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特許7466099デジタル証券(ST)の帳簿管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】デジタル証券(ST)の帳簿管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240405BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023063781
(22)【出願日】2023-04-10
【審査請求日】2023-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(73)【特許権者】
【識別番号】500566567
【氏名又は名称】株式会社インタートレード
(73)【特許権者】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077321(JP,A)
【文献】特表2020-535543(JP,A)
【文献】特開2022-035615(JP,A)
【文献】特開2022-117121(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2450036(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、デジタル証券(ST)の帳簿管理システムであって、
複数の証券会社のシステムと、複数の前記証券会社のシステムと接続する、権利管理原簿管理人としての所定処理を行う権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能とを有し、
夫々の前記証券会社のシステムは、
STの取引を行うST取引手段と、
STの取引を行う顧客個人の特定情報を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する顧客個人の特定情報管理手段と、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段と、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段と、
前記識別番号受取手段が受け取った識別番号を、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている顧客個人の特定情報に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段と、
STを清算する都度、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段と、
を有し、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は
前記証券会社のシステムで取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとを有してなる権利管理原簿と、
前記証券会社のシステムの前記識別番号発行請求手段により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段と、
前記識別番号発行手段が発行した識別番号を前記証券会社のシステムへ提供する識別番号提供手段と、
同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号と他の前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号とを記録する、識別番号記録手段と、
前記識別番号提供手段が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する識別番号提供先管理手段と、
識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿を更新する権利管理原簿更新手段と、
定期的に権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する権利所有者情報出力手段と、
前記権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する都度、前記識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の前記証券会社のシステムから、前記識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報を、暗号化されたままの状態で受け取り、前記権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段と、
を有する
ことを特徴とするデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項2】
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は
前記権利管理原簿の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力する権利所有者個人特定情報復号化・出力手段
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項3】
前記権利管理原簿で管理するSTには、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券を含み、
前記権利管理原簿は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引単位をトークンとして管理し、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は
貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行うトークン発行数量調整手段と、
前記トークン発行数量調整手段により変更されたトークンの発行総量を前記権利管理原簿に記録するトークン変更総量記録手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項4】
前記貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券が、ゴールド価格に連動する事業社債であることを特徴とする請求項3に記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項5】
前記顧客個人の特定情報管理手段が、データベースからなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項6】
前記顧客個人の特定情報管理手段が、ブロックチェーンからなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項7】
トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、デジタル証券(ST)の帳簿管理システムであって、
複数の証券会社のシステムと、複数の前記証券会社のシステムと接続する、権利管理原簿管理人としての所定処理を行う権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能と、個人の特定情報を暗号化した状態で、個人に紐付けて管理する個人の特定情報管理手段と、を有し、
夫々の前記証券会社のシステムは、
STの取引を行うST取引手段と、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、STの取引を行う顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段と、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段と、
前記識別番号受取手段が受け取った識別番号を、前記個人の特定情報管理手段により管理されている顧客個人の特定情報に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段と、
STを清算する都度、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段と、
を有し、
前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は
前記証券会社のシステムで取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとを有してなる権利管理原簿と、
前記証券会社のシステムの前記識別番号発行請求手段により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段と、
前記識別番号発行手段が発行した識別番号を前記証券会社のシステムへ提供する識別番号提供手段と、
同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号と他の前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号とを記録する、識別番号記録手段と、
前記識別番号提供手段が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する識別番号提供先管理手段と、
識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿を更新する権利管理原簿更新手段と、
定期的に権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する権利所有者情報出力手段と、
前記権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する都度、前記識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、前記識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、前記個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報を、暗号化されたままの状態で受け取り、前記権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段と、
を有する
ことを特徴とするデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項8】
前記個人の特定情報管理手段が、個人に紐付くアドレスを有する所定のブロックチェーンからなることを特徴とする請求項7に記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【請求項9】
前記権利所有者個人特定情報復号化・出力手段は、所定STについての権利管理原簿に記録されている情報を参照する権利を有する者による当該情報の開示請求を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力する機能をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル証券(セキュリティトークン(ST))に必要な管理帳簿を、ブロックチェーンなどの技術を用いて管理する、デジタル証券(ST)の帳簿管理システムに関する。
なお、本願においては、デジタル証券(ST)とは、STに限られず、例えば、電子記録移転権利などの帳簿管理の対象となるものを含むものとする。
【背景技術】
【0002】
デジタル証券(セキュリティトークン(ST))化においては、管理帳簿が必要になる。
本件発明者は、この管理帳簿をブロックチェーンなどの技術を用いて、個人情報を安全に管理することで、ST化を実現するための方策について、考察、検討を行った。
【0003】
