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特許7466175少なくとも1つのボックス内におけるアイテムの最適な位置決めを行うための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】少なくとも1つのボックス内におけるアイテムの最適な位置決めを行うための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240405BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240405BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06F30/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019551539
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2018056720
(87)【国際公開番号】W WO2019043661
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】519333631
【氏名又は名称】パノテック エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カポイア、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】デ ジョバンニ、ルイージ
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-230058(JP,A)
【文献】特開2002-269192(JP,A)
【文献】特表2014-530158(JP,A)
【文献】特表2007-528793(JP,A)
【文献】特表2016-510466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336027(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0020916(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0067104(US,A1)
【文献】米国特許第09457970(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボックス(B)の第2のリスト(L)のうちの少なくとも1つのボックス(B)内において複数のアイテム(O)の第1のリスト(L)の複数のアイテム(O)の最適な位置決めを行う方法(1)であって、該方法は、
該方法を実行するために適合された第1のアルゴリズム(6)を示す少なくとも1つのコード部分を含む、コンピュータプログラム製品(9)がロードされるメモリユニット(5)を有するコンピュータ制御ユニット(4)と、
前記少なくとも1つのボックス(B)を組み立てる自動の組み立て手段(2)と、
前記少なくとも1つのボックス(B)内に複数のアイテム(O)を位置決めする位置決め手段(3)と、
を備えるシステム(1)によって実行され、
前記方法は、
a)前記メモリユニット(5)が、梱包するアイテム(O、O、O、...)の前記第1のリスト(L)を保存するステップと、
b)前記メモリユニット(5)が、適切な充填材(R)を介在させて、前記第1のリスト(L)の1つ又は複数のアイテム(O)を収容するよう構成されたボックス(B、B、B、...)の前記第2のリスト(L)を保存するステップと、
c)前記メモリユニット(5)が、前記第1のリスト(L)の各アイテム(O)の幾何学的データ及び寸法データの第1のデータセット(D’)を保存するステップと、
d)前記メモリユニット(5)が、前記第2のリスト(L)の少なくとも1つのボックス(B)内の各アイテムの位置決めを制限する位置制限データの第2のデータセット(D’’)を保存するステップと、
e)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第2のリスト(L)の1つ又は複数のボックス(B)を組み立てる自動の前記組み立て手段(2)を作動させるステップと、
f)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第2のリスト(L)の少なくとも1つのメインボックス(B)に前記第1のリスト(L)の各アイテム(O、O、O、...)を配置する前記位置決め手段を作動させるステップと、
