前記洗濯水の循環を制御する請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯水の流れを制御する調整部を前記水路に有し、
前記制御部は、前記調整部により前記洗濯水の循環を制御する請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記ポンプ部は、前記洗濯水が通過する前記回転筒の流出側に設けられ、前記回転筒と一体で回転するポンプ羽根を有し、
前記ポンプ羽根は、前記回転筒モータによって前記回転筒とともに回転し、前記水路を通して前記洗濯槽と前記遠心分離部との間で前記洗濯水を循環させる請求項1または請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記洗濯槽内の洗濯水の水位を検知する水量検知部を有し、
前記制御部は、前記洗濯水の循環時に、前記洗濯槽内の洗濯水が第1の水位になったことを前記水量検知部によって検知すると、前記調整部によって前記水路における洗濯水の流れを止水または減少させる請求項
3に記載の洗濯機。
【請求項6】
第2の水位は前記第1の水位より大であり、
前記制御部は、前記調整部によって前記水路における洗濯水の流れを止水または減少させている時に、前記洗濯槽内の洗濯水が前記第2の水位になったことを前記水量検知部によって検知すると、前記調整部によって前記水路における洗濯水の流れを開始または増加させる請求項
5に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の繊維製品の洗濯を行う洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯機において、洗濯中に洗濯物から遊離した汚れや糸屑等の異物を洗濯水から分離して洗濯水を浄化し、分離された汚れ等の洗濯物に再付着することを防止することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の概略構成図である。
図11に示されるように、外槽51内の洗濯水に含まれる異物を分離する遠心分離部52と、遠心分離部52において異物を分離した洗濯水を外槽51内へ供給する水路53とが洗濯機に設けられている。遠心分離部52は、水路53と連通接続された円筒状のケース54と、ケース54内に回転可能に設けられた円筒状の回転筒55と、回転筒55を回転駆動する回転筒モータ56とを有している。
【0004】
水路53を流れる洗濯水は回転筒55の中を通過する。すなわち、洗濯水は、回転筒55の下部に設けられた洗濯水入口57から回転筒55内に流入し、回転筒55の上部に設けられた洗濯水出口58から流出する。ここで、回転筒55の洗濯水出口58側に、ポンプを構成するポンプ羽根59が回転筒55と一体的に形成されている。また、ポンプ羽根59は、回転筒モータ56によって回転筒55と一体で回転する。
【0005】
すわなち、回転筒モータ56を駆動させると、回転筒55とポンプ羽根59とが回転する。これによって、外槽51内の洗濯水は、水路53に設けられた遠心分離部52を通して循環する。ここで、外槽51内の洗濯水は、洗濯運転により洗濯物から遊離した汚れや糸屑等の異物が含まれる。遠心分離部52を通すことによって、この汚れや糸屑等の異物は洗濯水から取り除かれ、洗濯水の浄化が進行する。そして、遠心分離部52を通すことによって洗濯水から分離された異物は、回転筒55の高速回転による遠心力の作用によって回転筒55の内面に保持される。
【0006】
また、従来の洗濯機のすすぎ工程において、循環ポンプによって外槽内の水を循環させ、ドラム内の洗濯物に向けて水をシャワー状に注ぐことが考えられている。これにより、洗濯物への含水作用を促進してすすぎ効果を高める(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
ここで、外槽内の水位は、洗濯物への含水が進行する等の理由によって低下する。その結果、循環ポンプ内に空気が入り込む、いわゆるエアがみが生じる虞がある。これを解決するため、特許文献2に記載された洗濯機は、外槽内の水位センサの出力に基づいて、循環ポンプの駆動と停止とを間欠的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-183277号公報
【文献】特開2010-46124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載された洗濯機は、遠心分離部52を通して外槽51内の洗濯水を循環させ、洗濯水から異物を除去して浄化する。しかしながら、洗濯水の循環により外槽
51内の水位が低下した場合は、エアがみを避けるために、外槽51内に溜められる洗濯水を所定の水位に維持させる必要がある。また、洗濯水を加熱するためのヒータが外槽51内の底部に設けられた洗濯機では、水位が低下した場合は、ヒータが水面から露出することによる過熱等を避けるために、外槽51内に溜められる洗濯水を所定の水位に維持させる必要がある。
【0010】
そのため、洗濯水の循環中にポンプの駆動をオン状態から一時的にオフ状態にさせ、外槽51内の洗濯水の水位を維持する。このようにポンプの駆動を間欠的に制御し、洗濯水の循環を間欠的に行うことが考えられる。しかしながら、ポンプの駆動を停止させると、回転筒55の内面に保持されている、洗濯水から分離された異物に遠心力が作用しなくなる。その結果、異物は遊離して洗濯水中へ分散する。そして、ポンプを駆動させて洗濯水の循環を再開させると、その循環流によって異物が洗濯槽内に吐出されて、洗濯槽内の洗濯物に再付着する虞があるという課題が生じる。
【0011】
その対策として、例えば、洗濯水の循環を一時停止する時において、回転筒55の回転速度を下げて、分離された異物が回転筒55の内面に保持される回転速度以上に保持する。そして、洗濯水の循環を再開する時は、循環時と同じ回転速度に回転筒55の回転速度を上げることが考えられる。
【0012】
