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特許7466229プレス部品用検査装置及びプレス部品の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】プレス部品用検査装置及びプレス部品の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022200328
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2018120131の分割
【原出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2023021359
(43)【公開日】2023-02-10
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 義昭
(72)【発明者】
【氏名】片島 竜治
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-117817(JP,A)
【文献】特開2000-224542(JP,A)
【文献】特開2015-102497(JP,A)
【文献】特開2017-062188(JP,A)
【文献】特開2002-365223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G03B 15/00
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
H04N 23/00
H04N 23/40 - H04N 23/76
H04N 23/90 - H04N 23/959
B21D 43/00 - B21D 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部及び該平面部の周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品を検査するためのプレス部品用検査装置であって、
上記プレス部品を上記平面部が搬送方向に沿いかつ上記側面部が上記平面部に対して上記搬送方向の進行側及び反進行側の少なくとも一方に位置する姿勢で搬送する搬送手段と、
上記搬送手段により搬送される上記プレス部品を、上記搬送方向に直交する方向から撮影するための正対カメラと、
上記正対カメラに対して上記搬送方向に隣接配置され、上記正対カメラの撮影角度と異なる撮影角度で上記プレス部品を撮影するように上記搬送方向に対して傾斜して配置された傾斜カメラと、
上記正対及び傾斜カメラでそれぞれ撮影された画像に基づいて上記プレス部品の成形状態を検査する検査手段とを備え、
上記傾斜カメラは、上記正対カメラに対して上記搬送方向の上記進行側に位置しかつ上記搬送方向の上記反進行側を向く姿勢で配置された第1の傾斜カメラと、上記正対カメラに対して上記搬送方向の上記反進行側に位置しかつ上記搬送方向の上記進行側を向く姿勢で配置された第2の傾斜カメラとを含み、
上記検査手段は、撮影された画像を演算処理する演算部と、該演算部で演算処理された画像データに基づいて上記プレス部品の成形状態の良否を判定する判定部とを有するカメラ処理部を、上記正対及び傾斜カメラ毎に有し、
上記正対カメラ、並びに、第1及び第2の傾斜カメラは、上記プレス部品が撮影領域に入っているか否かに関わらず、上記撮影領域を単位時間毎に連続して撮影するように構成されていることを特徴とするプレス部品用検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス部品用検査装置において、
上記各カメラ処理部は、
他の上記カメラ処理部に対して上記プレス部品の検出信号を送信する送信部と、
他の上記カメラ処理部から送信された上記検出信号を受信する受信部と、
対応する上記正対及び傾斜カメラで撮影されかつ上記演算部で演算処理された画像データを一時的に保存する一時保存部と、
をそれぞれ有し、
上記検査手段は、上記各カメラのうち一部のカメラをメインカメラとし、残りのカメラをサブカメラとして、該メインカメラが上記プレス部品を検出したときには、上記メインカメラの上記カメラ処理部であるメインカメラ処理部は、上記サブカメラの上記カメラ処理部であるサブカメラ処理部に上記検出信号を送信するとともに、上記メインカメラ処理部及び上記サブカメラ処理部は、上記検出信号を送信又は受信した後に、上記各判定部での判定処理をそれぞれ行うように構成されていることを特徴とするプレス部品用検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプレス部品用検査装置において、
上記各カメラ処理部は、単位時間毎に連続して撮影されかつ上記演算部で演算処理された画像データを上記一時保存部に逐次保存しており、
上記検査手段は、上記正対カメラを上記メインカメラとし、上記第1及び第2の傾斜カメラを上記サブカメラとして、
上記メインカメラ処理部の上記判定部は、上記プレス部品を検出した直後の第1所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行い、
上記第1の傾斜カメラの上記サブカメラ処理部の上記判定部は、上記第1所定期間よりも前の第2所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行い、
上記第2の傾斜カメラの上記サブカメラ処理部の上記判定部は、上記第1所定期間よりも後の第3所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行うように構成されていることを特徴とするプレス部品用検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のプレス部品用検査装置において、
上記メインカメラ処理部の上記演算部は、上記メインカメラで撮影された画像の各画素の色強度をそれぞれ算出し、
