(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
H02M3/00 C
(21)【出願番号】P 2020113382
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】白川 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕之
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/077958(WO,A1)
【文献】特開2015-173569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
H02J 7/00~ 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置のプラス端子に接続されたプラス端子と、前記蓄電装置のマイナス端子に接続されたマイナス端子とを有する電力変換部と、
前記蓄電装置のプラス端子と前記電力変換部のプラス端子との間、または、前記蓄電装置のマイナス端子と前記電力変換部のマイナス端子との間に挿入された第1スイッチと、
前記第1スイッチの両端間に直列接続された第2スイッチと抵抗とを有する突入電流防止回路と、
前記第1スイッチと前記第2スイッチ
をオフ状態
に制御したとき、前記蓄電装置と前記電力変換部のいずれかに電圧を印加させ、前記蓄電装置のプラス端子とマイナス端子の間の第1電圧および前記電力変換部のプラス端子とマイナス端子の間の第2電圧の第1比較結果にもとづいて、前記第1スイッチまたは前記突入電流防止回路の故障を検出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電力変換部に電圧を印加させた場合、前記第1比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より低ければ、前記第2スイッチをターンオンさせ、前記第1電圧と前記第2電圧の第2比較結果にもとづいて前記突入電流防止回路の故障を検出する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチまたは前記突入電流防止回路の短絡故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より低ければ、前記突入電流防止回路の開放故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチをターンオンさせ、前記第2スイッチをターンオフさせ、前記電力変換部に前記蓄電装置を充電させる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換部のプラス端子とマイナス端子の間に接続されたコンデンサと、
前記蓄電装置のプラス端子とマイナス端子の地絡を検出する地絡検出回路と、
をさらに備え、
前記電力変換部は、電圧を印加する場合、出力電流を所定電流値以下に制限し、
前記制御部は、前記第2スイッチをターンオンさせたときに前記地絡検出回路に地絡を検出させる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換部のプラス端子とマイナス端子の間に接続されたコンデンサをさらに備え、
前記制御部は、前記蓄電装置に電圧を印加させた場合、前記第1比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より高ければ、前記第2スイッチをターンオンさせ、前記第1電圧と前記第2電圧の第3比較結果にもとづいて前記突入電流防止回路の故障を検出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第3比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より高ければ、前記突入電流防止回路の開放故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第3比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチをターンオンさせ、前記第2スイッチをターンオフさせ、前記蓄電装置から供給された電力を前記電力変換部に変換させる、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1スイッチまたは前記突入電流防止回路の故障が検出された場合、前記制御部は、前記蓄電装置と前記電力変換部に電圧印加を停止させる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2スイッチは、
