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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20240405BHJP
   A42B 3/06 20060101ALI20240405BHJP
   A42B 3/04 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
A42B3/06
A42B3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020120079
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017025
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518194246
【氏名又は名称】株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀則
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】橋都 浩平
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲也
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-169510(JP,A)
【文献】特表2017-509808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
A42B 3/06
A42B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質外側シェルと該シェルの内面に配設された軟質内側ライナーとを具備する頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、
該ライナーは複数個のライナー片から構成されており、該ライナー片の各々が該シェルの内面に夫々別個に着脱自在に装着されており、
該ライナー片の各々は、夫々、該シェルの内面を周方向に間隔をおいて上下方向に延びる複数個の仮想分割線によって分割した複数個の仮想分割面の各々に対応した形状であり、該シェルの上端近傍から該シェルの下端近傍まで延在する、ことを特徴とする頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項2】
該ライナー片は周方向に間隔をおいて6個乃至10個存在する、請求項記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項3】
該ライナー片の各々は面ファスナーを介して該シェルの内面に着脱自在に装着されている、請求項1または2のいずれかに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項4】
該ライナー片の各々は発泡合成樹脂製である、請求項1からまでのいずれかに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項5】
該シェルは非発泡合成樹脂製である、請求項1からまでのいずれかに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項6】
該シェルは、頭蓋の前半部を覆う前半部材と頭蓋の後半部を覆う後半部材とから構成されており、該前半部材と該後半部材とは前後方向の相対的位置を調節自在に且つ分離自在に連結されている、請求項1からまでのいずれかに記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児の頭蓋変形の形状矯正に使用される、硬質外側シェルと軟質内側ライナーとを具備する頭蓋形状矯正ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、乳幼児の頭蓋変形、例えば斜頭(頭蓋が左右対称形状ではなくて片側に大きく傾斜している変形形状)、短頭(頭蓋の前後方向寸法が著しく短い変形形状)及び長頭(頭蓋の前後方向寸法が著しく長い変形形状)、の治療として、幼児の頭蓋に頭蓋形状矯正ヘルメットを被嵌して、頭蓋の成長を変形が矯正される方向に誘導する治療様式が採用されている。そして、かような治療様式に使用される頭蓋形状矯正ヘルメットとして、下記特許文献1には硬質外側シェルと軟質内側ライナーとを具備する頭蓋形状矯正ヘルメットが開示されている。ライナーは、シェルの内面の略全体に渡って延在する形態、従ってシェルの形態に略対応した形態であり、シェルの内面に両面接着テープを介して着脱自在に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6333514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者等の経験によれば、上記のとおりの従来の頭蓋形状矯正ヘルメットには、次のとおりの解決すべき問題があることが判明した。頭蓋形状矯正ヘルメットを被嵌した乳幼児の発汗等に起因してライナーが汚染され、従って必要に応じて汚染されたライナーを新しいライナーに交換する、即ち汚染されたライナーをシェルの内面から離脱して新しいライナーをシェルの内面に装着することが必要である。かようなライナーの交換作業は必ずしも容易ではなく、そしてまたライナーの一部が汚染された場合でもライナーの全体を交換することが必要であり不経済である。
【0005】
本発明は上記のとおりの事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ライナーが汚染された場合にはライナーの全体ではなく汚染された部分を部分的に交換することができ、従って交換作業が容易であると共に経済的である、新規且つ改良された頭蓋形状矯正ヘルメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ライナーを複数個のライナー片から構成し、かかる複数個のライナー片の各々を夫々別個にシェルの内面に着脱自在に装着することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する頭蓋形状矯正ヘルメットとして、