STの帳簿管理に関連する技術としては、例えば、次の特許文献1に記載の電子帳簿システムや、特許文献2に記載のトークン管理システムが提案されている。
特許文献1、2に記載の技術における、電子帳簿による管理は、信託会社で行われている証券の保管振替方式に類似した概念で電子的に対応させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6865251号公報
【文献】特許第7038764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、信託会社で行われている電子帳簿の管理においては、電子帳簿に社債所有権の記録を行うことになるが、このような場合に個人情報の記録が面倒となる。証券会社で管理する個人の特定情報(氏名・名称、住所など)が、証券会社以外の第三者である信託会社による電子帳簿において管理されるようにすると、その分、外部へ流出するリスクが高くなることが懸念される。
また、基本的に、デジタル証券の取引を行う都度(清算が完了した時)、デジタル証券についての権利を管理する帳簿(権利管理原簿)に対し、権利移転情報の変更(書き換え)処理を行う必要があるが、STのような、通常の証券に比べて小口化する特性を有するデジタル証券は、通常の証券以上に、権利移転情報の書き換え頻度が多くなる。小口化する特性を有するデジタル証券は、短時間に取引が行われ、同一取引者により、買いによる所有後に即時売却などが行われる可能性がある。このため、取引の都度の権利管理原簿の更新において、個人を特定する実情報(氏名・名称、住所など)を詳細に記録するのは非効率である。
【0006】
また、従来、社債をトークンとして扱い、量を管理し、増減を考慮するといった概念はないが、本件発明者は考察、検討の末、無期限(臨時償還を設定)、無金利とし、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理できるようにするための方策を見出した。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、権利移転情報の書き換え頻度が多く、小口化する特性を有するデジタル証券における権利管理原簿の更新処理効率を向上させ、かつ、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)の外部への流出リスクを低減することが可能で、また、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理可能なデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によるデジタル証券(ST)の帳簿管理システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、デジタル証券(ST)の帳簿管理システムであって、複数の証券会社のシステムと、複数の前記証券会社のシステムと接続する、権利管理原簿管理人としての権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能とを有し、夫々の前記証券会社のシステムは、STの取引を行うST取引手段と、STの取引を行う顧客個人の特定情報を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する顧客個人の特定情報管理手段と、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段と、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段と、前記識別番号受取手段が受け取った識別番号を、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている顧客個人の特定情報に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段と、STを清算する都度、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段と、を有し、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は、前記証券会社のシステムで取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとを有してなる権利管理原簿と、前記証券会社のシステムの前記識別番号発行請求手段により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段と、前記識別番号発行手段が発行した識別番号を前記証券会社のシステムへ提供する識別番号提供手段と、同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号と他の前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号とを記録する、識別番号記録手段と、前記識別番号提供手段が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する識別番号提供先管理手段と、識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿を更新する権利管理原簿更新手段と、定期的に権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する権利所有者情報出力手段と、前記権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報をなす現在の権利所有者情報を出力する都度、前記識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の前記証券会社のシステムから、前記証券会社のシステム識別番号が紐付く、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報を、暗号化されたままの状態で受け取り、前記権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段と、を有することを特徴としている。
なお、本願明細書における「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上で稼働する、処理を自動化するプログラムである。
【0009】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は、前記権利管理原簿の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力する権利所有者個人特定情報復号化・出力手段をさらに有するのが好ましい。
【0010】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、前記権利管理原簿で管理するSTには、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券を含み、前記権利管理原簿は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引単位をトークンとして管理し、前記権利管理原簿管理システムまたは権利管理原簿管理機能は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行うトークン発行数量調整手段と、前記トークン発行数量調整手段により変更されたトークンの発行総量を前記権利管理原簿に記録するトークン変更総量記録手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、前記貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券が、ゴールド価格に連動する事業社債であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、権利移転情報の書き換え頻度が多く、小口化する特性を有するデジタル証券における権利管理原簿の更新処理効率を向上させ、かつ、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)の外部への流出リスクを低減することが可能で、また、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理可能なデジタル証券(ST)の帳簿管理システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態にかかるデジタル証券(ST)の帳簿管理システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図2】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わるST取引手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図3】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる顧客個人の特定情報管理手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図4】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号発行請求手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図5】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号受取手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図6】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号管理手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図7】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わるST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図8】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる権利管理原簿の構成を示す説明図で、(a)はデータ構成を概念的に示す図、(b)はデジタル証券(ST)が社債である場合のデータ構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる権利管理原簿の構成を示す説明図で、デジタル証券(ST)が受益権である場合のデータ構成の一例を示す図である。
