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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 17/02 20060101AFI20240405BHJP
   B64D 9/00 20060101ALI20240405BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240405BHJP
   B64C 27/52 20060101ALI20240405BHJP
   B64C 27/82 20060101ALI20240405BHJP
   B64C 27/06 20060101ALI20240405BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240405BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240405BHJP
   B64U 10/17 20230101ALI20240405BHJP
   B64U 30/297 20230101ALI20240405BHJP
   A62B 5/00 20060101ALI20240405BHJP
   B64U 101/55 20230101ALN20240405BHJP
【FI】
B64C17/02
B64D9/00
B64D27/24
B64C27/52
B64C27/82
B64C27/06
B64C27/08
B64U10/13
B64U10/17
B64U30/297
A62B5/00 Z
B64U101:55
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023158159
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2023023946の分割
【原出願日】2022-07-07
(65)【公開番号】P2024008935
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521066318
【氏名又は名称】飯島 俊朗
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊朗
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111301682(CN,A)
【文献】特開2021-008270(JP,A)
【文献】国際公開第2019/152274(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141434(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 17/02
B64D 9/00
B64D 27/24
B64C 27/52
B64C 27/82
B64C 27/06
B64C 27/08
B64U 10/13
B64U 10/17
B64U 30/297
A62B 5/00
B64U 101/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体であって、
本体、及び前記本体に接続されたレールと、
揚力、及び推進力を発生させる動力部と、
積載物を積載するための第1積載部と、
前記第1積載部を前記レールに沿って移動させる第1積載部移動機構と、
ウェイトと、
前記ウェイトを前記レールに沿って移動させるウェイト移動機構と、
前記第1積載部移動機構を制御して前記第1積載部を移動させ、前記ウェイト移動機構を制御して前記ウェイトを移動させる制御部と、
前記レールの一端に、前記飛行体を係留、又は他の飛行体と連結するための第1の接続部材と、
前記レールの他端に、他の飛行体と連結するための第2の接続部材と、
を備える飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記第1の接続部材、及び前記第2の接続部材の少なくとも一方は、前記レールに対して着脱可能である
飛行体。
【請求項3】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記第1の接続部材、又は前記第2の接続部材により前記他の飛行体と連結した場合、前記レールの端部は、前記他の飛行体のレールの端部に近接又は接触し、
前記第1積載部、及び前記ウェイトの少なくとも一方を前記他の飛行体に移動させること、並びに前記他の飛行体の第1積載部、及びウェイトの少なくとも一方を前記飛行体に移動させることの少なくとも一方が可能である
飛行体。
【請求項4】
請求項に記載の飛行体であって、
前記制御部は、前記ウェイト移動機構を制御して前記第1積載部の移動に対応するカウンタウェイトとして前記ウェイトを移動させる
飛行体。
【請求項5】
請求項に記載の飛行体であって、
前記ウェイトは、前記飛行体に電力を供給するバッテリが兼ねる
飛行体。
【請求項6】
請求項に記載の飛行体であって、
前記バッテリは、前記飛行体に着脱自在であって自走機構を有する
