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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】物体着脱機構
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/02 20060101AFI20240405BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240405BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240405BHJP
【FI】
G11B33/02 301F
H05K5/02 G
H01M50/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020207130
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094216
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】末田 和弘
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-127076(JP,U)
【文献】実開昭50-015234(JP,U)
【文献】特開平09-237980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/02
H05K 5/02
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を収納する物体収納部を設けたケースと、
前記物体収納部に収納した物体を当該物体収納部から排出する方向に弾発する弾発部材と、
前記物体収納部に収納されている物体を当該物体収納部内に保持させる排出防止用フックと、を具備し、
前記排出防止用フックを外すことで、前記物体収納部内に保持していた物体を前記弾発部材の弾発力によって排出する物体着脱機構において、
前記弾発部材は、前記ケースに設けた弾発部材収納部内に収納され、且つ当該弾発部材収納部はカバーによって覆われ、
さらに前記弾発部材収納部内に収納された弾発部材の外周面は、当該弾発部材収納部の底面と、当該弾発部材収納部の左右両側面と、前記カバーの弾発部材収納部側を向く面の4つの面の内の何れか2つの面に対してのみ支持されていることを特徴とする物体着脱機構。
【請求項2】
請求項1に記載の物体着脱機構であって、
前記弾発部材はコイルスプリングであり、その一端は前記ケース側に係止し、その他端は前記物体を前記物体収納部内から排出させるように当該物体収納部内をスライド移動する押圧部を有する物体押圧体に係止していることを特徴とする物体着脱機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物体着脱機構であって、
前記ケースの弾発部材収納部の底面には、前記弾発部材の伸縮方向に向けて延びる凸部を設け、
前記弾発部材収納部内に収納された前記弾発部材の外周面は、当該凸部と、前記左右両側面の内の何れか一方の側面とに当接して支持されていることを特徴とする物体着脱機構。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の物体着脱機構であって、
前記弾発部材には、グリスを塗布していることを特徴とする物体着脱機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体着脱機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器には、当該機器にマガジンや各種検出装置やモジュールやリモコンやバッテリーなどの物体を着脱する機構が設けられる。そして前記物体を機器から取り出す操作を容易に行うため、当該機器などに物体取出用のコイルスプリングを取り付けておく場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-139679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コイルスプリングは、例えば各種機器に物体を装着する際に引き伸ばされ、一方各種機器から取り外す場合に縮むように動作するが、このコイルスプリングの伸び縮み動作の際に、異音が発生してしまうという課題があった。そこでこの異音について本願発明者はその原因を検討した。
【0005】
