(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】捕集器具
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/02 D
(21)【出願番号】P 2021537640
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027081
(87)【国際公開番号】W WO2021024699
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019145460
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良樹
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138831(JP,A)
【文献】特表2009-513148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0106555(US,A1)
【文献】特開2008-119552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02- 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された気体中の対象物を液体中に捕集する捕集器具であって、
前記液体を保持するとともに、保持した前記液体の上方において前記気体が通る流路を有する容器と、
前記容器内に設けられ、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線周りに回転する回転体とを備え、
前記回転体は、前記回転軸線と交差する方向に突出する第1羽根部を有し、
前記第1羽根部は、前記気体中の前記対象物を捕捉するフィルタ部を有し、
前記フィルタ部は、前記回転体が前記回転軸線周りに回転することによって、前記流路内にある位置から前記液体に浸漬される位置に移動し、
前記回転体は、前記第1羽根部の端部が前記流路を構成する前記容器の内面に接した状態で、前記回転軸線周りに回転する、
捕集器具。
【請求項2】
導入された気体中の対象物を液体中に捕集する捕集器具であって、
前記液体を保持するとともに、保持した前記液体の上方において前記気体が通る流路を有する容器と、
前記容器内に設けられ、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線周りに回転する回転体とを備え、
前記回転体は、前記回転軸線と交差する方向に突出する第1羽根部を有し、
前記第1羽根部は、前記気体中の前記対象物を捕捉するフィルタ部を有し、
前記フィルタ部は、前記回転体が前記回転軸線周りに回転することによって、前記流路内にある位置から前記液体に浸漬される位置に移動し、
前記回転体は、前記回転軸線と交差する方向に突出しかつ前記フィルタ部よりも前記気体を透過しにくい第2羽根部をさらに有する、
捕集器具。
【請求項3】
前記回転体を前記回転軸線周りに回転させる駆動装置をさらに備える、
請求項1
または2に記載の捕集器具。
【請求項4】
導入された気体中の対象物を液体中に捕集する捕集器具であって、
前記液体を保持する容器と、
前記容器内の前記液体に浸漬され、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線周りに回転する回転体とを備え、
前記容器は、前記回転体よりも下方から前記液体中に前記気体を流入させる流入口を有し、
前記回転体は、前記回転軸線と交差する方向に突出する第1羽根部を有し、
前記第1羽根部は、前記流入口から前記液体中に流入されかつ前記液体中を上方に向かって移動する前記気体に接触することによって、前記気体中の前記対象物を捕捉するフィルタ部を有する、
捕集器具。
【請求項5】
対象物を含む呼気が与えられる導入部と、
フィルタを有する第1羽根を含む複数の羽根を有する回転体と、
前記回転体を収容し、気体で満たされる第1領域と液体で満たされる第2領域を有する容器を含み、
前記複数の羽根の各々は、軸の回りを回転し、かつ、前記容器と接し、
前記呼気は前記第1羽根を回転させ、前
記フィルタを前記第1領域から前記第2領域に移動させ、これにより、前記第1領域で前記フィルタが捕捉した前記対象物は、第2領域で離脱される、
捕集容器。
【請求項6】
前記フィルタは前記第1羽根上に設けられた不織布であり、
前記液体は生理食塩水である、
請求項
5記載の捕集容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、病原体等の対象物を含む気体を導入し、気体中の対象物を液体中に捕集する捕集器具に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルス等の感染性ウイルスに感染した患者の呼気には、感染性ウイルスが含まれると考えられている。そして、患者の呼気中の感染性ウイルスは、空気中で粒子状(飛沫又は飛沫核)となって拡散し、飛沫感染や空気感染の原因になると考えられる。
【0003】
こうした呼気中あるいは空気中のウイルスを採取することができれば、感染経路等を明確にすることが可能になる。また、呼気中あるいは空気中のウイルスの有無を迅速に判断することで、2次感染を予防することも可能となる。
【0004】
従来、人体の呼気中の成分を捕集するための装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の装置は、螺旋状に形成された捕集管と、この捕集管の滴下口に連結された回収びんと、これらを冷却する冷却容器とを備えている。
【0005】
