(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】気泡噴出方法、気泡噴出用デバイス、および、気泡噴出装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020553380
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041260
(87)【国際公開番号】W WO2020085281
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018202368
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療分野研究成果展開事業・先端計測分析技術・機器開発プログラム」「針なし気泡注射器を用いた低侵襲網膜血栓除去新技術の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】山西 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山下 優
(72)【発明者】
【氏名】市川 啓太
(72)【発明者】
【氏名】福山 雄大
(72)【発明者】
【氏名】増田 廉
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527321(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069085(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052511(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0223185(US,A1)
【文献】Journal of the visualization society of Japan,2019年07月,Vol. 39, No. 154,p.8-13
【文献】Study on electrically-induced bubbles using dielectric-plate which has electric-field concentration structure,日本機械学会第9回マイクロ・ナノ工学シンポジウム講演論文集,2018年10月30日,30am3-PN-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡噴出用デバイスを用いた気泡噴出方法であって、
前記気泡噴出用デバイスは、
誘電体で形成された基材と、
前記基材の第1面と該第1面とは反対側の面である第2面とを貫通するように形成された気泡噴出孔と、
前記第1面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第1開口と、
前記第2面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第2開口と
、
を含み、
前記誘電体の絶縁耐力が、4MV/m以上であり、
前記気泡噴出方法は、
少なくとも前記第1開口と前記第2開口を含む部分を導電液に接触させる、基材および導電液接触工程と、
第1電極を前記第1開口側の前記導電液に接触し、第2電極を前記第2開口側の前記導電液に接触させる、導電液および電極接触工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
前記気泡噴出孔から前記導電液中に気泡を噴出する気泡噴出工程と、
を含む、
気泡噴出方法。
【請求項2】
前記気泡噴出孔が、少なくとも2個以上形成されている、
請求項1に記載の気泡噴出方法。
【請求項3】
前記第1開口のサイズと、前記第2開口のサイズが異なる、
請求項1または2に記載の気泡噴出方法。
【請求項4】
前記誘電体の絶縁耐力が、10MV/m以上である、
請求項1~3の何れか一項に記載の気泡噴出方法。
【請求項5】
前記基材が、可撓性の材料で形成されている、
請求項1~4の何れか一項に記載の気泡噴出方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の気泡噴出方法に使用される気泡噴出用デバイスであって、該気泡噴出用デバイスは、
誘電体で形成された基材と、
前記基材の第1面と該第1面とは反対側の面である第2面とを貫通するように形成された気泡噴出孔と、
前記第1面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第1開口と、
前記第2面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第2開口と、
を含
み、
前記誘電体の絶縁耐力が、4MV/m以上である、
気泡噴出用デバイス。
【請求項7】
前記気泡噴出孔が、少なくとも2個以上形成されている、
請求項6に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項8】
前記第1開口のサイズと、前記第2開口のサイズが異なる、
請求項6または7に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項9】
前記誘電体の絶縁耐力が、10MV/m以上である、
請求項6~8の何れか一項に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項10】
前記基材が、可撓性の材料で形成されている、
請求項6~9の何れか一項に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項11】
第1チャンバーおよび第2チャンバーを更に含み、
前記第1チャンバーは、
前記基材の前記第1面の少なくとも前記第1開口を含む部分と、
前記第1面に接するように配置したチャンバー第1部材と、
を含み、
前記第1チャンバーに導電液を充填することで、前記第1開口が前記導電液に接触することができ、
第2チャンバーは、
前記基材の前記第2面の少なくとも前記第2開口を含む部分と、
前記第2面に接するように配置したチャンバー第2部材と、
を含み、
前記第2チャンバーに前記導電液を充填することで、前記第2開口が前記導電液に接触することができる、
請求項6~10の何れか一項に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項12】
前記第1チャンバーに配置された第1電極と、
前記第2チャンバーに配置された第2電極と、
を含む、
請求項6~11の何れか一項に記載の気泡噴出用デバイス。
【請求項13】
請求項7~12の何れか一項に記載の気泡噴出用デバイスと、
前記気泡噴出用デバイスから気泡を噴出させるための電気出力機構と、
を含む、
気泡噴出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、気泡噴出方法、気泡噴出用デバイス、および、気泡噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のバイオテクノロジーの発展に伴い、細胞の膜や壁に孔をあけ、細胞から核を除去又はDNA等の核酸物質の細胞への導入等、細胞等の局所加工の要求が高まっている。局所加工技術(以下、「局所アブレーション」と記載することがある。)としては、電気メス等のプローブを用いた接触加工技術や、レーザー等を用いた非接触アブレーション技術などを用いた方法が広く知られている。
