(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】燃料供給装置及び燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240405BHJP
F02B 47/02 20060101ALI20240405BHJP
F02M 25/022 20060101ALI20240405BHJP
F02M 25/025 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F02M37/00 331Z
F02B47/02
F02M25/022 D
F02M25/025 T
F02M37/00 P
F02M37/00 341H
F02M37/00 341Z
(21)【出願番号】P 2021100606
(22)【出願日】2021-06-17
(62)【分割の表示】P 2020572572の分割
【原出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520504253
【氏名又は名称】株式会社ラディッシュ・ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-227676(JP,A)
【文献】特開2018-135775(JP,A)
【文献】特開2007-255297(JP,A)
【文献】特開2013-234654(JP,A)
【文献】特開2009-002161(JP,A)
【文献】特開2016-070263(JP,A)
【文献】特開昭58-183791(JP,A)
【文献】特開2007-192063(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00~37/54
F02M 25/022
F02M 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム油を含む液状バイオマス燃料を燃料原液としディーゼルエンジンに供給する装置において、
前記燃料原液が貯留された燃料原液タンクと、
当該燃料原液タンクから前記ディーゼルエンジンに前記燃料原液を供給しながら当該燃料原液タンクへ戻る様に常時循環させる循環配管とを備え、
前記循環配管における前記ディーゼルエンジンから前記燃料原液タンクへの戻り配管側に圧力調整弁を配置し、
前記ディーゼルエンジンは前記循環配管に対して枝流路を介して接続され、
前記循環配管中の圧力が大気圧以上に保持され、且つ前記循環配管中の前記燃料原液の流速が0.3m/秒以上に保持されるように構成され
、
前記循環配管中に前記燃料原液を高速で回転する撹拌機に通して剪断力を与え前記燃料原液を微細化する処理を行う微細化処理装置が敷設された事を特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記循環配管中に以下1)
と2)の少なくとも一つの処理装置が敷設されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
1
)前記燃料原液に対して2~30%の水を投入し油中水滴型のエマルションを作成し乳化処理を行う乳化処理装置。
2)前記燃料原液に対して空気もしくは酸素ガスを投入しナノバブルを発生させ分散処理を行うナノバブル分散処理装置。
【請求項3】
前記燃料原液の温度調整ができるように温度調整装置を備えた事を特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記循環配管中の少なくとも一部の配管がジャケット付き配管である事を特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
パーム油を含む液状バイオマス燃料を燃料原液としてディーゼルエンジンに供給する供給装置において、
前記燃料原液が貯留された燃料原液タンクと、前記燃料原液タンクから出て前記燃料原液タンクへ戻る循環配管を備え、
前記循環配管に対して、枝流路と前記枝流路を開閉するユースポイントバルブを介して、前記ディーゼルエンジンが接続され、
前記ディーゼルエンジンの運転の有無に関わらず、前記循環配管における前記燃料原液の循環を継続的に行うことができるように構成され