患者の呼気中に含まれるウイルスを採取し、これを診断又は研究用の検体として供することが可能なウイルス採取具も考案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2のウイルス採取具は、本体と、患者の呼気を導入する呼気導入部と、患者の呼気に含まれるウイルスを捕捉するトラップ部と、患者の呼気を含む気体成分を吸引する吸引部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-103974号公報
【文献】特開2008-119552号公報
【発明の概要】
【0007】
上記特許文献1の装置では、人が捕集管の端部から呼気を吹き込むと、呼気が捕集管を通過する最中に冷却され、呼気中の成分が捕集管の内壁に付着する。そして、捕集管を冷却装置から取り出して温めると、内壁に付着した成分を含んだ液体が、回収びんに溜まるようになっている。しかしながら、特許文献1では、捕集管を冷却したり温めたりしなければならず、呼気中の成分を捕集することが簡便ではない。
【0008】
上記特許文献2のウイルス採取具では、患者の呼気をくびれ部を有する呼気導入部に導入し、呼気がくびれ部の開口部から放出される際の減圧状態を利用して、呼気中の水蒸気を凝縮して液化し、その液中に含まれるウイルスをトラップ部に配置された分離培地に導入する。しかしながら、ウイルスを確実にトラップ部に取り込むことは困難である。さらに、特許文献2には、くびれ部の開口部とトラップ部との間に円筒状の浸透布なる部材を入れてウイルスを含む液を採取することも開示されている。しかしながら、浸透布を取り外して遠心分離機にかけるなどウイルスを含む液を分離するのに手間がかかる。
【0009】
本開示は、気体中の対象物を、液体中に簡便に捕集できる捕集器具を提供するものである。
【0010】
本開示の一態様に係る捕集器具は、導入された気体中の対象物を液体中に捕集する捕集器具であって、前記液体を保持するとともに、保持した前記液体の上方において前記気体が通る流路を有する容器と、前記容器内に設けられ、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線周りに回転する回転体とを備え、前記回転体は、前記回転軸線と交差する方向に突出する第1羽根部を有し、前記第1羽根部は、前記気体中の前記対象物を捕捉するフィルタ部を有し、前記フィルタ部は、前記回転体が前記回転軸線周りに回転することによって、前記流路内にある位置から前記液体に浸漬される位置に移動する。
【0011】
本開示の一態様に係る捕集器具は、気体中の対象物を、液体中に簡便に捕集できる。本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る捕集器具を示す斜視図
【
図4】
図4は、左方から見た実施の形態2に係る捕集器具を示す断面図
【
図5】
図5は、前方から見た実施の形態2に係る捕集器具を示す断面図
【
図6】
図6は、左方から見た実施の形態3に係る捕集器具を示す断面図
【
図7】
図7は、左方から見た実施の形態4に係る捕集器具を示す側面図
【
図8】
図8は、実施の形態5に係る捕集器具を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
ただし、本開示に係る捕集器具は、以下に説明する実施の形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと同等な構成も含む。
【0015】
以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0016】
以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円筒形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味を表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る捕集器具10を示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図1から
図3を参照して、実施の形態1に係る捕集器具10について説明する。なお、
図1においては、図面が煩雑になることを避けるため、捕集液16(後述)の図示を省略する。また、
図3においては、図面が煩雑になることを避けるため、第1羽根部44b,44d(後述)の図示を省略する。また、この実施の形態では、本体18(後述)の周壁部24(後述)から見て、気体導入部20(後述)側を前方とし、排気部22(後述)側を後方として説明する(
図1および
図2の矢印参照)。また、この実施の形態では、周壁部24から見て、左壁部26(後述)側を左方とし、右壁部28(後述)側を右方として説明する(
図1および
図3の矢印参照)。また、この実施の形態では、軸体42(後述)から見て、流路A側を上方とし、流路Aとは反対側を下方として説明する(
図1~
図3の矢印参照)。前後方向、左右方向、および上下方向は、相互に垂直に交わっている。
【0018】
図1から
図3に示すように、捕集器具10は、導入された気体中の対象物1を液体中に捕集する器具である。たとえば、対象物1は、病原体、ウイルス、花粉、および粒子状の物体等を含む。捕集器具10は、容器12と、回転体14と、捕集液16とを備えている。以下、各構成について説明する。
【0019】
容器12は、容器12内において捕集液16を保持するとともに、保持した捕集液16の上方において気体が通る流路Aを有している。また、容器12は、容器12内において回転体14を回転軸線X周りに回転可能に支持している(
図2の矢印Y参照)。回転軸線Xは、左右方向に延びている。言い換えると、回転軸線Xは、上下方向と垂直な方向に延びている。なお、回転軸線Xは、上下方向と垂直な方向に延びていなくてもよく、上下方向と交差する方向に延びていればよい。容器12は、本体18と、気体導入部20と、排気部22とを有している。
