(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】DC/DC変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240405BHJP
H02M 3/07 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/07
(21)【出願番号】P 2020084144
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2022-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤居 直章
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216790(JP,A)
【文献】特開2020-068582(JP,A)
【文献】特開2015-201947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/155
H02M3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側直流部に接続される少なくとも一つのリアクトルと、
高圧側直流部と並列に直列接続された第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路と、
前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第2フライングキャパシタ回路を制御して、前記低圧側直流部から前記高圧側直流部へ昇圧動作で電力伝送、及び前記高圧側直流部から前記低圧側直流部へ降圧動作で電力伝送の少なくとも一方を実行可能な制御部と、
を備え、
前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路の中点間が電気的に接続され、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路の中点間が電気的に接続され、
前記リアクトルは、前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路の中点間を接続する経路と、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入され、
前記第1フライングキャパシタ回路は、それぞれ逆並列に第1ダイオードが形成または接続された第1グループの複数のスイッチング素子を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路は、それぞれ逆並列に第1ダイオードが形成または接続された第2グループの複数のスイッチング素子を含み、
本DC/DC変換装置は、
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる前記複数のスイッチング素子の少なくとも一つに対して逆並列に接続される、前記少なくとも一つの第1ダイオードに流れる電流をバイパスするための、少なくとも一つの第2ダイオードをさらに備え
、
前記第1フライングキャパシタ回路は、
前記第1グループに含まれる複数のスイッチング素子である、直列接続された第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との接続点と、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との接続点との間に接続された第1フライングキャパシタと、を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路は、
前記第2グループに含まれる複数のスイッチング素子である、直列接続された第5スイッチング素子、第6スイッチング素子、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、
前記第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との接続点と、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子との接続点との間に接続された第2フライングキャパシタと、を含み、
前記第1スイッチング素子-前記第8スイッチング素子にはそれぞれ、前記第1ダイオードが逆並列に形成または接続されており、
前記制御部は、
前記第2スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、前記第6スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、前記第6スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオン状態、並びに前記第2スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第7スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオン状態、並びに前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第7スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオフ状態に制御する第4モード、
の4つのモードを使用して前記昇圧動作または前記降圧動作を実行する、
DC/DC変換装置。
【請求項2】
前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子にそれぞれ逆並列に、4つの前記第2ダイオードが接続されている、
請求項
1に記載のDC/DC変換装置。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第7スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子にそれぞれ逆並列に、4つの前記第2ダイオードが接続されている、
請求項
1または
2項に記載のDC/DC変換装置。
【請求項4】
前記第2ダイオードの順方向電圧は、前記第1ダイオードの順方向電圧より低く、
前記第2ダイオードのリカバリ損失は、前記第1ダイオードのリカバリ損失より低い、
請求項
2または
3に記載のDC/DC変換装置。
【請求項5】
直列接続された前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続され、
直列接続された前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続される、
請求項
1に記載のDC/DC変換装置。
【請求項6】
直列接続された前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続され、
直列接続された前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続される、
請求項
1または
5に記載のDC/DC変換装置。
【請求項7】
直列接続された前記第4スイッチング素子と前記第5スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続される、
請求項
1、
3、
5のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置。
【請求項8】
直列接続された前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオードが接続される、
請求項
1、
3、
5のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置。
【請求項9】
直列接続された2つ以上の前記スイッチング素子に対して、一つの前記第2ダイオードが逆並列に接続される、
請求項1に記載のDC/DC変換装置。
【請求項10】
前記第1グループ及び前記第2グループに含まれる複数の前記スイッチング素子は、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、
前記第1ダイオードは、前記NチャンネルMOSFETの寄生ダイオードである、
請求項1から
9のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電力を別の電圧の直流電力に変換するDC/DC変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、太陽電池、燃料電池などに接続されるパワーコンディショナでは、DC/DCコンバータとインバータが使用される。DC/DCコンバータとインバータは、高効率な電力変換と小型設計が望まれる。それを実現するためのDC/DCコンバータとして、リアクトルの後段に、フライングキャパシタ回路(直列接続された4つのスイッチング素子と、第2スイッチング素子と第3スイッチング素子に並列接続されたフライングキャパシタで構成される)を接続し、リアクトルとフライングキャパシタ回路の接続点の電圧を3レベル化したマルチレベル電力変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マルチレベル電力変換装置は、各スイッチング素子に印加される電圧を小さくでき、それによりスイッチング損失を少なくでき、高効率な電力変換を実現する。上記フライングキャパシタ回路を利用したマルチレベル電力変換装置では3レベル化することにより、フライングキャパシタ回路を構成する各スイッチング素子に印加される電圧を、直流バス電圧の1/2倍まで小さくすることができる。
【0004】
それにより、インバータのフルブリッジ部で使用している比較的高い耐圧(例えば、600V)のスイッチング素子を使用せずに、比較的低い耐圧(例えば、300V)のスイッチング素子で構成することが可能となる。耐圧の低いスイッチング素子は耐圧の高いスイッチング素子に対して安価であり、かつ電力変換中の導通損失、スイッチング損失などが少なく、さらなる高効率化に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安価なスイッチング素子として一般的に使用されるMOSFETでは、還流ダイオードとして寄生ダイオードが使用される。寄生ダイオードはリカバリ損失が大きく、スイッチング損失を増加させる要因となる。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストで高効率なDC/DC変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のDC/DC変換装置は、低圧側直流部に接続される少なくとも一つのリアクトルと、高圧側直流部と並列に直列接続された第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路と、を備える。前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路の中点間が電気的に接続され、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路の中点間が電気的に接続され、前記リアクトルは、前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路の中点間を接続する経路と、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入され、前記第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路は、それぞれ逆並列に第1ダイオードが形成または接続された複数のスイッチング素子を含む。本DC/DC変換装置は、前記複数のスイッチング素子の少なくとも一つに対して逆並列に接続される、前記少なくとも一つの第1ダイオードに流れる電流をバイパスするための、少なくとも一つの第2ダイオードをさらに備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低コストで高効率なDC/DC変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係るDC/DC変換装置の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