、
前記循環配管中に前記燃料原液を高速で回転する撹拌機に通して剪断力を与え前記燃料原液を微細化する処理を行う微細化処理装置が敷設されたことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項6】
前記撹拌機には、攪拌羽根の最大周速が15m/秒以上で回転する撹拌機を用いることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の燃料供給装置。
【請求項7】
請求項1
~6の何れかに記載の燃料供給装置を用いて、前記燃料原液タンクから出て前記循環配管を経て前記燃料原液タンクに戻る環状流路を形成し、
前記循環配管中の圧力を大気圧以上に保持し、且つ前記循環配管中の前記燃料原液の流速を0.3m/秒以上に保持しながら、前記燃料原液を、前記ディーゼルエンジンの運転の有無に関わらず継続的に、前記環状流路で循環させる
とともに、
前記微細化処理装置を用いて、前記燃料原液を前記撹拌機に通して剪断力を与え前記燃料原液を微細化する処理を行う事を特徴とする液状バイオマス燃料の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所などにおけるディーゼルエンジンにバイオマス液体燃料を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスとは、化石燃料以外の生物由来の再生可能資源を指す。また、パーム油バイオマス発電の原料となる油やしは、成長時に二酸化炭素(CO2)を吸収するため、燃やしてもCO2を排出したと見なされないカーボンニュートラルになる。
【0003】
バイオマス発電は火力発電であり、従来電源と同じ同期発電機によるため、電力システム全体の周波数変動に対する耐性を上げ、信頼度維持に貢献するということになる。
液体バイオマス発電の多くは内燃機火力発電であり、起動から短時間で送電が可能であり
またブラックアウト状態からでも起動可能であり、復旧時間の短縮に貢献することができる。出力調整範囲が発電ユニット単体で50%~100%であり、一般的には複数台の発電ユニットにより発電所を構成しているので、発電所全体としては10%~100%の調整力を持つ。このように電力システム全体に液体バイオマス発電の総和が増えることにより、柔軟性が増すといえる。
【0004】
パーム油は、化石燃料と比較して最も顕著な差は粘度が高いことにある。粘度は、ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプやノズルでの燃料の流動特性に影響を与え、燃焼室に噴射された際、微粒化の状態を左右する。粘度が高い場合、燃料液滴直径が大きくなりディーゼルエンジンにおける燃焼特性を悪化させ、燃費の悪化または長時間の連続運転が出来なくなってしまう。
【0005】
パーム油の温度を上昇させればパーム油の粘度は下がり、上述の問題は解決するが、パーム油は温度が10℃上がると酸化劣化速度が約2倍になる。酸化劣化したパーム油は、ディーゼルエンジンに対して長期的に悪影響を及ぼす。
【0006】
また近年、エマルション燃料が多く報告されている。エマルション燃料とは燃料中に水を添加し、燃料と水は互いに混ざり合わないため油中水滴型乳化状態にしたものをいう。その場合水の液滴径は、数百nmから数十ミクロン程度となる。
【0007】
エマルション燃料には、燃焼排ガス中に発生するNOx及び煤塵を少なくできるように粒子径や粒度分布の調製が可能としている。(特許文献1)
【0008】
エマルション燃料は、時間の経過とともに水と油に分離することが一番大きな問題であり、そもそもディーゼルエンジンに分離したエマルション燃料を投入すると停止や故障の原因となる。
【0009】
エマルション燃料の貯蔵が上記問題点の一番の回避すべき点として特許文献2では貯蔵しない連続式のエマルション製造装置を用いたエマルション燃料システムが記載されている。
またエマルション燃料を用いることにより燃焼効率の向上も記載されている。
【0010】
特許文献3には、エマルション燃料の安定化方法及び多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルまたはその誘導体の乳化剤を用いるエマルション燃料が記載されている。