図10】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号発行手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図11】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号提供手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図12】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号記録手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図13】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる識別番号提供先管理手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図14】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる権利管理原簿更新手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図15】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる権利所有者情報出力手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図16】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる暗号化個人特定情報記録手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図17】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わる権利所有者個人特定情報復号化・出力手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図18】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わるトークン発行数量調整手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図19】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムに備わるトークン変更総量記録手段の構成を概念的に示すブロック図である。
図20】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた処理の流れに先立つ、デジタル証券(ST)の取引の流れの一例を示す図で、コモディティーSTのプライマリー市場での取引における処理手順を示す説明図である。
図21】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた処理の流れに先立つ、デジタル証券(ST)の取引の流れの一例を示す図で、コモディティーSTのセカンダリー市場での取引における処理手順を示す説明図である。
図22】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた識別番号の発行に関連する処理の流れの一例を示す説明図である。
図23】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた識別番号の発行に関連する処理の流れの一例を示す図で、図22の続き部分を示す説明図である。
図24】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いたST清算の都度行われる処理の流れの一例を示す説明図である。
図25】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた定期的な処理の流れの一例を示す説明図である。
図26】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた権利管理原簿の検査時の処理の流れの一例を示す説明図である。
図27】本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いたその他の処理の流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
デジタル証券(セキュリティトークン(ST))化においては、管理帳簿が必要になる。
本件発明者は、この管理帳簿をブロックチェーンなどの技術を用いて、個人情報を安全に管理することで、ST化を実現するための方策について、考察、検討を行った。
【0015】
考察、検討に際しては、ST化に対応させやすい証券を優先して考えた。
ST化の対象として想定される証券の種類としては、次の表1に示す証券が考えられる。
【表1】
【0016】
上記(1)の社債については、特殊なものとして、貴金属などを対象にした社債、例えば、ゴールド価格に連動する事業社債など、商品指標に価格が連動する記名社債を考えた。
一般的な社債では、発行額、償還期日、支払金利などが設定される。
これに対し、ゴールド価格に連動する事業社債においては、無期限(臨時償還を設定)、無金利とし、随時発行・償却を行うようにすることを考えた。
しかるに、従来、社債をトークンとして扱い、量を管理し、増減を考慮するといった概念はない。
そこで、本件発明者は、この随時発行を行う社債の管理について以下のように考えた。
【0017】
また、本来、社債管理は、社債原簿管理人と社債管理者(銀行や信託会社など)、社債管理補助者を設定して行われるが、本件発明者は、社債管理をシステムで行うことを考えた。
【0018】
そして、本件発明者は、社債管理を行うシステムにおいて、次に述べるような社債原簿を用いて、デジタル社債データを管理することを考えた。
例えば、社債管理を行うシステムにおいて、社債原簿で管理するデジタル社債データとしては、基本的には、社債情報記録原簿(社債特性を記録)データと、社債権利記録原簿(社債所有権を記録)データの2種類のデータを考えた。
社債情報記録原簿データについては、例えば、社債種類特定事項(社債[トークン]種類ID、償還方法・期限、利払方法・期限・利率、社債管理者、社債管理補助者、社債原簿管理人など)、トークン発行量、トークン取引単位(発行/引受・売買)、社債金額[トークン発行価額](社債[トークン]発行総額、各社債金額[各都度発行トークン価格]、発行時トークン単価、各社債払込金額)、社債払込日などのデータ項目を有して構成することを考えた。また、社債権利記録原簿データについては、例えば、社債権者[トークン保有者]特定情報(社債権者ID、社債権者氏名/名称・住所)、社債[トークン]譲渡取引情報、社債[トークン]取得日、社債[トークン]取得量、社債権[トークン所有権]喪失日、社債権[トークン所有権]喪失量、社債[トークン]保有残高などのデータ項目を有して構成することを考えた。
【0019】
なお、上記(2)の受益権についても、上記(1)の社債と略同様に、受益権管理を行うシステムにおいて、受益権原簿で管理されるデジタル受益権データとして、基本的には、受益権情報記録原簿(受益権特性を記録)データと、受益権権利記録原簿(受益権所有権を記録)データの2種類のデータを考えた。
受益権情報記録原簿データについては、例えば、受益債権内容特定事項(受益債権給付内容[受益債権ID、発生済支分権、ID別受益債権額、各支分債権額]、受益債権弁済期など)、受益権譲渡期限、受益証券、委託者、信託者、信託監督人、受益者代理人、受益権原簿管理人、トークン発行量、トークン取引単位(発行/引受・売買)、トークン発行価額(トークン発行総額、各発行トークン価格、各発行時トークン単価、トークン各発行時払込金額)、トークン価格払込日などのデータ項目を有して構成することを考えた。また、受益権権利記録原簿データについては、例えば、受益者[トークン保有者]特定情報(各受益者ID、各受益者氏名/名称・住所)、受益権[トークン]譲渡取引情報、受益権[トークン]取得日、受益権[トークン]取得量、受益権[トークン所有権]喪失日、受益権[トークン所有権]喪失量、受益権[トークン]保有残高などのデータ項目を有して構成することを考えた。
【0020】
ゴールド価格に連動する事業社債については、トークンとして社債を管理し、社債の取引単位としては法定通貨ではなく、トークンを設定することを考えた。
例えば、1トークンを1社債の取引単位とすることを考えた。そして、ゴールド価格に連動する事業社債の場合における1社債の取引単位としての1トークンは、例えば、ゴールド1g相当などとして設定することを考えた。
社債価格はゴールド価格に連動させる。そして、顧客の売り買いに対して、社債価格をゴールド価格に連動させるために、トークンの数量の増減を行う処理(デジタル社債の自動追加発行・償却処理)をシステムに組み込むことを考えた。
【0021】
このため、社債原簿のトークン発行量欄に対しては、当該社債の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの発行数量調整分の変更を自動で行うようにすることを考えた。
トークンの数量の過不足が発生した時のトークンの発行数量調整分の変更処理は、例えば、実金地金の売買を、ロンドン市場などを介して取引することにより行うことを考えた。ここでは、これをカバーによる流動性調整と定義する。そして、カバーによる流動性調整が発生したときに、トークンの発行総量の変更が発生し、その内容を自動的に修正し、社債原簿に記録するようにすることを考えた。
【0022】
また、上記(1)、(2)、(3)のデジタル証券は、特性に違いはあるが、基本的には管理対象となるデータ項目が類似する。このため、本件発明者は、これらのデジタル証券の管理を同様に扱うものとみなして、STにおける帳簿を管理する機能を備えたシステムを構築すべく、以下の考察、検討を行った。
【0023】
ところで、一般的に、信託会社で行われている電子帳簿による管理は、証券の保管振替方式に類似した概念で電子的に対応させたものである。
【0024】
信託会社で行われている電子帳簿の管理においては、電子帳簿に社債所有権の記録を行うことになるが、このような場合に個人情報の記録が面倒となる。
証券取引における口座情報に紐付く個人の特定情報(氏名・名称、住所など)は、証券会社が管理するものである。証券会社で管理する個人の特定情報(氏名・名称、住所など)が、外部に流出することは阻止する必要がある。しかし、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)が、証券会社以外の第三者である信託会社による電子帳簿において管理されるようにすると、その分、外部へ流出するリスクが高くなることが懸念される。
【0025】
また、基本的に、デジタル証券の取引を行う都度(清算が完了した時)、デジタル証券についての権利を管理する帳簿(権利管理原簿)に対し、権利移転情報の変更(書き換え)処理を行う必要があるが、STのような、通常の証券に比べて小口化する特性を有するデジタル証券は、通常の証券以上に、権利移転情報の書き換え頻度が多くなる。
当然ながら、小口化する特性を有するデジタル証券は、短時間に取引が行われ、同一取引者により、買いによる所有後に即時売却などが行われる可能性がある。このため、取引の都度の権利管理原簿の更新において、個人を特定する実情報(氏名・名称、住所など)を詳細に記録するのは非効率であると考えられる。
【0026】
そこで、本件発明者が考察・検討する、STに対する帳簿管理機能を備えたシステムにおいては、上述のような、信託会社で行われている電子帳簿の管理とは異なり、社債原簿などの権利管理原簿に記録する個人に関連する情報は、個人を特定する実情報(氏名・名称、住所など)ではなく、個人に紐付く識別番号とすることを考えた。
この個人に紐付く識別番号は、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)が発行する一意の番号とすることを考えた。もしくは、「金融機関コード+支店がある場合の支店コード+口座番号」での代用も可能と考えた。
【0027】
まず、証券会社は、個人を識別するための情報である、個人に紐付く識別番号の発行を、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)に請求する。そして、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)により発行され、提供された、個人に紐付く識別番号を口座番号の代用として受け取り、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理するようにすることを考えた。なお、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)による個人に紐付けた識別番号の発行については、多数(例えば、1万件)の個人に紐付けた識別番号を一括で発行することも可能となるようにすることを考えた。
また、STに対する帳簿管理機能を備えたシステムでは、発行済の個人に紐付く識別番号は、提供先の証券会社と紐付けて管理するようにすることを考えた。
【0028】