【
図3】
図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
【
図5】昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
【
図8】
図8(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
【
図9】
図9(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
【
図10】
図10(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
【
図11】
図11(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
【
図12】
図12(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
【
図13】
図13(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
【
図14】
図14(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
【
図15】実施例1に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図16】実施例2に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図17】実施例3に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図18】実施例4に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図19】実施例5に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図20】実施例6に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図21】実施例7に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図22】実施例8に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図23】
図23(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
【
図24】N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す図である。
【
図25】変形例に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態に係るDC/DC変換装置3は、双方向の昇降圧DC/DCコンバータである。DC/DC変換装置3は、第2直流電源2から供給される直流電力を昇圧して第1直流電源1に供給することができる。またDC/DC変換装置3は、第1直流電源1から供給される直流電力を降圧して第2直流電源2に供給することができる。本明細書では、第2直流電源2が第1直流電源1より低圧な電源であることを前提とする。
【0012】
第2直流電源2は例えば、蓄電池、電気二重層コンデンサなどが該当する。第1直流電源1は例えば、双方向DC/ACインバータが接続された直流バスなどが該当する。当該双方向DC/ACインバータの交流側は、蓄電システムの用途では商用電力系統と交流負荷に接続される。電気自動車の用途ではモータ(回生機能あり)に接続される。蓄電システムの用途では当該直流バスに、太陽電池用のDC/DCコンバータや、他の蓄電池用のDC/DCコンバータがさらに接続されていてもよい。
【0013】
DC/DC変換装置3は、DC/DC変換部30及び制御部40を備える。DC/DC変換部30は、入力コンデンサC5、リアクトルL1、第1フライングキャパシタ回路31、第2フライングキャパシタ回路32、第1分割コンデンサC3、第2分割コンデンサC4、及び出力コンデンサC6を含む。
【0014】
第2直流電源2と並列に入力コンデンサC5が接続される。第1直流電源1と並列に出力コンデンサC6が接続される。第1直流電源1の正側バスと負側バスの間に、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4が直列に接続される。第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4は、第1直流電源1の電圧Eを1/2に分圧する作用、DC/DC変換部30内で発生するサージ電圧を抑制するためのスナバコンデンサとしての作用を有する。本明細書では、入力コンデンサC5より前段の構成を低圧直流部と呼び、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4より後段の構成を高圧直流部と呼ぶ。
【0015】
第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32は、高圧側直流部と並列に直列接続される。リアクトルL1は、低圧側直流部の正側端子と、第1フライングキャパシタ回路31の中点間に接続される。低圧側直流部の負側端子と、第2フライングキャパシタ回路32の中点が接続される。第1フライングキャパシタ回路31と第2フライングキャパシタ回路32との間の接続点は、高圧側直流部の中間電位点M(第1分割コンデンサC3と第2分割コンデンサC4の分圧点)に接続される。
【0016】
なお、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4は省略可能であり、その場合、第1フライングキャパシタ回路31と第2フライングキャパシタ回路32との間の接続点は、必ずしも高圧側直流部の中間電位点Mに接続される必要はない。
【0017】
第1フライングキャパシタ回路31は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4及び第1フライングキャパシタC1を含む。第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3及び第4スイッチング素子S4は直列接続され、高圧直流部の正側バスと中間電位点Mの間に接続される。第1フライングキャパシタC1は、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2との接続点と、第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子S1-第4スイッチング素子S4により充放電される。
【0018】
第1フライングキャパシタ回路31の中点には、第1スイッチング素子S1の上側端子に印加される第1直流電源1の電圧E[V]と、第4スイッチング素子S4の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が生成される。第1フライングキャパシタC1は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路31の中点には、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が生成される。
【0019】
第2フライングキャパシタ回路32は、第5スイッチング素子S5、第6スイッチング素子S6、第7スイッチング素子S7、第8スイッチング素子S8及び第2フライングキャパシタC2を含む。第5スイッチング素子S5、第6スイッチング素子S6、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8は直列接続され、高圧直流部の中間電位点Mと負側バスの間に接続される。第2フライングキャパシタC2は、第5スイッチング素子S5と第6スイッチング素子S6との接続点と、第7スイッチング素子S7と第8スイッチング素子S8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子S5-第8スイッチング素子S8により充放電される。
【0020】
第2フライングキャパシタ回路32の中点には、第5スイッチング素子S5の上側端子に印加される1/2E[V]と、第8スイッチング素子S8の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が生成される。第2フライングキャパシタC2は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路32の中点には、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が生成される。
【0021】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第8ダイオードD8が逆並列に形成/接続される。
【0022】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8には、第1直流電源1及び第2直流電源2の電圧より低い耐圧のスイッチング素子が使用されることが好ましい。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8に、150V耐圧のNチャネルMOSFETを使用する例を想定する。NチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)では、ソースからドレイン方向に寄生ダイオードが形成される。
【0023】
図1には示していないが、低圧直流部の電圧を検出する電圧センサ、リアクトルL1に流れる電流を検出する電流センサ、第1フライングキャパシタC1の電圧を検出する電圧センサ、第2フライングキャパシタC2の電圧を検出する電圧センサ、及び高圧直流部の電圧を検出する電圧センサが設けられ、それぞれの計測値が制御部40に出力される。
【0024】