しかしながらディーゼルエンジンには、出来るだけ乳化剤は投入したくない。
【0011】
特許文献4には、パームステアリン等の高流動点植物油をディーゼル機関で単独使用できるように燃料油供給装置が記載されている。この燃料油供給装置を使用するディーゼル機関は、そもそも大型のディーゼル機関を想定しており市販している一般的なディーゼル発電機には適用が難しいしディーゼル機関で消費しきれなかった余剰の燃料を戻すためのものであり、あくまでディーゼル機関が起動している場合を想定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平9-286993号公報
【文献】特開2011-122035号公報
【文献】特開2019-188294号公報
【文献】特開2016-70263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら国内でパーム油を含む液状バイオマス燃料を用いたディーゼルエンジンによる発電は、正確にはカーボンニュートラルとは言い難い。パーム油は、国内で生産されずほぼアジアの島国からの輸入に頼っており、船を用いて輸送されている。そういう意味では、地産地消が推奨される。
【0014】
パーム油による発電設備を地産地消すなわち海外で運転するためには、設備が簡易であり、故障の少なく、故障した際にも容易に修理できることが求められる。
【0015】
また、パーム油自体の温度を大きく上げるのではなく、パーム油自体の特性から粘度を下げ、ディーゼルエンジンの燃焼効率を上げる必要もある。
【0016】
また、パーム油は、その原料である油やしの産地により物性値が大きく変わる。固化温度が変わるだけでなく、エマルション燃料に適した物性、ナノバブルを投入分散することにより燃費向上が見られる物性、また高速の回転式分散機を通過させることだけで燃費向上が見られるパーム油もある。
【0017】
本発明は、これらの各種パーム油を含む液状バイオマス燃料を用いたディーゼルエンジンによる発電を簡易な設備で安定運転できる燃料供給装置と燃料供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本課題を解決するために燃料供給装置は、パーム油を含む液状バイオマス燃料を燃料原液としディーゼルエンジンに供給する装置において、前記燃料原液が貯留された燃料原液タンクと当該燃料原液タンクからディーゼルエンジンに燃料原液を供給しながら当該燃料原液タンクへ戻る様、常時循環し、循環配管戻り側に圧力調整弁を備えた循環配管を備えており、循環配管中の圧力を大気圧以上に保持されている事及び循環配管中の流速を0.3m/秒以上に保持されている事を特徴とするものである。
【0019】
また、燃料供給装置は、パーム油を含む液状バイオマス燃料を燃料原液としディーゼルエンジンに供給する装置において、前記燃料原液が貯留された燃料原液タンクと当該燃料原液タンクからディーゼルエンジンに燃料原液を供給しながら当該燃料原液タンクへ戻る様、常時循環し、循環配管戻り側に圧力調整弁を備えた循環配管を備えており、
循環配管中の圧力を大気圧以上に保持されている事及び循環配管中の流速を0.3m/秒以上に保持されている事及び前記循環配管中に以下1)~3)の少なくとも一つが敷設されたことを特徴とするものである。
1)原液を高速で回転する撹拌機に通して剪断力を与え燃料原液を微細化する処理を行う微細化処理装置。
2)燃料原液に対して2~30%の水を投入し油中水滴型のエマルションを作成し乳化処理を行う乳化処理装置。
3)燃料原液に対して空気もしくは酸素ガスを投入しナノバブルを発生させ分散処理を行うナノバブル分散処理装置。
【0020】
また、前記燃料供給装置に燃料原液の温度調整ができるように温度調整装置を備えている事を特徴とする上記記載の燃料供給装置であり、配管がジャケット付き配管である事を特徴とする上記の燃料供給装置である。
また本発明は、上記のバイオマス燃料を燃料原液としディーゼルエンジンに供給する装置を用いて、バイオマス燃料を燃料原液としディーゼルエンジンに供給する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、各種パーム油を含む液状バイオマス燃料を用いたディーゼルエンジンによる発電を簡易な設備で安定運転できる燃料供給装置を提供することを可能とする。