しかしながら、この場合においても、回転筒55の回転速度を変化させる時に、回転筒55の内面に保持されている異物が離れて洗濯水中へ分散し、洗濯水とともに異物が洗濯槽内へ吐出されるという課題が生じる。すなわち、回転筒55内の洗濯水の旋回流の速度と、回転筒の速度との間に速度差が生じる。この速度差が回転筒55の内面に保持されている異物にせん断力として作用し、異物を剥がしてしまう可能性がある。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、回転筒の回転速度を変化させる時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止する。すなわち、分離された異物が洗濯物に再付着することを防止して、洗浄効果を高めることができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、被洗浄物と洗濯水とを収容する洗濯槽と、洗濯槽内の洗濯水を循環させる水路と、水路に設けられ、水路を流れる洗濯水に含まれる異物を分離する遠心分離部と、水路を通して洗濯槽と遠心分離部との間で洗濯水を循環させるポンプ部と、洗濯運転を制御する制御部とを備え、遠心分離部は、水路に連通接続されたケースと、ケース内に回転可能に設けられた回転筒と、回転筒を回転させる回転筒モータを有し、制御部は、回転筒モータを制御して、回転筒の回転速度と、回転筒内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で、回転筒の回転速度を変化させるものである。
【0015】
これによって、回転筒の回転速度を、洗濯水から異物を分離する回転速度へ緩やかに変化させ、回転筒の加速および減速にともなう回転筒内での洗濯水の旋回流の速度変化との速度差を少なくすることができる。したがって、回転筒の回転速度の変化時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。すなわち、回転筒の内面に保持された状態が維持されることにより、分離された異物が洗濯物に再付着することを防止して、洗浄効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗濯機は、回転筒の回転速度の変化時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。すわなち、分離された異物が洗濯物に再付着することを
防止して、洗浄効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図
【
図2】本発明の実施の形態1における洗濯機の遠心分離部の拡大図
【
図3】本発明の実施の形態1における
図2におけるD-D断面図
【
図4】本発明の実施の形態1における
図2におけるE-E断面図
【
図5】本発明の実施の形態1における洗濯機のブロック構成図
【
図6】本発明の実施の形態1における洗濯機の動作を示すタイムチャート
【
図7】本発明の実施の形態1における
図6のF部における作用の概念図
【
図8】本発明の実施の形態1における洗濯機の他の例の動作を示すタイムチャート
【
図9】本発明の実施の形態1における洗濯機の他の例の概略構成図
【
図10】本発明の実施の形態2における洗濯機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明の洗濯機は、被洗浄物と洗濯水とを収容する洗濯槽と、洗濯槽内の洗濯水を循環させる水路と、水路に設けられ、水路を流れる洗濯水に含まれる異物を分離する遠心分離部と、水路を通して洗濯槽と遠心分離部との間で洗濯水を循環させるポンプ部と、洗濯運転を制御する制御部とを備え、遠心分離部は、水路に連通接続されたケースと、ケース内に回転可能に設けられた回転筒と、回転筒を回転させる回転筒モータを有し、制御部は、回転筒モータを制御して、回転筒の回転速度と、回転筒内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で、回転筒の回転速度を変化させるものである。
【0019】
これにより、回転筒の回転速度を緩やかに変化させ、回転筒の加速および減速にともなう回転筒内での洗濯水の旋回流の速度変化との速度差を少なくすることができる。したがって、回転筒の回転速度の変化時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。すなわち、回転筒の内面に保持された状態が維持される。そのため、分離された異物が洗濯物に再付着することを防止でき、洗浄効果を高めることができる。加えて、洗濯水の循環によって、洗濯物への洗濯水の含水が促進されて、洗浄効果を一層高めることができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明において、所定値は、遠心分離部で分離された異物を、回転筒の内面に保持した状態で維持可能な速度差である。
【0021】
これにより、回転筒の回転速度の変化時に、回転筒の内面に異物が保持された状態を維持することができる。すなわち、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0022】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、洗濯水の流れを制御する調整部を水路に有し、制御部は、調整部により洗濯水の循環を制御するものである。
【0023】
これにより、洗濯槽内の洗濯物への含水と、洗濯槽内の洗濯水の水位を最適化することができる。
【0024】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明において、ポンプ部は、洗濯水が通過する回転筒の流出側に設けられ、回転筒と一体で回転するポンプ羽根を有し、ポンプ羽根は、回転筒モータによって回転筒とともに回転し、水路を通して遠心分離部と洗濯槽との間で洗濯水が循環させるものである。
【0025】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は、回転筒の回転によって遠心分離部を通して循環する。洗濯水を循環させるためのポンプ機能を簡略な構成で遠心分離部に具備することができる。
【0026】
第5の発明は、特に、第1または第2の発明において、ポンプ部は、遠心分離部と別異に水路に設けられ、制御部は、ポンプ部により洗濯水の循環を制御するものである。
【0027】
これにより、洗濯水は遠心分離部を通して循環し、洗濯槽内の洗濯水の水位を最適化することができる。
【0028】
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれか1つの発明において、制御部は回転筒モータを制御し、洗濯水の循環停止時、または、循環水量減少時に、遠心分離部で分離された異物を回転筒の内面に保持可能な回転速度で回転筒を回転させるものである。
【0029】
これにより、洗濯水の循環停止時、または、循環水量減少時において、洗濯水から遠心分離された異物が回転筒の内面に保持された状態に維持することができる。
【0030】
