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特許7466129漁船活動推定装置及び漁船活動推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】漁船活動推定装置及び漁船活動推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20240405BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
G08G3/00 A
G08G1/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022147362
(22)【出願日】2022-09-15
(65)【公開番号】P2024042568
(43)【公開日】2024-03-28
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】522264076
【氏名又は名称】株式会社メタシステム研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518128218
【氏名又は名称】オーシャンソリューションテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 智博
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽介
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109840358(CN,A)
【文献】米国特許第10769440(US,B1)
【文献】特開2012-021896(JP,A)
【文献】特開2018-055269(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114139608(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0025537(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部と、
前記船速特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える、漁船活動推定装置。
【請求項2】
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の、航行中における揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える、漁船活動推定装置。
【請求項3】
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の加速度の時系列を表す加速度データと、前記漁船の加速度のばらつきの時系列を表す加速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の加速度のばらつきを表す加速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記加速度ばらつきデータとを含む加速度特徴ベクトルデータを取得する加速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記加速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える、漁船活動推定装置。
【請求項4】
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部と、
航行中における前記漁船の揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える、漁船活動推定装置。
【請求項5】
前記活動推定部が、前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータのみならず、前記船速特徴ベクトルデータの時間微分を表す微分船速特徴ベクトルデータ、及び前記角速度特徴ベクトルデータの時間微分を表す微分角速度特徴ベクトルデータも用いて、前記活動判別処理を行う、
請求項4に記載の漁船活動推定装置。
【請求項6】
前記活動推定部が、
前記船速特徴ベクトルデータ、前記角速度特徴ベクトルデータ、前記微分船速特徴ベクトルデータ、及び前記微分角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別するための機械学習を行った学習済モデル、
を含む、請求項5に記載の漁船活動推定装置。
【請求項7】
前記船速特徴ベクトルデータには、前記漁船の速度の変化率の時系列を表す船速変化率データが含まれ、
前記角速度特徴ベクトルデータには、前記角速度の変化率の時系列を表す角速度変化率データが含まれる、
請求項4から6のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項8】
前記船速データには、前記漁船の速度の検出値の時系列を表す船速検出値データと、前記船速検出値データに移動平均処理を施した平滑化船速データとが含まれ、
前記角速度データには、前記角速度の検出値の時系列を表す角速度検出値データと、前記角速度検出値データに移動平均処理を施した平滑化角速度データとが含まれる、
請求項4から6のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項9】
前記漁船の航行の軌跡を表す軌跡画像データを取得する軌跡画像データ取得部、
をさらに備え、
前記活動推定部が、前記活動判別処理で前記漁船が操業中であると判別した場合、前記軌跡画像データを用いて該操業の内容を推定する操業内容推定処理をさらに行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項10】
前記漁船の航行中の位置を表す位置データを取得する位置データ取得部と、
前記位置データと、地図を表す地図データとを用いて、前記漁船が陸地に近い沿岸領域に位置するか、又は前記沿岸領域よりも前記陸地から遠い沖合領域に位置するかを判別する位置判別処理を行う位置判別部と、
をさらに備え、
前記位置判別処理で前記漁船が前記沖合領域に位置すると判別された場合に、前記活動判別処理が行われ、前記位置判別処理で前記漁船が前記沿岸領域に位置すると判別された場合には、前記活動判別処理が停止される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項11】
前記活動推定部によって出力された前記活動判別結果データに対して、前記漁船が移動中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短移動期間長よりも時間幅が短いものを前記漁船が操業中である旨の判別結果へと修正し、かつ前記漁船が操業中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短操業期間長よりも時間幅が短いものを、前記漁船が移動中である旨の判別結果へと修正する平滑化処理を施す平滑化処理部、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項12】
出港から帰港までの間における前記漁船の操業によって得られた漁獲量を表す漁獲量データを取得する漁獲量データ取得部と、
前記漁獲量データが表す前記漁獲量と、前記活動判別結果データに含まれる、前記漁船が操業中である旨の判別結果の時間幅の合計である正味操業期間長とを用いて、漁獲の能率を表す漁獲能率指数を算出する漁獲能率指数算出部と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の漁船活動推定装置。
【請求項13】
コンピュータを、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部、
航行中における前記漁船の揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部、
前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部、
として機能させる、漁船活動推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船活動推定装置及び漁船活動推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、漁労の成果を表す報告書データの作成を支援するシステムが知られている。このシステムによれば、航行中の漁船の位置を表す時系列データを用いて、操業が行われた場所が特定される。報告書データには、操業が行われた場所を表すデータも含まれる。
【0003】
なお、本明細書において“操業”とは、漁船において、漁網、釣り竿等の漁具を用いて水産資源を捕獲する作業を行うことを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-157722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
漁船は、航行の過程で、漁場での操業と、次の漁場への移動とを繰り返し行う。特許文献1に係るシステムは、漁船が航行した期間を、操業が行われた期間と、漁船が移動した期間とに細かく分類する機能を有するものではない。このため、特許文献1に係るシステムでは、漁獲の能率、具体的には、操業を行った単位時間あたりの漁獲量を把握することはできない。
【0006】
一方、水産資源を保護する目的で、漁獲の能率を把握したい場合がある。漁獲の能率が低下していることは、漁獲が過剰であるため水産資源が減っていることを意味する。そこで、漁獲の能率が低下する傾向がみられた場合、漁獲を控える対策をとることで、水産資源の枯渇を未然に防止できる。
【0007】
漁獲の能率を容易に把握するためには、漁船が移動中であるか操業中であるかの判別結果を時系列で表した活動判別結果データがあれば便利である。活動判別結果データによれば、漁船が航行した期間のうち、実際に操業に費やされた期間の正味の長さ(以下、正味操業期間長と記す。)を特定できるからである。即ち、正味操業時間長で漁獲量を割り算することにより漁獲の能率が求まる。
【0008】
以上、活動判別結果データの用途の一例として、漁獲の能率を把握することを例示的に述べたが、活動判別結果データの用途はこれらに限られない。活動判別結果データは、漁船の活動を細かく把握すること等にも利用されうる。本発明は、以上説明した課題に鑑みてなされたものである。
