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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】トラップ装置
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/22 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
F16T1/22 C
F16T1/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023037546
(22)【出願日】2023-03-10
【審査請求日】2023-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-17967(JP,B1)
【文献】特開2022-50957(JP,A)
【文献】特開2002-195432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/22
F16K 31/18-31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容室を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成されているとともに、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面と平行となるように下方を向く第1姿勢と、または、前記フロートの前記下面が前記ケーシングの前記底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く第2姿勢の何れかの姿勢をもって前記収容室に収容され、且つ、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能であり、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、前記フロートの前記姿勢が前記第1姿勢である場合に前記ケーシングの前記底壁内面から前記収容室に向けて上方に突出形成され、前記フロートの前記姿勢が前記第2姿勢である場合に前記ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突設形成される弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有し、
前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、前記フロートの前記下面と平行であって、前記フロートが下降端に位置する状態で当該フロートの前記下面と面接触可能な平面で構成されており、
前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の一方の面は、他方の面に向けて突出するとともに、上下方向に延びるように形成された線状凸部を有し、前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の他方の面は、前記線状凸部の填まり込みを許容するとともに、上下方向に延びるように形成された案内溝を有する、
トラップ装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、4面の前記側壁内面を有し、
前記線状凸部および前記案内溝の内の一方は、前記4面の側壁内面のそれぞれに形成され、前記線状凸部および前記案内溝の内の他方は、前記フロートの外面における前記一方に対して対向する部位にそれぞれ形成されている、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、4面の前記側壁内面を有し、
前記線状凸部および前記案内溝の内の一方は、前記4面の側壁内面におけるそれぞれの境界である隅角部分に形成され、前記線状凸部および前記案内溝の内の他方は、前記フロートの外面における前記一方に対向する部位にそれぞれ形成されている、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記フロートの前記下面は、上下方向に沿う軸に対して直交する面からなる、
請求項2または請求項3に記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記フロートの前記下面は、上下方向に沿う軸に対して0°より大きく90°より小さい範囲の角度だけ傾いた面からなる、
請求項2または請求項3に記載のトラップ装置。
【請求項6】
前記フロートの外面の内、前記開口周辺の前記平面の部分との接触領域を除く領域には、リブが形成されている、
請求項2または請求項3に記載のトラップ装置。
【請求項7】
前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、
請求項2または請求項3に記載のトラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気が流通する配管設備から復水を排出するのに用いられるトラップ装置に関し、特にフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのトラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備では、当該配管設備から復水(ドレン)を排出するスチームトラップ等のトラップ装置が設けられる。トラップ装置には、ケーシング内に収容されたフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのものが含まれる(特許文献1等)。従来技術に係るトラップ装置について、図8を用いて説明する。
