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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240405BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240405BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240405BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K14/705
C07K19/00
C12N15/867 Z
C12N5/0783
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022548605
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2021075544
(87)【国際公開番号】W WO2021160038
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202010090749.5
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507389842
【氏名又は名称】四川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲うぇい▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 于全
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525033(JP,A)
【文献】国際公開第2020/016897(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/140100(WO,A1)
【文献】KUMARESAN, P. R. et al.,Bioengineering T cells to target carbohydrate to treat opportunistic fungal infection,Proc Natl Acad Sci U S A.,111(29),2014年07月22日,pp.10660-10665
【文献】ARIIZUMI, K. et al.,Identification of a novel, dendritic cell-associated molecule, dectin-1, by subtractive cDNA cloning,J Biol Chem.,275(26),2000年06月30日,pp.20157-20167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体であって、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通ドメイン及び前記細胞内ドメインが共刺激シグナル伝達ドメインを形成し、前記共刺激シグナル伝達ドメインは、逆デクチン-1をコードするアミノ酸配列の完全長を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
細胞外ドメインは、CD19又はHER2を標的とする一本鎖抗体を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
さらに、CD8αヒンジ領域、逆デクチン-1膜貫通ドメイン、逆デクチン-1細胞内シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインがこの順序で連結される、請求項2に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
逆デクチン-1をコードするアミノ酸配列が、配列番号3で表される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
逆デクチン-1膜貫通ドメインをコードするアミノ酸配列が、配列番号2で表される、請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
逆デクチン-1細胞内シグナル伝達ドメインをコードするアミノ酸配列が配列番号1で表される、請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
pCLK、psPAX2及びpMD2.0Gからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体を含むレンチウイルスベクター。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体を発現する、CAR-T細胞。
【請求項9】
請求項8に記載のCAR-T細胞と、薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントとを含む、抗腫瘍剤。
【請求項10】
腫瘍は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含み、かつ、大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、乳がん、胃がん、食道がん及び卵巣がんからなる群から選択される、請求項9に記載の抗腫瘍剤。
【請求項11】
がんの治療において使用するための、請求項8に記載のCAR-T細胞。
【請求項12】
CAR-T細胞は、エフェクターサイトカインの分泌を刺激することができる、請求項11に記載のCAR-T細胞であって、ここで、エフェクターサイトカインは、IFN-γ、TNF-α及びIL-6を含む、CAR-T細胞。
【請求項13】
CAR-T細胞は、刺激された後に、セントラルメモリーT細胞の表現型を示す、請求項11に記載のCAR-T細胞。
【請求項14】
腫瘍は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含み、かつ、大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、乳がん、胃がん、食道がん及び卵巣がんからなる群から選択される、請求項11に記載のCAR-T細胞。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体の合成方法であって、以下の:
(1) 逆デクチン-1膜貫通ドメイン-逆デクチン-1細胞内ドメインの遺伝子配列又は逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を合成する工程;かつ
(2) 標的に応じたプライマーを合成し、オーバーラップPCR法によりキメラ抗原受容体の遺伝子配列を合成する工程;
を含む、合成方法であって、ここで、前記工程(2)は、以下の:プライマーF1及びR1を用いて、細胞外ドメイン及びCD8αヒンジ領域の結合遺伝子配列を増幅する工程、その後、プライマーF2及びR2を用いて、前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を増幅する工程;最後に、結合した前記細胞外ドメイン及びCD8αヒンジ領域の遺伝子配列、並びに前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を鋳型として、前記F1及びR2をプライマーとして用いて、前記キメラ抗原受容体の遺伝子配列を合成する工程であって、
