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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】路面加熱システム
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/26 20060101AFI20240405BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
E01C11/26 B
F25B30/06 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019146428
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2020097880
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2018235333
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
(72)【発明者】
【氏名】田熊 章
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-221104(JP,A)
【文献】特開2002-013105(JP,A)
【文献】特開平10-159009(JP,A)
【文献】特開平05-051910(JP,A)
【文献】特開2003-306918(JP,A)
【文献】特開2001-081711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/26
F25B 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された第1の熱交換管と、該第1の熱交換管よりも路面に近い熱交換対象領域に埋設された第2の熱交換管とに熱交換媒体を循環させる第1の熱交換回路と、
前記熱交換媒体を前記第1の熱交換管及びヒートポンプの熱源側熱交換器に循環させる第1の循環路と、前記第2の熱交換管及び前記ヒートポンプの負荷側熱交換器に循環させる第2の循環路とを形成する第2の熱交換回路と、
前記熱交換対象領域の周辺環境を検出する環境検出装置と、
該環境検出装置の検出結果に基づいて、前記ヒートポンプを停止して前記第1の熱交換回路による循環を行う第1運転と、前記ヒートポンプを稼働して前記第2の熱交換回路による循環を行う第2運転と、前記第1の熱交換回路における熱交換媒体の循環と停止とを繰り返す予熱運転と、に替え可能な制御部と、
を備え
前記環境検出装置は、前記熱交換対象領域の周辺の外気温度、前記熱交換対象領域の路面温度、及び前記熱交換対象領域の降雪の有無を検出し、
前記制御部は、
前記外気温度が所定の第1外気温度以下、又は前記路面温度が所定の第1路面温度以下の場合には前記予熱運転を開始し、前記外気温度が前記第1外気温度を超え且つ前記路面温度が前記第1路面温度を超えている場合には運転を停止し、
前記予熱運転を開始した後、
前記外気温度が前記第1外気温度よりも低い所定の第3外気温度以下、又は前記路面温度が前記第1路面温度よりも低い所定の第3路面温度以下であり、且つ、前記熱交換対象領域に降雪がある場合には、前記第1運転を行い、
前記外気温度が前記第1外気温度よりも低い所定の第3外気温度以下、又は前記路面温度が前記第1路面温度よりも低い所定の第3路面温度以下であり、且つ、前記熱交換対象領域に降雪がない場合には、前記予熱運転を継続することを特徴とする路面加熱システム。
【請求項2】
前記第1の熱交換管は、地中に埋設されて内部に流体が流れる埋設管の外周面又は内部 に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の路面加熱システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記予熱運転を開始した後、前記外気温度が前記第1外気温度よりも高い所定の第2外気温度を超える、又は前記路面温度が前記第1路面温度よりも高い所定の第2路面温度を超える場合に運転を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の路面加熱システム。
【請求項4】
前記環境検出装置は、さらに、前記熱交換対象領域における路面上の水分量を検出し、
前記制御部は、
降雪が有り、検出された水分量が所定の水分量を超え、且つ検出された路面温度が所定の第1切り替え基準路面温度以下の場合に前記第1運転から前記第2運転に切り替え、
前記第2運転中に、検出された水分量が前記所定の水分量を超え、且つ検出された路面温度が前記第1切り替え基準路面よりも高い所定の第2切り替え基準路面温度以上となった場合に、前記第1運転に切り替え、
前記第2運転中に、検出された水分量が前記所定の水分量以下となった場合に運転を停止することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の路面加熱システム。
【請求項5】