【0003】
しかしながら、従来の電気メス等のプローブを用いた接触加工技術においては、(1)連続高周波によって発生させたジュール熱により対象物を焼き切る性質があるため、切断面の粗さと熱による周辺組織への熱侵襲の影響が大きく、特に液相中の生体材料加工においては熱による切断面のダメージが大きい、(2)タンパク質の変性やアミド結合の寸断により、再結合や再生が困難である、(3)また持続的な加工においてはプローブへの熱変性タンパク質等の吸着や熱により発生する気泡の吸着によって、切開面の観察環境は著しく悪化し、高分解性加工は困難である、という問題があった。
【0004】
また、フェムト秒レーザー等のレーザーによる非接触加工技術においても、高密度エネルギーが局所的に当たることで切断面周囲組織の熱の影響が存在し、特に液相中の対象物の加工においては加工時に発生する熱による気泡等の発生により持続的加工が困難である等の問題があった。
【0005】
一方、細胞等への核酸物質等のインジェクション物質を導入するための局所的な物理的インジェクション技術(以下、「局所インジェクション」と記載することがある。)としては、電気穿孔法、超音波を用いたソノポレーション技術及びパーティクルガン法等が広く知られている。しかしながら、従来の電気穿孔法技術においては、電界強度により細胞膜の透過性を向上させるのに限界があり、柔軟な脂質2重膜ではなくて硬い細胞膜や細胞壁を有する対象物へインジェクションが困難であり、電極の配置などの制限により局所的な狙った場所へのインジェクションが困難である等の問題があった。また、超音波を利用したソノポレーション技術においては超音波の集束が困難であり、局所的な気泡のキャビテーションを発生させ解像度を上げることが困難である等の問題があった。更に、パーティクルガン法によるインジェクション方法においても、粒子表面に付着させた物質が粒子を打ち込む際に表面から離脱してしまい導入効率が低い等の問題があった。
【0006】
上記問題点を解決する方法(デバイス)として、導電材料で形成された芯材と、絶縁材料で形成され、前記芯材を覆い、かつ前記芯材の先端から延伸した部分を含む外郭部、及び前記外郭部の延伸した部分及び前記芯材の先端との間に形成された空隙を含む気泡噴出部材を作製し、該気泡噴出部材を溶液に浸漬させ、溶液中で高周波電圧を印加することで気泡を発生し、該気泡を加工対象物に連続的に放出することで加工対象物を切削(局所アブレーション)できることも知られている(特許文献1参照)。また、導電性材料で形成された電極と該電極を挟むように形成した気泡噴出部を、基板上に複数形成した気泡噴出チップも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/129657号公報
【文献】国際公開第2016/052511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された気泡噴出部材は、ガラス等の絶縁材料に電極を挿入し、絶縁材料と電極を加熱して引き切ることで、絶縁材料と電極の粘弾性の差により電極の周囲が絶縁材料で覆われ、且つ絶縁材料が電極の先端より延伸した状態で作製される。そのため、絶縁材料が延伸した先端部分、つまり、気泡噴出口は非常に細く且つ薄くなることから、破損し易いという問題がある。また、気泡噴出口が非常に細く且つ薄いことから、細胞等の加工対象物を加工する際に、気泡噴出口で加工対象物を傷付け易いという問題もある。
【0009】
また、特許文献2に記載された気泡噴出チップは、半導体リソグラフィの技術を用いて作製されている。そのため、任意の気泡噴出口のサイズの気泡噴出部を、任意の数だけ基板上に形成できる。そのため、特許文献1に記載されている気泡噴出部材より、破損し難く、且つ、気泡噴出口のサイズを調整し易いというメリットがある。しかしながら、特許文献2に記載されている気泡噴出チップは、半導体リソグラフィ技術により作製することから、作製工程が複雑になるという問題がある。
【0010】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、(1)誘電体で形成された基材と、基材の第1面と該第1面とは反対側の面である第2面とを貫通するように形成された気泡噴出孔と、を含む気泡噴出用デバイスを用い、(2)導電液と気泡噴出孔が接触した状態で、第1電極および第2電極に電圧を印加すると、(3)気泡噴出孔から導電液中に気泡を噴出できること、を新たに見出した。
【0011】
すなわち、本開示の目的は、従来の気泡噴出部材(気泡噴出チップ)を用いた気泡噴出方法と異なる新たな原理による気泡噴出方法、該気泡噴出方法に用いるための気泡噴出用デバイス、および、気泡噴出用デバイスを含む気泡噴出装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、以下に示す、気泡噴出方法、気泡噴出用デバイス、および、気泡噴出装置に関する。
【0013】
(1)気泡噴出用デバイスを用いた気泡噴出方法であって、
前記気泡噴出用デバイスは、
誘電体で形成された基材と、
前記基材の第1面と該第1面とは反対側の面である第2面とを貫通するように形成された気泡噴出孔と、
前記第1面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第1開口と、
前記第2面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第2開口と
を含み、
前記気泡噴出方法は、
少なくとも前記第1開口と前記第2開口を含む部分を導電液に接触させる、基材および導電液接触工程と、
第1電極を前記第1開口側の前記導電液に接触し、第2電極を前記第2開口側の前記導電液に接触させる、導電液および電極接触工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
前記気泡噴出孔から前記導電液中に気泡を噴出する気泡噴出工程と、
を含む、
気泡噴出方法。
(2)前記気泡噴出孔が、少なくとも2個以上形成されている、
上記(1)に記載の気泡噴出方法。
(3)前記第1開口のサイズと、前記第2開口のサイズが異なる、
上記(1)または(2)に記載の気泡噴出方法。
(4)前記誘電体の絶縁耐力が、10MV/m以上である、
上記(1)~(3)の何れか一つに記載の気泡噴出方法。
(5)前記基材が、可撓性の材料で形成されている、
上記(1)~(4)の何れか一つに記載の気泡噴出方法。
(6)誘電体で形成された基材と、
前記基材の第1面と該第1面とは反対側の面である第2面とを貫通するように形成された気泡噴出孔と、
前記第1面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第1開口と、
前記第2面の前記気泡噴出孔が貫通した箇所に形成された第2開口と、
を含む、
気泡噴出用デバイス。
(7)前記気泡噴出孔が、少なくとも2個以上形成されている、
上記(6)に記載の気泡噴出用デバイス。