ここで、前記F1は配列番号7で表され、前記R1は配列番号8で表され、前記F2は配列番号9で表され、前記R2は配列番号10で表される、合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願
[1].本出願は、2020年2月13日に出願された中国の発明特許出願[CN2020100907495]である、「キメラ抗原受容体の共刺激シグナル伝達ドメイン及びその応用」という名称の特許出願の優先権を主張する。この優先権発明特許出願の全てが、参照により援用される。
【0002】
技術分野
[2].本発明は、生物医学の分野に属し、詳しくは、キメラ抗原受容体及びその適用に関する。
【背景技術】
【0003】
[3].キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor,CAR)T細胞免疫療法は、非常に有望な腫瘍治療戦略として、一連の進化の過程を経てきた。第1世代CARに仲介されたT細胞の活性化は、CD3ζ又はFceRIg上のチロシン活性化モチーフを介して達成された。ところが、T細胞増殖の減少が最終的にT細胞のアポトーシスにつながるため、第1世代のCAR改変T細胞の抗腫瘍活性は生体内(in vivo)で制限される。第2世代のCARは、4-1BBやCD28などの新しい共刺激シグナルが細胞内に追加された。第1世代のCARと比較して、第2世代のCARは同じ抗原特異性を持ち、T細胞増殖とサイトカイン分泌の増加、抗アポトーシスタンパク質分泌の増加、及び細胞死の遅延を示す。しかしながら、既存のCAR-T 細胞免疫療法は、血液悪性腫瘍の治療においてかなりの進歩を遂げただけであり、固形腫瘍の治療においては限られた成功を収めている。
【0004】
[4].CAR-T細胞免疫療法は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)等の血液悪性腫瘍の治療において進歩を遂げている。今まで、CD19特異的又はBCMA特異的CAR-Tの臨床試験では、48%~95%の範囲の客観的奏効率(ORR)が達成されている。2017年、米国食品医薬品局(US FDA)は、B細胞リンパ腫を標的とする2つのCAR-T細胞製品としてAxicabtageneCiloleucel(KTE-C19、Kite Pharma)及びTisagenlecleuce(CTL019、Novartis)を承認した。Axicabtageneciloleucelの第1/2相臨床試験では、難治性大細胞型B細胞リンパ腫の108人の患者が2年間追跡調査されていた。その結果から、患者の83%が客観的奏効(OR)を、58%が完全奏効(CR)を達成し、平均追跡期間が15.4ヶ月(IQR 13.7-17.3)であったことが判明した。これは、CAR-T細胞療法が長期の奏効を維持できることを示唆している。しかし、固形腫瘍の治療において、CAR-T細胞療法は依然として多くの課題に直面している。例えば、適切な腫瘍特異的抗原の欠如、腫瘍微小環境の抑制、CAR-T細胞の局在化と持続性の不足などがある。さらに、持続的な抗原曝露はCAR-T細胞の枯渇につながる可能性があり、その結果、CAR-T細胞の腫瘍に対する有効性が損なわれる。したがって、固形腫瘍の治療のためには新しいCARを設計する必要がある。
【0005】
[5].デクチン-1、すなわちCLEC-7Aは、C型レクチン受容体(CLRs)の新しいサブグループである。デクチン-1には、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインが含まれる。デクチン-1の細胞外部分は、真菌を標的とするCAR-T細胞のscFvとして使用されている。デクチン-1は、主に好中球、単球、樹状細胞、マクロファージなどの骨髄細胞に発現するだけでなく、ヒトT細胞やB細胞の特定のサブセットにも発現する。デクチン-1は、NK細胞を活性化することにより、腫瘍の増殖と転移において重要な役割を果たす。デクチン-1は、DC成熟、抗原提示、サイトカイン及びケモカイン産生などの様々な細胞応答も調節できる。さらに、理論的には、デクチン-1は先天性免疫記憶を直接誘導し、CD8、CD4、T細胞、及びB細胞の発生に影響を与える可能性がある。
【0006】
[6].要するに、本発明の実験チームは、上記の課題の少なくとも1つを解決するために、デクチン-1を共刺激シグナル伝達ドメインとして第2世代のCAR構造に組み込むことにより、新しい第2世代のCAR-T細胞を設計し、また、それによって改変された新しい第2世代のCAR-T細胞の機能と抗腫瘍活性を評価した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[7].これに鑑みて、本発明の目的は、新しい第2世代のCAR構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[8].細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含むキメラ抗原受容体であって、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通ドメインと前記細胞内ドメインとが共刺激シグナル伝達ドメインを構成し、前記共刺激シグナル伝達ドメインには、逆デクチン-1をコードするアミノ酸配列の全長又は断片が含まれる。
[9].また、前記細胞外ドメインには、CD19を標的とするか、又はHER2を標的とする単鎖抗体が含まれる。
[10].また、前記キメラ抗原受容体はさらに、CD8αヒンジ領域と、逆デクチン-1膜貫通ドメインと、逆デクチン-1細胞内シグナル伝達ドメインと、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインとを順次接続して含む。
[11].また、前記逆デクチン-1をコードするアミノ酸配列が配列番号3によって表される。
[12].また、前記逆デクチン-1膜貫通ドメインをコードするアミノ酸配列が配列番号2によって表される。
[13].また、前記逆デクチン-1細胞内シグナル伝達ドメインをコードするアミノ酸配列が配列番号1によって表される。
【0009】
[14].上記いずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を包含するレンチウイルスベクター。
[15].また、前記レンチウイルスベクターは、pCLK、psPAX2又はpMD2.0Gを含む。
【0010】
[16].本発明の他の目的は、上記の新しい第2世代のCARに従って改変されたCAR-T細胞及びその応用を提供することにある。
[17].前記キメラ抗原受容体を発現させるCAR-T細胞。
[18].前記CAR-T細胞と、薬学的に許容される副原料及び/又は補助剤とを含有する抗腫瘍薬。
[19].また、前記腫瘍は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含む。
[20].また、前記腫瘍は、大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、乳がん、胃がん、食道がん、又は卵巣がんを含む。
[21].前記CAR-T細胞の抗腫瘍薬の調製への応用。
[22].また、前記CAR-T細胞は、エフェクターサイトカインの分泌を刺激することができる。
