(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】離着陸システム
(51)【国際特許分類】
B64F 1/36 20240101AFI20240405BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240405BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240405BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20240405BHJP
B64U 10/20 20230101ALI20240405BHJP
B64U 70/90 20230101ALI20240405BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B64F1/36
B64C27/08
B64C39/02
B64F1/12
B64U10/20
B64U70/90
G08G5/00 A
(21)【出願番号】P 2021565306
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050194
(87)【国際公開番号】W WO2021124573
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534523(JP,A)
【文献】特開2019-006238(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159256(WO,A1)
【文献】特許第6308642(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0183528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/36
B64C 39/02
B64F 1/12
B64C 27/08
G08G 5/00
B64U 10/20
B64U 70/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離着陸部を有し、側面視において所定の外径を有する飛行体と、
離着陸ポートであって、前記飛行体の離着陸部が前記離着陸ポートの離着陸面に接している場合に、側面視において前記所定の外径が、前記離着陸面の外縁における長さより大きい離着陸ポートと、
を備え、
前記離着陸ポートの上面は、少なくとも前記飛行体の着陸時において、水平または水平に近い面であ
り、
前記飛行体は、複数の回転翼及び前記回転翼を駆動させるモータを少なくとも備え、
前記外縁は、上方から見た場合に前記モータの位置よりも内側に配置される、
離着陸システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体と、この飛行体を離着陸させるための離着陸ポートを有する離着陸システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーの電力を用いて飛行する無人飛行体の運用において、無人飛行体の運用計画にバッテリーを充電するための給電工程を含めることが記載されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、安全面の見地等から、飛行体の離着陸ポートへの離着陸を精度高く行う技術の確立が要求されているところ、従来の技術では当該要求に十分に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、飛行体の離着陸ポートへの離着陸を精度高く行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
離着陸領域を規定する離着陸部を有し、上方から見た場合に所定の外径を有する飛行体と、
前記離着陸領域以上、前記所定の外径未満の外縁を有する離着陸ポートと、
を備えた、離着陸システムが得られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飛行体の離着陸ポートへの精度良い離着陸を行う技術を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来の飛行体の上昇時における飛行体の状態(A)と、進行時における飛行体の状態(B)を表す模式図である。
【
図2】本実施の形態による飛行体の上昇時及びホバリング時の状態を表す図である。
【
図4】
図2の飛行体の進行時の状態を表す図である。
【
図5】
図2の飛行体の下降時の状態を表す図である。
【
図6】
図2の飛行体が積載物を離脱した後の状態(再上昇時)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態による発明は、以下の構成を備える。
[項目1]
離着陸領域を有する離着陸部を有し、側面視において所定の外径を有する飛行体と、