g)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記ボックス(B)の選択及び前記ボックス(B)への前記アイテム(O)の導入方法を最適化するための少なくとも1つの前記第1のアルゴリズム(6)を適用するステップと、
h)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第1のアルゴリズム(6)を適用して、非占有空きスペースを最小限に抑えつつ、第1のリスト(L)のアイテム(O)を収容する最小サイズを有する第2のリスト(L)のボックス(B)である少なくとも1つのメインボックス(B)を選択し、幾何学的データ及び寸法データの前記第1のデータセット(D’)並びに位置制限データの前記第2のデータセット(D’’)に従って、選択された前記ボックス(B)内における前記第1のリスト(L)のアイテム(O)の導入順序、位置、及び回転を決定するステップと、
i)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記少なくとも1つのメインボックス(B)を形成する前記組手段(2)と、選択され組み立てられたボックス(B)に第1のリスト(L)のアイテム(O)を導入する前記位置決め手段(3)とを作動させるために前記第1のアルゴリズム(6)を適用するステップと、
を備え、
前記ステップh)は、
j)前記第1のアルゴリズム(6)により、各アイテム(O)と前記アイテムの隣の1つ又は複数のアイテムとの接触面(の面積、又は、各アイテム(O)と前記ボックス(B)の内面(S )との接触面(S )の面積を計算するステップであって、前記メモリユニット(5)内に保存された最小閾値(S)を超える各アイテムの接触面(の面積を維持することにより、安定した位置決め及び充填材量(R)の低減を確保する、計算するステップを備え、
前記計算するステップj)は、
k)各アイテム(O、O、O、...)に対する仮想平行六面体(P、P、P、...)を定義し、該仮想平行六面体の寸法を決定するサブステップと、
l)前記仮想平行六面体(P、P、P、...)の各面(F)の表面積を計算し、表面積が前記最小閾値(S)よりも大きい面(F)を決定するサブステップと、
m)仮想平行六面体(P、P、P、...)のランダムな導入順序を決定するサブステップと、
n)ランダム化された反復により、各仮想平行六面体(P、P、P、...)の角点(T)と一致する各ボックス(B)の角点(T)を決定するサブステップとを含み、
前記角点(T)は、対応する仮想平行六面体(P)の接触面(S)と2つの垂直面(F、F)が、対応する前記仮想平行六面体の隣の平行六面体(P)又はボックス(B)の内面(S)に接触する点であり、
前記ステップh)は、
o)ボックス(B)に対する仮想平行六面体(P)の付着指数を計算するサブステップo)をさらに含み、
前記付着指数は、既知の数学的方法を適用することにより、各アイテム(O)に関連する前記仮想平行六面体(P)の接触面(の面積の加重和の最大値を計算することにより得られる、
ことを特徴とする方法(1)。
【請求項2】
前記ステップh)は、
p)前記メモリユニット(5)に保存された回数だけ、仮想平行六面体(P、P、P、...)の考え得る導入順序に基づいて、ボックス(B)への各仮想平行六面体(P、P、P、...)の導入を繰り返しシミュレートするサブステップを備え、
前記導入順序は、
q)考え得る各導入と、すべての仮想平行六面体(P、P、P、...)を含み得る最小の体積を有するボックス(B)を関連付けるステップと、
r)付着指数の高い仮想平行六面体(P、P、P、...)の導入順序を選択するステップとにより決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の最適化アルゴリズム(6)は、h1)選択されたメインボックス(B)内の第1のリスト(L)のすべてのアイテム(O)の導入が前記導入順序によって認められない場合、少なくとも1つの追加ボックス(B)を組み立てるステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアルゴリズム(6)は、h2)前記メインボックス(B)への挿入から除外されるアイテム(O)の全アイテム量を最小化し、前記アイテムを前記少なくとも1つの追加ボックス(B)に導入するステップを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータプログラム製品(9)は、前記メインボックス(B)の寸法と、前記第2のリスト(L)にない前記少なくとも1つの追加ボックス(B)の寸法を決定するように適合された第2のアルゴリズム(7)を示すコード部分であって、前記組み立て手段(2)を作動させてボックス(B)を組み立てるための前記コード部分を更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
