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特許7466180回転往復作動装置、ストッパ操作装置、ストッパ、及びストッパ付扉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】回転往復作動装置、ストッパ操作装置、ストッパ、及びストッパ付扉
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/16 20060101AFI20240405BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
E05C1/16 B
E05B1/00 311H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040193
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021075991
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019199199
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000152664
【氏名又は名称】株式会社日乃本錠前
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 卓也
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-5951(JP,A)
【文献】実開昭59-65169(JP,U)
【文献】実開平4-75069(JP,U)
【文献】実開昭59-42263(JP,U)
【文献】特開平8-260799(JP,A)
【文献】実開昭61-32471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00 - 21/02
E05B 1/00 - 85/28
F16H 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダに収容されて前記シリンダの開口端から突出可能な突当シャフトと、
前記シリンダに収納されて前記突当シャフトに前記シリンダから突出する向きに弾性力を付与する弾性部と、
前記突当シャフトを前記弾性力に反して前記シリンダ内をスライドさせるワイヤと、
前記シリンダに形成されて前記シリンダの周方向に沿って凸部が並ぶ2列のガイド歯と、
前記2列の前記ガイド歯の間で前記突当シャフトの胴部から突起する周回歯と、
前記凸部に形成されて前記弾性部又は前記ワイヤによる力を受けて前記シリンダの長手方向に沿ってスライドしようとする前記周回歯のスライド方向を変更する斜面と、
前記開口端側の前記ガイド歯に設けられて前記周回歯を嵌まり込ませる前記長手方向に長いストッパ溝と、を備えることを特徴とする回転往復作動装置。
【請求項2】
対向する前記凸部同士は、頭頂部が互いにずれている請求項1に記載の回転往復作動装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記斜面と前記長手方向にほぼ沿う短辺とで構成されて前記凸部の前記頭頂部は、対向している凸部の前記斜面の中腹に配置される請求項2に記載の回転往復作動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転往復作動装置と、
既定角度だけ回転させることで扉から突出したラッチボルトをケーシング内に引き込むノブと、を備え、
前記ワイヤは、前記ケーシング内部と前記回転往復作動装置とを接続して前記ノブの前記既定角度以上の回転により前記回転往復作動装置の前記開口端から前記突当シャフトを突出させることを特徴とするストッパ。
【請求項5】
請求項に記載のストッパを備えるストッパ付扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は建造物、建具又は什器等のストッパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関等に用いられる開き扉は、例えば什器の搬入時等、所望の開角で扉を一時固定する必要性が生じることがある。
従来では、扉と床面との間に角材を挟み込んだり、ノブと壁面の突起部分とを紐で結んだりすることで扉を所定角に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-044363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、扉を固定するのに手間がかかるという課題があった。