【0020】
本体18は、捕集液16を保持する部分であり、回転体14を回転軸線X周りに回転可能に支持する部分である。本体18は、円筒状であり、周壁部24と、左壁部26と、右壁部28とを有する。
【0021】
周壁部24は、回転軸線X周りに沿って形成されており、左右方向に延びかつ円筒状である。周壁部24は、回転体14を囲むように設けられている。周壁部24は、回転軸線Xよりも上方において、周壁部24を前後方向に貫通する穴部30および穴部32を有している。穴部30は、回転軸線Xよりも前方に設けられており、穴部32は、回転軸線Xよりも後方に設けられている。穴部30および穴部32は、前後方向において、相互に対向している。左壁部26および右壁部28はそれぞれ、回転軸線Xに垂直な方向に延びかつ略円板状である。左壁部26および右壁部28は、左右方向において、相互に対向している。左壁部26は、左方から回転体14を覆うように、周壁部24の左端部に接続されている。左壁部26は、左壁部26の中央部を左右方向に貫通しかつ円形状の穴部34を有している。右壁部28は、右方から回転体14を覆うように、周壁部24の右端部に接続されている。右壁部28は、右壁部28の中央部を回転軸線X方向に貫通しかつ円形状の穴部36を有している。
【0022】
気体導入部20は、捕集器具10を使用する使用者の呼気、または捕集器具10の周辺の空気等の気体を導入する部分であり、本体18に接続されている。使用者とは、たとえば、病原体を持つ患者等である。気体導入部20は、筒状であり、円筒部38と、円錐筒部40とを有している。円筒部38は、前後方向に延びかつ円筒状である。円筒部38は、穴部30と連通するように周壁部24に接続されている。円錐筒部40は、前方に向かって漸次幅広となっており、円錐状かつ筒状である。円錐筒部40は、円筒部38の周壁部24とは反対側の端部に接続されている。
【0023】
排気部22は、気体導入部20から導入された気体を排出する部分であり、気体導入部20とは反対側において、本体18に接続されている。排気部22は、前後方向に延びかつ円筒状である。排気部22は、穴部32と連通するように周壁部24に接続されている。
【0024】
容器12は、気体導入部20、本体18、および排気部22によって構成される流路Aを有している。容器12内に導入された気体は、流路Aを流れる。気体導入部20に導入された気体は、円錐筒部40および円筒部38を通り(
図2の矢印B1参照)、穴部30から本体18内に流入する。本体18内に流入した気体は、捕集液16の上方を通り、穴部32から排気部22へと流入する(
図2の矢印B2参照)。そして、気体は、排気部22から排気される。このように、容器12は、前後方向に気体が流れるように、捕集液16の上方において流路Aを有している。言い換えると、容器12は、上下方向から見たとき、回転軸線Xと垂直な方向に気体が流れるように、捕集液16の上方において流路Aを有している。なお、容器12は、上下方向から見たときに回転軸線Xと垂直な方向に気体が流れるように、流路Aを有していなくてもよく、たとえば、上下方向から見たときに回転軸線Xと交差する方向に気体が流れるように、流路Aを有していてもよい。
【0025】
回転体14は、容器12内に設けられ、回転軸線X周りに回転可能となるように容器12に支持されている。回転体14は、軸体42と、複数の第1羽根部44a~44hとを有している。
【0026】
軸体42は、左右方向に延びかつ円柱状である。軸体42の軸心は、回転軸線Xと一致している。軸体42は、本体18の円筒中心部に設けられる。具体的には、軸体42の左端部は、左壁部26の穴部34に回転可能に嵌まっており、軸体42の右端部は、右壁部28の穴部36に回転可能に嵌まっている。これによって、軸体42は、回転軸線X周りに回転可能となるように、本体18に支持される。
【0027】
複数の第1羽根部44a~44hは、回転軸線Xと交差する方向に突出し、回転軸線X周りに等間隔を空けて軸体42の外周面に取り付けられている。言い換えると、複数の第1羽根部44a~44hは、軸体42の外周面から軸体42の径方向の外方に突出しており、軸体42の周方向に等間隔を空けて配置されている。複数の第1羽根部44a~44hは、軸体42とともに、回転軸線X周りに回転可能である。第1羽根部44aは、フィルタ部46と、枠部48とを有している。
【0028】
フィルタ部46は、左右方向に延びかつ回転軸線Xと交差する方向に延び、四角形の板状である。なお、フィルタ部46は、四角形の板状でなくてもよい。フィルタ部46は、回転軸線Xと交差する方向に突出しており、軸体42の外周面に接続されている。フィルタ部46は、回転体14が回転軸線X周りに回転すると、回転軸線X周りに回転する。たとえば、フィルタ部46は、気体と接触することによって、気体中の対象物1を捕捉する。また、たとえば、フィルタ部46は、気体を透過させ、透過させた気体中の対象物1を捕捉する。フィルタ部46は、たとえば、網状に形成されている。フィルタ部46としては、気体中の対象物1を捕捉できる公知の種々のフィルタを用いることができる。たとえば、フィルタ部46として、不織布を用いたフィルタを用いることができる。また、たとえば、フィルタ部46として、流路Aに気体を流したとき、当該気体を透過させるともに、当該気体を受けて回転体14が回転軸線X周りに回転するような空隙率を持つフィルタを用いることができる。フィルタ部46は、回転軸線Xの真上(
図2の第1羽根部44aの位置)に位置しているとき、捕集液16の液面17よりも上方に突出しており、流路A内に位置している。具体的には、フィルタ部46が回転軸線Xの真上に位置しているとき、当該フィルタ部46の一部は、流路A内にあり、当該フィルタ部46の他の一部は、捕集液16に浸漬されている。また、フィルタ部46は、回転軸線Xの真上に位置しているとき、前後方向において穴部30および穴部32と重なっている。一方、フィルタ部46は、回転軸線Xの真下(
