(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/80 20100101AFI20240405BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240405BHJP
B62K 23/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B62M6/80
B62M6/45
B62K23/02
(21)【出願番号】P 2020085267
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 裕二
(72)【発明者】
【氏名】藤村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 登喜子
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕俊
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177746(JP,A)
【文献】特表2018-525276(JP,A)
【文献】特開2019-177719(JP,A)
【文献】特開2016-135674(JP,A)
【文献】国際公開第2021/186920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40- 6/90
B62K 11/14,23/00-23/08
B62J 6/16- 6/165
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルへの踏力による人力駆動力に、前記踏力の大きさに応じてモータから出力される第1補助動力を加えて走行する第1モードと、前記モータによる第2補助動力を出力して押し歩く、または前記第2補助動力を出力して自走させる第2モードとを実行可能な電動アシスト自転車であって、
ブレーキレバー装置が有するリング部であって、
ハンドルに前記ブレーキレバー装置を取り付けるブレーキリング部と、
前記第2モードの実行を指示するための手動スイッチと、が設けられており、
前記手動スイッチは、
前記ハンドルに取り付けられたグリップの上端縁の最下端より下側であって、上から見て前記グリップの中心線よりサドル側にオフセットされた位置に配置された操作部を有し、
前記手動スイッチは、前記グリップと前記ブレーキリング部との間に取り付けられる、
電動アシスト自転車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アシスト自転車において、
前記手動スイッチの操作方向は、上から下への押し下げ方向、または前記手動スイッチに対し前記サドル側から前記サドルと反対側へ押す方向である、
電動アシスト自転車。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動アシスト自転車において、
前記手動スイッチには、取り付けバンドが設けられており、
前記取り付けバンドが、前記ハンドルに取り付けられるリング部であるスイッチリング部を有すると共に、前記スイッチリング部は、前記グリップと前記ブレーキリング部との間に取り付けられる、
電動アシスト自転車。
【請求項4】
請求項3に記載の電動アシスト自転車において、
前記手動スイッチは、ケースを有し、
前記操作部は、前記ケースの上面より上側に突出するように、前記ケースに押下可能に保持されており、
前記スイッチリング部は、前記ケースの外側に前記ケースと一体に形成されており、
前記ケース及び前記スイッチリング部を上から見た状態で前記ケースが前記スイッチリング部の
前記サドル側に配置され、
前記操作部の前記グリップ側の半部は、前記スイッチリング部の前記グリップに最も近い端縁より前記グリップ側に配置される、
電動アシスト自転車。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、
前記操作部は、ユーザが自転車の左右の一方側に降りた状態で、前記ハンドルを握ったときに親指により押下可能な位置に配置される、
電動アシスト自転車。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車において、
前記手動スイッチは、押しボタン式である、
電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動アシスト自転車に関し、特に、モータによる補助動力を出力して押し歩く、または補助動力を出力して自走させるモードを実行可能な電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動アシスト自転車において、ハンドルバー(ハンドル)に取り付けたグリップの近傍にコントロールレバーを配置し、そのコントロールレバーの変位量の検出による出力電圧の変化に基づいて、電動モータによる押し歩き補助力を制御することが記載されている。コントロールレバーは、ハンドルバーの上端よりも上側に回動可能に設けられている(特許文献1の