また、何かしら固定用の部品を必要とし、その部品を紛失させるおそれがあるともに、部品の分だけ雑多な印象を与え美観も損なわれていた。
また、このような課題は、扉に限らず開いた物が自然に閉まる構造を有する物や、動き出そうとする物にもいえることである。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、動こうとする物を所望の位置で一時固定することができる回転往復作動装置、ストッパ操作装置、ストッパ、及びストッパ付扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る回転往復作動装置は、シリンダに収容されて前記シリンダの開口端から突出可能な突当シャフトと、前記シリンダに収納されて前記突当シャフトに前記シリンダから突出する向きに弾性力を付与する弾性部と、前記突当シャフトを前記弾性力に反して前記シリンダ内をスライドさせる操作部と、前記シリンダに形成されて前記シリンダの周方向に沿って凸部が並ぶ2列のガイド歯と、前記2列の前記ガイド歯の間で前記突当シャフトの胴部から突起する周回歯と、前記凸部に形成されて前記弾性部又は前記操作部による力を受けて前記シリンダの長手方向に沿ってスライドしようとする前記周回歯のスライド方向を変更する斜面と、前記開口端側の前記ガイド歯に設けられて前記周回歯を嵌まり込ませる前記長手方向に長いストッパ溝と、を備えるものである。
【0007】
本発明の実施形態に係るストッパは、既定角度だけ回転させることで扉から突出したラッチボルトをケーシング内に引き込むノブと、前記扉から床面に向けて突当部材を突出可能な回転往復作動装置と、前記ケーシングと前記回転往復作動装置とを接続して前記ノブの前記既定角度以上の回転により前記作動装置から前記突当部材を前記床面委向けて突出させる操作伝達部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の実施形態に係るストッパ操作装置は、扉から突出するラッチボルトを回転によりケーシング内に引き込むノブと、前記ケーシング内をスライド可能なスライダと、前記ノブに形成されて前記ノブの既定角度以上の回転で前記スライダに当接してこのスライダをスライドさせるスライダ用腕部と、前記スライダに接続されて前記スライダの変位に応じた動力を発生させる操作伝達部と、を備えるものである。
【0009】
本実施形態に係る他のストッパ操作装置は、扉から突出するラッチボルトを回転によりケーシング内に引き込むノブと、前記ケーシング内をスライド可能なスライダと、前記ノブに形成されて前記ノブの回転で前記スライダをスライドさせるスライダ用腕部と、前記スライダに接続されて前記ノブの既定角度以上の回転で動力を発生させる操作伝達部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、動こうとする物を所望の位置で一時固定することができる回転往復作動装置、ストッパ操作装置、ストッパ、及びストッパ付扉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るストッパ付扉の概略正面図。
図2】第1実施形態に係るストッパ操作装置の構成図。
図3】(A)ノブ内部機構が自然姿勢にあるときのストッパ操作装置を示す図、(B)既定角度までノブ内部機構を回転させた状態のストッパ操作装置を示す図、(C)ノブ内部機構を既定角度より大きく回転させた状態のストッパ操作装置を示す図。
図4】(A)第1実施形態に係る回転往復作動装置の外観図、(B)同・縦断面図。
図5】(A)~(F)第1実施形態に係るストッパの回転往復作動装置のロックオン動作を説明する図、(G),(H)同・ロック解除動作を説明する図。
図6】(A)~(C)第1実施形態に係るストッパのロックオン動作を説明する図、(D)~(F)同・ロック解除動作を説明する図。
図7】第1実施形態に係る回転往復作動装置を閂として開き戸に適用した図。
図8】第1実施形態に係る回転往復作動装置を閂として引戸に適用した図。 (A)第1実施形態に係るストッパのロック装置の変形例で突当シャフトを突出させるときの説明図、(B)同・突当シャフトの突出状態を維持しているときの説明図。
図9】(A)第2実施形態に係るストッパであり、閉扉時における状態を示す概略構成図、(B)同・突当シャフトを突出させるときの概略構成図。
図10】第2実施形態に係るストッパの開扉時における状態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