【0003】
図8に示すように、従来技術に係るトラップ装置9は、ケーシング90と、フロート91と、スクリーン93と、エアベント94とを備える。ケーシング90は、フロート91が矢印Eのように上下動可能な収容室90aを有する。また、ケーシング90は、蒸気や復水が流入される流入部90b、および復水が流出される流出部90cと、収容室90aに開口する弁孔90eとを有する。弁孔90eは、ケーシング90の側壁内面における下端部分から斜め上向きに突出形成されたパイプ状部分(弁座90i)の先端部で収容室90aに開口されている。弁座90iにおける弁孔90eの開口周辺は、フロート91の外面91aに接触する。弁孔90eは、内部連通路90hにより流出部90cに接続されている。さらに、ケーシング90は、フロート91が下降端まで下降した際にフロート91を保持するバルブホルダ90jも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4002724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8を用いて説明した従来技術に係るトラップ装置9では、製造コストの上昇を抑えながら閉弁時の高いシール性を確保すること、および耐久性を確保することが困難である。即ち、従来技術に係るトラップ装置9では、球形状のフロート91が採用されているため、弁孔90eの開口を閉弁する際の弁座90iとフロート91の外面91aとの接触が線接触となっている。また、フロート91は、上下動に際して姿勢が拘束されず回転を伴う場合がある。このため、トラップ装置9では、フロート91の外面91aにおける弁孔90eの開口に接触する箇所を所定箇所に限定することができない。よって、従来技術に係るトラップ装置9では、高い真球度のフロート91を用いることが閉弁時のシール性を確保する上で必須の要件となり、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0006】
また、従来技術に係るトラップ装置9では、上述のようにフロート91の外面91aにおける弁座90iに接触する箇所が下降の際のフロート91の姿勢によって都度変化するので、弁座90iとの接触によってフロート91の外面91aが偏摩耗を生じることになる。このため、使用が長期に及んだ場合には、フロート91の外面91aの偏摩耗によって弁孔90eの開口を完全に閉じることができなくなるため、従来技術に係るトラップ装置9では、耐久性という観点からも問題を生じる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの上昇を抑えながら、フロートの外面における偏摩耗の発生を抑制して使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るトラップ装置は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、ケーシングとフロートとを備える。前記ケーシングは、前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容室を有する。前記フロートは、前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能である。
【0009】
本態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成されているとともに、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面と平行となるように下方を向く第1姿勢と、または、前記フロートの前記下面が前記ケーシングの前記底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く第2姿勢の何れかの姿勢をもって前記収容室に収容され、且つ、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、前記フロートの前記姿勢が前記第1姿勢である場合に前記ケーシングの前記底壁内面から前記収容室に向けて上方に突出形成され、前記フロートの前記姿勢が前記第2姿勢である場合に前記ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突設形成される弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有する
【0010】
本態様に係るトラップ装置において、前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、前記フロートの前記下面と平行であって、前記フロートが下降端に位置する状態で当該フロートの前記下面と面接触可能な平面で構成されている。そして、前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の一方の面は、他方の面に向けて突出するとともに、上下方向に延びるように形成された線状凸部を有し、前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の他方の面は。前記線状凸部の填まり込みを許容するとともに、上下方向に延びるように形成された案内溝を有する。
【0011】
上記態様に係るトラップ装置では、弁座における上記開口周辺の部分が平面に形成され、フロートが下降端まで下降した状態で当該フロートの下面が弁座の前記平面の部分(平面部分)に面接触することで閉弁される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートにおける下面と弁座における上記平面部分との平行度を確保するだけで閉弁時における高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置のように高い真球度が必要とされる球形状のフロートを備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0012】