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、押し歩きモータ制御を実行可能な状態で、コントロールレバーが回動操作されたときに、コントロールレバーの変位量がポジションセンサにより検出され、変位量の増大に応じて電動モータの駆動力または車速が増加される。しかしながら、特許文献1に開示された構成において、押し歩きの制御を指示するコントロールレバーがハンドルに取り付けたグリップの上端より上側に設けられていると、ユーザがハンドルに取り付けたグリップを握りながら、コントロールレバーを操作する操作を行いにくい。これにより、ユーザがグリップを握って押し歩きの補助動力を出力させる指示を行うときに、指や腕が無理な姿勢となることで、長時間その指示を出し続けることが困難であり、かつ、グリップを握る力が小さく不安定になる可能性がある。これにより、ユーザの負担の軽減及び安全性の向上の面から改良の余地がある。また、ユーザが自転車から降りて補助動力を出力して自走させることが考えられるが、その指示を行う場合も同様の不都合が生じる。
【0005】
本開示の目的は、モータによる補助動力を出力して押し歩く、または補助動力を出力して自走させるモードを実行するためのユーザの負担を軽減すると共に、安全性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である電動アシスト自転車は、ペダルへの踏力による人力駆動力に、踏力の大きさに応じてモータから出力される第1補助動力を加えて走行する第1モードと、モータによる第2補助動力を出力して押し歩く、または第2補助動力を出力して自走させる第2モードとを実行可能な電動アシスト自転車であって、第2モードの実行を指示するための手動スイッチが設けられており、手動スイッチは、ハンドルに取り付けられたグリップの上端縁の最下端より下側であって、上から見てグリップの中心線よりサドル側にオフセットされた位置に配置された操作部を有する、電動アシスト自転車である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電動アシスト自転車によれば、モータによる補助動力を出力して押し歩く、または補助動力を出力して自走させる第2モードを実行するときに、ユーザがグリップを握りながら、親指での手動スイッチの操作を行いやすくなる。これによりユーザが、手動スイッチを用いて第2モードの実行を指示するときに、指や腕にかかる負担を軽減できるので、手動スイッチを長時間押し続けやすくなる。また、ユーザがグリップを握る力を強く、かつ安定させることができるので、自転車を安定して保持しやすくなり、安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の電動アシスト自転車を示す図である。
【
図2A】実施形態の電動アシスト自転車において、ハンドルを上側から見た図である。
【
図2B】実施形態の電動アシスト自転車において、ハンドルの一方側端部に取り付けられた手動スイッチを上側から見た図である。
【
図3】
図2Bのハンドルの一方側端部及び手動スイッチをサドル側の上側から見た図である。
【
図4】
図3から手動スイッチを取り除いて示す図である。
【
図5】実施形態の電動アシスト自転車において、ユーザが自転車を降りた状態でハンドルの一方側端部のグリップを握った状態を上側から見た図である。
【
図6】ユーザが手動スイッチの操作部を押し下げた状態を示している
図5に対応する図である。
【
図7】ユーザが手動スイッチの操作部を押し下げた状態を示している斜視図である。
【
図8】実施形態の電動アシスト自転車の制御装置を中心とする構成のブロック図である。
【
図9】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図2Bに対応する図である。
【
図10】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図9の下側から見た図である。
【
図11】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、ユーザが自転車を降りた状態でハンドルの一方側端部のグリップを握った状態を上側から見た図である。
【
図12A】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図2Bに対応する図である。
【
図12B】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図12Aの下側から見た図である。
【
図13】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、ハンドルを上側から見た図である。
【