以下の実施形態では、本発明に係るストッパを開き扉に適用した例で説明するが、ストッパの適用対象は扉に限定されない。例えば、自然に閉まろうとする机又は棚の引き出しや、門、金庫などに適用可能である。また、自然に閉まろうとする構造を有していなくても、坂道停車をしようとする台車やキャリーバッグ、自動車などのストッパとしても好適に適用可能である。
また、実施形態中で「水平」、「鉛直」、及び「上下」の方向は、壁面に取り付けられた扉にストッパを取り付けた時の方向を基準にする。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1を用いて、第1実施形態に係るストッパ10を概説する。
図1は、第1実施形態に係るストッパ10を備えるストッパ付扉(以下、単に「扉」という)100の概略正面図である。
ストッパ10は、図1に示されるように、ノブ11が設けられたストッパ操作装置(以下、単に「操作装置」という)20と、扉100の下方部に設けられた回転往復作動装置(以下、単に「作動装置」という)30と、がワイヤ12等の操作伝達部12で接続されている。
【0014】
ノブ11は、操作装置20の外表面及び外裏面の双方向から操作装置20内に向けて差し込まれるハンドルレバー11Aと、ハンドルレバー11Aの回転操作により操作装置20内部でノブ軸部14周りに回転するノブ内部機構11B(図2)と、で構成される。
【0015】
第1実施形態に係るストッパ10では、ノブ11が、その回転によりラッチボルト17の突出及び埋伏を操作する一般的な機能に加え、既定角度θ以上の回転が発生した場合に操作伝達部12に張力などの動力を付与する。そして、操作伝達部12がこの動力を接続された作動装置30に伝え、作動装置30を動作させる。
ここで、既定角度θとは、操作伝達部12を介して作動装置30に動力が伝動され始めるときのノブ11の自然姿勢からのノブ軸部14を中心とした回転角をいう。
また、自然姿勢とは、ハンドルレバー11A(ノブ11)を回転させない状態をいう。
【0016】
作動装置30は、例えば図1に示されるように、突当シャフト(突当部材)19が鉛直方向に沿うように扉100の下方部に固定される。この突当シャフト19は、操作部として機能する操作伝達部12から動力を受けて扉100の下端辺から床面50に向けて突出する。突当シャフト19と床面50との接触部に摩擦が発生することで、扉100は任意の開き角で固定され、開いた状態に維持される。
【0017】
操作伝達部12は、典型的にはワイヤ12であるが、ワイヤ12に限定されるものではない。例えば、操作伝達部12は、自動二輪車等の駆動機器のように油圧で伝動させるものであってもよい。また、操作伝達部12は、送信機及び受信機のセットであってもよい。この場合、ノブ11の回転が既定角度θを超えたときに、操作装置20に設置した送信機から、作動装置30に設置した受信機へ作動信号を発信することで作動装置30を制御する。
【0018】
次に、図1に加えて図2を用いて、操作装置20の一例の構成について詳述する。
操作装置20は、主に、ノブ内部機構11B、ラッチボルト支持部21、及びスライダ22等の動作部材がケーシング23内に収容されて構成される。
ノブ内部機構11Bは、ケーシング23の外部から挿入されたハンドルレバー11Aのノブ軸部14に固定され、ノブ11の回転操作でノブ軸部14とともに回転する例えば板部材である。
【0019】
ノブ内部機構11Bには、ラッチボルト用腕部11a及びスライダ用腕部11bが例えばノブ軸部14を中心に互いに所定の角度を有してケーシング23面に沿って延びる。
ラッチボルト用腕部11aは、例えば図2に示されるように、ノブ軸部14から放射線状に延びた後にラッチボルト17から離れる方向に屈曲してラッチボルト支持部21に接触する。
【0020】
ラッチボルト支持部21は、ラッチボルト用腕部11aとの接触辺を斜辺21a、水平方向に延びる辺を短辺、鉛直方向に延びる辺を長辺とする直角三角形の概形を有する。ラッチボルト支持部21の板面には、この短辺付近で短辺に沿って設けられる係止用第1突起26aと、長辺と斜辺21aとで形成する頂部に設けられる係止用第2突起26bがケーシング23に向けて設けられる。
この係止用突起26a,26bがケーシング23に2箇所水平に設けられたボルト支持溝27a,27bに1箇所ずつ係止されることで、ラッチボルト支持部21は水平方向にスライド可能にケーシング23に係止される。
【0021】
ラッチボルト支持部21の斜辺21aは、ハンドルレバー11Aを水平状態から既定角度θ以内の回転をしているときにラッチボルト用腕部11aがラッチボルト支持部21に当接してラッチボルト支持部21をスライドさせるように、弓なり形状を有する。