また、証券会社のシステムの内部(例えば、顧客マスタ)では、識別番号に紐付く個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化して管理するようにすることを考えた。そして、証券会社が、基本的に自社のシステムの内部(例えば、顧客マスタ)で管理する、識別番号に紐付く個人の特定情報(氏名・名称、住所など)のみ参照でき、自社以外の他の証券会社のシステムの内部(例えば、顧客マスタ)で管理する識別番号に紐付く個人の特定情報(氏名・名称、住所など)は参照できないようにすることを考えた。また、同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの証券会社の管理する識別番号と他の証券会社の管理する識別番号とが記録されるようにすることを考えた。
証券会社は、STを清算の都度、売買のサマリ情報を、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)に提供する。その際、識別番号を付して権利所有者の変更情報を渡すようにすることを考えた。
【0029】
権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)は、識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、そのSTの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿を更新するようにする。
また、定期的に(例えば、1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)し管理するようにする。そして、権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)する都度、提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社から、識別番号が紐付く暗号化された個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録するようにすることを考えた。
【0030】
基本的に、権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄には、暗号化されたままの状態の権利所有者個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を記録する。そして、金利払い時や配当払いなど権利落ち日の処理の際に、各証券会社に該当支払いを行うようにし、各証券会社のシステムに提供される所定の機能により、権利所有者に対し電子的通知と、権利内容の処理(証券会社の開設する当該権利所有者の口座、もしくは個人が指定するアドレスや金融機関の口座への支払い)が実行されるようにすることを考えた。
【0031】
また、検査担当者による権利管理原簿の検査時(権利管理原簿の監査時)などにおいては、検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が復号化の承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を復号化して、当該権利管理原簿を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)し、権利所有者個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を検査担当者が確認できるようにすることを考えた。
基本的には、当該権利管理原簿において、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)は、権利所有者個人の特定情報を認識することができないようにする。
よって、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人)を介在した、権利所有者個人の特定情報の流出リスクを無くすことができると考えられる。
【0032】
そして、本件発明者は、権利移転情報の書き換え頻度が多く、小口化する特性を有するデジタル証券における権利管理原簿の更新処理効率を向上させ、かつ、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)の外部への流出リスクを低減し、また、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理可能とするための方策について、このような考察、検討を重ねた末に、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを導出するに至った。
【0033】
本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、デジタル証券(ST)の帳簿管理システムであって、複数の証券会社のシステムと、複数の前記証券会社のシステムと接続する、権利管理原簿管理人としての権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)とを有し、夫々の前記証券会社のシステムは、STの取引(売買)を行うST取引手段と、STの取引を行う顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する顧客個人の特定情報管理手段と、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)に対し、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段と、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段と、前記識別番号受取手段が受け取った識別番号を、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段と、STを清算する都度、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段と、を有し、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)は、前記証券会社のシステムで取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとを有してなる権利管理原簿と、前記証券会社のシステムの前記識別番号発行請求手段により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段と、前記識別番号発行手段が発行した識別番号を前記証券会社のシステムへ提供する識別番号提供手段と、同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号と他の前記証券会社のシステムの前記識別番号管理手段の管理する識別番号とを記録する、識別番号記録手段と、前記識別番号提供手段が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する識別番号提供先管理手段と、識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿を更新する権利管理原簿更新手段と、定期的に(1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する権利所有者情報出力手段と、前記権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する都度、前記識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の前記証券会社のシステムから、前記識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、前記顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、前記権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段と、を有する。
【0034】
本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムのように、夫々の証券会社のシステムが、STの取引を行う顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する顧客個人の特定情報管理手段を有した構成とすれば、夫々の証券会社は、個人の特定情報が認識できないようにした状態で個人のST取引に関する情報を管理することができる。このため、証券会社において、外部に個人の特定情報が流出するリスクを低減することが可能となる。
【0035】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムのように、夫々の証券会社のシステムが、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段と、発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段と、受け取った識別番号を、顧客個人の特定情報管理手段により管理されている顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段と、STを清算する都度、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段と、を有した構成とすれば、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)に、識別番号は認識され、顧客個人の特定情報は認識することができない状態で権利所有者の変更情報の更新を行わせることが可能となる。
【0036】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムのように、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)が、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段と、識別番号を証券会社のシステムへ提供する識別番号提供手段を有した構成とすれば、証券会社のシステムにおいて、顧客個人の特定情報を暗号化した状態で識別番号の口座番号に紐付けて管理することが可能となる。
【0037】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムのように、定期的に(1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する権利所有者情報出力手段を有した構成とすれば、権利管理原簿における権利所有者情報の出力処理の回数を減らし、処理の効率化を図ることが可能となる。
【0038】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムのように、権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する都度、識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段を有した構成とすれば、権利管理原簿に個人の特定情報(氏名・名称、住所など)が暗号化されたままの状態で記録されるため、権利管理原簿において、権利所有者の個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、証券会社以外の第三者(権利管理原簿を管理する権利管理原簿管理人やST発行会社など)が認識できないようにすることが可能となる。このため、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人など)を介在した、権利所有者の個人の特定情報の流出リスクを無くすことが可能となる。