図14】実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図13の矢印A方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る実施形態の電動アシスト自転車について詳細に説明する。以下で説明する材料、形状及び配置位置は、説明のための例示であって、電動アシスト自転車の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0010】
図1は、本開示に係る実施形態の電動アシスト自転車1を示す図である。なお、本開示に係る電動アシスト自転車は、
図1に例示するようなシティーサイクルに限定されず、例えば、スポーツサイクル、折り畳み式の自転車等であってもよい。以下の説明で、上下、左右、前後は、通常の使用状態、すなわち自転車を直進走行時と同じ姿勢で立たせた状態での、上下、左右、前後をそれぞれ意味する。例えば、上は、直進走行時と同じ姿勢において、鉛直方向上側を意味する。
【0011】
図1に例示するように、電動アシスト自転車1は、ペダル7の踏み込みのアシストモードとしての第1モードと、自転車にユーザが乗らない状態でモータ21(
図8)に補助動力を出力させて走行させる第2モードとを実行可能な自転車である。「第1モード」は、ペダル7への踏力による人力駆動力に、踏力の大きさに応じてモータ21から出力される第1補助動力を加えて走行する。「第2モード」は、「押し歩きモード」または「自走モード」である。「押し歩きモード」は、電動アシスト自転車1を人(ユーザ)が押して歩くときに、車体に、モータ21による第2補助動力を付加して押し歩くモードである。押し歩きモードは、人が電動アシスト自転車1に乗車しておらず、電動アシスト自転車1の車体を押しながら歩く場合に実行される。「自走モード」は、電動アシスト自転車1を人が支えた状態で、車体に、モータ21による第2補助動力を付加して自走させるモードである。自走モードは、押し歩きモードと同様に、人が電動アシスト自転車1に乗車しておらず、電動アシスト自転車1の車体を支えながら歩く場合に実行される。自走モードにおいて、人は、車体を前方に押す力を加えていない。グリップ4a(
図2)等に設けられたセンサで自転車の前方に加わる力を検出し、その大きさによって、「押し歩きモード」と「自走モード」とを判別してもよい。「押し歩きモード」と「自走モード」とを判別せずに第2モードとして実行してもよい。後述するように、実施形態の電動アシスト自転車1は、グリップ4aの近くに、第2モードの実行を指示するための手動スイッチ25(
図2、
図3)が設けられる。
【0012】
電動アシスト自転車1は、フレーム2、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、クランクアーム6、ペダル7、バッテリユニット10、及びモータユニット20を備える。電動アシスト自転車1は、第1モードが実行されるときに、ユーザがペダル7を踏む力(踏力)をモータユニット20のモータ21(
図3)によりアシストする。実施形態では、ペダル7の踏力及びモータ21の出力が、チェーン8を介して後輪3bに伝達される。
【0013】
フレーム2は、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5等を連結し、バッテリユニット10及びモータユニット20を支持する。フレーム2は、複数のパイプで構成される。本実施形態では、複数のパイプとして、ヘッドパイプ2a、前フォーク2b、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2f、及びボトムブラケット(図示せず)が設けられている。ボトムブラケットは、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、及びチェーンステー2eを繋ぐパイプである。
【0014】
ハンドル4の下端にはステム11を介してステアリングコラム12が連結される。ヘッドパイプ2aの内側には、ステアリングコラム12が回転可能に挿通されて、ステアリングコラム12の下端部に前フォーク2bを支持する。前フォーク2bは、前輪3aを回転可能に支持する一対のレッグを有する。
【0015】
ダウンパイプ2cは、ヘッドパイプ2aとボトムブラケットを繋ぐパイプである。ダウンパイプ2cは、電動アシスト自転車1の前方に近づくほど上方に位置するように傾斜している。シートパイプ2dは、サドル5を保持するパイプである。サドル5は、ユーザが座る部材である。実施形態では、バッテリユニット10がシートパイプ2dに取り付けられ、モータユニット20がボトムブラケットに取り付けられている。
【0016】
チェーンステー2eは、シートステー2fとボトムブラケットを繋ぐパイプである。シートステー2fも、チェーンステー2eと同様に、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。チェーンステー2eの後方端部には、後輪3bが回転可能に支持されている。
【0017】