このようなラッチボルト支持部21とラッチボルト用腕部11aとの構造により、ハンドルレバー11Aが既定角度θ以内で回転した場合に、ラッチボルト17がケーシング23内に引き込まれる。
【0022】
なお、ラッチボルト17とラッチボルト支持部21とを接続するラッチシャフト17aにはケーシング23に固定された留突起29に端部が当接するコイルバネ31が設けられている。ラッチボルト支持部21のスライドにより縮められたコイルバネ31の復元力でラッチボルト17には元の状態に戻ろうとする力が働く。
また、ノブ内部機構11Bにもノブ軸部14とは僅かに離れた位置に固定された第1トーションバネ32が接触し、ノブ内部機構11Bを自然姿勢まで戻そうとする回転復元力を付与している。
【0023】
また、ケーシング23には、例えば垂直方向に沿って左右2条のスライダ係止溝孔33が設けられている。この左右のスライダ係止溝孔33には、例えばボックス状のスライダ22が架橋されて係止される。
スライダ22の底部には、ノブ軸部14から放射状に延びた後、屈曲したスライダ用腕部11bの端部が当接している。
スライダ用腕部11bのノブ軸部14周りの回転により、スライダ22はスライダ係止溝孔33に沿ってこのスライダ係止溝孔33の下端縁から押し上げられる。
スライダ22には係止孔が設けられ、端部に係止球12aが形成されたワイヤ12(操作伝達部12)がこの係止孔から通される。
【0024】
ワイヤ12は、このワイヤ12よりも数センチ程短いアウタチューブ37に被覆される。アウタチューブ37の上端部は、ケーシング23の下辺に固定され、ワイヤ12のみがケーシング23内部に突出してスライダ22の係止孔を貫通している。ノブ11が無回転のとき、係止球12aは、スライダ係止溝孔33の下端にあるスライダ22よりも数センチ程上方に位置する。
スライダ用腕部11bがノブ軸部14の周りに既定角度θ以上回転すると、係止球12aがスライダ22の係止孔にひっかかり、スライダ22がワイヤ12を上方に引き上げる。
【0025】
なお、図3(A)~図3(C)では、ワイヤ12が動作するまでのノブ11の回転の遊びを下端にあるときのスライダ22とワイヤ12の係止球12aとの離隔分で確保している。つまり、スライダ用腕部11bがスライダ22を上方に押し上げても、係止球12aはすぐにはスライダ22に係止されず、ワイヤ12牽引には至らない構成になっている。しかし、このワイヤ12牽引までの遊び分を他の構成に持たせてもよい。つまり、スライダ用腕部11bの延伸角度を変更して、既定角度θまでは、スライダ用腕部11bがスライダ22に接触しないようにしてもよい。この場合、係止球12aがスライダ22に常時係止されていても、ノブ11を既定角度θまで回転させないとワイヤ12は牽引されないため、係止球12aとスライダ22との離隔距離を遊び分にしていた場合と同様の効果が得られる。
【0026】
次に、以上の構成で実現する操作装置20による扉開閉動作及びワイヤ操作を図3を用いて説明する。
図3(A)はノブ内部機構11Bが自然姿勢にある操作装置20を示す図、図3(B)は既定角度θまでノブ内部機構11Bを回転させた状態の操作装置20を示す図、図3(C)はノブ内部機構11Bを既定角度θより大きく回転させた状態の操作装置20を示す図である。
【0027】
ノブ内部機構11Bが自然姿勢にあるとき、図3(A)に示されるように、ラッチボルト17がケーシング23から突出しており、いずれのバネ31,32にも復元力がかかっていない状態にある。
【0028】
この状態から図3(B)に示されるように、例えば30°程度の既定角度θになるまでは、スライダ22はスライダ用腕部11bによって上方にスライドするもののワイヤ12は牽引されない。従って、ラッチボルト用腕部11aに押されてラッチボルト支持部21がボルト支持溝27a,27bに沿って水平に移動してラッチボルト17をケーシング23内に引き込む動作のみが行われる。つまり、ノブ11の回転が既定角度θ以下では、ラッチボルト17はケーシング23内に引き込まれ扉100を開くことができるが、ワイヤ12は牽引されない。すなわち、ハンドルレバー11Aを既定角度θ以内の角度で回転させている間は、ハンドルレバー11Aは従来の扉でも期待されている扉開放機能を発揮する。
【0029】
一方、図3(C)に示されるように、ハンドルレバー11Aをさらに回転させて例えば60°程度にすると、ワイヤ12がスライダ22に牽引されて作動装置30にその張力を動力として伝える。