上記メインカメラ処理部は、上記プレス部品を検出する前に撮影された画像の各画素の色強度に対して、色強度が所定量以上変化した画素の数が所定数以上となったときに、上記プレス部品を検出したとして、上記検出信号を上記サブカメラ処理部に送信することを特徴とするプレス部品用検査装置。
【請求項5】
平面部及び該平面部の周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品の検査方法であって、
上記プレス部品を上記平面部が搬送方向に沿いかつ上記側面部が上記平面部に対して上記搬送方向の進行側及び反進行側の少なくとも一方に位置する姿勢で搬送させる搬送工程と、
搬送される上記プレス部品を、搬送方向に直交する方向から撮影するための正対カメラと、該正対カメラに対して上記搬送方向に隣接配置され、該正対カメラの撮影角度と異なる撮影角度となるように上記搬送方向に対して傾斜して配置された傾斜カメラとにより撮影する撮影工程と、
上記撮影工程で撮影された各画像を、上記正対カメラで撮影された画像と上記傾斜カメラで撮影された画像とに分けて、それぞれ独立して演算処理する演算工程と、
上記各カメラのうち一部のカメラをメインカメラとし、残りのカメラをサブカメラとして、上記メインカメラで撮影された各画像の画像データに基づいて、上記プレス部品を検出する検出工程と、
上記演算工程で演算処理された画像データに基づいて、上記プレス部品の成形状態の良否を判定する判定工程とを含み、
上記傾斜カメラは、上記搬送方向の反進行側を向く姿勢で配置された第1の傾斜カメラと、上記搬送方向の進行側を向く姿勢で配置された第2の傾斜カメラとを含み、
上記判定工程は、上記正対カメラで撮影された画像の画像データに基づく判定と、上記傾斜カメラで撮影された画像の画像データに基づく判定とを、それぞれ独立して実行するとともに、上記検出工程で上記プレス部品が検出された後に実行する工程であり、
上記撮影工程は、上記プレス部品が、上記正対カメラ、並びに、第1及び第2の傾斜カメラのそれぞれの撮影領域に入っているか否かに関わらず、上記撮影領域を単位時間毎に連続して撮影する工程であることを特徴とするプレス部品の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、プレス部品用検査装置及びプレス部品の検査方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス成形部品の生産ラインには、成形後のプレス部品の成形状態の良否を検査するプレス部品用検査装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のプレス部品用検査装置は、プレス部品を搬送する搬送手段と、プレス部品を搬送方向と直交する方向から撮影するカメラと、該カメラの撮影領域に入ったプレス部品の平面部に対して垂直に光を照射する第1光源と、上記カメラの撮影領域に入ったプレス部品の平面部に対して斜めに光を照射する第2光源と、プレス部品の良否を判定する判定手段とを備える。判定手段は、カメラで撮影したプレス部品の画像を演算処理する演算部と、プレス部品の表面仕上がり状態の基準データが記憶された記憶部とを有している。判定手段は、演算部で処理されたプレス部品の演算データと基準データとを比較してプレス部品の良否を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-37977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレス部品が、平面部と、該平面部周縁に連続する側面部とを有しているときには、傷や亀裂などのプレス部品の欠陥は、平面部及び側面部のどちらにも発生し得る。特許文献1のような検査装置では、カメラはプレス部品の搬送方向と直交する方向からしか撮影しないため、側面部を撮影しにくい。このため、平面部に対する側面部の傾斜角度が大きいときには、プレス部品の欠陥が判定しにくくなる。よって、プレス部品の良否の判定精度を向上させるという観点からは改良の余地がある。
【0006】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プレス部品の良否の判定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、平面部及び該平面部の周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品を検査するためのプレス部品用検査装置を対象として、上記プレス部品を上記平面部が搬送方向に沿う姿勢で搬送する搬送手段と、上記搬送手段により搬送される上記プレス部品を、上記搬送方向に直交する方向から撮影するための正対カメラと、上記正対カメラに隣接配置され、上記正対カメラの撮影角度と異なる撮影角度となるように上記搬送方向に対して傾斜して配置された傾斜カメラと、上記正対及び傾斜カメラでそれぞれ撮影された画像に基づいて上記プレス部品の成形状態を検査する検査手段とを備え、上記傾斜カメラは、上記搬送方向の反進行側を向く姿勢で配置された第1の傾斜カメラと、上記搬送方向の進行側を向く姿勢で配置された第2の傾斜カメラとを含み、上記検査手段は、撮影された画像を演算処理する演算部と、該演算部で演算処理された画像データに基づいて上記プレス部品の成形状態の良否を判定する判定部とを有するカメラ処理部を、上記正対及び傾斜カメラ毎に有し、上記正対カメラ、並びに、第1及び第2の傾斜カメラは、上記プレス部品が撮影領域に入っているか否かに関わらず、上記プレス部品を単位時間毎に連続して撮影するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