第7の発明は、特に、第1から第6のいずれか1つの発明において、洗濯槽内の洗濯水の水位を検知する水量検知部を有し、制御部は、洗濯水が循環しているときに、洗濯槽内の洗濯水が第1の水位になったことを水量検知部によって検知すると、調整部によって、水路における洗濯水の流れを止水または減少させるものである。
【0031】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は所定の水位を維持することができる。したがって、水位の低下によるエアがみを防止することができる。また、洗濯槽内の底部にヒータが設けられている場合は、水位の低下によってヒータが水面から露出することによる過熱等を防止することができる。
【0032】
第8の発明は、特に第7の発明において、第2の水位は第1の水位より大であり、制御部は、調整部によって水路における洗濯水の流れを止水または減少させている時に、洗濯槽内の洗濯水が第2の水位になったことを水量検知部によって検知すると、調整部によって、水路における洗濯水の流れを開始または増加させるものである。
【0033】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は所定の水位を維持することができる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図である。
図1に示されるように、洗濯機は、洗濯槽として、外槽1と、外槽1内に回転可能に設けられた回転槽4と、を有する。外槽1は有底筒状に構成され、洗濯機の外枠を構成する筐体2の内部で複数のサスペンション機構3によって弾性的に支持されている。回転槽4は有底筒状に構成され、外槽1内に設けられている。外槽1と回転槽4には、使用者が被洗浄物である衣類等の洗濯物5を出し入れする開口部6が前面側(
図1において左側)に設けられている。
【0036】
回転槽4は、回転軸7を中心として回転可能に設けられている。回転槽4の周壁面4aには、内方へ突出した複数(例えば、3個)のバッフル8が設けられている。さらに、周壁面4aには多数の小孔9が設けられ、外槽1内において回転槽4の内外は小孔9を通して連通している。外槽1と回転槽4と回転軸7は、水平に対して角度θ(例えば、20°)だけ前上がりに傾けて設けられている。
【0037】
回転槽4は、外槽1の後部に設けられたモータ10によって正逆回転自在に構成されている。モータ10は、例えば、ブラシレス直流モータで構成され、後述する制御部21のインバータ制御によって、回転速度を自在に変化させることができるように構成されている。
【0038】
外槽1の開口部1aおよび筐体2の開口部2aは、回転槽4の開口部6と対向して形成されている。筐体2の前面には、開口部2aを開閉する扉11が設けられている。開口部1aおよび開口部2aは、伸縮自在な蛇腹状のパッキン12によって気密構成を確保して連結されている。
【0039】
洗濯水を供給する給水口13が、筐体2の後面上部に設けられている。給水口13は水道の蛇口13aと接続されている。したがって、洗濯水は、給水口13から給水される水道水である。給水弁14と洗剤ケース15とが、給水口13の下流側に設けられている。ここで、制御部21は、給水弁14を開閉駆動して給水と停止を行う。また、洗剤ケース15は、矢印Aで示されるように、洗剤投入部15aを洗剤ケース15から手前側へ引き出し可能に構成されている。これにより、使用者は、洗剤ケース15内への洗剤の投入が容易に行える。
【0040】
給水口13から供給された洗濯水は、矢印Bで示されるように、洗剤ケース15に流入する。さらに、洗濯水は、洗剤ケース15内に投入された洗剤を溶かしながら外槽1へ流入する。外槽1の底部には洗濯水を排出する排水口16が設けられている。ここで、排水口16には排水路17が連結されている。また、排水路17には排水弁18が設けられている。したがって、制御部21は、排水弁18を開閉駆動することで、洗濯水を外槽1内に溜めたり排水したりする。
【0041】
水路19は、一端が排水路17に接続され、他端は、回転槽4の前面側に設けられた開口部6の上部に対向して吐出口31が設けられている。さらに、吐出口31から回転槽4内へ洗濯水が吐出されて循環経路を形成している。そして、洗濯水が、外槽1内の水位より高い位置から、回転槽4内の洗濯物5の広い範囲に降りかけられるように、シャワー状に吐出される。
【0042】
また、水路19は、外槽1の下方に設けられた遠心分離部20と連通接続されている。水路19は、外槽1内の洗濯水が遠心分離部20へ流入する水路19aと、遠心分離部20を通過した洗濯水が回転槽4内へ流入する水路19bとを有し、吐出口31は、水路19bの出口に設けられている。
【0043】
そして、排水口16から排水路17を経由して水路19を流れる洗濯水は、遠心分離部20を通過する際に、以下に説明するように、洗濯水に含まれる異物が分離される。ここで、異物には、洗濯物から遊離した汚れや糸屑、および、洗濯水に溶解した洗剤に含まれる水軟化剤等が含まれる。
【0044】
また、水路19には、洗濯水の流れを制御する調整部である開閉弁32が設けられている。したがって、制御部21は、開閉弁32を開閉制御することで、洗濯水が水路19を流れたり止めたりすることを切り替える。開閉弁32は、例えば、電磁弁等で構成される。
【0045】
図2は、本実施の形態1における洗濯機の遠心分離部の拡大図である。
図3は、
図2におけるD-D断面図である。
図4は、
図2におけるE-E断面図である。
【0046】
遠心分離部20は、水路19a、19bと連通接続されたケース20aと、ケース20a内に回転可能に設けられた中空の回転筒20bと、回転筒20bを回転させる駆動部である回転筒モータ20cとを有している。
【0047】
さらに、回転筒20bは、円筒状の内周面20dと、水路19aから回転筒20b内に洗濯水を流入させる洗濯水入口20eと、回転筒20bから水路19bへ洗濯水を流出させる洗濯水出口20fを有している。ここで、回転筒20bの回転軸20gは鉛直方向に設定されている。したがって、外槽1内の洗濯水は、水路19aを通って、回転筒20b底面の中央部に設けられた洗濯水入口20eから回転筒20b内に流入する。その後、洗濯水入口20eが洗濯水出口20fの下方にあるため、遠心分離部20を通過する洗濯水は、回転筒20b内を下方から上方に向かって流れる。
【0048】
このとき、制御部21は、回転筒モータ20cを駆動させて、回転筒20bを例えば約3500rpmで回転させる。これにより、回転筒20b内に流入した洗濯水は回転筒20b内で旋回し、高速の旋回流が発生する。そして、回転筒20b内に流入した洗濯水は、回転筒20bの上部に設けられた洗濯水出口20fから流出する。このように、遠心分離部20は、通過する洗濯水が、回転筒20b内において回転軸20g方向を下方から上方に向かって流れるように構成されている。そして、洗濯水は、回転筒20bを通過する間に、回転筒20bの回転により遠心力を受ける。これにより、洗濯水に含まれた異物は遠心分離され、回転筒20bの内周面20dに向かって集積される。