その結果、コイルスプリングをその伸縮方向に直交する方向に移動自在に設置しておくと、当該コイルスプリングが伸縮する際に、巻き回された隣接するコイル同士が接離し易くなり、これによって異音が生じることが分かった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、ケース内にマガジンや各種検出装置やモジュールやリモコンやバッテリーなどの物体を収納・排出する際に、当該物体を付勢(弾発)しているコイルスプリングなどの弾発部材によって生じる異音を軽減できる物体着脱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、物体を収納する物体収納部を設けたケースと、前記物体収納部に収納した物体を当該物体収納部から排出する方向に弾発する弾発部材と、前記物体収納部に収納されている物体を当該物体収納部内に保持させる排出防止用フックと、を具備し、前記排出防止用フックを外すことで、前記物体収納部内に保持していた物体を前記弾発部材の弾発力によって排出する物体着脱機構において、前記弾発部材は、前記ケースに設けた弾発部材収納部内に収納され、且つ当該弾発部材収納部はカバーによって覆われ、さらに前記弾発部材収納部内に収納された弾発部材の外周面は、当該弾発部材収納部の底面と、当該弾発部材収納部の左右両側面と、前記カバーの弾発部材収納部側を向く面の4つの面の内の何れか2つの面に対してのみ支持されていることを特徴としている。
本発明によれば、弾発部材の外周面の周囲を覆う4つの面の内の何れか2つの面のみに当該外周面を支持させる構成としたので、物体がケースの物体収納部内に収納・排出される際に弾発部材が伸縮動作しても、弾発部材の外周面が前記2つの面のみで確実に支持されることで、弾発部材の伸縮方向に対して垂直方向への振動が防止され、異音の発生を大きく減少させることができる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記弾発部材はコイルスプリングであり、その一端は前記ケース側に係止し、その他端は前記物体を前記物体収納部内から排出させるように当該物体収納部内をスライド移動する押圧部を有する物体押圧体に係止していることを特徴としている。
本発明によれば、簡素な構造で、容易に物体を排出させることができる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースの弾発部材収納部の底面には、前記弾発部材の伸縮方向に向けて延びる凸部を設け、前記弾発部材収納部内に収納された前記弾発部材の外周面は、当該凸部と、前記左右両側面の内の何れか一方の側面とに当接して支持されていることを特徴としている。
本発明によれば、弾発部材収納部内の底面に設けた凸部に弾発部材の外周面を当接して支持させる構成としたので、凸部に当接した弾発部材は、左右何れかに傾こうとする。これによって弾発部材は、弾発部材収納部内の左右両側面の内の何れか一方の側面に確実に当接し支持され、異音の発生を確実に軽減できる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記弾発部材には、グリスを塗布していることを特徴としている。
本発明によれば、弾発部材が伸縮する際に、弾発部材を構成する要素同士(弾発部材がコイルスプリングの場合は隣接するコイル同士)が接離することで生じる虞のある異音を減少させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケース内にマガジンや各種検出装置やモジュールやリモコンやバッテリーなどの物体を収納・排出する際に、当該物体を付勢(弾発)しているコイルスプリングなどの弾発部材によって生じる異音を効果的に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】物体着脱機構1と物体100の一例を示す概略斜視図である。
図2】物体着脱機構1に物体100を装着した状態を示す斜視図である。
図3】物体着脱機構1の分解斜視図である。
図4】物体着脱機構1を構成する各部品(但しカバー80を除く)をその下面側から見た分解斜視図である。
図5】物体着脱機構1の組立方法説明図である。
図6】ケース10の弾発部材収納部23に収納したコイルスプリング30の一例を示す要部拡大断面図である。
図7】ケース10の弾発部材収納部23に収納したコイルスプリング30の他の例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を適用して構成された物体着脱機構1と物体100の一例を示す概略斜視図、図3は物体着脱機構1の分解斜視図である。両図に示すように物体着脱機構1は、物体100を着脱自在に収納する物体収納部11を設けたケース10と、前記物体収納部11に収納した物体100を当該物体収納部11から排出する方向に弾発する弾発部材(以下「コイルスプリング」という)30と、前記物体収納部11内に収納されている物体100を当該物体収納部11内に保持させる排出防止用フック40と、当該排出防止用フック40を弾発するフック弾発部材55と、前記物体100を前記物体収納部11内から排出させるように当該物体収納部11内をスライド移動する押圧部63を有する物体押圧体60と、前記コイルスプリング30等の各部品をケース10の下面側に装着した状態で、その下面を覆うように設置されるカバー80と、を具備して構成されている。物体100としてこの例では、複数枚のコンパクトディスクを内蔵したマガジンを用いている。なお以下の説明において、「上」とはカバー80からケース10側を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。またケース10の物体100を挿入する側を「前方」といい、その反対側を「後方」というものとする。
【0014】
