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特許7466136保守作業車連絡システム及び保守作業車連絡方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】保守作業車連絡システム及び保守作業車連絡方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240405BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20240405BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
B61L3/12 Z
B61D15/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019167638
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041901
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591256701
【氏名又は名称】日本機械保線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591199682
【氏名又は名称】株式会社東京保機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100196601
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 祐市
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏生
(72)【発明者】
【氏名】堀内 言二
(72)【発明者】
【氏名】安達 弘志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】青木 克博
(72)【発明者】
【氏名】石井 利明
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 考廣
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114790(JP,A)
【文献】特開平10-260017(JP,A)
【文献】特開2016-186444(JP,A)
【文献】特開2009-060740(JP,A)
【文献】特開2014-111431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
B61L 3/12
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数の車両で構成される保守作業車が走行する線路の近傍に配置された地上設備、及び前記保守作業車に搭載された車載設備を有し、
前記地上設備は、
前記線路上の反射板に光を周期的に放出し、前記光の反射光を受光する地上センサであって、
前記反射光の変化に応じて、前記保守作業車の先端が前記光の光路を通過したときに先端通過信号を出力し、且つ、前記保守作業車の後端が前記光の光路を通過したときに後端通過信号を出力する地上センサと、
前記先端通過信号及び前記後端通過信号の入力に応じて、前記保守作業車の先端及び後端のそれぞれが前記光の光路を通過した先端通過時刻及び後端通過時刻を決定する地上通過時刻決定部と、
前記先端通過時刻を示す先端通過時刻信号、及び前記後端通過時刻を示す後端通過時刻信号を出力する通過時刻信号出力部と、を有し、
前記車載設備は、
前記保守作業車の走行速度を示す車速信号を出力する車速センサと、
前記車速信号に対応する車速を、現在の時刻である車載時刻に関連付けて経時的に記憶する車速記憶処理を実行する車速記憶処理部と、
前記先端通過時刻信号及び前記後端通過時刻信号を取得する通過時刻信号取得部と、
前記車速、前記車載時刻、前記先端通過時刻、及び前記後端通過時刻から前記保守作業車の長さを演算する編成長演算部と、
前記保守作業車の長さを示す編成長信号を出力する編成長信号出力部と、
前記保守作業車の何れかの車両に搭載され、現在の時刻情報を含む複数の測位用電波信号を受信する車載アンテナと、
前記車載アンテナを搭載する車両に搭載され、前記線路上の前記反射板に光を周期的に放出し、前記光の反射光を受光可能な車載センサであって、前記線路上の反射板からの反射光を検出したときに、前記車両が前記反射板を通過したことを示す車載アンテナ通過信号を出力する車載センサと、
前記車載アンテナ通過信号の入力に応じて、前記車載アンテナを搭載する車両が前記反射板を通過した車載アンテナ通過時刻を決定する車載通過時刻決定部と、
前記車速に関連付けられた時刻情報、前記先端通過時刻、及び前記車載アンテナ通過時刻から、前記車載アンテナと前記保守作業車の先端との間の長さである前方長を演算する前方長演算部と、を有する、
ことを特徴とする、保守作業車連絡システム。
【請求項2】
前記車載設備は、
前記複数の測位用電波信号に基づいて、前記車載アンテナの現在位置であるアンテナ位置を演算するアンテナ位置情報演算部と、
前記アンテナ位置と、前記前方長とから前記保守作業車の先端の位置である先端位置を演算する先端位置演算部と、
前記先端位置を示す先端位置信号を出力する先端位置信号出力部と、
を更に有する、請求項1に記載の保守作業車連絡システム。
【請求項3】
前記地上設備は、
現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号を受信する地上アンテナと、
前記地上アンテナによって受信された前記時刻情報電波信号から現在の時刻である地上現在時刻を抽出する地上時刻情報抽出部と、を更に有し、
前記車載設備は、
現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号を受信する車載アンテナと、
前記車載アンテナによって受信された現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号から現在の時刻である車載現在時刻を抽出する車載時刻情報抽出部と、
を更に有し、
前記地上通過時刻決定部は、前記地上現在時刻を使用して、前記先端通過時刻及び前記後端通過時刻を決定し、
前記車速記憶処理部は、前記車速信号に対応する車速を、前記車載現在時刻に関連付けて経時的に記憶する車速記憶処理を実行する、請求項1に記載の保守作業車連絡システム。
【請求項4】
線路内を走行する、単数又は複数の車両で構成される保守作業車の編成長を連絡する保守作業車連絡方法であって、
地上設備によって実行される、
前記線路上の反射板に光を周期的に照射し、前記光の反射光を受光するステップと、
前記反射光の変化に応じて、前記保守作業車の先端が前記光の光路を通過したときに先端通過信号を出力し、且つ、前記保守作業車の後端が前記光の光路を通過したときに後端通過信号を出力するステップと、
前記先端通過信号及び前記後端通過信号の入力に応じて、前記保守作業車の先端及び後端のそれぞれが前記光の光路を通過した先端通過時刻及び後端通過時刻を決定するステップと、