ここに開示された技術の第2の態様は、上記第1の態様において、上記各カメラ処理部は、他の上記カメラ処理部に対して上記プレス部品の検出信号を送信する送信部と、他の上記カメラ処理部から送信された上記検出信号を受信する受信部と、対応する上記正対及び傾斜カメラで撮影されかつ上記演算部で演算処理された画像データを一時的に保存する一時保存部と、をそれぞれ有し、上記検査手段は、上記各カメラのうち一部のカメラをメインカメラとし、残りのカメラをサブカメラとして、該メインカメラが上記プレス部品を検出したときには、上記メインカメラの上記カメラ処理部であるメインカメラ処理部は、上記サブカメラの上記カメラ処理部であるサブカメラ処理部に上記検出信号を送信するとともに、上記メインカメラ処理部及び上記サブカメラ処理部は、上記検出信号を送信又は受信した後に、上記各判定部での判定処理をそれぞれ行うように構成されていることを特徴とする。
【0009】
ここに開示された技術の第3の態様は、上記第2の態様において、上記正対カメラ、並びに、第1及び第2の傾斜カメラは、上記プレス部品を単位時間毎に連続して撮影するように構成され、上記各カメラ処理部は、単位時間毎に連続して撮影されかつ上記演算部で演算処理された画像データを上記一時保存部に逐次保存しており、上記検査手段は、上記正対カメラを上記メインカメラとし、上記第1及び第2の傾斜カメラを上記サブカメラとして、上記メインカメラ処理部の上記判定部は、上記プレス部品を検出した直後の第1所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行い、上記第1の傾斜カメラの上記サブカメラ処理部の上記判定部は、上記第1所定期間よりも前の第2所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行い、上記第2の傾斜カメラの上記サブカメラ処理部の上記判定部は、上記第1所定期間よりも後の第3所定期間に撮影された画像の画像データを上記一時保存部から読み出して判定処理を行うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここに開示された技術の第4の態様は、上記第2又は第3の態様において、上記メインカメラ及びサブカメラ処理部の上記演算部は、上記メインカメラで撮影された画像の各画素の色強度をそれぞれ算出し、上記プレス部品を検出する前に撮影された画像の各画素の色強度に対して、色強度が所定量以上変化した画素の数が所定数以上となったときに、上記プレス部品を検出したとして、上記検出信号を上記サブカメラ処理部に送信することを特徴とする。
【0011】
ここに開示された技術の第5の態様は、プレス部品の検査方法に関する技術である。具体的には、平面部及び該平面部の周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品の検査方法を対象として、上記プレス部品を、上記平面部が搬送方向に沿う姿勢で搬送させる搬送工程と、搬送される上記プレス部品を、搬送方向に直交する方向から撮影するための正対カメラと、該正対カメラに隣接配置され、該正対カメラの撮影角度と異なる撮影角度となるように上記搬送方向に対して傾斜して配置された傾斜カメラとにより撮影する撮影工程と、上記撮影工程で撮影された各画像を、上記正対カメラで撮影された画像と上記傾斜カメラで撮影された画像とに分けて、それぞれ独立して演算処理する演算工程と、上記各カメラのうち一部のカメラをメインカメラとし、残りのカメラをサブカメラとして、上記メインカメラで撮影された各画像の画像データに基づいて、上記プレス部品を検出する検出工程と、上記演算工程で演算処理された画像データに基づいて、上記プレス部品の成形状態の良否を判定する判定工程とを含み、上記傾斜カメラは、上記搬送方向の反進行側を向く姿勢で配置された第1の傾斜カメラと、上記搬送方向の進行側を向く姿勢で配置された第2の傾斜カメラとを含み、上記撮影工程は、上記判定工程は、上記正対カメラで撮影された画像の画像データに基づく判定と、上記傾斜カメラで撮影された画像の画像データに基づく判定とを、それぞれ独立して実行するとともに、上記検出工程で上記プレス部品が検出された後に実行する工程であり、上記撮影工程は、上記プレス部品が、上記正対カメラ、並びに、第1及び第2の傾斜カメラのそれぞれの撮影領域に入っているか否かに関わらず、上記プレス部品を単位時間毎に連続して撮影する工程である。
【発明の効果】
【0012】
ここに開示された技術の第1の態様によると、正対カメラと傾斜カメラとを備えるため、プレス部品の平面部及び側面部をそれぞれ適切な撮影角度で撮影することができる。また、検査手段は、正対カメラ及び傾斜カメラのそれぞれに対してカメラ処理部を有している。例えば、プレス部品が平面部の幅が広く、側面部の幅が狭いようなときには、正対カメラと傾斜カメラとでは、良否の判定に必要な画像の数等が異なる。正対カメラと傾斜カメラのそれぞれに対してカメラ処理部を有しておけば、各カメラに対してそれぞれ適切な処理を行うことができる。したがって、プレス部品の良否の判定精度を向上させることができる。
【0013】
また、正対カメラと傾斜カメラとを隣接配置させることにより、検査装置の設置スペースを出来る限りコンパクトにすることができる。
【0014】
第2の態様によると、メインカメラのみがプレス部品を検出するため、サブカメラ処理部の負荷を小さくすることができる。これにより、サブカメラ処理部の判定部における、プレス部品の良否判定の判定時間を短くすることができるとともに、判定精度をより向上させることができる。また、カメラとセンサとを兼用させた状態となるため、別個にセンサを配置する場合と比較して、検査装置の設置スペースを小さくできるとともに、コストを削減することができる。
【0015】
第3の態様によると、第1の傾斜カメラは、搬送方向の反進行側に傾斜して配置されているため、プレス部品を正対カメラよりも早い段階で撮影することができる。一方で、第2の傾斜カメラは、搬送方向の進行側に傾斜して配置されているため、プレス部品を正対カメラよりも後の段階でなければ撮影することができない。このため、メインカメラとしての正対カメラがプレス部品を検出したときには、第1の傾斜カメラは、既に判定に必要な画像を撮影している一方、第2の傾斜カメラは、検出後、更に時間をおいてからでないと、判定に必要な画像を撮影できない。
【0016】