図4は、前記物体着脱機構1を構成する各部品(但しカバー80を除く)を、その下面側から見た分解斜視図である。同図及び図3に示すように、ケース10は、合成樹脂の成形品であって、上面と前面(物体100を挿入する側の面)を開放した箱型に形成されており、ケース10の内部は物体収納部11となっている。物体収納部11は、当該物体収納部11の前方側の開口である物体出入口12から物体100をスライド自在に挿入できる寸法形状に形成されている。
【0015】
ケース10の底板部分の前方側の外周辺には凹状で矩形状のフック挿入部13が形成され、またケース10の底板部分の後方には上下に貫通する矩形状の押圧部挿通部15が形成されている。フック挿入部13の下面側には、フック挿入部13を囲むように、略四角筒状のフック本体収納部17が形成されている。フック本体収納部17の前方側の側面は開口19となっている。また前記押圧部挿通部15の下面側には押圧体収納部21が形成され、押圧体収納部21の前方には、弾発部材収納部23が形成されている。押圧体収納部21は、平行に設置された一対のレール21aを形成することで、それらの間の部分(スペース)に設けられている。両レール21aの間隔は、下記する物体押圧体60の押圧体本体部61の幅寸法と略同一に形成されている。また弾発部材収納部23は、平行に設置された一対のレール23aを形成することで、それらの間の部分(スペース)に設けられている。両レール23aの間隔は、前記コイルスプリング30の外径寸法よりも少し大きい寸法に形成されている。レール21aとレール23aの間には、レール21a,23aの長手方向に直交して両レール21a,23aを連結するように形成される一対の突出壁からなるストッパー部25が形成されている。
【0016】
前記ケース10の弾発部材収納部23の底面には、レール23aが伸びる方向、即ちこの弾発部材収納部23に収納されるコイルスプリング30の伸縮方向に向けて延びる凸部27が設けられている。凸部27の高さは、前記レール23aの高さよりも低く形成されている。また凸部27の延長線上前方側(図では凸部27の一端部)には、コイルスプリング30の一端に設けた下記する係止部31を係止する鉤状の弾発部材係止部29が形成されている。
【0017】
凸部27は、下記するコイルスプリング30のほぼ全長にわたる長さ(弾発部材収納部23のほぼ全長にわたる長さ)に形成され、全長にわたって同一高さで、その先端(図面上では下端)の横断面が半円形の円弧面(図6参照)に形成されている。凸部27は、弾発部材収納部23の底面の幅方向に向かって中央よりも少し偏った位置、この実施形態においては、図6に示すように、少し右側に偏った位置に設けられている。
【0018】
コイルスプリング30は、コイル状に巻き回したばね材の両端に、係止部31,33を設けて構成されている。このコイルスプリング30のコイル状に巻き回した部分には、その全長にわたって粘性の高いグリスが塗布されている。
【0019】
排出防止用フック40は、合成樹脂の成形品であり、前記ケース10に設けたフック本体収納部17内に上下動自在に収納される略矩形状のフック本体部41と、フック本体部41の前面側に取り付けられる略矩形状のフック43とを具備して構成されている。フック本体部41の下面には凹部45が形成され、その底面にはバネ受けとなる突起47が形成されている。
【0020】
フック弾発部材55は、前記排出防止用フック40を上方向に向かって弾発するコイルバネで構成されている。
【0021】
物体押圧体60は、合成樹脂の成形品であり、前記ケース10に設けた押圧体収納部21内に収納される押圧体本体部61と、当該押圧体本体部61の上部に取り付けられる押圧部63とを具備して構成されている。押圧体本体部61は、略矩形板状の上面部61aと、上面部61aの左右両側辺から下方向に向かってほぼ垂直に屈曲して下降する略矩形板状の一対の側面部61bとを具備している。上面部61aの下面には、前記コイルスプリング30に設けた係止部33を係止する鉤状の弾発部材係止部65が形成されている。押圧部63は板状であり、押圧体本体部61の上面から上方に向かって突出するように形成され、その前方側の面が物体押圧面67となっている。
【0022】
カバー80は、合成樹脂の成形品であり、上面が開放された矩形箱型に形成され、前記ケース10の下面を覆う形状であって、その上面側を収納部81としている。収納部81の深さ寸法は、前記ケース10のレール21a,23aやフック本体収納部17の高さ寸法と略同一寸法に形成されている。カバー80の前方側の外周辺の、前記ケース10のフック挿入部13に対向する位置には、側壁を切り欠いてなるフック挿入部83が形成されている。
【0023】
物体着脱機構1を組み立てるには、ケース10のフック本体収納部17に、排出防止用フック40のフック本体部41を上下動自在に収納する。このとき、排出防止用フック40のフック43は、ケース10の前方側の外周辺から前方に突出する。次に、フック本体部41下面の凹部45内にフック弾発部材55を収納し、そのとき凹部45の底面に設けた突起47にフック弾発部材55の端部を挿入し係止する。
【0024】