前記先端通過時刻を示す先端通過時刻信号、及び前記後端通過時刻を示す後端通過時刻信号を出力するステップと、を有し、
車載設備によって実行される、
前記保守作業車の走行速度を示す車速信号を出力するステップと、
前記車速信号に対応する車速を、現在の時刻である車載時刻に関連付けて経時的に記憶する車速記憶処理を実行するステップと、
前記先端通過時刻信号及び前記後端通過時刻信号を取得するステップと、
前記車速、前記車載時刻、前記先端通過時刻、及び前記後端通過時刻から前記保守作業車の長さを演算するステップと、
前記保守作業車の長さを示す編成長信号を出力するステップと、
前記保守作業車の何れかの車両に搭載される車載アンテナを介して、現在の時刻情報を含む複数の測位用電波信号を受信するステップと、
前記車載アンテナを搭載する車両に搭載され、前記線路上に光を周期的に放出し、前記光の反射光を受光可能な車載センサが前記線路上の反射板からの反射光を検出したときに、前記車両が前記反射板を通過したことを示す車載アンテナ通過信号を出力するステップと、
前記車載アンテナ通過信号の入力に応じて、前記車載アンテナを搭載する車両が前記反射板を通過した車載アンテナ通過時刻を決定するステップと、
前記車速に関連付けられた時刻情報、前記先端通過時刻、及び前記車載アンテナ通過時刻から、前記車載アンテナと前記保守作業車の先端との間の長さである前方長を演算するステップと、
を有する、
ことを特徴とする、保守作業車連絡方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保守作業車連絡システム及び保守作業車連絡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線路の保守作業に使用される保守作業車は、線路上を双方向に移動するため、保守作業車同士が衝突する危険性が高い。衝突を回避するために、保守作業車は、例えば、全地球測位システム(GPS: Global Positioning system)を利用し自車の位置をそれぞれ連絡しあって、衝突を回避する方法がある。
【0003】
特許文献1は、GPS受信機から求めた自己位置情報を送信すると共に、他の移動体から送信されている他の移動体の位置情報を受信し、自己位置情報と他の移動体の位置情報とにより、自移動体と他の移動体の相対距離を求めるシステムを開示する。
【0004】
特許文献2は、移動体間隔制御に利用される、無線通信端末を備えた多数の保守作業車間の送信電波の衝突を回避しうるデータ送信時期の調整方法およびデータ送信時期を調整する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-86853号公報
【文献】特開2004-343628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
線路の保守作業に使用される保守作業車は、動力車の前方又は後方に線路保守のための機材等を載せるホッパ車や、いわゆるトロと呼ばれる車両を多数連結して編成されることが多い。しかし、他の保守作業車との衝突を回避する上で必要な情報である動力車の前方又は後方に連結されているホッパ車やトロを含めた編成長を自動的に取得する方法はない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決して、動力車が前方又は後方に連結される保守作業車の編成長を自動的に取得する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る保守作業車連絡システムは、単数又は複数の車両で構成される保守作業車が走行する線路の近傍に配置された地上設備、及び保守作業車に搭載された車載設備を有し、地上設備は、保守作業車の先端が所定の標識を通過したときに先端通過信号を出力し、且つ、保守作業車の後端が所定の標識を通過したときに後端通過信号を出力する地上センサと、先端通過信号及び後端通過信号の入力に応じて、保守作業車の先端及び後端のそれぞれが所定の標識を通過した先端通過時刻及び後端通過時刻を決定する地上通過時刻決定部と、先端通過時刻を示す先端通過時刻信号、及び後端通過時刻を示す後端通過時刻信号を出力する通過時刻信号出力部と、を有し、車載設備は、保守作業車の走行速度を示す車速信号を出力する車速センサと、車速信号に対応する車速を、現在の時刻である車載時刻に関連付けて経時的に記憶する車速記憶処理を実行する車速記憶処理部と、先端通過時刻信号及び後端通過時刻信号を取得する通過時刻信号取得部と、車速、車載時刻、先端通過時刻、及び後端通過時刻から前記保守作業車の長さを演算する編成長演算部と、保守作業車の長さを示す編成長信号を出力する編成長信号出力部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る保守作業車連絡システムは、車載設備が、保守作業車の何れか車両に搭載され、現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号を受信する車載アンテナと、車載アンテナを搭載する車両が所定の標識を通過したときに、車載アンテナ通過信号を出力する車載センサと、車載アンテナ通過信号の入力に応じて、車載アンテナを搭載する車両が所定の標識を通過した車載アンテナ通過時刻を決定する車載通過時刻決定部と、車速に関連付けられた時刻情報、先端通過時刻、及び車載アンテナ通過時刻から、車載アンテナと保守作業車の先端との間の長さである前方長を演算する前方長演算部と、複数の測位用電波信号に基づいて、前記車載アンテナの現在位置であるアンテナ位置を演算するアンテナ位置情報演算部と、アンテナ位置と、前方長とから保守作業車の先端の位置である先端位置を演算する先端位置演算部と、先端位置を示す先端位置信号を出力する先端位置信号出力部と、を更に有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る保守作業車連絡システムは、地上設備が、現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号を受信する地上アンテナと、地上アンテナによって受信された時刻情報電波信号から現在の時刻である地上現在時刻を抽出する地上時刻情報抽出部と、を更に有し、車載設備は、現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号を受信する車載アンテナと、車載アンテナによって受信された現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号から現在の時刻である車載現在時刻を抽出する車載時刻情報抽出部を更に有し、地上通過時刻決定部は、地上現在時刻を使用して、先端通過時刻及び後端通過時刻を決定し、車載通過時刻決定部は、車載現在時刻を使用して、車載アンテナ通過時刻を決定する、ことが好ましい。
【0011】