幾何学的データ及び寸法データの前記第1のデータセット(D’)には、各アイテム(O)の3次元寸法及び重量が含まれ、前記第2のデータセット(D’’)には、3次元回転に対する制限と、他のアイテム(O)の下又は上にアイテム(O)を配置する可能性に対する制限が含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ボックス(B)の第2のリスト(L)の少なくとも1つのボックス(B)において、アイテム(O)の第1のリスト(L)のアイテム(O)の最適な位置決めを行うシステム(1)であって、
前記第1のリスト(L)のアイテム(O)を検出する検出手段(8)と、
前記第2のリスト(L)のボックス(B)を組み立てる自動組立手段(2)と、
前記第2のリスト(L)の1つ又は複数のボックス(B)において、前記第1のリスト(L)の1つ又は複数のアイテム(O)の位置決めを行う自動位置決め手段(3)と、
前記検出手段(8)、組立手段(2)、位置決め手段(3)に動作可能に接続され、メモリユニット(5)を有するマイクロプロセッサベースの制御ユニット(4)と、
第1のアルゴリズム(6)を示す少なくとも1つのコード部分及び第2のアルゴリズム(7)を示すコード部分のうちの少なくとも1つを含む、前記メモリユニット(5)にロードされたコンピュータプログラム製品(9)であって、
前記第2のアルゴリズム(7)は、
a)前記メモリユニット(5)が、梱包するアイテム(O、O、O、...)の前記第1のリスト(L)を保存するステップと、
b)前記メモリユニット(5)が、適切な充填材(R)を介在させて、前記第1のリスト(L)の1つ又は複数のアイテム(O)を収容するよう構成されたボックス(B、B、B、...)の前記第2のリスト(L)を保存するステップと、
c)前記メモリユニット(5)が、前記第1のリスト(L)の各アイテム(O)の幾何学的データ及び寸法データの第1のデータセット(D’)を保存するステップと、
d)前記メモリユニット(5)が、前記第2のリスト(L)の少なくとも1つのボックス(B)内の各アイテムの位置決めを制限する位置制限データの第2のデータセット(D’’)を保存するステップと、
e)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第2のリスト(L)の1つ又は複数のボックス(B)を組み立てる自動の前記組み立て手段(2)を作動させるステップと、
f)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第2のリスト(L)の少なくとも1つのメインボックス(B)に前記第1のリスト(L)の各アイテム(O、O、O、...)を配置する前記位置決め手段を作動させるステップと、
g)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記ボックス(B)の選択及び前記ボックス(B)への前記アイテム(O)の導入方法を最適化するための少なくとも1つの前記第1のアルゴリズム(6)を適用するステップと、
h)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記第1のアルゴリズム(6)を適用して、非占有空きスペースを最小限に抑えつつ、第1のリスト(L)のアイテム(O)を収容する最小サイズを有する第2のリスト(L)のボックス(B)である少なくとも1つのメインボックス(B)を選択し、幾何学的データ及び寸法データの前記第1のデータセット(D’)並びに位置制限データの前記第2のデータセット(D’’)に従って、選択されたボックス(B)内における前記第1のリスト(L)のアイテム(O)の導入順序、位置、及び回転を決定するステップと、
i)前記コンピュータプログラム製品(9)が、前記少なくとも1つのメインボックス(B)を形成する前記組手段(2)と、選択され組み立てられたボックス(B)に第1のリスト(L)のアイテム(O)を導入する前記位置決め手段(3)とを作動させるために前記第1のアルゴリズム(6)を適用するステップと、
を備える方法を実行するように適合され、
前記ステップh)は、
j)前記第1のアルゴリズム(6)により、各アイテム(O)と前記アイテムの隣の1つ又は複数のアイテムとの接触面(の面積、又は、各アイテム(O)と前記ボックス(B)の内面(S )との接触面(S )の面積を計算するステップであって、前記メモリユニット(5)内に保存された最小閾値(S)を超える各アイテムの接触面(の面積を維持することにより、安定した位置決め及び充填材量(R)の低減を確保する、計算するステップを備え、