【0009】
本発明の目的は、漁船が移動中であるか操業中であるかの判別結果を時系列で表した活動判別結果データを得ることができる漁船活動推定装置及び漁船活動推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る漁船活動推定装置は、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部と、
前記船速特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える。
【0011】
本発明の第2の観点に係る漁船活動推定装置は、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の、航行中における揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える。
【0012】
本発明の第3の観点に係る漁船活動推定装置は、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の加速度の時系列を表す加速度データと、前記漁船の加速度のばらつきの時系列を表す加速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の加速度のばらつきを表す加速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記加速度ばらつきデータとを含む加速度特徴ベクトルデータを取得する加速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記加速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える。
【0013】
本発明の第4の観点に係る漁船活動推定装置は、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部と、
航行中における前記漁船の揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部と、
前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部と、
を備える。
【0014】
前記活動推定部が、前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータのみならず、前記船速特徴ベクトルデータの時間微分を表す微分船速特徴ベクトルデータ、及び前記角速度特徴ベクトルデータの時間微分を表す微分角速度特徴ベクトルデータも用いて、前記活動判別処理を行ってもよい。
【0015】
前記活動推定部が、
前記船速特徴ベクトルデータ、前記角速度特徴ベクトルデータ、前記微分船速特徴ベクトルデータ、及び前記微分角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別するための機械学習を行った学習済モデル、
を含んでもよい。
【0016】
前記船速特徴ベクトルデータには、前記漁船の速度の変化率の時系列を表す船速変化率データが含まれ、
前記角速度特徴ベクトルデータには、前記角速度の変化率の時系列を表す角速度変化率データが含まれてもよい。
【0017】
前記船速データには、前記漁船の速度の検出値の時系列を表す船速検出値データと、前記船速検出値データに移動平均処理を施した平滑化船速データとが含まれ、
前記角速度データには、前記角速度の検出値の時系列を表す角速度検出値データと、前記角速度検出値データに移動平均処理を施した平滑化角速度データとが含まれてもよい。
【0018】
前記漁船の航行の軌跡を表す軌跡画像データを取得する軌跡画像データ取得部、
をさらに備え、
前記活動推定部が、前記活動判別処理で前記漁船が操業中であると判別した場合、前記軌跡画像データを用いて該操業の内容を推定する操業内容推定処理をさらに行ってもよい。
【0019】
前記漁船の航行中の位置を表す位置データを取得する位置データ取得部と、
前記位置データと、地図を表す地図データとを用いて、前記漁船が陸地に近い沿岸領域に位置するか、又は前記沿岸領域よりも前記陸地から遠い沖合領域に位置するかを判別する位置判別処理を行う位置判別部と、
をさらに備え、
前記位置判別処理で前記漁船が前記沖合領域に位置すると判別された場合に、前記活動判別処理が行われ、前記位置判別処理で前記漁船が前記沿岸領域に位置すると判別された場合には、前記活動判別処理が停止されてもよい。
【0020】
前記活動推定部によって出力された前記活動判別結果データに対して、前記漁船が移動中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短移動期間長よりも時間幅が短いものを前記漁船が操業中である旨の判別結果へと修正し、かつ前記漁船が操業中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短操業期間長よりも時間幅が短いものを、前記漁船が移動中である旨の判別結果へと修正する平滑化処理を施す平滑化処理部、
をさらに備えてもよい。
【0021】
出港から帰港までの間における前記漁船の操業によって得られた漁獲量を表す漁獲量データを取得する漁獲量データ取得部と、
前記漁獲量データが表す前記漁獲量と、前記活動判別結果データに含まれる、前記漁船が操業中である旨の判別結果の時間幅の合計である正味操業期間長とを用いて、漁獲の能率を表す漁獲能率指数を算出する漁獲能率指数算出部と、
をさらに備えてもよい。
【0022】
本発明の第5の観点に係る漁船活動推定プログラムは、
コンピュータを、
漁場での操業と目的地への移動とを行う漁船の速度の時系列を表す船速データと、前記漁船の速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記漁船の速度のばらつきを表す船速ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記船速ばらつきデータとを含む船速特徴ベクトルデータを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部、
航行中における前記漁船の揺れの角速度の時系列を表す角速度データと、前記角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータであって、予め定められた時間幅における前記角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を、時間軸に沿って並べたデータである前記角速度ばらつきデータとを含む角速度特徴ベクトルデータを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部、
前記船速特徴ベクトルデータ及び前記角速度特徴ベクトルデータを用いて、前記漁船が移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行い、前記活動判別処理の結果を時系列で表した活動判別結果データを出力する活動推定部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、漁船が移動中であるか操業中であるかの判別結果を時系列で表した活動判別結果データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る漁船活動推定システムの構成を示す概念図。
図2】第1実施形態に係る漁船活動推定装置の構成を示す概念図。
図3】第1実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の一部を示す概念図。
図4】第1実施形態に係る位置判別部が位置判別処理で行う動作の一例を説明するための概念図。
図5】第1実施形態に係る位置判別部が位置判別処理で行う動作の他の例を説明するための概念図。
図6】第1実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の残部を示す概念図。
図7】第1実施形態に係る学習済モデル生成装置の構成を示す概念図。
図8】第1実施形態に係る活動判別結果データ及び平滑化活動判別結果データを示すグラフ。
図9】第1実施形態に係る漁獲能率指数算出処理のフローチャート。
図10】第2実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の一部を示す概念図。
図11】第2実施形態に係る軌跡画像データの一例を示す概念図。
図12】第2実施形態に係る軌跡画像データの他の例を示す概念図。
図13】第2実施形態に係る学習済モデル生成装置の構成を示す概念図。
図14】第2実施形態に係る活動判別処理のフローチャート。
図15】第3実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の一部を示す概念図。
図16】第4実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の一部を示す概念図。
図17】第5実施形態に係る漁船活動推定装置の機能の一部を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、実施形態に係る漁船活動推定システムついて説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付している。
【0026】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る漁船活動推定システム300は、漁船FSに設置される。まず、漁船FSの活動のパターンについて説明する。漁船FSは、航行の過程で、漁場での操業と目的地への移動とを行う。ここで“目的地”とは、例えば、漁場、港、停泊する場所等を指す。
【0027】
具体的には、漁船FSは、出港から帰港までの間に、漁場での操業と、次の漁場への移動とを繰り返し行う。また、漁船FSは、移動及び操業を行った後、帰港の前にいったん停泊し、再び移動及び操業を行うこともある。
【0028】
漁船活動推定システム300は、漁船FSの活動の推定、具体的には、漁船FSが移動中であるか操業中であるかの推定を、単位時間ごとに繰り返し行う。その推定の結果は、操業に費やされた期間の正味の長さである正味操業期間長の特定、及び漁獲の能率の特定に用いられる。
【0029】
以下、漁船活動推定システム300の構成を具体的に説明する。
【0030】
漁船活動推定システム300は、漁船FSの速度を検出する船速検出器110と、漁船FSの揺れの角速度を検出する角速度検出器120と、漁船FSの位置を検出する位置検出器130と、それら船速検出器110、角速度検出器120、及び位置検出器130の検出結果を用いて漁船FSの活動を推定する漁船活動推定装置200とを備える。