本発明に係る保守作業車連絡方法は、線路内を走行する、単数又は複数の車両で構成される保守作業車の編成長を連絡する保守作業車連絡方法であって、地上設備によって実行される、保守作業車の先端が所定の標識を通過したときに先端通過信号を出力し、且つ、保守作業車の後端が所定の標識を通過したときに後端通過信号を出力するステップと、先端通過信号及び前記後端通過信号の入力に応じて、保守作業車の先端及び後端のそれぞれが所定の標識を通過した先端通過時刻及び後端通過時刻を決定するステップと、先端通過時刻を示す先端通過時刻信号、及び後端通過時刻を示す後端通過時刻信号を出力するステップと、を有し、車載設備によって実行される、保守作業車の走行速度を示す車速信号を出力するステップと、車速信号に対応する車速を、現在の時刻である車載時刻に関連付けて経時的に記憶する車速記憶処理を実行するステップと、先端通過時刻信号及び前記後端通過時刻信号を取得するステップと、車速、車載時刻、先端通過時刻、及び後端通過時刻から前記保守作業車の長さを演算するステップと、保守作業車の長さを示す編成長信号を出力するステップと、を有する、とを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
保守作業車同士の衝突を回避するため動力車が前方又は後方に連結される保守作業車の編成長を自動的に取得する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る保守作業車連絡システムの概要を説明する図であり、(a)は、保守作業車の先頭が、線路内に設置された反射板を通過したときを示した図であり、(b)は、動力車が反射板を通過したときを示した図であり、(c)は、保守作業車の最後尾が、反射板を通過したときを示した図であり、(d)は、編成長L、前方長L1、後方長L2を計算する方法の一例を説明する図である。
図2】反射板と地上設備の外観概要の一例を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
図3】地上設備の概略構成の一例を示す図である。
図4】車載設備6の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図5】時刻と車載設備の車速センサのロータリーエンコーダの検出パルスと動力車の走行距離との関係の一例を示す図である。
図6】走行距離の補間計算に使用する走行距離記録データの一例を示す図である。
図7】地上設備の処理のフローチャートの一例を示す図である。
図8】車載設備の通過時刻取得処理のフローチャートの一例を示す図である。
図9】車載設備の編成長連絡処理のフローチャートの一例を示す図である。
図10】車載設備による保守作業車の位置連絡処理の一例を示す図であり、(a)は、処理のフローチャート図であり、(b)は、車載アンテナ位置と保守作業車の先端位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一側面に係る保守作業車連絡システム及び保守作業車連絡方法について図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。尚、以下の説明及び図において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(本発明に係る保守作業車連絡システムの概要)
図1は、実施形態に係る保守作業車連絡システム1を一例として、本発明に係る保守作業車連絡システムの概要を説明する図である。図1(a)は、保守作業車5の先端が、線路2内に設置された反射板3を通過したときを示した図である。図1(b)は、動力車50が反射板3を通過したときを示した図である。図1(c)は、保守作業車5の最後尾が、反射板3を通過したときを示した図である。したがって、反射板3は保守作業車5が通過したか否かを判定するための標識である。図1(d)は、編成長L、前方長L1、後方長L2を計算する方法の一例を説明する図である。
【0016】
保守作業車連絡システム1は、線路2内に設置された反射板3と、反射板3を地上から見込むように設置された地上設備4と、線路2上を走行する保守作業車5に搭載された車載設備6を有する。反射板3と地上設備4とは、保守作業車5の保守基地の出口付近に設置されている。保守作業車5が保守基地を出発するときに、保守作業車連絡システム1が、保守作業車5の編成長を計測するためである。
【0017】
例えば、保守作業車5は、少なくとも1両の動力車50と、動力車50に連結されたトロ51~55等により編成される。動力車50は、例えば保守用車である。説明を簡単にするため、車載設備6は動力車50に搭載されているものとして説明する。保守作業車5の編成長L(m)は、トロ51の先端からトロ55の後尾までである。動力車50の前方長L1(m)は、トロ51の先端から動力車50までである。また、動力車50の後方長L2(m)は、動力車50からトロ55の後尾までであり、L2=L-L1である。なお、動力車50内の車載設備6が搭載されている位置が、動力車50の前方長と後方長の基準点とされる。
【0018】
地上設備4は不図示の地上レーザーセンサを有し、地上レーザーセンサは、反射板3にレーザー光を照射し、反射板3からの反射光を受光する。地上レーザーセンサは、反射板3に、一定の周期、例えば、数ミリ秒の周期でレーザー光を照射する。
【0019】
反射板3は、レール21、枕木22、及びバラスト23を有する線路2内に設置される。2本のレール21の間の枕木22上に反射板3を設置することが好ましい。反射板3が安定するからである。保守作業車5が反射板3を通過し始めたとき、地上レーザーセンサは、レーザー反射光を受光しなくなる。例えば、保守作業車5の先頭車両であるトロ51の先端が反射板3を通過したときから、最後尾車両であるトロ55の後端が反射板3を通過したときまで、地上レーザーセンサは、レーザー反射光を受光しない。
【0020】
地上設備4は、地上アンテナ41を介して測位衛星からの測位用電波信号を受信している。測位用電波信号には、時刻情報電波信号が含まれている。地上レーザーセンサが反射光を受光しなくなったとき、すなわち、保守作業車5の先頭車両であるトロ51の先端が反射板3を通過したときの時刻T1(以下、「先端通過時刻」という)を、地上設備4は、測位用電波信号に基づいて求めることができる。
【0021】
地上設備4は、地上無線アンテナ42を介して、先端通過時刻T1を示す先端通過信号を、車載設備6に送信する。車載設備6は、車載無線アンテナ62を介して受信した先端通過時刻T1を示す先端通過信号から先端通過時刻T1を取得する。
【0022】
図1(b)は、動力車50が、反射板3を通過したときを示す図である。
【0023】
動力車50には、車載設備6が搭載されている。車載設備6は、不図示の車載レーザーセンサを有し、車載レーザーセンサは、線路2内に、一定の周期、例えば、数ミリ秒の周期でレーザー光を照射する。動力車50が、線路2内の反射板3を通過したとき、車載レーザーセンサは、反射板3からのレーザー反射光を受光する。
【0024】
又、車載設備6は、車載アンテナ61を介して複数の測位衛星からの測位用電波信号を受信している。車載設備6が測位衛星からの測位用電波信号を受信して得られる位置は、車載アンテナ61の取り付け位置である。説明を簡単にするため、車載アンテナ61の取り付け位置と、動力車50の前方長L1及び後方長L2の基準となる車載レーザーセンサの取り付け位置とは同じであるとして説明する。なお、測位用電波信号には、時刻情報電波信号が含まれている。