少なくとも前記第1の循環路及び前記第2の循環路に熱交換媒体の体積変化を許容する膨張タンクが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の路面加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面加熱システムに関し、特に、地中熱を利用して路面を加熱可能な路面加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等の積雪を除去したり、路面の凍結を解消したりするために、道路下に放熱管若しくは放熱線を埋設し、放熱管を流通する熱交換媒体からの放熱や放熱線の通電によって路面を加熱し、融雪や凍結の解消を行う融雪装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地中に埋設された下水管の外壁近接に採熱管を埋設するとともに、融雪対象となる地面の領域に放熱管を埋設し、採熱管及び放熱管を循環する循環路に熱交換媒体を流通させる融雪装置が記載されている。この装置では、熱交換媒体が採熱管を通る際に下水熱を採取し、放熱管において熱を外部へ放出することで、放熱管が埋設された領域の融雪を行っている。
【0004】
また、特許文献1には、下水管の外壁近傍に配設した採熱管とヒートポンプの熱源側熱交換器とに熱源用熱交換媒体を流通させる第1の循環路と、ヒートポンプの負荷側熱交換器と融雪領域に埋設された放熱管とに放熱用熱交換媒体を流通させる第2の循環路とを備えた融雪装置が記載されている。
【0005】
この融雪装置では、熱源側熱交換媒体が採熱管を通る際に採取した下水熱をヒートポンプの熱源側熱交換器で吸熱し、ヒートポンプの負荷側熱交換器において放熱用熱交換媒体の加熱に利用している。加熱された放熱用熱交換媒体が放熱管を通る際に放熱することで地面の融雪が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-013105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した融雪装置において、ヒートポンプを使用しない装置では、下水熱を直接的に融雪のための熱源として利用することができ、ヒートポンプ駆動のための電力を要しないことから、ランニングコストが低く抑えることができる。
【0008】
しかしながら、豪雪地帯等、降雪量の多い地域では、下水熱のみでは融雪の為の熱量が不足してしまい、積雪が残ってしまうという問題がある。
【0009】
一方、ヒートポンプを用いた装置では、ヒートポンプによって放熱用熱交換媒体の温度を下水の温度よりも高くすることができるため、降雪量が多い地域であっても積雪が生じることのないように融雪を行うことができる。また、電熱線を埋設して通電によって路面を加熱するものに比べて装置の長寿命化を図ることができる。
【0010】
しかしながら、融雪を行う際に常にヒートポンプを稼働すると消費電力が多大になるため、適切な融雪効果を得ながら節電できる装置の開発が求められていた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱対象領域における降雪や温度状況等の環境特性に応じた高い加熱効果を得ながら、節電効果の高い路面加熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る路面加熱システムは、
地中に埋設された第1の熱交換管と、該第1の熱交換管よりも路面に近い熱交換対象領域に埋設された第2の熱交換管とに熱交換媒体を循環させる第1の熱交換回路と、
前記熱交換媒体を前記第1の熱交換管及びヒートポンプの熱源側熱交換器に循環させる第1の循環路と、前記第2の熱交換管及び前記ヒートポンプの負荷側熱交換器に循環させる第2の循環路とを形成する第2の熱交換回路と、
前記熱交換対象領域の周辺環境を検出する環境検出装置と、
該環境検出装置の検出結果に基づいて、前記ヒートポンプを停止して前記第1の熱交換回路による循環を行う第1運転と、前記ヒートポンプを稼働して前記第2の熱交換回路による循環を行う第2運転と、前記第1の熱交換回路における熱交換媒体の循環と停止とを繰り返す予熱運転と、に替え可能な制御部と、
を備え
前記環境検出装置は、前記熱交換対象領域の周辺の外気温度、前記熱交換対象領域の路面温度、及び前記熱交換対象領域の降雪の有無を検出し、
前記制御部は、
前記外気温度が所定の第1外気温度以下、又は前記路面温度が所定の第1路面温度以下の場合には前記予熱運転を開始し、前記外気温度が前記第1外気温度を超え且つ前記路面温度が前記第1路面温度を超えている場合には運転を停止し、
前記予熱運転を開始した後、
前記外気温度が前記第1外気温度よりも低い所定の第3外気温度以下、又は前記路面温度が前記第1路面温度よりも低い所定の第3路面温度以下であり、且つ、前記熱交換対象領域に降雪がある場合には、前記第1運転を行い、
前記外気温度が前記第1外気温度よりも低い所定の第3外気温度以下、又は前記路面温度が前記第1路面温度よりも低い所定の第3路面温度以下であり、且つ、前記熱交換対象領域に降雪がない場合には、前記予熱運転を継続することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、熱交換対象領域(すなわち、路面を加熱して融雪を行う加熱対象領域)を加熱する際に、環境検出装置の検出結果(例えば、路面温度や降雪量等)を基に、その時点での環境状況に応じて、ヒートポンプを停止して第1の熱交換回路に熱交換媒体を循環させる第1運転と、ヒートポンプを稼働して第2の熱交換回路に熱交換媒体を循環させる第2運転とに切り替えることができる。