離着陸ポートであって、前記飛行体の離着陸部の離着陸領域が前記離着陸ポートの離着陸面に含まれて接している場合に、側面視において前記所定の外径が、前記離着陸面の外縁における長さより大きい離着陸ポートと、
を備えた、離着陸システム。
[項目2]
項目1に記載の離着陸システムにおいて、
前記飛行体は、複数の回転翼及び前記回転翼を駆動させるモータを少なくとも備え、
前記外縁は、上方から見た場合に前記モータの位置よりも内側に配置される、
離着陸システム。
[項目3]
項目1又は項目2に記載の離着陸システムにおいて、
前記飛行体が前記離着陸ポートに着陸する際に、前記飛行体の前後方向における前記所定の外径の中心は、側面視において前記外縁の中心よりも前記飛行体の進行方向前方に配置される、
離着陸システム。
【0010】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態による離着陸システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<離着陸システムの説明>
本実施形態に係る離着陸システムは、N台(Nは1以上の任意の整数値)の飛行体と、M台(MはNとは独立した1以上の任意の整数値)の離着陸ポートと、で構成されている。なお、以下では、説明を簡単にするために、1台の飛行体1が、1台の離着陸ポート10に着陸する場合について説明する。
【0012】
<飛行体の説明>
図1に示されるように、飛行体1は、プロペラ2(揚力発生部:回転翼)と、プロペラ2を回転させるためのモータ3と、モータ3が取り付けられているアーム4と、離着陸領域を有するとともに積載物52を搭載する搭載部5(離着陸部)と、カウンターウェイトとしてのバッテリー部6を備えている。飛行体1は、側面視において所定の外径D2を有する。本実施形態では、飛行体1の前後方向をX軸方向、左右方向(または水平方向)をY軸方向、上下方向(または鉛直方向)をZ軸方向とする移動体に設定されたXYZ3次元直交座標系を定義する。飛行体1は図の矢印Dの方向(+X方向)を進行方向としている(詳しくは後述する)。
【0013】
なお、以下の説明において、以下の定義に従って用語を使い分けることがある。
前後方向:+X方向及びX方向
上下方向(または鉛直方向):+Z方向及びZ方向
左右方向(または水平方向):+Y方向及びY方向
進行方向(前方):+X方向
後退方向(後方):-X方向
上昇方向(上方):+Z方向
下降方向(下方):-Z方向
【0014】
プロペラ2は、モータ3からの出力を受けて回転する。プロペラ2が回転することによって、飛行体1を出発地から離陸させ、水平移動させ、目的地に離着陸させるための推進力が発生する。なお、プロペラ2は、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0015】
本発明のプロペラ2は、羽根を有している。任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。また、羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。羽根はエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0016】
モータ3は、プロペラ2の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。羽根は、モータによって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0017】
羽根は、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)及び制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0018】
アーム4は、それぞれ対応するモータ3及びプロペラ2を支持している部材である。アーム4には、回転翼機の飛行状態、飛行方向等を示すためにLED等の発色体を設けることとしてもよい。本実施の形態によるアーム4は、カーボン、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム等またはこれらの合金又は組合わせ等から適宜選択される素材で形成することが可能である。
【0019】
搭載部5は、積載物52を搭載・保持するための機構である。搭載部5は、搭載された積載物52の位置及び向きを維持することができるように、常に所定の方向(例えば、水平方向(鉛直下向き))に、その状態を保持する。
【0020】
より具体的には、搭載部5は、ヒンジ(ジンバル)50を有しており、当該ヒンジ50を支点として、積載物52が飛行体1の傾きに応じて、折れ曲がるように構成されている。ヒンジ50が折れ曲がる角度の大きさは、特に限定されない。例えば、