飛行体。
【請求項7】
請求項に記載の飛行体であって、
前記第1積載部は、前記飛行体に着脱自在であって自走機構を有する
飛行体。
【請求項8】
請求項に記載の飛行体であって、
前記レールは、伸縮自在である
飛行体。
【請求項9】
請求項に記載の飛行体であって、
前記ウェイトは、積載物を積載するための第2積載部であり、
前記制御部は、前記ウェイト移動機構を制御して、前記第1積載部の移動に対応するカウンタウェイトとして前記第2積載部を移動させる
飛行体。
【請求項10】
請求項に記載の飛行体であって、
前記動力部は、直交する2軸をそれぞれ中心に回転することによって、前記動力部の回転軸を変更する
飛行体。
【請求項11】
請求項に記載の飛行体であって、
ロボットアーム、を備える
飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるタワーマンションに象徴される高層建物が数多く建築されている。高層建物における災害等発生時の救助には、梯子消防車の利用が想定されている。しかしながら、梯子消防車は、移動ルートや設置場所に制限があるために活動できるエリアが限られる。また、梯子を伸ばせる高さが40m程(住宅の13階相当)であるため、救助可能な高さが建物の高層化に追いついていない。
【0003】
梯子消防車の他、高層建物における救助活動に利用可能なものとしては、例えば、ヘリコプタやドローン(無人航空機)等が考えられる。ヘリコプタの場合、高層建物の屋上に設けられているヘリポートやレスキュースペースにて救助を行うことになる。ただし、高層建物内において住民が屋上まで辿り着けずに、高層建物のベランダや窓から救助を行う必要がある場合も想定されるが、この場合、ヘリコプタではロータが建物に干渉(接触)するため対応できない。
【0004】
救助活動に用いるドローンに関しては、例えば、特許文献1に「ドローン本体と、該ドローン本体に対して着脱自在に格納される人を収容する人収容部と、該人収容部に連結されたロープと、該ドローン本体に装着され該ロープを巻き上げることにより該人収容部をドローン本体に収容し、且つ該ロープを巻き下げることで該人収容部を該ドローン本体から離脱させることが可能なロープ巻取手段と、を少なくとも備える有人ドローン」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-104365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の有人ドローンの他、要救助者を収容して搬送するドローンは数多く提案されている。しかしながら、いずれのドローンもホバリング(空中停止)した状態で要救助者を吊り上げて収容する構造である。このため、高層建物のベランダや窓に居る要救助者をドローンの側方から収容することができない。
【0007】
また、仮に従来のドローンを大型化して、高層建物のベランダや窓にドローンを接近させ、要救助者をドローンの側方から収容しようとした場合、収容の際にドローンの重量バランスが崩れてホバリングが不安定となり、救助活動を安全に実施できないと考えられる。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高層建物のベランダ等のような梯子消防車やヘリコプタが接近できない場所に接近して活動できる飛行体の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る飛行体は、揚力、及び推進力を発生させる動力部と、積載物を積載するための第1積載部と、前記第1積載部を移動させる第1積載部移動機構と、ウェイトと、前記ウェイトを移動させるウェイト移動機構と、前記第1積載部移動機構を制御して前記第1積載部を移動させ、前記ウェイト移動機構を制御して前記ウェイトを移動させる制御部と、を備える。
【0011】
前記制御部は、前記ウェイト移動機構を制御して前記第1積載部の移動に対応するカウンタウェイトとして前記ウェイトを移動させることができる。
【0012】
前記ウェイトは、前記飛行体に電力を供給するバッテリが兼ねることができる。
【0013】
前記バッテリは、前記飛行体に着脱自在であって自走機構を有することができる。
【0014】
前記第1積載部は、前記飛行体に着脱自在であって自走機構を有することができる。
【0015】
前記飛行体は、本体、及び前記本体に接続されたレール、を備えることができ、前記レールは、前記本体、及び前記本体の周囲に配置された複数の前記動力部よりも突出しており、前記第1積載部移動機構は、前記第1積載部を前記レールに沿って第1の方向に移動させることができ、前記ウェイト移動機構は、前記ウェイトを前記レールに沿って第1の方向と反対の第2の方向に移動させることができる。
【0016】
前記レールは、伸縮自在とすることができる。
【0017】
前記飛行体は、前記レールの一端に前記飛行体を係留するための第1の接続部材、を備えることができる。
【0018】
前記飛行体は、前記レールの他端に、他の飛行体の接続部材と接続する第2の接続部材、を備えることができる。
【0019】