【0014】
これにより、周辺環境の状況によって、より低い加熱温度で足りる場合には、第1運転に切り替えて、ヒートポンプを稼働する電力量をなくして、省エネルギー化を図ることができる。また、必要とされる加熱温度が高い場合には、第2運転によりヒートポンプを稼働することで、第1の熱交換管による熱エネルギーをヒートポンプで利用しつつ、第2の熱交換管を流れる熱交換媒体の温度を第1の熱交換管を流れる熱交換媒体の温度よりも高い温度にすることができるので、加熱対象領域を高い温度で加熱することができる。これにより、降雪量が多い等、融雪のための負荷が大きくなった際に、ヒートポンプの消費電力量を抑えながら高い熱エネルギーで適切に路面を加熱して融雪を行うことができる。
また、この構成によれば、加熱対象領域における積雪や路面凍結の原因となる要素を環境検出装置によって検出し、検出結果に基づいて積雪等が防止されるように、熱交換媒体の循環路を切り替えて、周辺環境に応じた適切な融雪や凍結防止を実行することができる。
また、この構成によれば、加熱対象領域における加熱温度が比較的低くてもよいと推定される運転開始時に熱交換媒体の循環停止とを繰り返す予熱運転を行うことで、システムの節電効果を高めることができる。
また、この構成によれば、予熱運転の後、外気温度又は路面温度が、予熱運転開始時よりも高い所定の温度を超えた場合に、運転を停止して省エネルギー化を図ることができる。また、外気温度又は路面温度が、予熱運転開始時よりも低い所定の温度以下となり、且つ降雪がある場合に第1運転を行ってより高い熱エネルギーで加熱対象領域を加熱することができる。
【0015】
また、本発明は、上記路面加熱システムにおいて、
前記第1の熱交換管は、地中に埋設されて内部に流体が流れる埋設管の外周面又は内部に配置されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、埋設管の管路を流れる流体から採取した熱エネルギーを利用して路面を加熱することができる。
【0023】
また、本発明は、上記路面加熱システムにおいて、
前記環境検出装置は、さらに、前記熱交換対象領域における路面上の水分量を検出し、
前記制御部は、
降雪が有り、検出された水分量が所定の水分量を超え、且つ検出された路面温度が所定の第1切り替え基準路面温度以下の場合に前記第1運転から前記第2運転に切り替え、
前記第2運転中に、検出された水分量が前記所定の水分量を超え、且つ検出された路面温度が前記第1切り替え基準路面よりも高い所定の第2切り替え基準路面温度以上となった場合に、前記第1運転に切り替え、
前記第2運転中に、検出された水分量が前記所定の水分量以下となった場合に運転を停止することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、降雪が有り、加熱対象領域の路面上の水分量が所定の水分量を超え且つ路面温度が所定の第1切り替え基準路面温度以下である場合、すなわち、路面上の積雪が予測される場合に、第2運転に切り替えて高い温度で対象領域を加熱することができる。また、第2運転中に、路面上の水分量や路面温度に応じて、運転を第1運転に切り替えたり、運転を停止させたりすることにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
また、本発明は、上記路面加熱システムにおいて、
少なくとも前記第1の循環路及び前記第2の循環路に熱交換媒体の体積変化を許容する膨張タンクが設けられていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、熱交換回路の切り替えによって熱交換媒体の温度が大きく変動する循環路に膨張タンクを設けることで、温度変化による熱交換媒体の体積変化を膨張タンクによって許容させて、循環路を流通する熱交換媒体の体積容量を均一に保持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、降雪状況等、加熱対象領域の周辺環境に応じて、ヒートポンプを使用しない第1運転と、ヒートポンプを使用する第2運転との間で切り替えることができるため、環境特性に応じた高い融雪効果や凍結防止効果を得ながら、節電による省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態である路面加熱システムの構成図。
図2】第1の加熱回路における熱交換媒体の流れを示す図。
図3】第2の加熱回路における熱交換媒体の流れを示す図。
図4】採熱管による熱交換機構を説明する断面図。
図5】制御部の動作を示すフローチャート図。
図6】制御部の動作を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態である路面加熱システム10の構成図である。路面加熱システム10は、地中に埋設された下水管(埋設管)11の内部又は外周面に配設された採熱管(第1の熱交換管)12と、採熱管よりも路面に近い加熱対象領域(熱交換対象領域)13に埋設された放熱管(第2の熱交換管)14と、ヒートポンプHと、環境検出装置16と、図示していない制御部とを備える。下水管11は、2つのマンホールの間に配設されて、この2つのマンホールを連通している。図1では一方のマンホール60のみを記載している。ヒートポンプHは、圧縮機20と熱源側熱交換器22と、膨張弁24と、負荷側熱交換器26とを備える。
