(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】端子付き回路基板内蔵ケース
(51)【国際特許分類】
H01C 1/02 20060101AFI20240405BHJP
H01C 10/32 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01C1/02 R
H01C10/32 E
(21)【出願番号】P 2020060350
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】小金平 和雄
(72)【発明者】
【氏名】岡村 達也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大介
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-167004(JP,U)
【文献】特開2003-068256(JP,A)
【文献】特開2011-103437(JP,A)
【文献】特開平04-277602(JP,A)
【文献】特開2017-054844(JP,A)
【文献】特開2010-153097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/02
H01C 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターン及び当該回路パターンに接続される端子接続パターンを形成した回路基板と、前記端子接続パターン上に接続される端子と、前記回路基板の前記端子を接続した部分を含む当該回路基板の周囲及び当該回路基板の底面を覆うように成形されるケースと、
を具備する端子付き回路基板内蔵ケースにおいて、
前記ケースには、当該ケース成形時のゲート跡を設け、当該ゲート跡の形状は、当該ケースの底面を平面視した際に直交する一方の方向の長さ寸法aと他方の方向の長さ寸法bが、
a>b、または、a<b
の関係を満た
し、
且つ前記ケースの底面に凹部を設け、当該凹部内に前記ゲート跡を設けたことを特徴とする端子付き回路基板内蔵ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付き回路基板内蔵ケースであって、
前記凹部の深さは、前記ケースの底面から前記回路基板の底面までの厚さに対して1/2以上であることを特徴とする端子付き回路基板内蔵ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品やスライド式電子部品等に用いて好適な端子付き回路基板内蔵ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式スイッチ、回転式可変抵抗器、スライド式スイッチ、スライド式可変抵抗器等の各種電子部品に用いる端子付き回路基板内蔵ケースとして、例えば特許文献1の
図1,
図2に示すような電子部品用ケース(1-1)がある。この電子部品用ケース(1-1)は、導電体(17)や抵抗体パターン(19)等からなる回路パターン及び当該回路パターンに接続される端子接続パターン(21)を形成した回路基板(10)と、前記端子接続パターン(21)上に接続される端子板(60)と、前記回路基板(10)の端子板(60)を接続した部分を含む回路基板(10)の周囲及び回路基板(10)の底面を覆うように成形されるケース(40)と、を具備して構成されている。
【0003】
上記電子部品用ケース(1-1)の製造は、特許文献1の
図6に示すように、回路基板(10)と端子板(60)を挟持した金型(110,120)によって形成されるキャビティー(C)内に、ゲート(P1)から溶融樹脂を射出してケース(40)を成形することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記ケース(40)を成形する際に使用するゲート(P1)の先端形状は、特許文献1の
図2に示すゲート跡からもわかるように、円形であった。
【0006】
しかし、ゲート(P1)の先端形状を円形に構成すると、金型(110,120)を取り外す際に、大きな(ゲート残りの高さの高い)ゲート跡が生じてしまう虞があった。ゲート跡が大きいと、ケース(40)の底面よりも下方に突出してしまい、例えばこの電子部品用ケース(1-1)を他の主回路基板などの表面上に密着して設置できなくなってしまう虞を生じる。ゲート跡は、引用文献1の