図2の第1羽根部44eの位置)に位置しているとき、および回転軸線Xの真横(
図2の第1羽根部44cの位置および第1羽根部44gの位置)に位置しているとき、捕集液16の液面17よりも下方に位置しており、捕集液16に浸漬されている。具体的には、フィルタ部46が回転軸線Xの真下に位置しているとき、および回転軸線Xの真横に位置しているとき、当該フィルタ部46の全体は、捕集液16に浸漬されている。フィルタ部46は、回転体14が回転軸線X周りに回転することによって、流路A内にある位置から捕集液16に浸漬される位置に移動可能に構成されている。具体的には、フィルタ部46は、回転体14が回転軸線X周りに回転することで回転軸線X周りに回転し、流路A内にある位置から捕集液16に浸漬される位置に移動可能に構成されている。さらに具体的には、回転体14が回転軸線X周りに回転することによって、フィルタ部46のうち流路A内に存在していた部分が、捕集液16に浸漬される。
【0029】
枠部48は、軸体42側に開口しかつ略U字状であり、フィルタ部46の縁部に沿って設けられている。枠部48は、軸体42の外周面に取り付けられている。枠部48は、フィルタ部46の縁部を挟むように設けられている。枠部48は、本体18の内面と隙間を空けて設けられている。具体的には、回転軸線Xと垂直な方向において、枠部48は、周壁部24の内面と隙間を空けて設けられている。また、左右方向において、枠部48は、左壁部26の内面と隙間を空けて設けられているとともに、右壁部28の内面と隙間を空けて設けられている。
【0030】
第1羽根部44b~44hは、第1羽根部44aと同様の構成であるため、上述した第1羽根部44aの説明を参照することによって、第1羽根部44b~44hの詳細な説明は省略する。
【0031】
捕集液16は、対象物1を捕集するための液体であって、本体18の内部に充填される。具体的には、捕集液16は、回転軸線Xよりも上方であって、軸体42よりも上方に捕集液16の液面17が形成されるように、本体18の内部に充填されている。また、捕集液16は、穴部30および穴部32よりも下方に捕集液16の液面17が形成されるように、本体18の内部に充填されている。このように、捕集液16は、気体導入部20および排気部22からこぼれない高さまで入れてもよい。
【0032】
次に、実施の形態1に係る捕集器具10を用いて、気体中の対象物1を捕集する方法について説明する。ここでは、患者の呼気中の対象物1を捕集する方法について説明する。
【0033】
まず、捕集器具10を患者に装着する。具体的には、患者の口を気体導入部20の円錐筒部40で覆うようにして、捕集器具10を患者に装着する。捕集器具10を患者に装着したとき、円錐筒部40と患者の口の周辺との間に隙間がある場合には、患者の呼気が外部に漏れ、少量の患者の呼気中に存在する病原体を十分に捕集できないおそれがある。したがって、円錐筒部40の前方側の開口部41に、ポリウレタン性のシートをテープ状に加工して貼付することによって、円錐筒部40と患者の口の周辺との間の隙間を埋めてもよい。また、患者が捕集器具10を容易に装着できるようにするために、円錐筒部40と本体18とを連結する部分、たとえば、円筒部38は柔軟性のあるゴム製のチューブであってもよい。こうすることで、円錐筒部40の向きを容易に変えることができるので、患者は、無理な姿勢をとることなく、呼気をより確実に捕集器具10の本体18内に送ることができる。
【0034】
患者は、捕集器具10を装着した後、鼻で肺に空気を取り込み、引き続き口から息を吐き、気体導入部20を介して本体18に呼気を吹き込む。ここでは詳細を記さないが、必要な呼気量を容器12内に取り込んだか否かを、流量計等の手段で確認し、必要量に達しない場合には再度呼気を吹き込むように患者に促すことも有効である。検査に必要な呼気量をあらかじめ算出し、その結果に応じて検査に必要な呼気をより確実に容器12に導入することができる。
【0035】
本体18の内部には、上述したように、捕集液16が予め充填されている。捕集液16としては、たとえば生理食塩水を用いることによって、捕集される病原体にダメージを与え難くできる。捕集液16の液量は、たとえば5mL程度とする。また、本体18を気体導入部20側もしくは排気部22側に大きく傾けると捕集液16が本体18から漏れ出る恐れがあるため、本体18を傾かないように固定しておいてもよい。捕集液16には、界面活性剤が含有されていてもよい。
【0036】
患者が呼気を吹き込むと、患者の吹き込んだ呼気の風圧により、回転体14は回転軸線X周りに回転するとともに、回転体14のフィルタ部46を呼気が通過する。フィルタ部46としては、呼気などを吹き付けた時に、呼気の風圧によって抵抗を感じる程度以下の空隙率を持つものを選択することによって、呼気によって回転体14を容易に回転させることができる。
【0037】
なお、後述する実施の形態2で説明するように、より確実に呼気によって回転体が回転するように、回転体14a(後述)の第1羽根部50a~50h(後述)において、流路Aを構成する本体18aの内面と接する部分(接触部51(後述))にシリコーン性の軟質部材を用いてもよい。軟質部材は、回転体14aの回転を停止させることなく、かつ呼気が回転体14aと本体18aとの隙間から漏れて回転体14aの回転の推進力を失うことを抑制できるような位置に調整して設置する。
【0038】
また、後述する実施の形態3で説明するように、回転体の回転の推進力をより確実に得るために、第1羽根部44a~44hのいずれかを、フィルタ部46よりも気体を通しにくいテフロン(登録商標)性の板材(第2羽根部52a,52c,52e,52g(後述))に変更してもよい。