(8)前記第1開口のサイズと、前記第2開口のサイズが異なる、
上記(6)または(7)に記載の気泡噴出用デバイス。
(9)前記誘電体の絶縁耐力が、10MV/m以上である、
上記(6)~(8)の何れか一つに記載の気泡噴出用デバイス。
(10)前記基材が、可撓性の材料で形成されている、
上記(6)~(9)の何れか一つに記載の気泡噴出用デバイス。
(11)第1チャンバーおよび第2チャンバーを更に含み、
前記第1チャンバーは、
前記基材の前記第1面の少なくとも前記第1開口を含む部分と、
前記第1面に接するように配置したチャンバー第1部材と、
を含み、
前記第1チャンバーに導電液を充填することで、前記第1開口が前記導電液に接触することができ、
第2チャンバーは、
前記基材の前記第2面の少なくとも前記第2開口を含む部分と、
前記第2面に接するように配置したチャンバー第2部材と、
を含み、
前記第2チャンバーに前記導電液を充填することで、前記第2開口が前記導電液に接触することができる、
上記(6)~(10)の何れか一つに記載の気泡噴出用デバイス。
(12)前記第1チャンバーに配置された第1電極と、
前記第2チャンバーに配置された第2電極と、
を含む、
上記(6)~(11)の何れか一つに記載の気泡噴出用デバイス。
(13)上記(7)~(12)の何れか一つに記載の気泡噴出用デバイスと、
前記気泡噴出用デバイスから気泡を噴出させるための電気出力機構と、
を含む、
気泡噴出装置。
【発明の効果】
【0014】
本出願で開示する気泡噴出用デバイスは、誘電体で形成された基材に、基材を貫通するように気泡噴出孔を形成することで簡単に作製できる。また、気泡噴出孔は基材を貫通するように形成されるため、気泡は基材の表面から噴出する。そのため、従来の気泡噴出口と異なり破損し難い。したがって、気泡噴出方法を実施する際の気泡噴出用デバイスの取り扱いの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2A乃至
図2Dは、気泡Bが噴出する原理を説明するための概略断面図である。
【
図4】
図4Aは第3の実施形態に係るデバイス1cの上面図、
図4Bは
図4AのX-X’断面図である。
図4Cおよび
図4Dは、テーパーを形成する場合の第1開口31と第2開口32のサイズの差について説明するための図である。
【
図6】
図6は、気泡噴出装置10の概略を説明するための図である。
【
図7】
図7は、気泡噴出方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は図面代用写真で、実施例1において、ハイスピードカメラで気泡Bの発生を撮影した写真である。
【
図9】
図9は図面代用写真で、
図9Aは実施例2のデバイスを上方から撮影した写真、
図9Bは電気出力後の写真で、点線の丸が成長した気泡を示す。
【
図10】
図10は図面代用写真で、
図10Aは実施例3のデバイスを用いた際の第1開口側からの写真、
図10Bは実施例4のデバイスを用いた際の第1開口側からの写真で、写真の白丸で囲ってある部分が噴出した気泡である。
【
図11】
図11は図面代用写真で、実施例5において、
図11Aは電気を出力した直後の写真、
図11Bは電気を出力してしばらくした後の写真である。
【
図12】
図12は図面代用写真で、実施例6において、
図12Aは電圧を印加する前の写真、
図12Bは450Vの電圧を印加した後の写真、
図12Cは650Vの電圧を印加した後の写真、
図12Dは750Vの電圧を印加した後の写真である。
【
図13】
図13は図面代用写真で、
図13Aは電圧を印加してしばらくした後の実施例7のデバイスの写真、
図13Bは電圧を印加してしばらくした後の実施例8の写真である。
【
図14】
図14は図面代用写真で、実施例9において、
図14Aは、電圧を印加する前の第1開口側の写真で、
図14Bは電圧を印加した後の写真である。
【
図15】
図15は図面代用写真で、実施例10で気泡を衝突させたシリコンウェハの写真である。
【
図16】
図16は、実施例11において、各種デバイスの気泡噴出孔3の直径(孔径;横軸)と、気泡が噴出し始めた時の印加電圧(縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例11において、有限要素法により解析した、気泡を噴出した時の気泡噴出孔3の電界値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、気泡噴出方法、気泡噴出用デバイス(以下、単に「デバイス」と記載することがある。)、および、気泡噴出装置について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。また、本明細書に記載した数値は、当該数値のみを厳密に意味するのではなく、本出願で開示する効果を奏する範囲内であれば、±の誤差を含んでもよい。「約」と記載された場合も同様に、当該数値のみを厳密に意味するのではなく、本出願で開示する効果を奏する範囲内であれば、±の誤差を含んでもよい。
【0017】
(デバイスの第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係るデバイス1aについて説明する。
図1Aはデバイス1aの上面図、
図1Bは
図1AのX-X’断面図である。デバイス1aは、誘電体で形成された基材2と、気泡噴出孔3とを含む。気泡噴出孔3は、基材2の第1面21と該第1面21とは反対側の面である第2面22とを貫通するように形成され、第1面21には第1開口31、第2面22には第2開口32が形成されている。
【0018】
デバイス1aの構成について詳細に説明する前に、デバイス1aを用いて気泡が噴出する原理について先ず説明する。
図2A乃至
図2Dは、気泡Bが噴出する原理を説明するための概略断面図である。なお、デバイス1aの構成要素は同じであるので、
図2B乃至
図2Dにおいては、気泡B以外の符号の記載は省略する。
【0019】
図2Aに示すように、気泡を噴出する前に、先ず、少なくとも第1開口31および第2開口32の周囲を導電性の液体である導電液Lに接触させる。導電液Lは、毛管力により気泡噴出孔3の中に浸透する。次に、第1電極4aを第1開口31側の導電液Lに接触し、第2電極4bを第2開口32側の導電液Lに接触し、電気出力機構(図示省略)と第1電極4aおよび第2電極4bとを電線等で接続する。次に、第1電極4aおよび第2電極4bに電圧を印加すると、
図2Bに示すように、気泡噴出孔3の周辺部に気泡Bが発生し、
図2Cに示すように、発生した気泡Bが気泡噴出孔3を塞ぐように成長する。そして、更に成長を続けた気泡Bは、
図2Dに示すように、導電液L中に噴出する。
【0020】
デバイス1aを用いて、
図2A乃至