【0025】
車載レーザーセンサが反射光を受光したとき、すなわち、車載アンテナ61が反射板3を通過したときの時刻T2(以下、「車載アンテナ通過時刻」という)を、車載設備6は、受信した測位用電波信号に基づいて求めることができる。
【0026】
図1(c)は、保守作業車5の最後尾が、標識である反射板3を通過したときを示した図である。
【0027】
反射板3は、線路2内に設置されているので、保守作業車5の最後尾のトロ55の後端が反射板3を通過したと、地上レーザーセンサは、レーザー反射光を再び受光するようになる。地上設備4は、地上レーザーセンサが反射光を再び受光し始めたとき、すなわち、保守作業車5の最後尾車両であるトロ55の後端が反射板3を通過したときの時刻T3(以下、「後端通過時刻」という)を、測位用電波信号に基づいて求めることができる。
【0028】
地上設備4は、地上無線アンテナ42を介して、後端通過時刻信号を、車載設備6に送信する。車載設備6は、車載無線アンテナ62を介して受信した後端通過時刻信号から後端通過時刻T3を取得する。
【0029】
車載設備6は、不図示の編成長演算部を有する。車載設備6は後端通過時刻T3を取得すると、先端通過時刻T1、車載アンテナ通過時刻T2、及び後端通過時刻T3に対応する走行距離を使用して、図1(d)に示すように、編成長Lと前方長L1を計算することができる。したがって、保守作業車連絡システム1の車載設備6は、他の保守作業車に、車載設備6が搭載されている保守作業車5の編成長Lを連絡することができる。
【0030】
更に、車載設備6は、車載アンテナ61を介して受信した測位用電波信号から車載アンテナ61の位置を計算ことができる。保守作業車5の位置の基準点が、保守作業車5の先頭であるとすると、車載アンテナ61の位置を保守作業車5の先頭の位置に変換する必要がある。そこで、車載設備6は、保守作業車5の前方長L1と、例えば、測位用電波信号から計算された位置の変位ベクトル(例えば、連続して測位された2点間の位置の変位)を使用して、車載アンテナ61の位置を保守作業車5の先端の位置に換算する。
【0031】
車載設備6は、保守作業車5の先頭の位置、例えば、緯度lon,経度lutで示される位置と、編成長Lとを示す連絡信号を、車載無線アンテナ62を介して他の保守作業車に送信することができる。車載無線アンテナ62は、地上設備4からの先端通過時刻T1と後端車載アンテナ通過時刻T3を示す信号の受信と、保守作業車5の位置、編成長Lの送信を行う送受信アンテナとして機能しているが、別々のアンテナとしてもよい。
【0032】
図1(d)は、編成長L、前方長L1、後方長L2を計算する方法の一例を説明する図である。
【0033】
車載設備6は、不図示の編成長演算部を有し、編成長演算部は、先端通過時刻T1、車載アンテナ通過時刻T2、及び後端通過時刻T3での保守作業車5のそれぞれの走行距離に基づいて編成長L1、前方長L1を計算することができる。更に、後方長L2を計算してもよい。編成長Lは、
L=(後端通過時刻T3での走行距離)-(先端通過時刻T1での走行距離)
で計算される。
【0034】
又、動力車の前方長L1は、トロ51の先端から車載アンテナ61の取り付け位置までであるから、
L1=(車載アンテナ通過時刻T2での走行距離)-(先端通過時刻T1での走行距離)
で計算される。又、LとL1が判れば、動力車50の後方長L2は、動力車50の車載設備6が搭載されている位置からトロ55の後尾までであり、
L2=L-L1
で計算される。
【0035】
地上設備4から送信される先端通過時刻T1と後端通過時刻T3、車載設備6が取得する車載アンテナ通過時刻T2は、いずれも複数の測位衛星からの測位用電波信号に基づいて取得される。地上設備4が受信する測位用電波信号を発信する複数の測位衛星の組み合わせと、車載設備6が受信する測位用電波信号を発信する複数の測位衛星の組み合わせとは異なっていてもよい。全地球測位システム(GPS)の任意の少なくとも4つの測位衛星の測位用電波信号から取得される現在の時刻は、誤差範囲1/1000秒程度で同一となるからである。
【0036】
したがって、地上設備4と車載設備6との時間同期は取らずともよく、編成長L、前方長L1、及び後方長L2の精度を高めることができる。
【0037】
上述のように、保守作業車連絡システム1は、編成長Lと前方長L1を求めたあと、保守作業車5の移動によって変化する車載アンテナ61の位置を2点取得する。保守作業車5の位置の基準点が、保守作業車5の先端であるとする。車載設備6は、保守作業車5の前方長L1と、測位用電波信号から計算された位置の変位ベクトル(例えば、連続して測位された2点間の位置の変位)を使用して、車載アンテナ61の位置を保守作業車5の先端の位置に換算する。
【0038】
保守作業車連絡システム1は、保守作業車5の位置である例えば、緯度ionと経度lat、編成長Lを定期的に他の保守作業車に連絡して、保守作業車同士の衝突を回避するための情報を、例えば衝突回避システムに提供することができる。
【0039】
(実施形態に係る標識と地上設備の概要)
図2は、本実施形態に係る反射板と地上設備の外観概要の一例を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【0040】
反射板3は、線路2内の枕木面又はバラスト面に設置される。地上設備4は、地上から数メートル、好ましくは3~6mの高さに、線路2内の反射板を見込むように線路2の近傍に設置される。なお、反射板3と地上設備4は、例えば保守基地の出口近辺に設置されている。地上設備4から反射板にレーザー光を照射して、レーザー光の反射を検出するためである。したがって、通常は、反射板3は、水平面に対して傾斜して取り付けられることが好ましい。
【0041】
地上設備4は、地上レーザーセンサ43を有する。地上レーザーセンサ43は、反射板3にレーザー光を照射して、レーザー反射光を再び受光する。地上レーザーセンサ43は、反射板3に、一定の周期、例えば、数ミリ秒の周期でレーザー光を照射する。反射板3は、線路2内に設置されているので、保守作業車5が反射板3を通過したとき、地上レーザーセンサ43は、レーザー反射光を受光しなくなる。
【0042】
例えば、保守作業車5の先頭車両であるトロ51の先端が反射板3を通過したときから、最後尾車両であるトロ55の後端が反射板3を通過したときまで、地上レーザーセンサ43は、レーザー反射光を受光しない。地上設備4は、地上レーザーセンサ43が反射光を受光しなくなったとき、保守作業車5の先端が反射板の通過を開始したと判定し、先端通過信号を出力する。保守作業車が再び受光し始めたとき、保守作業車5の後端が反射板3の通過を完了したと判定し、後端通過信号を出力する。
【0043】
図3は、地上設備の概略構成の一例を示す図である。地上設備4は、地上アンテナ41、地上無線アンテナ42、地上レーザーセンサ43、地上電波受信部44、地上無線通信部45、及び地上マイコン部46を有する。
【0044】