【0039】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、好ましくは、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)は、前記権利管理原簿の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者の個人情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力する権利所有者個人特定情報復号化・出力手段をさらに有する。
このように、権利管理原簿の監査のときに、各証券会社の口座管理者の承認のもとに暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化する構成とすれば、権利所有者に第三者対抗要件があることを明確化できる。また、権利管理原簿の監査のとき以外は、権利所有者個人の特定情報は暗号化されたままであるため、権利所有者の個人の特定情報の流出リスクを極力無くすことが可能となる。
【0040】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、好ましくは、前記権利管理原簿で管理するSTには、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券を含み、前記権利管理原簿は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引単位をトークンとして管理し、前記権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行うトークン発行数量調整手段と、前記トークン発行数量調整手段により変更されたトークンの発行総量を前記権利管理原簿に記録するトークン変更総量記録手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、トークンとして扱い、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行うことで、量を管理し、増減する特性を有するデジタル証券を帳簿管理することが可能となる。
【0041】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、好ましくは、前記貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券が、ゴールド価格に連動する事業社債である。
このように構成すれば、トークンとして扱い、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行うことで、量を管理し、増減する特性を有するデジタル証券を具現化することが可能となる。
【0042】
従って、本発明によれば、権利移転情報の書き換え頻度が多く、小口化する特性を有するデジタル証券における権利管理原簿の更新処理効率を向上させ、かつ、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)の外部への流出リスクを低減することが可能で、また、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理可能なデジタル証券(ST)の帳簿管理システムが得られる。
【0043】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照して説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかるデジタル証券(ST)の帳簿管理システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図1のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1は、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築され、複数の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)と、複数の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)と接続する、権利管理原簿管理人としての権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30とを有している。
夫々の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)は、ST取引手段11と、顧客個人の特定情報管理手段12と、識別番号発行請求手段13と、識別番号受取手段14と、識別番号管理手段15と、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段16と、を有している。
また、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30は、権利管理原簿31と、識別番号発行手段32と、識別番号提供手段33と、識別番号記録手段34と、識別番号提供先管理手段35と、権利管理原簿更新手段36と、権利所有者情報出力手段37と、暗号化個人特定情報記録手段38と、権利所有者個人特定情報復号化・出力手段39と、トークン発行数量調整手段40と、トークン変更総量記録手段41と、を有している。
【0044】
ST取引手段11は、例えば、図2に示すように、STの取引(売買)を行う機能を有して構成されている。
なお、ここでのSTの取引(売買)は、証券会社によるST発行会社が発行するSTの引受契約、ST発行会社が発行したSTの譲受取引、顧客からのST注文の受注、証券会社による仲介者へのST注文の発注、仲介者との間での発行されたSTの譲渡取引などを含む。
【0045】
顧客個人の特定情報管理手段12は、例えば、図3に示すように、STの取引を行う顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する機能を有して構成されている。
【0046】
識別番号発行請求手段13は、例えば、図4に示すように、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に対し、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する機能を有して構成されている。
【0047】
識別番号受取手段14は、例えば、図5に示すように、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る機能を有して構成されている。
【0048】
識別番号管理手段15は、例えば、図6に示すように、識別番号受取手段14が受け取った識別番号を、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理する機能を有して構成されている。
【0049】
ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段16は、例えば、図7に示すように、STを清算する都度、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する機能を有して構成されている。
【0050】
権利管理原簿31は、例えば、図8(a)に示すように、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)で取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとを有して構成されている。
STが社債である場合、権利情報記録原簿データとしての社債情報記録原簿データは、例えば図8(b)に示すように、社債種類特定事項(社債[トークン]種類ID、償還方法・期限、利払方法・期限・利率、社債管理者、社債管理補助者、社債原簿管理人など)、トークン発行量、トークン取引単位(発行/引受・売買)、社債金額[トークン発行価額](社債[トークン]発行総額、各社債金額[各都度発行トークン価格]、発行時トークン単価、各社債払込金額)、社債払込日などのデータ項目を有して構成される。また、権利所有権記録原簿データとしての社債権利記録原簿データは、例えば、社債権者[トークン保有者]特定情報(社債権者ID、社債権者氏名/名称・住所)、社債[トークン]譲渡取引情報、社債[トークン]取得日、社債[トークン]取得量、社債権[トークン所有権]喪失日、社債権[トークン所有権]喪失量、社債[トークン]保有残高などのデータ項目を有して構成される。
【0051】
また、STが受益権である場合、権利情報記録原簿データとしての受益権情報記録原簿データは、例えば図9に示すように、受益債権内容特定事項(受益債権給付内容[受益債権ID、発生済支分権、ID別受益債権額、各支分債権額]、受益債権弁済期など)、受益権譲渡期限、受益証券、委託者、信託者、信託監督人、受益者代理人、受益権原簿管理人、トークン発行量、トークン取引単位(発行/引受・売買)、トークン発行価額(トークン発行総額、各発行トークン価格、各発行時トークン単価、トークン各発行時払込金額)、トークン価格払込日などのデータ項目を有して構成される。また、権利所有権記録原簿データとしての受益権権利記録原簿データは、例えば、受益者[トークン保有者]特定情報(各受益者ID、各受益者氏名/名称・住所)、受益権[トークン]譲渡取引情報、受益権[トークン]取得日、受益権[トークン]取得量、受益権[トークン所有権]喪失日、受益権[トークン所有権]喪失量、受益権[トークン]保有残高などのデータ項目を有して構成される。
【0052】
なお、権利管理原簿31で管理するSTには、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券を含む。
そして、権利管理原簿31は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引単位をトークンとして管理する。
貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券としては、ゴールド価格に連動する事業社債が挙げられる。
なお、権利管理原簿31は、管理対象のトークンが、貴金属の市場価格に連動し、発行が行われる特性を有するデジタル証券である場合、例えば、トークン発行会社のシステム(不図示)においてトークンの発行・追加発行されたときに、生成・ST情報追加登録されるように構成されている。
【0053】
識別番号発行手段32は、例えば、図10に示すように、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)の識別番号発行請求手段13により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する機能を有して構成されている。
なお、識別番号発行手段32が発行する、個人に紐付く識別番号は、一意の番号で構成する。もしくは、「金融機関コード+支店がある場合の支店コード+口座番号」で構成してもよい。
また、識別番号発行手段32は、個人に紐付けた識別番号の発行機能に関し、識別番号発行請求手段13により識別番号の発行の請求を受けたとき、リアルタイムで識別番号を発行することができる機能と、所定時期に多数(例えば、1万件)の個人に紐付けた識別番号を一括で発行することができる機能を有し、それらのいずれかを選択できるように構成してもよい。
【0054】
識別番号提供手段33は、例えば、図11に示すように、識別番号発行手段32が発行した識別番号を証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)へ提供する機能を有して構成されている。
【0055】
識別番号記録手段34は、例えば、図12に示すように、同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの証券会社のシステムの識別番号管理手段15の管理する識別番号と他の証券会社のシステムの識別番号管理手段15の管理する識別番号とを記録する機能を有して構成されている。