硬質外側シェルと該シェルの内面に配設された軟質内側ライナーとを具備する頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、
該ライナーは複数個のライナー片から構成されており、該ライナー片の各々が該シェルの内面に夫々別個に着脱自在に装着されている、
ことを特徴とする頭蓋形状矯正ヘルメットが提供される。
【0008】
好ましくは、該シェルは頭蓋の頂部に対応する部位に開口が形成されていて円環形状であり、該ライナー片の各々は、夫々、該シェルの内面を周方向に間隔をおいて上下方向に延びる複数個の仮想分割線によって分割した複数個の仮想分割面の各々に対応した形状であり、該シェルの上端近傍から該シェルの下端近傍まで延在する。該ライナー片は周方向に間隔をおいて6個乃至10個存在するのが好適である。該ライナー片の各々は面ファスナーを介して該シェルの内面に着脱自在に装着されているのが望ましい。該ライナー片の各々は発泡合成樹脂製であり、該シェルは非発泡合成樹脂製であるのが好都合である。好適実施形態においては、該シェルは、頭蓋の前半部を覆う前半部材と頭蓋の後半部を覆う後半部材とから構成されており、該前半部材と該後半部材とは前後方向の相対的位置を調節自在に且つ分離自在に連結されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいては、ライナーは複数個のライナー片から構成されており、ライナー片の各々が該シェルの内面に夫々別個に着脱自在に装着されている故に、ライナーの全体ではなくて局部的に汚染させたライナー片のみを交換することができ、交換作業が充分容易であると共に経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成された頭蓋形状矯正ヘルメットの好適実施形態を示す斜面図。
図2図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットの正面図。
図3図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットの背面図。
図4図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットの側面図。
図5図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットの底面図。
図6図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの分解斜面図。
図7図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットに使用されている8個のライナー片の各々を示す正面図。
図8図1に示す頭蓋形状矯正ヘルメットを乳幼児に被嵌した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された頭蓋形状矯正ヘルメットの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0012】
図1乃至図5を参照して説明すると、全体を番号2で示す本発明に従って構成された頭蓋形状矯正ヘルメットは、硬質外側シェル4と軟質内側ライナー6とを具備している。
【0013】
図示の実施形態におけるシェル4は、頭蓋の頂部に対応する上面に比較的大きな開口8を有し、全体として円環形状である。更に詳述すると、シェル4は頭蓋の周縁を囲繞する主部10、主部10の背面部から下方に延出する背面垂下部12、及び主部10の両側面部から下方に突出する突出部14を有する(図4)。図8を参照することによって明確に理解されるとおり、背面垂下部12は頭蓋形状矯正ヘルメット2が被嵌された乳幼児の頸背面に対向して位置し、突出部14は乳幼児の耳の前方に位置し、乳幼児の耳は背面垂下部12と突出部14との間に位置する。
【0014】
図1乃至図5と共に図6を参照することによって明確に理解されるとおり、図示の実施形態におけるシェル4は、頭蓋の前半部を覆う前半部材4Aと頭蓋の後半部を覆う後半部材4Bとの2個の部材から構成されている。前半部材4A及び後半部材4Bの全外周縁部には肉厚を局部的に増大せしめた厚肉補強部16が形成されている。そして、前半部材4Aの実質上鉛直に延在する両後端縁部には後方に開口する溝18が形成されている。一方、後半部材4Bの実質上鉛直に延在する両前端縁部には前方に突出する突出片20が形成されている。溝18の幅は突出片20の厚さに対応せしめられている。かような前半部材4Aと後半部材4Bとは、溝18内に突出片20を挿入することによって相互に分離自在に連結される。溝18内への突出片20の挿入量を調節することによって、前半部材4Aと後半部材4Bとの前後方向の相対的位置を調節することができる。
【0015】
前半部材4A及び後半部材4Bの主部、即ち上記厚肉補強部16並びに前半部材4Aにおける上記溝18が形成されている部位及び後半部材4Bにおける突出片20を除く部分、には、通気のための多数の比較的小さい貫通開口22が形成されている。更に、前半部材4Aには、周方向においては両後端縁よりも幾分前方で且つ上下方向においては略中間に位置する円形の開口24Aが形成されている。同様に、後半部材4Bには、周方向においては両前端縁よりも幾分後方で且つ上下方向においては略中間に位置する円形の開口24Bが形成されている。開口24A及び24Bの各々にはその中央を上下方向に延びる円柱26A及び26Bが配設されている。開口24A及び24Bの全周縁にも厚肉補強部16が形成されている。
【0016】
上述したとおりのシュル4を構成する前半部材4A及び4Bは、矯正すべき乳幼児の変形頭蓋の形状に基いて、適宜の硬質合成樹脂素材からそれ自体は周知の粉末焼結積層造形法によって成形することができる。前半部材4A及び後半部材4Bを成形するための好適合成樹脂素材としては、比較的高剛性のポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブチレン、ABS樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる。