図2に示すように、ケース(40)の底面より下方に突出させないため、凹部内に位置させているが、ケース(40)の厚みが薄くなると、凹部の深さも浅くなり、上記問題が顕著になる。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、ゲート跡を小さく(ゲート残りの高さを低く)することができる端子付き回路基板内蔵ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回路パターン及び当該回路パターンに接続される端子接続パターンを形成した回路基板と、前記端子接続パターン上に接続される端子と、前記回路基板の前記端子を接続した部分を含む当該回路基板の周囲及び当該回路基板の底面を覆うように成形されるケースと、を具備する端子付き回路基板内蔵ケースにおいて、前記ケースには、当該ケース成形時のゲート跡を設け、当該ゲート跡の形状は、当該ケースの底面を平面視した際に直交する一方の方向の長さ寸法aと他方の方向の長さ寸法bが、「a>b、または、a<b」の関係を満たし、且つ前記ケースの底面に凹部を設け、当該凹部内に前記ゲート跡を設けたことを特徴としている。
本発明によれば、ゲート跡の、直交する方向の長さ寸法を異ならせたので、溶融樹脂の硬化の際に最も硬化しにくいゲート中心部分までの距離(短い幅の側の距離)を短くすることができる。これによってゲート部分における溶融樹脂の硬化までの時間を短くでき(冷却効果を向上させることができ)、金型を取り外す際に確実にゲート跡となる部分をその根元部分で切断することができ、これによってゲート残りを小さくすることができる。
言い換えれば、ケース成形時の成形時間を短縮でき、生産効率を向上させることができる。
またゲート跡が円形の場合に比べ、その形状からもケース側の樹脂とゲート側の樹脂の接続強度を弱くでき、この点からもゲートの部分がケースの根元部分で容易に切断され、ゲート残りを小さくすることができる。
【0009】
また前記ケースの底面に凹部を設け、当該凹部内に前記ゲート跡を設けたので、ゲート跡を、確実にケースの底面から突出しないようにすることができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記凹部の深さは、前記ケースの底面から前記回路基板の底面までの厚さに対して1/2以上であることを特徴としている。
これによって、さらに確実に、ゲート跡をケースの底面から突出しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゲート跡を小さく(ゲート残りの高さを低く)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】端子付き回路基板内蔵ケース1の斜視図である。
【
図2】端子付き回路基板内蔵ケース1を底面側から見た斜視図である。
【
図3】端子付き回路基板内蔵ケース1の断面図である。
【
図4】端子付き回路基板内蔵ケース1の製造方法説明図である。
【
図5】回路基板10と端子50を分離して示す斜視図である。
【
図6】凹部83及びゲート跡85の要部拡大底面図である。
【
図7】凹部83及びゲート跡85の要部断面図(
図6のB-B断面図)である。
【
図8】凹部83及びゲート跡85の要部断面図(
図6のC-C断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかる端子付き回路基板内蔵ケース1の斜視図、
図2は端子付き回路基板内蔵ケース1を底面側から見た斜視図、
図3は端子付き回路基板内蔵ケース1の断面図(
図1のA-A線上断面図)である。これらの図に示すように、端子付き回路基板内蔵ケース1は、回路基板10と、端子50と、ケース70とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは回路基板10の端子50を接続する面側をいい、「下」とはその反対面側をいうものとする。
【0014】
