(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】レーザアニール装置及びレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20240405BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 J
H01L21/268 G
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2023545118
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026186
(87)【国際公開番号】W WO2023032450
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021143326
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】菱田 光起
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優顕
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-103794(JP,A)
【文献】特開2005-079497(JP,A)
【文献】特開2007-158372(JP,A)
【文献】特開2001-308009(JP,A)
【文献】特開2009-188378(JP,A)
【文献】特開2008-288608(JP,A)
【文献】特開平04-144122(JP,A)
【文献】特開2004-064066(JP,A)
【文献】特開2007-027612(JP,A)
【文献】特開2005-072183(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129719(WO,A1)
【文献】特開2004-349643(JP,A)
【文献】特開2010-034366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するレーザアニール装置であって、
互いに異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源と、
各前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を回折する回折格子と、
前記各レーザ光源による前記レーザ光の出射のオン/オフを切り換える制御部と、を備え、
前記各レーザ光源は、出射された前記レーザ光が前記回折格子によって同一の光軸上に回折されるように、互いに異なる箇所に配置されており、
前記制御部は、前記アモルファスシリコン膜の任意の結晶粒サイズに応じて、前記複数のレーザ光源の中から、前記レーザ光の出射をオンにする前記レーザ光源を、少なくとも1つ以上選択可能であ
り、
前記複数のレーザ光源の中には、420nm以上460nm以下の波長の前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が含まれており、
前記制御部は、420nm以上460nm以下の波長範囲の中から、前記アモルファスシリコン膜に照射する前記レーザ光の波長を、選択可能である、
レーザアニール装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のレーザアニール装置であって、
前記アモルファスシリコン膜と前記回折格子との間には、前記レーザ光を前記アモルファスシリコン膜に向けて照射するとともに、傾きが変化可能なミラーが介在している、前記レーザアニール装置。
【請求項3】
請求項1
又は2のいずれか1つに記載のレーザアニール装置であって、
前記アモルファスシリコン膜が堆積された基板を移動させる移動機構を備える、レーザアニール装置。
【請求項4】
アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するレーザアニール方法であって、
互いに異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を、該レーザ光が回折格子によって同一の光軸上に回折されるように、互いに異なる箇所に配置し、
前記アモルファスシリコン膜の任意の結晶粒サイズに応じて、前記複数のレーザ光源の中から、前記レーザ光の出射をオンにする前記レーザ光源を、少なくとも1つ以上選択
し、
前記複数のレーザ光源の中には、420nm以上460nm以下の波長の前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が含まれており、