前記計算するステップj)は、
k)各アイテム(O、O、O、...)に対する仮想平行六面体(P、P、P、...)を定義し、該仮想平行六面体の寸法を決定するサブステップと、
l)前記仮想平行六面体(P、P、P、...)の各面(F)の表面積を計算し、表面積が前記最小閾値(S)よりも大きい面(F)を決定するサブステップと、
m)仮想平行六面体(P、P、P、...)のランダムな導入順序を決定するサブステップと、
n)ランダム化された反復により、各仮想平行六面体(P、P、P、...)の角点(T)と一致する各ボックス(B)の角点(T)を決定するサブステップとを含み、
前記角点(T)は、対応する仮想平行六面体(P)の接触面(S)と2つの垂直面(F、F)が、対応する前記仮想平行六面体の隣の平行六面体(P)又はボックス(B)の内面(S)に接触する点であり、
前記ステップh)は、
o)ボックス(B)に対する仮想平行六面体(P)の付着指数を計算するサブステップをさらに含み、
前記付着指数は、既知の数学的方法を適用することにより、各アイテム(O)に関連する前記仮想平行六面体(P)の接触面(の面積の加重和の最大値を計算することにより得られる、前記コンピュータプログラム製品(9)と
を備えることを特徴とするシステム(1)。
【請求項8】
前記コンピュータプログラム製品(9)は、C#で実装され、XMLテキストファイルに含まれる命令によって前記検出手段(8)、前記組立手段(2)及び前記位置決め手段(3)とインタフェース接続されている、ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、箱形の梱包容器の製造の分野に応用され、特に、少なくとも1つのボックス内のアイテムの最適な位置決め方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、上記最適な位置決め方法を実行するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
アイテムを収容したボックスの容積を最適化するためのアルゴリズムを含むコンピュータ製品を用いて「ビンパッキング」問題を解決するための方法は、パッケージ製造の分野で昔から知られている。
【0004】
これらの方法は、一般に、同じサイズを有し、ボックスのサイズを超えず、かつ、アイテムの相互貫入を引き起こすことなく、所定数のアイテムを収容するよう構成されたボックスの最小ボックス数を数学的に決定するステップを備えている。
【0005】
すなわち、ボックスに挿入されるアイテムのリストとボックスのサイズが決定すると、容積最適化は、アイテムをボックスに導入する順序を定義することにより、アイテムに占有されていないスペースを最小化する目的を有する。
【0006】
これらのアルゴリズムには、通常、一意の最適な順序を提供する正確な計算方法が含まれる。しかしながら、これらのアルゴリズムは計算時間が長いため、かなりの計算コストがかかり、ドメイン固有言語を使用するプログラミングライブラリが実装される。
【0007】
このような欠点を少なくとも部分的に回避するために、最適な解決策を提供はしないが、複数のデータや制限状況に適合可能な、非常に柔軟な計算機能を用いて妥当な時間に許容可能な解決策を提供する発見的アルゴリズムを用いた方法が開発されている。
【0008】
特許文献1には、アイテムの幾何学的データ及び寸法データ、並びに、ボックス内におけるアイテム配置の制限データを読み取る第1のステップによって、複数のボックス内のアイテムの配置の容量と順序を最適化する方法が開示されている。
【0009】
この方法は、利用可能なボックスのリストから選択された最良のボックスを決定する第2のステップと、アイテムを収容するのに必要なボックス数を計算する後のステップとをさらに備えている。
【0010】
アイテムの幾何学的データ及び寸法データには、ボックスにおいて損傷を防ぐために他のアイテムの上にのみ収まる可能性を含む、三次元の寸法、重量、及び、いくつかの配置制限が含まれる。
【0011】
この既知の方法の第1の欠点は、リストのアイテムを収容するよう選択されたボックスが同じサイズを有し、また、利用可能なボックスのリストにそのサイズが含まれていないボックスは使用できないことである。
【0012】
上記方法の別の欠点は、アイテムに占有されていないスペースがプロセスによって最小化されないが、使用中のすべてのボックスに同じ最小空きスペースが与えられることである。
【0013】
これらの欠点を少なくとも部分的に回避するために、梱包されるアイテムのリストに基づいてカスタマイズされたボックスを作成するための方法及びシステムが開発されている。
【0014】