図2Dに示すように気泡Bが噴出する理由としては、基材2は電気を通さないが、電気を蓄積することで気泡噴出孔3の周囲に電界が発生しているためと考えられる。そのため、基材2は、電流は流れない、或いは、無視できるほど小さく、且つ、電界が発生する材料である誘電体で形成することが望ましい。基材2を構成する材料としては、公知の誘電体材料、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、ガラス、セラミック、マイカ(雲母)等が挙げられる。なお、後述する気泡噴出孔3の第1開口31または第2開口32のサイズが比較的大きいと、気泡噴出孔3から気泡Bを噴出するためには、比較的大きな電圧を印加することになる。そして、印加される電圧によって、絶縁破壊が生じると、気泡噴出孔3(第1開口31及び/又は第2開口32)の大きさが変化したり、基材2が損傷する恐れがある。したがって、基材2を構成する材料としては、基材2の厚さ、及び/又は、気泡噴出孔3の大きさにもよるが、例えば、絶縁耐力が4MV/m以上、5MV/m以上、6MV/m以上、7MV/m以上、8MV/m以上、9MV/m以上、10MV/m以上の材料が挙げられる。
【0021】
絶縁耐力が10MV/m以上の材料としては、例えば、ポリイミド(23MV/m)、ポリスチレン(20~28MV/m)、ガラス(20~40MV/m)、エポキシ樹脂(充填剤無し、11.8~19.6MV/m)、エポキシ樹脂(シリカ充填、11.8~19.6MV/m)、エポキシ樹脂(グラスファイバー充填、11.8~15.7MV/m)等が挙げられるが、勿論、例示した以外の材料であってもよい。なお、絶縁耐力に関しては、特に上限はない。
【0022】
基材2の厚さ、換言すると、気泡噴出孔3の貫通方向の長さは、気泡を噴出できる範囲内であれば特に制限はないが、例えば、下限値として0.1μm以上、1μm以上、とすることができる。また、上限値としては、1cm以下、5mm以下、1mm以下、500μm以下、200μm以下、100μm以下、とすることができる。なお、基板2の厚さは均一であっても、均一でなくてもよい。基板2の厚さが均一でない場合は、上記の下限値と上限値は気泡噴出孔3を形成する部分の基材の厚さとし、気泡噴出孔3を形成する部分以外の基材2の厚さは、上記の上限値と下限値から外れた範囲であってもよい。
【0023】
また、基材2の材料および厚さの組み合わせにより変わるものの、基材2が可撓性を有するように形成してもよい。基材2が可撓性を有すると、デバイス1aを用いて加工対象物をアブレーションする際に、加工対象物が、例えば、植物や動物皮膚等、湾曲していても、デバイス1aを加工対象物に接触できるという効果を奏する。可撓性が高い材料としては、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0024】
気泡噴出孔3の形状は、気泡を噴出できれば特に制限はない。気泡噴出孔3の第1面21或いは第2面22と平行となる断面視、例えば、第1開口31と第2開口32の形状で見た場合、形状としては、円形、楕円形、角数が3以上の多角形等が挙げられる。また、第1面21或いは第2面22と垂直となる断面視、例えば、
図1Bに示す断面視では、第1開口31と第2開口32を結ぶ線は、
図1Bに示す例のように直線でもよいし、曲線または階段状等の非直線であってもよい。なお、
図1A及び
図1Bに示す例では、第1開口31と第2開口32の形状は同じ、つまり、気泡噴出孔3は直径が同じ円筒形状であるが、第1開口31と第2開口32の形状は異なっていてもよい。
【0025】
第1開口31および第2開口32のサイズは、毛管力により導電液Lが気泡噴出孔3内に入り込むことができ、気泡を噴出できれば特に制限はない。気泡噴出孔3が、第1開口31および第2開口32が同じ大きさの円、つまり、気泡噴出孔3が円筒形と仮定した場合、第1開口31および第2開口32の直径の下限値は、例えば、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上とすることができる。また、第1開口31または第2開口32が大きすぎると、印加する電圧が大きくなることから、第1開口31および第2開口32の直径の上限値は、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下とすることができる。なお、第1開口31および第2開口32の形状が円形以外の場合は、当該円形以外の形状の外接円の直径を、上記の直径に置き換えればよい。なお、第1開口31および第2開口32のサイズを小さくする場合は、基材2を必要に応じて親水化処理をすることで、導電液Lが気泡噴出孔3に入りやすくしてもよい。親水化処理は、プラズマ処理等、公知の方法で処理をすればよい。
【0026】
気泡噴出孔3は、基材2の第1面21と第2面22とを貫通するように形成されていれば形成方法に特に制限はない。例えば、ドリルを用いて貫通孔を形成する方法、マスクを被せてエッチングする方法等、公知の方法により形成できる。
【0027】
(デバイスの第2の実施形態)
次に、
図3を参照して、第2の実施形態に係るデバイス1bについて説明する。
図3Aはデバイス1bの上面図、
図3Bは
図3AのX-X’断面図である。デバイス1bは、気泡噴出孔3が少なくとも2以上形成されている点で第1の実施形態に係るデバイス1aと異なり、その他の点は、デバイス1aと同様である。なお、
図3Aおよび
図3Bでは、気泡噴出孔3を直列に3個配置した例を示しているが、気泡噴出孔3の数に制限はなく、また、気泡噴出孔3の配置も目的に応じて適宜決めればよい。デバイス1bを用いると、加工対象物の異なる位置に同時に気泡を噴出できる。
【0028】
なお、気泡噴出部を複数形成することで、加工対象物の異なる位置に同時に気泡を噴出することは、特許文献2に記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されているチップは、フォトリソグラフィ技術を用いて作製している。そのため、製造工場でチップを製造する際には、任意の形状のフォトマスクを用いることで、気泡噴出口の配置等を調整できるが、使用現場で気泡噴出部の数や配置を変更することは困難である。一方、デバイス1bは、特許文献2と気泡噴出の原理(装置)が異なることに加え、気泡噴出孔3はドリル等を用いて簡単に形成できる。したがって、使用現場において、必要に応じて気泡噴出孔3の配置を調整できる。
【0029】
(デバイスの第3の実施形態)
次に、
図4を参照して、第3の実施形態に係るデバイス1cについて説明する。
図4Aはデバイス1cの上面図、
図4Bは
図4AのX-X’断面図である。デバイス1cは、第1開口31と第2開口32のサイズを異なるように作製した点で、第1の実施形態に係るデバイス1aと異なる。なお、本明細書において、「サイズ」とは、円形の場合は直径、円径以外の場合は外接円の直径を意味する。
図4Bに示す例では、第1開口31のサイズが第2開口32のサイズより小さいが、第1開口31のサイズが第2開口32のサイズより大きくてもよい。なお、本明細書において、第1開口31と第2開口32のサイズが異なるように形成した気泡噴出孔3を「テーパーあり」と記載することがある。また、第1開口31と第2開口32の形状およびサイズが同じ円筒状、角柱状の気泡噴出孔3のことを「テーパー無し」と記載することもある。
【0030】
後述する実施例に示すとおり、第1開口31と第2開口32の形状がほぼ同じデバイス1aの場合、第1電極4aおよび第2電極4bの一方を陽極、他方を陰極とした場合、気泡噴出孔3で成長した気泡Bは、陽極から陰極方向に射出される。一方、第3の実施形態に係るデバイス1cは、陽極と陰極方向には関係なく、第1開口31または第2開口32のサイズが小さい方から気泡が噴出する。これは、第1開口31または第2開口32のサイズの小さい方の開口部分は、サイズの大きい開口部分より抵抗が大きく、大きな電圧がかかるため、サイズの小さい開口方向に気泡が生成するためと考えられる。