直列接続された第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを含み、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子は、ソース同士が接続されている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流防止回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車(以下、電気自動車という)の普及に伴い、電気自動車の蓄電池に蓄えた電力を住宅内の電気製品などに供給するV2H(Vehicle-to-Home)機器への関心が高まっている。V2H機器は、家庭用の商用電源から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力で電気自動車の蓄電池を充電することもできる。
【0003】
電気自動車とV2H機器はケーブルで接続され、蓄電池の充電時または放電時、突入電流を抑制するために突入電流防止回路をターンオンさせてからリレーをターンオンさせる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
V2H機器において、電流経路上のリレーや突入電流防止回路の故障を検出することが望まれる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流経路上の部品の故障を検出できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電力変換装置は、蓄電装置のプラス端子に接続されたプラス端子と、蓄電装置のマイナス端子に接続されたマイナス端子とを有する電力変換部と、蓄電装置のプラス端子と電力変換部のプラス端子との間、または、蓄電装置のマイナス端子と電力変換部のマイナス端子との間に挿入された第1スイッチと、第1スイッチの両端間に直列接続された第2スイッチと抵抗とを有する突入電流防止回路と、第1スイッチと第2スイッチがオフ状態のとき、蓄電装置と電力変換部のいずれかに電圧を印加させ、蓄電装置のプラス端子とマイナス端子の間の第1電圧および電力変換部のプラス端子とマイナス端子の間の第2電圧の第1比較結果にもとづいて、第1スイッチまたは突入電流防止回路の故障を検出する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電流経路上の部品の故障を検出できる電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電力変換システムの構成を示す図である。
【
図2】充電指令を受けた場合の
図1の電力変換装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のS12で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図4】
図2のS12で第1電圧VA<第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図5】
図2のS22で第1電圧VA<第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図6】
図2のS22で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図7】放電指令を受けた場合の
図1の電力変換装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のS42で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図9】
図7のS42で第1電圧VA>第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図10】
図7のS52で第1電圧VA>第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【
図11】
図7のS52で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施の形態に係る電力変換システム1の構成を示す。電力変換システム1は、V2Hシステムであり、蓄電装置10と電力変換装置30を備える。蓄電装置10は、例えば電気自動車などの動力源として車両に搭載できる。蓄電装置10と電力変換装置30は、充放電ケーブル60で電気的に接続できる。
【0011】
電力変換装置30は、EVPS(Electric Vehicle Power System)とも呼ばれ、住宅などに設置できる。電力変換装置30は、蓄電装置10に蓄えられた電力を住宅内の電気製品などに供給すること、および、家庭用の商用電源の電力を用いて蓄電装置10を充電することができる。
【0012】
蓄電装置10は、蓄電池12、第3スイッチRY1a、第3スイッチRY1b、および、突入電流防止回路14を有する。
【0013】
蓄電池12は、例えば、充放電可能な二次電池である直列接続された複数の電池セルを有する。蓄電池12の電圧は、たとえば100~400Vであってよい。
【0014】