[23].また、前記エフェクターサイトカインは、IFN-γ、TNF-α及びIL-6を含む。
[24].また、前記CAR-T細胞は、刺激された後にセントラルメモリーT細胞の表現型を示すことができる。
[25].また、前記腫瘍は、血液腫瘍及び固形腫瘍を含む。
[26].また、前記腫瘍は、大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、乳がん、胃がん、食道がん、又は卵巣がんを含む。
【0011】
[27].本発明のさらに他の目的は、上記のキメラ抗原受容体を合成する方法を提供することにある。
[28].前記キメラ抗原受容体の合成方法であって、(1)前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-逆デクチン-1細胞内ドメインの遺伝子配列又は逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を合成する工程と、(2)標的に応じてプライマーを合成してからオーバーラップPCR法を使用して前記キメラ抗原受容体の遺伝子配列を合成する工程と、を含むことを特徴とする合成方法。
[29].また、前記工程(2)では、具体的には、まず、プライマーF1及びR1を用いて、前記CD8αヒンジ領域と結合した前記細胞外ドメインの遺伝子配列を増幅し、その後、プライマーF2及びR2を用いて、前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を増幅し、最後に、前記CD8αヒンジ領域と結合した前記細胞外ドメインの遺伝子配列と前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインの遺伝子配列を鋳型、F1とR2をプライマーとして、前記キメラ抗原受容体の遺伝子配列の合成を行った。
[30].また、前記プライマーF1が配列番号7、R1が配列番号8、F2が配列番号9、R2が配列番号10によって表される。
[31].前記逆デクチン-1膜貫通ドメイン-逆デクチン-1細胞内ドメインの遺伝子配列を合成する方法は同じである。
【発明の効果】
【0012】
[32].有益な効果
[33].本発明は、逆デクチン-1を共刺激シグナル伝達ドメインとした新しい第2世代のCAR構造、及びそれから調製されたCAR-T細胞を提供する。本発明の生体内外実験の結果から、新しいCAR設計がデクチン-1共刺激を通じてT細胞機能に影響を与え、複数のサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6など)の分泌と溶解能力の増強、枯渇の軽減、細胞増殖の増加、及び顕著な抗腫瘍活性を達成したことが判明した。本発明により提供される新しいCAR-T細胞は、様々な固形腫瘍及び血液悪性腫瘍に対して有効であることが実験で証明されている。
[34].本発明の実施形態又は従来の技術における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施形態又は従来の技術の説明で使用される添付の図面を簡単に紹介する。 明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な努力なしにこれらの図面から他の図面を取得することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[35].CAR構築物と発現を示す図であり、(A)は膜貫通ドメインと細胞内ドメインにおいて異なる、HER2又はCD19に結合した単鎖断片を包含するキメラ受容体の模式図であり、(B)はhH8-BBz CARとhHD-Dz CAR及びh198-BBz CARとh19D-Dz CARのヒトT細胞の表面での発現を示す図である。
図2】[36].CAR-T細胞の生体外でのサイトカインの産生と細胞毒性の産生を示す図であり、具体的には、4つの異なるCAR-T細胞又はコントロールT細胞(標的陽性或いは陰性腫瘍細胞と一晩共培養した細胞(E:T=10:1又は5:1))からの上清液中の(A)IFN-γ、(B)IL-6及び(C)TNF-αのELISAによる定量分析(n=3/群)を行い、また、一元配置分散分析を通じて統計分析を行ってからTukeyの事後分析を行い、P<0.05である場合は有意と見なされ、また、(D)RTCA分析はT細胞溶解能力を示した(n=4/グループ)。
図3】[37].HER2特異的CAR-T細胞の表現型、枯渇マーカーの発現、及びCAR発現を示す図であり、(A)は、CD3又はCD4又はCD8又はナイーブ(TN)(CD45RA-/CD62L-)セントラルメモリーT細胞(TCM)(CD45RO+/CD62L+)又はエフェクターメモリーT細胞(TEM)(CD45RO+/CD62L-)を含む、各CAR-T細胞の表現型特性のフローサイトメトリー密度マップであり、(B)は、PD-1又はLAG3又はCTLA-4又はTIM3を持つ細胞を含む、各CAR-T細胞阻害分子のフローサイトメトリー密度マップであり、(C)は、フローサイトメトリーで測定されたhH8-BBz CAR-T細胞及びhHD-Dz CAR-T細胞の経時的なCAR発現を示す図である。
図4】[38].HER2特異的CAR-T細胞の生体内抗腫瘍活性を示す図であり、(A)はSK-OV-3-luc担がんモデルの生体内リアルタイムイメージング(n=4/グループ)を示す図であり、(B)は各グループの全生存率のカプランマイヤー分析を示す図である。
図5】[39].HER2を標的とする第2世代のキメラ抗原受容体(RD-1)の構造模式図である。
図6】[40].従来の第2世代のCARの遺伝子をトランスフェクトされたヒトT細胞の発現検出を示す図である。
図7】[41].新しい第2世代のCAR(RD-1)の遺伝子をトランスフェクトされたヒトT細胞の発現検出を示す図である。
図8】[42].HER2陽性腫瘍細胞SKOV3及びHER2陰性腫瘍細胞MDA-MB-468を標的としてIFN-γを分泌するCAR-T細胞(RD-1)の検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[43].言及された実施例は、本発明をよりよく説明するためのものであるが、本発明の内容はこれらの実施例に限定されない。したがって、当業者は、本発明の上述の内容に従って、実施形態に対して本質的でない改良や調整を行い、これらの改良や調整も本発明の保護範囲に属する。
[44].注意すべきことは、ここにおいて、「含む」、「包含する」、又はそれらの任意の他の変形語という用語は、非排他的な包含をカバーすることを意図しているということである。したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含む。さらなる限定がない場合は、「一つの……を含む」という語句によって限定される要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置における追加の同一要素の存在を排除しない。
[45].例えば、本明細書で使用される「約」という用語は、典型的には記載された値の+/-5%、より典型的には該当値の+/-4%、より典型的には該当値の+/-3%、より典型的には該当値の+/-2%、さらに典型的には該当値の+/-1%、さらに典型的には該当値の+/-0.5 %として表示される。