【0049】
ここで、回転筒20bの回転軸20gを中心とした内周面20dの直径は、洗濯水入口20eおよび洗濯水出口20fの最大径より大きく構成されている。これにより、洗濯水が受ける遠心力は、回転軸20gである回転筒20bの中心から内周面20dに距離が近づくほど遠心力は強まる。したがって、回転筒20bを通過する洗濯水から遠心力によって分離された異物は、内周面20dに接近するほど、より強い遠心力で内周面20dに保持される。これにより、遠心力によって分離された異物は、回転筒20bを通過する洗濯水の循環流に引き込まれ、遠心力で内周面20dに保持される。すなわち、汚れが洗濯物5に再付着することを防ぐことができ、洗浄力を向上させることができる。
【0050】
遠心分離部20には、ケース20aを通過する洗濯水の流入側に旋回流生成部20hが設けられている。旋回流生成部20hは、ケース20aと一体的に形成されており、旋回流生成部20hの側方に偏って水路19aが連通接続されている。また、遠心分離部20には、ケース20aを通過する洗濯水の流出側にポンプ室20iが設けられている。ポンプ室20iには、回転筒20bと一体的に形成されたポンプ羽根20k(ポンプ部)が配設されており、ポンプ室20iの側方に偏って水路19bが連通接続されている。
【0051】
ポンプ羽根20kは、回転筒モータ20cの駆動により回転筒20bとともに回転し、ポンプ作用を発生する。外槽1内の洗濯水は、このポンプ作用によって、外槽1外の下方に形成された水路19から遠心分離部20を通過し、矢印Cのように循環する。このとき、水路19を流れる洗濯水の流速は、ポンプの能力によって設定可能である。ポンプの能力は、ポンプ羽根20kの回転速度に加え、ポンプ羽根20kの枚数(本実施の形態1では4枚)や、形状等を考慮して設定することができる。
【0052】
以上の構成により、洗濯水が水路19を流れて遠心分離部20と外槽1との間を循環する。なお、洗濯水が遠心分離部20を通過するときの循環流の流速をV1、洗濯水が回転筒20b内で旋回するときの旋回流の流速をV2としたとき、旋回流の流速V2が循環流の流速V1より高速となるように、V2>V1に設定されている。
【0053】
制御部21は、筐体2内の下部に設けられている。
図5は、本実施の形態1における洗
濯機のブロック構成図である。洗濯機は、回転槽4に投入された洗濯物5の量を検知する布量検知部22と、外槽1内に給水された洗濯水の量を検知する水量検知部23と、回転槽4の回転駆動を検知する回転検知部24を備える。制御部21には、布量検知部22からの出力と、水量検知部23からの出力と、回転検知部24からの出力等が入力される。
【0054】
また、制御部21は、操作表示部25により使用者が設定した洗濯コースに基づいて、モータ10、給水弁14、排水弁18、回転筒モータ20c、開閉弁32等の駆動を制御し、洗濯運転を実行する。ここで、洗濯運転には、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程等が含まれる。
【0055】
以上のように構成された洗濯機について、以下にその動作および作用を説明する。まず、使用者が、筐体2の前面に設けられた扉11を開き、開口部6から回転槽4内に洗濯物5を投入する。次に、使用者が、筐体2の前面上部に設けられている操作表示部25の電源スイッチ(図示せず)を入れ、スタートスイッチ(図示せず)を操作して洗濯運転が開始される。
【0056】
洗濯運転の開始により、まず、制御部21は、回転槽4内に投入された洗濯物5の量を布量検知部22によって検知する。布量検知部22は、回転槽4を回転させたときにモータ10にかかるトルク量から、洗濯物5の量を検知する。また、布量検知部22は、回転槽4を回転させたときのモータ10の電流値等から、洗濯物5の量を検知してもよい。制御部21は、布量検知部22で検知された洗濯物5の量に応じて、前述の洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の各工程の時間および洗濯水の量を設定する。併せて、洗濯物5の量に応じて予め設定された洗剤量を操作表示部25に表示する。
【0057】
最初に、洗濯運転の洗い工程を説明する。使用者は、洗剤ケース15から洗剤投入部15aを引き出し、操作表示部25に表示された洗剤量の目安にしたがって洗剤を投入する。その後、使用者は、洗剤投入部15aを洗剤ケース15内へ移動させる。
【0058】
制御部21は、洗剤の投入が完了した後、給水弁14を開く。給水弁14が開かれると、矢印Bに示されるように、洗濯水は、給水口13から洗剤ケース15に流入する。その後、洗濯水は、洗剤ケース15内の洗剤を溶かしながら外槽1へ給水される。外槽1内の底部に溜まった洗濯水は、小孔9から回転槽4内に流入する。
【0059】
ここで、水量検知部23は、外槽1内に溜まった洗濯水を検知する。制御部21は、外槽1内に溜まった洗濯水が所定量になったことを水量検知部23によって検知すると、給水弁14を閉じて給水を完了する。ここで、所定量は、洗濯物5の量に応じて予め設定された洗濯水の量である。
【0060】
制御部21は、給水が完了すると、モータ10を駆動して回転槽4を回転させる。回転槽4が回転することで、洗濯物5は、回転槽4内のバッフル8によって回転方向へ持ち上げられ、上方から落下する。そして、落下した洗濯物5は、回転槽4の底面あるいは回転槽4の底に溜まっている洗濯物5に叩きつけられる。このようにして、洗剤による化学力と併せて、叩きつけによる機械力によって洗い工程が行われる。回転槽4は所定時間毎に反転して正逆回転駆動され、洗濯物5が叩き洗いされる。回転槽の4の回転速度は、例えば45rpmである。
【0061】
次に、洗濯運転のすすぎ工程を説明する。制御部21は、上記洗い工程を所定時間行った後、排水弁18を開いて外槽1内の洗濯水を機外へ排水する。制御部21は、排水を完了した後、上記洗い工程と同様に外槽1内に所定量の洗濯水を給水し、回転槽4を回転させる。これにより、洗濯物5のすすぎ動作を行う。このとき、洗剤ケース15内の洗剤は
上記洗い工程においてすべて使用済みである。したがって、すすぎ動作において、洗濯水に洗剤は含まれない。
【0062】