420nm以上460nm以下の波長範囲の中から、前記アモルファスシリコン膜に照射する前記レーザ光の波長を、選択する、
レーザアニール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザアニール装置及びレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザアニール装置は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理することによって、ポリシリコン膜を形成する。例えば、特許文献1に開示のレーザアニール装置は、GaN系半導体レーザ素子によって波長350~450nmのレーザビームを出射する複数の発光点が生じるように構成されたレーザ光源と、各々制御信号に応じて光変調状態が変化する多数の画素部が基板上に配列され、レーザ光源から出射されたレーザビームを変調する空間光変調素子と、各画素部で変調されたレーザビームでアニール面上を走査する走査手段と、を備える。
【0003】
レーザ光源は、複数のGaN系半導体レーザ素子と、複数のGaN系半導体レーザ素子の各々から出射されたレーザビームを集光し且つ集光ビームを光ファイバの入射端に結合させる集光光学系としての集光レンズと、1本の光ファイバと、で構成されている。このように、複数のGaN系半導体レーザ素子の各々から出射されたレーザビームは、集光レンズによって、空間合成される。
【0004】
また、非特許文献1には、波長445nmの青色レーザダイオードによるレーザ光をアモルファスシリコン膜に照射することによって、波長308nmのXeClエキシマレーザの場合よりも、均一性に有利な微細粒径をもつ高品質なポリシリコン膜を形成することができる旨、記載されている。また、レーザ光の波長が長いほど、光が吸収され難くなるため、アモルファスシリコン膜に対するレーザ光の浸透深さが大きくなる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-064066号公報
【文献】陳訳「レーザーアニールによる接合形成と高性能パワーSi MOS FETs に関する研究」琉球大学博士論文、2016年9月、第32,33頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理する工程において、同一条件、すなわち、同じ波長のレーザ光を同じ時間だけ照射したとしても、形成されるポリシリコン膜の品質にばらつきが生じることがあった。
【0007】
そこで、本願発明者等は、アモルファスシリコン膜の任意の結晶粒サイズや、結晶性に応じて、レーザ光の波長を変化させることを想到した。これにより、アモルファスシリコン膜に対するレーザ光の吸収係数や浸透深さ等を適宜調整することができるので、ポリシリコン膜の品質を均一にコントロールする上で有利になる。
【0008】
しかしながら、アモルファスシリコン膜の結晶粒サイズに応じてレーザ光の波長を変化させるという上記構成を、特許文献1のような空間合成によって実現しようとした場合、互いに配置箇所の異なる複数のレーザ光源からの集光であるため、アモルファスシリコン膜に対するレーザ光の照射位置や範囲が変化したり、また、光源波長を変えることによっても、ビーム偏角差が生じるなどの光特性の影響によりレーザ光の照射位置や範囲が変化したりするという、物理的な問題があった。
【0009】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アモルファスシリコン膜に対するレーザ光の照射位置や範囲が波長毎に変化することを抑制しつつ、形成されるポリシリコン膜の品質を均一にコントロールすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るレーザアニール装置は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するレーザアニール装置であって、互いに異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源と、各上記レーザ光源から出射された上記レーザ光を回折する回折格子と、上記各レーザ光源による上記レーザ光の出射のオン/オフを切り換える制御部と、を備え、上記各レーザ光源は、出射された上記レーザ光が上記回折格子によって同一の光軸上に回折されるように、互いに異なる箇所に配置されており、上記制御部は、上記アモルファスシリコン膜の任意の結晶粒サイズに応じて、上記複数のレーザ光源の中から、上記レーザ光の出射をオンにする上記レーザ光源を、少なくとも1つ以上選択可能であり、上記複数のレーザ光源の中には、420nm以上460nm以下の波長の上記レーザ光を出射する上記レーザ光源が含まれており、上記制御部は、420nm以上460nm以下の波長範囲の中から、上記アモルファスシリコン膜に照射する上記レーザ光の波長を、選択可能である、