【0031】
テーパーありの気泡噴出孔3の形成は、テーパーが形成できれば特に制限はない。例えば、3Dプリンターを用いて作製;テーパー形状の鋳型を形成し、熱・光・紫外線等の硬化性樹脂、または、溶融した熱可塑性樹脂を鋳型に流し込み、樹脂が硬化後に鋳型を分離:レーザー切削加工;等が挙げられる。
【0032】
図4Cを参照して、テーパーを形成する場合の第1開口31と第2開口32のサイズの差について説明する。
図4Cは、第1開口31が円形、第2開口32が第1開口31より直径が大きな円形で、第1開口31の円の中心と第2開口32の円の中心とを結んだ仮想線pが、第2開口32の仮想平面32aと略直交する場合の例を示している。
図4Cに示す例において、第2開口32の仮想平面32a(断面視で仮想線32a)と気泡噴出孔3の壁面33(断面視で壁面線33)との角度をZと規定した場合、Zの上限値は90°より小さければよい。また、Zの下限値は、原理上は0°より大きければよいが、例えば、1°、5°、30°、60°とすることができる。
【0033】
上記の角度に代え、第1開口31の面積を1とした場合、第2開口32の面積は1より大きく、例えば、10,000以下、5,000以下、1,000以下、500以下、100以下、50以下とすることができる。第1開口31と第2開口32の形状が円形以外の場合、例えば、楕円形、多角形等の場合は、第1開口31と第2開口32の面積比は、円形の面積比と同じ比とすることができる。
【0034】
図4Cに示す例では、気泡噴出孔3は、仮想線pを中心に断面視で対称であるが、気泡噴出孔3のテーパーの形状は、
図4Cに示す例に限定されない。例えば、
図4Dに示すように、気泡噴出孔3は、断面視で左右非対称であってもよい。
【0035】
デバイス1cの第1開口31と第2開口32のサイズは、小さい方の開口のサイズを、第1の実施形態のデバイス1aにおいて例示した第1開口31および第2開口32のサイズとすることができる。また、デバイス1cの厚さも、第1の実施形態のデバイス1aにおいて例示した厚さとしてもよいが、デバイス1aと異なり、デバイス1cはサイズの小さい方の開口に電界が集中し易くなる。したがって、第2開口32と壁面33の角度Z(或いは、第1開口31と第2開口32の直径比又は面積比)により異なるものの、気泡が噴出できる範囲内であれば、デバイス1aより基材2を厚くしてもよい。
【0036】
(デバイスの第4の実施形態およびその変形例)
次に、
図5A乃至
図5Dを参照して、第4の実施形態に係るデバイス1dおよびその変形例について説明する。
図5Aはデバイス1dの上面図、
図5Bは
図5AのX-X’断面図である。また、
図5Cはデバイス1dの変形例の上面図、
図5Dは
図5CのX-X’断面図である。デバイス1dおよびその変形例は、導電液Lを充填するための第1チャンバー5aおよび第2チャンバー5bを更に具備する点で、第1の実施形態のデバイス1aと異なり、その他の点は、第1の実施形態と同じである。
【0037】
図5A及び
図5Bに示す例では、デバイス1dの第1チャンバー5aは、基材2の第1面21の少なくとも第1開口31を含む部分と、第1面21に接するように配置したチャンバー第1部材51aとを含む。チャンバー第1部材51aは、第1チャンバー5aが第1開口31を含めば、配置する位置に特に制限はなく、第1面21の任意の箇所に配置できる。第2チャンバー5bは、基材2の第2面22の少なくとも第2開口32を含む部分と、第2面22に接するように配置したチャンバー第2部材51bとを含む。チャンバー第2部材51bは、第2チャンバー5bが第2開口32を含めば、配置する位置に特に制限はなく、第2面22の任意の箇所に配置できる。第1チャンバー5aおよび第2チャンバー5bに導電液Lを充填することで、第1開口31および第2開口32が導電液Lに接触することができる。
【0038】
チャンバー第1部材51aおよびチャンバー第2部材51bは、電気的および化学的に不活性な材料が挙げることができる。例えば、ガラス、サファイア、セラミック、樹脂、ゴム、エラストマー、SiO2、SiN、Al2O3などを用いることができる。チャンバー第1部材51aおよびチャンバー第2部材51bは接着剤等を用いて、基材2に液密となるように接着すればよい。
【0039】
なお、
図5Aおよび
図5Bに示す例では、第1チャンバー5aまたは第2チャンバー5bの何れかを、表面張力により充填した導電液Lが漏れ出さない程度の大きさにしてもよい。その場合、導電液Lを充填した状態で加工対象物に当接させ、加工対象物に気泡を噴出できるので、任意の場所で任意の加工対象物に気泡を噴出できるという効果を奏する。
【0040】
次に、
図5Cおよび
図5Dに示すデバイス1dの変形例は、箱体に基材2を挿入している点、および、
図5Aおよび
図5Bに示すデバイス1dと使用方法が異なる以外は、
図5Aおよび
図5Bに示すデバイス1dと同じである。より具体的には、デバイス1dの変形例の使用方法は、第1チャンバー5aおよび第2チャンバーの上方から導電液Lを充填し、気泡が噴出する方向に加工対象物を上方から挿入する点で、デバイス1dと異なる。なお、
図5A乃至
図5Dから明らかなように、本明細書において、「チャンバー第1部材51a」および「チャンバー第2部材51b」と記載した場合、「チャンバー第1部材51a」と「チャンバー第2部材51b」は別部材、および、単一部材を区分した部分の両方を意味する。
【0041】
なお、
図5A乃至
図5Dでは、図示は省略するが、第1チャンバー5aに第1電極、第2チャンバー5bに第2電極が配置されてもよい。その場合、第1電極はチャンバー第1部材51aまたは第1面21の何れかで、導電液Lを充填した際に導電液Lと接触できる場所であれば特に制限はない。同様に、チャンバー第2部材51bまたは第2面22の何れかで、導電液Lを充填した際に導電液Lと接触できる場所に、第2電極を配置してもよい。
【0042】
上記に例示したデバイス1a乃至デバイス1d(変形例)は、単なる例示であって、例示した実施形態を組み合わせてもよい。例えば、第3の実施形態のテーパーあり気泡噴出孔3を、第2の実施形態のデバイス1bおよび第4の実施形態のデバイス1dに採用してもよい。また、第4の実施形態の第1チャンバー5aおよび第2チャンバー5bを、第2の実施形態のデバイス1bおよび第3の実施形態のデバイス1cに採用してもよい。また、第1乃至第3の実施形態のデバイス1a~cの第1面21に第1電極4aを配置し、第2面22に第2電極4bを配置してもよい。その他、本出願で開示する目的が達成できる範囲であれば、適宜変更してもよい。
【0043】
(気泡噴出装置の実施形態)
図6を参照して、気泡噴出装置10の実施形態について説明する。
図6は、気泡噴出装置10の概略を説明するための図である。気泡噴出装置10は、気泡噴出用デバイス1と電気出力機構6を組み合せることで作製できる。なお、