また、上記態様に係るトラップ装置では、弁孔の開口を閉弁するのに際してフロートの下面と弁座の上記平面部分とが面接触するので、フロートの下面および弁座の上記平面部分のそれぞれに入力される荷重が分散され、フロートの下面および弁座の上記平面部分の磨滅を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係るトラップ装置では、使用期間が長期に及んだ場合にも閉弁時の高いシール性を維持することができる。
【0013】
また、上記態様に係るトラップ装置では、ケーシングの側壁内面およびフロートの外面の内の一方が線状凸部を有し、他方が案内溝を有するように構成されている。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、案内溝に線状凸部が填まり込み、案内溝に沿って線状凸部が摺動する。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの上下動の際にフロートの姿勢の乱れを抑制することができる。これより、上記態様に係るトラップ装置では、フロートが下降端まで下降した状態で、フロートの下面と弁座の上記平面部分とを確実に面接触させることができ、フロートの下面および弁座の上記平面部分の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0014】
上記態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、4面の前記側壁内面を有し、前記線状凸部および前記案内溝の内の一方は、前記4面の側壁内面のそれぞれに形成され、前記線状凸部および前記案内溝の内の他方は、前記フロートの外面における前記一方に対して対向する部位にそれぞれ形成されている、としてもよい。
【0015】
上記態様に係るトラップ装置では、ケーシングにおける4面の側壁内面のそれぞれに線状凸部および案内溝の一方が形成され、フロートの外面における対応部位に線状凸部および案内溝の他方が形成されている。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの上下動に際してフロートの外面とケーシングの側壁内面との間に4つの案内機構が設けられている。よって、上記態様に係るトラップ装置では、より安定した姿勢でフロートを上下動させることができる。
【0016】
上記態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、4面の前記側壁内面を有し、前記線状凸部および前記案内溝の内の一方は、前記4面の側壁内面におけるそれぞれの境界である隅角部分に形成され、前記線状凸部および前記案内溝の内の他方は、前記フロートの外面における前記一方に対向する部位にそれぞれ形成されている、としてもよい。
【0017】
上記態様に係るトラップ装置では、ケーシングにおける4つの隅角部分のそれぞれに線状凸部および案内溝の一方が形成され、フロートの外面における対応部位に線状凸部および案内溝の他方が形成されている。よって、上記態様に係るトラップ装置でも、より安定した姿勢でフロートを上下動させることができる。
【0018】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートの前記下面は、上下方向に沿う軸に対して直交する面からなる、としてもよい。
【0019】
上記態様に係るトラップ装置では、フロートの下面が上記直交する面からなるようにフロートが配されているので、フロートが下降端まで下降した際に確実に弁孔を閉弁することができる。
【0020】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートの前記下面は、上下方向に沿う軸に対して0°より大きく90°より小さい範囲の角度だけ傾いた面からなる、としてもよい。
【0021】
上記態様に係るトラップ装置では、フロートの下面が斜め方向に傾いた面(上下方向に沿う軸に対して0°より大きく90°より小さい範囲の角度だけ傾いた面)からなるフロートが配されているので、閉弁時から開弁へと変化する際にフロートと弁座とが離間するのに必要とされる力を小さく抑えることができる。即ち、フロートの下面を斜め方向に傾けることにより、上記離間に要する上下方向の力は、前記下面に法線方向での力の分力となるので、離間に必要とされる力を小さく抑えることができる。
【0022】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートの外面の内、前記開口周辺の前記平面の部分との接触領域を除く領域には、リブが形成されている、としてもよい。
【0023】
上記態様に係るトラップ装置では、フロートにおける外面の一部(弁座の上記平面部分との接触領域)を除く部分にリブが設けられているので、収容室に導入される蒸気などからの圧力に対してもフロートの変形や破損を抑制することができる。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、外面が6つの平面で構成される六面体のフロートを採用することで上記のような効果を得ながら、フロートの変形や破損を抑制して正確な動作が確保される。
【0024】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、としてもよい。
【0025】
上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合することにより形成されたフロートを採用するので、ピースの組み合わせ態様によって種々の六面体形状(正六面体、一方向に長い六面体、一方向に扁平な六面体など)を構成することができる。よって、上記のように複数のピースを接合することでフロートを構成する場合には、要求仕様に応じたトラップ装置を形成するのに優位である。