図5は、回路基板10と端子50を分離して示す斜視図である。同図に示すように、回路基板10は、略矩形平板状で成形樹脂製の絶縁基板11の上面に、回路パターン17,19と、これら回路パターン17,19に接続される端子接続パターン21,23,25を、何れも印刷(スクリーン印刷)によって形成して構成されている。絶縁基板11は、この例では硬質基板であるが、合成樹脂フィルム製のフレキシブル基板であっても良い。絶縁基板11の中央には、図示しない回転体を挿通・軸支する円形の貫通孔13が形成されている。また回路基板10の外周の1辺は、接続パターン形成辺15となっている。一方の回路パターン17は、前記貫通孔13の周囲を囲むように円形リング状に形成された集電パターンによって形成されている。他方の回路パターン19は、前記回路パターン17の周囲を囲むように円弧状に形成された抵抗体パターンによって形成されている。絶縁基板11の接続パターン形成辺15近傍の上面には、一列に前記端子接続パターン21,23,25が形成されている。そして中央の端子接続パターン23には、回路パターン17の外周から引き出された引出パターンが接続され、両側の端子接続パターン21,25には、回路パターン19の両端からそれぞれ引き出された引出パターンが接続されている。
【0015】
端子50は平板状の金属板製であり、その一端側をパターン当接部51、他端側を出力部53としている。各端子50は、そのパターン当接部51が回路基板10の各端子接続パターン21,23,25に当接される。
【0016】
ケース70は、
図1乃至
図3に示すように、回路基板10の回路パターン17,19を形成した部分を露出する開口部71を有し、その他の部分、即ち回路基板10の周囲及び回路基板10の底面を覆うように成形して構成されている。即ちケース70は、開口部71の周囲を囲む側壁部75と、回路基板10の下面を覆う底面部77とを有している。側壁部75には、回路基板10への端子50の接続部分も含まれており、各端子50の出力部53側の部分は、側壁部75の外側面から外方に向けて突出している。ケース70の底面部77の中央には、前記回路基板10の貫通孔13に連続する円形の貫通孔81が形成されている。またケース70の底面73の貫通孔81よりも各端子50を突出する側の位置には、凹部83が形成され、当該凹部83内の底面にはゲート跡85が形成されている。
【0017】
図6は凹部83及びゲート跡85の要部拡大底面図、
図7は凹部83及びゲート跡85の要部断面図(
図6のB-B断面図)、
図8は凹部83及びゲート跡85の要部断面図(
図6のC-C断面図)である。これらの図に示すように、凹部83は、真下から見た平面視で略長円形状であり、またその底面は平面状に形成されている。ゲート跡85は、凹部83の底面の中央から下方向に向かって突出するように形成されており、真下から見た平面視で、略長方形状であってその対向する両短辺を円弧状に外方に向けて張り出す形状(扁平形状)に形成されている。ゲート跡85の突出高さ寸法は、凹部83の深さ寸法よりも小さく形成され、これによって、ゲート跡85の先端が、ケース70の底面73から下方に突出しないように構成している。さらに具体的に言えば、
図7に示すように、凹部83の深さ寸法L1は、ケース70の底面73から回路基板10の底面までの厚さ寸法L2に対して、1/2以上になるように形成し、これによってゲート跡85が底面73からその下方に突出することを防止している。
【0018】
次に、上記端子付き回路基板内蔵ケース1の製造方法を説明する。まず回路基板10の各端子接続パターン21,23,25に、各端子50のパターン当接部51を当接したものを、
図4に示すように、第1,第2金型100,110間に挟持する。このとき、第1,第2金型100,110間には前記ケース70の形状のキャビティーC1が形成される。第2金型110側には、ゲート(樹脂注入部)G1が設けられており、その先端G11は、前記ケース70の凹部83を形成する突出部分111の中央に開口している。ゲートG1の先端G11の形状は、前記ゲート跡85の形状と同じ、略長方形状であって対向する両短辺を円弧状に外方に向けて張り出す形状(扁平形状)に形成されている。
【0019】
そして、ゲートG1から矢印で示すように、溶融樹脂を注入し、キャビティーC1内を満たす。キャビティーC1内に満たした溶融樹脂が硬化した後、第1,第2金型100,110を取り外せば、
図1乃至
図3に示す端子付き回路基板内蔵ケース1が完成する。
【0020】
第1,第2金型100,110を取り外す際、前記ゲートG1内で硬化した溶融樹脂はゲートG1内に残り、その先端G11の部分で切断され、その際にゲート跡85が形成される。
【0021】
そしてこのゲート跡85は、従来の円形のゲート跡に比べて、その大きさが小さい(ゲート残りの高さが低い)。以下その理由を説明する。即ち、本実施形態にかかるケース70のゲート跡85は、
図6乃至