図4に示されるように、飛行体1が前傾姿勢で飛行した場合であっても積載物52の位置・方向を水平に保つことができればよい。これにより、積載物52は、常に鉛直方向下向きに懸垂された状態で保持され、出発地点における位置、状態を保持しながら、目的地まで配達することが可能となる。本実施の形態によるヒンジ50は、進行方向と同じ方向である前後方向のみに可動するものである。しかしながら、かかるヒンジ50は、前後方向に加えて左右方向に可動するものであってもよい。
【0021】
なお、ヒンジ50の動作は、モータ等によって制御することとしてもよい。例えば、積載物52の位置・方向を水平に保つようにモータ等がヒンジ50の動作を制御してもよい。これにより、離陸時、飛行時または着陸時に積載物52のふらつき(自然振動等)がより防止される。
【0022】
搭載部5の形状・機構は、積載物52を収納したり保持したりすることができれば特に制限されるものではなく、第1搭載部30に搭載される積載物52が傾いたりその位置を保持することができるものであればどのようなものであってもよい。ただし、後述するように、積載物52は離着陸ポート10に収まるような形状でありうる。すなわち、かかる離着陸システムにおいては、積載物52の形状は離着陸ポート10の形状に応じて決定され得る。例えば、離着陸ポート10の形状が矩形または略矩形であれば、積載物52の上方から見た形状も、矩形または略矩形であってもよい。また、離着陸ポート10の形状が矩形または略矩形であっても、積載物52の上方から見た形状は、円または楕円等の形状であってもよい。
【0023】
図2及び
図3に示されるように、本実施の形態による搭載部5は、飛行体1の前後方向における重心Ghよりも所定距離L1だけ進行方向Dにおいて後方に設けられている。所定距離L1は、積載物52が、部分的にであっても、少なくとも後方のプロペラ2bが回転することによって生じる円領域(
図3におけるプロペラ2bの1点鎖線で示される領域を参照)と上下方向において重複しないように定められる。換言すれば、所定距離L1は、プロペラ2の上方から見た場合に回転するプロペラ2と積載物52とが重複しないような値に定められる。より好ましくは、積載物52が後方のプロペラ2bから発生する後流領域Bbの影響を受けない位置に設けられている。なお、搭載部5は、アーム上の任意の位置に設けることが可能である。また、取り付け後にスライド移動等することによって、その位置を変更することも可能である。
【0024】
バッテリー部6は、リチウムイオン二次電池(Li-Poバッテリー等)等のバッテリー60と、ヒンジ62とを有している。本実施の形態によるバッテリー部6は、少なくとも重心よりも前方に設けられており、上述した搭載部5と前後方向においてバランスをとるカウンターウェイトとしての機能を有している。当該機能の詳細については後述する。ヒンジ62は、当該ヒンジ62を支点として、バッテリー60が前後方向に折れ曲がるように構成されている。ヒンジ62が折れ曲がる角度は、特に限定されない。なお、ヒンジ62は、当該ヒンジ62の方向(向き)を制御するためのモータ(図示せず)を有しており、制御部(図示せず:後述する)からの指示に応じてバッテリー60の向きを変更することが可能である。本実施の形態によるヒンジ62は、進行方向と同じ方向である前後方向のみに可動するものである。しかしながら、左右方向に可動するものであってもよい。
【0025】
<離着陸ポート>
離着陸ポート10は、飛行体1の離着陸の可能性がある場所に配置され、当該飛行体1を離着陸させるための装置である。離着陸ポート10は、地面、ビルディングの屋上、船舶の甲板などの基面Gから支柱を突出させてその上にステージが設けてある。ステージを支持する支柱は基面Gから垂直方向に高さHを有している。離着陸ポート10は、飛行体1に搭載された積載物52の配達先として機能し得る。また、離着陸ポート10は、飛行体1に搭載されたバッテリー60を充電するための外部電源接続部として機能してもよい。具体的には、着陸後、飛行体1側の電極と、離着陸ポート10側の電極が接触し、バッテリー60への給電が行われ得る。
【0026】
離着陸ポート10は、飛行体1の搭載部5(離着陸部)の離着陸領域D1が離着陸ポート10の離着陸面に含まれて接している場合に、側面視において所定の外径D2が、離着陸面の外縁D3における長さより大きい。ここで本明細書において、離着陸領域D1は、積載物52の前端から後端までの一の水平方向に沿った距離を示す。外径D2は、該一の水平方向に直交する側面視において、水平状態に保たれた前方プロペラ2fの最も外側にある場合の端部から、同じく水平状態に保たれた後方プロペラ2bの最も外側にある場合の端部までの距離を示す。外縁D3は、該一の水平方向に直交する側面視において、離着陸ポート10の前端から後端までの水平方向に沿った距離を示す。離着陸ポート10は、その表面が平坦状に形成されてもよい。
【0027】
前記外縁D3は、上方から見た場合に前記モータ3の位置よりも内側に配置されてもよい。かかる配置とすることにより、飛行体1が離着陸ポート10において離着陸する際に、飛行体1が接近する際に自然風が離着陸ポート10にあたって発生する乱流、プロペラ2から吹き下ろされる風が離着陸ポート10に接触しにくくなり、飛行体1をバランスよく離陸または着陸されることができる。飛行体1が離着陸ポート10に着陸するとき、飛行体1は地面効果によって浮き上がり及び姿勢の変化などを招きやすい。そのため、着陸想定領域(