これに対して、第3の態様では、メインカメラ処理部(正対カメラのカメラ処理部)は、プレス部品を検出した直後の第1所定期間に撮影された画像で判定処理を行う。第1の傾斜カメラのサブカメラ処理部は、第1所定期間よりも前の第2所定期間に撮影された画像で行う。第2の傾斜カメラのサブカメラ処理部は、第1所定期間よりも後の第3所定期間に撮影された画像で判定処理を行う。これらのことにより、メインカメラのみでプレス部品の検出を行いつつも、搬送されたプレス部品の良否判定を、適切なタイミングで撮影された画像を用いて行うことができる。この結果、プレス部品の良否の判定精度を更に向上させることができる。
【0017】
第4の態様によると、搬送手段の色及びプレス部品の色に応じて、搬送されるプレス部品を、メインカメラで適切に検出することができる。これにより、プレス部品の良否の判定精度を一層向上させることができる。
【0018】
第5の態様によると、例えば、正対カメラの画像データからプレス部品の平面部の判定を行い、傾斜カメラの画像データからプレス部品の側面部の判定のみを行うような処理が可能となる。これにより、プレス部品の形状に合わせた判定が可能となり、プレス部品の良否の判定精度を向上させることができる。またメインカメラのみがプレス部品を検出するようにすることにより、サブカメラで撮影された画像に基づく処理の負荷を小さくすることができる。これにより、プレス部品の良否の判定精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プレス部品用検査装置の構成を示す概略図である。
図2】コンピュータの構成を示すブロック図である。
図3】搬送されるプレス部品と各カメラとの位置関係を示す図であり、(a)は、第1の傾斜カメラでプレス部品の第1の側面部を撮影可能になった状態、(b)は、正対カメラでプレス部品を検出した状態、(c)は、第2の傾斜カメラでプレス部品の第2の側面部を撮影可能になった状態をそれぞれ示す。
図4】第1及び第2の傾斜カメラの撮影角度を変更するときの状態を示す動作図である。
図5】各カメラで撮影された画像のうち判定部に送られる画像を示す概略図である。
図6】コンピュータによるプレス部品の検査時の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプレス部品用検査装置1を概略的に示す。この検査装置1は、所定の板材から、平面部11及び該平面部11の周縁に連続する2つの側面部12を有するようにプレス成形されたパネル状のプレス部品10の成形状態を検査する装置である。具体的には、検査装置1は、プレス部品10に生じる傷、亀裂、しわ等の有無を検査し、プレス部品10の成形状態の良否を判定する。検査装置1は、プレス部品10を成形する生産ラインに配置されている。
【0022】
検査装置1は、プレス部品10を平面部11が搬送方向に沿う姿勢で搬送するベルト式のコンベア2(搬送手段)を備えている。コンベア2は、例えば、0.3m/sの速度でプレス部品10を水平方向に搬送する。コンベア2には、プレス部品10が一定の間隔で断続的に搬送されている。以下の説明では、コンベア2の搬送方向のうち、プレス部品10が進む側を進行側、該進行側とは反対側を反進行側という。
【0023】
検査装置1は、コンベア2で搬送されるプレス部品を撮影するための複数(本実施形態では18台)のカメラ3を備えている。複数のカメラ3は、コンベア2により搬送されるプレス部品10を上記搬送方向に直交する方向から撮影するための6台の正対カメラ30を含む。複数のカメラ3は、正対カメラ30に隣接配置されかつコンベア2により搬送されるプレス部品10を上記搬送方向の進行側から撮影するための6台の第1の傾斜カメラ31を含む。複数のカメラ3は、正対カメラ30に隣接配置されかつコンベア2により搬送されるプレス部品10を上記搬送方向の反進行側から撮影するための6台の第2の傾斜カメラ32を含む。第1及び第2の傾斜カメラ31,32は、図3に示すように、正対カメラ30の撮影角度とは異なる撮影角度となるようにそれぞれ配置されている。正対カメラ30は、主に、プレス部品10の平面部11を撮影するためのカメラである。第1の傾斜カメラ31は、主に、プレス部品10の上記搬送方向の進行側の側面部12(以下、第1の側面部12aという)周辺を撮影するためのカメラである。第2の傾斜カメラ32は、主に、プレス部品10の上記搬送方向の反進行側の側面部12(以下、第2の側面部12bという)周辺を撮影するためのカメラである。以下の説明では、正対カメラ30、並びに、第1及び第2の傾斜カメラ31,32を区別しないときには、単に、カメラ3という。
【0024】
各カメラ3は、例えば、0.1msecの撮影速度で連続して撮影するCCDカメラで構成されている。各カメラ3は、図3に示すように、コンベア2の上方に下を向く姿勢でそれぞれ支持装置4に支持されている。具体的には、各正対カメラ30は、支持装置4の水平部40に、鉛直下側を向く姿勢でそれぞれ支持されている。各第1の傾斜カメラ31は、支持装置4の第1の傾斜部41に、上記搬送方向の反進行側を向く姿勢でそれぞれ支持されている。各第2の傾斜カメラ32は、支持装置4の第2の傾斜部42に、上記搬送方向の進行側を向く姿勢でそれぞれ支持されている。
【0025】
支持装置4の第1及び第2の傾斜部41,42は、図4に示すように、水平部40に対する傾斜角度を変更可能に構成されている。第1及び第2の傾斜部41,42の水平部40に対する傾斜角度は、コンベア2で搬送されるプレス部品10の形状に応じて変更される。例えば、プレス部品10において、側面部12の平面部11に対する傾斜角度が大きいときには、第1及び第2の傾斜部41,42の水平部40に対する傾斜角度を大きく、すなわち、水平部40に対して直角に近付くようにする。一方で、側面部12の平面部11に対する傾斜角度が小さいときには、第1及び第2の傾斜部41,42の水平部40に対する傾斜角度を小さく、すなわち、水平部40に対して水平に近付くようにする。これにより、第1及び第2の傾斜カメラ31,32を用いて、第1及び第2の側面部12a,12bがそれぞれ適切に撮影されるようになる。
【0026】