【0056】
識別番号提供先管理手段35は、例えば、図13に示すように、識別番号提供手段33が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する機能を有して構成されている。
【0057】
権利管理原簿更新手段36は、例えば、図14に示すように、識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿31を更新する機能を有して構成されている。
【0058】
権利所有者情報出力手段37は、例えば、図15に示すように、定期的に(1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)する機能を有して構成されている。
【0059】
暗号化個人特定情報記録手段38は、例えば、図16に示すように、権利所有者情報出力手段37が権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)する都度、識別番号提供先管理手段35により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、識別番号管理手段15の管理する識別番号が紐付く、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿31における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する機能を有して構成されている。
【0060】
権利所有者個人特定情報復号化・出力手段39は、例えば、図17に示すように、権利管理原簿31の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)する機能を有して構成されている。
【0061】
トークン発行数量調整手段40は、例えば、図18に示すように、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行う機能を有して構成されている。
【0062】
トークン変更総量記録手段41は、例えば、図19に示すように、トークン発行数量調整手段40により変更されたトークンの発行総量を権利管理原簿31に記録する機能を有して構成されている。
【0063】
その他、デジタル証券(ST)の帳簿管理システム1は、夫々の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)に、約定後の注文を清算する清算手段(不図示)や、金利払い時や配当払いなど権利落ち日の処理の際に、権利所有者に対し電子的通知と、権利内容の処理(証券会社の開設する当該権利所有者の口座、もしくは個人が指定するアドレスや金融機関の口座への支払い)を実行する機能を備えた手段(不図示)を有するとともに、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に、金利払い時や配当払いなど権利落ち日の処理の際に、各証券会社に該当支払いを行うよう通知する機能を備えた手段(不図示)を有して構成されている。
また、デジタル証券(ST)の帳簿管理システム1は、STの発行・再発行、STの譲渡取引を行うことができる機能を備えた手段を有して構成された発行会社のST発行システム(不図示)や、証券会社とST発行会社との仲介的な取引を行うことができる機能を備えた手段を有して構成されたST取引仲介システム(不図示)などとも接続した構成となっている。
【0064】
第1実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムを用いた処理の流れ
このような構成を備えた第1実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1を用いた処理の流れを、図を用いて説明する。
本発明の特徴的な部分の説明に先立ち、デジタル証券(ST)の取引の流れを、図20図21を用いて説明する。なお、ここでは、STとしてコモディティーST(ゴールド等商品指標に価額が連動する記名社債を表示するトークン)を用いることとする。
図20はコモディティーSTのプライマリー市場での取引における処理手順の一例を示す説明図、図21はコモディティーSTのセカンダリー市場での取引における処理手順の一例を示す説明図である。
【0065】
(S1)プライマリー取引(図20
(S1-1)証券会社は、自己取引により保有を希望する量のSTの引受申込みをST発行会社に対して行い、ST発行会社との間でSTについての引受契約(以下「引受契約」という。)を締結する。
【0066】
(S1-2)ST発行会社は、プラットフォーム提供者が提供したSTブロックチェーンプラットフォーム上で、証券会社との引受契約で合意した量のSTを発行する。ここでの発行は、ST発行会社とプラットフォーム提供者が締結した発行処理委託契約に基づき、ST発行会社がプラットフォーム提供者に管理を委託した秘密鍵を用いて、プラットフォーム提供者がST発行会社に代わって行うものとする。発行されたSTは、ST発行会社ウォレット(ブロックチェーン上のST発行会社のアドレスをいう。以下同様。)に格納されるとともに、同ブロックチェーン上に、社債原簿ファイルが自動生成され、発行された社債情報が登録される。なお、ここではプラットフォーム提供者が、ST発行会社の委託を受け、社債原簿管理人となるものとする。
【0067】
(S1-3)証券会社とST発行会社は、引受契約に基づき、発行されたSTのST発行会社から証券会社への譲渡取引を行う。
【0068】
(S1-4)なお、ここでは、証券会社は、あらかじめSTの移転に必要な秘密鍵の管理をプラットフォーム提供者に対して委託し、プラットフォーム提供者はカストディアンにもなるものとする。証券会社から社債原簿管理人であるとともにカストディアンでもあるプラットフォーム提供者に対し、上記(S1-3)の譲渡取引情報の通知とSTの権利移転記録指示(譲渡取引に伴うシステム自動通知・指示)を行う。
【0069】
(S1-5)社債原簿管理人であるとともにカストディアンでもあるプラットフォーム提供者は、上記(S1-4)の通知・指示に基づき、管理の委託を受けた秘密鍵を用いて、ブロックチェーン上で取引記録を更新し、ST発行会社ウォレットから証券会社ウォレットへのST移動処理を実施する。
【0070】
(S1-6)上記(S1-5)のST移動処理に伴い、ブロックチェーン上の社債原簿の社債権者情報が自動更新される。
【0071】
なお、プライマリー取引における上記(S1-1)~(S1-4)のシステム処理は、連続的に即時自動実行される。また、上記(S1-5)の処理は、コールドウォレットにより一部手入力(署名)処理を伴うが、その実行により上記(S1-6)の処理も同時実行される。
また、ST発行会社は、社債権者保護の為の「社債管理者」の業務を信託会社等の第三者に委託する。
【0072】
なお、図20に示すコモディティーSTのプライマリー市場での取引における処理手順の例では、証券会社がST発行会社の発行するSTを引受けて、引受けたSTの募集を行い、証券会社がリスクをとる場合(引受募集)を挙げて説明したが、STのプライマリー市場での取引には、証券会社がST発行会社の発行するSTを引受けるのではなく、ST発行会社にリスクをとらせるようにして、STの募集を行う場合(一般募集)もある。
現状におけるSTの募集では、夫々の証券会社が顧客の資金をロックする必要があることから、夫々証券会社が単独で行っている。このため、STの一般募集の場合、STの応募数の集計値の報告が、夫々の証券会社からST発行会社に対して適当な時期になされ、ST発行会社は、複数の証券会社の行うSTの一般募集状況を把握し難いという課題がある。
そこで、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムでは、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)に備わる権利管理原簿を、権利情報記録原簿データの一部に、夫々の証券会社の行うSTの募集情報が集約化されたデータを有して構成するのが好ましい。
このようにすれば、一般募集の場合において、STの発行会社は、複数の証券会社の行うSTの募集状況を、権利管理原簿を介して迅速に把握でき、STの応募数が想定数よりも多い場合は抽選、応募数が想定数よりも不足する場合は発行キャンセル、発行量が不足しても発行する、発行量の不足分をいずれかの証券会社に引受けさせる等の判断がし易くなる。また、顧客は、応募時に金利などの条件を指定し、ブックビルド方式(販売者が条件に見合うところで約定させるような方式)を用いることで、適正な金利に修正することが可能になる。その結果、STの一般募集を円滑に処理することができるようになる。
【0073】
(S2)セカンダリー取引(図21
(S2-1)証券会社の顧客は、店頭市場において、発行されたSTについて証券会社から提示される商品指標に連動する価格インディケーションを参考に、証券会社に対し、指値で当該STの買(売)注文を発注する。
【0074】
(S2-2)証券会社は、上記(S2-1)の顧客注文を受けて、ST発行会社との仲介の役割を果たすプラットフォーム提供者に対し、指値で、同量の買(売)注文を発注する。
【0075】
(S2-3)プラットフォーム提供者は、上記(S2-2)の証券会社の注文情報をST発行会社に繋ぎ、ST発行会社は、プラットフォーム提供者に対し、同量のSTの売(買)注文を発注する。
【0076】
(S2-4)プラットフォーム提供者は、上記(S2-2)の証券会社からの注文と、上記(S2-3)のST発行会社からの注文をプラットフォーム提供者のシステム上でマッチングさせ、プラットフォーム提供者と証券会社、ST発行会社とプラットフォーム提供者の相対売買取引約定を同時に成立させる(システム上で自動処理される。ここでは、仲介の役割を果たすプラットフォーム提供者は、いずれも自己取引として取引を行うものとする。)。
【0077】
(S2-5)ST発行会社は、証券会社の買(売)注文に応じた、上記(S2-4)のプラットフォーム提供者を通じた証券会社との売(買)約定に伴い、プラットフォーム提供者の提供するSTブロックチェーンプラットフォーム上で、1日1回、約定量に応じたSTの追加発行(ネット顧客売約定の場合は、ST発行会社のST自己保有分の積増し又は償還取引)を行う。STの追加発行はST発行会社ウォレットの格納量に反映されるとともに、同ブロックチェーン上の社債原簿ファイルに、都度追加発行された社債情報(社債権者情報を除く)が追加登録される。
【0078】
(S2-6)ST発行会社とプラットフォーム提供者の売買約定に基づき、発行されたSTの譲渡取引を行う。
【0079】
(S2-7)プラットフォーム提供者と証券会社の売買約定に基づき、発行されたSTの証券会社への譲渡取引を行うとともに、証券会社から社債原簿管理人であるとともにカストディアンであるプラットフォーム提供者に対し、譲渡取引情報の通知とSTの権利移転記録指示を行う(譲渡取引に伴うシステム自動通知・指示)。
【0080】
(S2-8)社債原簿管理人であるとともにカストディアンであるプラットフォーム提供者はST発行会社及び証券会社からの通知・指示に基づき、ブロックチェーン上で、取引記録を更新し、ST発行会社ウォレットと証券会社ウォレットの間でのST直接移動、または、プラットフォーム提供者自己ウォレットを介しての間接移動を、管理する夫々の複数秘密鍵を使用して実施する。
【0081】
(S2-9)上記(S2-8)のST移動処理に伴い、ブロックチェーン上の社債原簿の社債権者情報が更新される(この時点で対抗要件が具備される)。
【0082】
なお、セカンダリー取引における上記(S2-1)~(S2-7)のシステム処理は、連続的に即時自動実行される。また、上記(S2-8)の処理は、コールドウォレットにより一部手入力(署名)処理を伴うが、その実行により上記(S2-9)の処理も同時実行される。
【0083】
次に、デジタル証券(ST)の帳簿管理システム1を用いた処理の流れを、図22図27を用いて説明する。