図2中の太線で囲まれた符号10の領域)は、できるだけ広い水平または水平に近い面であることが好ましい。
図5に示すように、飛行体1が離着陸ポート10に着陸する際に、前記外径D2の中心C1は、側面視において前記外縁D3の中心C2よりも飛行体1の進行方向前方に配置される。ここで、本実施の形態による搭載部5は、上述したように、飛行体1の前後方向における重心Ghよりも所定距離L1だけ進行方向Dにおいて後方に設けられている。つまり、積載物52が後方のプロペラ2bから発生する後流領域Bbの影響を受けない限りいずれの位置に配置しても構わないが、飛行体1が離着陸ポート10に着陸する際に、飛行体1が離着陸ポート10に着陸する際に積載物52と離着陸ポート10との位置合わせを正確にすべき場所に配置することが好ましい。したがって、本実施形態のように、中心線C1は、中心線C2よりも前寄りに配置するのが好ましい。
【0028】
<飛行時の説明>
続いて、
図2、
図4乃至
図6を参照して、本実施の形態による飛行体1の飛行態様について説明する。なお。以下の説明においては、説明を明確にするため、上昇時、水平移動時、下降時、再上昇時の4つの態様をそれぞれ説明するが、例えば、上昇しながら水平移動を行う等のように、これらの態様の組み合わせによって飛行する態様も当然含まれる。
【0029】
<上昇時>
図2に示されるように、ユーザが操作部を備えたラジオコントロール用の送信機を操作して、飛行体のモータ3の出力を上昇させて、プロペラ2の回転数を増加させる。プロペラ2が回転することによって、飛行体1を浮上させるために必要な揚力が鉛直上向きに発生する。当該揚力が飛行体1に働く重力を超えると飛行体1は、倉庫又は集積所(図示せず)から積載物52を携えて飛び立ち、積載物52の届け先である離着陸ポート10に向けて飛行する。
【0030】
図示されるように、上昇時は、アーム4を含む飛行体1が全体として水平に維持される。この際、バッテリー部6の向きは鉛直上向きに維持される。換言すれば、プロペラ2によって発生する揚力がそれぞれ同等である場合、前後方向においては、飛行体1にかかる重力は重心Ghに関して一致している(重心Ghを中心とした左右方向周りの回転モーメントは打ち消しあっている)。これにより、飛行体1は水平を保ちながら上昇することができる。
【0031】
なお、バッテリー部6の方向は、積載物52の重さによって向きを変更することが可能である。即ち、軽い積載物の場合にはバッテリー6は後方に傾き、重い積載物の場合にはバッテリー部6は前方に傾きバランスをとる。
【0032】
なお、飛行体1は、当該飛行体1にかかる重量とプロペラ2の回転によって飛行体1に発生する揚力とが力学的に釣り合っている場合に、ホバリングすることができる。このとき、飛行体1の高度は、一定レベルに維持されている。本実施の形態における飛行体1は、ホバリングの際にも上述した
図2と同様の姿勢を維持する。
【0033】
<水平移動時>
飛行体1は、水平方向に進行する場合には進行方向に向かって前方にあるプロペラ2の回転数よりも、進行方向に向かって後方にあるプロペラ2の回転数を多くするように制御される。従って、
図4に示されるように、進行方向に水平移動時は、飛行体1は前傾姿勢をとる。この際、バッテリー部6はヒンジ62よりも後方に倒れることによって、バランスをとる。このとき、ヒンジ50があることによって、積載物52の向きは水平に保たれている。
【0034】
図1(B)と
図4とを比較して理解されるように、搭載部5が重心Ghよりも後方に位置しているため、積載物52がプロペラ2f及びプロペラ2bの後流領域Bf、Bb内に位置していない。従って、本実施の形態による飛行体1によれば、少なくとも水平方向の進行時における飛行効率を上げることができる。
【0035】
<下降時(着陸時)>
図5に示されるように、下降時においては、バッテリー部6はヒンジ62を中心に回転し下向きとなる。一般的な飛行体1に上昇気流による上向きの力がかかると、飛行体1はバランスを崩して、墜落する恐れがある。しかしながら、飛行体1は、下降前にバッテリー部6を鉛直下向きにすることから、当該飛行体1の重心は垂直方向に下がる(
図6内に模式的に表したバッテリー部6移動前の位置G
V0とG
V1を参照)。飛行体1の重心を下げることによって、上昇気流によって、飛行体1にかかる上向きの力を打ち消すことができる。このように、本実施の形態による飛行体1は、飛行体1の重心Ghを下げる手段を適宜組み合わせて採択することによっても、上昇気流によって発生する力に対抗することができる。基面Gから突出したステージは、上空からの飛行体1の着陸目標である離着陸ポート10の確認を容易にし、ステージへの着陸を可能にする。
【0036】
飛行体1は、離着陸ポート10に着陸して、搭載部5に搭載されている積載物52を離着陸ポート10に下ろす。即ち、離着陸ポート10において、飛行体1と積載物52は分離される。飛行体1と積載物52の分離は、積載物52が搭載部5から切り離すことによって行われる。本実施の形態における飛行体1は、軽量化を図るために着陸脚を有していない。従って、着陸時には、搭載された積載物52自身が着陸脚の機能を有することとなる。