第3スイッチRY1aは、コンタクタであり、蓄電池12のプラス端子18aと蓄電装置10のプラス端子20aの間に接続され、これらのプラス端子間をオン状態で導通させ、オフ状態で非導通にさせる。
【0015】
第3スイッチRY1bは、コンタクタであり、蓄電池12のマイナス端子18bと蓄電装置10のマイナス端子20bの間に接続され、これらのマイナス端子間をオン状態で導通させ、オフ状態で非導通にさせる。
【0016】
第3スイッチRY1aと第3スイッチRY1bは、制御信号S1に応じてそれぞれ独立してオン状態またはオフ状態に制御される。
【0017】
突入電流防止回路14は、第3スイッチRY1bの両端間に接続される。突入電流防止回路14は、直列接続された第4スイッチ16と抵抗R2を有する。
【0018】
第4スイッチ16は、第3スイッチRY1bの両端間をオン状態で導通させ、オフ状態で非導通にさせる。第4スイッチ16は、制御信号S3に応じてオン状態またはオフ状態に制御される。
【0019】
第4スイッチ16は、直列接続されたスイッチング素子SW3とスイッチング素子SW4を含む。スイッチング素子SW3とスイッチング素子SW4は、N型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。これにより、数アンペアの電流を流すことができる第4スイッチ16を安価に構成できる。
【0020】
スイッチング素子SW3のドレインは蓄電池12のマイナス端子18bに接続され、スイッチング素子SW3のソースはスイッチング素子SW4のソースに接続される。スイッチング素子SW4のドレインは抵抗R2に接続される。ソース同士が接続されるため、スイッチング素子SW3とスイッチング素子SW4は、共通の制御信号S3によりオン状態またはオフ状態に制御できる。
【0021】
スイッチング素子SW3には、ソースからドレイン方向を順方向とする寄生のダイオードD3が並列に形成される。スイッチング素子SW4には、ソースからドレイン方向を順方向とする寄生のダイオードD4が並列に形成される。
【0022】
抵抗R2は、突入電流を抑制できる値を有する。
【0023】
電力変換装置30は、第1スイッチRY2、突入電流防止回路32、放電回路35、電力変換部36、地絡検出回路38、コンデンサC2、電圧検出部VT1、電圧検出部VT2、および、制御部40を備える。
【0024】
充放電ケーブル60により、電力変換装置30のプラス端子42aは蓄電装置10のプラス端子20aに接続され、電力変換装置30のマイナス端子42bは蓄電装置10のマイナス端子20bに接続される。充放電ケーブル60は、2本のケーブル間の寄生成分である浮遊容量C1を有する。浮遊容量C1の容量値は、コンデンサC2の容量値より小さい。
【0025】
電力変換装置30のプラス端子42aは、電力変換部36のプラス端子44aに接続される。
【0026】
第1スイッチRY2は、コンタクタであり、電力変換装置30のマイナス端子42bと電力変換部36のマイナス端子44bの間に接続され、これらのマイナス端子間をオン状態で導通させ、オフ状態で非導通にさせる。第1スイッチRY2は、制御信号S2に応じてオン状態またはオフ状態に制御される。
【0027】
突入電流防止回路32は、第1スイッチRY2の両端間に直列接続された第2スイッチ34と抵抗R1とを有する。
【0028】
第2スイッチ34は、第1スイッチRY2の両端間をオン状態で導通させ、オフ状態で非導通にさせる。第2スイッチ34は、制御信号S4に応じてオン状態またはオフ状態に制御される。
【0029】
第2スイッチ34は、直列接続されたスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2を含む。スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2もN型MOSFETである。これにより、数アンペアの電流を流すことができる第2スイッチ34を安価に構成できる。
【0030】
スイッチング素子SW1のドレインはマイナス端子42bに接続され、スイッチング素子SW1のソースはスイッチング素子SW2のソースに接続される。スイッチング素子SW2のドレインは抵抗R1に接続される。ソース同士が接続されるため、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2は、共通の制御信号S4によりオン状態またはオフ状態に制御できる。
【0031】
スイッチング素子SW1には、ソースからドレイン方向を順方向とする寄生のダイオードD1が並列に形成される。スイッチング素子SW2には、ソースからドレイン方向を順方向とする寄生のダイオードD2が並列に形成される。
【0032】
抵抗R1は、突入電流を抑制できる値を有する。
【0033】
コンデンサC2は、電力変換部36のプラス端子44aとマイナス端子44bの間に接続される。コンデンサC2は、比較的大きな電力を瞬間的に電力変換部36に供給できるように、例えば数百μF程度の静電容量を有してよい。
【0034】