本発明によると、各種パーム油を含む液状バイオマス燃料を用いたディーゼルエンジンによる発電を簡易な設備で安定運転できる燃料供給方法を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】(A)は、燃料原液が28℃と40℃の場合の見かけ粘度とずり速度の関係を示すグラフ。(B)は、燃料原液がずり速度一定における見かけ粘度の時間依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明のパーム油を含む液状バイオマス燃料とは、生物体であるヤシ科に属する植物の持つエネルギーを利用したアルコールなどの液状の燃料であり、パーム油100%でも構わないし、パーム核油や廃食油でも構わない。またカシューナッツ穀液を精製したものを含んでも、その他の油種を含んでも構わない。
【0025】
図1を用いてこの実施の形態にかかる燃料供給装置の一例を説明する。
この燃料供給装置は、燃料原液タンク1と、燃料原液タンク1から出て燃料原液タンク1に戻る循環経路である循環配管3を備えている。ディーゼルエンジン4は循環配管3に対して枝流路41を介して接続されている。循環配管3は、燃料原液タンク1に貯留された燃料原液を枝流路41を介してディーゼルエンジン4に供給する供給配管31と、余剰の燃料原液を燃料原液タンク1に戻す戻り配管33とを備えており、さらにこの例では複数のディーゼルエンジン4の枝流路41間をつなぐ連絡配管32を備えている。図では、複数のディーゼルエンジン4が枝流路41を介して連絡配管32によって直列に接続されているが、並列に接続するものであっても構わないし、ディーゼルエンジン4が単数の場合には連絡配管32は省略され得る。ただし、いずれの場合にあっても、ディーゼルエンジン4は枝流路41を介して循環配管3に接続されている必要があり、ディーゼルエンジン4に対する燃料原液の供給の有無に関わらず、供給配管31及び戻り配管33からなる循環配管3又は供給配管31、連絡配管32及び戻り配管33からなる循環配管3における燃料原液の循環通液が可能となるように構成されるものとする。
【0026】
供給配管31の経路中には、供給ポンプ2と付加装置5が接続されている。それぞれのディーゼルエンジン4は、ユースポイントバルブ8を介して循環配管3と接続されている。ユースポイントバルブ8は枝流路41中に介在したものであっても構わないし、見かけ上ユースポイントバルブ8に搭載されたものであっても構わない。また見かけ上、ディーゼルエンジン4が循環配管3に直結されているように見える場合であっても、燃料原液が流路としては枝流路41が存在して、ディーゼルエンジン4に対する燃料原液の供給が行われるか否かにかかわらず循環配管3中における燃料原液の循環移動が継続されるような形態であっても構わない。
戻り配管33の経路中には、圧力計7と圧力調整弁6が接続されている。
【0027】
この燃料供給装置の運転時には、前述の液状バイオマス燃料からなる燃料原料を流動性のある状態で燃料原液タンク1に投入する。投入された燃料原液は、供給ポンプ2により循環配管3へ通液される。供給配管31から通液された燃料原液は、連絡配管33を経て各ディーゼルエンジン4に供給された後、循環配管3の戻り配管33を通液し燃料原液タンク1に戻り循環する。ディーゼルエンジン4には、準備の出来ている順に循環配管のユースポイントバルブ8を開け燃料原液を供給する。通常複数台のディーゼルエンジンを用いることが多く想定されるが、全台のディーゼルエンジンに供給しても循環配管3の戻り配管33に備えられた圧力調整弁6により循環配管内を大気圧以上
、好ましくは0.02MPaG、より好ましくは0.05MPaG以上に保持される(圧力計7)。これによって、循環配管3中の空気溜まりの発生を抑制し、流れの均一化を促進することができが、これらの作用効果を実現するには、流体圧力のみならず、流速も適正に保たれる必要がある。具体的には、循環配管3中の燃料原液の流速は0.3m/秒以上、より好ましくは0.5m/秒以上に保持されるべきである。但し、循環配管3中の流速を1.3m/秒以上の流速にした場合は、効果より圧力損失がまさりエネルギーの無駄遣いとなるため注意を要する。