制御部40は、第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32を制御して、低圧側直流部から高圧側直流部へ昇圧動作で直流電力を伝送することができる。また高圧側直流部から低圧側直流部へ降圧動作で直流電力を伝送することができる。より具体的には制御部40は、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のゲート端子に駆動信号(PWM(Pulse Width Modulation)信号)を供給することにより、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8をオン/オフ制御して、昇圧動作または降圧動作で、双方向に電力を伝送することができる。
【0025】
制御部40の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、ASIC、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0026】
図2は、実施の形態に係るDC/DC変換装置3の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンをまとめた図である。
図2に示すスイッチングパターンでは、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8の組と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5の組とが相補関係となる。また第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7の組と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6の組とが相補関係となる。
【0027】
制御部40は、4つのモードを使用して昇圧動作または降圧動作を実行する。
モードaでは制御部40は、第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードaでは、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点間の電圧(即ち、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧VL)は1/2Eとなる。
【0028】
モードbでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオフ状態に制御する。モードbでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧VLは1/2Eとなる。
【0029】
モードcでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオフ状態に制御する。モードcでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧VLはEとなる。
【0030】
モードdでは制御部40は、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードdでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧VLは0となる。
【0031】
図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。なお、図面の簡略化のためMOSFETを単純なスイッチ記号で描いている。
【0032】
図3(a)は昇圧動作時のモードaの電流経路を示し、
図3(b)は昇圧動作時のモードbの電流経路を示し、
図3(c)は昇圧動作時のモードcの電流経路を示し、
図3(d)は昇圧動作時のモードdの電流経路を示している。同様に、
図4(a)は降圧動作時のモードaの電流経路を示し、
図4(b)は降圧動作時のモードbの電流経路を示し、
図4(c)は降圧動作時のモードcの電流経路を示し、
図4(d)は降圧動作時のモードdの電流経路を示している。
【0033】
昇圧動作時と降圧動作時とで電流の向きが反対になる。モードaにおいて、
図3(a)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となるが、
図4(a)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となる。モードbにおいて、
図3(b)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となるが、
図4(b)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となる。
【0034】
制御部40は低圧直流部から高圧直流部へ昇圧動作で電力を伝送する場合、正方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該正方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。反対に、制御部40は高圧直流部から低圧直流部へ降圧動作で電力を伝送する場合、負方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該負方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。
【0035】
また制御部40は、低圧側直流部の電圧と高圧側直流部の電圧との比率が設定値より小さい場合、モードa、モードb及びモードcを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値より大きい場合、モードa、モードb及びモードdを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値と一致する場合、モードa及びモードbを使用して電力を伝送する。
【0036】
低圧側直流部の電圧と高圧側直流部の電圧は、それぞれ電圧センサにより計測される。上記設定値は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧1/2Eと、第1直流電源1の電圧Eとの比率に応じて設定される。本実施の形態では上記設定値は2に設定される。
【0037】
制御部40は、電流指令値とリアクトルL1に流れる電流の計測値とが一致し、かつ第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eになるようにデューティ比を生成する。具体的には制御部40は、リアクトルL1に流れる電流の計測値が電流指令値に対して小さいほどデューティ比を上昇させ、大きいほどデューティ比を低下させる。
【0038】
図5は、昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図6は、昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図5及び
図6に示す制御例は、ダブルキャリア駆動方式を使用した制御例を示している。ダブルキャリア駆動方式では、180°位相がずれた2つのキャリア信号(
図5及び
図6では三角波)を使用する。デューティ比dutyは2つのキャリア信号と比較される閾値となる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyは0.5~1.0の範囲の値をとり、昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyは0.0~0.5の範囲の値をとる。
【0039】
太線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に供給する第1ゲート信号と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に供給する第4ゲート信号を生成する。具体的には太線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第1ゲート信号がオン及び第4ゲート信号がオフになる。太線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第1ゲート信号がオフ及び第4ゲート信号がオンになる。第1ゲート信号と第4ゲート信号は相補関係にある。なお、第1ゲート信号と第4ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第1ゲート信号と第4ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0040】
細線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に供給する第2ゲート信号と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に供給する第3ゲート信号を生成する。具体的には細線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第2ゲート信号がオン及び第3ゲート信号がオフになる。細線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第2ゲート信号がオフ及び第3ゲート信号がオンになる。第2ゲート信号と第3ゲート信号は相補関係にある。なお、第2ゲート信号と第3ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第2ゲート信号と第3ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0041】
昇圧比が2倍以上の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードdを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードd→モードb→モードd→モードa→モードd→モードb→モードd・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードdの期間が長くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0042】
昇圧比が2倍未満の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードcを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードc→モードb→モードc→モードa→モードc→モードb→モードc・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードcの期間が短くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0043】
昇圧比が理想的に2倍を維持し、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ理想的に1/4Eを維持すれば、デューティ比dutyは0.5を維持する。
【0044】
制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを下回ると、モードa及びモードbの内、充電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。反対に制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを上回ると、モードa及びモードbの内、放電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。