最後に洗濯運転の脱水工程を説明する。制御部21は、上記すすぎ工程の後、排水弁18を開いて外槽1内の洗濯水を機外へ排出させる。そして、制御部21は、モータ10の駆動により回転槽4を高速で回転させ、回転槽4内の洗濯物5を脱水させる。制御部21は、脱水工程が完了すると、洗濯運転を終了する。
【0063】
次に、遠心分離部20において洗濯水が浄化される作用について説明する。上記洗い工程において、外槽1内の洗濯水は、洗濯物の汚れ物質などのさまざまな異物を含む。例えば、汚れ物質は、砂、繊維屑、髪の毛、角質汚れなどのように水より比重が重いものがある。また、皮脂に代表される脂分などのように水より軽くても、糸屑などのように水より比重が重いものに付着するものなどがある。
【0064】
洗い工程において、制御部21は、回転筒モータ20cを駆動させ、外槽1内の洗濯水を遠心分離部20へ循環させる。すなわち、回転筒モータ20cの駆動により、回転筒20bおよびポンプ羽根20kが回転する。回転するポンプ羽根20kのポンプ作用により、外槽1内の洗濯水は水路19aを通って旋回流生成部20hに流入する。ここで、水路19aは、旋回流生成部20hの側方に偏って連通接続される。
【0065】
洗濯水は、水路19aから流入した後、旋回流生成部20hによって旋回成分が付与され、洗濯水入口20eから回転筒20b内に流入する。このとき、回転筒20bは回転筒モータ20cによって回転しているため、回転筒20b内に導入された洗濯水は、回転筒20b内で高速の旋回流が発生する。
【0066】
洗濯水は、洗濯水入口20eから流入した後、回転筒20b内を通過し、洗濯水出口20fから流出する。このとき、洗濯水に含まれる、洗濯水よりも比重が重い異物には、回転筒20b内の高速の旋回流による強い遠心力が作用する、その結果、異物は回転筒20bの内周面20dに向かう。このようにして、洗濯水に含まれた洗濯物特有の汚れ物質は洗濯水から分離され、洗濯水から除去することができる。
【0067】
このとき、遠心力により洗濯水から分離され、回転筒20bの内周面20dに向かう汚れ物質は、回転筒20bを通過する循環流に引き込まれず、循環流に戻ることはない。すなわち、回転筒20b内を通過する洗濯水には、回転筒20bの回転軸20gの近傍を通過する循環流より外側で、かつ、回転筒20bの内周面20dより内側である領域が存在する。しかしながら、循環流部分から回転筒20bの内周面20dに向かって強い遠心力が作用している。また、回転筒20bの洗濯水入口20eおよび洗濯水出口20fは循環流で占められている。
【0068】
洗濯水は、上述のように回転筒20b内で汚れ物質が分離され、洗濯水出口20fからポンプ室20iへ流出する。その後、洗濯水は、ポンプ羽根20kによるポンプ作用により、ポンプ室20iから水路19bを通り、吐出口31から回転槽4内に吐出される。
【0069】
以上のようにして、外槽1内の洗濯水は、遠心分離部20に備えられたポンプ機能により、水路19を通して遠心分離部20との間で循環する。これによって、洗濯水の浄化が進行し、分離した汚れ物質が洗濯物5に再付着することを防止できる。洗濯機の洗浄力が向上する。
【0070】
なお、遠心分離部20の回転筒20bにおいて、洗濯水が旋回しながら下から上に向かって通過する。このとき、洗剤によって生じた、洗濯水に含まれる気泡、および、水路1
9中の気泡が回転筒20bに入ってくることがある。このような場合、水より軽い気泡は、旋回流によって回転筒20bの中心部に集められる。そして、気泡は、上方へ浮上しようとする作用と、下から上に向かう洗濯水の流れによる作用とが相まって、洗濯水出口20fから回転筒20b外へ容易に排出される。
【0071】
これにより、水より軽い気泡が回転筒20b内に留まることによって生じる、回転筒20b内の水と気泡分布のアンバランスを防ぐ。したがって、回転筒20bを回転させるために必要なトルクの変動を最小限に抑えることができる。また、トルク変動によって生じる回転筒20bの回転速度の変動も防ぐことができる。また、アンバランスによる回転筒20bの回転振動を防ぐことができるため、回転筒20bをより大きく構成することができる。さらに、水より軽い気泡が回転筒20b内に留まることによって生じる、回転筒20b内の流れの乱れがなくなる。これにより、洗濯水から一旦分離され、回転筒20bの内周面20dに保持された異物が洗濯水中へ分散することを防ぐことができる。
【0072】
なお、内周面20dに集められた異物は、洗濯水の排水時に機外に排出される。すわなち、制御部21は、排水弁18を開いて外槽1内の洗濯水を機外へ排出させる。このとき、洗濯水は循環時とは逆方向に流れる。つまり、洗濯水は遠心分離部20を水路19bから水路19aへと流れる。内周面20dに集められた異物は、この洗濯水の流れに乗り、排水弁18を通して機外へ排出される。これにより、遠心分離の動作中において、浄化される洗濯水の一部を捨てるような構成とする必要がない。
【0073】
次に、制御部21による、洗い工程における洗濯水の循環制御と、遠心分離部20における回転筒モータ20cの駆動制御について説明する。
図6は、本実施の形態1における洗濯機の動作を示すタイムチャートである。制御部21は、
図6に示されるように、洗い工程の開始(時間T0)において給水弁14を開く。これにより、洗濯水が外槽1内に給水され、外槽1内の水位が増加する。
【0074】
制御部21は、水量検知部23によって水位を検知する。制御部21は、外槽1内の水位が所定量L3となったことを水量検知部23によって検知すると、給水弁14を閉じる(時間T1)。ここで、所定量L3は洗濯物5の量に応じて設定された水位である。制御部21は、給水弁14を閉じるのとほぼ同じタイミングで、開閉弁32を開成して水路19を開き、回転筒モータ20cを駆動させる。
【0075】
制御部21は、回転筒モータ20cを駆動させて、回転筒20bを回転速度Hiで回転させる。ここで、回転速度Hiは、遠心分離部20において洗濯水から汚れ物質が遠心分離される定格回転速度であり、例えば3500rpmである。制御部21は、上述のように、回転筒モータ20cを駆動させることにより、回転筒20bと一体的に設けられたポンプ羽根20kを回転させ、ポンプ作用を発生させる。これにより、洗濯水は、水路19を通して、外槽1内と遠心分離部20との間を循環する。そして、遠心分離部20は、循環する洗濯水から異物を分離する。
【0076】
洗濯水の循環によって、洗濯水は吐出口31から回転槽4内に吐出される。吐出された洗濯水の一部は、洗濯物5に含水され外槽1内の水位が低下する。制御部21は、外槽1内の水位が第1の水位L1となったことを水量検知部23によって検知すると、開閉弁32を閉成して水路19を閉じる(時間T2)。これによって、洗濯水の循環が停止する。ここで、第1の水位L1は、ポンプ室20i内でポンプ羽根20kによるエアがみ等が生じることのない水位である。また、第1の水位L1は、外槽1内の底部にヒータ(図示しない)が設けられている場合には、ヒータが水面から露出することのない水位である。