【0037】
通常、飛行体1から積載物Lが分離された直後はペイロードが小さくなり、当該飛行体1の重心は、上方向に瞬間的に移動することが考えられる。しかしながら、
図6を参照して説明したように、飛行体1は、目的上空に到着した後、バッテリー部6が鉛直下向きになるようにその向きを変更し、重心をプロペラ2によって発生する揚力の中心(以下「揚力中心」という)よりも鉛直下向きに位置するようにしている。このため、飛行体1から積載物52が分離された後であっても、依然として重心の鉛直方向における位置は揚力中心よりも下方に位置させることができる。
【0038】
<再上昇時>
図6に示されるように、搭載部5から積載物52が分離した後、バッテリー部6は更に後方に回転する。これにより、飛行体1は、当該積載物52の分離による重心の変化に対してバランスをとることが可能となる。本実施の形態におけるバッテリー部6は、図示しないロック機構を備えている。ロック機構は、バッテリー部6を
図6に示される位置にロックする。移動体1は、この状態のまま再上昇し出発地等の指定された場所に戻る。
【0039】
上述した実施の形態においては、積載物52とバランスをとるためのカウンターウェイトとしてバッテリー部を利用することとしていた。しかしながら、積載物52とバランスをとるための手段はこれに限定されない。例えば、プロペラ2の回転速度を変更すること
【0040】
上述した飛行体は、
図7に示される機能ブロックを有している。なお、
図7の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカード又はランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ又はセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0041】
処理ユニットは、飛行体の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために飛行体の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0042】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0043】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0044】
本発明の飛行体は、宅配業務専用の飛行体としての利用、及び倉庫、工場内における産業用の飛行体としての利用が期待できる。また、本発明の飛行体は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業において利用することができ、さらに、本発明は、カメラ等を搭載した空撮用の飛行体としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、農業、インフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【0045】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0046】
なお、上面視において、複数あるモータ3の回転軸を結ぶ線分の内側であって、かつ、プロペラ2の先端の回転軌跡内に入らないように、離着陸ポート10を配置しても良い。このような配置により、離着陸ポート10の高さHの分だけプロペラ2を地面Gから隔離できるので、プロペラ2と地面Gの間にある空気流が変化し難くなり、非線形的な推力が発生し、着陸時の制御が難しい、いわゆる地面効果(表面効果)を発生し難くできる。これにより、飛行体1を離着陸ポート10に安定して着陸させることができる。なお、離着陸ポート10の高さHは高すぎると邪魔になり得ることに加え、積載物52が離着陸ポート10から転落する虞もある。一方、離着陸ポート10の高さHが低すぎてもプロペラ2と地面Gとの距離が短くなる分だけ地面効果(表面効果)が発生し易くなるため好ましくない。そこで、離着陸ポート10の高さHは、プロペラ2の回転半径の1/4以上に設定されることが好ましい。1/4以上に設定されることで、離着陸ポート10が邪魔にならない程度に、地面効果(表面効果)の発生を抑制できる。また、離着陸ポート10の高さHは、プロペラ2の回転半径の1/2以下に設定されることが好ましい。1/2以下に設定されることで、積載物52が離着陸ポート10から転落する虞を回避しつつ、地面効果(表面効果)の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0047】
1、1’ 飛行体
2、2f、2b プロペラ(回転翼)
3 モータ
4 アーム
5 搭載部(離着陸部)
6 バッテリー部
10 離着陸ポート
50、62 ヒンジ
52 積載物
60 バッテリー