【0045】
なお制御部40は、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を使用せずに、モードcとモードdを交互に切り替えることにより、DC/DC変換部30に、通常の昇圧チョッパの動作をさせることも可能である。この場合、昇圧比による動作モードの切り替えは発生しない。
【0046】
以下、昇圧比が2倍以上、降圧比が2倍以上、昇圧比が2倍未満、及び降圧比が2倍未満のそれぞれについて、デッドタイムを含めた詳細な切替パターンを説明する。
【0047】
図7(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図8(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。昇圧比が2倍以上の場合、制御部40は、モードd(
図7(a))→デッドタイム1(
図7(b))→モードa(
図7(c))→デッドタイム1(
図7(d))→モードd(
図8(a))→デッドタイム2(
図8(b))→モードb(
図8(c))→デッドタイム2(
図8(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0048】
昇圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム1では第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7はオフ状態であるため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7は同期整流ではなく、第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0049】
デッドタイム1(
図7(d))からモードd(
図8(a))に切り替わる際、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に上記リカバリ電流が流れ込むため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のターンオン時に流れる電流が増加し、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のスイッチング損失が増加する。
【0050】
昇圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム2では第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8はオフ状態であるため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8は同期整流ではなく、第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0051】
デッドタイム2(
図8(d))からモードd(
図7(a))に切り替わる際、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に上記リカバリ電流が流れ込むため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のターンオン時に流れる電流が増加し、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のスイッチング損失が増加する。
【0052】
図9(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図10(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。降圧比が2倍以上の場合、制御部40は、モードd(
図9(a))→デッドタイム1(
図9(b))→モードa(
図9(c))→デッドタイム1(
図9(d))→モードd(
図10(a))→デッドタイム2(
図10(b))→モードb(
図10(c))→デッドタイム2(
図10(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0053】
降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム1では第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6はオフ状態であるため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6は同期整流ではなく、第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0054】
デッドタイム1(
図9(b))からモードa(
図9(c))に切り替わる際、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に上記リカバリ電流が流れ込むため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のターンオン時に流れる電流が増加し、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のスイッチング損失が増加する。
【0055】
降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム2では第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5はオフ状態であるため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5は同期整流ではなく、第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0056】
デッドタイム2(
図10(b))からモードb(
図10(c))に切り替わる際、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に上記リカバリ電流が流れ込むため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のターンオン時に流れる電流が増加し、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のスイッチング損失が増加する。
【0057】
図11(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図12(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。昇圧比が2倍未満の場合、制御部40は、モードc(
図11(a))→デッドタイム1(
図11(b))→モードa(
図11(c))→デッドタイム1(
図11(d))→モードc(
図12(a))→デッドタイム2(
図12(b))→モードb(
図12(c))→デッドタイム2(
図12(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0058】
昇圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム1では第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8はオフ状態であるため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8は同期整流ではなく、第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0059】
デッドタイム1(
図11(b))からモードa(
図11(c))に切り替わる際、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に上記リカバリ電流が流れ込むため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のターンオン時に流れる電流が増加し、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のスイッチング損失が増加する。
【0060】
昇圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム2では第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7はオフ状態であるため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7は同期整流ではなく、第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0061】
デッドタイム2(
図12(b))からモードb(
図12(c))に切り替わる際、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に上記リカバリ電流が流れ込むため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のターンオン時に流れる電流が増加し、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のスイッチング損失が増加する。
【0062】
図13(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図14(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。降圧比が2倍未満の場合、制御部40は、モードc(
図13(a))→デッドタイム1(
図13(b))→モードa(
図13(c))→デッドタイム1(
図13(d))→モードc(
図14(a))→デッドタイム2(
図14(b))→モードb(
図14(c))→デッドタイム2(
図14(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0063】
降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム1では第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5はオフ状態であるため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5は同期整流ではなく、第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0064】
デッドタイム1(
図13(d))からモードc(
図14(a))に切り替わる際、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に上記リカバリ電流が流れ込むため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のターンオン時に流れる電流が増加し、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のスイッチング損失が増加する。
【0065】