【0030】
また、路面加熱システム10は、採熱管12と熱源側熱交換器22とに熱交換媒体を循環させる熱源側循環路(第1の循環路)30と、放熱管14と負荷側熱交換器26とに熱交換媒体を循環させる負荷側循環路(第2の循環路)40と、ヒートポンプHを介さずに採熱管12と放熱管14とを直結的に連結して熱交換媒体を循環させる直結循環路50とを有する。
【0031】
熱源側循環路30は、採熱管12と、採熱管12の下流端から熱源側熱交換器22まで延びる第1配管30aと、第1配管30aの下流端に連結されて熱源側熱交換器22内を通る熱源側配管30bと、熱源側配管30bの下流端と採熱管12の上流端とを連結する第2配管30cとを有する。
【0032】
負荷側循環路40は、放熱管14と、放熱管14の下流端から負荷側熱交換器26まで延びる第3配管40aと、第3配管30aの下流端に連結されて負荷側熱交換器26内を通る負荷側配管40bと、負荷側配管40bの下流端と放熱管14の上流端とを連結する第4配管40cとを有する。
【0033】
直結循環路50は、採熱管12及び放熱管14とともに、第1配管30aと第4配管40cとを連結する第1直結配管50aと、第2配管30bと第3配管40aとを連結する第2直結配管50bとを含む。第1及び第2直結配管50a,50bの上流端及び下流端には、切替弁52,53,54,55が配置されており、熱交換媒体の流路を切り替え可能に構成されている。
【0034】
本実施の形態において切替弁52,53,54,55は三方弁であり、図2に示すように、熱源側循環路30及び負荷側循環路40を遮断して直結循環路50に熱交換媒体を循環させる第1の加熱回路と、図3に示すように、直結循環路50を遮断して熱源側循環路30及び負荷側循環路40のそれぞれに熱交換媒体を循環させる第2の加熱回路とに流路を切り替えることができる。
【0035】
各循環路30,40,50を流れる熱交換媒体には同一の流体が用いられる。熱交換媒体の種類は特に限定されないが、例えば、水、或いは水とアルコール又はエチレングリコールの混合物(不凍液)等を用いることができる。
【0036】
各循環路30,40,50には熱交換媒体を循環させるポンプが配設され、本実施の形態では直結循環路50におけるポンプを熱源側循環路30及び/又は負荷側循環路40に配設されたポンプ34,44と兼用している。また、放熱管14の上流側及び下流側には温度センサ46,48がそれぞれ配設される。図示例では、第3配管40a、第4配管40cに温度センサ46,48を配設しており、さらに、第1配管30aに温度センサ36を配設している。各温度センサ36,46,48は、配管内を流れる熱交換媒体の温度を直接的又は間接的に検出する。
【0037】
さらに、熱源側循環路30及び負荷側循環路40には、それぞれ、膨張タンク32,42が設けられている。膨張タンク32,42は、各循環路30,40を流れる熱交換媒体の容積変化を吸収するものである。本実施の形態では、直結循環路50において膨張タンク32,42が兼用されるように配置している。
【0038】
なお、図示していないが、各循環路30,40,50において、循環路内を流れる熱交換媒体の流量を計測する流量計や、循環路内の圧力を計測する圧力計を適宜設けることが可能である。
【0039】
ヒートポンプHは、冷媒を圧縮する圧縮機20と、熱源側熱交換器22と、冷媒を膨張させる膨張弁24と、負荷側熱交換器26と、これらを循環する冷媒が流通する冷媒管28とを備える。冷媒は、ヒートポンプHにおいて閉ループを構成する冷媒管28を循環することで、蒸発、圧縮、凝縮、膨張の熱サイクルを受ける。熱源側熱交換器22では、熱源側配管30bを通る熱交換媒体と、冷媒との間で熱交換が行われ、負荷側熱交換器26では、負荷側配管40bを通る熱交換媒体と、冷媒との間で熱交換が行われる。
【0040】
採熱管12及び放熱管14は、それぞれ、伝熱性及び耐久性の高い材料で形成されており、配管内外の熱伝達を行う熱交換機構を構成している。
【0041】
次に、図4を用いて採熱管12による熱交換機構70を説明する。なお、図4図1のIV-IV線で示す部位の断面図である。
【0042】
熱交換機構70は、複数の採熱管12によって形成された熱交換用マット72と、熱交換用マット72を下水管11に固定する固定部材74とを備える。第2配管30cを通過した熱交換媒体は、下水管11内に配設された複数の採熱管12に分流された後、第1配管30aで合流する。
【0043】
熱交換マット72は、複数の採熱管12を並列して互いに連結することでマット状に形成したものである。各採熱管12は、これと一体若しくは別体の連結材で互いに接続固定されている。本実施の形態では、採熱管12を耐腐食性の高い樹脂材料、例えば、PP樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PE樹脂やゴム材料等により形成しており、熱交換用マット72は全体として可撓性を有する長尺板状に形成されている。図1に示す例では、各採熱管12が、一方のマンホール60から他方のマンホールへ向かって延び、熱交換用マット72の先端で折り返されて再びマンホール60側へ戻るように伸長している。なお、図示例では採熱管12の断面が円形のものを示しているが、断面形状はこれに限られず、楕円形、多角形など、熱交換媒体を流通させることができる形状であればよい。