前記ウェイトは、積載物を積載するための第2積載部とすることができ、前記制御部は、前記ウェイト移動機構を制御して、前記第1積載部の移動に対応するカウンタウェイトとして前記第2積載部を移動させることができる。
【0020】
本発明の他の一態様に係る飛行体は、揚力、及び推進力を発生させる動力部と、伸縮自在なレールと、前記レールに沿って移動可能であり、積載物を積載するための第1積載部と、前記第1積載部を移動させる第1積載部移動機構と、前記レールを伸縮させる伸縮機構と、前記第1積載部移動機構を制御して前記第1積載部を第1の方向に移動させ、前記伸縮機構を制御して前記レールを前記第1の方向と反対の第2の方向に伸長させる制御部と、を備える。
【0021】
前記動力部は、直交する2軸をそれぞれ中心に回転することによって、前記動力部の回転軸を変更することができる。
【0022】
本発明のさらに他の一態様に係る飛行体は、積載物を収容するための第1積載部と、前記第1積載部の後方に接続された、揚力、及び推進力を発生させる動力部と、前記動力部の後方にテールロータ支持部材を介して設けられたテールロータと、を備える。
【0023】
前記第1積載部は、連結部を介して前記動力部に接続され、前後、上下、及び左右の少なくとも一方向に移動自在とすることができる。
【0024】
前記テールロータ支持部材は、伸縮自在とすることができる。
【0025】
前記飛行体は、前記テールロータ支持部材に設けられたウェイト、を備えることができ、前記ウェイトは、前記テールロータ支持部材の長手方向に移動可能とすることができる。
【0026】
前記動力部は、直交する2軸をそれぞれ中心に回転することによって、前記動力部の回転軸を変更することができる。
【0027】
前記飛行体は、前記動力部の側面に設けられたウェイト、を備えることができ、前記ウェイトは、前記動力部の側面において移動可能とすることができる。
【0028】
前記ウェイトは、着脱、及び増減の少なくとも一方が可能とすることができる。
【0029】
前記飛行体は、前記動力部の側面に設けられた補助動力部、を備えることができ、前記補助動力部は、前記動力部の側面において移動可能とすることができる。
【0030】
前記補助動力部は、着脱、及び増減の少なくとも一方が可能とすることができる。
【0031】
前記テールロータは、直交する2軸をそれぞれ中心に回転することによって、前記テールロータの回転軸を変更することができる。
【0032】
前記飛行体は、ロボットアーム、を備えることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高層建物のベランダ等のような梯子消防車やヘリコプタが接近できない場所に接近して活動できる飛行体を実現できる。
【0034】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る飛行体の機能ブロックの構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図6図6は、本発明の第3の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図7図7は、本発明の第4の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図8図8は、本発明の第5の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図9図9は、本発明の第6の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図10図10は、第6の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図11図11は、本発明の第7の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図12図12は、第7の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図13図13は、本発明の第8の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図14図14は、第8の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図15図15は、動力部の変形例を示す図である。
図16図16は、本発明の第9の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図17図17は、第9の実施形態に係る飛行体の変形例を示す図である。
図18図18は、本発明の第10の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
図19図19は、本発明の第11の実施形態に係る飛行体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除しない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。
【0037】
<本発明の実施形態に係る飛行体>