【0026】
また、上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合して1つのフロートが構成されるため、内部に各ピースの壁によって構成される仕切壁が形成される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートがさらに高い剛性を有することで、収容室に導入される蒸気の圧力に対する耐性を確保するのにさらに優位である。
【発明の効果】
【0027】
上記の各態様に係るトラップ装置では、製造コストの上昇を抑えながら、フロートの外面における偏摩耗の発生を抑制して使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
図4図3のIV-IV線断面を示す断面図である。
図5】フロートが弁座から離間する際に必要となる力を説明するための模式図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
図7】変形例に係るトラップ装置が備えるフロートの構成を示す展開斜視図である。
図8】従来技術に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0030】
[第1実施形態]
1.トラップ装置1の全体構成
本発明の第1実施形態に係るトラップ装置1は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置である。トラップ装置1の全体構成について、図1を用いて説明する。
【0031】
図1に示すように、トラップ装置1は、ケーシング10と、フロート20と、スクリーン30と、エアベント40と、エアベントプラグ50とを備える。ケーシング10は、流入部10bと、流出部10cと、収容室10aと、ベント室10dと、内部連通路(連通路)10hと、弁座10iとを有する。流入部10bは、蒸気を含む流体が流入する部位であり、X方向左向きに開口されている。該開口にはスチーム配管等が接続される。流出部10cは、空気や復水が流出する部位であり、X方向右向きに開口されている。該開口にはドレン配管等が接続される。収容室10aは、流入部10bを通り導入された流体(蒸気、復水)が収容される部位であって、流入部10bに連通されている。ケーシング10は、収容室10aの側方を囲む4面の側壁内面10gとZ方向下方で面する底壁内面10fとを有する。
【0032】
ベント室10dは、エアベント40の一部を収容する部位であって、流出部10cと連通されている。ベント室10dは、収容室10aの上方に形成されており、上部開口がエアベントプラグ50で塞がれている。内部連通路10hは、ケーシング10における側壁内および底壁内の各一部に設けられており、収容室10aと流出部10cとを連通する。
【0033】
なお、ケーシング10は、Z方向上部のボディ11とZ方向下部のボトムカバ12とを気密接合することで構成されている。このため、ボディ11とボトムカバ12との接合部分での収容室10aおよび内部連通路10hの気密は確保されている。
【0034】
本実施形態において、弁座10iは、ケーシング10の底壁内面10fからZ方向上方の収容室10aに向けて突設形成されている。弁座10iには、内部連通路10hにおける収容室10a側の端部であって、弁座10iの先端部で収容室10aに開口する弁孔10eが設けられている。なお、本実施形態では、弁座10iにおける弁孔10eの開口周辺が平面で形成されている(弁座10iの平面部分)。
【0035】
ここで、ケーシング10における4面の側壁内面10gのそれぞれは、Z方向に延び、各壁の厚み方向内側に凹入するように設けられた4つの案内溝10jを有する(図1では、3つの案内溝10jのみを図示)。
【0036】
フロート20は、六面体(一例として、正六面体)の外観形状を有する。フロート20は、収容室10a内において矢印Aで示すように上下動可能に収容されている。フロート20の上下動の下降端は、該フロート20の下面20cが弁座10iにおける上記平面部分に面接触する位置である。なお、フロート20は、ケーシング10の側壁内面10gに対して僅かな隙間を空けて摺動するサイズ(Z方向に直交する方向のサイズ)で形成されている。
【0037】
また、フロート20の4面の側面20aのそれぞれは、Z方向に延び、ケーシング10の案内溝10jに填まり込むように突出形成された4つの線状凸部20dを有する。各線状凸部20dは、案内溝10jに対して上下動可能に填まり込んでいる。即ち、本実施形態に係るトラップ装置1では、案内溝10jと線状凸部20dとがフロート20の上下動に際しての案内機構を構成する。
【0038】
スクリーン30は、流体の導入経路における流入部10bと収容室10aとの間に設けられている。スクリーン30は、収容室10aへのゴミやスケールの侵入を抑制する。エアベント40は、通気初期の段階などにおいて、収容室10a内に溜まった空気を流出部へと排出する。
【0039】
2.フロート20の詳細構造
フロート20の詳細構造について、図1および図2を用いて説明する。
【0040】
図1および図2に示すように、フロート20は、上面20bおよび4面の側面20aに複数のリブ20rを有する。各リブ20rは、当該リブ20rが形成された外面における他の部分よりも外方に突出するように形成されている。また、各リブ20rは、当該リブ20rが形成された外面の対角線に沿うようにX字形状をもって形成されている。
【0041】
なお、フロート20では、弁座10iの上記平面部分と面接触する部分を有する下面20cにはリブは設けられていない。ただし、下面20cについても、弁座10iの上記平面部分と面接触する部分を除いてリブを形成してもよい。