図6では、気泡噴出用デバイス1aを用いた例を示している。電気出力機構6は、電源装置61、第1電極4a、第2電極4b、電源装置61と第1電極4aおよび第2電極4bとで回路を形成するための電線63を少なくとも含んでいればよい。なお、第1電極4aおよび第2電極4bを、デバイス1の構成要素として配置した場合は、電気出力機構6として、第1電極4aおよび第2電極4bを含まなくてもよい。
【0044】
気泡噴出装置10は、必要に応じて、無誘導抵抗64、図示しない電圧増幅回路、入出力ポート(DIO;Digital Input Output)65、電源装置61を制御するPC等の制御装置66等を設けてもよい。電気出力機構6は、上記の構成要素を準備し作製してもよいし、従来の電気メス用電気回路に無誘導抵抗64や入出力ポート65等を組み込むことで、作製してもよい。
【0045】
第1電極4aおよび第2電極4bを形成する導電材料としては、電気を通し電極として使用できるものであれば特に制限はないが、金属で、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等、これらにスズ、マグネシウム、クロム、ニッケル、ジルコニウム、鉄、ケイ素などを少量加えた合金等が挙げられる。
【0046】
電源装置61としては、一般商用交流電源装置を用いることができる。電気出力機構6から、第1電極4aおよび第2電極4bに出力する電流、電圧及び周波数は、気泡噴出孔3から導電液L中に気泡を噴出できれば特に制限はない。例えば、電流は、1mA~500mA、または50mA~200mAとして、気泡をうまく生成できないことや基材2が絶縁破壊することを防止するようにしてよい。電圧は、例えば、200V~4000V、または、600V~1800Vとして、気泡生成が困難となることや基材2が絶縁破壊することを防止するようにしてよい。パルス幅は、500ns~1msが好ましく、1μs~100μsがより好ましい。パルス幅が500nsより短いと気泡を噴出することができず、1ms以上だと気泡が適切に噴出されない。なお、電流、電圧、パルス幅等は、基材2の材料および厚さ、第1開口31、第2開口32の大きさ等により、適宜調整すればよい。
【0047】
(気泡噴出方法の実施形態)
図6および
図7を参照して、気泡噴出方法の実施形態について説明する。
図7は、気泡噴出方法の手順を示すフローチャートである。気泡噴出方法は、基材および導電液接触工程(S100)、導電液および電極接触工程(S110)、電圧印加工程(S120)、気泡噴出工程(S130)、を含んでいる。
【0048】
基材および導電液接触工程(S100)では、デバイス1aの少なくとも第1開口31と第2開口32を含む部分を導電性の導電液Lに接触させる。
図6に示す例では、加工対象物7に導電液Lを先ず滴下し、デバイス1aを導電液Lの上方に配置し、更に、導電液Lをデバイス1aに滴下すればよい。なお、デバイス1として、第1および第2チャンバー付きのデバイスを用いた場合は、第1チャンバーおよび第2チャンバーに導電液Lを充填すればよい。導電液Lは、電気が通れば特に制限はなく、例えば、水、水に金属塩等を溶解した溶液等が挙げられる。
【0049】
導電液および電極接触工程(S110)では、第1電極4aを第1開口31側の導電液Lに接触し、第2電極4bを第2開口32側の導電液Lに接触させる。なお、第1電極4aおよび第2電極4bを予め具備しているデバイスを用いた場合、或いは、第1チャンバーに第1電極4aを予め配置し第2チャンバーに第2電極4bを予め配置した場合には、基材および導電液接触工程(S100)、および、導電液および電極接触工程(S110)が、同時に実施される場合もある。したがって、本明細書において、『「基材および導電液接触工程(S100)」と「導電液および電極接触工程(S110)」とを含む』と記載した場合は、「基材および導電液接触工程(S100)」と「導電液および電極接触工程(S110)」とを別々に実施する場合と同時に実施する場合を含む。
【0050】
電圧印加工程(S120)では、第1電極4aと第2電極4bに電圧を印加する。そして、気泡噴出工程(S130)では、気泡噴出孔3で成長した気泡が噴出する。
【0051】
特許文献1および特許文献2に記載のとおり、微細な気泡を加工対象物に噴出することで、加工対象物を切削(局所アブレーション)したり、インジェクション物質を加工対象物に導入(局所インジェクション)することができる。また、後述する実施例に示す通り、実施形態に係るデバイスを用いることで、シリコン基板を切削できた。したがって、気泡噴出装置10は、例えば、局所アブレーション装置、局所インジェクション装置として用いることができる。また、導電液としてめっき液を用いた場合、気泡噴出装置10はめっき装置として用いることができる。また、気泡噴出方法は、例えば、局所アブレーション方法、局所インジェクション方法、めっき方法として用いることができる。
【0052】
加工対象物7としては、上記のとおり、例えば、局所アブレーション、局所インジェクション、めっきすることができるものであれば特に制限はない。例えば、ヒトまたは非ヒト動物の組織から単離した幹細胞、皮膚細胞、粘膜細胞、肝細胞、膵島細胞、神経細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨細胞、筋細胞、卵細胞等の動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌、酵母、カビなどの細胞類;米や植物細胞等の比較的固い生体試料;シリコン、ガラスエポキシ、ポリエステル、ポリイミド、BTレジン、及び熱硬化型ポリフェニレンエーテル等の樹脂類を用いた樹脂基板;アルミナ(セラミックス)基板等の無機材料を用いた無機基板;シリコンウェハ、アルミや銅等の金属基板;前記金属基板の上に絶縁層、さらにその上に導体である銅箔を重ねたメタルベース基板;等が挙げられる。
【0053】
以下に実施例を掲げ、各実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単にその具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は、発明の範囲を限定したり、あるいは制限するものではない。
【実施例】
【0054】
<実施例1>
以下の手順により、デバイスおよび気泡噴出装置を作製し、作製した気泡噴出装置を用いて気泡噴出方法を実施した。
【0055】
[デバイスの作製]
基材2には、ポリイミド(アズワン株式会社製ポリイミドテープ)フィルム(厚さ30μm)を用い、UVレーザー(株式会社キーエンス製MD-U)で直径約25μmの略円筒状の気泡噴出孔3を形成した。次に、箱型のチャンバー部材(Formlabs社製アクリル樹脂)に、基材2を
図5Dに示すように配置することで、第1チャンバーおよび第2チャンバーを含む実施例1のデバイスを作製した。
【0056】
[気泡噴出装置の作製]
銅線(EggsSTORE,直径2mm)を用いて第1電極4a、第2電極4bを作製した。電源装置には汎用電気メス用電源Hyfrecator2000(ConMed(株))を用い、作製した第1電極4aと第2電極4bとを電線を用いて電気的に接続することで、気泡噴出装置10を作製した。
【0057】
[気泡噴出方法の実施]