【0044】
固定部材74は、下水管11の内周面の全域に亘って設けられた管状体からなる更生管であって、下水管11の更生を行うライニング材により形成されている。熱交換用マット72は、固定部材74によって下水管11の内壁に押し付けられて固定される。
【0045】
なお、固定部材は更生管に限られず、熱交換用マット72を下水管11内に固定可能なものであればよい。例えば、固定部材は、下水管11の管軸方向に間隔をおいて複数配設された、下水管11の内壁面に沿うリング状又は円弧状の部材とすることができ、この固定部材によって熱交換用マット72を部分的に下水管11の内側から下水管11の内壁に押し付けて固定する構造とすることができる。
【0046】
放熱管14は、加熱対象領域13となる、融雪や凍結防止が行われる路面の下に埋設される。図1に示す例では、一本の放熱管14が路面下を蛇行状態で延びている。放熱管14は、比較的地表面に近い位置に埋設され、車両等の振動等に耐え得るように下水管11内の採熱管12よりも剛性が高いことが好ましく、例えば、ステンレス管や炭素鋼鋼管等の金属製配管を用いることができる。
【0047】
加熱対象領域13の領域内及び/又は領域近傍には、加熱対象領域13の周辺環境を検出する環境検出装置16が設置される。環境検出装置62は、例えば、加熱対象領域13の降雪状況や積雪状況を監視可能なカメラや、加熱対象領域13の外気温度を検知する温度センサ、路面等の対象物の表面温度を検知する赤外線サーモセンサ、加熱対象領域13の路面の水分量を検出する水分センサ等を単独で又は組み合わせて用いたものとすることができる。
【0048】
本実施の形態において環境検出装置16は、加熱対象領域13における降雪の有無、加熱対象領域13周辺の外気温度T、加熱対象領域13の路面温度T、加熱対象領域13における路面の水分量(水分の有無)Wを検出可能である。
【0049】
環境検出装置16、各温度センサ36,46,48、ヒートポンプH、流量計、圧力計及びポンプ34,44のそれぞれは、路面加熱システム10の制御部に有線接続又は無線接続されている。
【0050】
制御部は、各運転を行うためのプログラムなどを記憶したROM、各センサ等から出力された信号に基づくデータを一時的に記憶するRAM、及び、各プログラムを実行するCPU等を有する。制御部は、各接続機器からの検出信号に基づいてヒートポンプHの作動及び切替弁52,53,54,55の作動による各加熱回路の切り替えを制御する。具体的には、制御部は、ヒートポンプHを停止して第1の加熱回路による循環を行う低温加熱運転(第1運転)と、ヒートポンプHを稼働して第2の加熱回路による循環を実施する高温加熱運転(第2運転)とに、路面加熱システム10の運転を切り替えることができる。低温加熱運転は、ヒートポンプHを稼働する高温加熱運転(すなわち、通常運転)に比して、省エネルギー化を図ることができる省エネ運転である。さらに、低温加熱運転では、所定の時間サイクルで熱交換媒体の循環と停止とを繰り返す予熱運転と、熱交換媒体の循環を連続して行う連続低温加熱運転とに切り替えることができる。
【0051】
制御部には、路面加熱システム10の運転状態の切り替えの基準となる、基準外気温度TA1(第1外気温度)、TA2(第2外気温度)、TA3(第3外気温度)及びTA4と、基準路面温度TR1(第1路面温度)、TR2(第2路面温度)、TR3(第3路面温度)、TR4及びTR5(第2切り替え基準路面温度)と、基準路面水分量(すなわち、水分の有無の基準となる閾値)Wとが予め設定されている。
【0052】
ここで、基準外気温度TA1~TA4の値(温度の高さ)は、TA3<TA1<TA2、且つTA1<TA4であり、0℃<TA1であって、好ましくは0℃<TA3である。一例として、TA1=4℃、TA2=5℃、TA3=2℃、TA4=5℃に設定することができる。
【0053】
また、基準路面温度TR1~TR5の値は、TR3<TR1<TR2、0℃<TR1<TR4、且つ0℃<TR5<TR4であり、好ましくはTR5<TR1である。一例として、TR1=4℃、TR2=7℃、TR3=2℃、TR4=7℃、TR5=2℃に設定することができる。
【0054】
上述した路面加熱システム10では、制御部によって低温加熱運転が選択され、図2に示す第1の加熱回路に切り替えられると、熱交換媒体は、ポンプ34,35の圧力によって直結循環路50を循環し、採熱管12を通る際に下水78との間で熱交換が行われて下水熱を採取し、放熱管14を通る際に熱を放出することで、加熱対象領域13が加熱される。
【0055】
また、制御部によって高温加熱運転が選択され、図3に示す第2の加熱回路に切り替えられると、熱交換媒体は、ポンプ34,35の圧力によって熱源側循環路30及び負荷側循環路40のそれぞれを循環する。熱源側循環路30では、熱交換媒体が採熱管12を通る際に取得した下水熱をヒートポンプHの熱源側熱交換器22で熱源として利用する。負荷側循環路40では、熱交換媒体がヒートポンプHの負荷側熱交換器26において取得した熱を放熱管14において放出することで、下水よりも高い温度で加熱対象領域13を加熱することが可能となる。