【0031】
船速検出器110は、漁船FSの速度を繰り返し検出し、漁船FSの速度の検出値の時系列を表す船速検出値データSVを漁船活動推定装置200に出力する。
【0032】
角速度検出器120は、漁船FSの船首の、鉛直な仮想軸まわりの揺れ、即ちヨーイングの角速度を繰り返し検出し、その角速度の検出値の時系列を表す角速度検出値データSAを漁船活動推定装置200に出力する。
【0033】
位置検出器130は、漁船FSの航行中の位置を検出し、その位置の検出値の時系列を表す位置データSPを漁船活動推定装置200に出力する。ここで“位置の検出値”とは、具体的には位置を表す座標値を意味する。
【0034】
なお、船速検出器110及び位置検出器130は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの信号に基づいて船速、位置等を検出するGNSS受信器によって構成されている。また、角速度検出器120は、ジャイロスコープによって構成されている。
【0035】
以下、漁船活動推定装置200の構成を具体的に説明する。
【0036】
図2に示すように、漁船活動推定装置200は、通信装置200bを備える。通信装置200bは、船速検出器110から船速検出値データSVを受信する役割、角速度検出器120から角速度検出値データSAを受信する役割、及び位置検出器130から位置データSPを受信する役割を果たす。
【0037】
また、漁船活動推定装置200は、記憶装置200cを備える。記憶装置200cには、漁船FSの活動を推定する手順を規定した漁船活動推定プログラム200dが格納されている。また、記憶装置200cには、漁船FSの活動の推定に用いられる学習済モデル200e、並びに海洋及び陸地を表す地図データ200fも記憶されている。
【0038】
また、漁船活動推定装置200は、漁船活動推定プログラム200dを実行するプロセッサ200aを備える。以下、プロセッサ200aが漁船活動推定プログラム200dを実行することにより実現される機能について説明する。
【0039】
図3に示すように、漁船活動推定装置200は、漁船FSの活動の推定、具体的には、漁船FSが移動中であるか操業中であるかの推定を行う活動推定部241を備える。
【0040】
ところで、例えば漁船FSが停泊中の期間は、漁船FSの活動を推定する必要がない。漁船FSの活動の推定は、漁船FSが航行している期間に行えばよい。そこで、漁船活動推定装置200は、漁船FSが停泊中でないことを把握するための構成を備える。その構成について、以下説明する。
【0041】
漁船活動推定装置200は、漁船FSの航行中の位置を表す位置データSPを取得する位置データ取得部211を備える。位置データ取得部211は、図1に示した位置検出器130から位置データSPを取得する。
【0042】
また、漁船活動推定装置200は、位置データ取得部211で取得された位置データSPと、地図を表す地図データ200fとを用いて、位置判別処理を行う位置判別部212を備える。なお、地図データ200fは、図2に示す記憶装置200cから取得される。
【0043】
ここで“位置判別処理”とは、漁船FSが陸地に近い沿岸領域に位置するか、又は沿岸領域よりも陸地から遠い沖合領域に位置するかを判別する処理である。
【0044】
漁船FSが沿岸領域に位置することは、漁船FSが停泊中であること、又は出港直後の状態もしくは帰港直前の状態にあることを意味する。従って、漁船FSが沿岸領域に位置する場合は、漁船FSの活動を推定する必要がない。
【0045】
一方、漁船FSが沖合領域に位置することは、漁船FSが航行中であることを意味する。つまり、漁船FSが沖合領域に位置する場合は、漁船FSは、操業中であるか移動中であるかのいずれかの状態にあると考えられる。
【0046】
そこで、活動推定部241は、位置判別部212による位置判別処理で、漁船FSが沖合領域に位置すると判別された場合に、漁船FSの活動の推定を行う。一方、活動推定部241は、位置判別部212による位置判別処理で、漁船FSが沿岸領域に位置すると判別された場合には、漁船FSの活動の推定を停止する。
【0047】
以下、図4及び図5を参照し、位置判別部212が位置判別処理で行う動作について具体的に説明する。
【0048】
図4は、位置判別部212が位置判別処理で行う動作の一例を説明するための概念図である。まず、位置判別部212は、既述の位置データSPを用いて、地図上における漁船FSの位置を特定する。また、位置判別部212は、既述の地図データ200fを用いて、漁船FSに面している海岸線を特定する。
【0049】
次に、位置判別部212は、漁船FSに面している海岸線上に、複数の基準点を設定する。そして、漁船FSの位置から各々の基準点までの距離のうち、最短となる距離を探索により特定する。このようにして、位置判別部212は、漁船FSから海岸線までの最短の距離を特定する。
【0050】
次に、位置判別部212は、漁船FSから海岸線までの最短の距離と、沿岸領域のサイズを表すものとして予め定められた距離閾値とを比較する。位置判別部212は、漁船FSから海岸線までの最短の距離が距離閾値以下であれば、漁船FSが沿岸領域に位置すると判別する。一方、位置判別部212は、漁船FSから海岸線までの最短の距離が距離閾値を超える場合は、漁船FSが沖合領域に位置すると判別する。
【0051】
図5は、位置判別部212が位置判別処理で行う動作の他の例を説明するための概念図である。まず、位置判別部212は、位置データSPを用いて、地図上における漁船FSの位置を特定し、かつ地図データ200fを用いて、漁船FSに面している海岸線を画定している陸地を特定する。
【0052】
次に、位置判別部212は、漁船FSの位置を中心とする仮想図形を地図上に設定する。仮想図形の形状及び面積は、予め定められた固定のものとする。図5では、仮想図形として、漁船FSの位置を中心とする仮想円を例示している。仮想円の半径は、予め定められた一定の値とする。
【0053】
次に、位置判別部212は、仮想図形と陸地とが重なった領域(以下、重複領域と記す。)の面積を求める。図5では、重複領域に斜線を付している。次に、位置判別部212は、重複領域の面積、又は仮想図形に対する重複領域の面積の比(以下、面積比と記す。)と、漁船FSが沿岸領域に位置するものとして予め定められた面積閾値とを比較する。
【0054】
位置判別部212は、重複領域の面積又は面積比が面積閾値以下であれば、漁船FSが沿岸領域に位置すると判別する。一方、位置判別部212は、重複領域の面積又は面積比が面積閾値を超える場合は、漁船FSが沖合領域に位置すると判別する。
【0055】
次に、図6を参照し、漁船活動推定装置200の他の機能について説明する。
【0056】
図6に示すように、漁船活動推定装置200は、船速検出値データSVを取得する船速検出値データ取得部221を備える。船速検出値データ取得部221は、図1に示す船速検出器110から船速検出値データSVを取得する。
【0057】
また、漁船活動推定装置200は、船速検出値データSVを用いて、船速検出値データSVに移動平均処理を施した平滑化船速データSVaを生成する船速移動平均処理部222を備える。
【0058】
なお、移動平均処理で船速の平均をとる区間(以下、船速移動平均処理区間と記す。)は、例えば、船速検出値データSVのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。具体的には、船速検出値データSVのサンプリング周期は30秒であり、船速移動平均処理区間の時間長は300秒である。
【0059】
また、漁船活動推定装置200は、船速検出値データSVを用いて、漁船FSの速度のばらつきの時系列を表す船速ばらつきデータSVbを生成する船速ばらつき算出部223を備える。
【0060】
船速ばらつき算出部223は、船速検出値データSVにおける予め定められた船速ばらつき算出区間ごとに、船速のばらつきを表す船速ばらつき度を算出する。また、船速ばらつき算出部223は、移動平均処理と同じ要領で、船速ばらつき算出区間を時間軸に沿って、船速検出値データSVのサンプリング周期ごとにずらしながら、船速ばらつき度を繰り返し算出する。即ち、船速ばらつきデータSVbは、船速ばらつき度の時系列を表す。
【0061】
なお、船速ばらつき算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、船速検出値データSVのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、船速ばらつき算出区間の時間長は、船速移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0062】
船速ばらつき度としては、例えば、標準偏差、分散、変動係数、全区間での平均値からの差の総和、全区間での平均値に対する比の総和等が例示される。本実施形態では、船速ばらつき度として標準偏差を用いる。
【0063】
また、漁船活動推定装置200は、船速検出値データSVを用いて、漁船FSの速度の変化率の時系列を表す船速変化率データSVcを生成する船速変化率算出部224を備える。
【0064】
船速変化率算出部224は、船速検出値データSVにおける予め定められた船速変化率算出区間ごとに、船速の変化率を算出する。また、船速変化率算出部224は、移動平均処理と同じ要領で、船速変化率算出区間を時間軸に沿って、船速検出値データSVのサンプリング周期ごとにずらしながら、船速の変化率を繰り返し算出する。即ち、船速変化率データSVcは、船速の変化率の時系列を表す。
【0065】
なお、船速変化率算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、船速検出値データSVのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、船速変化率算出区間の時間長は、船速移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0066】
本実施形態では、船速の変化率として、船速検出値データSVの船速変化率算出区間における変動を最小2乗法で直線近似した場合の、その直線の傾きを用いる。但し、船速の変化率として、時間軸上で隣り合う検出値の差分の、船速変化率算出区間における平均値等を用いてもよい。
【0067】