[46].本明細書では、特定の実施形態をある範囲内の形式で開示することができる。この「ある範囲内」の説明は、ただ便宜や簡潔さを図るためのものであり、開示された範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分範囲を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1 から6の範囲の説明は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6、など、及びこの範囲内の1、2、3、4、5、及び6などの個々の番号を具体的に開示したと見なされるべきである。上記のルールは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0015】
[47].「RD-1」は逆デクチン-1(Reverse Dectin-1)であり、そのアミノ酸配列は配列番号3に示すように「GLVVAIVLIVLCLIGLIVAILRWPPSAACSGKESVVAIRTNSQSDFHLQTYGDEDLNELDPHYEM」であり、デクチン-1のアミノ酸配列は配列番号4に示すように「MEYHPDLENLDEDGYTQLHFDSQSNTRTAVVSEKGSCAASPPWRLIAVILGILCLVILVIAVVLG」である。「RD-1細胞内ドメイン」のアミノ酸配列は、配列番号1に示すように「RWPPSAACSGKESVVAIRTNSQSDFHLQTYGDEDLNELDPHYEM」であり、「RD-1膜貫通ドメイン」のアミノ酸配列は、配列番号2に示すように「GLVVAIVLIVLCLIGLIVAIL」である。本発明者は研究を行った結果、新しい第2世代のCARの調製において、逆デクチン-1を共刺激ドメインとして使用すると、デクチン-1の活性と機能を効率的に生成し維持できる(つまり、T細胞機能に影響を与え、複数のサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6など)の分泌と溶解能力の増強、枯渇の軽減、細胞増殖の増加、及び顕著な抗腫瘍活性を達成できる)ことを見い出した。したがって、ここにおいては、特に明記しない限り、CAR構造のデクチン-1は逆デクチン-1を指す。
【実施例1】
【0016】
[48].実施例1
[49].材料と方法
[50].1.細胞株:すべての細胞株はATCCに由来した。K562細胞(骨髄性白血病)及びNALM6細胞(リンパ球性白血病)を、RPMI-1640で、熱失活化された10%ウシ胎児血清(FBS)(PAN,Germany.Cat:ST30-3302)、ペニシリン(100U/mL)(Gibco,Thermo Fisher,Waltham,MA.Cat:SV30010)及びストレプトマイシン(100ug/mL)(Gibco,Thermo Fisher,Waltham,MA.Cat:SV30010)とともに培養した。ヒトがん細胞株SK-OV-3(卵巣嚢胞腺がん)及びMDA-MB-468(乳がん)を、熱失活化された10%FBS、ペニシリン(100U/mL)及びストレプトマイシン(100ug/mL)を含有するDMEMで培養した。SK-OV-3は、ルシフェラーゼを発現するように設計された。
【0017】
[51].2.CARをコードするプラスミドの構築
[52].抗CD19又は抗HER2のCARsには、CD19(クローンFMC63)又はHER2(クローン4D5)に特異的な単鎖可変断片(scFv)が含まれる。scFvの後には、ヒトCD8αヒンジ領域が続き、その後にヒトCD8α膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB又はCD3ζ細胞内ドメイン(ICDs)が続く。CARsの配列は、オーバーラップPCRを使用して形成された。各CAR配列をコードする単一のレンチウイルスプラスミドは、PCLKレンチウイルスベクターを用いたダブルダイジェストによって構築された。構築された4つのCARs配列は次のとおりである。
【0018】
[53].1)hH8-BBZ:HER2 scFv-CD8α(hinge+TM)-4-1BB-CD3ζICDs
[54].2)hHD-DZ:HER2 scFv-CD8αhinge+Dectin-1(TM+cytoplasm)-CD3ζICDs
[55].3)h198-BBZ:CD19 scFv-CD8α(hinge+TM)-4-1BB-CD3ζICDs
[56].4)h19D-DZ:CD19 scFv-CD8αhinge+Dectin-1(TM+cytoplasm)-CD3ζICDs
[57].3.レンチウイルス粒子の製造
[58].ATCCから購入したHEK-293T細胞(胎児腎臓細胞)を、DMEMで、熱失活化された10%ウシ胎児血清(FBS)(PAN,Germany.Cat:ST30-3302)、ペニシリン(100U/mL)及びストレプトマイシン(100ug/mL)(Gibco,Thermo Fisher,Waltham,MA.Cat:SV30010)とともに培養した。
[59].上清液を含有するレンチウイルスを生成するために、まず、プラスミドとしてpsPAX2及びpMD2.0G(Invitrogen)をコードする適切なCARを用いて、HEK-293T細胞を上記のプラスミドでトランスフェクトした。12時間のトランスフェクションの後に培地を交換した。上清液を回収し、遠心分離して細胞破片を除去した。上清液を濾過し、19,700rpmで2時間の超遠心分離により濃縮した。上清液を捨てた。該当レンチウイルス粒子をPBS培地に溶解し、濃縮レンチウイルスを-80℃で保存した。濃縮レンチウイルス力価は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-RT-PCR)によって測定された。
【0019】
[60].4.CAR-T細胞の分離、形質導入、産生及び拡大
[61].末梢血単核細胞(PBMCs)は健康な献血者の血液からFicoll-hypaque密度勾配法(Lonza,Cat:04-418Q)によって分離された。すべてのサンプルは生物治療国家重点実験室倫理委員会からインフォームドコンセント且つ承認を得た後に取得された。
[62].5%ヒト血清(Sigma-Aldrich、H4522)及び100U/ml組換えヒトIL-2(rhIL-2)(PeproTech,NJ,USA.Cat:200-02-10)を含有するX-VIVO15培地(Sigma-Aldrich,Cat:10771)で培養されたPBMC。PBMCは、抗CD3/CD28電磁ビーズ(Gibco,Thermo Fisher,Waltham,MA.Cat:11131D)に刺激された。24時間後、T細胞を感染多重度(MOI)が5のレンチウイルスとともに48時間培養し、次いで細胞を洗浄し、T細胞培地で培養した。形質導入効率は、フローサイトメトリーによって測定されたCARの発現により決定された。
【0020】
[63].5.フローサイトメトリー
[64].すべてのフローサイトメトリーは新生細胞フローサイトメーター(ACEA Biosicences,Inc.)で実施され、データ分析は新生細胞発現(ACEA Biosicences,Inc.)で行われた。
[65].ビオチン-SP結合アフィニティヤギ抗マウス IgG(Cat:120962,Jackson Immune Research)を使用して、F(ab’)2断片はPE-ストレプトアビジン(Cat:405203、BD Biosciences)に特異的に結合し、その形質導入効率と関連するCARタンパク質の発現を評価した。