次に、ケース10の押圧体収納部21内に、物体押圧体60の押圧体本体部61を収納する。このとき同時に、物体押圧体60の押圧部63をケース10の押圧部挿通部15を通してケース10の上面側に突出させる。
【0025】
次に、コイルスプリング30をケース10下面の弾発部材収納部23に挿入し、その際コイルスプリング30の係止部31をケース10下面の弾発部材係止部29に係止し、コイルスプリング30の係止部33を物体押圧体60の弾発部材係止部65に係止する。そしてコイルスプリング30にグリスをその全長にわたって塗布する(グリスは弾発部材収納部23に装着する前に、予めコイルスプリング30に塗布しておいても良い)。このときの状態を図5に示す。
【0026】
そして前記コイルスプリング30などを取り付けたケース10の下面に、カバー80を取り付け、図示しない固定手段で両者を固定する。これによって、物体着脱機構1の組み立てが完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。また一般に、物体着脱機構1のケース10の開放されている物体収納部11の上面には、この物体着脱機構1に装着した物体100と電気的に接続される各種電子機器のケースが当接して固定され、これによって当該上面は塞がれている。
【0027】
そして上記物体着脱機構1は、図1に示すように、ケース10前面側の排出防止用フック40が、前記カバー80上にその下端が当接したフック弾発部材55によって上方向に弾発され、そのフック43の上部が物体出入口12内に突出している。また物体収納部11内に突出している物体押圧体60の押圧部63は、前記コイルスプリング30の引張りコイルバネとしての弾発力により、前方側に位置している。このとき物体押圧体60の押圧体本体部61は、その前方側の面がケース10のストッパー部25に当接している。
【0028】
図6は、ケース10の弾発部材収納部23に収納したコイルスプリング30の状態を示す要部拡大断面図である。同図に示すように、コイルスプリング30は、ケース10の弾発部材収納部23と、弾発部材収納部23の下面を覆うカバー80の上面とによって囲まれた矩形状のスペースに対して上下方向と幅方向の両方向に所定の遊びを持って収納され、これによってコイルスプリング30がスムーズに伸縮できるようにしている。さらにコイルスプリング30の外周面は、この実施形態の場合、ケース10の凸部27と、弾発部材収納部23の1側面(本実施形態では図6に示す右側の側面)のみに当接するように構成されている。即ちこの実施形態にかかるケース10においては、前述のように、凸部27は、弾発部材収納部23の底面の幅方向に向かって中央よりも少し右側に偏った位置に設けられているが、コイルスプリング30両端の係止部31,33も、ケース10の弾発部材係止部29と、物体押圧体60の弾発部材係止部65に係止する位置a1が、図6に示すように、少し右側で、且つカバー80の面よりも凸部27側に偏った位置(凸部27の真下の位置)に設けられているので、コイルスプリング30はその全体が少し右側で且つ凸部27側に偏った位置に付勢される。これによって、上述のように、コイルスプリング30の外周面は、ケース10の凸部27と、弾発部材収納部23の1側面(図6に示す右側の側面)のみに当接する。この当接状態は、コイルスプリング30が伸縮する際も変わらない。
【0029】
さらに凸部27の作用について説明する。即ち、弾発部材収納部23の底面に凸部27を設け、その上にコイルスプリング30の外周面を当接(弾接)すると、左右にこの外周面を支えるものが無ければ非常に不安定な状態となり、左右何れかの方向に移動しようとする。そして移動した左右何れかの側面に当接することで、安定した状態になる。これによって、コイルスプリング30の外周面を確実に2点で支持することができる。これに対して、もし凸部27を設けずに弾発部材収納部23の平面状の底面にコイルスプリング30の外周面を当接させ、且つ当該底面のみによって支持するように構成すると、コイルスプリング30が底面上に安定してしまい、左右何れの側面にも当接しない状態になる虞がある。左右何れの側面にも当接しない状態でコイルスプリング30が伸縮すると異音を発生する虞が生じる。
【0030】
次に、図1に示す状態の物体着脱機構1において、排出防止用フック40のフック43を指で押し下げた状態で、物体出入口12から物体100を挿入する。物体100が物体収納部11内に挿入されると、物体100の後方の面が物体押圧体60の押圧部63(物体押圧面67)を後方に向けて押圧し、コイルスプリング30の弾発力に抗して物体押圧体60が後方に移動する。そして物体100を完全に物体収納部11内に収納すると、図2に示すように、フック43が上昇し、物体100の前面に係止され、物体100を収納した状態を保持する。
【0031】
一方、図2に示す状態の物体着脱機構1において、排出防止用フック40のフック43を指で押し下げると、コイルスプリング30の弾発力によって付勢されていた物体押圧体60の押圧部63によって、物体100は前方に押し出され、その一部が物体出入口12から突出する。これによって物体100を容易に外部に取り出すことができる。物体着脱機構1は、図1に示す元の状態に戻る。
【0032】