以下では、船速検出値データSV、平滑化船速データSVa、船速ばらつきデータSVb、及び船速変化率データSVcの集合を、船速特徴ベクトルデータSVFと総称する。共通の時刻についての、船速検出値データSV、平滑化船速データSVa、船速ばらつきデータSVb、及び船速変化率データSVcの合計4つのデータ値が、その時刻における船速特徴ベクトルデータSVFの成分である。このような成分の時系列が船速特徴ベクトルデータSVFを構成する。
【0068】
また、漁船活動推定装置200は、船速検出値データ取得部221、船速移動平均処理部222、船速ばらつき算出部223、及び船速変化率算出部224から船速特徴ベクトルデータSVFを取得する船速特徴ベクトルデータ取得部225を備える。
【0069】
また、漁船活動推定装置200は、船速特徴ベクトルデータSVFに時間微分を施することにより、船速特徴ベクトルデータSVFの時間微分を表す微分船速特徴ベクトルデータDSVFを生成する船速特徴ベクトルデータ微分部226を備える。
【0070】
なお、本明細書において、時系列データの時間微分とは、その時系列データにおける時間的に隣り合うデータ値どうしの差分、又はその差分に比例する値の時系列を意味する。
【0071】
船速特徴ベクトルデータ微分部226は、船速特徴ベクトルデータSVFを構成する船速検出値データSV、平滑化船速データSVa、船速ばらつきデータSVb、及び船速変化率データSVcの各々の時間微分を算出する。
【0072】
即ち、微分船速特徴ベクトルデータDSVFには、船速検出値データSVの時間微分、平滑化船速データSVaの時間微分、船速ばらつきデータSVbの時間微分、及び船速変化率データSVcの時間微分が含まれる。共通の時刻についての4種類の差分値の時系列が微分船速特徴ベクトルデータDSVFを構成する。
【0073】
また、漁船活動推定装置200は、角速度検出値データSAを取得する角速度検出値データ取得部231を備える。角速度検出値データ取得部231は、図1に示す角速度検出器120から角速度検出値データSAを取得する。
【0074】
また、漁船活動推定装置200は、角速度検出値データSAを用いて、角速度検出値データSAに移動平均処理を施した平滑化角速度データSAaを生成する角速度移動平均処理部232を備える。
【0075】
なお、移動平均処理で角速度の平均をとる区間(以下、角速度移動平均処理区間と記す。)は、例えば、角速度検出値データSAのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。具体的には、角速度検出値データSAのサンプリング周期は30秒であり、角速度移動平均処理区間の時間長は300秒である。
【0076】
また、漁船活動推定装置200は、角速度検出値データSAを用いて、角速度のばらつきの時系列を表す角速度ばらつきデータSAbを生成する角速度ばらつき算出部233を備える。
【0077】
角速度ばらつき算出部233は、角速度検出値データSAにおける予め定められた角速度ばらつき算出区間ごとに、角速度のばらつきを表す角速度ばらつき度を算出する。また、角速度ばらつき算出部233は、移動平均処理と同じ要領で、角速度ばらつき算出区間を時間軸に沿って、角速度検出値データSAのサンプリング周期ごとにずらしながら、角速度ばらつき度を繰り返し算出する。即ち、角速度ばらつきデータSAbは、角速度ばらつき度の時系列を表す。
【0078】
なお、角速度ばらつき算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、角速度検出値データSAのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、角速度ばらつき算出区間の時間長は、角速度移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0079】
角速度ばらつき度としては、例えば、標準偏差、分散、変動係数、全区間での平均値からの差の総和、全区間での平均値に対する比の総和等が例示される。本実施形態では、角速度ばらつき度として標準偏差を用いる。
【0080】
また、漁船活動推定装置200は、角速度検出値データSAを用いて、角速度の変化率の時系列を表す角速度変化率データSAcを生成する角速度変化率算出部234を備える。
【0081】
角速度変化率算出部234は、角速度検出値データSAにおける予め定められた角速度変化率算出区間ごとに、角速度の変化率を算出する。また、角速度変化率算出部234は、移動平均処理と同じ要領で、角速度変化率算出区間を時間軸に沿って、角速度検出値データSAのサンプリング周期ごとにずらしながら、角速度の変化率を繰り返し算出する。即ち、角速度変化率データSAcは、角速度の変化率の時系列を表す。
【0082】
なお、角速度変化率算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、角速度検出値データSAのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、角速度変化率算出区間の時間長は、角速度移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0083】
本実施形態では、角速度の変化率として、角速度検出値データSAの角速度変化率算出区間における変動を最小2乗法で直線近似した場合の、その直線の傾きを用いる。但し、角速度の変化率として、時間軸上で隣り合う検出値の差分の、角速度変化率算出区間における平均値等を用いてもよい。
【0084】
以下では、角速度検出値データSA、平滑化角速度データSAa、角速度ばらつきデータSAb、及び角速度変化率データSAcの集合を、角速度特徴ベクトルデータSAFと総称する。共通の時刻についての、角速度検出値データSA、平滑化角速度データSAa、角速度ばらつきデータSAb、及び角速度変化率データSAcの合計4つのデータ値が、その時刻における角速度特徴ベクトルデータSAFの成分である。このような成分の時系列が角速度特徴ベクトルデータSAFを構成する。
【0085】
また、漁船活動推定装置200は、角速度検出値データ取得部231、角速度移動平均処理部232、角速度ばらつき算出部233、及び角速度変化率算出部234から角速度特徴ベクトルデータSAFを取得する角速度特徴ベクトルデータ取得部235を備える。
【0086】
また、漁船活動推定装置200は、角速度特徴ベクトルデータSAFに時間微分を施することにより、角速度特徴ベクトルデータSAFの時間微分を表す微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを生成する角速度特徴ベクトルデータ微分部236を備える。
【0087】
角速度特徴ベクトルデータ微分部236は、角速度特徴ベクトルデータSAFを構成する角速度検出値データSA、平滑化角速度データSAa、角速度ばらつきデータSAb、及び角速度変化率データSAcの各々の時間微分を算出する。
【0088】
即ち、微分角速度特徴ベクトルデータDSAFには、角速度検出値データSAの時間微分、平滑化角速度データSAaの時間微分、角速度ばらつきデータSAbの時間微分、及び角速度変化率データSAcの時間微分が含まれる。共通の時刻についての4種類の差分値の時系列が微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを構成する。
【0089】
図3にも示した活動推定部241は、船速特徴ベクトルデータ取得部225によって取得された船速特徴ベクトルデータSVFと、船速特徴ベクトルデータ微分部226によって生成された微分船速特徴ベクトルデータDSVFと、角速度特徴ベクトルデータ取得部235によって取得された角速度特徴ベクトルデータSAFと、角速度特徴ベクトルデータ微分部236によって生成された微分角速度特徴ベクトルデータDSAFとを用いて、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを判別する活動判別処理を行う。
【0090】
活動推定部241は、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFのサンプリング周期と同じ繰り返し周期で、活動判別処理を繰り返し行う。
【0091】
なお、本実施形態では、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFのサンプリング周期は、船速検出値データSV及び角速度検出値データSAのサンプリング周期と同じである。
【0092】
そして、活動推定部241は、活動判別処理の結果、即ち、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを時系列で表した活動判別結果データADを出力する。
【0093】
図8の上段に、活動判別結果データADを可視化したグラフを示す。横軸は、時間を表す。縦軸は、活動判別処理の結果を、移動中である旨の結果を例えば0、操業中である旨の結果を例えば1として2値で表す。活動推定部241は、図8に示すように、活動判別結果データADとして、2値の階段関数を出力する。
【0094】
以上説明した活動推定部241の機能は、人工知能を用いたプログラムモジュール、具体的には、図2に示した学習済モデル200eによって実現することができる。これは、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFの各々と、漁船FSの活動とに相関があるためである。
【0095】
例えば、漁船FSの活動が移動中から操業中に変化するとき、船速の値、船速の移動平均の値、及び船速の変化率の値が低下する傾向がある。また、操業中は移動中に比べて、漁船FSの推進のためのエンジンの出力が抑えられ、場合によっては、操業中はエンジンを停止することもある。このため、操業中は移動中に比べて、船速のばらつき及び角速度のばらつきが大きい傾向が認められる。
【0096】
こういった事情で、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFの各々は、漁船FSの活動と相関する。そこで、その相関を利用して、機械学習により、活動推定部241としての学習済モデル200eを生成することができる。
【0097】
つまり、学習済モデル200eは、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを用いて、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを判別するための機械学習を行ったものである。
【0098】
以下、学習済モデル200eを生成するための学習済モデル生成装置について説明する。
【0099】
図7に示すように、学習済モデル生成装置400には、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414、及び学習用活動判別結果データ415が予め準備されている。