【0042】
上述のように、ケーシング10の4面の側壁内面10gのそれぞれには、案内溝10jが設けられている。そして、フロート20の4面の側面20aのそれぞれには、案内溝10jに填まり込む線状凸部20dが設けられている。
【0043】
3.効果
本実施形態に係るトラップ装置1では、弁座10iにおける上記開口周辺の部分が平面に形成され、フロート20が下降端まで下降した状態で当該フロート20の下面20cが弁座10iにおける弁孔10eの開口周辺の平面部分に面接触することで閉弁される。よって、トラップ装置1では、フロート20における下面20cと弁座10iにおける上記平面部分との平行度を確保するだけで閉弁時における高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置のように高い真球度が必要とされる球形状のフロートを備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0044】
また、トラップ装置1では、弁孔10eの開口を閉弁するのに際してフロート20の下面20cと弁座10iの上記平面部分とが面接触するので、フロート20の下面20cおよび弁座10iの上記平面部分の磨滅を小さく抑えることができる。よって、トラップ装置1では、長期に使用しても閉弁時の高いシール性を維持することができる。
【0045】
また、トラップ装置1では、フロート20の4面の側面20aが線状凸部20dを有し、ケーシング10の4面の側壁内面10gが案内溝10jを有するように構成されており、案内溝10jに線状凸部20dが填まり込み、案内溝10jに沿って線状凸部20dが摺動しながら、フロート20が上下動する。よって、トラップ装置1では、フロート20の上下動の際にフロート20の姿勢の乱れを抑制することができ、フロート20の回転を抑制することができるので、フロート20の下面20cと弁座10iの上記平面部分とを確実に面接触させることができ、フロート20の下面20cおよび弁座10iの上記平面部分の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、ケーシング10における4面の側壁内面10gのそれぞれに案内溝10jが形成され、フロート20の4面の側面20aのそれぞれに案内溝10jに対応する(填まり込む)線状凸部20dが形成されている。即ち、トラップ装置1では、フロート20の上下動に際してフロート20の側面20aとケーシング10の側壁内面10gとの間に4つの案内機構が設けられている。よって、トラップ装置1では、安定した姿勢でフロート20を上下動させることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、フロート20の下面20cがZ方向に直交する方向に広がるように設けられているので、フロート20が下降端まで下降した際に、弁座10iの頂部であってZ方向に直交する方向に広がる上記平面部分に対して確実に面接触可能である。
【0048】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、フロート20における上面20bおよび側面20aリブ20rが設けられているので、収容室10aに導入される蒸気などからの圧力に対してもフロート20の変形や破損を抑制することができる。即ち、トラップ装置1では、正六面体のフロート20を採用することで上記のような効果を得ながら、フロート20の変形や破損を抑制して正確な開閉動作が確保される。
【0049】
さらに、本実施形態に係るトラップ装置1では、一例として正六面体の外観形状を有するフロート20を備えるので、同じ体積および同じ肉厚の球形状のフロート(例えば、図8のフロート91)を備える場合に比べて、フロート20の寸法(X,Y,Zの各方向における寸法)を小さくすることができる。即ち、球形状のフロート91と正六面体形状のフロート20とにおいて、体積が同じであるとし、フロート91の外径をD、フロート20の一辺の長さ(リブ20rを除く長さ)をXとするとき、次の関係を満たす。
(4π/3)×(D/2)=X・・(1)
上記数式1より、DとXとの関係は次のようになる。
0.806D=X・・(2)
上記数式2より、フロート91の肉厚とフロート20の肉厚とが必しいとする場合に、同じ容積の内空間を確保するには、正六面体形状のフロート20の一辺の長さを球形状のフロート01の外径寸法Dよりも約20%小さくできる。よって、トラップ装置1では、フロート20のサイズを従来技術のような球形状のフロート91の外径寸法Dよりも小さくでき、これに伴ってケーシング10のサイズも小さくすることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るトラップ装置1では、製造コストの上昇を抑えながら、フロート20の下面20c等における偏摩耗の発生を抑制して使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【0051】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るトラップ装置100も、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置である。トラップ装置100の全体構成について、図3および図4を用いて説明する。なお、本実施形態に係るトラップ装置100は、上記第1実施形態に係るトラップ装置1に対して、収容室100a内におけるフロート120の姿勢、およびフロート120における線状凸部120dの形成形態と、弁座110iの形成形態が異なり、他の構成については同じである。よって、上記第1実施形態に係るトラップ装置1との差異部分を主に説明する。
【0052】