地上電波受信部44は、地上アンテナ41を介して、測位衛星から送信される測位用電波信号を受信する。受信した測位用電波信号を使用して、地上マイコン部46は、時刻を計算する。なお、測位用電波信号は複数の測位衛星からの測位用電波信号を受信する必要がある。複数の測位用電波信号から位置と時刻が計算されるからである。測位衛星は、好ましくは4つ以上である。測位衛星の例としては、米国のGPS(Global Positioning System)衛星、日本の準天頂衛星「みちびき」がある。
【0045】
地上無線通信部45は、地上マイコン部46に接続され、地上無線アンテナ42を介して、地上設備4と車載設備6間で、無線通信を行う。
【0046】
地上レーザーセンサ43は、周期的に、反射板3にレーザー光を照射して、レーザー反射光を再び受光する。地上レーザーセンサ43は、地上マイコン部46により制御され、地上レーザーセンサ43の検出結果は、地上マイコン部46に出力される。
【0047】
地上マイコン部46は、地上マイコン記憶部460と地上マイコン処理部470を有する。地上マイコン記憶部460は、1又は複数の半導体メモリを有する。例えば、地上マイコン記憶部460は、RAM、フラッシュメモリ、EPROM、又は、EEPROM等の不揮発性メモリの少なくとも一つを有する。
【0048】
地上マイコン記憶部460は、地上マイコン処理部470による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、地上マイコン記憶部460は、ドライバプログラムとして、地上レーザーセンサ43を制御するデバイスドライバプログラム等を記憶する。
【0049】
コンピュータプログラムは、例えば、CD-ROM、又は、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて受信記憶部120にインストールされてもよい。又、プログラムサーバ等からダウンロードしてインストールしてもよい。さらに、地上マイコン記憶部460は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。地上マイコン記憶部460は、地上設備4を識別するための地上コードテーブル461等を記憶する。
【0050】
地上マイコン処理部470は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。地上マイコン処理部470は、地上設備4の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、MCU(Micro computer Unit)である。地上マイコン処理部470は、保守作業車5が反射板3を通過したのに応じて、通過の先端通過時刻T1と、後端通過時刻T3を車載設備6に連絡するため、地上レーザーセンサ43等の各種処理が適切な手順で実行されるように動作を制御する。
【0051】
地上マイコン処理部470は、地上マイコン記憶部460に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、地上マイコン処理部470は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行してもよい。地上マイコン処理部470は、地上通過時刻決定部471、地上時刻情報抽出部472、通過時刻信号出力部473等を有する。
【0052】
地上マイコン処理部470が有するこれらの各部は、独立した集積回路、回路モジュール、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして地上マイコン部46に実装されてもよい。
【0053】
(実施形態に係る車載設備の概要)
図4は、車載設備の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0054】
保守作業車5に搭載された車載設備6は、車載アンテナ61、車載無線アンテナ62、車載レーザーセンサ63、車速センサ64、車載電波受信部65、車載無線通信部66、及び車載マイコン部67を有する。車載マイコン部67は、車載マイコン記憶部670と車載マイコン処理部680とを有し、車載レーザーセンサ63、車速センサ64、車載電波受信部65、及び車載無線通信部66に接続される。
【0055】
なお、車載設備6を構成する各ユニットは、同一の筐体に含まれている必要はない。例えば、車載レーザーセンサ63は、動力車50の床下、車載アンテナ61と車載無線アンテナ62は、動力車50の屋根に取り付けられることが好ましい。更に、車載設備6は、動力車50だけでなく、保守作業車5を構成する車両のいずれかに搭載、又は、分散して搭載されてもよい。
【0056】
車載電波受信部65は、車載アンテナ61を介して、測位衛星から送信される測位用電波信号を受信する。受信した測位用電波信号を使用して、車載マイコン部67は、動力車50の位置と、動力車50が反射板3を通過した時刻を計算する。正確には、車載設備6が複数の測位衛星からの測位用電波信号を受信して得られる位置は、車載アンテナ61の取り付け位置である。
【0057】
説明を簡単にするため、車載アンテナ61の取り付け位置と、反射板3を通過したことを検出する車載レーザーセンサ63の取り付け位置とは同じであるとして説明する。なお、測位用電波信号は複数の測位衛星からの測位用電波信号を受信する必要がある。複数の測位用電波信号から位置と時刻が計算されるからである。測位衛星は、好ましくは4つ以上である。
【0058】
車載無線通信部66は、車載マイコン部67に接続され、車載無線アンテナ62を介して、地上設備4から、先端通過時刻T1を示す先端通過時刻信号と後端通過時刻T3を示す後端通過信号を受信する。又、車載無線通信部66は、車載無線アンテナ62を介して、他の保守作業車に、保守作業車5の位置、編成長Lに関連する信号を送信する。車載無線アンテナ62は、送受信アンテナとして機能しているが、別々のアンテナとしてもよい。
【0059】
車載レーザーセンサ63は、反射板3にレーザー光を照射して、レーザー反射光を受光する。車載レーザーセンサ63は、線路2内に、周期的に、例えば、数ミリ秒の周期でレーザー光を照射する。反射板3は、線路2内に設置されているので、動力車50が反射板3を通過したとき、車載レーザーセンサ63は、レーザー反射光を受光する。車載アンテナ61の取り付け位置は車載レーザーセンサ63の取り付け位置とは同じであるので、車載レーザーセンサ63が反射板を通過したしたとき、車載レーザーセンサ63は車載アンテナ通過信号を出力する。車載アンテナ通過信号により、車載マイコン部67は、車載アンテナ61が反射板を通過したことを検知することができる。
【0060】
車速センサ64は、動力車50の車速、すなわち保守作業車5の車速を検出するためのセンサである。車速センサ64は、例えば、動力車軸又は車輪に取り付けられた、スリットを有する回転盤の回転の変位をパルス信号としてカウントするエンコーダが使用される。車軸又は車輪の回転と連動して回転する歯車式車速センサでもよい。更に、測位衛星システムを利用した車速センサでもよい。移動距離が短ければ、移動距離は直線に近似でき車速を計算できるからである。
【0061】
車載マイコン部67は、車載マイコン記憶部670と車載マイコン処理部680を有する。車載マイコン記憶部670は、1又は複数の半導体メモリを有する。例えば、車載マイコン記憶部670は、RAM、フラッシュメモリ、EPROM、又は、EEPROM等の不揮発性メモリの少なくとも一つを有する。