降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム2では第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6はオフ状態であるため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6は同期整流ではなく、第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0066】
デッドタイム2(
図14(d))からモードc(
図13(a))に切り替わる際、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に上記リカバリ電流が流れ込むため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のターンオン時に流れる電流が増加し、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のスイッチング損失が増加する。
【0067】
スイッチング素子として使用するMOSFETの寄生ダイオードによるリカバリ損失は無視できない大きさであり、寄生ダイオードによるリカバリ損失を低減することは、DC/DC変換装置3全体の効率改善に大きく寄与する。以下に説明する実施例では、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の少なくとも一つに対して逆並列に、外付けダイオードを接続する。外付けダイオードは、デッドタイムにおいて寄生ダイオードに流れる還流電流をバイパスするためのダイオードである。
【0068】
(実施例1)
図15は、実施例1に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例1に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、4つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6にそれぞれ逆並列に、第3外付けダイオードDe3、第4外付けダイオードDe4、第5外付けダイオードDe5及び第6外付けダイオードDe6が接続された構成である。
【0069】
第3外付けダイオードDe3、第4外付けダイオードDe4、第5外付けダイオードDe5及び第6外付けダイオードDe6の順方向電圧Vf’は、それぞれ並列関係にある第3寄生ダイオードD3、第4寄生ダイオードD4、第5寄生ダイオードD5及び第6寄生ダイオードD6の順方向電圧Vfより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、外付けダイオードに還流電流がバイパスされない。
【0070】
第3外付けダイオードDe3、第4外付けダイオードDe4、第5外付けダイオードDe5及び第6外付けダイオードDe6のリカバリ損失Prr’は、それぞれ並列関係にある第3寄生ダイオードD3、第4寄生ダイオードD4、第5寄生ダイオードD5及び第6寄生ダイオードD6のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、外付けダイオードを接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0071】
上記2つの条件を満たすダイオードとして、ショットキーバリアダイオード(SBD)を使用することができる。ショットキーバリアダイオードは、PN接合ではなく、金属と半導体(例えばシリコン)との接合により生じるショットキーバリアを利用している。PN接合の寄生ダイオードと比較して、順方向電圧Vfが低く、逆回復時間Trrが短いためリカバリ損失も低い。
【0072】
また、上記2つの条件を満たすダイオードとして、ファストリカバリダイオード(FRD)を使用してもよい。ファストリカバリダイオードは、PN接合のダイオードであるが、逆回復時間Trrが短いためリカバリ損失が低い。近年は、順方向電圧Vfが低いタイプも実用化されている。
【0073】
また、上記2つの条件を満たすダイオードとして、SiC(シリコン・カーバイド)ダイオードを使用してもよい。例えば、SiC-SBDは、Si-SBDより逆回復時間Trrが短く、リカバリ損失をさらに低減することができる。SiC-FRDは、Si-FRDより逆回復時間Trrの温度特性に優れ、高温動作時でも逆回復時間Trrの増加を抑制することができる。
【0074】
(実施例2)
図16は、実施例2に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例2に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、4つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8にそれぞれ逆並列に、第1外付けダイオードDe1、第2外付けダイオードDe2、第7外付けダイオードDe7及び第8外付けダイオードDe8が接続された構成である。
【0075】
第1外付けダイオードDe1、第2外付けダイオードDe3、第7外付けダイオードDe7及び第8外付けダイオードDe8の順方向電圧Vf’は、それぞれ並列関係にある第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2、第7寄生ダイオードD7及び第8寄生ダイオードD8の順方向電圧Vfより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、外付けダイオードに還流電流がバイパスされない。
【0076】
第1外付けダイオードDe1、第2外付けダイオードDe2、第7外付けダイオードDe7及び第8外付けダイオードDe8のリカバリ損失Prr’は、それぞれ並列関係にある第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2、第7寄生ダイオードD7及び第8寄生ダイオードD8のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、外付けダイオードを接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0077】
上記2つの条件を満たすダイオードとして、ショットキーバリアダイオード(SBD)等を使用することができる。
【0078】
(実施例3)
図17は、実施例3に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例3に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、8つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、
図15に示した実施例1に係る構成と、
図16に示した実施例2に係る構成を組み合わせ構成である。
【0079】
図7(a)-(d)及び
図8(a)-(d)に示した昇圧比が2倍以上の場合における制御例、並びに
図11(a)-(d)及び
図12(a)-(d)に示した昇圧比が2倍未満の場合における制御例では、第1寄生ダイオードD1及び第8寄生ダイオードD8、又は第2寄生ダイオードD2及び第7寄生ダイオードD7に還流電流が流れるモードが発生した。
【0080】
図9(a)-(d)及び
図10(a)-(d)に示した降圧比が2倍以上の場合における制御例、並びに
図13(a)-(d)及び
図14(a)-(d)に示した降圧比が2倍未満の場合における制御例では、第3寄生ダイオードD3及び第6寄生ダイオードD6、又は第4寄生ダイオードD4及び第5寄生ダイオードD5に還流電流が流れるモードが発生した。
【0081】
実施例1では、第3外付けダイオードDe3、第4外付けダイオードDe4、第5外付けダイオードDe5及び第6外付けダイオードDe6を追加することにより、第3寄生ダイオードD3及び第6寄生ダイオードD6、又は第4寄生ダイオードD4及び第5寄生ダイオードD5に還流電流が流れるモードにおいて、リカバリ損失を低減することができる。このように実施例1によれば、降圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の降圧動作時の変換効率を向上させることができる。
【0082】
実施例2では、第1外付けダイオードDe1、第2外付けダイオードDe2、第7外付けダイオードDe7及び第8外付けダイオードDe8を追加することにより、第1寄生ダイオードD1及び第8寄生ダイオードD8、又は第2寄生ダイオードD2及び第7寄生ダイオードD7に還流電流が流れるモードにおいて、リカバリ損失を低減することができる。このように実施例2によれば、昇圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の昇圧動作時の変換効率を向上させることができる。
【0083】
実施例3では、第1外付けダイオードDe1-第8外付けダイオードDe8を追加することにより、昇圧動作時と降圧動作時の両方のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0084】
昇圧動作のみが必要な用途(例えば、太陽電池の昇圧チョッパ)の場合、実施例2に係る構成を採用することにより、追加する外付けダイオードの数を減らすことができ、実施例3に係る構成よりコストを削減することができる。また、降圧動作のみが必要な用途(例えば、蓄電池の充電器)の場合、実施例1に係る構成を採用することにより、追加する外付けダイオードの数を減らすことができ、実施例3に係る構成よりコストを削減することができる。
【0085】
(実施例4)
図18は、実施例4に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例4に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、2つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第1スイッチング素子S1及び第2スイッチング素子S2の両端に逆並列に第9外付けダイオードDe9が接続され、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8の両端に逆並列に第10外付けダイオードDe10が接続された構成である。
【0086】
第9外付けダイオードDe9の順方向電圧Vf’は、第1寄生ダイオードD1の順方向電圧Vfと第2スイッチング素子S2の導通時の電圧降下を合計した電圧、又は第2寄生ダイオードD2の順方向電圧Vfと第1スイッチング素子S1の導通時の電圧降下を合計した電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第9外付けダイオードDe9に還流電流がバイパスされない。第9外付けダイオードDe9のリカバリ損失Prr’は、第1寄生ダイオードD1又は第2寄生ダイオードD2のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第9外付けダイオードDe9を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0087】