[66].次の抗体は、分化表現型及び枯渇マーカー分析に使用された。
[67].anti-CD3-FITC(clone:HIT3a,Cat:300306,Biolegend)、anti-CD8-APC(clone:HIT8a,Cat:300912,Biolegen)、anti-CD4-PE(clone:RPA-T4,Cat:300508,Biolegend)、anti-CD45RO-PE(BD Biosciences,clone:UCHL1,Cat:555493)、anti-CD62L-APC(BD Biosciences,clone:DREG-56,Cat:559772)、anti-PD-1-APC(clone:EH12.2H7,Cat:329908,Biolegend)、anti-CTLA-4-APC(Cat:369612,Biolegen)、anti-LAG3-APC(Cat:369212,Biolegend)、anti-TIM3-APC(Cat:345012,Biolegend)。
【0021】
[68].6.生体外サイトカインアッセイ
[69].標的細胞(NALM6、K562、SK-OV-3又はMDA-MB-468、1×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、5%CO中、37°Cで一晩インキュベートした。その後、CAR-T細胞を効果/標的(E:T)が5又は10の割合で添加した。CAR-T細胞数は、形質導入効率によって正規化された(normalized)。標的細胞との24時間の共培養の後に上清液を回収した。Invitrogenのサイトカインアッセイ用ELISAキット(IFN-γCat:88-7316-88、TNF-α Cat:88-7346-88、IL-6Cat:88-7066-88)を使用して定量的検出を行った。
【0022】
[70].7.リアルタイム細胞毒性アッセイ(Real-time cytotoxicity assays,RTCA)
[71].CAR-T細胞の細胞毒性は、リアルタイム細胞毒性アッセイによって測定された(ACEA Bioscience,Inc.xCELLigence RTCA SP)。SK-OV-3又はMDA-MB-468細胞を、E-plate 96アッセイプレートで1x10細胞/ウェルで約24時間培養した。CAR-T細胞(hH8-BBz及びhHD-Dz)又はコントロールT細胞(モックT細胞)を効果/標的が10の割合でプレートに添加し、製造元のプロトコルに基づいてデータの収集と分析を行った(ACEA 162 Bioscience,Inc.RTCA Software2.1)。
【0023】
[72].8.生体内異種移植研究
[73].6週齢のメスのB-NSGマウス(NOD-PrkdcscidIL2rgtm1/Bcgen)をこの研究に使用した。各マウスに2×10個のSK-OV-3-luc細胞を腹腔内注射した。
[74].SK-OV-3-luc細胞は、ルシフェラーゼを発現できるように SK-OV-3 細胞から設計され、その後の腫瘍生物発光イメージング実験で蛍光シグナルを介して腫瘍増殖を表示する。
[75].腫瘍増殖の3日後に再び1×10個のCAR-T細胞(hH8-BBz又はhHD-Dz又はコントロール)を腹腔内注射した。さらに3日後、再び各マウスにCAR-T細胞を腹腔内注射した。予定された3、10、17、24、31、及び55日目に、IVIS(Intravital Imaging System)によって腫瘍の生物発光イメージング(BLI)を実施した。腫瘍フラックス(光子/秒/cm/ステラジアン)は、腫瘍周辺の関心領域(ROI)内の光子信号を測定することによって定量化された。BLIデータは、生体イメージングソフトウェア(v2.50、Xenogen、Caliper Life Sciences)を使用して提示された。生存分析データは、各マウスの死亡時に確立された。
【0024】
[76].9.データ
[77].GraphPad Prism v6.01(GraphPad Software Inc.)及びSPSS v17を使用して、統計プロットと分析を行った。データは平均値±SDとして表示された。一元配置分散分析は、単一条件下での3つのグループの比較に使用された。
[78].カプランマイヤー生存データは、ログランク(Mantel-Cox)検定を通して分析された。標準化された分散が必要な場合は、データを変換した。記号は統計的有意性を*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001のように示した。
【実施例2】
【0025】
[79].実施例2
[80].1.デクチン-1共刺激シグナル伝達ドメインを持つ新しいCAR構造
[81].本発明では、CD19又はHER2エピトープを標的とするscFvドメインをデクチン-1 TM、デクチン-1及びCD3ζICDに結合することにより、新しい第2世代のCAR構築物が設計された(図1A)。最もよく使用される第2世代の CAR構築物 (4-1BB 及び CD3ζICDs を持つヒト CD8αTM) の一部を使用して、2つの追加のCAR構築物を生成した。構築されたすべてのCARは、T細胞の表面に発現していた(図1B)。抗HER2のCARsに関して、hH8-BBz(4-1BB)のCAR発現率は49.61%であり、hHD-Dz(デクチン-1)のCAR発現率は46.17%であった。抗CD19 のCARsに関して、h198-BBz(4-1BB) のCAR発現率は92.95%、h19D-Dz(デクチン-1)のCAR 発現率は95.07% であった。抗HER2 CARの発現は抗CD19 CARの発現よりも低かったが、異なる共刺激シグナル伝達ドメインを包含する抗HER2又は抗CD19 CARの間で発現レベルに有意差はなかった。
【0026】
[82].2.デクチン-1共刺激の新しいCAR-T細胞効果機能に対する影響
[83].一般的に、CAR-T細胞の後期のエフェクター機能は、サイトカインの分泌によって評価できる。したがって、HER2又はCD19を発現する腫瘍細胞への曝露後に、新しいCAR-T細胞からのサイトカイン放出に対する、共刺激シグナル伝達分子としてのデクチン-1の影響が評価された。
[84].陽性細胞株(SK-OV-3及びNALM6)を標的とするデクチン-1シグナル伝達ドメインの取り込み後、抗HER2又は抗CD19 CAR-T細胞によって放出されるエフェクターサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、及びIL-6など)が大幅に増加した(図2A、2B、及び2C)。本研究における抗HER2 CAR-T細胞は、MD-MB-468(陰性細胞株)に対するサイトカイン産生の有意な増加を示すことがなかった(図2A、2B、及び2C)。SK-OV-3細胞株では、hHD-Dz CAR-T細胞はhH8-BBz CAR-T細胞よりも高いIFN-γレベルを示した。対照的に、hH8-BBz CAR-T細胞はより多くのTNF-αを分泌した(図2A、2B、及び2C)。NALM6細胞株では、h19D-Dz CAR-T細胞は、h198-BBz CAR-T細胞と同様のレベルのIFN-γ及びTNF-αを産生した(図2A、2B、及び2C)。
