(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】発熱体
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
A61F7/08 334F
A61F7/08 334X
(21)【出願番号】P 2019149994
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】397007011
【氏名又は名称】株式会社オーシンエムエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【氏名又は名称】小川 泰州
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【氏名又は名称】澤 喜代治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲広
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-136316(JP,U)
【文献】実開平03-067616(JP,U)
【文献】特開平08-231386(JP,A)
【文献】特開昭62-183759(JP,A)
【文献】特開平11-030579(JP,A)
【文献】特開2013-116282(JP,A)
【文献】実開昭60-020214(JP,U)
【文献】特開2002-000634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性シートからなる細長且つ扁平状の袋材と、前記袋材内に封入された粉末状の発熱剤と、を具備してなり、前記袋材が、複数個所に設けられた仕切り部によって内部空間が長さ方向に沿って隣接する三つ以上の複数の個室に区画され、各個室内に前記発熱剤がそれぞれ充填されてなる長尺の発熱体であって、
前記袋材が、
一枚の通気性シートの対向する縁が同一面同士で接触するように突き合わされた状態で接合されたシーム部を有する包装構造であって、長さ方向に沿う
前記シーム部を前記袋材の背面側において一列のみ有し
、且つ、前記シーム部が前記袋材の背面に向かって折り倒された状態となされたスティック包装体となされ、
前記袋材における前記シーム部の無い表面側を肌に接触させて使用する使用態様となされたことを特徴とする発熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱体において、
発熱時に各個室内が負圧状態となり、収縮した前記袋材によって前記発熱剤が拘束されるように、前記通気性シートの透気度が3×10
4秒/100cc以上となされた発熱体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発熱体において、
前記仕切り部の幅が1~20mmとなされた発熱体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発熱体において、
前記個室の寸法が、幅10~60mm、長さ30~200mmとなされた発熱体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発熱体において、
個室一空間あたりの前記発熱剤の充填量が、1~100gとなされた発熱体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発熱体の製造方法であって、
スティック包装機によって前記袋材を形成しながら、前記袋材内への発熱剤の投入と前記仕切り部の形成とを交互に行うことによって、前記個室内に発熱剤を充填することを特徴とする発熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長の袋材内に粉末状の発熱剤が封入されてなる長尺の発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に「使い捨てカイロ」と称される発熱体は、通気性の袋材内に鉄粉を主成分とする発熱剤が封入されたものであり、鉄粉の酸化反応による発熱を利用した温熱具の一種である。
【0003】
現在市場に流通している発熱体としては、矩形の通気性シートを二枚重ね、周縁をヒートシールすることによって形成した四方シール包装の袋材内に発熱剤が封入された構造のものが一般的である。又、この種の発熱体には、裏面に粘着層を設けることで温めたい部位に貼り付ける使用形態となされたものも多く流通している。最近では、発熱体を靴の中敷きの形状として、靴内に設置することによって足裏を温める使用形態となされたものも販売されている。
【0004】
更に、発熱剤を封入する袋材として細長のものを用い、首、手首、足首などに巻き付けて使用する長尺の発熱体も提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の図面に表された発熱体のように、袋材をシームレスの包装体とすることは事実上困難である。その一方で、係る袋材を前述の四方シール包装からなる包装体とすると、使用時にシール部分が肌に接触して使用感を損ねる。
【0007】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、使用感の良好な長尺の発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための本発明の発熱体は、通気性シートからなる細長の袋材と、前記袋材内に封入された粉末状の発熱剤と、を具備してなり、前記袋材が、複数個所に設けられた内部空間を仕切る仕切り部によって長さ方向に沿って隣接する複数の個室に区画され、各個室内に前記発熱剤がそれぞれ充填されてなる長尺の発熱体であって、前記袋材が、長さ方向に沿うシーム部が一列のみのスティック包装体となされたことを特徴とする(以下、「本発明発熱体」と称する。)。
【0009】
前記本発明発熱体においては、発熱時に各個室内が負圧状態となり、収縮した前記袋材によって前記発熱剤が拘束されるように、前記通気性シートの透気度が3×104秒/100cc以上となされたものが好ましい態様となる。
【0010】
前記本発明発熱体においては、前記仕切り部の幅が1~20mmとなされたものが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明発熱体においては、前記個室の寸法が、幅10~60mm、長さ30~200mmとなされたものが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明発熱体においては、個室一空間あたりの前記発熱剤の充填量が、1~100gとなされたものが好ましい態様となる。
【0013】