放電回路35は、電力変換部36のプラス端子44aとマイナス端子44bの間に接続される。放電回路35は、プラス端子44aとマイナス端子44bの間に直列接続された電流制限用の抵抗とスイッチング素子を有する。スイッチング素子はN型MOSFETなどである。制御部40によりスイッチング素子が一時的にオン状態に制御されることで、コンデンサC2の電荷は放電回路35を介して放電される。スイッチング素子がオフ状態の場合、放電回路35の両端間は非導通である。
【0035】
電力変換部36は、双方向絶縁DC/DCコンバータである。電力変換部36は、蓄電装置10の放電時、蓄電装置10およびコンデンサC2からプラス端子44aとマイナス端子44b間に供給された直流電圧を異なる値の直流電圧に変換し、変換された直流電圧を双方向インバータ(図示せず)などに供給する。双方向インバータは、電力変換部36から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を住宅内の電気製品などに供給する。
【0036】
双方向インバータは、蓄電装置10の充電時、商用電源の交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力を電力変換部36に供給する。電力変換部36は、蓄電装置10の充電時、双方向インバータから供給された直流電圧を異なる値の直流電圧に変換し、変換された直流電圧をプラス端子44aとマイナス端子44b間から蓄電装置10に供給する。
【0037】
蓄電池12と電力変換部36の間の電流経路は、大地から絶縁されている。
【0038】
地絡検出回路38は、電力変換装置30のプラス端子42aとマイナス端子42bの間に接続され、プラス端子42aとマイナス端子42bから大地に流れる電流を検出することで、プラス端子42aとマイナス端子42bの地絡を検出する。これは、地絡検出回路38が蓄電装置10のプラス端子20aとマイナス端子20bの地絡を検出することに相当する。地絡検出回路38には、周知の回路を利用できる。
【0039】
電圧検出部VT1は、電力変換装置30のプラス端子42aとマイナス端子42bの間の第1電圧VAを検出し、検出した第1電圧VAを制御部40に供給する。電圧検出部VT2は、電力変換部36のプラス端子42aとマイナス端子42bの間の第2電圧VBを検出し、検出した第2電圧VBを制御部40に供給する。
【0040】
制御部40は、蓄電装置10と電力変換装置30の各部の動作を制御するとともに、第1電圧VAと第2電圧VBの比較結果にもとづいて第1スイッチRY2または突入電流防止回路32の故障を検出する。
【0041】
制御部40は、第3スイッチRY1aと第3スイッチRY1bに制御信号S1を供給し、第1スイッチRY2に制御信号S2を供給し、突入電流防止回路14に制御信号S3を供給し、突入電流防止回路32に制御信号S4を供給する。具体的な制御は後述する。
【0042】
制御部40の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0043】
次に、電力変換システム1の動作を説明する。
図2は、充電指令を受けた場合の
図1の電力変換装置30の動作を示すフローチャートである。ユーザにより蓄電装置10と電力変換装置30が充放電ケーブル60により接続され、充電指令が制御部40に入力されると、制御部40は、このフローチャートの処理を開始する。
【0044】
最初、制御部40は、第3スイッチRY1a、第3スイッチRY1b、第1スイッチRY2、スイッチング素子SW1~SW4をオフ状態に制御する。制御部40は、電力変換部36にプラス端子44aとマイナス端子44bから所定電圧を印加させる(S10)。所定電圧は、地絡検出を行うことができる直流電圧であり、蓄電池12の電圧より高いことが好ましく、たとえば500Vであってよい。電力変換部36は、電圧を印加する場合、出力電流を所定電流値以下に制限する。これにより、コンデンサC2に流れる電流が所定電流値以下になるため、突入電流を防止できる。
【0045】
制御部40は、第1電圧VAと第2電圧VBを比較し(S12)、得られた第1比較結果において第1電圧VAと第2電圧VBが同等であれば、エラー発報する(S14)。同等とは、誤差の範囲で等しいことをいう。制御部40は、エラーとして、第1スイッチRY2または突入電流防止回路32の短絡故障を示す情報を出力する。よって、第1スイッチRY2または突入電流防止回路32の短絡故障を特定できる。この情報は、第1スイッチRY2の溶着故障またはスイッチング素子SW1の短絡故障が発生したことを示す情報を含んでもよい。制御部40は、電力変換部36に所定電圧の印加を停止させ(S16)、処理を終了する。所定電圧の印加が停止することで、安全性を高めることができる。S16において、放電回路35によりコンデンサC2に蓄えられた電荷を放電してもよい。これにより、さらに安全性を高めることができる。
【0046】
図3は、