【0039】
患者が呼気を吹き込むことで回転体14が回転し、呼気は順次フィルタ部46と接触しながら排気部22へと流れる。また、回転体14が回転すると、複数の第1羽根部44a~44hが順番に流路A内に移動してくるので、呼気が第1羽根部44a~44hに当たりやすく、回転体14を回転させやすい。呼気中に含まれた病原体等の対象物1はフィルタ部46の表面に付着しており、回転体14が回転することによってフィルタ部46が捕集液16に浸漬されると、その際に病原体等の対象物1が捕集液16に分離捕集される。
【0040】
このように、導入する気体が患者の呼気である場合、患者が呼気を吹き込むことで本体18の内部に設置した回転体14が回転する。この時、患者の呼気に病原体等の対象物1が含まれていると、呼気が回転体14のフィルタ部46を透過もしくは触れる際に、フィルタ部46の表面に病原体等の対象物1が捕捉される。捕捉された病原体等の対象物1は、回転体14が回転することで、捕集液16に触れてフィルタ部46を離れ、捕集液16に分離捕集される。
【0041】
以上のようにして、気体中の対象物1を液体中に捕集できる。
【0042】
最後に、対象物1が捕集された捕集液16を回収し、病原体検出装置で病原体の有無を検査する。回収した捕集液16中に病原体が含まれていれば、病原体検出装置によって、病原体を採取できる。なお、捕集器具10を病原体検出装置に接続しておき、患者の呼気の導入から病原体の有無の検査までの一連の動作を自動で行うことも可能である。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る捕集器具10は、導入された気体中の対象物1を捕集液16中に捕集する捕集器具であって、捕集液16を保持するとともに、保持した捕集液16の上方において気体が通る流路Aを有する容器12と、容器12内に設けられ、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線X周りに回転する回転体14とを備え、回転体14は、回転軸線Xと交差する方向に突出する第1羽根部44a~44hを有し、第1羽根部44a~44hは、気体中の対象物1を捕捉するフィルタ部46を有し、フィルタ部46は、回転体14が回転軸線X周りに回転することによって、流路A内にある位置から捕集液16に浸漬される位置に移動する。
【0044】
これによれば、第1羽根部44a~44hは、気体中の対象物1を捕捉するフィルタ部46を有しており、フィルタ部46は、回転体14が回転軸線X周りに回転することによって流路A内にある位置から捕集液16に浸漬される位置に移動する。したがって、フィルタ部46を流路A内に配置した状態から、回転体14を回転軸線X周りに回転させ、フィルタ部46を捕集液16に浸漬させることによって、流路A内の気体中の対象物1を捕捉できるとともに、捕捉した対象物1を捕集液16中に捕集できる。このように、フィルタ部46を回転軸線X周りに回転させると、気体中の対象物1を簡便に捕集できる。
【0045】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、第1羽根部50a(50b~50h)の端部が流路Aを構成する容器12aの内面と接触した状態で、回転体14aが回転軸線X周りに回転する点において、実施の形態1と主に異なっている。
【0046】
図4は、左方から見た実施の形態2に係る捕集器具10aを示す断面図である。
図5は、前方から見た実施の形態2に係る捕集器具10aを示す断面図である。
図4および
図5を参照して、実施の形態2に係る捕集器具10aについて説明する。なお、以下の説明においては、実施の形態1に係る捕集器具10との相違点を中心に説明する。
【0047】
捕集器具10aは、本体18とは異なる本体18aと、第1羽根部44a~44hとは異なる第1羽根部50a~50hとを有している点において、捕集器具10とは異なっている。本体18aは、本体18aの下部が下方に凹んでいる点において、本体18とは異なっている。これによって、捕集液16中の対象物1を本体18aの下部に集めやすくなる。第1羽根部50aは、枠部48とは異なる枠部48aを有している点において、第1羽根部44a~44hとは異なっている。枠部48aは、流路Aを構成する容器12aの本体18aの内面と接する接触部51を有している。流路Aを構成する本体18aの内面とは、本体18aの内面のうち液面17よりも上方に位置している部分をいう。接触部51は、枠部48aの外端部に設けられている。接触部51は、外方に向かって漸次幅広となっており、本体18aの内面と接する。具体的には、回転軸線Xと垂直な方向において、接触部51は、外方に向かって漸次幅広となり、流路Aを構成する周壁部24aの内面と接する。また、左右方向において、接触部51は、左方に向かって漸次幅広となり、流路Aを構成する左壁部26aの内面と接する。また、左右方向において、接触部51は右方に向かって漸次幅広となり、流路Aを構成する右壁部28aの内面と接する。接触部51としては、たとえば、シリコーン性の軟質部材を用いることができる。実施の形態2に係る回転体14aは、第1羽根部50aの端部(接触部51)が流路Aを構成する本体18aの内面に接した状態で、回転軸線X周りに回転する。第1羽根部50b~50hは、第1羽根部50aと同様の構成であるため、上述した第1羽根部50aの説明を参照することによって、第1羽根部50b~50hの詳細な説明は省略する。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係る捕集器具10aにおいて、回転体14aは、第1羽根部50a(50b~50h)の端部(接触部51)が流路Aを構成する容器12aの内面に接した状態で、回転軸線X周りに回転する。