証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)では、上述したようなSTの取引(S1-1)、(S1-3)、(S1-4)、(S2-1)、(S2-2)、(S2-7)がST取引手段11を介在して行われる。
また、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30では、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)で取引されたSTの特性を記録する権利情報記録原簿データとSTの所有権を記録する権利所有権記録原簿データとが権利管理原簿31に記録される((S1-6)、(S2-9))。
【0084】
(S11)ST取引時における処理:識別番号の発行関連(図22図23
STの取引が行われたとき、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)では、顧客個人の特定情報管理手段12は、STの取引を行う顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する。
また、識別番号発行請求手段13は、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に対し、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する。
【0085】
権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30では、識別番号発行手段32は、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)の識別番号発行請求手段13により識別番号の発行の請求を受けた、顧客に紐付けた識別番号を発行する。
また、識別番号提供手段33は、識別番号発行手段32が発行した識別番号を証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)へ提供する。
また、識別番号記録手段34は、同一ブロックチェーン上の異なるアドレスに一つの証券会社のシステムの識別番号管理手段15の管理する識別番号と他の証券会社のシステムの識別番号管理手段15の管理する識別番号とを記録する。
また、識別番号提供先管理手段35は、識別番号提供手段33が識別番号を提供した、提供先の証券会社の情報を識別番号に紐付けて管理する。
【0086】
証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)では、識別番号受取手段14は、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30により発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る。
また、識別番号管理手段15は、識別番号受取手段14が受け取った識別番号を、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理する。
【0087】
(S12)ST清算の都度行われる処理(図24
証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)では、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段16は、STを清算する都度、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に対し、ST売買のサマリ情報と、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する。
権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30では、権利管理原簿更新手段36は、識別番号が付された当該権利所有者の変更情報を受け取り、当該STの加算・減算内容を集計し、新たな権利データを管理する管理簿となるように権利管理原簿31を更新する。
【0088】
(S13)定期的な処理:断面情報(現在の権利所有者情報)の出力処理(図25
権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30では、権利所有者情報出力手段37は、定期的に(1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する。
また、暗号化個人特定情報記録手段38は、権利所有者情報出力手段37が権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する都度、識別番号提供先管理手段35により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、識別番号管理手段15の管理する識別番号が紐付く、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿31における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する。
【0089】
(S14)権利管理原簿の検査時の処理(図26
権利所有者個人特定情報復号化・出力手段39は、権利管理原簿31の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化して、当該権利管理原簿を出力する。
【0090】
(S15)その他の処理:トークン数量の過不足発生時の処理(図27
トークン発行数量調整手段40は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行う。
トークン変更総量記録手段41は、トークン発行数量調整手段40により変更されたトークンの発行総量を権利管理原簿31に記録する。
【0091】
なお、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときにトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更が必要となることにつき、社債価格をゴールド価格に連動させるために、トークンの数量の増減を行う処理(デジタル社債の自動追加発行・償却処理)が必要となる場合を用いて説明する。なお、ここでは説明の便宜上、社債の発行に伴う手数料等は考慮しないものとする。
【0092】
(プライマリー市場)
例えば、1社債単位のトークン(1トークン)がゴールド1gと交換できるものとする。また、ゴールド1gの市場価格が5,000円であるとする。そして、プライマリー市場において、ST発行会社が、1口の発行価格5,000円で社債を100口発行し、全て購入済になっているものとする。
【0093】
(セカンダリー市場)
(1)社債の買い注文がある場合、売るべきトークンがないため、ST発行会社はST発行会社が新たに買い注文に対応しうる所定数量のトークンを追加発行(発行価格5,000円)する。
この場合、購入者が保有する1社債の取引単位としてのトークン数(ゴールド1gに交換するために必要なトークン数量)は変わらないが、トークンの発行総量が増加する。
このため、トークンの追加発行による発行数量調整分の変更が必要となる。
(2)ゴールド1gの市場価格が7,000円に上昇した場合、ゴールド1gに交換するために必要なトークン数は1.4倍に増える(1.4トークン)。このため、購入者が保有するトークン数を1.4トークンに増加させる必要がある。しかるに、初期発行時の発行口数が100口であるため、40トークンが不足する。そこで、ST発行会社は40トークンを追加発行することになる。
この場合、購入者が保有する1社債の取引単位としてのトークン数(ゴールド1gに交換するために必要なトークン数量)とともに、トークンの発行総量が増加する。
このため、トークンの追加発行による発行数量調整分の変更が必要となる。
(3)購入者がトークンをゴールドと交換した場合、トークンは償却されるため、トークンの発行総量が減少する。
このため、トークンの償却による発行数量調整分の変更が必要となる。
【0094】
第1実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムの効果
第1実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、夫々の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、STの取引を行う顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を暗号化した状態で、当該証券会社の開設する顧客個人の口座番号に紐付けて管理する顧客個人の特定情報管理手段12を有した構成としたので、夫々の証券会社は、個人の特定情報が認識できないようにした状態で個人のST取引に関する情報を管理することができる。このため、証券会社において、外部に個人の特定情報が流出するリスクを低減することができる。
【0095】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、夫々の証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、顧客個人に紐付く識別番号の発行を請求する識別番号発行請求手段13と、発行され、提供された、顧客個人に紐付く識別番号を受け取る識別番号受取手段14と、受け取った識別番号を、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)に紐付けた状態で管理する識別番号管理手段15と、STを清算する都度、識別番号を付して権利所有者の変更情報を提供する、ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段16と、を有した構成としたので、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30に、識別番号は認識され、顧客個人の特定情報は認識できないようにした状態で権利所有者の変更情報の更新を行わせることができる。
【0096】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30が、顧客に紐付けた識別番号を発行する識別番号発行手段32と、識別番号を証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)へ提供する識別番号提供手段33を有した構成としたので、証券会社のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)において、顧客個人の特定情報を暗号化した状態で識別番号の口座番号に紐付けて管理することができる。
【0097】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、定期的に(1日1回、1週間に1回、1か月に1回など)権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する権利所有者情報出力手段37を有した構成としたので、権利管理原簿31における権利所有者情報の出力処理の回数を減らし、処理の効率化を図ることができる。
【0098】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、権利所有者情報出力手段37が権利管理原簿31の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力する都度、識別番号提供先管理手段35により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、識別番号管理手段15の管理する識別番号が紐付く、顧客個人の特定情報管理手段12により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿31における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する暗号化個人特定情報記録手段38を有した構成としたので、権利管理原簿31に個人の特定情報(氏名・名称、住所など)が暗号化されたままの状態で記録されるため、権利管理原簿31において、権利所有者の個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、証券会社以外の第三者(権利管理原簿を管理する権利管理原簿管理人やST発行会社など)が認識できないようにすることが可能となる。このため、権利管理原簿を管理する主体(権利管理原簿管理人など)を介在した、権利所有者の個人の特定情報の流出リスクを無くすことができる。