電動アシスト自転車1は、クランクアーム6の一端が取り付けられる図示しない入力軸と、入力軸の回転に伴って回転する駆動スプロケットと、後輪3bに設けられた後輪スプロケットとを備え(いずれも図示せず)、駆動スプロケットと後輪スプロケットがチェーン8を介して連結されている。なお、クランクアーム6及びその他部に取り付けられたペダル7は、電動アシスト自転車1の左右に1つずつ設けられ、一対のクランクアーム6の一端部同士は、入力軸で連結されている。本実施形態では、モータ21の出力としての動力が、減速歯車等を介して駆動スプロケットに伝達され、チェーン8を介して後輪3bに伝達される。
【0018】
バッテリユニット10は、少なくともモータユニット20に電力を供給する電源装置である。バッテリユニット10は、前照灯9等の、モータユニット20以外の機器に電力を供給する構成としてもよい。
【0019】
モータユニット20は、ペダル7の踏力をアシストする駆動ユニットである。モータユニット20は、例えば、上記入力軸に作用するトルクである踏力及び入力軸の単位時間当たりの回転数に基づいて、モータ21を駆動させるように、その出力が制御される。モータ21の駆動は、後述する制御装置40(
図8)によって制御される。制御装置40は、少なくとも一部が、モータユニット20の筐体内にモータ21(
図8)と共に収納されて、モータ21とユニット化されてもよい。
【0020】
図2Aは、実施形態において、ハンドル4を上側から見た図である。
図2Bは、ハンドル4の一方側端部に取り付けられた手動スイッチ25を上側から見た図である。
図3は、
図2Bのハンドル4の一方側端部及び手動スイッチ25を後側の上側から見た図である。
図4は、
図3から手動スイッチ25を取り除いて示す図である。
【0021】
図2Aに示すように、ハンドル4の両端部には、グリップ4a及びブレーキレバー装置14、15が取り付けられている。本例では、ハンドル4が
図1に示すように、左右方向一方側から見た場合に、左右方向両側部分がステム11から上側に延びて先端側で後方に向かうように略直角に曲げられており、
図2Aに示すように上から見た場合に、U字形で左右方向両端部分が左右方向外端に向かって後側に傾斜しているアップ型ハンドルである場合を説明する。グリップ4aはユーザが乗車した状態で、手で握る部分である。グリップ4aは、ユーザが自転車から降りて自転車を押し歩きする場合にもユーザが握る部分として使用される。一方側(
図2Aの左側の)ブレーキレバー装置14が操作されることで、後輪3bに取り付けられたブレーキ装置が駆動される。他方側の(
図2Aの右側の)ブレーキレバー装置15が操作されることで、前輪3aに取り付けられたブレーキ装置が駆動される。
図4に示すように、一方側のブレーキレバー装置14は、ハンドル4においてグリップ4aの取付部とは異なる位置に嵌合するように取り付けられるリング部14aと、リング部14aの周方向一部から外側に延びるレバー支持部14bと、レバー支持部14bに回動可能に支持されたレバー本体14cとを含む。リング部14aは、半円部を有する2つのレバー支持要素が組み合わされてネジ等で固定された部材において、2つの半円部により形成されるものでもよい。他方側のブレーキレバー装置15も、一方側のブレーキレバー装置14と向きが異なるだけで同様である。
【0022】
図2B、
図3に示すように、ハンドル4の一方側端部において、グリップ4aとブレーキレバー装置14のリング部14aとの間には、手動スイッチ25が取り付けられる。手動スイッチ25は、「押し歩きモード」または「自走モード」である第2モードを実行するためにユーザの操作を受け付ける。これにより、手動スイッチ25は、第2モードの実行を指示するために用いられる。
【0023】
手動スイッチ25は、押しボタン式であり、ケース26と、ケース26に保持された操作部27と、取り付けバンド28とを含む。ケース26は、樹脂、または金属等から形成された略立方体の箱状である。操作部27は、ケース26の上端に形成された円形の孔から突出する円柱状であり、バネ(図示せず)によりケース26の上面より上側に突出するように付勢され、ケース26に押下可能に保持されている。これにより、手動スイッチ25の操作方向は、上から下への押し下げ方向である。手動スイッチ25は、例えばモーメンタリスイッチであり、ユーザによって操作部27が押し下げられている場合のみ、第2モードを実行するための第2モードオン信号を制御装置40(
図8)に出力し続ける。このために、手動スイッチ25と制御装置と40は信号線29により通信可能に接続される。操作部27の押し下げが行われない場合には、手動スイッチ25は第2モードオン信号を制御装置40に出力しない。
【0024】