各カメラ3は、プレス部品10が撮影領域に入っているか否かに関わらず、0.1msecの撮影速度で連続して撮影を行うように構成されている。
【0027】
検査装置1は、各正対カメラ30、並びに、各第1及び第2の傾斜カメラ31,32でそれぞれ撮影された画像に基づいてプレス部品10の成形状態を検査するコンピュータ5(検査手段)を備える。本実施形態では、コンピュータ5は2台あり、各コンピュータ5は、それぞれ9台のカメラ3に接続されている。具体的には、1つの正対カメラ30と、当該正対カメラ30に対して搬送方向に隣接する第1及び第2の傾斜カメラ31,32の1台ずつとで構成される複数(本実施形態では6つ)のカメラ群130のうち、3つのカメラ群130の各カメラ3が一方のコンピュータ5に接続され、残りの3つのカメラ群130の各カメラ3が他方のコンピュータ5に接続されている。
【0028】
本実施形態では、各カメラ群130を構成する3個のカメラ3のうち正対カメラ30がメインカメラをそれぞれ構成し、第1及び第2の傾斜カメラ31,32がサブカメラをそれぞれ構成する。本明細書でいう、メインカメラとは、プレス部品10の成形状態を判定するための判定用の画像を撮影する役割に加えて、プレス部品10が搬送されたことを検出する役割を有するカメラのことである。尚、各カメラ群130を構成する3個のカメラ3(正対カメラ30、第1の傾斜カメラ31及び第2の傾斜カメラ32)のうちどのカメラ3をメインカメラにするかは、ユーザーが設定可能である。
【0029】
コンピュータ5は、カメラ3毎にカメラ処理部50を有する。以下の説明では、正対カメラ30、すなわち、メインカメラと接続されたカメラ処理部50をメインカメラ処理部50aという一方、第1及び第2の傾斜カメラ31,32、すなわち、サブカメラと接続されたカメラ処理部50をサブカメラ処理部50bという。メインカメラ処理部50aとサブカメラ処理部50bとを区別しないときには、単に、カメラ処理部50という。尚、図2では、1つのカメラ群130を構成する各カメラ3の各カメラ処理部50のみを示しているが、実際には、コンピュータ5は、各カメラ3に対応するカメラ処理部50をそれぞれ有している。
【0030】
各カメラ処理部50は、各カメラ3で撮影された画像を演算処理する演算部51をそれぞれ有する。各カメラ処理部50は、演算部51で演算処理された画像データに基づいてプレス部品10の成形状態の良否を判定する判定部52をそれぞれ有する。各カメラ処理部50は、カメラ3でプレス部品10が検出されたか否かを判断するための検出部53をそれぞれ有する。各カメラ処理部50は、他のカメラ処理部50に対してプレス部品10を検出したという検出信号を送信する送信部54をそれぞれ有する。各カメラ処理部50は、他のカメラ処理部50から送信された上記検出信号を受信する受信部55をそれぞれ有する。各カメラ処理部50は、対応するカメラ3で撮影されかつ演算部51で演算処理された画像を一時的に保存する一時保存部56をそれぞれ有する。また、各カメラ処理部50は、各種データを記憶する記憶部57をそれぞれ有する。図2に示すように、本実施形態では、各カメラ処理部50は、3つの判定部52をそれぞれ有する。
【0031】
演算部51は、各カメラ3で連続して撮影された各画像を逐次演算して、画像の明暗及び色差から画像データを生成する。具体的には、演算部51は、例えば、各画像の各画素の色強度(R値+G値+B値)を算出する。演算部51は、逐次、演算処理した画像データを検出部53及び一時保存部56にそれぞれ送る。
【0032】
検出部53は、演算部51から送られた画像データに基づいて、プレス部品10が搬送されたことを検出する。具体的には、検出部53は、プレス部品10を検出する前に撮影された画像(以下、検出前画像という)の各画素の色強度に対して、色強度が所定量以上変化した画素の数が所定数以上となったときに、カメラ3でプレス部品10が検出されたと判断する。すなわち、上記検出前画像には、コンベア2が撮影されている。例えば、コンベア2の色が黒であった場合には、上記検出前画像では、ほとんどの画素の色強度が0に近い値になる。そこに、黒以外の色をしたプレス部品10が流れてくれば、該プレス部品10を撮影した画像では、多くの画素で色強度が大きくなる。一方で、例えば、コンベア2の色が白であった場合には、上記検出前画像では、ほとんどの画素の色強度が最大値に近い値になる。そこに、白以外の色をしたプレス部品10が流れてくれば、該プレス部品10を撮影した画像では、多くの画素で色強度が小さくなる。これらのことから、色強度が所定量以上変化した画素の数を算出することで、プレス部品10を適切に検出することができる。詳しくは後述するが、各カメラ処理部50はそれぞれ検出部53を有しているが、実際に作動するのは、メインカメラ処理部50aにおける検出部53のみである。尚、所定色強度とは、背景(例えば、コンベア2の色)とプレス部品10とを区別できる程度の色強度である。また、所定数とは、プレス部品10における上記搬送方向の進行側の一部が撮影領域に入ったことを認識できる程度の画素数である。
【0033】
送信部54は、検出部53からプレス部品10を検出したという信号を受信したときに、上記検出信号を他のカメラ処理部50に送信する。詳しくは後述するが、各カメラ処理部50はそれぞれ送信部54を有しているが、実際に作動するのは、検出部53のときと同様に、メインカメラ処理部50aにおける送信部54のみである。
【0034】
受信部55は、他のカメラ処理部50の送信部54から送信された上記検出信号を受信して、該検出を受信したことを各判定部52にそれぞれ伝達する。詳しくは後述するが、各カメラ処理部50はそれぞれ受信部55を有しているが、実際に作動するのは、サブカメラ処理部50bにおける受信部55のみである。
【0035】
一時保存部56では、演算部51から送られている画像データが逐次保存される。
【0036】
判定部52は、上記検出信号を送信部54が送信した後又は受信部55が受信した後に、判定処理をそれぞれ行う。具体的には、メインカメラ処理部50aの判定部52は、送信部54が上記検出信号を送信した後に判定処理を開始する一方、サブカメラ処理部50bの判定部52は、受信部55が上記検出信号を受信した後に判定処理を開始する。