【0100】
学習用船速特徴ベクトルデータ411は、図6に示す船速特徴ベクトルデータSVFに対応する教師データであり、船速特徴ベクトルデータSVFのサンプルであってもよい。学習用微分船速特徴ベクトルデータ412は、図6に示す微分船速特徴ベクトルデータDSVFに対応する教師データであり、微分船速特徴ベクトルデータDSVFのサンプルであってもよい。学習用角速度特徴ベクトルデータ413は、図6に示す角速度特徴ベクトルデータSAFに対応する教師データであり、角速度特徴ベクトルデータSAFのサンプルであってもよい。学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414は、図6に示す微分角速度特徴ベクトルデータDSAFに対応する教師データであり、微分角速度特徴ベクトルデータDSAFのサンプルであってもよい。
【0101】
学習用活動判別結果データ415は、図6に示す活動判別結果データADに対応する教師データである。学習用活動判別結果データ415は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、及び学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414が得られる場合の、漁船FSの実際の活動内容が時間ごとに正しく特定されたデータである。学習用活動判別結果データ415は、例えば人手、具体的には、漁船FSに搭乗する船員により作成される。
【0102】
また、学習済モデル生成装置400は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414、及び学習用活動判別結果データ415を用いて学習済モデル200eを生成する生成部420を有する。
【0103】
生成部420は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414から、学習用活動判別結果データ415を推定する方針を学習する。このような機械学習により、学習済モデル200eが生成される。
【0104】
図6に戻り、説明を続ける。以上説明したように、活動推定部241は、学習済モデル200eによって実現される。漁船活動推定装置200は、活動推定部241としての学習済モデル200eによって出力された活動判別結果データADに対して、平滑化処理を施す平滑化処理部242も備える。
【0105】
平滑化処理部242は、活動判別結果データADに対して平滑化処理を施すことにより得られる平滑化活動判別結果データSADを出力する。
【0106】
図8の下段に、平滑化活動判別結果データSADを可視化したグラフを示す。平滑化処理部242は、平滑化処理において、活動判別結果データADにおける、漁船FSが移動中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短移動期間長よりも時間幅が短いもの(以下、第1誤判定結果と記す。)ESaを、漁船FSが操業中である旨の判別結果へと修正する。
【0107】
ここで“移動中である旨の判別結果の時間幅”とは、移動中である旨の判別結果が連続して時間軸上に並んでいる矩形状の部分の、時間軸の方向の幅を意味する。また、“最短移動期間長”とは、漁船FSが移動する期間長として想定される最も短い期間長を指す。
【0108】
本実施形態では、最短移動期間長は、3分に設定される。即ち、3分未満の移動はあり得ないため、時間幅が3分よりも短い第1誤判定結果ESaは、誤判定であると言える。そこで、平滑化処理部242は、第1誤判定結果ESaを、漁船FSが操業中である旨の判別結果へと修正する。
【0109】
また、平滑化処理部242は、平滑化処理において、活動判別結果データADにおける、漁船FSが操業中である旨の判別結果のうち、予め定められた最短操業期間長よりも時間幅が短いもの(以下、第2誤判定結果と記す。)ESbを、漁船FSが移動中である旨の判別結果へと修正する。
【0110】
ここで“操業中である旨の判別結果の時間幅”とは、操業中である旨の判別結果が連続して時間軸上に並んでいる矩形状の部分の、時間軸の方向の幅を意味する。また、“最短操業期間長”とは、漁船FSが操業する期間長として想定される最も短い期間長を指す。
【0111】
本実施形態では、最短操業期間長は、5分に設定される。即ち、5分未満の操業はあり得ないため、時間幅が5分よりも短い第2誤判定結果ESbは、誤判定であると言える。そこで、平滑化処理部242は、第2誤判定結果ESbを、漁船FSが移動中である旨の判別結果へと修正する。
【0112】
図6に戻り、説明を続ける。漁船活動推定装置200は、出港から帰港までの間における漁船FSの操業によって得られた漁獲量を表す漁獲量データFCDを外部から取得する漁獲量データ取得部251も備える。
【0113】
また、漁船活動推定装置200は、漁獲量データFCDと、平滑化活動判別結果データSADとを用いて、漁獲の能率を表す漁獲能率指数を算出する漁獲能率指数算出部252と、漁獲能率指数算出部252によって算出された漁獲能率指数を外部に出力する出力部261とを備える。
【0114】
具体的には、漁獲能率指数算出部252は、まず、平滑化活動判別結果データSADに含まれる、漁船FSが操業中である旨の判別結果の時間幅の合計である正味操業期間長を求める。
【0115】
なお、正味操業期間長を求めることは、図8の下段に示す平滑化活動判別結果データSADにおいて、着色した領域の面積を求めることに相当する。正味操業期間長は、漁船FSが出港から帰港までの間に操業した期間の長さの合計値である。
【0116】
次に、漁獲能率指数算出部252は、漁獲量データFCDが表す漁獲量を正味操業期間長で割り算する。これにより、漁船FSが操業した単位時間あたりの漁獲量である漁獲能率指数が求まる。
【0117】
以下、図9を参照し、漁獲能率指数の算出に至るまでの漁船活動推定装置200の動作についてまとめる。図9は、漁獲能率指数を算出する漁獲能率指数算出処理のフローチャートである。
【0118】
図9に示すように、まず、漁船FSの出港に伴い、位置データ取得部211による位置データSPの取得、船速検出値データ取得部221による船速検出値データSVの取得、及び角速度検出値データ取得部231による角速度検出値データSAの取得が開始される(ステップS11)。
【0119】
なお、位置データSP、船速検出値データSV、及び角速度検出値データSAはいずれも、時刻と、その時刻における検出値とが対応付けられた時系列データである。
【0120】
次に、位置判別部212が、位置データSPを用いて、漁船FSが陸地から充分に離れたか否か、即ち、漁船FSが陸地から遠い沖合領域に位置するか否かを判別する位置判別処理を行う(ステップS12)。漁船FSがまだ陸地に近い沿岸領域に位置する場合は(ステップS12;NO)、活動判別処理を開始する必要がないので、処理はステップS12に戻る。
【0121】
一方、漁船FSが沖合領域に位置する場合は(ステップS12;YES)、活動推定部241による活動判別処理が開始される(ステップS13)。これにより、活動判別結果データADの生成が開始される。
【0122】
なお、このときも位置判別部212による位置判別処理が、活動推定部241による活動判別処理と並行して継続されている。活動推定部241による活動判別処理で、漁船FSが陸地から遠い沖合領域に位置すると判定されている場合(ステップS14;NO)、処理はステップS13に戻る。このようにして、漁船FSが沖合領域に位置する期間に、活動判別処理が繰り返される。
【0123】
活動判別処理は、船速検出値データSV及び角速度検出値データSAのサンプリング周期、具体的には30秒ごとに、繰り返される。活動判別結果データADは、船速検出値データSV及び角速度検出値データSAを構成する検出値が得られた時刻ごとに、その時刻における漁船FSの活動についての活動判別処理の結果を対応付けたデータ構造を有する。
【0124】
一方、活動推定部241による活動判別処理で、漁船FSが陸地に充分近づいたと判定された場合(ステップS14;YES)、即ち、漁船FSが沿岸領域に位置すると判定された場合、活動推定部241は、活動判別処理を停止した後(ステップS15)、漁船FSの航行が終了したか否かを判定する(ステップS16)。
【0125】
なお、漁船FSの航行の終了に伴って、船速検出値データSV及び角速度検出値データSAの取得も終了する。このため、活動推定部241は、船速検出値データSV及び角速度検出値データSAの取得の終了をもって、漁船FSの航行が終了したことを検出できる。船速検出値データSV及び角速度検出値データSAの取得が継続している期間は、漁船FSが航行中であると判定される。
【0126】
漁船FSの航行がまだ終了していない場合(ステップS16;NO)、処理はステップS12に戻る。このようにして、漁船FSが移動及び操業を行った後、帰港の前にいったん停泊する場合でも、その停泊の期間に活動判別処理を停止させることができる。
【0127】
一方、漁船FSの航行が終了した場合は(ステップS16;YES)、平滑化処理部242が、これまでに生成された活動判別結果データADに対し、図8を参照して説明した要領で平滑化処理を施す(ステップS17)。これにより、平滑化活動判別結果データSADが得られる。
【0128】
なお、本実施形態では、一旦、すべての活動判別結果データADが得られた後に、ステップS17で平滑化処理を行うこととしたが、ステップS13で、生成された活動判別結果データADに対して逐次に平滑化処理を行ってもよい。
【0129】
次に、漁獲量データ取得部251が、ステップS11からステップS16でYESと判定されるまでの航行で得られた漁獲量を表す漁獲量データFCDを外部から取得する。そして、漁獲能率指数算出部252が、その漁獲量データFCDと平滑化活動判別結果データSADとを用いて、漁獲の能率を表す漁獲能率指数を算出し、出力部261が漁獲能率指数を外部に出力する(ステップS18)。
【0130】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステップS13で活動判別結果データADを得ることができる。活動判別結果データADは、漁船FSが移動中であるか操業中であるかの判別結果を時系列で表したものである。
【0131】
このため、活動判別結果データAD又はそれを平滑化した平滑化活動判別結果データSADによれば、漁船FSが航行した期間のうち、実際に操業に費やされた期間の正味の長さである正味操業期間長を正確に特定することができる。従って、漁獲量を正味操業期間長で割り算した漁獲能率指数も正確に特定できる。
【0132】