本発明の実施形態に係る飛行体は、例えば、梯子消防車の移動できない場所、その梯子が届かない高層建物、山岳地、崖、低所(穴の内部)等に位置する要救助者を救助する(収容して搬送する)ためのものである。当該飛行体は、操縦者が搭乗せずに地上等から操縦することを前提としているが、操縦者や要救助者を救助する救助者等が当該飛行体に搭乗するようにしてもよい。ただし、当該飛行体の用途は要救助者の救助に限らず、物資等の輸送、配達、人員の搬送、乗客の送迎、撮影、偵察、監視、消火等にも用いることができる。
【0038】
<本発明の第1の実施形態に係る飛行体10
図1は、第1の実施形態に係る飛行体10の機能ブロックの構成例を示している。飛行体10は、制御部11、通信部12、各種センサ13、給電部14、キャビン移動機構15、キャビン16、ウェイト移動機構17、バッテリ(ウェイト)18、レール伸縮機構19、複数の動力部20.及びレール31を備える。
【0039】
制御部11は、ユーザが操作する無線コントローラ(不図示)から送信された制御信号に従い、各種センサ13からのセンサ値に基づいて飛行体10の全体を制御する。例えば、制御部11は、キャビン移動機構15、ウェイト移動機構17、及び動力部20を制御して、キャビン16を移動させるとともに、キャビン16の移動による飛行体10の重心の移動を抑えるカウンタウェイトとしてバッテリ18を移動させたり、動力部20の出力を制御したりする。ただし、制御部11は、キャビン移動機構15、及びウェイト移動機構17を制御して、キャビン16とバッテリ18とを独立して移動させることもできる。なお、PC(Personal Computer)やサーバ等のコンピュータ(不図示)から制御部11に対して予め目的地までの飛行経路等を含む行動プログラムを送信しておき、制御部11が当該行動プログラムに従って自律的に飛行体10を制御するようにしてもよい。
【0040】
通信部12は、所定の無線通信規格に従って当該無線コントローラと通信し、無線コントローラから送信された制御信号を受信して制御部11に出力する。なお、通信部12と、無線コントローラやコンピュータ等との通信には、基地局等の無線通信設備を介してもよい。
【0041】
各種センサ13は、飛行体10の動き制御するために必要な各種のセンサ値を検出して制御部11に出力する。各種センサ13は、例えば、飛行体10の傾きの変化量を検出するジャイロセンサ、速度の変化量を検出する加速度センサ、高度を検出る気圧センサ、方位を検出する磁気方位センサ、緯度、経度を検出するGPS(Global Positioning System)センサ等の位置センサ、画像を撮像する画像センサ等を含む。
【0042】
給電部14は、電力源であるバッテリ18から電力を飛行体10の各部に給電する。なお、給電部14とバッテリ18との電気的な接続は、一般的なケーブルを用いてもよいし、後述するレール31(図2)を、導電性を有する部材によって形成し、レール31を介してバッテリ18と電気的に接続するようにしてもよい。
【0043】
キャビン移動機構15は、レール31上に載置されたキャビン16をレール31上で移動させる。キャビン移動機構15は、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、モータ等のアクチュエータを用いた直動機構であり、制御部11によって駆動制御される。キャビン移動機構15は、本発明の第1積載部移動機構に相当する。
【0044】
キャビン16は、少なくとも一人の要救助者を収容可能な容量を有する。望ましくは、要救助者の収容を補助する救助者を含めた二人を収容可能な容量を確保できればさらによい。なお、キャビン16には、要救助者や救助者の他、任意の積載物を積載できる。キャビン16は、その移動方向の両側面に出入り口を有する(図2(A)における上側と下側)。出入り口には扉が設けられていてもよい。キャビン16は、レール31上から着脱可能としてもよい(詳細は変形例として後述する)。キャビン16は、本発明の第1積載部に相当する。
【0045】
ウェイト移動機構17は、レール31に対して着脱、移動可能に懸架されたバッテリ18をレール31下で移動させる。ウェイト移動機構17は、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータを用いた直動機構であり、制御部11によって駆動制御される。
【0046】
バッテリ18は、飛行体10の電源であり、レール31下に懸架される。バッテリ18は、二次電池が好ましい。バッテリ18は、レール31に対して着脱、移動可能である。バッテリ18は、ウェイト移動機構17により、キャビン16の移動や要救助者の収容によって生じた飛行体10の重心変化を抑止または小さくするためのカウンタウェイトを兼ねる。このため、バッテリ18は、要救助者を収容した状態のキャビン16にも対応できるように、空の状態のキャビン16に対して十分に大きい質量を有する必要がある。
【0047】
なお、バッテリ18を分離可能な複数のセルから構成し、セル毎に個別に移動したり、飛行体10から切り離して落下させたりできるようにしてもよい。また、バッテリ18の代わりに、または追加して、別途ウェイトを設けてもよい。別途設けるウェイトには、例えば、消火剤を充填するようにし、飛行体10から消火剤を噴射できるようにしてもよい。