図3に示すように、トラップ装置100は、ケーシング110と、フロート120と、スクリーン30と、エアベント40と、エアベントプラグ50とを備える。ケーシング110は、流入部110bと、流出部110cと、収容部110aと、ベント室110dと、内部連通路(連通路)110hと、弁座110iとを有する。そして、ケーシング110は、ボディ111とボトムカバ112とが接合されて構成されている。
【0053】
本実施形態に係るトラップ装置100では、弁座110iがケーシング110の底壁内面110fのX方向端部であって、側壁内面110gのZ方向下端の部分から斜め上方に向けて突設形成されている。弁座110iに弁孔110eが設けられ、弁座110iにおける弁孔110eの開口周辺が平面で形成されている点については、上記第1実施形態と同じである。
【0054】
フロート120は、正六面体の外観形状を有する。フロート120は、上記第1実施形態のフロート20とは収容室110a内での姿勢が異なる。具体的には、フロート120は、上記第1実施形態のフロート20を図3の紙面に直交する方向に延びる軸廻りに所定角度(0°より大きく、90°未満の角度)回転した姿勢を有する。換言すると、フロート120は、下面120cがZ方向に沿う軸に対して所定角度だけ傾いた方向に広がるように配されている。
【0055】
なお、本実施形態では、一例として所定角度は30°~60°の範囲であって、例えば、略45°である。フロート120のサイズについては、ケーシング110の収容室110aのサイズ(Z方向に直交する方向でのサイズ)に合わせて設定されている。
【0056】
ケーシング110の4面の側壁内面110gのそれぞれには、上記第1実施形態と同様に案内溝110jが設けられている。そして、図3および図4に示すように、フロート120には、各案内溝110jに向けて突出する線状凸部120dが設けられている。線状凸部120dは、案内溝110jに填まり込み、案内溝110jに沿って摺動可能となっている。そして、本実施形態に係るトラップ装置100でも、矢印Bで示すようにフロート120が上下動する際に、案内溝110jと線状凸部120dとが案内機構の役割を果たし、フロート120の姿勢を安定させる。
【0057】
なお、図4に示すように、本実施形態に係るトラップ装置100でも、フロート120の外面の内、下面120cを除く面にリブ120rが設けられている。
【0058】
ここで、本実施形態では、フロート120の下面120cをZ方向に沿う軸に対して略45°傾けているが、これにより得られる効果について、図5を用いて説明する。
【0059】
図5に示すように、フロート120が下降端まで下降して、弁座110iにおける弁孔110eの開口周辺の平面部分110kにフロート120の下面120cが面接触した状態から、フロート120が矢印Cのように上昇して開弁状態へと移行しようとする場合には、フロート120と弁座110iとの間には法線方向の力Fが作用する。
【0060】
この場合に、フロート120の下面120cは、Z方向に沿う軸に対して略45°傾けられているので、力FはZ方向成分FzとX方向成分Fxと合力ということになる。よって、フロート120の下面がZ方向に沿う軸に対して直交するように配されている場合に比べて、フロート120にかかる力は小さく抑えられる。これより、本実施形態ではフロート120のサイズが小さくても閉弁から開弁への切り替えがスムーズに行われる。
【0061】
本実施形態に係るトラップ装置100は、収容室100a内におけるフロート120の姿勢、およびフロート120における線状凸部120dの形成形態と、弁座110iの形成形態が上記第1実施形態とは異なるが、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。また、上述のように、フロート120の下面120cをZ方向に沿う軸に対して所定角度だけ傾けているので、大きなフロート120を採用しなくても閉弁状態から開弁への動きをスムーズにすることができる。
【0062】
なお、本実施形態に係るトラップ装置100では、上記第1実施形態に係るトラップ装置1に対して、フロート120の姿勢を図3の紙面に直交する方向に延びる軸廻りに回転させた姿勢をとることとしたが、さらにZ軸廻りに回転させた姿勢をとることもできる。この場合においても、弁座110iの平面部分110kがフロート120の下面120cに面接触できるように平行に形成されればよい。
【0063】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るトラップ装置200の構成について、図6を用いて説明する。図6では、ケーシング210の一部とフロート220の一部とを抜き出して図示しており、他の構成部分の図示を省略している。本実施形態に係るトラップ装置200は、図6で図示を省略した部分について、上記第1実施形態と同じ構成を採用することができる。そして、以下では、上記第1実施形態との差異部分を主に説明する。
【0064】
図6に示すように、トラップ装置200は、ケーシング210とフロート220とを備える。ケーシング210は、直方体形状の収容室210aを有する。そして、収容室210aの周囲は、4面の側壁内面210gで囲まれている。本実施形態では、側壁内面210g同士の境界である隅角部分に案内溝210jが設けられている。各案内溝210jは、側壁内面210gに対して斜め方向に凹入するように形成されている。
【0065】
一方、フロート220は、4面の側面220a同士の境界である角部分から案内溝210jに向けて突出するように設けられている。
【0066】
本実施形態に係るトラップ装置200では、ケーシング210における案内溝210jの形成形態、およびフロート220における線状凸部220dの形成形態が上記第1実施形態とは異なるが、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0067】
[変形例]