【0099】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30は、権利管理原簿31の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、暗号化された権利所有者の個人情報を復号化して、当該権利管理原簿31を出力する権利所有者個人特定情報復号化・出力手段39をさらに有し、権利管理原簿31の監査のときに、各証券会社の口座管理者の承認のもとに暗号化された権利所有者個人の特定情報を復号化する構成としたので、権利所有者に第三者対抗要件があることを明確化できる。また、権利管理原簿31の監査のとき以外は、権利所有者個人の特定情報は暗号化されたままであるため、権利所有者の個人の特定情報の流出リスクを極力無くすことができる。
【0100】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、権利管理原簿31で管理するSTには、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券を含み、権利管理原簿31は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引単位をトークンとして管理し、権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)30は、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券の取引においてトークンの数量の過不足が発生したときのトークンの追加発行又は償却による発行数量調整分の変更を自動で行うトークン発行数量調整手段40と、トークン発行数量調整手段40により変更されたトークンの発行総量を前記権利管理原簿31に記録するトークン変更総量記録手段41と、をさらに有した構成としたので、トークンとして扱い、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行うことで、量を管理し、増減する特性を有するデジタル証券を帳簿管理することができる。
【0101】
また、本実施形態のデジタル証券(ST)の帳簿管理システム1によれば、貴金属の市場価格に連動し、随時発行が行われる特性を有するデジタル証券が、ゴールド価格に連動する事業社債である構成としたので、トークンとして扱い、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行うことで、量を管理し、増減する特性を有するデジタル証券を具現化できる。
【0102】
従って、本実施形態によれば、権利移転情報の書き換え頻度が多く、小口化する特性を有するデジタル証券における権利管理原簿の更新処理効率を向上させ、かつ、個人の特定情報(氏名・名称、住所など)の外部への流出リスクを低減することが可能で、また、無期限(臨時償還を設定)、無金利で、随時発行・償却を行う特性を有するデジタル証券を帳簿管理可能なデジタル証券(ST)の帳簿管理システムが得られる。
【0103】
以上、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムについて実施形態を用いて説明したが、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムは、上記実施形態で説明した構成に限られるものではなく、本発明の請求項の範囲内でどのような形態にも構成可能である。
【0104】
例えば、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、個人情報をブロックチェーン上で管理しない形態を想定し、識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、データベースで構成される顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、顧客個人の特定情報を復号化するように構成できる。この場合は、顧客個人の特定情報は、証券会社のシステムに備わるデータベースで管理される。証券会社のシステムは、APIなどを介して、権利管理原簿管理システムにネットワーク接続し、権利管理原簿管理システムでは、必要に応じて、識別番号を媒介として証券会社のシステムから顧客個人の特定情報を取得するように構成する。
【0105】
また、例えば、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、個人情報をブロックチェーン上で管理する形態を想定し、識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、ブロックチェーンで構成される顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、顧客個人の特定情報を復号化するように構成できる。この場合は、顧客個人の特定情報は、証券会社のシステムと、権利管理原簿管理システムとに構築される、共通のブロックチェーンに記録される。但し、この場合も顧客個人の特定情報は、口座を管理する証券会社の管理下にあり、各証券会社の口座管理者が承認をしたときに、顧客個人の特定情報を復号化するように構成する。
【0106】
さらには、例えば、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、個人情報が証券会社の口座で管理されず、個人が紐付くアドレスを有する所定のブロックチェーン上で管理される形態を想定し、所定のブロックチェーンで構成される識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、個人が承認をすることで、必要時(もしくは承認した機能に対し常時)識別番号が紐付いた顧客個人の特定情報を復号化するように構成してもよい。
【0107】
また、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムの実施形態では、デジタル証券(ST)の取引の流れを、STとしてコモディティーST(ゴールド等商品指標に価額が連動する記名社債を表示するトークン)を用いて説明したが、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムは、コモディティーSTの取引に限定されるものではなく、例えば、不動産STの取引や、さらには、電子記録移転権利などの帳簿管理の対象となるものに適用可能である。
【0108】
なお、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムでは、上述のとおり、暗号化個人特定情報記録手段は、「権利所有者情報出力手段が権利管理原簿の断面情報(現在の権利所有者情報)を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)する都度、識別番号提供先管理手段により提供先の証券会社の情報と紐付けて管理されている識別番号を参照し、識別番号の提供先の証券会社のシステムから、識別番号管理手段の管理する識別番号が紐付く、顧客個人の特定情報管理手段により管理されている暗号化された顧客個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を、暗号化されたままの状態で受け取り、権利管理原簿における識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する」構成となっており、夫々の証券会社は、個人の特定情報が認識できないようにした状態で個人のST取引に関する情報を管理することができ、証券会社において、外部に個人の特定情報が流出するリスクを低減することが可能である。しかし、現状の法令上、例えば、社債薄などの権利管理原簿の多くについて、一部の権利者が原簿に記録されている情報を参照する権利を有する者から権利行使された場合、権利管理原簿に記載された個人情報を開示する必要がある。
そこで、本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムにおいては、権利所有者個人特定情報復号化・出力手段を、「権利管理原簿の監査をする検査担当者の指示を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたとき」の他に、「所定STについての権利管理原簿に記録されている情報を参照する権利を有する者による当該情報の開示請求を受けて、各証券会社の口座管理者が承認をしたとき」も、暗号化された権利所有者個人の特定情報(氏名・名称、住所など)を復号化して、当該権利管理原簿を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)するように構成するのが好ましい。
他方、将来、上述した法令上の課題が解消した場合、権利管理原簿に記録されている情報を出力(例えば、画面表示、CSVデータ出力、印刷等)するときは、個人特定情報は暗号化されたままの状態で読み出し、暗号化されたままの状態で出力するのがよい。暗号化されたままの状態で出力しても、暗号化した情報自体を比較する技術を用いることで、権利管理原簿に記録されている個人を特定することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のデジタル証券(ST)の帳簿管理システムは、ブロックチェーンなどの技術を用いてSTを帳簿管理することが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 デジタル証券(ST)の帳簿管理システム
10(1)~10(n) 証券会社のシステム
11 ST取引手段
12 顧客個人の特定情報管理手段
13 識別番号発行請求手段
14 識別番号受取手段
15 識別番号管理手段
16 ST売買サマリ情報及び権利所有者変更情報提供手段
30 権利管理原簿管理システム(または権利管理原簿管理機能)
31 権利管理原簿
32 識別番号発行手段
33 識別番号提供手段
34 識別番号記録手段
35 識別番号提供先管理手段
36 権利管理原簿更新手段
37 権利所有者情報出力手段
38 暗号化個人特定情報記録手段
39 権利所有者個人特定情報復号化・出力手段
40 トークン発行数量調整手段
41 トークン変更総量記録手段
【要約】      (修正有)
【課題】権利移転情報の書換頻度が多い原簿の更新処理効率向上し、個人特定情報の外部流出リスク低減する帳簿管理システムを提供する。
【解決手段】デジタル証券(ST)の帳簿管理システム1において、システム10は、ST取引手段11、ST取引者個人の特定情報を暗号化状態で管理する手段12、識別番号の発行を請求し、個人特定情報に紐付け管理する手段13~15及びST清算の都度、ST売買のサマリ情報と識別番号を付し権利所有者変更情報を提供する手段16を有し、システム30は、原簿31、識別番号発行・提供手段32、33、提供先情報を識別番号に紐付け管理する手段35、権利所有者変更情報を受取りSTの加算・減算内容を集計し原簿を更新する手段36、定期的に原簿の現在の権利所有者情報を出力する手段37及び識別番号提供先から個人特定情報を暗号化状態で受取り原簿の識別番号が紐付く権利所有者情報欄に記録する手段38を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
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図26
図27