前記本発明発熱体においては、前記個室が三つ以上隣接するように、前記袋材の内部空間が前記仕切り部によって仕切られてなるものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用感の良好な長尺の発熱体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明発熱体の一実施形態を、一部破断状態で示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記本発明発熱体を、一部拡大して示すA‐A断面図である。
【
図3】
図3は、前記本発明発熱体の使用状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<本発明充填体(1)>
図1、
図2に、本発明発熱体1の一実施形態を示す。前記本発明発熱体1は、「袋材(2)」と、「発熱剤(3)」と、を具備してなる。
【0018】
‐袋材2‐
本発明において前記袋材2は通気性シート20からなり、細長の全体形状となされる(
図1参照)。本実施形態においては前記通気性シート20として、ポリエチレン製の通気性フィルム201の一面にポリエステル製不織布202が積層された二層構造の積層シートを用いた(
図2参照)。又、本実施形態においては前記通気性フィルム201の透気度を調節することにより、前記通気性シート20の透気度を3×10
4秒/100cc以上の値に設定した。なお、本発明において「透気度」とは、JIS8117に規定されている王研式試験機法に基づいて測定された値を意味し、本実施形態においては、この透気度につき旭精工株式会社製の透気度試験機(王研式透湿度・平滑度試験機)を用いて測定した。
【0019】
そして、本発明では、この通気性シート20をスティック包装体とすることによって、長さ方向に沿うシーム部21が一列のみの袋材2を作成する。なお、「スティック包装体」とは、一枚のシートを袋状に形成する際に、当該シートの対向する縁が同一面同士で接触するように突き合わされた状態で接合された包装構造を有する包装体を意味する。又、前記スティック包装体は、扁平状であっても水平断面が円や楕円の筒状であっても良い。本実施形態においては、市販のスティック包装機を用いたヒートシールによって扁平状の袋材2を作成し、長さ方向に沿って生じるシーム部21が存する側の面を背面2R、前記背面2Rの反対側の面を表面2Fとした。
【0020】
又、本発明においては、前記袋材2につき、複数個所に設けられた仕切り部22によって、その内部空間が複数の個室に区画される。本実施形態においては、前記スティック包装機によって前記袋材2を形成する際に、その長さ方向に沿って一定間隔をあけた適宜位置に前記袋材2の幅方向に沿うヒートシール処理を行うことによって前記仕切り部(幅(Z):10mm)22を形成した。これにより、前記仕切り部22を挟んで隣接する五つの個室(幅(X):25mm、長さ(Y):100mm)を有する袋材2を得た。なお、本発明において、前記個室の「幅(X)」と「長さ(Y)」は、前記個室を最大限に偏平させた状態下で測定した寸法を意味する。
【0021】
‐発熱剤3‐
本発明において、前記発熱剤3は粉末状の剤型となされ、前記袋材2内に封入される。本実施形態においては、前記発熱剤3につき、鉄粉の酸化反応による発熱を利用した粉末状の発熱組成物を用いた。又、本実施形態においては、前記スティック包装機によって前記袋材2を形成する際に、前記袋材2内への前記発熱剤3の投入と、前記仕切り部22の形成(個室の形成)とを交互に行うことによって、各個室内にそれぞれ前記発熱剤3を充填した。なお、個室一空間あたりの前記発熱剤3の充填量は5gとした。
【0022】
前記構成を有する前記本発明発熱体1は、前記仕切り部22が存する位置において容易に屈曲させることができるため(
図1参照)、首に巻いたり、手首や足首或いは腰などに巻いたりして使用することができる。又、体の特定の箇所に巻き付けて使用するだけではなく、折り曲げてポケットに入れたり、靴下中に挿入したり、靴の中敷きのようにして使用することもできる。更に、前記本発明発熱体1は、専用のカバー内に挿入した状態で使用することもできる。前記本発明発熱体1の使用状態の一例として、
図3に前記本発明発熱体1を首に巻いて使用している状態を示す。
【0023】
そして、前記本発明発熱体1は、前記袋材2をスティック包装体とし、長さ方向に沿うシーム部21を一列のみとしているから、例えば、
図3のように、使用時において、前記本発明発熱体1をシーム部21の無い表面2F側が肌に接触するようにして巻き付ければ、肌触りが良好になって使用感が向上する。
【0024】
なお、前記本発明発熱体1の使用時において、前記個室に挟まれた仕切り部22の存在については、前記個室の厚さ(嵩)に比べて薄いことから肌にほとんど触れることなく、使用感の低下の原因には殆どならない。従って、本発明において前記仕切り部22の幅(Z)は特に限定されないが、取扱性や製造上の観点から、前記仕切り部22の幅(Z)は1~20mm(より好ましくは、5~15mm)とすることが好ましい。
【0025】
又、本実施形態のように、前記袋材2を構成する前記通気性シート20の透気度につき、3×104秒/100cc以上とすれば、発熱反応時において、前記発熱剤3の酸化反応に消費される酸素量が、前記袋材2を通じて供給される酸素量より多くなり、各個室内が負圧状態となって、前記発熱剤3が前記袋材2によって拘束される。その結果、前記袋材2内における前記発熱剤3の偏りが抑制されて使用感がより向上する。なお、発熱温度(前記袋材を通じて伝達される温度)の観点からは、前記通気性シート20の透気度につき、3.5×104秒/100cc以下とし、発熱温度を42±3度に設定することが好ましい。
【0026】
更に、本実施形態においては、前記個室につき、幅(X)25mm、長さ(Y)100mmの寸法とし、これを五つ隣接させたものとしているが、本発明において前記個室の寸法は特に限定されない。又、個室の数も限定されず、各個室の寸法をそろえる必要もない。前記個室の寸法は、幅(X)につき10~60mm(より好ましくは20~40mm)、長さ(Y)につき30~200mm(より好ましくは、50~150mm)とすることが好ましい。隣接させる前記個室の数は、三つ以上(より好ましくは、五つ以上)とすることが好ましい。
【0027】
加えて、本実施形態においては、個室一空間あたりの前記発熱剤3の充填量を5gとしているが、本発明において前記発熱剤3の充填量は特に限定されない。本発明において個室一空間あたりの発熱剤3の充填量は、1~100g(より好ましくは3~50g)とすることが好ましい。なお、前記発熱剤3中の鉄粉量に換算すれば、個室一空間あたりの鉄粉の存在量は0.6~65g(より好ましくは1.8~33g)とすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明発熱体は、首に巻いたり、手首や足首などに巻いたりして使用する温熱具として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 本発明発熱体(発熱体)
2 袋材
20 通気性シート
21 シーム部
22 仕切り部
3 発熱剤