取り付けバンド28は、ケース26の外側にケース26と一体に形成されたリング部28aを有する。リング部28aは、ハンドル4の一方側端部において、グリップ4aとブレーキレバー装置14のリング部14aとの間に取り付けられる。リング部14aは、金属または樹脂等により形成される。リング部14a、28aは、半円部を有する2つのリング要素が一体に結合された状態で、2つの半円部により形成される環状部分としてもよい。リング部14a、28aは、完全な円環状とすることができるが、完全な円環状でなくてもよい。例えば、ケース26の外側に形成された2つの係止腕に円弧形部が形成され、2つの円弧形部がハンドル4に嵌合され、2つの円弧形部の先端の間に隙間が形成されてもよい。このとき、2つの円弧形部により、取り付けバンド28のリング部28aが形成される。
【0025】
図2Bに示すように、ケース26及びリング部28aは、上から見た状態、すなわちケース26及びリング部28aより上側から見た状態で、リング部28aのサドル5側である、右斜め後側にケース26が配置される。ケース26のグリップ側端G1は、リング部28aのグリップ側端G2よりグリップ4a側にある。操作部27のグリップ側半部(
図2の左側半部)のみが、リング部28aのグリップ側端G2よりグリップ4a側に配置される。これにより、操作部27は、上から見てグリップ4aの中心線Lよりサドル5側にオフセットされた位置に配置される。さらに、
図3に示すように、手動スイッチ25は、グリップ4aの上端縁の最下端U1より下側に配置される。
【0026】
図5は、実施形態の電動アシスト自転車1において、ユーザ100が自転車を降りた状態でハンドル4の一方側端部のグリップ4aを握った状態を上側から見た図である。
図6は、ユーザ100が手動スイッチ25の操作部27を押し下げた状態を示している
図5に対応する図である。
図7は、ユーザ100が手動スイッチ25の操作部27を押し下げた状態を示している斜視図である。
図5~
図7に示すように、操作部27は、ユーザ100が自転車の左右方向における一方側に降りた状態で、グリップ4aを手で握ったときに親指101により押下可能な位置に配置される。これにより、
図5に示すように、自転車から降りたユーザ100がハンドル4の一方側端部に取り付けられたグリップ4aを一方の手で握り、図示しない他方の手でハンドルの他方側端部に取り付けられたグリップ(図示せず)を握った状態で、
図6のように一方の手の親指101をまっすぐ自然に伸ばす。その状態で、操作部27は、親指101により押下可能な位置に配置される。このため、ユーザ100がグリップ4aを握ったときに親指101の下に操作部27が配置されるので、ユーザ100は無理な指や腕の姿勢をとることなく、親指101の押し下げによる操作部27の操作を行いやすくなる。
【0027】
手動スイッチ25には、信号線29が接続されており、手動スイッチ25の操作に基づく第2モードオン信号は、制御装置40(
図8)に送信される。後述のように制御装置40は、第2モードオン信号の入力によって、第2モードを実行させる。これにより、ユーザ100が自転車を降りて押し歩きする際にユーザ100が自転車を前方に押す力を軽減できる。手動スイッチ25は、ハンドル4の他方側端部(
図2Aの右端部)に設けられていてもよい。
【0028】
図8を用いて、電動アシスト自転車1を第2モードへ移行させるための制御装置40を中心とする構成を詳しく説明する。
図8は、実施形態の電動アシスト自転車1の制御装置40を中心とする構成のブロック図である。制御装置40にはモータ21と、センサスイッチ群30とが接続される。制御装置40は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、演算処理を実行するプロセッサ、演算に使用する計測データ、演算結果、処理プログラム等を記憶するメモリ、及び入出力ポートなどを備える。プロセッサは、例えばCPUで構成され、メモリに記憶された処理プログラムを読み出して実行する機能を有する。一般的に、制御装置40の各機能は当該処理プログラムを実行することで実現される。メモリは、ROM等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリ等である。制御装置40は、電動アシスト自転車1が第1モードで運転できない状態であるか否かを判定する機能と、第1モードを実行させる機能と、第2モードを実行させる機能とを有する。
【0029】
モータ21は、モータユニット20に含まれる駆動回路(図示せず)を介して、制御装置40により出力が制御される。モータ21は、例えば3相ブラシレスDCモータである。モータ21は、バッテリユニット10から供給される電力により駆動される電動機であれば種々の構成を採用できる。
【0030】
センサスイッチ群30は、踏力センサ33、車速センサ34、クランク回転センサ35、サドル位置センサ39、電源スイッチ37及び手動スイッチ25を含んでいる。踏力センサ33は、例えば磁歪式のトルクセンサであり、ペダルへの踏力である人力駆動力に基づいて入力軸が回転することにより発生する人力駆動力を検出する。踏力センサ33の検出値を表す情報は、制御装置40に送信される。
【0031】