【0062】
車載マイコン記憶部670は、車載マイコン処理部680による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、又は、データ等を記憶する。例えば、車載マイコン記憶部670は、ドライバプログラムとして、車載レーザーセンサ63を制御するデバイスドライバプログラム等を記憶する。
【0063】
コンピュータプログラムは、例えば、CD-ROM、又は、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて車載マイコン記憶部670にインストールされてもよい。又、プログラムサーバ等からダウンロードしてインストールしてもよい。さらに、車載マイコン記憶部670は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。車載マイコン記憶部670は、走行距離記録データ671、編成長等を補正するための補正テーブル672、地上設備4及び保守作業車を識別するためのコードからなる車載コードテーブル673等を記憶する。
【0064】
車載マイコン処理部680は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。車載マイコン処理部680は、車載設備6の車載レーザーセンサ63と車速センサ64の動作を制御する。又、保守作業車5の移動によって変化する位置と、編成長Lとを定期的に出力して、保守作業車同士の衝突を回避するための情報を他の保守作業車に連絡する。車載マイコン処理部680は、例えば、MCU(Micro Computer Unit)として実現されてもよい。
【0065】
更に、車載マイコン処理部680は、車載マイコン記憶部670に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。又、車載マイコン処理部680は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行してもよい。車載マイコン処理部680は、車速記憶処理部681、通過時刻信号取得部682、車載時刻情報抽出部683、車両通過時刻決定部684、編成長演算部685、編成長信号出力部686、前方長演算部687、アンテナ位置情報演算部688、先端位置演算部689、及び先端位置信号出力部690を有する。
【0066】
(実施形態に係る編成長等の計算の概要)
図5は、時刻と動力車50に搭載された車速センサ64のロータリーエンコーダの検出パルスと動力車50の走行距離との関係の一例を示す図である。
【0067】
図5の下段の数列は、保守作業車連絡システム1が稼働を開始したときの、測位衛星から取得された初期時刻T0から経過した時間を1秒間隔で示している。中段の数列は、動力車50の車速センサ64のロータリーエンコーダが検出するパルスの初期時刻T0からのパルス値を1秒ごとに示している。上段の数列は、動力車50の初期時刻T0からの走行距離(m)を1秒ごとに示している。なお、説明を簡単にするため、動力車50は、一定速度10Km/hで走行しているものとしている。
【0068】
例えば、動力車が6cm進むごとに、車速センサ64のロータリーエンコーダは、1パルスを検出するように設定されている。車速センサ64は、検出されるパルス数を1秒間隔でカウントする。したがって、車速(m/sec)は検出されるパルスカウント数に比例する。例えば、車速センサ64が、1秒間に46パルスを検出したとすると、動力車50は1秒間に2.76mを走行したことになる。したがって、車速は2.76m/secとなり、車速2.76m/secに3600をかければ時速約10Km/hとなる。又、動力車が時速10Km/hで走行しているとき、検出パルス間隔は、約22msecである。
【0069】
例えば、車速センサ64が1秒ごとに出力する速度が秒速(m/sec)であるとすると、出力された秒速は(m/sec)は1秒ごとの走行距離となる。したがって、初期時刻T0からの走行距離は、1秒ごとの車速(m/sec)を、初期時刻T0から積算することにより計算できる。
【0070】
例えば、保守作業車5の先頭トロ51の先端が、一定の時速10Km/hで反射板3を通過したときの先端通過時刻T1とする。初期時刻T0から経過した時間はT1-T0により計算される。先端通過時刻T1は、初期時刻T0からの経過時間に換算して、2.65秒のときであったとする。走行距離は、初期時刻T0から2秒経過したときの走行距離5.52mと3秒経過したときの走行距離8.28mを使用して、5.52+(8.28-5.52)×0.65=7.314mと算出される。
【0071】
図5に示す実施例は、保守作業車5は常に一定の時速10Km/hで走行する例である。しかし、実施には、保守作業車5は、初期時刻T0から後端通過時刻T3までの間に、加速や減速することもあり、速度が一定でないことがある。そこで、各時刻における走行距離は、車速センサ64が出力する車速から計算される各時刻を挟む前後2つの走行距離により補間して計算される。
【0072】
各時刻を初期時刻T0からの経過時間で換算すると、補間計算式は、
(経過時間直前の走行距離)+(経過時間直後の走行距離-経過時間直前の走行距離)×(経過時間の1秒未満の値)
と表わされる。
【0073】
次に、一定速度10km/hのまま、動力車50が、反射板3を通過したことを車載設備6が検出したとする。動力車50が反射板3を通過した車載アンテナ通過時刻T2は、初期時刻T0からの経過時間に換算して、6.65秒のときであったとする。走行距離は、初期時刻T0から6秒経過したときの走行距離16.56mと7秒経過したときの走行距離19.23mを使用して、走行距離16.56+(19.32-16.56)×0.65=18.354mと算出される。
【0074】
保守作業車5の先頭車両であるトロ51が反射板3を通過し始めたときの走行距離は、7.314mである。動力車50が、反射板3を通過したときの走行距離18.354mである。したがって、トロ51の先端から動力車50の車載設備6が搭載されている位置までの長さである前方長L1は、18.354-7.314=11.04mとなる。
【0075】
更に、保守作業車5の最後尾のトロ55が、一定の時速10Km/hで反射板3を通過したときの後端通過時刻T3とする。地上設備4から取得した後端通過時刻T3の、初期時刻T0から経過した時間はT3-T0により計算される。後端通過時刻T3は、初期時刻T0からの経過時間に換算して12.65秒とする。走行距離は、初期時刻T0から12秒経過したときの走行距離33.12mと13秒経過したときの走行距離35.88mを使用して、走行距離33.12+(35.88-33.12)×0.65=34.914mと算出される。
【0076】
したがって、保守作業車5の先頭トロ51の先端から、最後尾トロ55の後端までの長さである保守作業車5の編成長Lは、34.914-7.314=27.6mとなる。又、動力車50の車載設備6が搭載されている位置から最後尾のトロ51の後端までの長さである後方長L2は、L-L1=27.6-11.04=16.56mとなる。