【0048】
レール伸縮機構19は、レール31が伸縮可能である場合においてレール31を伸縮させる。レール伸縮機構19は、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータを用いた直動機構であり、制御部11によって駆動制御される。
【0049】
動力部20は、例えば、ダクテッドファンであり、飛行体10に揚力、及び推進力を発生させる。動力部20は、制御部11によって駆動制御される。動力部20の詳細については、図2(C)を参照して後述する。なお、図1等には、4機の動力部20が図示されているが、動力部20の数は4機に限定されず、3機以下(1機を含む)であってもよいし、5機以上であってもよい。
【0050】
一般的な飛行体の場合、複数の動力部20の出力(揚力、及び推進力)を個別に制御することにより、飛行体の姿勢を安定させる。本実施形態の飛行体10の場合、動力部20の出力制御に加えて、カウンタウェイトとしてのバッテリ18を移動させることによって飛行体の姿勢を安定させることができる。さらに、状況に応じ、キャビン16を移動させたり、レール31を伸縮させたりすることによっても飛行体の姿勢を安定させることができる。これにより、飛行体10は、動力部20の出力制御だけでは対応し得ない程の重心変化にも対処することが可能となる。
【0051】
次に、図2は、飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。同図(C)は動力部20の詳細図である。同図(D)はキャビン16、及びバッテリ(ウェイト)18の移動方向を示している。
【0052】
同図(A)、及び同図(B)に示すように、飛行体10は、上述した制御部11、通信部12、各種センサ13、給電部14等が収容された本体30を有する。本体30の上面及び下面それぞれには、本体30、及び各動力部20よりも突出している板状のレール31が設けられている。なお、レール31の形状は、梯子状であってもよい。本体30には、その周囲に等間隔で複数(同図の場合、4本)の動力部支持部材21が接続されており、動力部支持部材21の先端にはそれぞれ動力部20が配置される。本体30の下部には、脚32が設けられている。
【0053】
同図(C)に示すように、動力部20は、モータ201、ロータ202、モータ支持部材203、及びロータガード204を有する。モータ201は、モータ支持部材203によってロータガード204に固定されている。換言すれば、モータ201(及びロータ202)の回転軸は固定されており、同図(C)の場合、Z軸に平行である。
【0054】
レール31上に載置されているキャビン16は、同図(C)に示された本体30の真上に位置する初期状態から、同図(D)に示すように、キャビン移動機構15によってレール31の両端まで案内されて移動でき、また初期状態に戻ることができる。なお、キャビン16は、図示するように、その端部がレール31の端部よりもさらに突出する位置まで移動できることが望ましい。これにより、レール31の端部をベランダ等に近接または接触させなくとも、キャビン16をベランダ等に近接または接触させることができる。
【0055】
同様に、レール31下に懸架されているバッテリ18は、本体30の真下に位置する初期状態から、ウェイト移動機構17によってレール31の両端まで案内されて移動でき、また初期状態に戻ることができる。なお、バッテリ18は、図示するように、その端部がレール31の端部よりもさらに突出する位置まで移動できるようにしてもよい。
【0056】
<飛行体10による救助作業について>
次に、飛行体10による救助作業の一例について説明する。高層建物のベランダ等に居る要救助者を救助する場合、飛行体10を当該ベランダの付近まで飛行させ、レール31の一端が当該ベランダに近接または接触するようにホバリングさせる。このとき、飛行体10のレール31は、本体30、及び動力部20より突出されているので、動力部20が高層建物に干渉することはない。
【0057】
次に、キャビン16をレール31の高層建物側の一端まで移動させ、キャビン16に要救助者を収容してから、キャビン16を本体30の真上の初期位置に戻す。このとき、飛行体10には、安定したホバリングを妨げる重量の変化や重心の変化等が生じる。そこで、安定したホバリングを維持するように、制御部11が、各種センサ13(のジャイロセンサ)によって検出される飛行体10の傾き等に基づき、ウェイト移動機構17にバッテリ18を移動させるとともに、各動力部20の出力(回転)を個別に制御する。
【0058】
この後、飛行体10を着陸させて要救助者を搬出する。以上で、一連の救助作業が終了される。
【0059】
以上説明したように、飛行体10によれば、各動力部20の出力(回転)を個別に制御するだけでなく、バッテリ18をカウンタウェイトとして移動させることができるので、より安定したホバリングを実現できる。また、キャビン16を要救助者が居るベランダ等により近づけることができるので、キャビン16に要救助者を収容する作業をより安全に実行できる。
【0060】