【0049】
これによれば、第1羽根部50a(50b~50h)の端部(接触部51)が流路Aを構成する容器12aの本体18aの内面と接した状態で、回転体14aは回転軸線X周りに回転する。このように、第1羽根部50a~50hの端部に接触部51を設けることによって、流路A内を流れる気体が本体18aと回転体14aとの間の隙間を流れることを抑制できる。これによって、流路Aを流れる気体がフィルタ部46を透過しやすくなり、気体中の対象物1をより確実に捕捉できる。言い換えると、流路Aを流れる気体がフィルタ部46を透過することなく排気されることを抑制できる。なお、
図4および
図5に示す実施の形態2では、回転軸線Xに垂直な方向および左右方向における枠部48aの端部に接触部51を設けているが、回転軸線Xに垂直な方向における枠部48aの端部に接触部51を設けてもよいし、左右方向における枠部48aの端部に接触部51を設けてもよいし、回転体14aの回転を阻害することのないように接触部51を設ければよい。また、接触部51は、外方に向かって漸次幅広となっていなくてもよい。
【0050】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、第1羽根部44a,44c,44e,44gに代えて、第2羽根部52a,52c,52e,52gを有している点において、実施の形態1と主に異なっている。
【0051】
図6は、左方から見た実施の形態3に係る捕集器具10bを示す断面図である。
図6を参照して、実施の形態3に係る捕集器具10bについて説明する。なお、以下の説明においては、実施の形態1に係る捕集器具10との相違点を中心に説明する。
【0052】
捕集器具10bは、容器12の代わりに容器12aを有している点において、実施の形態1に係る捕集器具10と異なる。また、捕集器具10bは、回転体14の代わりに回転体14bを有している点において、実施の形態1に係る捕集器具10と異なる。容器12aについては、上述した実施の形態2の説明を参照することによって、詳細な説明を省略する。回転体14bは、第1羽根部44aの代わりに第2羽根部52a、第1羽根部44cの代わりに第2羽根部52c、第1羽根部44eの代わりに第2羽根部52e、および第1羽根部44gの代わりに第2羽根部52gを有している点において、回転体14と異なる。第2羽根部52a,52c,52e,52gは、回転軸線Xと交差する方向に突出しており、回転軸線X周りに等間隔を空けて設けられている。言い換えると、第2羽根部52a,52c,52e,52gは、軸体42の外周面から軸体42の径方向の外方に突出しており、軸体42の外周面に取り付けられている。第2羽根部52aは、左右方向に延びかつ回転軸線Xと垂直な方向に延び、略四角形の板状である。第2羽根部52aは、流路Aを構成する容器12aの本体18aの内面と接している。具体的には、回転軸線Xと垂直な方向において、第2羽根部52aの端部は、流路Aを構成する周壁部24aの内面と接する。また、左右方向において、第2羽根部52aの端部は、流路Aを構成する左壁部26a(
図5参照)の内面と接する。また、左右方向において、第2羽根部52aの端部は、流路Aを構成する右壁部28aの内面と接する。第2羽根部52aは、回転軸線X周りにおいて、第1羽根部44b,44d,44f,44hと並んで配置されている。第2羽根部52aは、回転体14bが回転軸線X周りに回転すると、回転軸線X周りに回転する。回転体14bは、第2羽根部52aの端部が流路Aを構成する本体18aの内面に接した状態で、回転軸線X周りに回転する。第2羽根部52aの材料としては、たとえば、テフロン(登録商標)等の樹脂を用いることができ、第2羽根部52aは、フィルタ部46よりも気体を透過しにくい。なお、第2羽根部52aは、気体を透過しないように構成されていてもよい。第2羽根部52c,52e,52gは、第2羽根部52aと同様の構成であるため、上述した第2羽根部52aの説明を参照することによって、第2羽根部52c,52e,52gの詳細な説明は省略する。
【0053】
なお、第1羽根部44b(44d,44f,44h)は、流路Aを構成する容器12aの本体18aの内面と接していてもよい。この場合、回転体14bは、第1羽根部44b(44d,44f,44h)が流路Aを構成する容器12aの本体18aの内面と接した状態で、回転軸線X周りに回転する。
【0054】
以上のように、本実施の形態に係る捕集器具10bにおいて、回転体14bは、回転軸線Xと交差する方向に突出しかつフィルタ部46よりも気体を透過しにくい第2羽根部52a,52c,52e,52gをさらに有する。
【0055】
これによれば、回転体14bは、フィルタ部46よりも気体を透過しにくい第2羽根部52a,52c,52e,52gを有している。たとえば、導入する気体が患者の呼気である場合、フィルタ部46よりも気体を透過しにくい第2羽根部52a,52c,52e,52gを設けることによって、回転体14bは導入された呼気からの力を受けやすくなり、回転体14bを簡便に回転させることができる。したがって、気体中の対象物1を捕集液16中にさらに簡便に捕集できる。なお、第2羽根部の枚数は、呼気で回転体14bが回転し、呼気中の病原体をフィルタ部46で捕捉できれば、何枚でもかまわない。
【0056】
[実施の形態4]
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態4では、駆動装置54をさらに備えている点において、実施の形態1と主に異なっている。
【0057】
図7は、左方から見た実施の形態4に係る捕集器具10cを示す側面図である。
図7を参照して、実施の形態4に係る捕集器具10cについて説明する。なお、以下の説明においては、実施の形態1に係る捕集器具10との相違点を中心に説明する。
【0058】