特許文献2には、所定のリストに含まれる梱包されていないアイテムが占める容積を計算することにより、カスタマイズされたボックスを作成する方法が開示されている。
【0015】
この方法は、全アイテム量を収容するのに適したサイズのボックスを形成するステップと、すべてのアイテムの体積の合計及びボックス組立へのそのような値の送信によって全体積の値を計算するステップとを備えている。
【0016】
上記方法の第1の欠点は、アイテムに占有されていない体積の最小化を保証するのではなく、アイテムを収容するよう構成され、アイテムに付着する内壁を有するボックスの作成しか保証しないことである。
【0017】
上記方法のさらなる欠点は、アイテムがボックス内に自動的に配置されず、アイテムをボックス内に手動で配置するオペレータの存在が必要となることである。
【0018】
上記方法の別の欠点は、ボックスの中のアイテムの損傷のリスクを減らすのに必要な充填材の最小化を保証しないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第6876958号
【文献】米国特許第20140336027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような従来技術に照らして、本発明によって対処される技術的問題は、非占有容積を最適化し、ボックス内のアイテムの安定性を向上させつつ、アイテムを収容する梱包ボックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、少なくとも1つのボックス内においてアイテムの最適な位置決めを行うための非常に効率的かつ比較的費用効果が高い方法及びシステムを提供することにより、上記欠点を回避することである。
【0022】
本発明の特定の目的は、重心が最適化されたカスタマイズされたボックスを提供し、その中の空きスペースを最小化することができる上記方法及びシステムによって上記技術的問題を解決することである。
【0023】
本発明の別の目的は、ボックスの全体積を最小化することができる上記方法及びシステムを提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、アイテムの形状やサイズに関係なく、充填されるボックスを非常に柔軟に選択可能とする上記方法及びシステムを提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、計算時間を短縮する上記方法及びシステムを提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、ボックス内のアイテムのあらゆる種類の位置制限に対処可能な上記方法及びシステムを提供することである。
【0027】
以下でより明確に説明するように、これら及び他の目的は、独立請求項1に記載の少なくとも1つのボックス内においてアイテムの最適な位置決めを行う方法によって実現される。この方法は、a)梱包するアイテムの第1のリストを提供するステップと、b)適切な充填材を介在させて、第1のリストの1つ又は複数のアイテムを収容するよう設計されたボックスの第2のリストを提供するステップと、c)第1のリストの各アイテムの幾何学的データ及び寸法データの第1のセットを提供するステップと、d)第2のリストの少なくとも1つのボックス内の各アイテムの位置決めを制限する位置制限データの第2のセットを提供するステップとを備えている。
【0028】
上記方法は、f)第2のリストの1つ又は複数のボックスを組み立てる機械的手段を提供するステップと、g)第2のリストの少なくとも1つのメインボックスに第1のリストの各アイテムを配置する位置決め手段を提供するステップと、h)位置決め手段と組立手段に接続され、ボックスの選択及びボックスへのアイテムの導入方法を最適化するための少なくとも1つの第1のアルゴリズムがロードされるメモリユニットを有するコンピュータ制御ユニットを提供するステップと、i)第1のアルゴリズムを適用して、非占有空きスペースを最小限に抑えつつ、第1のリストのアイテムを収容する最小サイズを有する第2のリストの少なくとも1つのメインボックスを選択し、第1及び第2のデータセットに従って、選択されたボックス内における第1のリストのアイテムの導入順序、位置、回転を決定するステップと、j)少なくとも1つのボックスを形成する組立手段と、選択され組み立てられたボックスに第1のリストのアイテムを導入する位置決め手段とを作動させるために第1のアルゴリズムを適用するステップとをさらに備えている。
【0029】