【0077】
上述の説明においては、初期時刻T0を時間の基準としたが、時間の基準は、先端通過時刻T1より前の任意の時刻又は先端通過時刻T1でもよい。
【0078】
地上設備4から送信される先端通過T1と後端通過時刻T3は、複数の測位衛星からの測位電波信号から抽出された地上現在時刻を使用している。又、車載アンテナ通過時刻T2は、複数の測位衛星からの測位電波信号から抽出された車載現在時刻を使用している。したがって、理論的には1/1000秒単位の精度で先端通過時刻T1、車載アンテナ通過時刻T2、及び後端通過時刻T3が取得可能である。したがって、より精度の高い保守作業車5の編成長L等を計算することができる。
【0079】
また、地上設備4と車載設備6は、現在の時刻として、複数の測位衛星からの測位電波信号から抽出された時刻を共有しているので、地上マイコン部46と車載マイコン部67との計時同期をとる必要もない。なお、地上マイコン部46と車載マイコン部67の処理能力から、実際には、±10msec程度の誤差を伴うこともあるので、実際の計算処理は、1/100秒単位で計算してもよい。
【0080】
更に、地上マイコン部46と車載マイコン部67の処理遅延による計測誤差が生じることがある。編成長Lと前方長L1の計測誤差としてとして、例えば、計算結果に編成長Lでは4パルス分、すなわち24cm、前方長L1に2パルス分、すなわち12cmを加算して、編成長、前方長を補正してもよい。
【0081】
図6は、走行距離の補間計算に使用する走行距離記録データの一例を示す図である。
【0082】
走行距離記録データ671の表中、左欄は車載現在時刻(時:分:秒)を、中欄は各車載時刻での車速(m/sec)を、右端が走行距離(m)を示している。
【0083】
車載設備6の車載時刻情報抽出部683は、車載アンテナ61を介して、複数の測位用電波信号から現在の時刻である車載現在時刻を抽出している。車載時刻が1秒経過するごとに、車載設備6の車速記憶処理部681は、車速センサ64から車速(m/sec)から得られた車速を車載マイコン記憶部670の走行距離記録データ671に書き込む。更に車速記憶処理部681は、1秒ごとに得られた車速(m/sec)を積算して、各車載現在時刻に対応する走行距離(m)として記憶する。なお、走行距離記録データ671には、車載現在時刻に対応する、車速(m/sec)又は走行距離(m)のいずれか1つを記録するだけでもよい。各時刻に対応する車速(m/sec)から、積算により各時刻に対応する走行距離(m)は計算できるからである。
【0084】
図5においては、先端通過時刻T1、車載アンテナ通過時刻T2、及び後端通過時刻T3を初期時刻T1からの経過時間(sec)に置き換えて、各経過時間(sec)の走行距離の補間方法を説明した。図6に示した走行距離記録データ671を使用して、時刻に対応する走行距離を補間してもよい。
【0085】
例えば、先端通過時刻T1が、22時30分33.65秒とすると、T1を挟む2つの時刻が走行距離記録データ671に記録されている。22時30分33.000秒と、22時30分34.000秒である。時刻22時30分33.000秒に対応する走行距離は10.86mであり、時刻22時30分34.000秒に対応する走行距離は13.56mである。したがって、22時30分33.65秒に対応する走行距離は、10.86+(13.56-10.86)×0.65=1.755mである。
【0086】
走行距離記録データ671を使用した時刻Tにおける補間計算式は、
(Tの直前時刻の走行距離)+(Tの直後時刻の走行距離-Tの直前時刻の走行距離)×(Tと直前時刻との差)
と表わされる。
【0087】
図7は、地上設備の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0088】
地上通過時刻決定部471は、地上レーザーセンサ43からの検出信号を周期的に取得する(ST601)。地上通過時刻決定部471は、地上レーザーセンサ43からの検出信号が、反射光を検出しているか否かを判定する(ST602)。
【0089】
地上通過時刻決定部471が、地上レーザーセンサ43が反射光を検出していることを示す検出信号であることを検知したときは(ST602-YES)、地上通過時刻決定部471は、再び地上レーザーセンサ43からの検出信号を取得する(ST601)。
【0090】
反射光を検出していないことを示す検出信号であることを検知すると(ST602-NO)、地上通過時刻決定部471は、保守作業車5が反射板3を通過し始めたと判定し、地上現在時刻を使用して先端通過時刻を決定する(ST603)。なお、保守作業車5が反射板3を通過し始めたときの現在の時刻である地上現在時刻は、地上アンテナ41を介して、複数の測位用電波信号から地上時刻情報抽出部472により抽出される。
【0091】
更に、通過時刻信号出力部473は、先端通過時刻を示す先端通過時刻信号を、地上無線アンテナ42を介して、車載設備6に送信する(ST604)。
【0092】
地上通過時刻決定部471は、地上レーザーセンサ43からの検出信号を周期的に取得し続ける(ST605)。保守作業車5が反射板3の通過を完了したか否かを判定するためである。地上通過時刻決定部471は、地上レーザーセンサ43からの検出信号が、反射光を検出しているか否かを判定する(ST606)。
【0093】
地上通過時刻決定部471が、地上レーザーセンサ43が反射光を検出していないことを示す検出信号であることを検知したときは(ST606-NO)、更に、地上通過時刻決定部471は、地上レーザーセンサ43からの検出信号を取得する(ST605)。
【0094】
地上通過時刻決定部471は、反射光を検出したことを示す検出信号であることを検知すると(ST604-YES)、保守作業車5は反射板3の通過を完了したと判定し、地上現在時刻を使用して後端通過時刻を決定する(ST607)。なお、保守作業車5が反射板3の通過を完了したときの現在の時刻である地上現在時刻は、地上アンテナ41を介して、複数の測位用電波信号から地上時刻情報抽出部472により抽出される。
【0095】
更に、通過時刻信号出力部473は、後端通過時刻を示す後端通過信号を、地上無線アンテナ42を介して、車載設備6に送信する(ST608)。
【0096】
図8は、車載設備の通過時刻取得処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0097】
車両通過時刻決定部684は、車載レーザーセンサ63からの検出信号を周期的に取得する(ST701)。車両通過時刻決定部684は、車載レーザーセンサ63からの検出信号が、反射光を検出しているか否かを判定する(ST702)。
【0098】
車両通過時刻決定部684が、車載レーザーセンサ63が反射光を検出していないことを示す検出信号であることを検知したときは(ST702-NO)、車両通過時刻決定部684は、再び車載レーザーセンサ63からの検出信号を取得する(ST701)。
【0099】