捕集器具10cは、駆動装置54をさらに備えている点において、捕集器具10と異なる。また、捕集器具10cは、左右方向において、軸体42cが左壁部26よりも外方に突出している点において、捕集器具10と異なる。駆動装置54は、回転体14cに回転力を付加する装置であって、回転体14cを回転軸線X周りに回転させる装置である。駆動装置54は、モータ56と、ベルト58とを有している。ベルト58は、軸体42cとモータ56の回転軸60とに掛け回される。モータ56が駆動されると、ベルト58を介して軸体42cが回転され、回転体14cが回転する。なお、回転体14cは、複数の第1羽根部44a~44hを有しているが、回転体は、1個の第1羽根部を有していてもよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係る捕集器具10cは、回転体14cを回転軸線X周りに回転させる駆動装置54をさらに備える。
【0060】
これによれば、たとえば、導入する気体が室内の空気である場合、回転体14cの軸体42cにモータ56を連結し、モータ56の回転を、回転体14cの軸体42cに伝達することで、回転体14cを簡便に回転させることができる。したがって、周辺の空気を流路A内に簡便に導入でき、その中に含まれる病原体等の対象物1を簡便に捕集液16に分離捕集することができる。また、駆動装置54によって回転体14cを回転させ続けることによって、効率よく気体を導入でき、気体中の対象物1を効率よく捕集できる。
【0061】
なお、これまで
図1から
図7を用いて実施の形態を説明してきたが、いずれの場合においても気体を導入して回転体のフィルタ部に病原体等の対象物を捕捉し、回転体の回転とともに病原体等の対象物を捕集液に分離捕集した後、捕集液を取り出して、病原体の検査に使用してもかまわない。また、図には記載していないが、本体の下部に捕集液を取り出す配管を設置し、ポンプ等で送液を行い、捕集器具と併設された病原体検査機器に捕集液を導入し、病原体の量や種類を測定することで迅速に病原体の2次感染を防ぐなどの効果が期待できる。
【0062】
[実施の形態5]
次に、実施の形態5について説明する。
【0063】
図8は、実施の形態5に係る捕集器具10dを示す側面図である。
図8を参照して、実施の形態5に係る捕集器具10dについて説明する。なお、この実施の形態では、本体18d(後述)から見て、気体導入部20d(後述)が接続されている側を下方とし、排気部22d(後述)が接続されている側を上方として説明する(
図8の矢印参照)。
【0064】
図8に示すように、捕集器具10dは、導入された気体中の対象物1を液体中に捕集する器具である。捕集器具10dは、容器12dと、3つの回転体14と、捕集液16とを備えている。以下、各構成について説明する。
【0065】
容器12dは、容器12d内において、捕集液16を保持している。また、容器12dは、上下方向と垂直な方向に延びる回転軸線X1,X2,X3周りに回転可能となるように、3つの回転体14を支持している。回転軸線X1,X2,X3は、相互に同方向に延び、上下方向に間隔を空けて並んでいる。なお、回転軸線X1,X2,X3は、上下方向と垂直な方向に延びていなくてもよく、上下方向と交差する方向に延びていればよい。容器12dは、本体18dと、気体導入部20dと、排気部22dとを有している。
【0066】
本体18dは、捕集液16を保持する部分であり、3つの回転体14を回転軸線X1,X2,X3周りに回転可能に支持する部分である。本体18dは、略直方体状であり、回転体14よりも下方から捕集液16中に気体を流入させる流入口62を有している。流入口62は、本体18dの下部に設けられている。流入口62は、たとえば、逆止弁のように構成されており、気体導入部20dから気体を捕集液16中に流入させるが、捕集液16を気体導入部20dに流入させない。
【0067】
気体導入部20dは、捕集器具10dを使用する使用者の呼気、または捕集器具10dの周辺の空気を導入する部分であり、本体18dの流入口62に接続されている。排気部22dは、気体導入部20dから導入された気体を排出する部分であり、本体18dの上部に接続されている。排気部22dは、本体18d内における捕集液16の上方の空間と連通している。
【0068】
3つの回転体14は、容器12d内の捕集液16に浸漬されており、上下方向に並んで配置されている。一番上の回転体14は回転軸線X1周りに回転可能となるように本体18dに支持されており、真ん中の回転体14は回転軸線X2周りに回転可能となるように本体18dに支持されており、一番下の回転体14は回転軸線X3周りに回転可能となるように本体18dに支持されている。上述した実施の形態1における説明を参照することによって、回転体14の詳細な説明を省略する。回転体14の第1羽根部44a~44hのフィルタ部46(
図1~
図3参照)は、流入口62から捕集液16中に流入されかつ捕集液16中を上方に向かって移動する気体2に接触することによって、気体2中の対象物1を捕捉する。回転体14は、捕集液16中を移動する気体2が第1羽根部44a(44b~44h)に接触することによって、回転軸線X1(X2,X3)周りに回転する。回転体14が回転軸線X1(X2,X3)周りに回転することによって、フィルタ部46に捕捉された対象物1が捕集液16中に捕集される。捕集液16中に流入された気体2は、たとえば、泡状である。
【0069】
捕集液16は、対象物1を捕集するための液体であって、本体18dの内部に充填される。具体的には、捕集液16は、一番上の回転体14よりも上方に捕集液16の液面17が形成されるように、本体18dの内部に充填されている。
【0070】
なお、捕集器具10dの本体18dには、回転体14を3個設置しているが、少量の病原体を効率よく捕集するために複数の回転体14を設置しているのであって、必ずしも回転体14を3個設置する必要はない。