【0077】
制御部21が、水路19を閉じることにより、吐出口31からの洗濯水の吐出、および
、排水口16からの水路19への流出は止まる。これにより、洗濯水の循環は停止し、第1の水位以下に水位が低下しない。したがって、外槽1内の水位低下による、エアがみを防止することができる。また、外槽1内の底部にヒータが設けられている場合において、外槽1内の水位低下による、ヒータが水面から露出することによる過熱等を防止することができる。
【0078】
続いて、制御部21は、開閉弁32を閉成させるのとほぼ同じタイミングで、回転筒モータ20cを制御し、回転筒20bを回転速度Hiから回転速度Lоに減速させる。このとき、制御部21は、回転筒モータ20cの制御を、タップ切換のような急激な回転速度の変化ではなく、インバータなどによるスムーズな、もしくは細かい段階的な回転速度の変化により行う。ここで、回転速度Lоは、遠心分離部20で分離された異物が回転筒20bの内周面20dに保持される回転速度であり、例えば、800rpmである。これにより、回転筒20bの内周面20dに異物が保持された状態が維持され、分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0079】
具体的には、制御部21が、回転筒モータ20cを制御し、回転筒20bの回転速度をゆっくり減速させる。
図7は、
図6のF部における作用の概念図である。
【0080】
一般的に、回転筒モータ20cの通電をOFFすると、回転筒20bは一点鎖線S1のように急激に減速する。一方、回転筒20bの回転にともなって流動する洗濯水の旋回流の速度は、破線W1のように、惰性によって回転筒20bよりゆっくり低下する。そのため、回転筒20bの急激な速度低下と、洗濯水の旋回流の速度低下との間に速度差が生じる。この速度差がせん断力として作用し、回転筒20bの内周面20dに保持されている異物を剥がしてしまう可能性がある。
【0081】
そのため、制御部21は、回転筒モータ20cの駆動を制御して、回転速度の変化を実線Y1のようにゆっくり減速させる。これにより、回転筒20bの減速を矢印方向へ、洗濯水の低下速度に追随して近づけることができる。
【0082】
つまり、洗濯水の旋回流速度と、回転筒20bの回転速度との間の速度差の拡がりを抑える。すわなち、回転筒20bの減速を洗濯水の旋回流の速度低下に実質的に合わせることが好ましい。これにより、異物に作用するせん断力を弱めることができる。
【0083】
具体的には、制御部21は、回転筒20bの回転速度と、回転筒20b内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で、回転筒20bの回転速度を変化させる。ここで、所定値は、遠心分離部20で分離された異物を、回転筒20bの内周面20dに保持した状態で維持可能な速度差である。したがって、回転筒20bの内周面20dに異物が保持された状態が維持され、分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0084】
次に、制御部21は、外槽1内の水位が第1の水位L1まで低下した後、開閉弁32を閉成して水路19を閉じる。これにより、洗濯物5に含まれている洗濯水が外槽1内へ流出して外槽1内の水位が再び上昇する。制御部21は、外槽1内の水位が第2の水位L2となったことを水量検知部23によって検知すると、開閉弁32により水路19を開成する(時間T3)。ここで、第2の水位L2は第1の水位L1より所定量高い水位である。
【0085】
続いて、制御部21は、開閉弁32の開成させるのとほぼ同じタイミングで、回転筒モータ20cを制御して、回転筒20bを回転速度Loから回転速度Hiに加速させる。このとき、制御部21は、回転筒モータ20cの制御を、タップ切換のような急激な回転速度の変化ではなく、インバータなどによるスムーズな、もしくは細かい段階的な回転速度の変化により行う。これにより、上述のように、遠心分離部20に備えられたポンプ機能
により、外槽1内の洗濯水は水路19を流れ、遠心分離部20との間で循環が再開する。なお、第2の水位L2は、洗濯水の循環によって第2の水位L2から第1の水位L1に低下するまでの間に、洗濯物5が含水可能な一定量の水位に設定されているが、これに限らない。
【0086】
具体的には、制御部21が、回転筒モータ20cを制御し、回転筒20bの回転速度をゆっくり加速させる。
【0087】
一般的に、回転筒モータ20cの通電をONすると、回転筒20bは一点鎖線S2のように急激に加速する。一方、回転筒20bの回転にともなって流動する洗濯水の旋回流の速度は、破線W2のように回転筒20bより遅れてゆっくり上昇する。そのため、回転筒20bの急激な速度上昇と、洗濯水の旋回流の速度上昇との間に速度差が生じる。この速度差がせん断力として作用し、回転筒20bの内周面20dに保持されている異物を剥がしてしまう可能性がある。
【0088】
そのため、制御部21は、回転筒モータ20cを制御して、回転速度の変化を実線Y2のようにゆっくり加速させる。これにより、回転筒20bの加速を矢印方向へ、洗濯水の上昇速度に追随して近づけることができる。
【0089】
つまり、洗濯水の旋回流速度と、回転筒20bの回転速度との間の速度差の拡がりを抑える。すなわち、回転筒20bの加速を洗濯水の旋回流の速度上昇に実質的に合わせることが好ましい。これにより、異物に作用するせん断力を弱めることができる。
【0090】
具体的には、制御部21は、回転筒20bの回転速度と、回転筒20b内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で、回転筒20bの回転速度を変化させる。ここで、所定値は、遠心分離部20で分離された異物を、回転筒20bの内周面20dに保持した状態で維持可能な速度差である。したがって、回転筒20bの内周面20dに異物が保持された状態が維持され、分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0091】