作製したデバイスの第1チャンバー5aおよび第2チャンバー5bに、導電液(0.9wt%塩化ナトリウム水溶液)を充填した。また、第1電極4aを第1チャンバー5aの導電液と接触するように挿入し、第2電極4bを第2チャンバー5bの導電液と接触するように挿入した。次に、電源装置の出力条件を、印加電圧800V、電圧印加回数1(回)、パルス幅約1μsに設定し、第1電極4aと第2電極4bに電気を出力した。気泡の噴出は、ハイスピードカメラ(VW-9000,Keyence社製)を用いて観察した。
【0058】
図8は、ハイスピードカメラで気泡Bの発生を撮影した写真である。写真中の破線矢印が気泡噴出孔3の第1開口(Open)を示し、実線矢印が気泡を示す。各写真の下側の数値は、電気出力後の時間を表す。0~4の写真から明らかなように、実施例1で作製したデバイスを用いることで、気泡噴出孔3の第1開口(Open)から気泡が噴出することを確認した。なお、第1開口と第2開口のサイズが同じ場合は、写真に写っている開口を第1開口とした。以下の実施例も同様である。また、以下の実施例では記載は省略するが、各実施例の目的に応じてカメラの撮影確度は適宜調整した。
【0059】
<実施例2>
次に、気泡噴出孔3を複数形成したデバイスで気泡噴出実験を行った。
[デバイスの作製]
気泡噴出孔3の直径が約100μm、隣り合う気泡噴出孔3同士の間隔が約600μmとなるように気泡噴出孔3を3カ所に作製した以外は、実施例1と同様の手順でデバイスを作製した。
【0060】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例2で作製したデバイスを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図9Aは実施例2のデバイスを上方から撮影した写真、
図9Bは電気出力後の写真で、点線の丸が成長した気泡を示す。
【0061】
図9Bに示すように、生成した気泡が3つの開口部分を覆うように成長し、その後、気泡が噴出したことを確認した。以上の結果より、気泡噴出孔3を複数形成したデバイスを用いて気泡を噴出できることを確認した。
【0062】
<実施例3および4>
次に、気泡噴出孔3のテーパーが、気泡噴出に与える影響について確認する実験を行った。
[デバイスの作製]
先ず、3Dプリンターを用いて、
図4Cに示す角度Zが55°(実施例3)、70°(実施例4)となる円錐状の鋳型を作製した。次に、作製した鋳型にPDMS(東レ・ダウコーニング社製Sylgard 184)を流し込み硬化し、鋳型を剥離することで、実施例3および実施例4のデバイスを作製した。作製したデバイスのサイズは以下の通りであった。
[実施例3]
・テーパーの角度Z:55°
・厚さ:5mm
・第1開口の直径:100μm
・第2開口の直径:6mm
[実施例4]
・テーパーの角度Z:70°
・厚さ:3mm
・第1開口の直径:100μm
・第2開口の直径:2mm
【0063】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例3および実施例4で作製したデバイスを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図10Aは実施例3のデバイスを用いた際の第1開口側からの写真、
図10Bは実施例4のデバイスを用いた際の第1開口側からの写真で、
図10Aでは矢印、
図10Bでは写真の白丸で囲ってある部分が噴出した気泡である。写真に示すように、実施例3および実施例4の何れのデバイスにおいても、気泡の噴出を確認した。また、第1電極4aと第2電極4bを入れ替え、つまり、陽極と陰極を入れ替えて実験を行っても、サイズが小さい第1開口から気泡が噴出することを確認した。
【0064】
後述する実施例に示すとおり、デバイスを厚くするほど、気泡を噴出するための電圧は大きくなる。換言すると、同じ電気出力条件では、デバイスが厚くなるほど、気泡が噴出し難くなる。一方、実施例3および実施例4のデバイスは、第1開口のサイズ及び電気出力が同じ条件で、実施例4のデバイスの厚さ(3mm)と比較して、実施例3のデバイスの方が厚い(5mm)にもかかわらず、実施例3のデバイスの方が、より大きめの気泡を生成した。以上の結果より、気泡噴出孔3のテーパーの角度を大きく(第1開口に対する第2開口のサイズ比を大きく)すると、気泡を噴出し易くなることを確認した。
【0065】
<実施例5>
次に、気泡噴出孔3の形状を変えて気泡噴出実験を行った。
[デバイスの作製]
ドリルに代え、カッターを用いて加工した以外は、実施例1と同様の手順で、第1開口および第2開口が略正方形のデバイスを作製した。第1開口および第2開口の1辺は、約500μmだった。
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例5のデバイスを用いた以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図11Aは電気を出力した直後の第1開口側からの写真、
図11Bは電気を出力してしばらくした後の第1開口側からの写真である。
【0066】
図11Aの〇で囲ってある部分に示すように、気泡は電界が集中し易い角部から発生し、
図11Bに示すように第1開口全体を覆うように成長し、その後、気泡を噴出したことを確認した。以上の結果より、気泡噴出孔3の形状(第1開口および第2開口)が多角形でも気泡が噴出することを確認した。また、気泡が噴出する際には、気泡噴出孔3の周囲、特に電界が集中し易い部分から発生した気泡が成長し、第1開口全体を覆った後に、気泡が噴出されることを確認した。
【0067】
<実施例6>
次に、気泡噴出孔(第1開口)の大きさと印加する電圧の関係を調べる実験を行った。
[デバイスの作製]
ドリルの形状を変えた以外は、実施例1と同様の手順で、第1開口および第2開口が略円形のデバイスを作製した。第1開口および第2開口の直径は、約200μmだった。
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例5のデバイスに代え、実施例6のデバイスを用い、印加する電圧を450V、650V、750Vに変化させた以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図12Aは電圧を印加する前の第1開口側からの写真、
図12Bは450Vの電圧を印加した後の第1開口側からの写真、
図12Cは650Vの電圧を印加した後の第1開口側からの写真、
図12Dは750Vの電圧を印加した後の第1開口側からの写真である。
【0068】
図12Aの破線の白丸で囲ってある部分が、第1開口に相当する。
図12Aから明らかなように、電気を出力する前は、気泡噴出孔3内には導電液が充填されていた。そして、
図12B乃至
図12Dに示すように、印加する電圧を大きくするにしたがって、気泡噴出孔3内の導電性液が小さくなったことから、気泡噴出孔3の周辺部から気泡(写真中の導電液の周囲の黒い部分)が成長したことを確認した。そして、750Vの電圧を印加した場合には、
図12Dに示すように気泡噴出孔3内は全て気泡で覆われ、気泡の噴出も確認した。一方、
図12Bの450V、
図12Cの650Vを印加した場合には、気泡は噴出されなかった。
【0069】