すなわち、上記方法のステップh)には、j)第1のアルゴリズムにより、各アイテムとその隣のアイテム又はボックスの内面との接触面の面積を計算し、安定した位置決めの確保及び充填材量の低減を考慮して、接触面の面積を最小閾値以上に維持するステップが含まれる。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、請求項10に記載の最適なアイテムの位置決めを行うシステムに関する。
【0031】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0032】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を用いて、非限定的な実施例により示す以下の好適かつ非排他的な実施形態の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の方法を示す概略図である。
図2】本発明の方法により複数のアイテムで充填された一対のボックスを示す概略図である。
図3図1の方法の詳細を概略的に示す図である。
図4】本発明のシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特に、図面を参照して、少なくとも1つのボックスB内においてアイテムOの最適な位置決めを行う方法及びシステムを示し、概して、符号1で示される。
【0035】
この方法は、a)梱包されるアイテムO、O、O、…の第1のリストLを提供するステップと、b)輸送中にアイテムOが損傷するのを防ぐために、適切な充填材Rを介在させて、第1のリストLの1つ又は複数のアイテムを収容するよう設計されたボックスB、B、B、…の第2のリストLを提供するステップとを備えている。
【0036】
例として、アイテムOの第1のリストLは、異なるサイズと機能を有し、輸送手段で搬送されるよう構成された、第2のリストLの1つ又は複数のボックスB、B、B、…に導入される複数のアイテムO、O、O、…のリストであってもよい。
【0037】
さらに、充填材Rは、要件に応じて異なるタイプのものであってもよく、高密度又は低密度のゆるい発泡スチロールチップ、気泡要素、多球層又は他の同等のタイプのものが含まれてもよい。
【0038】
上記方法は、c)第1のリストLの各アイテムOに関する幾何学的データ及び寸法データの第1のセットD’を提供するステップと、d)第2のリストLのボックスBの少なくとも1つにおける各アイテムOの位置決めを制限する位置制限データの第2のセットD’’を提供するステップとをさらに備えている。
【0039】
すなわち、第1のデータセットD’には、各アイテムOの3次元寸法及び重量が含まれていてもよく、第2のデータセットD’’には、3次元回転と、他のアイテムOの下又は上にアイテムOを配置する可能性とに対する制限が含まれていてもよい。
【0040】
上記第1のリストLには、例えば、2次元回転によってしか位置決めが行われないアイテム、又は、上面が空いた状態の他のアイテムOの上にしか配置されないアイテムが含まれていてもよい。
【0041】
上記方法は、e)第2のリストLの1つ又は複数のボックスBを組み立てるよう構成された、最適位置決めシステム1の機械的手段2を提供するステップをさらに備えている。
【0042】
f)この位置決めシステム1の一部でもあり、第1のリストLの各アイテムO、O、O、…を第2のリストLの少なくとも1つのメインボックスBに配置するよう構成された位置決め手段3を提供するステップも考えられる。
【0043】
組立て手段2は、所定の特性を有する段ボールシートの切断、折曲げ、接着を行ない、第2のリストLに含まれる情報に従ってボックスBを自動的に形成することができる。
【0044】
ボックスBの内部空洞は、位置決め手段3によって後に充填を行うことが可能であり、この位置決め手段3は、ベルトコンベヤータイプやロボットアームタイプのものであってもよい。
【0045】
上記方法は、g)位置決め手段3と組立て手段2に接続され、ボックスBの選択とアイテムOをボックスBに導入する方法を最適化するための第1のアルゴリズム6がロードされるメモリユニット5を有するコンピュータ制御ユニット4を提供するステップを備えている。
【0046】
この方法は、h)第1のアルゴリズム6を適用して、第1のリストLのアイテムOを収容する最小サイズを有する第2のリストLの少なくとも1つのメインボックスBを選択し、空いているスペースを最小化するステップを含む。導入の順序を決定するために、選択されたボックスB内の第1のリストLの項目Oの位置と回転を、データの最初のD’および2番目のD’’セットに従って決定する。
【0047】
そして、この第1のアルゴリズム6は、いわゆる「最良選択」最適化を可能にし、ボックスBの複数の可能な固定寸法を考慮して、アイテムOを含むことができるボックスBを選択する。