[85].抗原結合(antigen engagement)とCAR-T細胞の活性化を説明するために、抗HER2 CAR-T細胞の細胞毒性機能をさらに研究した。抗HER2 CAR-T細胞をSK-OV-3又はMDA-MB-468腫瘍細胞株と共培養した後、hHD-Dz及びhH8-BBz CAR-T細胞の両方がSK-OV-3腫瘍細胞を効率的に溶解することが観察されてきた。hHD-Dz CAR-T細胞は、hH8-BBz CAR-T細胞よりもはるかに強い細胞毒性溶解機能を示した(図2D)。
【0027】
[86].3.抗HER2 CAR-T細胞の表現型と枯渇マーカーの発現
[87].7日間の細胞増殖後、抗HER2 CAR-T細胞とコントロールT細胞の表現型と枯渇マーカーの発現を分析した(図3)。
[88].hHD-Dz、hH8-BBz CAR-T及びコントロールT細胞は、同様のCD4+又はCD8+T細胞の割合を示した(図3A)。エフェクターメモリーT(TEM、CD45RO+CD62L-)の同程度の割合がhHD-Dz及びhH8-BBz CAR-T細胞で観察されてきたが、hHD-Dz CAR-T細胞はhH8-BBz CAR-T細胞よりも多くのセントラルメモリーT細胞(TCM、CD45RO+CD62L+)を示した(図3A)。
[89]本発明はまた、PD-1、CTLA-4、TIM3及びLAG3を含む、抗HER2 CAR-T細胞(図3B)における抑制性受容体の発現パターンを評価した。
[90].その結果から、hHD-Dz CAR-T細胞におけるPD-1又はLAG3陽性細胞が、hH8-BBz CAR-T細胞におけるものより約10%少ないことが分かった。TIM3及びCTLA-4陽性細胞に関して、hHD-Dz及びhH8-BBz CAR-T細胞で同様の割合が観察されてきた(図3B)。
[91].本発明は、抗HER2 CAR発現の経時変化をさらに調査した。CAR発現は、96時間以内に低下することがあったが、さらに48時間が経つと90%以上に達した(図3C)。
[92].要するに、上記の結果から、新しいCAR-T細胞のデクチン-1シグナル伝達ドメインが、有意な表現型と枯渇マーカーの発現、及び離散(discrete)T細胞の増殖能につながる可能性があることが判明した。
【0028】
[93].4.抗HER2 CAR-T細胞の生体内抗腫瘍活性
[94].異種移植されたSK-OV-3-luc腫瘍細胞を担持するNSGマウスを利用して、本発明は、抗HER2 CAR-T細胞(hH8-BBz又はhHD-Dz CAR-T細胞)の生体内抗腫瘍活性をさらに研究した。全生存率と腫瘍体積を評価した (図4)。コントロールT細胞治療を施したマウスと比較して、抗HER2 CAR-T細胞療法は腫瘍の進行を遅らせ(図4A)、抗HER2 CAR-T細胞群の担癌マウスの生存期間の中央値は少なくとも2倍になった(図4B)。ログランク(Mantel-Cox)検定では、抗HER2 CAR-T細胞群とコントロールT細胞群との間で統計的に有意な生存率の差が示された。さらに、hHD-Dz CAR-T細胞群のマウスの100%は55日目にまだ生存していたが、hH8-BBz CAR-T細胞群はより長い全生存期を示した(図4B)。
【実施例3】
【0029】
[95].実施例3
[96].本実施例はさらに、キメラ抗原受容体の共刺激シグナル伝達ドメインを提供する。前記共刺激シグナル伝達ドメインは、RD-1の細胞内領域を包含する。
[97].また、前記共刺激シグナル伝達ドメインはCD3ζを包含する。
[98].また、前記RD-1細胞内領域は、配列番号1を含有するアミノ酸配列、又は配列番号1と90%以上同一であるアミノ酸配列を包含する。
[99].また、前記共刺激シグナル伝達ドメインは、さらに、CD3、CD4、CD8、FcR、DAP10、DAP12、CD27、CD28、CD137、CD134、ICOS、OX40、CD30、CD40、PD-1、LFA-1、CD2、CD7、LIGHI、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(IGHTR)、SLAMF7、NKp80 KLRE1、CD160、CD19、CD83、IL-2R、IL-R、IL-7R、ITGA4、VLA1、CD49、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、LA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11、LFA-1、ITGAM、CIIB、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7 TAFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1 CRTAM、Ly9(CD229)、D160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108 SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAME8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76 PAG/Cbp、NKp4、NWKp30、NKp46、NKG2Dから選ばれた1種又は複数種を包含する。
[100].本実施形態はさらに、前述の共刺激シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。
[101].また、前記キメラ抗原受容体は、抗原認識ドメイン、CD8αヒンジ領域、膜貫通領域、RD-1細胞内領域、及びCD3ζを順次接続して含む。
[102].また、前記膜貫通領域は、細胞膜上に前記キメラ抗原受容体を固定することができるアミノ酸配列を包含する。
[103].また、前記膜貫通領域はRD-1膜貫通領域を包含する。
[104].また、前記RD-1膜貫通領域は、配列番号2のアミノ酸配列を含有するアミノ酸配列、又は配列番号2と90%以上同一であるアミノ酸配列を包含する。
[105].好ましくは、前記抗原認識ドメインはHER2結合ドメインである。
[106].また、前記キメラ抗原受容体は、配列番号5を含有するアミノ酸配列を包含する。
[107].好ましくは、前記抗原認識ドメインはCD19結合ドメインである。
[108].また、前記キメラ抗原受容体は、配列番号6を含有するアミノ酸配列を包含する。
[109].本実施形態はさらに、前記のキメラ抗原受容体の合成方法を提供する。前記方法は、(1)RD-1-CD3ζ遺伝子配列を合成する工程と、(2)キメラ抗原受容体遺伝子配列を合成する工程と、を含む。
[110].また、前記工程(2)では、具体的には、まず、プライマーF1及びR1を用いて、CD8αヒンジ領域と結合した抗原認識ドメインの遺伝子配列を増幅し、その後、プライマーF2及びR2を用いて、前記RD-1-CD3ζ遺伝子配列を増幅し、最後に、CD8αヒンジ領域と結合した前記抗原認識ドメインの遺伝子配列と前記RD-1-CD3ζ遺伝子配列を鋳型、F1とR2をプライマーとして、前記キメラ抗原受容体の遺伝子配列の合成を行った。
[111].また、前記プライマーF1が配列番号7、R1が配列番号8、F2が配列番号9、R2が配列番号10によって表される。
[112].合成された(anti-HER2 scFV)-(CD8αhinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)のアミノ酸配列は配列番号5である。
[113].本実施形態はさらに、前記のキメラ抗原受容体及びベクター構築を発現する組換えプラスミドベクターを提供する。
[114].また、前記発現ベクターはpCLKベクターである。