以上の結果より、第1開口のサイズが大きいと、気泡噴出孔3を気泡で覆い、更に気泡を噴出するために必要な電圧も大きくなることを確認した。したがって、加工対象物を加工する際に必要な気泡噴出孔3(第1開口)のサイズに応じて、適宜電圧を調整すればよいことを確認した。
【0070】
<実施例7および8>
次に、基材2の厚さ(気泡噴出孔3の長さ)と印加する電圧の関係を調べる実験を行った。
[デバイスの作製]
基材2の材料としてスチロール樹脂(株式会社タミヤ製透明プラバン)を用い、基材2の厚さが200μm(実施例7)と、300μm(実施例8)の2種類を準備した。ドリルを用い、直径200μmの略円筒状の気泡噴出孔3を形成した。
【0071】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例7および8のデバイスを用い、印加する電圧を1200Vとした以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図13Aは電圧を印加してしばらくした後の実施例7のデバイスの第1開口側からの写真、
図13Bは電圧を印加してしばらくした後の実施例8のデバイスの第1開口側からの写真である。
【0072】
図13Aおよび
図13Bに示すように、基材2が厚い
図13Bの方が、気泡噴出孔3の内部に残留している導電液が多い、換言すると、気泡噴出孔3の周囲から成長した気泡(写真の黒部分)が少なかった。なお、印加する電圧を1500Vまで上げた場合は、実施例7および8とも、気泡の噴出を確認した。
【0073】
以上の結果より、基材2を厚く(気泡噴出孔3が長い)すると、気泡噴出孔3を気泡で覆い、更に気泡を噴出するために必要な電圧も大きくなることを確認した。したがって、基材2の厚さは、印加する電圧等の条件に応じて、適宜調整すればよいことを確認した。
【0074】
<実施例9>
次に、基材2の種類を変えて実験を行った。
[デバイスの作製]
基材2の材料としてガラス(松浪硝子工業株式会社製MICRO COVER GLASS no.1)、を用い、UVレーザーを用いて気泡噴出孔3を形成した。なお、UVレーザー加工は熱の影響で、気泡噴出孔3はテーパーを付けた形状となった。第1開口の直径は約70μm、第2開口の直径は約200μmであった。
【0075】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例9のデバイスを用い、実施例1と同様の手順で気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。
図14Aは、電圧を印加する前の第1開口側から撮影した写真ある。なお、写真中の丸が第1開口で、第1開口の周囲の変色した箇所は熱の影響を受けた部分で、変色した箇所の外周が第2開口の大きさに相当する。
図14Bは電圧を印加した後の第1開口側から撮影した写真で、破線で囲った部分が第1開口を覆うように成長した気泡である。その後、気泡の噴出を確認した。
【0076】
以上の結果より、基材2として、樹脂以外の誘電体材料を用いて、気泡を噴出できることを確認した。
【0077】
<実施例10>
次に、加工対象物の切削実験を行った。
[デバイスの作製]
タングステン線を用いた刺突により、直径約100μmの気泡噴出孔を形成した以外は、実施例1と同様の手順によりデバイスを作製した。
【0078】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例10のデバイスを用い、実施例1と同様の手順で気泡噴出装置を作製した。次に、気泡噴出方法は、出力を2000Vとし、気泡噴出孔の前にシリコンウェハ((株)松浪製作所製4 inch 厚さ525±25μm、片面ミラーウェーハ)を配置し、シリコンウェハの位置をずらしながら、複数回電圧を印加した以外は、実施例1と同様の手順で実施した。
【0079】
図15は、実施例10で気泡を衝突させたシリコンウェハの写真で、矢印で示す箇所がシリコンウェハに形成された孔である。以上の結果より、実施形態に係るデバイス、気泡噴出装置、および、気泡噴出方法は、加工対象物の切削等に使用できることを確認した。
【0080】
<実施例11>
次に、基材2の厚さ(気泡噴出孔3の長さ)および気泡噴出孔3の直径を変えたデバイスを準備し、気泡が噴出した時の気泡噴出孔3の電界値を調べた。
[デバイスの作製]
厚さが25μm、50μm、75μmの基材2を準備し、それぞれの基材2に、直径が約100μm、約200μm、約300μm、約400μmとなるように気泡噴出孔3を形成した以外は、実施例1と同様の手順によりデバイスを作製した。
【0081】
[気泡噴出装置の作製および気泡噴出方法の実施]
次に、実施例1のデバイスに代え、実施例11で作製した厚さおよび気泡噴出孔の直径が異なる各種デバイスを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、気泡噴出装置を作製し、気泡噴出方法を実施した。なお、気泡噴出方法は、作製したデバイス毎に印加電圧を変え、気泡が噴出し始めた時の印加電圧を調べた。
【0082】
図16は、各種デバイスの気泡噴出孔3の直径(孔径;横軸)と、気泡が噴出し始めた時の印加電圧(縦軸)との関係を示すグラフである。
図16に示すとおり、気泡噴出孔3の直径が小さいほど低電圧で気泡を噴出できること、および、基材2の厚さが薄いほど、低電圧で気泡を噴出できることを確認した。
【0083】
次に、各種デバイスについて、デバイスの厚さ、気泡噴出孔3の孔径、および、気泡が噴出し始めた時の印加電圧に基づき、有限要素法により気泡を噴出した時の気泡噴出孔3の電界値を解析した。なお、有限要素法の解析ソフトウェアは、COMSOL Multiphysics(登録商標)を使用した。
図17は、解析した結果を示す。
図17に示すとおり、基材2の厚さと気泡噴出孔3の大きさにより異なるものの、約4MV/m以上の電界を気泡噴出孔3に発生すると、気泡噴出孔3から気泡を噴出できることを確認した。また、
図16および
図17に示す結果から、基材2として絶縁耐力が小さい材料を使用する場合は、基材2を厚くすればよいことも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本出願で開示する気泡噴出用デバイスは、誘電体で形成された基材に、基材を貫通するように気泡噴出孔を形成することで簡単に作製できる。また、気泡噴出孔は基材を貫通するように形成されるため、気泡は基材の表面から噴出する。そのため、従来の気泡噴出口と異なり破損し難い。したがって、半導体製造分野、情報処理分野、畜産・農林水産分野等、局所加工が必要な分野において有用である。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b…気泡噴出用デバイス、2…基材、3…気泡噴出孔、4a…第1電極、4b…第2電極、5a…第1チャンバー、5b…第2チャンバー、6…電気出力機構、7…加工対象物、10…気泡噴出装置、21…第1面、22…第2面、31…第1開口、32…第2開口、33…壁面(壁面線)、51a…チャンバー第1部材、51b…チャンバー第2部材、61…電源装置、63…電線、64…無誘導抵抗、65…入出力ポート(DIO;Digital Input Output)、66…制御装置、B…気泡、L…導電液、Z…角度