なお、デットタイムに第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の全てをオフする場合は、第9外付けダイオードDe9の順方向電圧Vf’は、第1寄生ダイオードD1又は第2寄生ダイオードD2の順方向電圧Vfの2倍の電圧より低い関係にあればよい。この場合、第9外付けダイオードDe9のリカバリ損失Prr’は、第1寄生ダイオードD1のリカバリ損失Prrと第2寄生ダイオードD2のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にあればよい。
【0088】
同様に、第10外付けダイオードDe10の順方向電圧Vf’は、第8寄生ダイオードD8の順方向電圧Vfと第7スイッチング素子S7の導通時の電圧降下を合計した電圧、又は第7寄生ダイオードD7の順方向電圧Vfと第8スイッチング素子S8の導通時の電圧降下を合計した電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第10外付けダイオードDe10に還流電流がバイパスされない。第10外付けダイオードDe10のリカバリ損失Prr’は、第8寄生ダイオードD8又は第7寄生ダイオードD7のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第10外付けダイオードDe10を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0089】
なお、デットタイムに第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の全てをオフする場合は、第10外付けダイオードDe10の順方向電圧Vf’は、第7寄生ダイオードD7又は第8寄生ダイオードD8の順方向電圧Vfの2倍の電圧より低い関係にあればよい。この場合、第10外付けダイオードDe10のリカバリ損失Prr’は、第7寄生ダイオードD7のリカバリ損失Prrと第8寄生ダイオードD8のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にあればよい。
【0090】
上述した、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7又は第8スイッチング素子S8の導通時の電圧降下は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7又は第8スイッチング素子S8のオン抵抗と、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7又は第8スイッチング素子S8に流れる電流により決定される。
【0091】
実施例4では、昇圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1(
図11(b)参照)と、デッドタイム2(
図12(b)参照)において、第9外付けダイオードDe9及び第10外付けダイオードDe10はリカバリ損失を低減する効果を発揮する。なお、昇圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイムでは、第9外付けダイオードDe9及び第10外付けダイオードDe10により還流電流をバイパスすることはできない。
【0092】
このように実施例4では、第9外付けダイオードDe9及び第10外付けダイオードDe10を追加することにより、昇圧比が2倍未満の場合における昇圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0093】
(実施例5)
図19は、実施例5に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例5に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、2つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第3スイッチング素子S3及び第4スイッチング素子S4の両端に逆並列に第11外付けダイオードDe11が接続され、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6の両端に逆並列に第12外付けダイオードDe12が接続された構成である。
【0094】
第11外付けダイオードDe11の順方向電圧Vf’は、第3寄生ダイオードD3の順方向電圧Vfと第4スイッチング素子S4の導通時の電圧降下を合計した電圧、又は第4寄生ダイオードD4の順方向電圧Vfと第3スイッチング素子S3の導通時の電圧降下を合計した電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第11外付けダイオードDe11に還流電流がバイパスされない。第11外付けダイオードDe11のリカバリ損失Prr’は、第3寄生ダイオードD3又は第4寄生ダイオードD4のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第11外付けダイオードDe11を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0095】
なお、デットタイムに第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の全てをオフする場合は、第11外付けダイオードDe11の順方向電圧Vf’は、第3寄生ダイオードD3又は第4寄生ダイオードD4の順方向電圧Vfの2倍の電圧より低い関係にあればよい。この場合、第11外付けダイオードDe11のリカバリ損失Prr’は、第3寄生ダイオードD3のリカバリ損失Prrと第4寄生ダイオードD4のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にあればよい。
【0096】
同様に、第12外付けダイオードDe12の順方向電圧Vf’は、第6寄生ダイオードD6の順方向電圧Vfと第5スイッチング素子S5の導通時の電圧降下を合計した電圧、又は第5寄生ダイオードD5の順方向電圧Vfと第6スイッチング素子S6の導通時の電圧降下を合計した電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第12外付けダイオードDe12に還流電流がバイパスされない。第12外付けダイオードDe12のリカバリ損失Prr’は、第6寄生ダイオードD6又は第5寄生ダイオードD5のリカバリ損失Prrより低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第12外付けダイオードDe12を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0097】
なお、デットタイムに第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の全てをオフする場合は、第12外付けダイオードDe12の順方向電圧Vf’は、第5寄生ダイオードD5又は第6寄生ダイオードD6の順方向電圧Vfの2倍の電圧より低い関係にあればよい。この場合、第12外付けダイオードDe12のリカバリ損失Prr’は、第5寄生ダイオードD5のリカバリ損失Prrと第6寄生ダイオードD6のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にあればよい。
【0098】
実施例5では、降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1(
図9(b)参照)と、デッドタイム2(
図10(b)参照)において、第11外付けダイオードDe11及び第12外付けダイオードDe12はリカバリ損失を低減する効果を発揮する。なお、降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイムでは、第11外付けダイオードDe11及び第12外付けダイオードDe12により還流電流をバイパスすることはできない。
【0099】
このように実施例5では、第11外付けダイオードDe11及び第12外付けダイオードDe12を追加することにより、降圧比が2倍以上の場合における降圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0100】
(実施例6)
図20は、実施例6に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例6に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、4つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、
図18に示した実施例4に係る構成と、
図19に示した実施例5に係る構成を組み合わせ構成である。
【0101】
実施例6では、第9外付けダイオードDe9-第12外付けダイオードDe12を追加することにより、昇圧比が2倍未満の場合における昇圧動作時と降圧比が2倍以上の場合における降圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0102】
(実施例7)
図21は、実施例7に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例7に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、一つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5の両端に逆並列に第13外付けダイオードDe13が接続された構成である。
【0103】
第13外付けダイオードDe13の順方向電圧Vf’は、第4寄生ダイオードD4又は第5寄生ダイオードD5の順方向電圧Vfの2倍の電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第13外付けダイオードDe13に還流電流がバイパスされない。第13外付けダイオードDe13のリカバリ損失Prr’は、第4寄生ダイオードD4のリカバリ損失Prrと第5寄生ダイオードD5のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第13外付けダイオードDe13を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0104】
実施例7では、降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム2(
図10(b)参照)と、降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1(
図13(d)参照)において、第13外付けダイオードDe13はリカバリ損失を低減する効果を発揮する。なお、降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1と、降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム2では、第13外付けダイオードDe13により還流電流をバイパスすることはできない。
【0105】
このように実施例7では、第13外付けダイオードDe13を追加することにより、降圧動作時の一部のデッドタイムにおけるリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0106】
(実施例8)