【0056】
次に、制御部による路面加熱システム10の制御について説明する。図5は制御部の動作を示すフローチャート図である。
【0057】
制御処理がスタートすると、制御部は、環境検出装置16により検出された外気温度Tが所定の基準外気温度TA1以下、又は検出された路面温度Tが所定の基準路面温度TR1以下であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0058】
外気温度Tが基準外気温度TA1より高く、且つ路面温度Tが基準路面温度TR1より高い場合(ステップS110:No)、制御部は路面加熱システム10の運転を停止し(ステップS111)、処理を終了する。
【0059】
一方、外気温度T≦TA1又は路面温度T≦TR1である場合(ステップS110:Yes)、予熱運転を開始する(ステップS112)。
【0060】
予熱運転開始後、制御部は、検出された外気温度Tが所定の基準外気温度TA2以下、又は検出された路面温度Tが所定の基準路面温度TR2以下であるか否かを判定する(ステップS113)。外気温度Tが基準外気温度TA2より高く、且つ路面温度Tが基準路面温度TR2より高い場合(ステップS113:No)、制御部は路面加熱システム10の予熱運転を停止し(ステップS111)、処理を終了する。
【0061】
一方、外気温度T≦基準外気温度TA2又は路面温度T≦基準路面温度TR2である場合には(ステップS113:Yes)、さらに、外気温度Tが所定の基準外気温度TA3以下、又は、路面温度Tが所定の基準路面温度TR3以下であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0062】
外気温度Tが基準外気温度TA3より高く、且つ路面温度Tが基準路面温度TR3より高い場合(ステップS114:No)、予熱運転を継続する(ステップS112)。
【0063】
一方、外気温度T≦基準外気温度TA3又は路面温度T≦基準路面温度TR3である場合(ステップS114:Yes)、さらに、加熱対象領域13において降雪があるか否かを判定する(ステップS115)。
【0064】
降雪がない場合(ステップS115:No)、ステップS112に戻って予備運転を継続し、以降の処理を順次実行する。降雪がある場合(ステップS115:Yes)、予熱運転から熱交換媒体を連続循環する連続低温加熱運転に切り替え(ステップS116)。その後、加熱対象領域13における路面の水分量Wを検出し、検出した水分量Wが所定の基準水分量Wより多いか否かを判定する(ステップS117)。
【0065】
水分量Wが基準水分量W以下の場合(ステップS117:No)、制御部は運転を停止して(ステップS111)、処理を終了する。
【0066】
検出された水分量Wが基準水分量Wを超える場合(ステップS117:Yes)、外気温度T及び路面温度Tを検出し、検出された外気温度Tが所定の基準外気温度TA4以下、又は路面温度Tが所定の基準路面温度TR4以下であるか否かを判定する(ステップS118)。
【0067】
外気温度Tが基準外気温度TA4より高く、且つ路面温度Tが基準路面温度TR4より高い場合(ステップS118:No)、制御部は路面加熱システム10の運転を停止し(ステップS111)、処理を終了する。
【0068】
一方、外気温度T≦基準外気温度TA4又は路面温度T≦基準路面温度TR4である場合(ステップS118:Yes)、路面温度Tが0℃(第1切り替え基準路面温度)以下であるか否かを判定する(ステップS119)。路面温度Tが0℃より高い場合(ステップS119:No)、ステップS116に戻って低温加熱運転を継続し、以降の処理を順次実行する。路面温度Tが0℃以下である場合(ステップS119:Yes)、低温加熱運転から高温加熱運転に切り替える(ステップS120)。
【0069】
高温加熱運転に切り替えられた後、環境検出装置16によって加熱対象領域13における路面の水分量Wを検出し、検出された水分量Wが基準水分量Wより多いか否かを判定する(ステップS121)。水分量Wが基準水分量W以下の場合(ステップS121:No)、制御部は運転を停止して(ステップS111)、処理を終了する。
【0070】
検出された水分量Wが基準水分量Wを超える場合(ステップS121:Yes)、環境検出装置16によって路面温度Tを検出し、検出された路面温度Tが所定の基準路面温度TR5以上であるか否かを判定する(ステップS122)。
【0071】
路面温度Tが基準路面温度TR5より低い場合(ステップS122:No)、ステップS120に戻って高温加熱運転を継続し、以降の処理を順次実行する。
【0072】
一方、路面温度Tが基準路面温度TR5以上である場合(ステップS122:Yes)、高温加熱運転から低温加熱運転に切り替えて処理の流れをステップS116に戻し、以降の処理を順次実行する。処理は、運転が停止されるまで自動的に実行される。
【0073】