[115].本実施形態はさらに、MluI及びSpeIを制限酵素切断部位として使用し、前記キメラ抗原受容体遺伝子と前記発現ベクターを連結し、それによって前記組換えプラスミドベクターを得ることを含む、前述の組換えプラスミドベクターの構築方法を提供する。
[116].本実施形態はさらに、前記のキメラ抗原受容体で改変された免疫細胞を提供する。
[117].また、前記免疫細胞はTリンパ球である。
[118].また、前記免疫細胞には、Bリンパ球、Kリンパ球、及びNKリンパ球の1種又は複数種も含まれる。
[119].本実施形態はさらに、前述の免疫細胞を得る方法を提供する。前記方法は、MluI及びSpeIを制限酵素切断部位として使用し、前記キメラ抗原受容体遺伝子と発現ベクターを連結して組換えプラスミドベクターを得る工程と、前記組換えプラスミドベクター及びパッケージングプラスミドを培養細胞に共移入し培養することにより組換えウイルス粒子を得る工程と、免疫細胞を前記組換えウイルス粒子で改変する工程と、を含む。
[120].また、前記改変方法は、ウイルスベクターシステム又は非ウイルスベクターシステムを使用することを含む。
[121].また、前記ウイルスベクターシステムには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及びセンダイウイルスベクターの1種又は複数種が含まれる。
[122].また、前記非ウイルスベクターシステムには、トランスポゾンシステム、CRISPR遺伝子編集システム、TALENシステム、リポソームトランスフェクションシステム、及びエレクトロトランスフェクションシステムの1種又は複数種が含まれる。
【0030】
[123]本発明の目的は、前述の免疫細胞の、抗腫瘍薬組成物の調製への応用をさらに提供することにある。
[124].また、前記抗腫瘍薬組成物は、化学薬品をさらに含むことを特徴とする。
[125].また、前記化学薬品には、シクロホスファミド及び/又はフルダラビンが含まれる。
[126].また、前記抗腫瘍薬組成物は、抗乳がん及び/又は抗卵巣がん薬である。
[127].本実施形態はさらに、前述のキメラ抗原受容体を包含する組成物を提供する。前記組成物はさらに、前記共刺激シグナル伝達ドメインに結合したβ-グルカン受容体、Syk、CR3、及びCD11bの1種又は複数種を含む。
[128].この例でCAR遺伝子を取得するために使用したプライマーを表1に示す。
[129].表1 CAR遺伝子を取得するために使用したプライマー
【0031】
【表1】
【実施例4】
【0032】
[130].実施例4
[131].全長抗原がHER2であるCAR遺伝子をPCRで取得する:
[132].(1)工程1、遺伝子の合成:RD-1(TM+cytoplasmic)-CD3ζの全長断片を合成する。
[133].(2)工程2、プライマーを合成し、オーバーラップPCR法を使用して、(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)融合断片を取得する
具体的には、次の2つの工程がある。
[134].(2.1)プライマーF1、R1を使用して(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)を増幅し、F2、R2を使用して(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)を増幅する。
[135].(2.2)次に、(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)及び(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)を鋳型、F1とR2をプライマーとして、PCRにより全長CAR遺伝子を取得する。
[136].合成された(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)のアミノ酸配列は配列番号5である。
【0033】
[137].抗原がHER2であるCARの組換えプラスミドベクターの構築:
[138].(1)工程1、遺伝子の合成:RD-1(TM+cytoplasmic)-CD3ζの全長断片を合成する。
[139].(2)工程2、プライマーを設計し、オーバーラップPCR法で(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)融合断片を取得する。具体的には、次の2つの工程がある。
[140].(2.1)プライマーF1、R1を使用して(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)を増幅し、F2、R2を使用して(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)を増幅する。
[141].(2.2)(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)及び(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)を鋳型、F1とR2をプライマーとして、PCRにより全長CAR遺伝子を取得する。
[142].(3)工程3、MluIとSpeIを制限酵素切断部位として、上記の工程で合成したCAR遺伝子とPCLKベクターを接続し、CAR-PCLKプラスミドベクターを取得する。
【0034】
[143].Tリンパ球のウイルストランスフェクションと標的遺伝子発現の検出:
[144].キメラ抗原受容体遺伝子を持つ新しい第2世代CAR遺伝子(anti-HER2 scFV)-(CD8αhinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)(図5に模式的に示すように)と従来の第2世代CAR遺伝子(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge+TM)-(4-1BB)-(CD3ζ)(図5に模式的に示すように)がレンチウイルスベクターPCLKにそれぞれロードし、2つのヘルパーベクターpsPAX2及びpMD2.GをT細胞にコトランスフェクトし、それぞれにパッケージングしてウイルス粒子を取得し、遠心濃縮後、高濃度のレンチウイルスベクターが得られた。
[145].(2)密度勾配遠心法によりリンパ球を分離し、リンパ球をCD3抗体(1ug/ml)とIL-2(100IU/ml)で刺激を与えた。1日後、ウイルストランスフェクションのためにリンパ球を収集し、リンパ球を48時間培養し、トランスフェクトされたリンパ球を収集した。
[146].(3)収集したウイルストランスフェクトされたリンパ球を、抗体のFabフラグメントを認識する特異抗体を用いてフローサイトメトリーによって検出された。
[147].図6は、従来の第2世代CAR遺伝子をトランスフェクトしたヒトT細胞の発現検出を示している。一次抗体はビオチン標識ヤギ抗マウスFabモノクローナル抗体で、二次抗体はPE標識anti-streptavidinフロースルー抗体であった。第1のトラックはエンプテウイルスをトランスフェクトしたT細胞で、第2のトラックはCAR遺伝子をトランスフェクトしたT細胞である。(図2では、hH8-BBzは伝統的な第2世代CAR遺伝子(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge+TM)-(4-1BB)-(CD3ζ)である。)。