図8に示すように、これを真下方向から見た場合、直交する方向X1,X2の長さa,bを異ならせているので(a>b)、同一表面積の円形のゲート跡に比べて、溶融樹脂の硬化の際に最も硬化しにくい中心部分Z1までの金型からの距離(短い幅の側の距離、X1方向の距離)が短くなる。このためゲートG1の先端G11部分における溶融樹脂の硬化までの時間を短くできる。また同一表面積の円形のゲート跡の外周辺の総距離に比べて、円形以外のゲート跡の外周辺の総距離の方が長いので、その分冷却効果が高まり、この点からも溶融樹脂の硬化までの時間を短縮できる。これによって、第1,第2金型100,110を取り外す際には、確実に先端G11部分の溶融樹脂が硬化しているので、先端G11部分において、ゲート跡85を大きくすることなく、確実に切断できる。即ち、ゲートG1内で硬化した樹脂を、その根元の先端G11の部分で確実に切断でき、ゲート残りを小さくすることができる。言い換えれば、溶融樹脂の硬化までの時間を短縮できるので、ケース70の成形時の成形時間を短縮でき、生産効率を向上させることができる。
【0022】
ところで、
図4に示すように、ゲートG1は、このゲートG1から射出する溶融樹脂が、回路基板10の端子50を当接した部分近傍の裏面側に吹き付ける位置に設けられている。これは、溶融樹脂を射出する圧力を用いて、回路基板10を端子50に押し付けてその接続強度を高めるためである。このため、ゲートG1の位置、即ち、ゲート跡85の位置はケース70の回路基板10の底面側に位置することが好ましいが、逆にこのために、端子付き回路基板内蔵ケース1の厚みの薄型化が阻害される(もし上記接続強度を高める効果を望まないのであれば、ゲートの接続位置はケース70の外周側壁面などに設けても良い)。これに対して本発明は、回路基板10と端子50の接続強度を高めつつ、ケース70の薄型化を図るために、ゲート跡85の形状を工夫したのである。即ち、本発明は、上記構成の端子付き回路基板内蔵ケース1に用いて特に有効である。
【0023】
以上のようにして製造された端子付き回路基板内蔵ケース1は、その開口部71内に、図示しない摺動子を取り付けた回転体を収納し、その上を図示しないカバーで覆うことで、回転式電子部品となる。この回転式電子部品は、ケース70の底面73を、例えば図示しない別の主回路基板上に載置するが、その際、ゲート跡85におけるゲート残りの高さ寸法が低く、またゲート跡85は凹部83内に設けられているので、ケース70の底面73から下方には突出せず、従って前記主回路基板上への載置に支障をきたすことはない(主基板上に密着させて設置することができる)。さらに言えば、ゲート跡85におけるゲート残りの高さ寸法が低いので、凹部73の深さ寸法も小さくでき、これによってケース70の底面部77の厚み寸法も小さくでき、端子付き回路基板内蔵ケース1の薄型化を図ることができる。
【0024】
上記端子付き回路基板内蔵ケース1においては、ゲート跡85を、真下から見た平面視で、略長方形状であって対向する両短辺を円弧状に外方に向けて張り出す扁平形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られず、例えば、長方形状、楕円形状、その他の各種扁平形状などであっても良い。要は、ゲート跡の形状は、ケース70の底面73を平面視した際に直交する一方の方向の長さ寸法aと他方の方向の長さ寸法bが、「a>b、または、a<b」の関係を満たす形状とするものであればどのような形状であっても良い。このような形状とすることで、同一面積の円形のゲート跡に比べ、厚みの薄い部分が生じ、また外周辺の長さを長くでき、これによって上述した各種効果を発揮することができる。
【0025】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、回路パターンとして可変抵抗器用の摺接パターンを用いたが、回路パターンとしてはスイッチ用の摺接パターンを用いても良い。また上記実施形態では、本発明を回転式電子部品用の端子付き回路基板内蔵ケースに適用した例を示したが、スライド式電子部品用の端子付き回路基板内蔵ケースに適用しても良い。また回路パターンは摺接パターンに限定されず、摺接パターン以外の各種回路パターンであっても良い。
【0026】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 端子付き回路基板内蔵ケース
10 回路基板
17,19 回路パターン
21,23,25 端子接続パターン
50 端子
70 ケース
73 底面
83 凹部
85 ゲート跡