この状態でハンドルレバー11Aから手を放すと、バネ31,32の復元力によりラッチボルト17及びスライダ22は自然状態に戻る。
【0030】
次に、図4(A),(B)を用いて、作動装置30の一例について説明する。
図4(A)は作動装置30の外観図、図4(B)は図4(A)の作動装置30の断面図である。ただし、図4(A)では、作動装置30のうちシリンダ38のガイド歯39が明示できるように、シリンダ38の外周面は破線で表現されている。
作動装置30は、例えば、突当シャフト(突当部材)19及びシリンダバネ41がシリンダ38に収容されて構成される。
【0031】
突当シャフト19の上端には、ワイヤ12の端球12bが接続される。ワイヤ12で牽引されると、突当シャフト19はコイル状のシリンダバネ41の復元力に反してシリンダ38内を上方に移動する。
一方、ワイヤ12による牽引力がなくなると突当シャフト19は、上端に接続されたシリンダバネ41の復元力及び自重でシリンダ38内を下方へ移動する。突当シャフト19の下端部はシリンダ38を下端で支持する支持板42から床面50に向けて突出する。突当シャフト19の下端部に設けられたゴムパッド43が床面50との間で摩擦を発生させることで、扉100を開いた状態に維持する。
【0032】
ところで、シリンダ38の内周面側には、ガイド歯39が設けられる。ガイド歯39は、突当シャフト19の腹部に設けられた周回歯44を案内する溝又は突起である。
ガイド歯39は、上ガイド歯39a及び下ガイド歯39bで構成される。ガイド歯39は、上下ともに、斜面46aとこの斜面46aの頂点から鉛直方向に延びる鉛直面46bとを有する凸部(上側凸部46,下側凸部47)が、上下で向かい合いながら鋸歯のようにシリンダ38の周方向に例えば4個ずつ並んだものである。鉛直面46b,47bは、凸部46,47の時計回り側又は反時計回り側を向くように往復で揃えられている。
【0033】
また、向かい合う凸部46,47の頂点は往復で互いに凸部半個分ずれており、互いの鉛直面46b,47bの延長線が対向する凸部46,47の斜面46a,47aの中間部に配置される。また、下ガイド歯39bには、下側凸部471つおきすなわち周上の2箇所に鉛直面47bを床面50側へ延長するように長方形のストッパ溝49が設けられる。
また、周回歯44は、例えば鉛直方向に沿う下底44aを有する台形や円形等、ガイド歯39a,39bの各辺と順に当接しうる形状及び大きさを有する。
【0034】
次に、このように構成された作動装置30の動作について図5(A)~図5(H)及び図6(A)~図6(F)を用いて説明する。
図5(A)から図5(F)まではロックオン動作の手順を示し、図5(G)から図5(A)に戻るまでの手順はロック解除動作の手順を示す。
図6(A)~図6(C)は、ロックオン動作における操作装置20及び作動装置30の連動性を示す図である。
また、図6(D)~図6(G)は、ロック解除動作における操作装置20及び作動装置30の連動性を示す図である。
【0035】
[ロックオン動作(図5(A)から図5(F)、図6(A)~図6(C))]
まず、ワイヤ12からの牽引がない場合には、図5(A)に示されるように、シリンダバネ41のバネ力で周回歯44は下ガイド歯39bに接触して押し付けられている(図6(A))。
ノブ11が既定角度θ以上回転されてワイヤ12が操作装置20内で引き上げられると、図5(B)に示されるように、ワイヤ12の牽引で周回歯44が鉛直上向きにシフトする(図6(B))。
【0036】
周回歯44は、このシフトにより上ガイド歯39aに接触した以後も、上方への引き上げ力を受けて上方にシフトしようとする。
この引き上げ力を受けて、周回歯44は、図5(C)に示されるように、上側凸部46の斜面46aを滑って突当シャフト19ごと周回する。
そして、ノブ11が自然姿勢に戻されると、図5(D)に示されるように、ワイヤ12の牽引がなくなりシリンダバネ41のバネ力で周回歯44が下ガイド歯39bに向けて鉛直にシフトする(図6(C))。
【0037】
そして、下ガイド歯39bに接触した以後も、バネ力を受けて下方にシフトしようとするため、下側凸部47の斜面46aに沿って突当シャフト19ごと滑る。
そして、周回歯44は、図5(E)に示されるように、斜面46aの先のストッパ溝49に落下する。
周回歯44が、図5(F)に示されるようにストッパ溝49に嵌まり込むと、突当シャフト19の先のゴムパッド43が床面50に突当てられて扉100をその場で静止させる。
図5(F)のようにストッパ溝49の底部に周回歯44が嵌まり込んだ状態でも、周回歯44にはシリンダバネ41によるバネ力が働くため、床面50への突出状態を維持する。
【0038】