車速センサ34は、例えば前フォーク2bの下端部に設けられ、前輪3aの単位時間当たりの回転数から電動アシスト自転車1の走行速度を検出する。車速センサ34の検出値を表す情報は、制御装置40に送信される。車速センサ34は、例えばホイールセンサ等の速度センサである。車速センサ34は、後輪3bの回転支持部に取り付けられ、後輪3bの回転数から電動アシスト自転車1の走行速度を検出してもよい。
【0032】
クランク回転センサ35は、入力軸の単位時間当たりの回転数を検出する。クランク回転センサ35の検出値を表す情報は、制御装置40に送信される。クランク回転センサ35は、例えば歯車状の回転体とその両側の光出射部及び受光部とを含んで構成される。サドル位置センサ39は、ユーザ100がサドル5に乗車、すなわち座ったことを検出する。サドル位置センサ39の検出信号は、制御装置40に送信される。
【0033】
電源スイッチ37は、ユーザ100が制御装置40を起動させるためのスイッチである。第1モードは、電源スイッチ37がオンされて、ユーザがペダル7を踏み込み操作することによって実行される。例えば、ユーザ100が電動アシスト自転車1に乗車してペダル7を踏み込み操作を行い、その操作による踏力が所定値以上となった場合に、第1モードが実行される。制御装置40は、第1モードが実行されると、ペダル7への踏力の検出値と、車速センサ34の検出値とに基づいて、モータ21に出力させる第1補助動力を算出し、算出された第1補助動力でモータ21を駆動する。なお、制御装置40は、ペダル7への踏力の検出値と、車速センサ34の検出値と、クランク回転センサ35の検出値とに基づいて、第1補助動力を算出してもよい。
【0034】
図2Bに示すように、電源スイッチ37は、手元スイッチ装置36の一部に設けられる。手元スイッチ装置36は、電源スイッチ37と、アシスト切換部36aと、表示部36bとを有する。アシスト切換部36aは、UP側ボタンと、DOWN側ボタンとを有し、第1モード実行時におけるペダル踏力について、ユーザ100の操作を受け付けることにより、モータ21による補助動力の出力の割合を変更可能としている。表示部36bには、バッテリの残量や、モータ21により補助動力を出力可能な走行距離等が表示される。手元スイッチ装置36は、ハンドル4の一方側端部において、ブレーキレバー装置14のリング部14aより自転車のステム11に近い部分に、リング部36e(後述の
図14参照)により嵌合固定または締め付け固定される。
【0035】
さらに、ユーザ100が第2モードを実行させる場合には、電源スイッチ37がオンされている状態で、ユーザ100が自転車を降りてハンドル4の両端に取り付けた両側のグリップ4aを両手で握り、一方側の手でグリップ4aを握りながら
図6、
図7に示したように一方側の手の親指101を伸ばして、その親指101で手動スイッチ25の操作部27を押し下げることにより操作する。これにより、操作部27が押し続けられている間、第2モードオン信号が制御装置40に出力され、制御装置40は、第2モードオン信号が入力されることによって、モータ21の出力を発生させて、第2モードを実行する。これにより、押し歩きモードまたは自走モードを実行させることができる。制御装置40は、サドル位置センサ39からの信号がオフ、すなわちユーザ100がサドル5に座っていないことが検出された場合にのみ、第2モードの実行を許可するようにしてもよい。制御装置40は、ブレーキレバー装置14が操作されたことを検出した場合に、第2モードの実行を不許可とし、第2モードの実行中にブレーキレバー装置14が操作されたことを検出した場合には、第2モードを中止する構成としてもよい。このとき、ブレーキレバー装置14が操作されたことの検出は、例えばレバー本体14cの変位量を検出し、その検出信号を制御装置40に送信する変位量センサを設けることにより実現できる。
【0036】
上記の電動アシスト自転車1によれば、モータ21による補助動力を出力して押し歩く、または補助動力を出力して自走させる第2モードを実行するときに、ユーザ100がグリップ4aを握りながら、親指101での手動スイッチ25を押す操作を行いやすくなる。これによりユーザ100が、手動スイッチ25を用いて第2モードの実行を指示するときに、指や腕にかかる負担を軽減できるので、手動スイッチ25を長時間押し続けやすくなる。また、ユーザ100がグリップ4aを握る力を強く、かつ安定させることができるので、自転車を安定して保持しやすくなり、安全性を向上できる。
【0037】
図9は、実施形態の別例の電動アシスト自転車1aにおいて、
図2Bに対応する図である。
図10は、実施形態の別例の電動アシスト自転車1aにおいて、
図9の下側から見た図である。
図9、
図10に示す別例の構成では、手動スイッチ25aを形成するケース26aが、横方向に長尺な直方体状である。
図9に示すように、手動スイッチ25aを上から見た状態で、リング部28aは、手動スイッチ25aの長手方向の一端部(
図9の右端部)から前側に延びるように形成される。ハンドル4の一方側端部に取り付けられたグリップ4aの根本と対向する位置にはブレーキレバー装置14のリング部14aが固定される。さらに、ハンドル4の一方側端部において、ブレーキレバー装置14のリング部14aに対しグリップ4aとは反対側には、手動スイッチ25aのリング部28aが取り付けられる。