漁獲能率指数は、漁労の成果を表す報告書データに含められて図示せぬデータベースに記録される。これにより、漁獲能率指数の変動の傾向を把握することができる。漁獲能率指数の変動の傾向を把握することは、水産資源の保護に資する。即ち、漁獲の能率が低下する傾向がみられた場合、漁獲を控える対策をとることで、水産資源の枯渇を未然に防止できる。
【0133】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、活動判別処理において、漁船FSが操業中であるか移動中であるかということだけを判定することとした。漁船FSが操業中であると判定された場合には、さらに操業の内容を推定してもよい。以下、その具体例を述べる。
【0134】
図10に示すように、本実施形態に係る漁船活動推定装置200は、漁船FSの航行中の位置の時系列を表す位置データSPを用いて、漁船FSの航行の軌跡を表す軌跡画像データTDを作成する軌跡画像データ作成部271と、軌跡画像データ作成部271から軌跡画像データTDを取得する軌跡画像データ取得部272とをさらに備える。
【0135】
即ち、本実施形態では、位置データSPは、既述の位置判別処理に利用されるだけでなく、軌跡画像データTDの作成にも利用される。
【0136】
活動推定部241には、既述の船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAF(以下、これらのデータを漁船挙動データと総称する。)のみならず、軌跡画像データ取得部272によって取得された軌跡画像データTDも入力される。
【0137】
活動推定部241は、活動判別処理で漁船FSが操業中であると判別した場合、軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データを用いて、その操業の内容を推定する操業内容推定処理をさらに行う。
【0138】
なお、本実施形態では、“操業の内容”とはどのような水産物を獲ったのかということまで特定される意味とする。即ち、活動推定部241によれば、漁船FSの操業の内容として、どのような水産物を獲ったのかということが推定可能である。
【0139】
軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データと、漁船FSの操業の内容とには、相関が認められる。このため、軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データを用いて、漁船FSの操業の内容を推定することが原理的に可能である。
【0140】
以下、軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データと、漁船FSの操業の内容との相関について、例示的に述べる。
【0141】
図11に、軌跡画像データTDの一例を示す。軌跡画像データTDが表す漁船FSの軌跡TAは、漁船FSの位置を表す座標値を2次元座標平面上にプロットし、かつプロット間を線分で結ぶことにより得られる。
【0142】
なお、図11では、船速を分かりやすくするために、軌跡TA上に、等時間間隔で、漁船FSの進行方向を表す矢印を付した。矢印の間隔が狭いほど、船速が遅いことを意味する。船速等は上記漁船挙動データで特定できるため、実際の軌跡画像データTDには、矢印は無くてもよい。
【0143】
軌跡TAのうち、極端に船速が遅い部分(以下、極低速部分と記す。)TA1は、漁船FSが潮に流されていることを表す。このような極低速部分TA1は、潮に流されながら行うイカ釣り漁において典型的にみられる。
【0144】
従って、軌跡画像データTDが表す、極低速部分TA1を有する軌跡TAの形状のパターンと、上記漁船挙動データで特定される、極低速部分TA1における船速等とによって、操業の内容として、イカ釣り漁が行われたことを特定できる。
【0145】
図12は、軌跡画像データTDの他の例を示す。この例では、軌跡TBは、直線的に航行したことを表す往路部分TB1と、その往路部分TB1に沿って蛇行しながら戻ったことを表す復路部分TB2との組み合わせを含む。
【0146】
このような、往路部分TB1と復路部分TB2との組み合わせは、ブリの延縄漁において典型的にみられる。つまり、往路部分TB1は、延縄を仕掛けていることを表し、復路部分TB2は、延縄を回収していることを表す。
【0147】
従って、軌跡画像データTDが表す、往路部分TB1及び復路部分TB2を有する軌跡TBの形状のパターンと、上記漁船挙動データで特定される、往路部分TB1の船速及び角速度のばらつきの少なさと、上記漁船挙動データで特定される、復路部分TB2の角速度の周期的変動等とによって、操業の内容として、ブリの延縄漁が行われたことを特定できる。
【0148】
以上説明したように、軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データと、漁船FSの操業の内容とには相関がある。図11図12では、漁船FSの操業の内容として、イカ釣り漁、ブリの延縄漁を例示したが、他の水産物の漁についても同様に、軌跡画像データTD及び上記漁船挙動データを用いて同定できることは当業者に理解できるであろう。
【0149】
そこで、上述した相関を使用して、図10に示した活動推定部241の機能を機械学習によって実現することができる。つまり、本実施形態に係る活動推定部241としての学習済モデル200eは、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを用いて、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを判別し、かつ操業中であると判別した場合に、その操業の内容を、軌跡画像データTDを用いて推定するための機械学習を行ったものである。
【0150】
以下、本実施形態に係る学習済モデル200eを生成する学習済モデル生成装置400について説明する。
【0151】
図13に示すように、本実施形態に係る学習済モデル生成装置400には、学習用軌跡画像データ416も予め準備されている。学習用軌跡画像データ416は、図10に示す軌跡画像データTDに対応する教師データであり、軌跡画像データTDのサンプルであってもよい。
【0152】
学習用軌跡画像データ416は、軌跡画像データTDと同様、漁船FSの軌跡を表す画像データの時系列で構成されている。その時系列の時刻は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414、及び学習用活動判別結果データ415が表す時刻と対応している。
【0153】
学習用活動判別結果データ415は、図10に示す活動判別結果データADに対応する教師データである。学習用活動判別結果データ415は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414、及び習用軌跡画像データ416が得られる場合の、漁船FSの実際の活動内容が時間ごとに正しく特定されたデータである。学習用活動判別結果データ415は、例えば人手、具体的には、漁船FSに搭乗する船員により作成される。
【0154】
生成部420は、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414、及び習用軌跡画像データ416から、学習用活動判別結果データ415を推定する方針を学習する。このような機械学習により、学習済モデル200eが生成される。
【0155】
以下、図14を参照し、本実施形態に係る活動判別処理(図9のステップS13)について説明する。
【0156】
図14に示すように、まず、活動推定部241は、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを用いて、漁船FSが操業中であるか否かを判定する(ステップS131)。
【0157】
活動推定部241は、漁船FSが操業中ではなく移動中であると判定した場合(ステップS131;NO)、活動判別結果データADを構成する時系列の1つとして、移動中である旨の判別結果を出力する(ステップS133)。
【0158】
一方、活動推定部241は、漁船FSが操業中であると判定した場合(ステップS131;YES)、船速特徴ベクトルデータSVF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFと、軌跡画像データTDとを用いて、その操業の内容を推定する操業内容推定処理をさらに行う。そして、活動推定部241は、操業内容推定処理で推定した結果を、活動判別結果データADを構成する時系列の1つとして出力する(ステップS132)。
【0159】
なお、操業内容推定処理の結果として想定される操業の内容ごとに、異なる数値を割り当てておけば、活動判別結果データAD及び平滑化活動判別結果データSADは、3つ以上の値をとるステップ関数として表すことができる。
【0160】
一例として、操業内容推定処理の結果として、イカ釣り漁又はブリの延縄漁が想定される場合、イカ釣り漁に1を割り当て、ブリの延縄漁に2を割り当てる。また、図8を参照して説明したように、移動中という判別結果には0を割り当てる。この場合、活動判別結果データAD及び平滑化活動判別結果データSADは、3つの値をとるステップ関数として表すことができる。
【0161】
以上説明した本実施形態によれば、活動判別結果データAD又は平滑化活動判別結果データSADを用いて、既述の正味操業期間長を特定できるのは勿論のこと、操業内容推定処理の結果としての操業の内容ごとに、それに費やされた正味の時間長を特定できる。また、本実施形態では、図6に示す漁獲量データFCDは、捕獲した水産物別に、その水産物の漁獲量を対応付けたデータ構造を有するものとする。
【0162】
具体的には、上述した一例に関して言えば、活動判別結果データAD又は平滑化活動判別結果データSADを用いて、出港から帰港までの間にイカ釣り漁に費やされた正味の時間長、及びブリの延縄漁に費やされた正味の時間長をそれぞれ特定できる。また、漁獲量データFCDによれば、イカの捕獲量とブリの漁獲量とをそれぞれ特定できる。
【0163】
従って、本実施形態によれば、図6に示す漁獲能率指数算出部252は、漁船FSで捕獲する水産物別に、その水産物の漁の能率を表す漁獲能率指数を算出することができる。このため、どの水産物の漁が過剰であるかといったことをきめ細かく把握することが可能である。この結果、水産資源の保護をより一層適切に行えるようになる。
【0164】
[第3実施形態]