[ロック解除動作(図5(G)から図5(A)に戻るまで,図6(D)~図6(F)]
次に、ロック解除動作について説明する。
図5(F)のロックオンの状態から(図6(D))、ノブ11を既定角度θ以上回転させると、ワイヤ12が操作装置20内で牽引される。このワイヤ12の張力によって、図5(G)に示されるように、周回歯44が突当シャフト19ごと鉛直方向上向きにシフトしてストッパ溝49から抜け出して突当シャフト19が作動装置30内に引き上げられる(図6(E))。鉛直方向上向きにシフトした周回歯44は上ガイド歯39aの斜面46aに接触する。ワイヤ12はなおも突当シャフト19を牽引するため、図5(H)に示されるように、周回歯44が斜面46aを滑るように突当シャフト19ごと回転する。
【0039】
そして、ノブ11を自然姿勢に戻すと、ワイヤ12による牽引力がなくなる(図6(F))。よって、シリンダバネ41の張力により、周回歯44が下ガイド歯39bに押し付けられる図5(A)の状態に戻る。
【0040】
次に、図7及び図8を用いて、第1実施形態に係る作動装置30Aの適用態様の変形例について説明する。
図7は、第1実施形態に係る作動装置30Aを閂として開き戸に適用した図である。
なお、図7ではワイヤ12及び作動装置30Aは扉100Aの内部に埋め込まれているが、図の見やすさを優先させて適宜実線で記載している。
作動装置30Aを閂として使用する場合には、図7に示されるように、扉100Aを取り付ける壁面に閂孔51を設ける。
そして、この閂孔51に突当シャフト19が嵌まり込むように、扉100Aに作動装置30Aを内蔵する。この閂孔51及び作動装置30Aの設置位置は、扉100Aの上下左右の辺のいずれであってもよい。滑車53を組み合わせることでワイヤ12の動作方向は自由に設計することができる。
【0041】
また、図8は、第1実施形態に係る作動装置30Aを閂として引戸100Bに適用した図である。
作動装置30Aを引戸100Bに適用する場合、操作装置20Aは、引手52とは別に設けられてもよい。例えば、図8に示されるように、引手52の付近に円筒状の操作装置20Aを設ける。このような操作装置20Aでは、円形の両側面が引戸100Bの表面と同一面上に配置されることになる。この円形の両側面には、彫り込み加工がなされて、サムターン54が形成される。操作装置20Aの胴部には、回転中心軸C付近まで到達する切れ込み55が設けられる。
【0042】
そして、ワイヤ12Aの端部がこの切れ込み55から差し込まれて、回転中心軸C付近で固定される。このような構造により、ワイヤ12は回転中心軸Cから切れ込み55を伝って操作装置20の胴部表面から操作装置20Aの重みで鉛直方向に延びることになる。サムターン54を摘まんで回転させると、この回転分だけ操作装置20Aの胴部に巻き付くため、ワイヤ12Aが上方に引かれることになる。
なお、図8に示されるように閂孔51が床面50に設けられる場合、作動装置30Aを扉100Aに内蔵させずに、外装させることもできる。
【0043】
以上のように、第1実施形態に係るストッパ10によれば、ノブ操作のみで所望の位置で扉100を一時固定することができる。
また、第1実施形態に係る扉100によれば、シンプルで整然とした美観を与えるとともに、扉100の一時固定に必要な付属部品を紛失することも防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図9(A),(B)は、第2実施形態に係るストッパ10aの概略構成図である。
図9(A)は閉扉時における状態を示し、図9(B)は突当シャフト19を突出させるときの状態を示している。
【0045】
第2実施形態では、必ずしも図4等で示した周回歯44及びガイド歯39(39a,39b)が必須ではない。
第2実施形態に係るストッパ10aでは、図9(A),(B)に示されるように、ケーシング23内に、引き込み部材56が設けられる。引き込み部材56は、例えばケーシング23の縁部分とスライダ22aとの間に、スライダ22aに接触するように設置されるコイルバネである。引き込み部材56は、スライダ22aに弾性的に接触して、ワイヤ12をケーシング23内へ引き込む向きにスライダ22aに弾性力を付与する。
【0046】
つまり、引き込み部材56は、第1実施形態のシリンダバネ(第1弾性部)41aの弾性力を相殺しようとする第2弾性部として機能する。
言い換えると、引き込み部材56は、スライダ22aを介してワイヤ12を引き上げることで、シリンダバネ41aによるシリンダ38aから突当シャフト19を突出させようとする弾性力を弱める機能を有する。