【0048】
図2に示すように、第1の最適化アルゴリズム6は、h1)選択されたメインボックスB内の第1のリストLのすべてのアイテムOの導入が導入順序によって認められない場合、少なくとも1つの追加ボックスBを組み立てるステップを備えていてもよい。
【0049】
第1のアルゴリズム6は、h2)選択されたメインボックスBへの挿入から除外されるアイテムOの全アイテム量を最小化し、それらを追加ボックスBに導入する追加のステップをさらに含んでいてもよい。
【0050】
例えば、第1のリストLが異なるサイズを有する複数のアイテムOを含む場合、より大きなアイテムOをメインボックスBに導入し、残りのより小さなアイテムを追加ボックスBに導入することが優先される。
【0051】
また、上記方法1は、i)少なくともメインボックスBを形成する組立手段2と、選択され組み立てられたボックスBに第1のリストLのアイテムOを導入する位置決め手段3とを作動させるために第1のアルゴリズム6を適用するステップをさらに備えている。
【0052】
本発明の特有の態様では、上記ステップh)には、j)第1のアルゴリズム6により、各アイテムOとその隣のアイテム又はボックスBの内面Sとの接触面S の面積を計算し、安定した位置決めの確保及び充填材Rの量の低減を考慮して、接触面S の面積を最小閾値S以上に維持するステップが含まれる。
【0053】
上記方法では、この計算ステップj)により、可能な導入順序ごとに安定した位置決めと充填材Rの量の低減を確実に行うことにより、選択されたボックスBの圧縮が図られる。
【0054】
図3に示すように、第1のアルゴリズム6は、最小閾値Sの値の仮決定を含んでいてもよく、その値は50%の最小接触面S の面積から最大100%、好ましくは75%の範囲であってもよい。
【0055】
第1のアルゴリズム6による計算ステップj)は、k)各アイテムO、O、OR、…に関連付けられる仮想平行六面体P、P、P、…を定義し、その寸法を決定するサブステップと、l)その仮想平行六面体P、P、P、…の各面Fの表面積を計算し、寸法が最小閾値Sよりも大きい面Fを決定するサブステップとを含んでいてもよい。
【0056】
上記方法では、これらのサブステップにより、各アイテムOの形状を、三次元寸法が各アイテムOの最大サイズに対応する対応する仮想平行六面体Pに線形化できるようにする。
【0057】
これにより、上記方法は、各アイテムOがその隣のアイテム又はボックスBの内面Sに寄りかかるために使用可能な面Fの測定を容易にすることができる。
【0058】
第1のアルゴリズム6による計算ステップj)は、m)仮想平行六面体P、P、P、…の挿入のランダムな順序を決定するサブステップと、n)ランダム化された反復により各ボックスBの角点Tを決定するサブステップとを含んでいてもよい。
【0059】
このような各仮想平行六面体P、P、P、…の角点Tは、対応する仮想平行六面体Pの接触面Sと2つの垂直面F、Fが、その隣の平行六面体P又はボックスBの内面Sに接触する点に対応することが好ましい。
【0060】
あるいは、角点Tは、「壁構築」方法によって決定されてもよく、この方法では、仮想平行六面体Pの面Fのみが接触面Sと見なされるか、又は「端点」が考慮され、関連する角点Tが仮想平行六面体Pの頂点から選択される。
【0061】
すなわち、サブステップn)では、過去に導入された平行六面体Pとの可能な接触を特定することにより、平行六面体Pの角点Tにおける可能な配置を繰り返し判定し、すべての認められた配置について、仮想的に導入された平行六面体Pのすべての新しい角点Tを計算してもよい。
【0062】
この計算は、各アイテムOに関連付けられた仮想平行六面体Pの角点Tの適切な形状射影、例えば、ボックスBとそのすべての内壁にすでに導入されたアイテムO、O、O、…のすべての仮想平行六面体P、P、P上でそれを各軸に沿って回転させることにより実行されてもよい。
【0063】
従って、サブステップn)では、過去に挿入されたもの又はボックスBの内壁に向かってアイテムがさらに押しやられることを防ぐ。
【0064】
図1に示すように、第1のアルゴリズム6を適用するステップh)は、o)各アイテムOに関連付けられた仮想平行六面体Pの接触面S の面積の加重和の最大値として定義される、ボックスBに対する仮想平行六面体Pの付着指数を計算するサブステップを含んでいる。
【0065】
当技術分野で周知のように、加重和は、目的を決めるための条件付けパラメータを確立するのに用いられる計算であり、目的の達成のためにパラメータが持つ重要度に従って各条件付けパラメータに重みが割り当てられる。
【0066】