[148].図7は、新しい第2世代CAR遺伝子をトランスフェクトしたヒトT細胞の発現検出を示している。一次抗体はビオチン標識ヤギ抗マウスFabモノクローナル抗体で、二次抗体はPE標識anti-streptavidinフロースルー抗体であった。第1のトラックはエンプテウイルスをトランスフェクトしたT細胞で、第2のトラックはCAR遺伝子をトランスフェクトしたT細胞である。(図3では、hHD-Dzは新しい第2世代CAR遺伝子(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)である)。
[149].同じMOI(感染多重度)ウイルストランスフェクション効率の下で、フローサイトメトリーにより、新しい第2世代CAR分子と従来の第2世代CAR分子の両方がリンパ球の表面に高度に発現していることが確認された。
【0035】
[150].HER2を発現する腫瘍細胞の殺傷効果:
[151].従来の第2世代CAR-T細胞:(anti-HER2 scFV)(-CD8α hinge+TM)-(4-1BB)-(CD3ζ)-T細胞
[152].新しい第2世代CAR-T細胞:(anti-HER2 scFV)-(CD8αhinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ)-T細胞
[153].(1)RTCA(RealTime Cellular Analysis、リアルタイム細胞分析技術)を用いて、HER2陽性細胞SKOV3(ヒト卵巣がん細胞)腫瘍細胞に対する2種類のT細胞の殺傷効果を検出し、検出結果を図2Dに示した。(図2Dでは、hH8-BBzは従来の第2世代CAR-T細胞であり、hHD-Dzは新しい第2世代CAR-T細胞である)。
[154].(2)ELISAを用いて、2つのCAR T細胞によるHER2陽性腫瘍細胞SKOV3(ヒト卵巣がん細胞)及びHER2陰性腫瘍細胞MDA-MB-468(ヒト乳がん細胞)へのサイトカインの分泌をそれぞれ検出し、検出及び分析結果を図8に示す。図8は、新しい第2世代CAR Tが従来の第2世代CAR Tよりも多くのサイトカイン(IFNγ)をHER2陽性腫瘍細胞SKOV3に分泌したことを明確に示している。(図8では、hH8-BBzは伝統的な第2世代のCAR遺伝子である(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge+TM)-(4-1BB)(-CD3ζ)、hHD-Dzは新しい第2世代のCAR遺伝子である(anti-HER2 scFV)-(CD8α hinge)-(RD-1TM+Cytoplasmic)-(CD3ζ))。
【0036】
[155].まとめ
[156].一般的なCARは主に3つの重要な組成部があり、具体的には抗原を認識する単鎖可変フラグメント(scFv)、ヒンジ、及び膜貫通ドメイン(TM)、例えばCD3、CD28又はCD8タンパク質、及びCD3ζ又はFcRγなどの細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)がある。CARには、活性化シグナルを伝達するために、CD28、4-1BB、CD27、OX40、ICOS、DAP10、IL-15Rα、MyD88/CD40、TLR2などの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが1つ以上含まれている。
【0037】
[157].従来の研究により、さまざまなTMやICDが、T細胞の増殖、生存、その他の機能に影響を与えることが証明した。最近、いくつかの第2世代のCARが、固形腫瘍(転移性結腸直腸がんや肉腫など)の患者でテストされました。これらの試験の結果は、血液悪性腫瘍の治療で得られた結果と比較して有望である。したがって、さまざまな共刺激ドメインを探索することは、固形腫瘍におけるCAR-T細胞の抗腫瘍効果を高めるための新しいアプローチを提供する可能性がある。
【0038】
[158].本発明において、我々の実験チームは、CD19又はHER2をターゲットとするscFvドメインを4-1BB又はデクチン-1シグナル伝達ICDと組み合わせ、4つの異なる第2世代CARを構築した。実験データによると、生体内外での実験で、新しいCAR設計がデクチン-1共刺激を通じてT細胞機能に影響を与えた。例えばサイトカインの分泌と溶解能力の増強、枯渇の可能性の軽減、細胞増殖の増加、及び顕著な抗腫瘍活性を達成した。
【0039】
[159].本発明では、先行研究の結果の確認を行った。4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインによるCAR-T細胞の機能強化を示している。興味深いことに、hHD-Dz CAR-T細胞の生体外T細胞機能(例えば、サイトカイン産生の増加)は、4-1BBベースの細胞に匹敵し、両方ともコントロールT細胞よりも優れていた。HER2特異的CAR-T細胞には、hHD-DzCAR-T細胞はhH8-BBzよりも高いIFN-γ分泌を示し、Th1表現型の可能性を呈している。hH8-BBz CAR-T細胞は、Th1/Th2表現型と一致して、より多くのTNF-αを放出した。抗CD19 CAR-T細胞の同様のサイトカイン産生パターンは、使用された特定の共刺激シグナル伝達ドメインに関係なく、表現型が比較可能であることを呈している。RTCA(RealTime Cellular Analysis)において、hH8-BBz CAR-T細胞を超えるhHD-Dz CAR-T細胞の細胞傷害能を説明した。上記の結果は、デクチン-1共刺激が、固形腫瘍の治療のためのCAR-T細胞免疫療法に新しいメカニズムを提供することを呈している。
【0040】
[160].免疫抵抗性とT細胞の枯渇により、固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法における最大の課題の1つは、腫瘍の微小環境を抑制することである。しかし、従来の研究により、さまざまなT細胞の表現型が抗腫瘍免疫に重要な役割を果たしている可能性がある。例えば、養子免疫療法では、TCM細胞がTEM細胞よりもはるかに重要であることが実証された。本発見で、我々はhHD-Dz CAR-T細胞におけるより多くのTCM及び顕著な枯渇マーカーが、固形腫瘍におけるデクチン-1共刺激シグナル伝達を介して、新しいCAR-T細胞が腫瘍の免疫抑制性微小環境の影響をあまり受けない可能性があることを発見した。
【0041】
[161].さらに、我々は腫瘍異種移植モデルのデクチン-1又は4-1BBによる共刺激の確立を通じ、第2世代CAR-T細胞の有意な抗腫瘍効果を実証した。しかし、ここでは、異なる共刺激シグナル伝達ドメインを持つCARは、生体内で生存率に関して抗腫瘍活性において離散的な傾向を示した。hHD-Dz CAR-T細胞は早い時期にエフェクター機能の増強を示したが、hH8-BBz CAR-T細胞は遅い時期に抗腫瘍活性を示した。これらの観察結果から、共刺激シグナル伝達ドメインの違いによって、T細胞の表現型が異なる可能性があることが判明した。
図1
図2
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図5
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図8
【配列表】
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