ところで、物体100を物体収納部11に出し入れする際、コイルスプリング30は、上述のように、弾発部材収納部23内において伸縮するが、この物体着脱機構1においては、伸縮する何れの状態においても、図6に示すように、コイルスプリング30の外周面は常に2つの面に対してのみ当接し支持される。これによって、物体100がケース10の物体収納部11内に収納・排出される際にコイルスプリング30が伸縮動作しても、前記2つの面のみで確実に支持されることでその振動や、異音の発生を大きく減少させることができる。
【0033】
特に本実施形態においては、ケース10の弾発部材収納部23の底面に、コイルスプリング30の伸縮方向に向けて延びる凸部27を設け、弾発部材収納部23内に収納されたコイルスプリング30の外周面を、当該凸部27と、弾発部材収納部23の左右両側面の内の何れか一方の側面とに当接して支持する構成としたので、上述のように、コイルスプリング30の外周面は、伸縮の際でも、凸部27と、弾発部材収納部23内の左右両側面の内の何れか一方の側面のみに確実に当接して支持され、上述のように、異音の発生を確実に軽減できる。
【0034】
同時に、コイルスプリング30にはグリスを塗布しているので、コイルスプリング30が伸縮する際に、コイルスプリング30を構成する要素同士(隣接するコイル同士)が接触することで生じる虞のある異音を減少させることができる。
【0035】
図7は、ケース10の弾発部材収納部23に収納したコイルスプリング30の他の状態を示す要部拡大断面図である。前記図6に示す例の場合は、コイルスプリング30の外周面を、ケース10の凸部27と、弾発部材収納部23の図6に示す右側の側面のみに当接するように構成したが、図7に示す例の場合は、コイルスプリング30の外周面を、ケース10の凸部27と、弾発部材収納部23の図7に示す左側の側面のみに当接するように構成している。このように構成するため、コイルスプリング30両端の係止部31,33が、ケース10の弾発部材係止部29と、物体押圧体60の弾発部材係止部65に係止する位置a2を、図7に示すように、図6に示す位置a1よりも少し左側の位置であって、且つカバー80の面よりも凸部27の先端に近い位置に設けている。これによって、上述のように、コイルスプリング30の外周面は、ケース10の凸部27と、弾発部材収納部23の1側面(図7に示す左側の側面)のみに当接する。
【0036】
そしてこの例の場合も、物体100を物体収納部11に出し入れする際にコイルスプリング30が伸縮動作しても、前記2つの面のみで確実に支持されることでその振動や、異音の発生を大きく減少させることができる。
【0037】
図6図7に示す例では、ケース10に設けた弾発部材収納部23に収納され且つカバー80によって覆われた空間内に収納したコイルスプリング30の外周面を、当該弾発部材収納部23の底面(さらに具体的には凸部27)と、コイルスプリング30が伸縮する方向に沿う左右両側面の何れか一方に支持させる構成を示したが、さらに、コイルスプリング30の外周面は、弾発部材収納部23の左右両側面の何れか一方と、カバー80の弾発部材収納部23側を向く面の内の何れか2つの面に対してのみ支持するように構成しても良い。
【0038】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記例では、ケース10に収納する物体100として複数枚のコンパクトディスクを内蔵したマガジンを示したが、マガジン以外の各種物体(例えば各種検出装置やモジュールやリモコンやバッテリーなど)を収納するものであっても良い。また排出防止用フック40の形状や構造も種々の変更が可能であり、例えば、物体出入口12内に排出防止用フック40のフック43を突出させる代わりに、物体収納部11の底面からフック43に相当するフックを出入可能に突出させ、当該フックに物体100の底面に形成した凹部などを係止させる構成としても良い。排出防止用フック41は、要は物体収納部11に収納されている物体100を当該物体収納部11内に保持させるものであればどのような形状・構造であっても良い。
【0039】
また上記実施形態では、ケース10の弾発部材収納部23の底面にコイルスプリング30の伸縮方向に向けて延びる凸部27を設け、この凸部27にコイルスプリング30の外周面を当接(弾接)させることで、コイルスプリング30が弾発部材収納部23の左右両側面の内の何れかの側面側に移動し易い構成としたが、凸部27をカバー80の面側に設けても良い。また上記実施形態では、凸部27を弾発部材収納部23の底面の中央位置から少し左右方向にずらした位置に設けたが、中央位置に設けても良い。要はコイルスプリング30が左右何れかの側面に当接し易くすればよい。また上記実施形態ではコイルスプリング30にグリスを塗布したが、場合によってはグリスを塗布しなくても良い。
【0040】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 物体着脱機構
10 ケース
11 物体収納部
23 弾発部材収納部
27 凸部
30 コイルスプリング(弾発部材)
40 排出防止用フック
60 物体押圧体
63 押圧部
80 カバー
100 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7