【0028】
また循環配管3とディーゼルエンジン4毎のユースポイントバルブ8の距離は出来るだけ短くし、かつユースポイントバルブ8とディーゼルエンジン4の距離もデッドスペースを減らすために極力短くした方が良い。
【0029】
燃料原液は、温度低下すると固化する。また燃料原液の粘度は、温度依存性が高い。
また燃料原液は、チクソトロピー性のレオロジー特性を持っている。チクソトロピー性とは、一般的には剪断応力を受けると粘度が次第に低下し、また剪断応力を受けなければ粘度が次第に上昇するレオロジー特性を言う。また、剪断速度が急に変化した場合には、粘度が一定値に安定するのに時間がかかる事を云う。
【0030】
図2(A)に、燃料原液が28℃と40℃の場合の見かけ粘度(ηa)とずり速度(D)の関係を示す。実線は、パーム油100%であり、点線はパーム油に対して10%の水をエマルション化したものである。それぞれ28℃と40℃の時の見かけ粘度(ηa)の変化を示す。本願の燃料原液は、ずり速度が小さい範囲では粘度低下が大きく変化し、ずり速度が大きな範囲では粘度低下が小さいチクソトロピー特性を持っていることが解る。
【0031】
図2(B)に、パーム油100%の燃料原液がずり速度(D)一定における見かけ粘度(ηa)の時間(T)との関係を示す。これにより見かけ粘度(ηa)は、大きな時間依存性があることが解る。
【0032】
これらより燃料原液の粘度はずり速度(D)が小さい範囲で特に低粘度化の効果を発揮でき、時間依存性がある事から常時通液することにより省エネルギーを実現できる。すなわち循環配管中の流速が0.3m/秒以上、より好ましくは0.5m/秒以上に保持されている事により、ずり速度の小さい範囲で特に低粘度化の効果を発揮できるのである。なお、燃料原液の流速は1.3m/秒未満とすることが好ましい。それ以上に流速を上昇させても効果が少なく圧力損失ばかり大きくなってしまいエネルギーの無駄遣いとなってしまう。
【0033】
これ故に、循環配管3を敷設し燃料原液タンク1から燃料原液をディーゼルエンジン4に供給しながら燃料原液タンク1へ戻る様に構成された環状流路を常時循環することによって、循環配管3内の燃料原液の粘度は低下して供給しやすい状態を維持し、また少なくとも1台以上のディーゼルエンジン4が何らかの理由で止まっても燃料原液の粘度上昇は生じない。
【0034】
逆に循環配管3がない場合や、一方通行であり、ディーゼルエンジン4が停止した場合、配管中の燃料原液は粘度上昇して供給し難くなってしまう。また、循環配管3が設けられている場合でも、枝流路41を経ずしてディーゼルエンジン4が循環配管3中に介在するなどする場合には、ディーゼルエンジン4が停止すると循環配管3における燃料原液の循環移動が継続できなくなり、配管中の燃料原液は粘度上昇して供給し難くなってしまう。従ってこのような接続は避けるべきである。
【0035】
循環配管戻り側の戻り配管33には、圧力調整弁6を備えて循環配管3中の圧力を大気圧以上に保持し、循環配管3中の燃料原液の流速を0.3m/秒以上に保持することにより、燃料原液に適度に剪断力が加わり目的の燃料原液の粘度状態を得られる。
【0036】
また燃料原液タンク1には、加熱装置(図示せず)が配されることが適当である。温度低下による固化を防ぐためであるが、パーム油自体は、水に比べ非常に熱交換率が悪く温度が上昇しづらい。その為貯留しているだけでは目的の温度まで上昇させるのに相当な時間を要するが、循環配管3中に燃料原液を常時通液する事で、燃料原液タンク内は、攪拌状態となり加熱装置の効率が上がる。
【0037】
循環配管3やその他配管やバルブ等は、ジャケット付き配管にすることによって、熱問題を減少させることができる。常時循環配管3の配管中に燃料原液が通液されている事でジャケットによる熱交換率も上がり目的とする温度の制御が容易となる。パーム油は温度が10℃上がると酸化劣化速度が約2倍
になり精密な温調の効果も期待できる。
【0038】
燃料原液がエマルション燃料の場合は特に気を付ける必要がある。温度が高くなると粘度の温度依存性から低粘度化しエマルションが分離しやすい。故にエマルションが分離しにくく低粘度化の恩恵が受けられる温度域を分析し、その温度域での精密温度調整を必要とする。