【0037】
各カメラ処理部50がそれぞれ有する3つの判定部52は、それぞれ独立して判定処理を行うことができる。本実施形態では、各カメラ処理部50では、上記検出信号を送信又は受信した後に、3つの判定部52のうち作動していない判定部52が選択されて、選択された判定部52により判定処理が行われる。各カメラ処理部50では、上記検出信号を送信又は受信した時に、3つの判定部52が全て判定処理中であった場合には、3つの判定部52のうち、現時点で判定処理の実行時間が最も長いもの(最も早い時期に判定処理を開始したもの)の判定処理が中止されて、新たな判定処理が実行される。
【0038】
記憶部57は、プレス部品10が良品時の成形状態の基準データを予め記憶している。判定部52は、一時保存部56から判定処理に必要な画像データを読み出して、該画像データを上記基準データと比較して上記プレス部品10の良否を判定する。判定部52は、例えば、撮影された画像に傷とみなすことができる箇所が1つでもあれば、該傷が検出されたプレス部品10を不良品であると判定する。
【0039】
次に、コンベア2で搬送中のプレス部品10と各カメラ3の撮影領域との関係について説明する。
【0040】
図3(a)に示すように、プレス成形後のプレス部品10がコンベア2で搬送されてくると、まず、プレス部品10は第1の傾斜カメラ31の撮影領域に入る。このとき、プレス部品10は、正対カメラ30及び第2の傾斜カメラ32の撮影領域には入っていない。このため、第1の傾斜カメラ31では、メインカメラである正対カメラ30がプレス部品10を検出する前の段階から、プレス部品10が撮影される。
【0041】
プレス部品10が搬送されると、図3(b)に示すように、プレス部品10は正対カメラ30の撮影領域に入る。これにより、正対カメラ30はプレス部品10を検出する。このとき、プレス部品10は、第2の傾斜カメラ32の撮影領域には入っていない。正対カメラ30がプレス部品10を検出した後に、該正対カメラ30でプレス部品10が撮影される。
【0042】
その後、プレス部品10が搬送されて、図3(c)に示すように、該プレス部品10が第2の傾斜カメラ32の撮影領域に入ると、第2の傾斜カメラ32でプレス部品10が撮影される。このように、第2の傾斜カメラ32では、正対カメラ30がプレス部品10を検出してから、更に時間をおいた後の段階でなければ、プレス部品10を撮影することができない。
【0043】
上記のように、第1及び第2の傾斜カメラ31,32が搬送方向に対して傾斜して配置されていると、判定処理に必要なプレス部品10の画像を撮影するタイミングにずれが生じる。各カメラ30のそれぞれでプレス部品10の検出を行うことも可能であるが、これでは、各カメラ30の各カメラ処理部50がプレス部品10の検出処理とプレス部品10の良否判定とを同時に実行する必要があり、各カメラ処理部50の負荷が大きくなる。この結果、プレス部品10の良否判定に時間がかかってしまうとともに、判定精度が低下するおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、メインカメラ処理部50aのみがプレス部品10の検出処理を実行して、サブカメラ処理部50bは、メインカメラ処理部50aの送信部54から送信された上記検出信号を受信部55で受信した後で判定処理を実行するようにした。すなわち、本実施形態のコンピュータ5は、正対カメラ30がプレス部品10を検出したときには、正対カメラ30のカメラ処理部50であるメインカメラ処理部50aは、第1及び第2の傾斜カメラ31,32のカメラ処理部50であるサブカメラ処理部50bに上記検出信号を送信するように構成されている。
【0045】
図5には、各カメラ処理部50でプレス部品10の良否判定に用いられる画像について模式的に示している。図5においてハッチングをしているものが、プレス部品10の良否判定に用いられる画像である。具体的には、メインカメラ処理部50aの判定部52は、正対カメラ30がプレス部品10を検出したときには、上記検出信号を送信した直後の第1所定期間に撮影された画像の画像データを一時保存部56から読み出して判定処理を行う。第1の傾斜カメラ31のサブカメラ処理部50bの判定部52は、正対カメラ30がプレス部品10を検出したときには、上記検出信号を受信する前の第2所定期間に撮影された画像の画像データを一時保存部56から読み出して判定処理を行う。第2の傾斜カメラ32のサブカメラ処理部50bの判定部52は、正対カメラ30がプレス部品10を検出したときには、上記検出信号を受信してから、予め設定された特定期間が経過した後の第3所定期間に撮影された画像の画像データを一時保存部56から読み出して判定処理を行う。尚、「上記検出信号を送信した直後」とは、上記検出信号の送信と同時を含む。
【0046】
上記第1所定期間は、正対カメラ30がプレス部品10を検出してから、正対カメラ30の撮影領域に平面部11と第2の側面部12bとの間の角部が入るまでの期間を含む期間である。上記第2所定期間は、第1の傾斜カメラ31の撮影領域に第1の側面部12aの高さ方向の全体像が含まれる期間である。上記第3所定期間は、第2の傾斜カメラ32の撮影領域に第2の側面部12bの高さ方向の全体像が含まれる期間である。また、上記特定期間とは、正対カメラ30がプレス部品10を検出してから、第2の傾斜カメラ32の撮影領域に第2の側面部12bの高さ方向の全体像が含まれるまでの期間である。
【0047】
上記第1~第3所定期間及び上記特定期間は、プレス部品10の形状、コンベア2の搬送速度、各カメラ3の撮影領域、及び、支持装置4における第1及び第2の傾斜部41,42の水平部40に対する傾斜角度等に基づいてカメラ3毎にそれぞれ設定されている。尚、上記第1~第3所定期間及び上記特定期間は、全てのカメラ群130で同じでもよく、カメラ群130毎に異なっていてもよい。
【0048】