【0011】
本開示に係るレーザアニール方法は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してアニール処理するレーザアニール方法であって、互いに異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を、上記レーザ光が回折格子によって同一の光軸上に回折されるように、互いに異なる箇所に配置し、上記アモルファスシリコン膜の任意の結晶粒サイズに応じて、上記複数のレーザ光源の中から、上記レーザ光の出射をオンにする上記レーザ光源を、少なくとも1つ以上選択し、上記複数のレーザ光源の中には、420nm以上460nm以下の波長の上記レーザ光を出射する上記レーザ光源が含まれており、420nm以上460nm以下の波長範囲の中から、上記アモルファスシリコン膜に照射する上記レーザ光の波長を、選択する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、アモルファスシリコン膜に対するレーザ光の照射位置や範囲が波長毎に変化することを抑制しつつ、形成されるポリシリコン膜の品質を均一にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る波長合成技術によるレーザアニール装置を示す図である。
【
図2】
図2は、レーザ光の波長とアモルファスシリコン膜への吸収係数との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、従来例に係る空間合成によるレーザアニール装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
(レーザアニール装置)
図1は、レーザアニール装置1を示す。レーザアニール装置1には、波長合成技術(WBC:Wavelength Beam Combining)が採用されている。レーザアニール装置1は、基板Wの表面に堆積されたアモルファスシリコン膜W1にレーザ光を照射してアニール処理することによって、ポリシリコン膜(結晶化膜)を形成する。なお、アモルファスシリコン膜W1は、プリカーサ膜として形成されている。
【0016】
図1に示すように、レーザアニール装置1は、複数(n個)のレーザ発振器(レーザ光源)2i(i=1,2,…n)と、透過型の回折格子3と、ガルバノミラー4と、カプラ5と、制御部6と、を備える。レーザ発振器2iの個数nは、例えば12個である。
【0017】
各レーザ発振器2iは、互いに異なる波長λi(i=1,2,…n)のレーザ光Li(i=1,2,…n)を、入射角θi(i=1,2,…n)で、回折格子3に向けて出射する。入射角θiは、各レーザ発振器2iからの入射光と回折格子3の法線Pとのなす角である。
【0018】
図1では、簡単のため、1個目の第1レーザ発振器21、2個目の第2レーザ発振器22及びn個目の第nレーザ発振器2nのみを、図示する。
【0019】
第1レーザ発振器21は、波長λ1のレーザ光L1を、入射角θ1で、回折格子3に向けて出射する。第2レーザ発振器22は、波長λ2のレーザ光L2を、入射角θ2で、回折格子3に向けて出射する。第nレーザ発振器2nは、波長λnのレーザ光Lnを、入射角θnで、回折格子3に向けて出射する。
【0020】
複数のレーザ発振器2iの中には、青色領域、具体的には435nm以上460nm以下の波長λiのレーザ光Liを出射するレーザ発振器2iが、含まれている。本実施形態では、全てのレーザ発振器2iの波長λiが、435nm以上460nm以下の範囲にある。第1レーザ発振器21の波長λ1は、一番小さく、435nmである。第nレーザ発振器2nの波長λnは、一番大きく、460nmである。n個のレーザ発振器2iは、435nm以上460nm以下の波長範囲をn分割している。
【0021】
図2は、レーザ光Liの波長λi[nm]とアモルファスシリコン膜W1への吸収係数αi[cm
-1]との関係を示すグラフである。
図2に示すように、波長λi[nm]が大きくなるほど、吸収係数αi[cm
-1]は、小さくなる。
【0022】
図1に示すように、回折格子3は、各レーザ発振器2iから出射された各レーザ光Liを、透過回折する。ここで、各レーザ発振器2iは、出射された各レーザ光Liが回折格子3によって同一の光軸A上に透過回折されるように(同一の回折角φで透過回折されるように)、互いに異なる箇所に配置されている。