図22は、実施例8に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施例8に係るDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3の構成に、一つの外付けダイオードが追加された構成である。具体的には、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6の両端に逆並列に第14外付けダイオードDe14が接続された構成である。
【0107】
第14外付けダイオードDe14の順方向電圧Vf’は、第3寄生ダイオードD3の順方向電圧Vfと第4スイッチング素子S4の導通時の電圧降下と第5スイッチング素子S5の導通時の電圧降下と第6寄生ダイオードD6の順方向電圧Vfを合計した電圧、又は第3スイッチング素子S3の導通時の電圧降下と第4寄生ダイオードD4の順方向電圧Vfと第5寄生ダイオードD5の順方向電圧Vfと第6スイッチング素子S6の導通時の電圧降下を合計した電圧より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第14外付けダイオードDe14に還流電流がバイパスされない。第14外付けダイオードDe14のリカバリ損失Prr’は、第3寄生ダイオードD3のリカバリ損失Prrと第6寄生ダイオードD6のリカバリ損失Prrの合計、又は第4寄生ダイオードD4のリカバリ損失Prrと第5寄生ダイオードD5のリカバリ損失Prrの合計より低い関係にある必要がある。この条件を満たさない場合、第14外付けダイオードDe14を接続してもリカバリ損失の低減効果が得られない。
【0108】
なお、デットタイムに第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8の全てをオフする場合は、第14外付けダイオードDe14の順方向電圧Vf’は、第3寄生ダイオードD3の順方向電圧Vfと第4寄生ダイオードD4の順方向電圧Vfと第5寄生ダイオードD5の順方向電圧Vfと第6寄生ダイオードD6の順方向電圧Vfを合計した電圧より低い関係にあればよい。この場合、第14外付けダイオードDe14のリカバリ損失Prr’は、第3寄生ダイオードD3のリカバリ損失Prrと第4寄生ダイオードD4のリカバリ損失Prrと第5寄生ダイオードD5のリカバリ損失Prrと第6寄生ダイオードD6のリカバリ損失Prrを合計した電圧より低い関係にあればよい。
【0109】
実施例8では、降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1(
図9(b)参照)と、デッドタイム2(
図10(b)参照)において、第14外付けダイオードDe14はリカバリ損失を低減する効果を発揮する。なお、降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイムでは、第14外付けダイオードDe14は還流電流をバイパスすることはできない。
【0110】
このように実施例8では、第14外付けダイオードDe14を追加することにより、降圧比が2倍以上の場合における降圧動作時のリカバリ損失を低減でき、DC/DC変換装置3の変換効率を向上させることができる。
【0111】
以上に説明した実施例1-8に係る回路構成は、上述した以外の様々な組み合わせが可能である。例えば、実施例1に示した回路構成と実施例4に示した回路構成を組み合わせることが可能である。また、実施例2に示した回路構成と実施例5に示した回路構成を組み合わせることが可能である。また、実施例2に示した回路構成と実施例7に示した回路構成を組み合わせることが可能である。また、実施例2に示した回路構成と実施例8に示した回路構成を組み合わせることが可能である。
【0112】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0113】
上記実施の形態では、フライングキャパシタ回路の構成例として、直列接続された4つのスイッチング素子と、1つのフライングキャパシタを使用する1段のフライングキャパシタ回路を例に挙げた。この点、さらに段数を増やしたフライングキャパシタ回路を使用することもできる。
【0114】
図23(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
図23(a)は1段のフライングキャパシタ回路を示す。
図23(a)に示すフライングキャパシタ回路は、上記実施の形態で説明した回路構成と同様である。
【0115】
図23(b)は2段のフライングキャパシタ回路を示す。2段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42と、2つのフライングキャパシタC11、C12を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。
【0116】
図23(c)は3段のフライングキャパシタ回路を示す。3段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43と、3つのフライングキャパシタC11、C12、C13を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/8Eの電圧を維持するように制御される。
【0117】
図24は、N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す。N段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された(2N+2)個のスイッチング素子S1n、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4nと、N個のフライングキャパシタC11、C12、C13、・・・、C1nを備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。最も外側のフライングキャパシタC1nは、2N個のS1(n-1)、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4(n-1)に対して並列に接続され、N/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。
【0118】
図1に示した第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32では、
図23(a)に示した1段のフライングキャパシタ回路を使用している。1段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に3レベル(E、1/2E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図23(b)に示した2段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に5レベル(E、2/3E、1/2E、1/3E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図23(c)に示した3段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に7レベル(E、3/4E、5/8E、1/2E、3/8E、1/4E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図24に示したN段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に(2N+1)レベルの電圧を発生させることが可能となる。
【0119】
フライングキャパシタ回路の段数を増やすほど、安価で耐圧が低いスイッチング素子を使用することができる一方、使用するスイッチング素子の数が増大する。従って設計者は、トータルのコストとトータルの変換効率を考慮して、フライングキャパシタ回路の最適な段数を決定すればよい。また、高圧側直流部の電圧が1000Vを超えるアプリケーションや、10000Vを超えるアプリケーションでは、各スイッチング素子の耐圧を下げるために、フライングキャパシタ回路の段数を増やすことが有効である。
【0120】
本開示では、フライングキャパシタ回路の段数がいずれの場合であっても、複数のスイッチング素子の少なくとも一つに対して逆並列に外付けダイオードを接続することにより、スイッチング素子の寄生ダイオードに還流電流が流れることに起因するリカバリ損失を低減することができる。
【0121】
図25は、変形例に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。
図1に示したDC/DC変換装置3では、リアクトルL1を、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間に接続した。この点、
図25に示す変形例では、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間に第1リアクトルL1を接続し、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間に第2リアクトルL2を接続している。第1リアクトルL1と第2リアクトルL2を、コアを共通にした磁気結合リアクトルで構成されてもよい。この場合、通電時に、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2の磁束を相互に強め合うことができる。
【0122】
なお、リアクトルL1は、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間に接続してもよい。このように、リアクトルL1は、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間を接続する経路と、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入されていればよい。
【0123】
上述した第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のそれぞれは、並列接続された複数のスイッチング素子で構成されてもよい。その場合、一つのスイッチング素子に流れる電流を減らすことができ、一つのスイッチング素子を小型化することができる。
【0124】
上述した実施の形態では、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にMOSFETを使用する例を説明した。この点、寄生ダイオードが形成されないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を使用する場合、各スイッチング素子と逆並列に、リカバリ損失が小さい外付けダイオードを接続すれば足り、実施例1-3に示した回路構成を採用する必要はない。なお、実施例4-8に示した回路構成では、バイパス用のダイオードを追加で接続することにより、リカバリ損失を低減することが可能である。
【0125】
なお、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンド(C)等を使用したワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子を使用する場合にも、本開示を適用可能である。
【0126】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0127】