上述した路面加熱システム10では、環境検出装置16が検出した時点の環境状況に応じて、熱交換媒体が流通する回路を第1の加熱回路と第2の加熱回路との間で切り替えることが可能であり、降雪状況等に応じて、第1の加熱回路を用いて加熱対象領域13を下水熱によって直接的に加熱する低温加熱運転と、第2の加熱回路によりヒートポンプHとを用いて下水熱よりも高い温度で加熱対象領域13を加熱する高温加熱運転とに切り替えることができる。これにより、環境検出装置16の検出結果から、融雪や凍結防止のための加熱が低い温度で足りる場合には、低温加熱運転に切り替えて、ヒートポンプを稼働する電力量をなくし、下水管11を流れる流体の熱エネルギーを熱源として利用して省エネルギー化を図ることができる。また、加熱対象領域13において必要とされる加熱温度が高い場合には、高温加熱運転に切り替えて、ヒートポンプHにおいて下水熱を熱源として利用することができる。これにより、降雪量が多い等、融雪のための負荷が大きくなった際に、ヒートポンプHの消費電力量を抑えながら高い熱エネルギーで適切に路面を加熱して融雪や凍結防止を行うことができる。
【0074】
また、環境検出装置16は、積雪や路面凍結の原因となる、外気温度T、路面温度T、降雪の有無及び水分量Wを検出し、この検出結果に基づいて積雪等が防止されるように運転を切り替えることができるので、周辺環境に応じた適切な融雪や凍結防止を実行することができる。
【0075】
さらに、加熱対象領域13における加熱温度がより低くてもよいと推定される運転開始時に、第1の加熱回路において熱交換媒体の循環を断続的に行う予熱運転を行うことで、路面加熱システム10の節電効果をより一層高めることができる。また、予熱運転後の外気温度Tや路面温度Tの変化に基づいて、予熱運転を停止するか、又は連続低温加熱運転に切り替えて高い温度で加熱するかを選択することで、路面状況と周辺環境とに適した加熱制御を実行することができる。なお、上述した路面加熱システム10において、ステップS114がYesの場合に、降雪の有無に関わらず(すなわち、ステップS115を経ずに)連続低温加熱運転を行ってもよい。
【0076】
また、熱源側循環路30、負荷側循環路40及び直結循環路50のそれぞれに、膨張タンク32,42を設けているので、運転の切り替えによって熱交換媒体の温度が大きく変化し、その結果、熱交換媒体の体積変化が生じても、膨張タンク32,42によって体積変化を許容させることができる。
【0077】
なお、ヒートポンプHは、冷媒の循環方向を切替えて、負荷側における加熱と冷却との切替えを行う切替スイッチを備えた構成であってもよい。かかる場合、路面加熱システム10は、冬季の融雪のみのらず、夏季の路面冷却に利用することも可能である。すなわち、一般に、夏季には、下水管11を流れる下水の温度が、太陽によって加熱された冷却対象領域(すなわち、冬季における加熱対象領域13)の路面の温度よりも低くなるため、第1の加熱回路による運転を行うことで、冷却対象領域の路面を冷却することができる。また、第2の加熱回路に切り替えて、ヒートポンプHにおいて冷媒を逆循環させる稼働を行うことで、ヒートポンプHの負荷側熱交換器26で熱交換媒体が冷却されることとなり、より低い温度で冷却対象領域を冷却することができる。
【0078】
次に、上述した路面加熱システム10を用いて、夏季に冷却対象領域(熱交換対象領域)となる路面を冷却する場合の制御の一例を説明する。図6は、冷却対象領域を冷却する際の制御部の動作を示すフローチャート図である。なお、以下の路面冷却制御の説明では、第1の加熱回路を第1の熱交換回路と称し、この第1の熱交換回路を用いた連続運転を第1冷却運転と称する。また、第2の加熱回路を第2の熱交換回路と称し、この第2の熱交換回路を用いた運転(すなわち、第2の熱交換回路においてヒートポンプHの冷媒を冬季と逆循環させる稼動を行う運転)を第2冷却運転と称する。第1冷却運転は、ヒートポンプHを稼働する第2冷却運転(すなわち、通常運転)に比して、省エネルギー化を図ることができる省エネ運転である。
【0079】
制御処理がスタートすると、制御部は、環境検出装置16により検出された路面温度Tが所定の夏季第1基準路面温度TS1以上であるか否かを判定する(ステップS210)。
【0080】
路面温度Tが夏季第1基準路面温度TS1未満の場合(ステップS210:No)、制御部は路面加熱システム10の運転を停止し(ステップS211)、処理を終了する。
【0081】
一方、路面温度Tが夏季第1基準路面温度TS1以上である場合(ステップS210:Yes)、第1の熱交換回路による第1冷却運転(第1運転)を開始し(ステップS212)、第1冷却運転開始からの時間tをカウントし、時間tが所定時間tth1を経過したか否かを判定する(ステップS213)。
【0082】
時間tが所定時間tth1を経過していない場合(ステップS213:No)、第1冷却運転を継続する(ステップS212)。時間tが所定時間tth1を経過すると(ステップS213:Yes)、路面温度Tが、夏季第1基準路面温度TS1よりも低い夏季第2基準路面温度TS2以上であるか否かを判定する(ステップS214)。夏季第2基準路面温度TS2は、例えば、夏季第1基準路面温度TS1よりも1℃~3℃低い温度とすることができる。
【0083】