【0017】
主として図5及び図7を参照して説明を続けると、ライナー6は複数個のライナー片から構成されており、ライナー片の各々がシェル4の内面に夫々別個に着脱自在に装着されていることが重要である。ライナー片の各々は、シェル4の内面を周方向に間隔を置いて上下方向に延びる複数個、殊に6個乃至10個、の仮想分割線によって分割した複数個の仮想分割面の各々に対応した形状であり、シェル4の内面の上端近傍から下端近傍まで延在するのが好ましい。図示の実施形態においては、ライナー6は図7に図示する8個のライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hから構成されている。これらのライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hは、シェル4の内面を周方向に略等間隔をおいて上下方向に延びる8個の仮想分割線によって分割した8個の仮想分割面の各々に対応しており、シェル4の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延在する。ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々は、好ましくは面ファスナー(図示していない)、殊に商品名「ベルクロ」或いは「マジックテープ」として市販されている面ファスナー、を介して、夫々別個にシェル4の内面に着脱自在に装着されている。面ファスナーを構成するフックとループとの一方をシェル4の内面に固着し他方をライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々に固着することができる。特に、ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々が発泡合成樹脂から形成されている場合には、シェル4の内面にフックを固着するが、ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々にはループの固着を省略することもできる。かようにしても、ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々をシェル4の内面に充分良好に着脱自在に装着することができる。面ファスナーはライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々の全面に渡って配設する必要はなく、例えばライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々の4個の角領域及び1個の中央領域に局部的に配設することができる。後に詳述する拘束帯28(図8)が延在する部位においては面ファスナーが存在せず、ライナー片6B、6C、6F及び6Gはシェル4の内面に接続されておらず、ライナー片6B、6C、6F及び6Gとシェル4の内面との間を通って拘束帯28が延在することができることが望ましい。所望ならば、面ファスナーに代えて接着力が比較的弱い両面接着テープを介して、ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの各々をシェル4の内面に着脱自在に装着することもできる。
【0018】
上記ライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hは、軟質合成樹脂、特に発泡合成樹脂、殊に連続気泡発泡合成樹脂から形成されているのが好都合であり、好適な材料としては連続気泡発泡ウレタンを挙げることができる。
【0019】
図8は、上述したとおりの頭蓋形状矯正ヘルメット2を乳幼児の頭部に装着した状態を図示している。図8に図示する状態においては、シェル4の前半部材4Aと後半部材4Bとが偶発的に分離してしまうことを確実に回避するために、頭蓋形状矯正ヘルメット2の両側部の各々において布、合成樹脂又は皮革等から形成することができる柔軟な拘束帯28が使用されている(図8においては頭蓋形状矯正ヘルメット2の片側部に使用されている拘束帯28のみが図示されている)。かかる拘束帯28は、シェル4の後半部材4Bに形成されている開口24Bにおける円柱26B(図1及び図4)の後方部を通って後半部材4B内に進入し、後半部材4Bの内面とライナー片6G(6B)との間及び前半部材4Aとライナー片6F(6C)との間を前方に延び、次いで前半部材4Aに形成されている開口24Aに置ける円柱26A(図1及び図4)の前方部を通って前半部材4Aの外側に延出し、前半部材4Aの外面上において両端部が、面ファスナーでよい連結手段(図示していない)によって分離自在に連結されている。乳幼児の頭蓋の成長に応じて、必要ならば、拘束帯28を緩め、シェル4における前半部材4Aの溝18内への後半部材4Bの突出片20の挿入量を低減せしめてシェル4を拡張することができる。
【0020】
頭蓋形状矯正ヘルメット2を被嵌した乳幼児の発汗等に起因してライナー6が局部的に汚染された場合には、必要に応じてシェル4の前半部材4Aと後半部材4Bとを離脱して、ライナー6における汚染されたライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの内の1個又は数個をシェル4の内面から離脱して新しいライナー片に交換する。ライナー6の全体ではなくて汚染されたライナー片6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G及び6Hの内の1個又は数個を選択的に交換することができるので、交換作業は容易であり且つ経済的である。
【符号の説明】
【0021】
2:頭蓋形状矯正ヘルメット
4:シェル
4A:シェルの前半部材
4B:シェルの後半部材
6:ライナー
6A:ライナー片
6B:ライナー片
6C:ライナー片
6D:ライナー片
6E:ライナー片
6F:ライナー片
6G:ライナー片
6H:ライナー片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8