図2のS12で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す。電力変換部36のプラス端子44a、浮遊容量C1、短絡故障したスイッチング素子SW1、ダイオードD2、抵抗R1、マイナス端子44bの経路、または、プラス端子44a、浮遊容量C1、溶着故障した第1スイッチRY2、マイナス端子44bの経路で電流が流れる。そのため、浮遊容量C1の両端間の電圧、すなわち第1電圧VAは所定電圧になる。第1スイッチRY2が溶着していても、電力変換部36が出力電流を制限するため、浮遊容量C1に突入電流が流れない。
【0047】
図2に戻る。S12で第1比較結果において第1電圧VAが第2電圧VBより低ければ、制御部40は、地絡検出回路38に地絡検出を開始させ(S18)、スイッチング素子SW1,SW2をターンオンさせる(S20)。スイッチング素子SW1,SW2がターンオンすると、抵抗R1で電流が制限されることで突入電流が防止されつつ、浮遊容量C1が所定電圧に充電される。地絡検出回路38の両端間の電圧がゼロから所定電圧に立ち上がったとき、地絡検出回路38は地絡を検出できる。浮遊容量C1の充電時間は、コンデンサC2の充電時間より大幅に短いため、電力変換部36が浮遊容量C1とコンデンサC2を同時に充電する場合と比較して、より急峻な立ち上がりの電圧にもとづいて地絡を検出できる。図示は省略するが、地絡が検出された場合、S16に移る。地絡が検出されなければ、S22に移る。
【0048】
図4は、
図2のS12で第1電圧VA<第2電圧VBの場合の状態を示す。第1スイッチRY2とスイッチング素子SW1,SW2がオフ状態であるため、電力変換部36から浮遊容量C1に電流が流れず、第1電圧VAはほぼゼロである。
【0049】
図2に戻る。制御部40は、第1電圧VAと第2電圧VBを比較し(S22)、得られた第2比較結果において第1電圧VAが第2電圧VBより低ければ、エラー発報し(S24)、S16に移る。制御部40は、エラーとして、突入電流防止回路32の開放故障を示す情報を出力する。よって、突入電流防止回路32の開放故障を特定できる。この情報は、スイッチング素子SW1の開放故障を示す情報を含んでもよい。
【0050】
図5は、
図2のS22で第1電圧VA<第2電圧VBの場合の状態を示す。第1スイッチRY2がオフ状態であり、スイッチング素子SW1が開放故障しているため、電力変換部36から浮遊容量C1に電流が流れず、第1電圧VAはほぼゼロである。
【0051】
図2に戻る。S22で第2比較結果において第1電圧VAと第2電圧VBが同等であれば、制御部40は、第1スイッチRY2をターンオンさせ、スイッチング素子SW1,SW2をターンオフさせ(S26)、電力変換部36に所定電圧の印加を停止させ、放電回路35によりコンデンサC2に蓄えられた電荷を放電する(S28)。制御部40は、電力変換部36に充電モードで運転開始させ(S30)、蓄電装置10を充電させる。このとき、電力変換部36が出力電流を制限して浮遊容量C1とコンデンサC2を充電してから、制御部40が第3スイッチRY1a,RY1bをターンオンさせ、突入電流を防止する。このように、突入電流防止回路32が故障していないことを特定でき、蓄電装置10を充電できる。
【0052】
図6は、
図2のS22で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す。浮遊容量C1の両端間の電圧、すなわち第1電圧VAは所定電圧になる。
【0053】
図7は、放電指令を受けた場合の
図1の電力変換装置30の動作を示すフローチャートである。ユーザにより蓄電装置10と電力変換装置30が充放電ケーブル60により接続され、放電指令が制御部40に入力されると、制御部40は、このフローチャートの処理を開始する。
【0054】
制御部40は、第3スイッチRY1a、スイッチング素子SW3,SW4をターンオンして、蓄電装置10に電圧を印加させる(S40)。このとき制御部40は、第3スイッチRY1b、第1スイッチRY2、スイッチング素子SW1,SW2をオフ状態に制御する。抵抗R2で電流が制限されることで突入電流が防止されつつ、浮遊容量C1が蓄電池12の出力電圧に充電される。
【0055】
制御部40は、第1電圧VAと第2電圧VBを比較し(S42)、得られた第1比較結果において第1電圧VAと第2電圧VBが同等であれば、エラー発報する(S44)。制御部40は、エラーとして、第1スイッチRY2または突入電流防止回路32の短絡故障を示す情報を出力する。よって、第1スイッチRY2または突入電流防止回路32の短絡故障を特定できる。この情報は、第1スイッチRY2の溶着故障またはスイッチング素子SW2の短絡故障が発生したことを示す情報を含んでもよい。制御部40は、第3スイッチRY1aとスイッチング素子SW3,SW4をターンオフして蓄電装置10に電圧印加を停止させ(S46)、処理を終了する。
【0056】
図8は、