上記のように制御することで、各カメラ処理部50において、プレス部品10の良否判定を、適切なタイミングで撮影された画像を用いて行うことができる。この結果、プレス部品10の良否の判定精度を向上させることができる。また、プレス部品10の検出はメインカメラ(ここでは、正対カメラ30)のみで実行されるので、サブカメラ処理部50bの負荷を小さくすることができる。これにより、サブカメラ処理部50bの判定部52における、プレス部品10の良否判定の判定速度を早くすることができるとともに、該良否判定の判定精度も向上させることができる。
【0049】
次に、コンピュータ5によるプレス部品10の検査時の処理動作を図6のフローチャートに基づいて説明する。尚、図6に示すフローチャートは、1つのカメラ群130の処理動作である。このフローチャートは、生産ラインが作動している間は繰り返し実行される。
【0050】
まず、ステップS1において、コンピュータ5は、各カメラ3での撮影を開始させる。
【0051】
次のステップS2では、コンピュータ5は、正対カメラ30でプレス部品10を検出したか否かを判定する。これは、メインカメラ処理部50aの検出部53でプレス部品10が検出されたと判断されたか否か基づいていて判定する。コンピュータ5は、メインカメラ処理部50aの検出部53でプレス部品10が検出されたと判断されたYESのときには、ステップS3に進む一方で、メインカメラ処理部50aの検出部53でプレス部品10が検出されたと判断されていないNOのときには、ステップS2に戻り、再び判定を行う。
【0052】
上記ステップS3では、コンピュータ5は、メインカメラ処理部50aの送信部54から、サブカメラ処理部50bに対して検出信号を送信させる。
【0053】
次のステップS4では、コンピュータ5は、上記第2所定期間が経過したか否かを判定する。上記第2所定期間が経過したYESであるときには、ステップS5に進む一方、未だ上記第2所定期間が経過していないNOであるときには、再びステップS4に戻り、再び判定を行う。
【0054】
上記ステップS5では、コンピュータ5は、第1の傾斜カメラ31のサブカメラ処理部50bでのプレス部品10の良否判定を開始する。この判定は、上述したように、一時保存部56から読み出した画像データと記憶部57に記憶されている上記基準データと比較することで行う。
【0055】
次のステップS6では、コンピュータ5は、上記第1所定期間が経過したか否かを判定する。上記第1所定期間が経過したYESであるときには、ステップS7に進む一方、未だ上記第1所定期間が経過していないNOであるときには、再びステップS6に戻り、再び判定を行う。
【0056】
上記ステップS7では、コンピュータ5は、メインカメラ処理部50aでのプレス部品10の良否判定を開始する。この判定の方法は、ステップS5と同様である。
【0057】
次のステップS8では、コンピュータ5は、上記第3所定期間が経過したか否かを判定する。上記第3所定期間が経過したYESであるときには、ステップS9に進む一方、未だ上記第3所定期間が経過していないNOであるときには、再びステップS8に戻り、再び判定を行う。尚、上記第3所定期間が経過したときには、必ず上記特定期間は経過している。
【0058】
上記ステップS9では、コンピュータ5は、第2の傾斜カメラ32のサブカメラ処理部50bでのプレス部品10の良否判定を開始する。この判定の方法は、ステップS5及びS7と同様である。ステップS9の後はリターンする。
【0059】
したがって、本実施形態によると、正対カメラ30と第1及び第2の傾斜カメラ31,32とを備えるため、プレス部品10の平面部11及び側面部12をそれぞれ適切な撮影角度で撮影することができる。また、コンピュータ5は、正対カメラ30、並びに、第1及び第2の傾斜カメラ31,32のそれぞれに対してカメラ処理部50を有しているため、各カメラ30~32に対してそれぞれ適切な処理を行うことができる。したがって、プレス部品10の良否の判定精度を向上させることができる。
【0060】
また、正対カメラ30に対して、第1及び第2の傾斜カメラ31,32は隣接配置されているため、検査装置1の設置スペースを出来る限りコンパクトにすることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、メインカメラとしての正対カメラ30のみがプレス部品10を検出するため、サブカメラ処理部50bの負荷を小さくすることができる。これにより、サブカメラ処理部50bの判定部52での、プレス部品10の良否判定の判定時間を短くすることができるとともに、判定精度をより向上させることができる。また、カメラ3とセンサとを兼用させた状態となるため、別個にセンサを配置する場合と比較して、検査装置1の設置スペースを小さくできるとともに、コストを削減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、メインカメラ処理部50aは、上記検出信号を送信した直後の上記第1所定期間に撮影された画像で判定処理を行い、第1の傾斜カメラ31のサブカメラ処理部50bは、上記検出信号を受信する前の上記第2所定期間に撮影された画像で行い、第2の傾斜カメラ32のサブカメラ処理部50bは、上記検出信号を受信してから、予め設定された上記特定期間が経過した後の上記第3所定期間に撮影された画像で判定処理を行う。これらのことにより、プレス部品10の検出をメインカメラ(ここでは、正対カメラ30)のみで行いつつも、搬送されたプレス部品10の良否判定を、適切なタイミングで撮影された画像を用いて行うことができる。この結果、プレス部品の良否の判定精度を更に向上させることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、メインカメラ処理部50aの検出部53は、撮影された画像の色強度(R値+G値+B値)と画素数とに基づいて、メインカメラがプレス部品10を検出したと判断するため、コンベア2の色及びプレス部品10の色に応じて、搬送されるプレス部品10を、メインカメラで適切に検出することができる。これにより、プレス部品10の良否の判定精度を一層向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、各カメラ3を支持する支持装置4における第1及び第2の傾斜部41,42は、水平部40に対する傾斜角度を変更可能に構成されているため、搬送されるプレス部品10の形状に応じて、第1及び第2の傾斜カメラ31,32の撮影角度を適切な角度に設定することができる。これにより、プレス部品10の良否の判定精度をより一層向上させることができる。