この結果、図9(A)のようにハンドルレバー11Aが回転していないときは、シリンダバネ41aの押し出し力が引き込み部材56によって弱められているため、突当シャフト19は突出しない。
【0047】
また、第2実施形態では、図9(B)に示されるように、スライダ用腕部11bが回転により引き込み部材56の上辺側に当接する。
つまり、ハンドルレバー11Aが大きく回転してスライダ用腕部11bが引き込み部材56の弾性力に反してスライダ22aを押し下げる。スライダ22aが押し下げられると、ワイヤ12の張力は弱められ、引き込み部材56で相殺されていたシリンダバネ41aの押し出し力が突当シャフト19にかかる。そして、突当シャフト19が床面@に向かって突出して扉100を任意の開角で固定する。
【0048】
なお、引き込み部材56の配置位置は、図9(B)のようなケーシング23の下辺に接触する一例に限定されない。シリンダバネ41aの弾性力を相殺することが可能であれば、ケーシング23内のどこに配置されていてもよい。例えば、引き込み部材56はスライダ22aに関してノブ内部機構11Bと同じ側に自然長より伸ばされた状態で設定されてもよい。この場合も引き込み部材56はワイヤ12をケーシング23内に引き込む弾性力をスライダ22aに付与することができる。さらに、スライダ22aはワイヤ12をケーシング23内に引き込めればどの方向にスライドしてもよい。
【0049】
また、図9(A),(B)では、ラッチボルト支持部21をラッチシャフト17aに設けられるリング状、板状又は棒状の係合部材に変更している。また、この変更に応じてラッチボルト用腕部11aの形状も多少変更している。このように、ラッチボルト用腕部11a及びラッチボルト支持部21の形状は互いの配置関係によって多様に選択される。
【0050】
また、図10は、第2実施形態に係るストッパ10aの開扉時における状態を示す図である。
第1実施形態と同様にハンドルレバー11Aを既定角度θ以下で回転させる場合、図10に示されるように、スライダ用腕部11bはスライダ22aに接触しない。
よって、既定角度θ以内ではラッチボルト17がケーシング23の中に引き込まれるのみの通常のドアとして機能する。
【0051】
なお、周回歯44及びガイド歯39の機構に代えて、突当シャフト19の往復動を引き込み部材56を用いること以外は、第2実施形態は第1実施形態と同様の構成を有するため、重複する記載は省略する。また、図面においても、対応する構成は同一符号を付すことで説明を省略する。
【0052】
以上のように、第2実施形態に係るストッパ10aによれば、ガイド歯39を有さないシンプルな構造で第1実施形態と同様の効果をえることができる。
【0053】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0054】
例えば、ストッパを床面に密着させて扉を一時固定していたが、ストッパの突出先は天井や側壁であってもよい。
また、突当部材として突当シャフトを例に挙げて説明したが、突当部材は床面に当接して扉が閉まることを防止できるものであれば形状は問わない。
また、前述したようにストッパの適用対象は扉に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
100(100A,100B)…扉、10(10a)…ストッパ、11(11A,11B)…ノブ(ハンドルレバー,ノブ内部機構)、11a(11)…ラッチボルト用腕部、11b(11)…スライダ用腕部、12…操作伝達部(操作部,ワイヤ)、12a(12)…係止球、12b(12)…端球、14…ノブ軸部、17(17a)…ラッチボルト(ラッチシャフト)、19…突当シャフト(突当部材)、20(20a)…操作装置、21(21a)…ラッチボルト支持部、22(22a)…スライダ、23…ケーシング、26a…係止用第1突起(係止用突起)、26b…係止用第2突起(係止用突起)、27a…ボルト支持溝、27b…ボルト支持溝、29…留突起、30(30a)…作動装置、31…コイルバネ、32…第1トーションバネ、33…スライダ係止溝孔、37…アウタチューブ、38(38a)…シリンダ、39(39a,39b)…ガイド歯(上ガイド歯,下ガイド歯)、41(41a)…シリンダバネ、42…支持板、43…ゴムパッド、44(44a)…周回歯(周回歯の下底)、46(46a,46b)…上側凸部(斜面,鉛直面)、47(47a,47b)…下側凸部(斜面,鉛直面)、49…ストッパ溝、50…床面(基礎面)、51…閂孔、52…引手、53…滑車、54…サムターン、55…切れ込み、56…引き込み部材、θ…既定角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10