以上のように、制御部21は、洗い工程において、外槽1内の水位変化に応じて、上述のような動作を繰り返す。すわなち、制御部21は、外槽1内の水位が第1の水位L1となったら、開閉弁32を閉成して水路19を閉じる。これにより、洗濯水の循環が停止する(時間T2、T4、T6)。そして、制御部21は、開閉弁32を閉成させるのとほぼ同じタイミングで、回転筒モータ20cを制御し、回転筒20bを回転速度Hiから回転速度Lоに減速させる。このとき、制御部21は、回転筒20bの回転速度と、回転筒20b内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下とする。
【0092】
また、制御部21は、外槽1内の水位が第2の水位L2となったら、開閉弁32を開成して水路19を開く。これにより、洗濯水の循環が再開する(時間T3、T5、T7)。そして、制御部21は、開閉弁32を開成させるのとほぼ同じタイミングで、回転筒モータ20cを制御し、回転筒20bを回転速度Lоから回転速度Hiに加速させる。このとき、制御部21は、回転筒20bの回転速度と、回転筒20b内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下とする。
【0093】
ここで、所定値は、遠心分離部で分離された異物を、回転筒20bの内周面20dに保持した状態で維持可能な速度差である。これにより、洗濯水の異物の分離を行いながら、吐出部31から洗濯物5に洗濯水を降りかけて含水を促進することができ、洗浄効果を高めることができる。加えて、洗濯槽内の洗濯物への含水と、洗濯槽内の洗濯水の水位を最適化することができる。
【0094】
また、
図8は、本実施の形態1における他の例の動作を示すタイムチャートである。制御部21は、洗濯水の循環再開時において、回転筒20bを回転速度Lоから回転速度Hiへ加速させる。制御部21は、その後、開閉弁32を開成させる。
【0095】
具体的には、制御部21は、開閉弁32を閉じる。これにより、洗濯物5に含まれている洗濯水が外槽1内へ流出して外槽1内の水位が再び上昇する。制御部21は、外槽1内の水位が第2の水位L2となったことを水量検知部23によって検知すると、回転筒モータ20cを制御して、回転筒20bを回転速度Loから加速させる(時間T3a)。
【0096】
続いて、制御部21は、回転筒20bが回転速度Hiに上昇するのとほぼ同じタイミングで開閉弁32を開成する(時間T3b)。これにより、洗濯水の循環再開時は、回転筒20bが回転速度Hiで回転しているため、効率よく異物の分離が行われる。
【0097】
また、
図9は、本実施の形態1における洗濯機の他の例の概略構成図である。
図9に示されるように、調整部である調整弁33が、開閉弁32に代えて、遠心分離部20の上流側の水路19に設けられている。制御部21は、調整弁33を制御して、水路19を流れる洗濯水の止水および水量の調整を行う。
【0098】
制御部21は、調整弁33によって、水路19を流れて循環する洗濯水の水量を、例えば、洗濯物5の量に応じて設定可能である。布量検知部22は、洗濯物5の量を検知する。したがって、制御部21は、水路19を流れる洗濯水の水量が、布量検知部22で検知した布量に応じて設定された水量となるように、調整弁33を制御することができる。
【0099】
また、制御部21は、外槽1内の洗濯水が第1の水位L1となったことを水量検知部23によって検知すると、調整弁33を制御して洗濯水の流れを止水する。あるいはまた、少量の洗濯水が流れるように循環水量を減少させてもよい。この場合、循環水量は、外槽1内の洗濯水が第1の水位L1を下回らない水量であればよい。
【0100】
また、制御部21は、外槽1内の洗濯水が第2の水位L2となったことを水量検知部23によって検知すると、調整弁33を制御して洗濯水の流れを開始する。あるいはまた、循環水量を増加させてもよい。
【0101】
なお、上述のような、回転筒20bの回転速度の加速時における回転筒モータ20cの制御は、洗い工程における洗濯水の循環再開時、または、循環水量の上昇時のほか、洗い工程の開始時においても実行可能である(時間T1)。すわなち、回転筒20bの回転速度を上昇させる時にも有効である。これにより、洗濯運転の開始当初においても、回転筒20bの内周面20dに堆積した異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0102】
また、制御部21は、上述のような、洗濯水に含まれる異物の分離動作、および、洗濯物への洗濯水の散水動作を、洗い工程のほか、すすぎ工程でも実行することができる。特に、すすぎ工程においては、洗剤に含まれる洗浄助剤のうち比重が水より重いゼオライトを遠心分離部20で分離することも可能であり、すすぎ性能が向上する。そして、制御部21は、回転筒の回転速度の変化時に回転筒モータ20cを制御して、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。すわなち、分離された異物が洗濯物に再付着することを防止して、すすぎ性能を高めることができる。
【0103】
以上のように、本実施の形態1の洗濯機は、被洗浄物と洗濯水とを収容する洗濯槽と、洗濯槽内の洗濯水を循環させる水路19と、水路19に設けられ、水路19を流れる洗濯水に含まれる異物を分離する遠心分離部20と、水路19を通して洗濯槽と遠心分離部20との間で洗濯水を循環させるポンプ羽根20kと、洗濯運転を制御する制御部21とを
備え、遠心分離部20は、水路19に連通接続されたケース20aと、ケース20a内に回転可能に設けられた回転筒20bと、回転筒20bを回転させる回転筒モータ20cを有し、制御部21は、回転筒モータ20cを制御して、回転筒20bの回転速度と、回転筒20b内における洗濯水の旋回流の速度との速度差を所定値以下で、回転筒20bの回転速度を変化させるものである。
【0104】
これにより、回転筒20bの回転速度を緩やかに変化させ、回転筒20bの加速および減速にともなう回転筒20b内での洗濯水の旋回流の速度変化との速度差を少なくすることができる。したがって、回転筒20bの回転速度の変化時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。すなわち、回転筒20bの内周面20dに保持された状態が維持される。そのため、分離された異物が洗濯物5に再付着することを防止でき、洗浄効果を高めることができる。加えて、洗濯水の循環によって洗濯物への洗濯水の含水が促進されて、洗浄効果を一層高めることができる。
【0105】
また、速度差の所定値は、遠心分離部20で分離された異物を、回転筒20bの内周面20dに保持した状態で維持可能な値である。
【0106】
これにより、回転筒20bの回転速度の変化時に、回転筒の内周面20dに異物が保持された状態を維持することができる。すわなち、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。