この計算サブステップo)の計算が行われた後、p)所定のパラメータに関する回数だけ、考え得る異なる導入順序に基づいて、ボックスBへの各仮想平行六面体P、P、P、…の反復導入をシミュレートし、q)考え得る各導入と、すべての仮想平行六面体P、P、Pを含み得る最小の体積を有するボックスBを関連付けるサブステップを備えていてもよい。
【0067】
導入順序や、第1のリストLのアイテムO、O、O、…を含み得る最良のボックスBの決定は、r)仮想平行六面体P、P、Pの付着指数が高く、ボックスBの体積が最小となる導入順序を選択するサブステップによって行われる。
【0068】
本発明の方法のサブステップによって、3次元寸法を有し、全体的な重心が底部に向かって変位するメインボックスB及び追加ボックスBの選択が可能となることが理解されるであろう。
【0069】
また、上記方法1は、メインボックスBの寸法と、ボックスBの第2のリストLにない少なくとも1つの追加ボックスBの寸法を決定し、その後組立手段2を作動させる第2の最適化アルゴリズム7を備えていてもよい。
【0070】
この第2のアルゴリズム7によって、ボックスBの寸法を計算して、ボックスBの3次元寸法と総重量の最大限度に応じて第1のリストLのアイテムOを導入する「最良適合」最適化が図られる。
【0071】
好都合には、第1のリストLのすべてのアイテムOをそのような最大サイズを有する選択されたメインボックスBに導入できない場合、第2のアルゴリズム7によって、各ボックスBにどのアイテムが導入されるか、導入順序、ボックスB内の各アイテムOの位置と回転を示しつつ、残りのアイテムOが導入される少なくとも1つの追加ボックスBの寸法が選択されてもよい。
【0072】
これらの最大寸法限度により、第1のリストLのすべてのアイテムOがメインボックスBに導入されることが認められない場合、計算後、第2のアルゴリズム7は組立手段2を作動させて、内部寸法が残りのアイテムOを収容し得る追加ボックスBを形成し、その後位置決め手段3を作動させる。
【0073】
特に、第2のアルゴリズム7は、各アイテムO、O、O、…の仮想平行六面体P、P、P、…の総体積を計算して、仮想平行六面体P、P、P、…の総体積を収容し得る体積の1つのボックスBを特定することにより、メインボックスB及び追加ボックスBの寸法を決定してもよい。
【0074】
第1のアルゴリズム6及び第2のアルゴリズム7は、発見的計算を用いて、30個のオブジェクトO、O、O、...を含む第1のリストLと、第1のアルゴリズム6の場合、20個のボックスB、B、B、...を含む第2のリストLを考慮したパッキングソリューションを提供し得ることが有利である。
【0075】
また、本発明は、ボックスLの第2のリストの少なくとも1つのボックスB内において第1のリストLのアイテムO、O、O、…の最適な位置決めを行うシステム1に関する。
【0076】
このシステム1は、図4に示すように、第1のリストLのアイテムO、O、O、…を検出する検出手段8と、第2のリストLのボックスBを組み立てる自動組立手段2とを備えている。
【0077】
このシステム1は、さらに、第2のリストLの1つ又は複数のボックスB内において第1のリストLの1つ又は複数のアイテムOの位置決めを行う自動位置決め手段3と、検出手段8、組立手段2及び位置決め手段3に動作可能に接続され、メモリユニット5を有するマイクロプロセッサベースの制御ユニット4とを備えている。
【0078】
特に、上記システム1は、メモリユニット5にロードされ、上述の方法を実行するよう構成された第1のアルゴリズム6、第2のアルゴリズム7及びコード部分を含むコンピュータプログラム製品9を備えている。
【0079】
このコンピュータプログラム製品9は、C#タイプのプログラミング言語で実装されてもよく、XMLテキストファイルに含まれる命令によって検出手段8、組立手段2及び位置決め手段3とインタフェース接続されていてもよい。
【0080】
上記から、本発明の方法及びシステムが所定の目的を達成し、特に、非占有容積を最適化し、ボックス内のアイテムの安定性を向上させつつ、アイテムを収容する梱包ボックスを提供できることは明確であろう。
【0081】
本発明の方法及びシステムは、添付の特許請求の範囲に開示された本発明の概念内で多くの変更や変形が可能である。
【0082】
本発明の方法及びシステムについて、特に添付の図面を参照して説明したが、本開示や特許請求の範囲で参照される符号は、本発明をより良く理解するためにのみ使用され、特許請求の範囲をいかなる方法によっても限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、シート材料をパッケージに加工するための工場で産業規模で製造することができるため、産業での応用が可能である。
図1
図2
図3
図4