路面温度Tが、夏季第2基準路面温度TS2未満である場合(ステップS214:No)、路面加熱システム10の運転を停止して(ステップS211)処理を終了する。一方、路面温度Tが、夏季第2基準路面温度TS2以上である場合(ステップS214:Yes)、さらに、路面温度Tが、夏季第1基準路面温度TS1よりも高い夏季第3基準路面温度TS3以上であるか否かを判定する(ステップS215)。夏季第3基準路面温度TS3は、例えば、夏季第1基準路面温度TS1よりも4℃以上高い温度とすることができる。
【0084】
路面温度Tが、夏季第3基準路面温度TS3未満である場合(ステップS215:No)、ステップS212に戻って第1冷却運転を継続する。
【0085】
一方、路面温度Tが、夏季第3基準路面温度TS3以上である場合(ステップS215:Yes)、第1冷却運転から第2冷却運転(第2運転)に切り替え(ステップS216)、第2冷却運転開始からの時間tをカウントし、時間tが所定時間tth2を経過したか否かを判定する(ステップS217)。なお、ステップS217の所定時間tth2は、ステップS213においてカウントする所定時間tth1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0086】
時間tが所定時間tth2を経過していない場合(ステップS217:No)、第2冷却運転を継続する(ステップS216)。時間tが所定時間tth2を経過すると(ステップS217:Yes)、路面温度Tが、夏季第3基準路面温度TS3よりも低い夏季第4基準路面温度TS4未満であるか否かを判定する(ステップS218)。夏季第4基準路面温度TS4は、例えば、夏季第1基準路面温度TS1よりも高く、かつ夏季第3基準路面温度TS3よりも1℃~3℃低い温度とすることができる。
【0087】
路面温度Tが、夏季第4基準路面温度TS4以上である場合(ステップS218:No)、ステップS216に戻って第2冷却運転を継続し、以降の処理を順次実行する。
【0088】
一方、路面温度Tが夏季第4基準路面温度TS4未満である場合(ステップS218:Yes)、さらに、路面温度Tが夏季第1基準路面温度TS1以上であるか否かを判定する(ステップS219)。
【0089】
路面温度Tが夏季第1基準路面温度TS1以上である場合(ステップS219:Yes)、第2冷却運転から第1冷却運転に切り替えて処理の流れをステップS212に戻し、以降の処理を順次実行する。処理は、運転が停止されるまで自動的に実行される。
【0090】
路面温度Tが夏季第1基準路面温度TS1未満である場合(ステップS219:No)、制御部は路面加熱システム10の運転を停止し(ステップS211)、処理を終了する。
【0091】
上述した路面加熱システム10による路面冷却制御では、環境検出装置16が検出した時点の環境状況(ここでは路面温度)に応じて、熱交換媒体が流通する回路を第1の熱交換回路と第2の熱交換回路との間で切り替えることが可能である。具体的には、路面温度が高くなる夏季において、路面温度が比較的低い場合に第1の熱交換回路を用いて冷却対象領域を下水熱によって直接的に冷却する第1冷却運転と、第2の熱交換回路によりヒートポンプHとを用いて下水熱よりも低い温度で冷却対象領域を冷却する第2冷却運転とに切り替えることができる。
【0092】
なお、図6に示した冷却制御は一例であり、例えば、上述した制御においてステップS213及び/又はステップS217をなくてもよい。また、ステップS219において、夏季第1基準路面温度TS1に代えて、夏季第2基準路面温度TS2を採用してもよい。また、第1冷却運転を開始する前に、第1の熱交換回路における熱交換媒体の循環と停止とを繰り返す予冷運転を行ってもよい。
【0093】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
例えば、低温加熱運転と高温加熱運転との間の切り替えは、外気温度T、路面温度T及び降雪の有無のうちの少なくとも1つに基づいて実行される構成とすることができる。
【0095】
また、埋設管は下水管11に限らず、上水道管、農業用水路管、工業用水路管等の埋設管であってもよい。このような管路を流れる水の温度は一年を通して大きく変動することがなく、冬季では高温の熱源として、夏季では低温の熱源として活用することが可能である。
【0096】
また、第1の熱交換管である採熱管12は、下水管11等の埋設管の外周面又は内部に配置されていない構成であってもよく、地中に埋設されて地中熱を採取可能なものであればよい。例えば、ボーリングマシンやオーガ等の掘削機により、地盤にほぼ鉛直に伸びる孔を掘削し、この掘削孔の中に採熱管(第1の熱交換管)をほぼ鉛直方向に伸びる姿勢で設置してもよい。これにより、採熱管を流れる熱交換媒体は、周辺地盤や周辺の地下水との間で熱交換を行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
10 路面加熱システム
11 下水管(埋設管)
12 採熱管(第1の熱交換管)
13 加熱対象領域(熱交換対象領域)
14 放熱管(第2の熱交換管)
16 環境検出装置
30 熱源側循環路(第1の循環路)
32,42 膨張タンク
40 負荷側循環路(第2の循環路)
50 直結循環路
H ヒートポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6