【0065】
ここに開示された技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、サブカメラ処理部50bは、メインカメラ処理部50aからの検出信号を受信したときを基準にして、判定部52での判定に用いる画像を抽出していた。これに限らず、サブカメラ処理部50bが、メインカメラがプレス部品10を検出した画像が撮影された時刻を基準にして、判定部52での判定に用いる画像を抽出してもよい。すなわち、各カメラ3にタイムスタンプ機能を設け、各カメラ3で撮影した画像に対して、撮影時の時刻をタイムスタンプとして記録するようにする。メインカメラがプレス部品10を検出したときには、メインカメラ処理部50aの送信部54は、上記検出信号と共に、プレス部品10を検出した画像に付されたタイムスタンプの情報をサブカメラ処理部50bに送信する。そして、上記検出信号及び上記タイムスタンプの情報を取得したサブカメラ処理部50bは、上記タイムスタンプの情報から、メインカメラがプレス部品10を検出した画像が撮影された時刻を求める。その後、サブカメラ処理部50bは、対応するサブカメラで上記時刻に最も近い時刻に撮影された画像を基準にして、判定部52での判定に用いる画像を抽出する。この構成によると、例えば、プログラム並列処理の遅れや画像データ転送のバッファリングなどの遅れにより、上記検出信号の送信及び受信に遅れが生じたとしても、メインカメラ処理部50aとサブカメラ処理部50bとの同期を適切にとることができる。これにより、判定部52での判定精度の向上を図ることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、各カメラ3は、常に一定の撮影速度で連続して撮影していたが、これに限らず、プレス部品10が確実に撮影領域に入らない期間は、撮影を中止させるようにしてもよい。すなわち、コンベア2ではプレス部品10が一定の間隔で断続的に搬送されているため、1つのプレス部品10を撮影した後、しばらくは、プレス部品10は撮影領域には入らない。このため、例えば、上記第3所定期間が経過した後、予め設定した設定期間の間、各カメラ3での撮影を中止してもよい。このことによると、演算部51での演算処理を少なくすることができるため、各カメラ処理部50の負荷を更に小さくすることができる。
【0068】
さらに、上記実施形態では、プレス部品10が、第1及び第2の側面部12a,12bを有しており、それに対応して、第1及び第2の傾斜カメラ31,32が設けられていたが、これに限らず、平面部11と1つの側面部12とで構成されるプレス部品10の生産ラインでは、正対カメラ30に加えて、第1の傾斜カメラ31又は第2の傾斜カメラ32のいずれか一方のみが設けられる構成であってもよい。さらに、平面部11と2つの側面部12とで構成されるプレス部品10と、平面部11と1つの側面部12とで構成されるプレス部品10とが混在して流れる生産ラインの場合には、前者のプレス部品10が搬送されるときには、全てのカメラ3を作動させる一方、後者のプレス部品10が搬送されるときには、第1の傾斜カメラ31又は第2の傾斜カメラ32のいずれか一方の作動を停止させるようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、各カメラ3は、CCDカメラであったがCMOSカメラであってもよい。また、各カメラ3の撮影速度は、約0.1msecであったが、プレス部品10の大きさやコンベア2の搬送速度等を考慮して、撮影速度を速くしたり、遅くしたりしてもよい。
【0070】
さらに、上記実施形態では、検査手段としてのコンピュータ5は2つであったが、これに限らず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。ただし、コンピュータ5の負荷と検査装置1の設置スペースとを考慮して、2つ程度にすることが望ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、1個の正対カメラ30と2個の傾斜カメラ31,32の3個のカメラ3でカメラ群130を構成していたが、これに限らず、例えば、3個の正対カメラ30と6個の傾斜カメラ31,32の9個のカメラ3でカメラ群を構成してもよい。この場合、9個のカメラ3のうち1個をメインカメラとして、残りのカメラ3(残り8個のカメラ3)をサブカメラとするような構成になる。また、全てのカメラ3(6個の正対カメラ30と12個の傾斜カメラ31,32の計18個のカメラ)でカメラ群を構成してもよい。この場合には、18個のカメラ3のうち1個をメインカメラとして、残りのカメラ3(残り17個のカメラ3)をサブカメラとするような構成になるとともに、コンピュータ5が1つの構成となる。
【0072】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
ここに開示された技術は、平面部及び該平面部周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品を検査するためのプレス部品用検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス部品用検査装置
2 コンベア(搬送手段)
3 カメラ
5 コンピュータ(検査手段)
10 プレス部品
11 平面部
12 側面部
30 正対カメラ
31 第1の傾斜カメラ
32 第2の傾斜カメラ
50 カメラ処理部
50a メインカメラ処理部
50b サブカメラ処理部
51 演算部
52 判定部
54 送信部
55 受信部
56 一時保存部
図1
図2
図3
図4
図5
図6