[項目1]
低圧側直流部に接続される少なくとも一つのリアクトル(L1)と、
高圧側直流部と並列に直列接続された第1フライングキャパシタ回路(31)及び第2フライングキャパシタ回路(32)と、を備え、
前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路(31)の中点間が電気的に接続され、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路(32)の中点間が電気的に接続され、
前記リアクトル(L1)は、前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路(31)の中点間を接続する経路と、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路(32)の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入され、
前記第1フライングキャパシタ回路(31)及び第2フライングキャパシタ回路(32)は、それぞれ逆並列に第1ダイオード(D)が形成または接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)を含み、
本DC/DC変換装置(3)は、
前記複数のスイッチング素子(S1-S8)の少なくとも一つに対して逆並列に接続される、前記少なくとも一つの第1ダイオード(D)に流れる電流をバイパスするための、少なくとも一つの第2ダイオード(De)をさらに備える、
DC/DC変換装置(3)。
これによれば、第1ダイオード(D)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目2]
前記第1フライングキャパシタ回路(31)は、
直列接続された第1スイッチング素子(S1)、第2スイッチング素子(S2)、第3スイッチング素子(S3)及び第4スイッチング素子(S4)と、
前記第1スイッチング素子(S1)と第2スイッチング素子(S2)との接続点と、第3スイッチング素子(S3)と第4スイッチング素子(S4)との接続点との間に接続された第1フライングキャパシタ(C1)と、を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路(32)は、
直列接続された第5スイッチング素子(S5)、第6スイッチング素子(S6)、第7スイッチング素子(S7)及び第8スイッチング素子(S8)と、
前記第5スイッチング素子(S5)と第6スイッチング素子(S6)との接続点と、第7スイッチング素子(S7)と第8スイッチング素子(S8)との接続点との間に接続された第2フライングキャパシタ(C2)と、を含み、
前記第1スイッチング素子(S1)-前記第8スイッチング素子(S8)にはそれぞれ、前記第1ダイオード(D1-D8)が逆並列に形成または接続されている、
項目1に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、3レベルのマルチレベルDC/DC変換装置(3)を実現することができる。高圧直流部と並列に、8個のスイッチング素子(S1-S8)を直列接続することにより、従来より低耐圧のスイッチング素子を使用することが可能となる。
[項目3]
前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)にそれぞれ逆並列に、4つの前記第2ダイオード(De3-De6)が接続されている、
項目2に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、降圧動作時における、第1ダイオード(D3-D6)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目4]
前記第1スイッチング素子(S1)、前記第2スイッチング素子(S2)、前記第7スイッチング素子(S7)及び前記第8スイッチング素子(S8)にそれぞれ逆並列に、4つの前記第2ダイオード(De1-De2、De7-De8)が接続されている、
項目2または3項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、昇圧動作時における、第1ダイオード(D1-2、D7-D8)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目5]
前記第2ダイオード(De1-De8)の順方向電圧は、前記第1ダイオード(D1-D8)の順方向電圧より低く、
前記第2ダイオード(De1-De8)のリカバリ損失は、前記第1ダイオード(D1-D8)のリカバリ損失より低い、
項目3または4に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、還流電流を第2ダイオード(De1-De8)にバイパスさせることができ、第1ダイオード(D1-D8)に還流電流が流れる場合より損失を低減することができる。
[項目6]
直列接続された前記第1スイッチング素子(S1)と前記第2スイッチング素子(S2)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De9)が接続され、
直列接続された前記第7スイッチング素子(S7)と前記第8スイッチング素子(S8)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De10)が接続される、
項目2に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、昇圧比が2倍未満の昇圧動作時における、第1ダイオード(D1-D2、D7-D8)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目7]
直列接続された前記第3スイッチング素子(S3)と前記第4スイッチング素子(S4)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De11)が接続され、
直列接続された前記第5スイッチング素子(S5)と前記第6スイッチング素子(S6)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De12)が接続される、
項目2または6に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、降圧比が2倍以上の降圧動作時における、第1ダイオード(D3-D6)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目8]
直列接続された前記第4スイッチング素子(S4)と前記第5スイッチング素子(S5)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De13)が接続される、
項目2、4、6のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、降圧動作時における、第1ダイオード(D4-D5)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目9]
直列接続された前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)の両端に逆並列に、一つの前記第2ダイオード(De14)が接続される、
項目2、4、6のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、降圧比が2倍以上の降圧動作時における、第1ダイオード(D3-D6)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目10]
前記第1フライングキャパシタ回路(31)及び前記第2フライングキャパシタ回路(32)を制御して、前記低圧側直流部から前記高圧側直流部へ昇圧動作で電力伝送、及び前記高圧側直流部から前記低圧側直流部へ降圧動作で電力伝送の少なくとも一方を実行可能な制御部(40)をさらに備え、
前記制御部(40)は、
前記第2スイッチング素子(S2)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第7スイッチング素子(S7)をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子(S1)、前記第3スイッチング素子(S3)、前記第6スイッチング素子(S6)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1スイッチング素子(S1)、前記第3スイッチング素子(S3)、前記第6スイッチング素子(S6)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオン状態、並びに前記第2スイッチング素子(S2)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第7スイッチング素子(S7)をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1スイッチング素子(S1)、前記第2スイッチング素子(S2)、前記第7スイッチング素子(S7)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオン状態、並びに前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子(S1)、前記第2スイッチング素子(S2)、前記第7スイッチング素子(S7)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第4モード、
の4つのモードを使用して前記昇圧動作または前記降圧動作を実行する、
項目2から9のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、4つのモードを組み合わせて種々の制御が可能となる。
[項目11]
直列接続された2つ以上の前記スイッチング素子に対して、一つの前記第2ダイオード(De)が逆並列に接続される、
項目1に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、少ない第2ダイオード(De)で効率的にリカバリ損失を低減することができる。
[項目12]
前記スイッチング素子(S1-S8)は、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、
前記第1ダイオード(D1-D8)は、前記NチャンネルMOSFETの寄生ダイオードである、
項目1から11のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、寄生ダイオードに還流電流が流れることによるリカバリ損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 第1直流電源、 2 第2直流電源、 3 DC/DC変換装置、 30 DC/DC変換部、 31,32 フライングキャパシタ回路、 40 制御部、 C1,C2 フライングキャパシタ、 C3,C4 分割コンデンサ、 C5 入力コンデンサ、 C6 出力コンデンサ、 L1,L2 リアクトル、 S1-S8 第8スイッチング素子、 D1-D8 寄生ダイオード、 De1-De14 第14外付けダイオード。