【0038】
図9に示すように、ケース26a及びリング部28aを上から見た状態でケース26aが、リング部28aよりグリップ4aの先端側(
図9の左側)に延びている。これにより、ケース26a及びリング部28aを上から見た場合の全体の形状が、横方向(
図9の左右方向)に延びる直線部が縦方向(
図9の上下方向)に延びる直線部より長い逆L字形となっている。また、
図10に示すように、ケース26a及びリング部28aをハンドル4の後側から見た状態でも、ケース26a及びリング部28aの全体の形状が、横方向に延びる直線部が縦方向に延びる直線部より長い逆L字形となっている。手動スイッチ25aの操作部27の全体は、リング部28aのグリップ側端G2よりグリップ4a側(
図9、
図10の左側)に配置される。これにより、操作部27の少なくとも一部が、ブレーキレバー装置14のリング部14aのグリップ側端G3より、グリップ4a側に配置される。このため、
図11に示すように、ユーザ100が第2モードを実行させる場合に、電源スイッチ37がオンされている状態で、ユーザ100が自転車を降りてハンドル4の両端に取り付けた両側のグリップ4aを両手で握り、一方の手の親指101を伸ばして、その親指101で手動スイッチ25の操作部27(
図9、
図10)を押し下げることにより操作することが可能である。
【0039】
本例の構成によれば、
図1~
図8の構成と異なり、ハンドル4の一方側端部において、ブレーキレバー装置14のリング部14aに対しグリップ4aと反対側に、手動スイッチ25aのリング部28aが取り付けられる。これにより、ブレーキレバー装置14のリング部14aをグリップ4aに近づけることができるので、ブレーキレバー装置14のレバー本体14cの先端を、グリップ4aの先端に近づけやすくなる。これにより、
図1~
図8の構成に比べて、ブレーキレバー装置14の操作性を向上できる。また、レバー本体14cの長さを大きくする必要がない。さらに、手動スイッチ25aの操作部27の全体が、リング部28aのグリップ側端G2よりグリップ4a側に配置されるので、操作部27とグリップ4aの根本側端との距離Laが大きくなることを抑制できる。これにより、ユーザ100がグリップ4aを握って親指101を伸ばしたときに、親指101が操作部27により届きやすくなるので、操作部27の操作性を向上できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図8の構成と同様である。
【0040】
なお、図示は省略するが、
図9~
図11の構成において、ハンドル4の長手方向において、手動スイッチ25aのリング部28aの中央と操作部27の中央との位置を一致させてもよい。この場合には、
図9~
図11の構成の場合よりも、操作部とグリップ4aの根本側端との距離Laが大きくなるので、操作部の操作性が
図9~
図11の構成の場合よりも低下する。一方、この場合でも、操作部がグリップ4aの上端より上側に配置される場合や、操作部の操作方向が上から下への押し下げ方向でない場合に比べて、操作部の操作性を高くできる。
【0041】
図12Aは、実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図2Bに対応する図である。
図12Bは、実施形態の別例の電動アシスト自転車において、
図12Aの下側から見た図である。本例の構成では、
図1~
図8の構成において、手動スイッチ25bが手元スイッチ装置36と一体化されている。具体的には、手元スイッチ装置36のケース36cにおいて、ハンドル4よりサドル側(
図12Aの下側、
図12Bの紙面の表側)に延出した部分がハンドル4より下側に延びることにより、ケース36cに下側延出部36d(
図12B)が形成される。そして、下側延出部36dの下端部が、手元スイッチ装置36の電源スイッチ37及びアシスト切換部36a等の操作部を含む上面よりグリップ4a側(
図12A、
図12Bの左側)に細長い直方体状に大きく延びることにより、手動スイッチ25bのケース26bが形成される。これにより、手動スイッチ25bのケース26bと手元スイッチ装置36のケース36cとは、単一のケースにより形成される。手動スイッチ25b及び手元スイッチ装置36は、手元スイッチ装置36の操作部より下側に設けられたリング部36e(
図12B)により、ハンドル4の一方側端部に固定される。なお、手動スイッチ及び手元スイッチ装置の2つの別体のケースが、接着されたり、ネジ結合等で機械的に結合されることにより一体化されてもよい。このような構成では、手元スイッチ装置36をハンドル4の一方側端部に固定するためのリング部36eが、手動スイッチ25bをハンドル4に固定するためのリング部を兼ねるので、ハンドル4に手動スイッチ25bの固定のためだけに用いるリング部を固定する必要がなくなる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図8の構成と同様である。