反射光を検出したことを示す検出信号であることを検知すると(ST702-YES)、車両通過時刻決定部684は、車載アンテナ61が反射板3を通過したと判定し、車載現在時刻を使用して車載アンテナ通過時刻を取得する(ST703)。なお、車載アンテナ61が反射板3を通過したときの現在の時刻である車載現在時刻は、車載アンテナ61を介して、複数の測位用電波信号から車載時刻情報抽出部683により抽出される。
【0100】
図9は、車載設備6の編成長連絡処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0101】
車載設備6の通過時刻信号取得部682は、地上設備4から受信した開始信号から、保守作業車5の先端のトロ51が反射板3を通過し始めた先端通過時刻T1を取得する(ST801)。編成長演算部685は、車速センサ64が1秒ごとに計測した走行距離記録データから、先端通過時刻T1を挟む最も近い前後の時刻に対応する走行距離を取得する(ST802)。編成長演算部685は、先端通過時刻T1での走行距離l1を補間計算により求める(ST803)。
【0102】
走行距離記録データ671を使用した時刻T1における補間計算式は、
(T1の直前時刻の走行距離)+(T1の直後時刻の走行距離-T1の直前時刻の走行距離)×(T1と直前時刻との差)
である。
【0103】
なお、車速センサ64が1秒ごとに出力した走行距離は、車速記憶処理部681によって車載マイコン記憶部670に走行距離記録データ671として逐次書き込まれる。
【0104】
次に、車両通過時刻決定部684は、車載現在時刻を参照して、車載アンテナ61が反射板3を通過した車載アンテナ通過時刻T2を決定する(ST804)。なお、車載現在時刻は、測位用電波信号から車載時刻情報抽出部683により抽出される。編成長演算部685は、車速センサ64が1秒ごとに計測した走行距離記録データから、車載アンテナ通過時刻T2を挟む最も近い前後の時刻の走行距離を取得する(ST805)。編成長演算部685は、車載アンテナ通過時刻T2での走行距離l2を補間計算により求める(ST806)。
【0105】
更に、通過時刻信号取得部682は、地上設備4から受信した後端通過信号から、保守作業車5の最後尾のトロ55が反射板3の通過を完了したときの時刻である後端通過時刻T3を取得する(ST808)。編成長演算部685は、車速センサ64が1秒ごとに計測した走行距離記録データから、後端通過時刻T3を挟む前後の時刻の走行距離を取得して後端通過時刻T3での走行距離l3を補間計算により求める(ST809)。
【0106】
編成長演算部685は、先端通過時刻T1での走行距離l1と後端通過時刻T3での走行距離l3とから、編成長L=l3-l1を計算する(ST810)。
【0107】
又、前方長演算部687は、先端通過時刻T1での走行距離l1と、車載アンテナ通過時刻T2での走行距離l2とから、前方長L1=l2-l1を計算する(ST811)。
【0108】
動力車50が反射板3を通過したか否かが判定される位置は、動力車50内の車載レーザーセンサ63が取付けられた場所であり、測位用電波信号による動力車50の位置は、車載アンテナ61が取り付けられた場所である。車載レーザーセンサ63が取付けられた場所と車載アンテナ61が取り付けられた場所の差を補正するため、前方長演算部687は、補正テーブル672を利用して前方長L1を補正する(ST812)。
【0109】
編成長信号出力部686は、車載無線アンテナ62を介して、編成長Lを示す編成長信号を他の保守作業車に出力する(ST813)。
【0110】
なお、編成長演算部685は、編成長L計測誤差としてとして、例えば、計算結果に編成長Lに4パルス分、すなわち24cmを加算して、編成長を補正してもよい。又、前方長演算部687は前方長L1の計測誤差としてとして、例えば、前方長L1に2パルス分、すなわち12cmを加算して前方長を補正してもよい。
【0111】
図10は、車載設備による保守作業車の位置連絡処理の一例を示す図である。図10(a)は、処理のフローチャート図であり、図10(b)は、車載アンテナ位置と保守作業車の先端位置との関係を示す図である。
【0112】
アンテナ位置情報演算部688は、複数の測位衛星からの測位用電波信号に基づき車載アンテナ61の第1の位置である第1アンテナ位置(x1,y1)を計算する(ST901)。更に、アンテナ位置情報演算部688は、複数の測位衛星からの測位用電波信号に基づき車載アンテナ61の第2の位置である第2アンテナ位置(x2,y2)を計算する(ST902)。アンテナ位置情報演算部688は、第1、第2アンテナ位置から、保守作業車5が移動した変位ベクトルを求め、例えば、X軸と変位ベクトルとがなす角度θを計算する(ST903)。
【0113】
アンテナ位置情報演算部688は、第2アンテナ位置(x2、y2)に対応する保守作業車5の先端位置(x2+L1cosθ,y2+L1sinθ)を計算する(ST904)。L1は保守作業車5の前方長である。先端位置信号出力部690は、車載無線アンテナ62を介して、保守作業車5の先端位置(x2+L1cosθ,y2+L1sinθ)を示す先端位置信号を他の保守作業車に出力する(ST905)。更に、編成長信号出力部686は、車載無線アンテナ62を介して、編成長Lを示す編成長信号を他の保守作業車に出力する(ST906)。なお、位置情報は、緯度lonと経度latで示してもよい。
【0114】
編成長信号出力部686と先端位置信号出力部690とは、周期的に編成長信号出力と先端位置信号出力を繰り返す。保守作業車連絡システム1は、保守作業車5の位置と、編成長Lを定期的に他の保守作業車に連絡して、保守作業車同士の衝突を回避するための情報を、例えば衝突回避システムに提供することができる。なお、例えば、衝突回避システムが線路地図情報を使用する場合は、保守作業車の先端位置の方向の算出は不要である。
【0115】
本実施形態では、現在の時刻を抽出するための地上現在時刻情報抽出部及び車載時刻情報抽出部は、現在の時刻情報を含む時刻情報電波信号として、複数の測位衛星からの測位用電波信号を利用した。測位用電波信号の代わりに、電波時計からの標準電波信号を利用してもよい。
【0116】
本実施形態では、保守作業車が標識を通過したのを検出する地上センサ及び車載センサとして、レーザーセンサを利用してレーザーセンサの反射板へのレーザー放出と反射により検出した。他の実施例として、地上センサ及び車載センサには、イメージセンサを利用してもよい。イメージセンサによる通過検出には、標識として、特定のマークを表示したボードが好ましい。なお、標識は、地上設備から見通せる位置にあれば、線路内になくてもよい。
【0117】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0118】
1 保守作業車連絡システム
2 線路
3 反射板
4 地上設備
41 地上アンテナ
42 地上無線アンテナ
43 地上レーザーセンサ
44 地上電波受信部
45 地上無線通信部
46 地上マイコン部
5 保守作業車
50 動力車
51~55 トロ
6 車載設備
61 車載アンテナ
62 車載無線アンテナ
63 車載レーザーセンサ
64 車速センサ
65 車載電波受信部
66 車載無線通信部
67 車載マイコン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10