【0071】
また、本体18dに、所定の濃度に調整したリン酸緩衝液を捕集液16として注入してもよい。リン酸緩衝液は本体18dに設置した回転体14の全てが浸漬する量を注入してもよく、気体導入部20dと本体18dとの接続個所は、本体18dの最下部の側面もしくは底部であってもよい。気体導入部20dから入る気体が効率よく本体18d内部に設置された複数の回転体14の第1羽根部44a(44b~44h)に当たるように配置してもよい。
【0072】
さらに、気体中の病原体の量が極微量の場合、
図8に示すように回転体14を複数設置してもよい。この時、流入口62は捕集液16を保持する本体18dの最下部に設置することで、病原体を含む気体は複数設置された回転体14のフィルタ部46に複数回にわたって接し、その間に病原体はフィルタ部46に捕捉され、回転体14の回転により、捕集液16中に分離捕集される。この時、本体18dの上部の排気部22dに設けられたポンプ64によって排気を行うことで、気体導入部20dから効率よく気体を本体18d内に導入することができる。
【0073】
次に、実施の形態5に係る捕集器具10dを用いて、気体中の対象物1を捕集する方法について説明する。
【0074】
患者の呼気中の対象物1を捕集する場合には、患者が気体導入部20dに呼気を吹き込むことで下部から順番に回転体14の第1羽根部44a(44b~44h)に気体を順次接触させながらフィルタ部46で病原体等の対象物1を捕捉し、回転体14の回転とともにリン酸緩衝液中に病原体等の対象物1を分離捕集する。また、呼気中の対象物1の捕集ではなく、一般の大気中の病原体等の対象物1を捕集する場合には、たとえば、捕集器具10dの気体導入部20dにポンプ66を設置し、ポンプ66を稼動させて捕集液16中に気体を流入させればよい。ここでポンプ66の種類、型式に制約はなく、対象となる気体を捕集液16に取り込むことができればよい。こうして、病原体等の対象物1を捕集したリン酸緩衝液(捕集液16)を回収し、病原体検出装置で分析を行う。回収したリン酸緩衝液に病原体が含まれていれば、病原体検出装置によって、病原体を採取できる。
【0075】
以上のように、本実施の形態に係る捕集器具10dは、導入された気体中の対象物1を捕集液16中に捕集する捕集器具であって、捕集液16を保持する容器12dと、容器12d内の捕集液16に浸漬され、上下方向と交差する方向に延びる回転軸線X1(X2,X3)周りに回転可能となるように容器12dに支持される回転体14とを備え、容器12dは、回転体14よりも下方から捕集液16内に気体を流入させる流入口62を有し、回転体14は、回転軸線X1(X2,X3)と交差する方向に突出する第1羽根部44a~44hを有し、第1羽根部44a~44hは、流入口62から捕集液16中に流入されかつ捕集液16中を上方に向かって移動する気体に接触することによって、気体中の対象物1を捕捉するフィルタ部46を有する。
【0076】
これによれば、回転体14よりも下方に設けられた流入口62から捕集液16中に流入された気体は、上方に向かって移動する。そして、回転体14のフィルタ部46は、上方に向かって移動する気体に接触することによって、気体中の対象物1を捕捉する。また、回転体14は、捕集液16中を移動する気体が第1羽根部44a(44b~44h)に接触することによって、回転軸線X1(X2,X3)周りに回転する。このように、回転体14が回転軸線X1(X2,X3)周りに回転することによって、フィルタ部46に捕捉された対象物1は捕集液16中に捕集される。このように、流入口62から捕集液16中に気体を流入させると、気体中の対象物1を捕集液16中に簡便に捕集できる。また、捕集液16中の気体は、回転軸線X1(X2,X3)周りに回転する回転体14に接触することによって、細かい泡状となるので、フィルタ部46に捕捉されやすくなる。これによって、気体中の対象物1をより確実に捕集できる。
【0077】
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る捕集器具について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0078】
上述した実施の形態では、円筒部38および排気部22が、前後方向に延びている場合について説明したが、たとえば、円筒部38は、上斜め前方に向かって延びていてもよいし、排気部22は、上斜め後方に向かって延びていてもよい。
【0079】
上述した実施の形態では、捕集液16の液面17が、回転軸線Xよりも上方に形成される場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、捕集液16の液面17は、回転軸線Xよりも下方に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、気体中の対象物を液体中に捕集する装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
10,10a,10b,10c,10d 捕集器具
12,12a,12d 容器
14,14a,14b,14c 回転体
16 捕集液
17 液面
18,18a,18d 本体
20,20d 気体導入部
22,22d 排気部
24,24a 周壁部
26,26a 左壁部
28,28a 右壁部
30,32,34,36 穴部
38 円筒部
40 円錐筒部
42,42c 軸体
44a,44b,44c,44d,44e,44f,44g,44h,50a,50b,50c,50d,50e,50f,50g,50h 第1羽根部
46 フィルタ部
48,48a 枠部
51 接触部
52a,52c,52e,52g 第2羽根部
54 駆動装置
56 モータ
58 ベルト
60 回転軸
62 流入口
64,66 ポンプ