図7のS42で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す。蓄電池12のプラス端子18a、第3スイッチRY1a、コンデンサC2、抵抗R1、短絡故障したスイッチング素子SW2、ダイオードD1、突入電流防止回路14、マイナス端子18bの経路、または、プラス端子18a、第3スイッチRY1a、コンデンサC2、溶着故障した第1スイッチRY2、突入電流防止回路14、マイナス端子18bの経路で電流が流れる。そのため、コンデンサC2の両端間の電圧、すなわち第2電圧VBは蓄電池12の電圧になる。抵抗R2が電流を制限するため、浮遊容量C1とコンデンサC2に突入電流が流れない。
【0057】
図7に戻る。S42で第1比較結果において第1電圧VAが第2電圧VBより高ければ、制御部40は、スイッチング素子SW1,SW2をターンオンさせる(S50)。スイッチング素子SW1,SW2がターンオンすると、抵抗R1と抵抗R2で電流が制限されることで突入電流が防止されつつ、コンデンサC2が蓄電池12の電圧に充電される。
【0058】
図9は、
図7のS42で第1電圧VA>第2電圧VBの場合の状態を示す。第1スイッチRY2とスイッチング素子SW1,SW2がオフ状態であるため、蓄電池12からコンデンサC2に電流が流れず、第2電圧VBはほぼゼロである。
【0059】
図7に戻る。制御部40は、第1電圧VAと第2電圧VBを比較し(S52)、得られた第2比較結果において第1電圧VAが第2電圧VBより高ければ、エラー発報し(S54)、S46に移る。制御部40は、エラーとして、突入電流防止回路32の開放故障を示す情報を出力する。よって、突入電流防止回路32の開放故障を特定できる。この情報は、スイッチング素子SW2の開放故障を示す情報を含んでもよい。
【0060】
図10は、
図7のS52で第1電圧VA>第2電圧VBの場合の状態を示す。第1スイッチRY2がオフ状態であり、スイッチング素子SW2が開放故障しているため、蓄電池12からコンデンサC2に電流が流れず、第2電圧VBはほぼゼロである。
【0061】
図7に戻る。S52で第2比較結果において第1電圧VAと第2電圧VBが同等であれば、制御部40は、第3スイッチRY1bと第1スイッチRY2をターンオンさせ、スイッチング素子SW1~SW4をターンオフさせ(S56)、電力変換部36に放電モードで運転開始させ(S60)、蓄電装置10を放電させる。このように、突入電流防止回路32が故障していないことを特定でき、蓄電装置10を放電できる。浮遊容量C1とコンデンサC2は蓄電池12の電圧に充電されているので、第3スイッチRY1bと第1スイッチRY2がターンオンしたときの突入電流を防止できる。
【0062】
図11は、
図7のS52で第1電圧VA=第2電圧VBの場合の状態を示す。コンデンサC2の両端間の電圧、すなわち第2電圧VBは蓄電池12の電圧になる。
【0063】
本実施の形態によれば、蓄電装置10への充電開始前と蓄電装置10の放電開始前に、電力変換装置30の電流経路上の部品の故障を検出できる。
【0064】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0065】
たとえば、突入電流防止回路32において、第2スイッチ34と抵抗R1の接続位置を入れ替えてもよい。つまり、電力変換装置30のマイナス端子42bから電力変換部36のマイナス端子44bの方向に、抵抗R1、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW2の順に接続されてもよい。突入電流防止回路14においても同様に、第4スイッチ16と抵抗R2の接続位置を入れ替えてもよい。
【0066】
突入電流防止回路32において、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2の間に抵抗R1を接続してもよい。突入電流防止回路14において、スイッチング素子SW3とスイッチング素子SW4の間に抵抗R2を接続してもよい。
【0067】
電力変換装置30のプラス端子42aと電力変換部36のプラス端子44aとの間に別のスイッチを挿入してもよい。第1スイッチRY2は、電力変換装置30のマイナス端子42bと電力変換部36のマイナス端子44bとの間に替えて、電力変換装置30のプラス端子42aと電力変換部36のプラス端子44aとの間に挿入されてもよい。この場合にも、マイナス端子42bとマイナス端子44bとの間に別のスイッチを挿入してもよい。
【0068】
第2スイッチ34と第4スイッチ16は、それぞれIGBTなどの半導体素子またはコンタクタで構成されてもよい。
これらの変形例では、電力変換システム1の構成の自由度を向上できる。
【0069】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0070】
[項目1]
蓄電装置(10)のプラス端子に接続されたプラス端子と、前記蓄電装置(10)のマイナス端子に接続されたマイナス端子とを有する電力変換部(36)と、
前記蓄電装置(10)のプラス端子と前記電力変換部(36)のプラス端子との間、または、前記蓄電装置(10)のマイナス端子と前記電力変換部(36)のマイナス端子との間に挿入された第1スイッチ(RY2)と、
前記第1スイッチ(RY2)の両端間に直列接続された第2スイッチ(34)と抵抗(R1)とを有する突入電流防止回路(32)と、