【0042】
図13は、実施形態の別例の電動アシスト自転車において、ハンドル38を上側から見た図である。
図14は、別例の電動アシスト自転車において、
図13の矢印A方向に見た図である。
図1~
図12Bの各例の構成では、ハンドル4がアップ型である場合を説明したが、本例の構成では、ハンドル38が、全体的に高さ位置が略同じであり、
図13のように上側から見た場合に左右方向に延びる略直線状で、左右方向両側部分が先端に向かって後側に若干傾斜しているフラット型である。本例の場合も
図1~
図8の構成と同様に、ハンドル38の一方側端部(
図13の左端部)において、グリップ4aとブレーキレバー装置14のリング部14aとの間に、手動スイッチ25cのリング部28aが取り付けられる。また、
図14に示すように、リング部28aにおいてハンドル38より下側に、ケース26cが取り付けられる。そしてケース26cのサドル側面である後側面(
図13の下側面、
図14の紙面の表側面)に、操作部27が配置される。これにより、
図13のようにハンドル38を上から見た状態で、グリップ4aの中心線Lよりサドル側にオフセットされた位置に、手動スイッチ25cの操作部27が配置される。さらに、この操作部27は、ハンドル38の一方側端部に取り付けられたグリップ4aの上端縁の最下端U1より下側に配置される。さらに、操作部27の操作方向は、手動スイッチ25cに対しサドル側(
図13の下側、
図14の紙面の表側)からサドルと反対側(
図13の上側、
図14の紙面の裏側)へ押す方向である。
【0043】
本例のようにフラット型のハンドル38を用いる場合において、手動スイッチ25cの操作方向を、サドル側からサドルと反対側へ押す方向とする場合には、特にフラット型のハンドル38を持つ構成において、手動スイッチを押し下げる方向に操作する場合よりも、第2モードを実行するときの、ユーザが親指で手動スイッチ25cを押す操作をより行いやすくなる。これにより、指や腕にかかる負担をより軽減できると共に、ユーザが自転車をより安定して保持しやすくなり、安全性をさらに向上できる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図8の構成と同様である。
【0044】
なお、本例の構成のようにフラット型のハンドル38を用いる場合に、手動スイッチの操作部の操作方向が上から下への押し下げ方向となるように、ハンドル38に手動スイッチを取り付けることもできる。
【0045】
また、
図13、
図14の構成において、ハンドル38は、上から見て若干折れ曲がった形状となっているが、完全な直線状となるようにしてもよい。また、本例のフラット型のハンドル38において、
図9~
図11の構成と同様に、ブレーキレバー装置14のリング部14aに対しグリップ4aと反対側に手動スイッチのリング部を取り付けることもできる。
【0046】
また、本開示の電動アシスト自転車は、ハンドルがアップ型及びフラット型のいずれかに限定するものではなく、例えばハンドルがアップ型より左右方向両側部分の先端側部分がステムよりさらに大きく上側に位置し、上から見た場合に左右方向両端部分が左右方向に対し大きく後側に傾斜したハイライズ型等としてもよい。
【0047】
また、上記の各例の構成では、手動スイッチ25,25aが押しボタン式である場合を説明したが、手動スイッチをレバー式として、レバー本体を回動するように操作することで、第2モードの実行を指示できる構成としてもよい。この場合も、グリップ4aの上端より下側であって、上から見てグリップ4aの中心線より後側にオフセットされた位置に操作部が配置され、手動スイッチの操作方向は、上から下への押し下げ方向、または手動スイッチに対しサドル側からサドルと反対側へ押す方向とする。このとき、操作部は、グリップ4aを握った手の親指で操作可能なレバー本体とする。
【符号の説明】
【0048】
1,1a 電動アシスト自転車、2 フレーム、2a ヘッドパイプ、2b 前フォーク、2c ダウンパイプ、2d シートパイプ、2e チェーンステー、2f シートステー、3a 前輪、3b 後輪、4 ハンドル、4a グリップ、4b ブレーキレバー、5 サドル、5a 係止部、5b 係止孔、6 クランクアーム、7 ペダル、8 チェーン、9 前照灯、10 バッテリユニット、11 ステム、12 ステアリングコラム、14 ブレーキレバー装置、14a リング部、14b レバー支持部、14c レバー本体、15 ブレーキレバー装置、20 モータユニット、21 モータ、25,25a,25b,25c 手動スイッチ、26,26a,26b,26c ケース、27 操作部、28 取り付けバンド、29 信号線、30 センサスイッチ群、33 踏力センサ、34 車速センサ、35 クランク回転センサ、36 手元スイッチ装置、36a アシスト切換部、36b 表示部、36c ケース、36d 下側延出部、36e リング部、37 電源スイッチ、38 ハンドル、39 サドル位置センサ、100 ユーザ、101 親指。