【0039】
また、これらの温度調節用熱源は、ディーゼルエンジン4からの排熱を利用することが好ましい。ディーゼルエンジン4からは、十分な排熱が発生しこれらだけでは使用しきれないため、有効利用をさらに図るための手段を講じることが、より望ましい。
【0040】
また、燃料原液の循環配管3には、そのパーム油の特性により各種別の付加装置5を敷設する事ができる。
付加装置5としては、微細化処理装置、乳化処理装置、ナノバブル分散処理装置を例示することができ、これらの1種または複数種を選択して実施することができる。
【0041】
微細化処理装置:燃料原液を高速で回転する撹拌機に通して剪断力を与え燃料原液を微細化する処理を行う微細化処理装置を採用した場合、処理をしない場合に比べてディーゼルエンジン4の燃費が向上する。理由の詳細は不明だが、パーム油には各種高分子が存在しその一部が低分子化することで、その効果が発揮されると考えているし、常時循環配管3中を通液する事で効果が維持できる。
【0042】
高速で回転する撹拌機には、通常攪拌羽根の最大周速が15m/秒以上で回転する撹拌機を用いることが望ましい。例えばクレアミックス、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)やフィルミックス(プライミクス社製)が好適である。
【0043】
燃料原液に対して2~30%の水を投入し油中水滴型エマルションを作成し乳化処理装置の場合、静置しておくと水及び油が分離する。特に分離した水がディーゼルエンジンに供給されると故障の原因となる。この場合常時循環配管中に通液され、配管中では大気圧以上の圧力と0.3m/秒以上の流速を保持することでエマルションの分離が回避できる。
またエマルション燃料の効果は前述の通りだが、ディーゼルエンジン内で水蒸気爆発を伴い完全燃焼に近づくことから燃費も向上すると考えられる。
【0044】
乳化処理装置:乳化処理装置としては各種の乳化処理装置が用いられ得るが、高速回転型乳化分散機が好ましい。高速回転型乳化分散機としては、例えばクレアミックス、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)やフィルミックス(プライミクス社製)が好適であるし、高圧ホモジナイザーや超音波式乳化分散機、ボールミルやビーズミルも用いられる。
【0045】
ナノバブル分散処理装置:燃料原液に対して空気もしくは酸素もしくはオゾンガスを投入しナノバブルを発生させ分散処理するナノバブル分散処理装置の場合も上記と同様である。ナノサイズの気泡とすることでディーゼルエンジン中での酸素の影響で完全燃焼に近づくことから燃費は向上すると考えられる。
【0046】
ナノバブル分散処理装置としては、空気や酸素、オゾンガス等を燃料原液中に吹き込み、流れを制御してキャビテーションを発生させナノバブル化する方法や市販品のナノバブル発生装置を組み込んでも構わない。
【0047】
また、ナノバブルを水に分散し、乳化時にそのナノバブル水を用いるような複合的処理を行っても構わない。溶存酸素量が増加することが原因か理由は判明しないが乳化状態の安定時間が延長し効果が大きい。
【0048】
上述した3種の処理装置を少なくとも一つ以上敷設した場合にも、循環配管戻り側に圧力調整弁6を備え循環配管中の圧力を大気圧以上に保持し、循環配管中の燃料原液の流速を0.3m/秒以上に保持することでより効果が期待できるし、ディーゼルエンジン4が故障や定期メンテナンスで休止中も繰り返し各種処理が可能となり、燃料原液の供給は、常に最善が保たれる。
【0049】
これらより、設備が簡易であり、故障の少なく、故障した際にも容易に修理できる燃料供給装置が供給できるものであるが、本発明はこの実施の形態に限るものではなく、請求項に記載の発明の趣旨を損なわない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料原液タンク
2 供給ポンプ
3 循環配管
4 ディーゼルエンジン
5 付加装置
6 圧力調整弁
7 圧力計
8 ユースポイントバルブ
31 供給配管
32 連絡配管
33 戻り配管
41 枝流路