前記第1スイッチ(RY2)と前記第2スイッチ(34)がオフ状態のとき、前記蓄電装置(10)と前記電力変換部(36)のいずれかに電圧を印加させ、前記蓄電装置(10)のプラス端子とマイナス端子の間の第1電圧および前記電力変換部(36)のプラス端子とマイナス端子の間の第2電圧の第1比較結果にもとづいて、前記第1スイッチ(RY2)または前記突入電流防止回路(32)の故障を検出する制御部(40)と、
を備えることを特徴とする電力変換装置(30)。
[項目2]
前記制御部(40)は、前記第1比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチ(RY1)または前記突入電流防止回路(32)の短絡故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(30)。
[項目3]
前記制御部(40)は、前記電力変換部(36)に電圧を印加させた場合、前記第1比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より低ければ、前記第2スイッチ(34)をターンオンさせ、前記第1電圧と前記第2電圧の第2比較結果にもとづいて前記突入電流防止回路(32)の故障を検出する、
ことを特徴とする項目1または2に記載の電力変換装置(30)。
[項目4]
前記制御部(40)は、前記第2比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より低ければ、前記突入電流防止回路(32)の開放故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする項目3に記載の電力変換装置(30)。
[項目5]
前記制御部(40)は、前記第2比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチ(RY1)をターンオンさせ、前記第2スイッチ(34)をターンオフさせ、前記電力変換部(36)に前記蓄電装置(10)を充電させる、
ことを特徴とする項目3または4に記載の電力変換装置(30)。
[項目6]
前記電力変換部(26)のプラス端子とマイナス端子の間に接続されたコンデンサ(C2)と、
前記蓄電装置(10)のプラス端子とマイナス端子の地絡を検出する地絡検出回路(38)と、
をさらに備え、
前記電力変換部(36)は、電圧を印加する場合、出力電流を所定電流値以下に制限し、
前記制御部(40)は、前記第2スイッチ(34)をターンオンさせたときに前記地絡検出回路(38)に地絡を検出させる、
ことを特徴とする項目3から5のいずれかに記載の電力変換装置(30)。
[項目7]
前記電力変換部(36)のプラス端子とマイナス端子の間に接続されたコンデンサ(C2)をさらに備え、
前記制御部(40)は、前記蓄電装置(10)に電圧を印加させた場合、前記第1比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より高ければ、前記第2スイッチ(34)をターンオンさせ、前記第1電圧と前記第2電圧の第2比較結果にもとづいて前記突入電流防止回路(32)の故障を検出する、
ことを特徴とする項目1または2に記載の電力変換装置(30)。
[項目8]
前記制御部(40)は、前記第2比較結果において前記第1電圧が前記第2電圧より高ければ、前記突入電流防止回路(32)の開放故障を示す情報を出力する、
ことを特徴とする項目7に記載の電力変換装置(30)。
[項目9]
前記制御部(40)は、前記第2比較結果において前記第1電圧と前記第2電圧が同等であれば、前記第1スイッチ(RY2)をターンオンさせ、前記第2スイッチ(34)をターンオフさせ、前記蓄電装置(10)から供給された電力を前記電力変換部(36)に変換させる、
ことを特徴とする項目7または8に記載の電力変換装置(30)。
[項目10]
故障が検出された場合、前記制御部(40)は、前記蓄電装置(10)と前記電力変換部(36)に電圧印加を停止させる、
ことを特徴とする項目1から9のいずれかに記載の電力変換装置(30)。
[項目11]
前記第2スイッチ(34)は、
直列接続された第1スイッチング素子(SW1)と第2スイッチング素子(SW2)とを含み、
前記第1スイッチング素子(SW1)と前記第2スイッチング素子(SW2)は、ソース同士が接続されている、
ことを特徴とする項目1から10のいずれかに記載の電力変換装置(30)。
【符号の説明】
【0071】
C1…浮遊容量、C2…コンデンサ、R1,R2…抵抗、RY1a,RY1b…第3スイッチ、SW1~SW4…スイッチング素子、RY2…第1スイッチ、10…蓄電装置、12…蓄電池、14…突入電流防止回路、16…第4スイッチ、18a…プラス端子、18b…マイナス端子、20a…プラス端子、20b…マイナス端子、30…電力変換装置、32…突入電流防止回路、34…第2スイッチ、36…電力変換部、38…地絡検出回路、40…制御部、42a…プラス端子、42b…マイナス端子、44a…プラス端子、44b…マイナス端子、60…充放電ケーブル。