【0107】
また、水路19に洗濯水の流れを制御する調整部(開閉弁32または調整弁33)を有し、制御部21は、調整部により洗濯水の循環を制御するものである。
【0108】
これにより、洗濯槽内の洗濯物5への含水と、洗濯槽内の洗濯水の水位を最適化することができる。
【0109】
また、ポンプ部は、洗濯水が通過する回転筒20bの流出側に設けられ、回転筒20bと一体で回転するポンプ羽根20kを有し、ポンプ羽根20kは、回転筒モータ20cによって回転筒20bとともに回転し、水路19を通して遠心分離部20と洗濯槽との間で洗濯水が循環するように構成されたものである。
【0110】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は、回転筒20bの回転によって遠心分離部20を通して循環する。遠心分離部20に洗濯水を循環させるためのポンプ機能を簡略な構成で具備することができる。
【0111】
また、制御部21は、回転筒モータ20cを制御し、洗濯水の循環停止時、または、循環水量減少時に、遠心分離部20で分離された異物を回転筒20bの内周面20dに保持可能な回転速度Lo(第二の回転速度)で回転筒20bを回転させるものである。
【0112】
これにより、洗濯水の循環停止時、または、循環水量減少時において、洗濯水から遠心分離された異物が回転筒20bの内周面20dに保持された状態に維持することができる。
【0113】
また、洗濯槽内の洗濯水の水位を検知する水量検知部23を有し、制御部21は、洗濯水の循環時に、洗濯槽内の洗濯水が第1の水位L1になったことを水量検知部23によって検知すると、調整部(開閉弁32または調整弁33)によって、水路19における洗濯水の流れを止水または減少させるものである。
【0114】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は所定の水位を維持することができる。したがって、水
位の低下によるエアがみを防止することができる。また、洗濯槽内の底部にヒータが設けられている場合は、ヒータが水面から露出することによる過熱等を防止することができる。
【0115】
また、制御部21は、洗濯槽内の洗濯水を循環停止しているときに、洗濯槽内の洗濯水が第2の水位L2になったことを水量検知部23によって検知すると、調整部(開閉弁32または調整弁33)によって、水路19における洗濯水の流れを開始または増加させるものである。
【0116】
これにより、洗濯槽内の洗濯水は所定の水位を維持することができる。
【0117】
なお、本実施の形態1では、ポンプ室20iがケース20aの流出側に設けられる構成としたが、これに限られるものではない。例えば、ポンプ室20iがケース20aの流入側に設けられ、洗濯水がポンプ室20iから回転筒20bに旋回して流入するように構成されてもよい。
【0118】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2における洗濯機の概略構成図である。本実施の形態2は、遠心分離部20と別異に、水路19にポンプ部34を設ける。制御部21は、洗濯水の循環をポンプ部34によって制御する。そのため、実施の形態1と異なり、開閉弁32は不要である。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0119】
ポンプ部34は、遠心分離部20の上流側の水路19に設けられている。外槽1内の洗濯水は、ポンプ部34の駆動によって水路19を流れ、遠心分離部20を通過して循環する。
【0120】
制御部21は、ポンプ部34の駆動と停止を制御する。ポンプ部34の駆動によって洗濯水が循環する。これにより、洗濯水が吐出口31から回転槽4内に吐出する。吐出された洗濯水の一部は、洗濯物5に含まれ、その結果、外槽1内の水位が低下する。制御部21は、水量検知部23によって、外槽1内の水位を検知する。制御部21は、外槽1内の水位が第1の水位L1となったことを水量検知部23によって検知すると、ポンプ部34の駆動を停止させる。
【0121】
これにより、洗濯水の循環が停止し、洗濯物5に含まれている洗濯水が外槽1内へ流出して外槽1内の水位が再び上昇する。制御部21は、外槽1内の水位が第2の水位L2となったことを水量検知部23によって検知すると、ポンプ部34を駆動する。これにより洗濯水の循環が再開する。このようにして、制御部21は、外槽1内の水位が第1の水位L1以上で維持されるようにポンプ部34の駆動を制御する。
【0122】
なお、制御部21は、外槽1内の洗濯水が第1の水位L1になったことを検知すると、ポンプ部34を駆動して、少量の洗濯水が流れるようにしてもよい。この場合、外槽1内の洗濯水が第1の水位L1を下回らない水量であればよい。また、制御部21は、外槽1内の洗濯水が第2の水位L2となったことを検知すると、ポンプ部34を駆動して、循環水量を増加させてもよい。
【0123】
以上のように、本実施の形態2の洗濯機は、ポンプ部34は、遠心分離部20と別異に水路19に設けられ、制御部21は、ポンプ部34により洗濯水の循環を制御するものである。
【0124】
これにより、洗濯水は、遠心分離部20を通して循環し、洗濯槽内の洗濯水の水位を最適化することができる。
【0125】
なお、本実施の形態1および実施の形態2においては、洗濯機の一例として、ドラム式洗濯機について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、洗濯水を用いて洗濯物を洗浄する洗濯機であればよい。すなわち、ドラム式洗濯機のように叩き洗いをする構成、縦型洗濯機のように撹拌洗浄をする構成、または、収納ケース内で押し洗い、もしくは、シャワー洗浄をする構成等の、いずれの構成の洗濯機にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、回転筒の回転速度の変化時に、洗濯水から分離された異物が洗濯水中へ分散することを防止できる。そのため、分離された異物が洗濯物に再付着することを防止でき、洗浄効果を高めることができ、洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0127】
1、51 外槽(洗濯槽)
4 回転槽(洗濯槽)
19、19a、19b、53 水路
20、52 遠心分離部
20a、54 ケース
20b、55 回転筒
20c、56 回転筒モータ
20d 内周面(内面)
20k、34、59 ポンプ部(ポンプ羽根)
21 制御部
23 水量検知部
32 開閉弁(調整部)
33 調整弁(調整部)