変形例に係るトラップ装置の構成について、図7を用いて説明する。なお、図7では、本変形例に係るトラップ装置における上記第1実施形態との差異点であるフロート320だけを抜き出して図示している。図7で図示を省略した各部については、上記第1実施形態と同じである。以下では、上記第1実施形態との差異点であるフロート320の構成だけを説明し、それ以外の構成についての説明を省略する。
【0068】
図7に示すように、本変形例に係るトラップ装置のフロート320は、それぞれが正六面体の外観形状を有し、互いに接合(矢印D1,D2)された8つのピース321~328によって構成されている。8つのピース321~328のぞれぞれは、一部の外面にリブが形成されるとともに、Z方向に延びる線状凸部321d,323d,325d,326d,327d,328dが形成されている。なお、ピース322,324も線状凸部が形成されているが、図7では図示を省略している。
【0069】
各線状凸部321d,323d,325d,326d,327d,328dは、ケーシングにおける側壁内面に設けられた案内溝に填まり込み、Z方向に摺動可能に形成されている。
【0070】
本変形例に係るトラップ装置では、8つのピース321~328を接合してなるフロート320を備える点で上記第1実施形態と異なるが、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0071】
なお、本変形例では、8つのピース321~328を接合することでフロート320を構成することとしたが、フロートを構成するピースの数はこれに限定を受けるものではない。例えば、7つ以下であってもよいし、9つ以上であってもよい。また、本変形例では、それぞれが正六面体の外観形状を有するピース321~328を採用したが、本発明では、ピースの外観形状が正六面体以外の六面体であってもよいし、それ以外の立体形状(三角柱など)であってもよい。
【0072】
[その他の変形例]
上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、スクリーン30、エアベント40、およびエアベントプラグ50を備えるトラップ装置1,100,200を採用したが、本発明では、スクリーン30、エアベント40、およびエアベントプラグ50は必須の構成ではない。
【0073】
上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、外面の一部にそれぞれX字形状をしたリブ20r,120rを有するフロート20,120,220,320を採用することとしたが、本発明では、リブの形状はX字形状に限定されるものではない。例えば、フロートの外面における外辺に沿って延びる直線状のリブや、平面視円形のリブなどを採用することもできる。
【0074】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、フロート20,120,220,320に線状凸部20d,120d,220d,321d,323d,325d,326d,327d,328dを設け、ケーシング10,110,210に案内溝10j,110j,210jを設けることとしたが、本発明では、フロートの側に案内溝を設け、ケーシングの側に線状凸部を設けてもよい。
【0075】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、正六面体のフロート20,120,220,320を採用することとしたが、本発明では、Z方向に長い直方体やZ方向に扁平な直方体など種々の六面体のフロートを採用することができる。
【0076】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、フロート20,120,220およびピース321~328の具体的な形成方法については言及しなかったが、種々の方法で形成することができる。例えば、金属板材同士を溶接や接着剤などで接合することで形成してもよいし、AM法(Aditive Manufacturing法)を用いて形成してもよい。
【0077】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、上記第3実施形態、および上記変形例では、弁孔10e,110eと流出部10c,110cとを内部連通路10h,110hで繋ぐこととしたが、本発明では、必ずしもこれに限定を受けない。例えば、ケーシング10,110,210の側壁外部に配設されたパイプなどで弁孔の開口と流出部とを繋いでもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,100,200 トラップ装置
10,110,210 ケーシング
10e,110e 弁孔
10i,110i 弁座
10j,110j,210j 案内溝
20,120,220,320 フロート
20c,120c 下面
20d,120d,220d,321d,323d,325d,326d,327d,328d 線状凸部
20r,120r リブ
321~328 ピース
【要約】
【課題】製造コストの上昇を抑えながら、フロートの外面における偏摩耗の発生を抑制して使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供する。
【解決手段】トラップ装置1は、ケーシング10とフロート20とを備える。ケーシング10は、蒸気を含む流体が導入される収容室10aを有する。フロート20は、六面体の外観形状を有するとともに、収容室10aに上下動可能に収容されている。フロート20の外面は、ケーシング10の側壁内面10gに向けて突出するとともに、Z方向に延びる線状凸部20dを有する。ケーシング10の側壁内面10gは、線状凸部20dの填まり込みを許容するとともに、Z方向に延びるように形成された案内溝10jを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8