【0023】
回折角φは、回折格子3による回折光と回折格子3の法線Pとのなす角である。回折角φは、光軸Aが基板Wの表面に対して斜めに交差するように、設定されている。
【0024】
図1で示す透過型の回折格子3の周期(開口の間隔、図示せず)d、波長λi、入射角θi及び回折角φの関係は、以下の通りである。d(sinθi-sinφ)=mλi(mはゼロを除く整数)。
【0025】
ガルバノミラー4は、アモルファスシリコン膜W1(基板W)と回折格子3との間に、介在している。ガルバノミラー4は、回折格子3によって回折されて光軸A上を進むレーザ光Liを、アモルファスシリコン膜W1(基板W)に向けて、照射方向Bへ照射する。
【0026】
ガルバノミラー4の傾きは、モータやピエゾ素子等からなるアクチュエータ(図示せず)によって、変化可能である(
図1のC参照)。ガルバノミラー4によるレーザ光Liの照射方向Bは、ガルバノミラー4の傾きの変化に応じて、変化する。
【0027】
カプラ5は、回折格子3とガルバノミラー4との間に、配置されている。レーザ発振器2iから出射され且つ回折格子3により回折されたレーザ光Liの一部(数%)は、カプラ5によって再びレーザ発振器2iに戻される。そして、当該レーザ光Liの一部がレーザ発振器2iとカプラ5との間を何度も往復することによって、レーザ発振器2iから出射されたレーザ光Liが外部共振される。これにより、レーザ光Liのエネルギーが増幅される。
【0028】
各レーザ発振器2iは、制御部6に接続されている。制御部6は、例えば、マイクロコンピュータ及びプログラムによって構成される。制御部6は、各レーザ発振器2iによるレーザ光Liの出射のオン/オフを切り換える。
【0029】
ここで、レーザアニール工程よりも前のモニタリング工程において、アモルファスシリコン膜W1の結晶粒サイズが、測定される。結晶粒サイズの測定は、種々の公知の方法によって行われる。例えば、セコエッチング処理によってアモルファスシリコン膜W1の結晶粒界を顕在化した後に走査電子顕微鏡(SEM)によって結晶粒サイズを観察する。セコエッチング処理により結晶粒サイズを測定する方法の他に、X線回折法、ラマン分光法、分光エリプソメトリー、電気伝導率などにより結晶性を評価する方法等もある。
【0030】
制御部6は、アモルファスシリコン膜W1の任意の結晶粒サイズに応じて、複数のレーザ発振器2iの中から、レーザ光Liの出射をオンにするレーザ発振器2iを、少なくとも1つ以上任意に選択可能である。換言すると、制御部6は、435nm以上460nm以下の波長範囲の中から、アモルファスシリコン膜W1に照射するレーザ光Liの波長λiを、任意に選択可能である。
【0031】
ここで、アモルファスシリコン膜W1には複数の結晶粒が存在するが、ユーザは、波長選択の判断に用いる結晶粒を、複数の結晶粒の中から、任意に(自由に)選択してよい。結晶粒のサイズとして、例えば、結晶粒の直径(結晶粒径)や表面積などを、適宜採用すればよい。
【0032】
図1の例で説明すると、制御部6は、第1レーザ発振器21によるレーザ光L1の出射のみをオンにするとともに、第2レーザ発振器22及び第nレーザ発振器2nによるレーザ光L2,Lnの出射をオフにしてもよい。すなわち、制御部6は、435nm以上460nm以下の波長範囲の中から、波長λ1のみを選択するとともに、波長λ2及び波長λnを選択しなくてもよい。
【0033】
また、制御部6は、第1レーザ発振器21及び第2レーザ発振器22よるレーザ光L1,L2の出射をオンにするとともに、第nレーザ発振器2nよるレーザ光Lnの出射をオフにしてもよい。すなわち、制御部6は、435nm以上460nm以下の波長範囲の中から、波長λ1及び波長λ2を選択するとともに、波長λnを選択しなくてもよい。
【0034】
また、制御部6は、全てのレーザ発振器21,22,…2nによるレーザ光L1,L2,…Lnの出射をオンにしてもよい。すなわち、制御部6は、435nm以上460nm以下の波長範囲の中から、全ての波長λ1,λ2,…λnを選択してもよい。
【0035】
制御部6は、上で例示した以外の波長λiの組み合わせを、選択してもよい。
【0036】
(作用効果)
本実施形態によれば、アモルファスシリコン膜W1の結晶粒サイズに応じて、アモルファスシリコン膜W1に照射するレーザ光Liの波長λiを適宜選択することによって、レーザ光Liのアモルファスシリコン膜W1への吸収係数αiや浸透深さ等を適宜調整することができる。これにより、形成されるポリシリコン膜の品質を均一にコントロールする上で有利になる。
【0037】
ここで、