図6には、漁船活動推定装置200が、船速特徴ベクトルデータ取得部225と角速度特徴ベクトルデータ取得部235との両方を備える構成を例示した。船速特徴ベクトルデータSVFと角速度特徴ベクトルデータSAFとの各々が漁船FSの活動に相関するので、第1及び第2実施形態において、漁船活動推定装置200は、船速特徴ベクトルデータ取得部225と角速度特徴ベクトルデータ取得部235とのうちの一方のみを備えてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0165】
図15に示すように、本実施形態に係る活動推定部241は、船速特徴ベクトルデータSVFと微分船速特徴ベクトルデータDSVFとを用いて、既述の活動判別処理を行い、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを時系列で表した活動判別結果データADを出力する。
【0166】
船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFは、漁船FSが移動中であるか操業中であるかということと相関する。従って、原理的には、図10に示した角速度特徴ベクトルデータSAF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを使用せずとも、活動判別処理の遂行が可能である。
【0167】
また、本実施形態に係る活動推定部241は、船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFと、図10に示した軌跡画像データTDとを用いて、既述の操業内容推定処理を行う。
【0168】
船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFは、漁船FSの操業の内容に相関する。従って、原理的には、図10に示した角速度特徴ベクトルデータSAF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを使用せずとも、操業内容推定処理の遂行が可能である。
【0169】
なお、本実施形態では、活動推定部241を実現する学習済モデルの形成において、図13に示した教師データとしての、学習用角速度特徴ベクトルデータ413及び学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414は省略される。他の構成及び動作は、第1及び第2実施形態の場合と同様である。
【0170】
[第4実施形態]
図16に示すように、本実施形態に係る活動推定部241は、角速度特徴ベクトルデータSAFと微分角速度特徴ベクトルデータDSAFとを用いて、既述の活動判別処理を行い、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを時系列で表した活動判別結果データADを出力する。
【0171】
角速度特徴ベクトルデータSAF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFは、漁船FSが移動中であるか操業中であるかということと相関する。従って、原理的には、図10に示した船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFを使用せずとも、活動判別処理の遂行が可能である。
【0172】
また、本実施形態に係る活動推定部241は、角速度特徴ベクトルデータSAF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFと、図10に示した軌跡画像データTDとを用いて、既述の操業内容推定処理を行う。
【0173】
角速度特徴ベクトルデータSAF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFは、漁船FSの操業の内容に相関する。従って、原理的には、図10に示した船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFを使用せずとも、操業内容推定処理の遂行が可能である。
【0174】
なお、本実施形態では、活動推定部241を実現する学習済モデルの形成において、図13に示した教師データとしての、学習用船速特徴ベクトルデータ411及び学習用微分船速特徴ベクトルデータ412は省略される。他の構成及び動作は、第1及び第2実施形態の場合と同様である。
【0175】
[第5実施形態]
第2実施形態では、活動判別処理及び操業内容推定処理に、角速度検出値データSA及び船速検出値データSVを用いたが、これらに代えて、漁船FSの加速度の時系列を表すデータを用いてもよい。漁船FSの加速度の時系列を表すデータも、角速度検出値データSA及び船速検出値データSVと同様、漁船FSが移動中であるか操業中であるかということと、漁船FSの操業の内容とに相関するからである。
【0176】
図17に示すように、本実施形態に係る漁船活動推定装置200は、加速度検出値データSCを取得する加速度検出値データ取得部281を備える。加速度検出値データSCは、漁船FSの加速度の検出値の時系列を表す。なお、加速度検出値データ取得部281は、漁船FSに設置される、図示せぬ加速度検出器から加速度検出値データSCを取得する。
【0177】
また、漁船活動推定装置200は、加速度検出値データSCを用いて、加速度検出値データSCに移動平均処理を施した平滑化加速度データSCaを生成する加速度移動平均処理部282を備える。
【0178】
なお、移動平均処理で加速度の平均をとる区間(以下、加速度移動平均処理区間と記す。)は、例えば、加速度検出値データSCのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。具体的には、加速度検出値データSCのサンプリング周期は30秒であり、加速度移動平均処理区間の時間長は300秒である。
【0179】
また、漁船活動推定装置200は、加速度検出値データSCを用いて、漁船FSの加速度のばらつきの時系列を表す加速度ばらつきデータSCbを生成する加速度ばらつき算出部283を備える。
【0180】
加速度ばらつき算出部283は、加速度検出値データSCにおける予め定められた加速度ばらつき算出区間ごとに、加速度のばらつきを表す加速度ばらつき度を算出する。また、加速度ばらつき算出部283は、移動平均処理と同じ要領で、加速度ばらつき算出区間を時間軸に沿って、加速度検出値データSCのサンプリング周期ごとにずらしながら、加速度ばらつき度を繰り返し算出する。即ち、加速度ばらつきデータSCbは、加速度ばらつき度の時系列を表す。
【0181】
なお、加速度ばらつき算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、加速度検出値データSCのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、加速度ばらつき算出区間の時間長は、加速度移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0182】
加速度ばらつき度としては、例えば、標準偏差、分散、変動係数、全区間での平均値からの差の総和、全区間での平均値に対する比の総和等が例示される。本実施形態では、加速度ばらつき度として標準偏差を用いる。
【0183】
また、漁船活動推定装置200は、加速度検出値データSCを用いて、漁船FSの加速度の変化率の時系列を表す加速度変化率データSCcを生成する加速度変化率算出部284を備える。
【0184】
加速度変化率算出部284は、加速度検出値データSCにおける予め定められた加速度変化率算出区間ごとに、加速度の変化率を算出する。また、加速度変化率算出部284は、移動平均処理と同じ要領で、加速度変化率算出区間を時間軸に沿って、加速度検出値データSCのサンプリング周期ごとにずらしながら、加速度の変化率を繰り返し算出する。即ち、加速度変化率データSCcは、加速度の変化率の時系列を表す。
【0185】
なお、加速度変化率算出区間は、移動平均処理の時間幅と同じく、例えば、加速度検出値データSCのサンプリング周期の5倍以上、20倍以下である。本実施形態では、加速度変化率算出区間の時間長は、加速度移動平均処理区間の時間長と同じである。
【0186】
本実施形態では、加速度の変化率として、加速度検出値データSCの加速度変化率算出区間における変動を最小2乗法で直線近似した場合の、その直線の傾きを用いる。但し、加速度の変化率として、時間軸上で隣り合う検出値の差分の、加速度変化率算出区間における平均値等を用いてもよい。
【0187】
以下では、加速度検出値データSC、平滑化加速度データSCa、加速度ばらつきデータSCb、及び加速度変化率データSCcの集合を、加速度特徴ベクトルデータSCFと総称する。共通の時刻についての、加速度検出値データSC、平滑化加速度データSCa、加速度ばらつきデータSCb、及び加速度変化率データSCcの合計4つのデータ値が、その時刻における加速度特徴ベクトルデータSCFの成分である。このような成分の時系列が加速度特徴ベクトルデータSCFを構成する。
【0188】
また、漁船活動推定装置200は、加速度検出値データ取得部281、加速度移動平均処理部282、加速度ばらつき算出部283、及び加速度変化率算出部284から加速度特徴ベクトルデータSCFを取得する加速度特徴ベクトルデータ取得部285を備える。
【0189】
また、漁船活動推定装置200は、加速度特徴ベクトルデータSCFに時間積分を施すことにより、加速度特徴ベクトルデータSCFの時間積分を表す積分加速度特徴ベクトルデータISCFを生成する加速度特徴ベクトルデータ積分部286を備える。
【0190】
なお、本明細書において、時系列データの時間積分とは、その時系列データにおける時間的に隣り合うデータ値どうしの和、又はその和に比例する値の時系列を意味する。
【0191】
加速度特徴ベクトルデータ積分部286は、加速度特徴ベクトルデータSCFを構成する加速度検出値データSC、平滑化加速度データSCa、加速度ばらつきデータSCb、及び加速度変化率データSCcの各々の時間積分を算出する。
【0192】
即ち、積分加速度特徴ベクトルデータISCFには、加速度検出値データSCの時間積分、平滑化加速度データSCaの時間積分、加速度ばらつきデータSCbの時間積分、及び加速度変化率データSCcの時間積分が含まれる。共通の時刻についての4種類の積分値の時系列が積分加速度特徴ベクトルデータISCFを構成する。
【0193】
本実施形態に係る活動推定部241は、加速度特徴ベクトルデータSCFと積分加速度特徴ベクトルデータISCFとを用いて、既述の活動判別処理を行い、漁船FSが移動中であるか操業中であるかを時系列で表した活動判別結果データADを出力する。
【0194】
加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFは、漁船FSが移動中であるか操業中であるかということと相関する。原理的には、図10に示した船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFに代えて、加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFを用いても、活動判別処理の遂行が可能である。
【0195】
また、本実施形態に係る活動推定部241は、加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFと、図10に示した軌跡画像データTDとを用いて、既述の操業内容推定処理を行う。
【0196】
加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFは、漁船FSの操業の内容に相関する。原理的には、図10に示した船速特徴ベクトルデータSVF及び微分船速特徴ベクトルデータDSVFに代えて、加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFを用いても、操業内容推定処理の遂行が可能である。
【0197】
なお、本実施形態では、活動推定部241を実現する学習済モデルの形成において、図13に示した教師データとしての、学習用船速特徴ベクトルデータ411、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412、学習用角速度特徴ベクトルデータ413、及び学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414に代えて、学習用加速度特徴ベクトルデータと、学習用積分加速度特徴ベクトルデータが用いられる。
【0198】
学習用加速度特徴ベクトルデータは、加速度特徴ベクトルデータSCFに対応する教師データであり、加速度特徴ベクトルデータSCFのサンプルであってもよい。学習用積分加速度特徴ベクトルデータは、積分加速度特徴ベクトルデータISCFに対応する教師データであり、積分加速度特徴ベクトルデータISCFのサンプルであってもよい。他の構成及び動作は、第3実施形態の場合と同様である。
【0199】
以上、第1-第5実施形態について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0200】
図6には、活動推定部241が、船速特徴ベクトルデータSVF、角速度特徴ベクトルデータSAF、微分船速特徴ベクトルデータDSVF、及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを用いて、活動判別処理及び操業内容推定処理を行う構成を例示した。活動推定部241は、微分船速特徴ベクトルデータDSVF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFは用いずに、船速特徴ベクトルデータSVF及び角速度特徴ベクトルデータSAFを用いて活動判別処理及び操業内容推定処理を行うこともできる。
【0201】
活動判別処理に微分船速特徴ベクトルデータDSVF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFを用いない場合、図7に示す構成において、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412及び学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414は不要である。但し、図7に示すように、学習用微分船速特徴ベクトルデータ412及び学習用微分角速度特徴ベクトルデータ414も教師データとして用いる機械学習を行い、図6に示すように、微分船速特徴ベクトルデータDSVF及び微分角速度特徴ベクトルデータDSAFも用いて活動判別処理を行った方が、活動判別処理の判別の正確性を高めことができる。
【0202】
図17には、活動推定部241が、加速度特徴ベクトルデータSCF及び積分加速度特徴ベクトルデータISCFを用いて、活動判別処理及び操業内容推定処理を行う構成を例示した。活動推定部241は、積分加速度特徴ベクトルデータISCFは用いずに、加速度特徴ベクトルデータSCFを用いて活動判別処理及び操業内容推定処理を行うこともできる。
【0203】
図6には、船速特徴ベクトルデータSVFに船速変化率データSVcが含まれる構成を例示したが、船速特徴ベクトルデータSVFに船速変化率データSVcが含まれていなくてもよい。また、図6には、角速度特徴ベクトルデータSAFに角速度変化率データSAcが含まれる構成を例示したが、角速度特徴ベクトルデータSAFに角速度変化率データSAcが含まれていなくてもよい。また、図17には、加速度特徴ベクトルデータSCFに加速度変化率データSCcが含まれる構成を例示したが、加速度特徴ベクトルデータSCFに加速度変化率データSCcが含まれていなくてもよい。
【0204】
図6には、船速を表す船速データの一例として、船速検出値データSV及び平滑化船速データSVaを例示した。船速データとしては、船速検出値データSVと平滑化船速データSVaの一方のみを用いてもよい。つまり、船速特徴ベクトルデータSVFを構成するデータから、船速検出値データSV又は平滑化船速データSVaを省略してもよい。
【0205】
図6には、角速度を表す角速度データの一例として、角速度検出値データSA及び平滑化角速度データSAaを例示した。角速度データとしては、角速度検出値データSAと平滑化角速度データSAaの一方のみを用いてもよい。つまり、角速度特徴ベクトルデータSAFを構成するデータから、角速度検出値データSA又は平滑化角速度データSAaを省略してもよい。
【0206】
図17には、加速度を表す加速度データの一例として、加速度検出値データSC及び平滑化加速度データSCaを例示した。加速度データとしては、加速度検出値データSCと平滑化加速度データSCaの一方のみを用いてもよい。つまり、加速度特徴ベクトルデータSCFを構成するデータから、加速度検出値データSC又は平滑化加速度データSCaを省略してもよい。
【0207】
図1には、漁船活動推定装置200が漁船FSに搭載された構成を例示した。この場合、漁船活動推定装置200は、漁船FSの活動をリアルタイムに推定することができる。具体的には、漁船活動推定装置200は、図9のステップS11からステップS17までの処理をリアルタイムに行える。但し、漁船活動推定装置200は、必ずしも漁船FSに搭載されていなくてもよい。
【0208】
例えば、漁船活動推定装置200は、陸地に固定的に設置されたものであってもよい。そして、漁船FSから漁船活動推定装置200に、船速検出値データSV、角速度検出値データSA、及び位置データSPをリアルタイムに送信してもよい。この場合、漁船活動推定装置200は、既述の位置判別処理及び活動判別処理をリアルタイムに行い得る。
【0209】
あるいは、漁船FSで逐次に検出される船速検出値データSV、角速度検出値データSA、及び位置データSPを蓄積可能なメモリを漁船FSに備えておき、そのメモリに蓄積された船速検出値データSV、角速度検出値データSA、及び位置データSPを、漁船FSの航行の後に、漁船活動推定装置200に与えてもよい。この場合、漁船活動推定装置200は、事後的に、即ち漁船FSの航行の後に、既述の位置判別処理及び活動判別処理を行うこととなる。
【0210】
図2に示した漁船活動推定プログラム200dを、既存のスマーフォン、タブレット、その他のコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータに漁船活動推定装置200の機能を実現させることもできる。漁船活動推定プログラム200dは通信ネットワークを介して配布してもよいし、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布してもよい。
【符号の説明】
【0211】
110…船速検出器、
120…角速度検出器、
130…位置検出器、
200…漁船活動推定装置、
200a…プロセッサ、
200b…通信装置、
200c…記憶装置、
200d…漁船活動推定プログラム、
200e…学習済モデル、
200f…地図データ、
211…位置データ取得部、
212…位置判別部、
221…船速検出値データ取得部、
222…船速移動平均処理部、
223…船速ばらつき算出部、
224…船速変化率算出部、
225…船速特徴ベクトルデータ取得部、
226…船速特徴ベクトルデータ微分部、
231…角速度検出値データ取得部、
232…角速度移動平均処理部、
233…角速度ばらつき算出部、
234…角速度変化率算出部、
235…角速度特徴ベクトルデータ取得部、
236…角速度特徴ベクトルデータ微分部、
241…活動推定部、
242…平滑化処理部、
251…漁獲量データ取得部、
252…漁獲能率指数算出部、
261…出力部、
271…軌跡画像データ作成部、
272…軌跡画像データ取得部、
281…加速度検出値データ取得部、
282…加速度移動平均処理部、
283…加速度ばらつき算出部、
284…加速度変化率算出部、
285…加速度特徴ベクトルデータ取得部、
286…加速度特徴ベクトルデータ積分部、
300…漁船活動推定システム、
400…学習済モデル生成装置、
411…学習用船速特徴ベクトルデータ、
412…学習用微分船速特徴ベクトルデータ、
413…学習用角速度特徴ベクトルデータ、
414…学習用微分角速度特徴ベクトルデータ、
415…学習用活動判別結果データ、
416…学習用軌跡画像データ、
420…生成部、
AD…活動判別結果データ、
SAD…平滑化活動判別結果データ、
ESa…第1誤判定結果、
ESb…第2誤判定結果、
FCD…漁獲量データ、
FS…漁船、
SA…角速度検出値データ(角速度データ)、
SAa…平滑化角速度データ(角速度データ)、
SAb…角速度ばらつきデータ、
SAc…角速度変化率データ、
SAF…角速度特徴ベクトルデータ、
DSAF…微分角速度特徴ベクトルデータ、
SC…加速度検出値データ(加速度データ)、
SCa…平滑化加速度データ(加速度データ)、
SCb…加速度ばらつきデータ、
SCc…加速度変化率データ、
SCF…加速度特徴ベクトルデータ、
ISCF…積分加速度特徴ベクトルデータ、
SV…船速検出値データ(船速データ)、
SVa…平滑化船速データ(船速データ)、
SVb…船速ばらつきデータ、
SVc…船速変化率データ、
SVF…船速特徴ベクトルデータ、
DSVF…微分船速特徴ベクトルデータ、
SP…位置データ、
TA,TB…軌跡、
TA1…極低速部分、
TB1…往路部分、
TB2…復路部分、
TD…軌跡画像データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17