図3は、従来例に係るレーザアニール装置100を示す。従来例に係るレーザアニール装置100は、回折格子3ではなく、集光レンズ103を備える。各レーザ発振器2iから出射されたレーザ光Liは、集光レンズ103によって集光され(空間合成され)た後、ガルバノミラー4によってアモルファスシリコン膜W1に向けて照射される。その他の構成は、本実施形態に係るレーザアニール装置1と同様である。
【0038】
従来例に係るレーザアニール装置100では、各レーザ発振器2iの配置箇所及び波長λiが互いに異なるため、集光レンズ103により集光され(空間合成され)且つガルバノミラー4により照射されるレーザ光Liは、
図3に示すように、アモルファスシリコン膜W1に対して、波長λi毎に異なる位置に、照射される。
【0039】
一方、本実施形態に係るレーザアニール装置1では、回折格子3により回折され且つガルバノミラー4により照射されるレーザ光Liは、
図1に示すように、アモルファスシリコン膜W1に対して、波長λiにかかわらず同じ位置及び範囲に、照射される。
【0040】
以上、アモルファスシリコン膜W1に対するレーザ光Liの照射位置や範囲が波長λi毎に変化することを抑制しつつ、形成されるポリシリコン膜の品質を均一にコントロールすることができる。
【0041】
特に、青色領域、具体的には435nm以上460nm以下の波長範囲の中から、波長λiを選択することによって、
図2に示すように、吸収係数αiの小さなレーザ光Liを、アモルファスシリコン膜W1に照射することができる。吸収係数αiをある程度小さくすることによって、レーザ光Liのアモルファスシリコン膜W1に対する浸透深さを、大きくすることができる。これにより、波長の低い領域(例えば308nmのXeClエキシマレーザ)の場合に比較して、形成されるポリシリコン膜の品質をコントロールしやすくなる。
【0042】
ガルバノミラー4の傾きを変化させることによって、簡単に、アモルファスシリコン膜W1の広領域に対して、レーザ光Liを照射することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0044】
ガルバノミラー4は、無くてもよい。例えば、アモルファスシリコン膜W1と回折格子3との間に、シリンドリカルレンズを設けてもよい。シリンドリカルレンズによって、レーザ光Liのスポット径を、線状に広げることができる。この場合、シリンドリカルレンズと回折格子3との間に、レーザ光Liの進行方向を変化させるミラーが配置されてもよい。
【0045】
また、レーザアニール装置1は、移動機構(図示せず)を備えてもよい。移動機構は、アモルファスシリコン膜W1が表面に堆積された基板Wを移動(位置変化)させる。移動機構は、例えば、基板Wが載置される可動式のステージである。移動機構により基板Wを移動させることによって、ガルバノミラー4が無くても、アモルファスシリコン膜W1の広領域に対して、レーザ光Liを照射することができる。
【0046】
上記実施形態では、透過型の回折格子3を用いたが、これに限定されない。回折格子3は、反射型でもよい。
【0047】
上記実施形態(特に
図1)では表現していないが、レーザ発振器2iと回折格子3との間には、又は回折格子3とカプラ5との間には、レーザ光Liを効率良く入射させるために、FACレンズ、ツイスターレンズ、プリズムレンズ等を設けてもよい。
【0048】
波長範囲は、435nm以上460nm以下に限定されない。例えば、下限を広げて、420nm以上460nm以下でもよい。さらに、波長範囲は、青色領域を含まず、例えば、紫外領域(400nm以下)でもよい。
【0049】
本開示に係るレーザアニール方法は、アモルファスシリコン膜W1にレーザ光Liを照射してアニール処理するレーザアニール方法であって、互いに異なる波長λiのレーザ光Liを出射する複数のレーザ発振器2iを、レーザ光Liが回折格子3によって同一の光軸A上に回折されるように、互いに異なる箇所に配置し、アモルファスシリコン膜W1の任意の結晶粒サイズに応じて、複数のレーザ発振器Liの中から、レーザ光Liの出射をオンにするレーザ発振器2iを、少なくとも1つ以上選択する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示は、レーザアニール装置及びレーザアニール方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0051】
A 光軸
B 照射方向
C 傾き
P 法線
W 基板
W1 アモルファスシリコン膜
λi 波長
Li レーザ光
θi 入射角
φ 回折角
1 レーザアニール装置
2i レーザ発振器(レーザ光源)
3 回折格子
4 ガルバノミラー
5 カプラ
6 制御部