なお、例えば、高層建物のベランダ等に、耐火性能を有するキャビンを予め配置するようにし、火災発生時等においては要救助者が当該キャビン内で救助を待ち、飛行体10により当該キャビンを回収するようにしてもよい。
【0061】
<飛行体10の変形例>
図3、及び図4は、飛行体10の変形例を示している。
【0062】
図3(A)は、静止時(非飛行時)における飛行体10のレール31を伸縮可能とした変形例である。図3(B)は、飛行体10の動力部支持部材21(図2(A))を伸縮可能、又は折り畳み可能とすることによって、本体30から動力部20までの距離を可変とした変形例である。これらの変形例は、飛行体10をトラック等に搭載して輸送する際に要する輸送スペースを削減できる。また、図3(B)の変形例の場合、動力部支持部材21を伸ばして本体30と動力部20との距離を延ばすことにより、飛行体10の飛行を安定させることができる。なお、図3(A)の変形例と図3(B)の変形例とを組み合わせてもよい。その場合、飛行体10の輸送時の輸送スペースをより削減できる。
【0063】
図3(C)は、キャビン16とバッテリ18との位置を入れ替え、キャビン16をレール31下に懸架し、バッテリ18をレール31上に載置した変形例である。この変形例の場合、バッテリ18の着脱作業が容易となる。また、キャビン16に収容されている要救助者の搬出作業が容易となる。
【0064】
図4(A)及び図4(B)は、キャビン16に、例えばモータ及びタイヤを有する自走機構160を設け、キャビン16が自走できるようにした変形例である。これにより、飛行体10が着陸した後、要救助者をキャビン16に収容した状態で所定の場所(例えば、救急車、病院等)まで移送することができる。なお、キャビン16は、レール31に対して自動的に着脱できる着脱機構を設けてもよい。
【0065】
図4(C)は、バッテリ18に、例えばモータ及びタイヤを有する自走機構180を設け、バッテリ18が自走できるようにした変形例である。これにより、飛行体10が着陸した後、例えば、バッテリ18を充電器まで自走させることができる。また、充電が終わったバッテリ18を飛行体10まで自走させることができる。なお、バッテリ18には、レール31に対して自動的に着脱できる着脱機構を設けてもよい。
【0066】
<本発明の第2の実施形態に係る飛行体10
次に、図5は、本発明の第2の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。同図(C)はキャビン16、及びバッテリ(ウェイト)18の移動方向を示している。
【0067】
当該飛行体10は、飛行体10図2)における本体30とレール31とを一体化した本体40を備える。本体40における本体は単一のレールに一体的に包含されており、本体40の上下にそれぞれキャビン16及びバッテリ18が配置されている。飛行体10の本体40以外の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。また、飛行体10の動作、救助作業についても飛行体10と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
飛行体10は、飛行体10に比べて構成パーツが少ないので、例えば、分解、組立を行う際の作業工程を削減できる。
【0069】
<本発明の第3の実施形態に係る飛行体10
次に、図6は、本発明の第3の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。同図(C)はキャビン16の移動方向を示している。
【0070】
飛行体10は、飛行体10図2)におけるレール31を十字状に拡張して本体30と一体化した本体50を備える。本体50における本体は単一のレールに一体的に包含されており、本体50の上下にそれぞれキャビン16及びバッテリ18が配置されている。飛行体10の本体50以外の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
同図(C)に示すように、飛行体10は、キャビン16を初期位置の本体50の中央から4方向(図の上下左右方向)に移動させることができる。なお、図示は省略するが、バッテリ18についても、キャビン16のカウンタウェイトとなるように、初期位置の本体50の中央から4方向に移動させることができる。なお、飛行体10の救助作業については、飛行体10と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
飛行体10は、飛行体10と比べてキャビン16の移動方向の自由度が増えるので、飛行体10の飛行に関する障害や制約等が厳しい救助現場において、救助の成功性を高めることができる。
【0073】
<本発明の第4の実施形態に係る飛行体10
次に、図7は、本発明の第4の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。同図(C)はキャビン16、及びバッテリ18の移動方向を示している。
【0074】
飛行体10は、飛行体10図2)において下側のレール31の下に懸架していたバッテリ18を、キャビン16と並べて上側のレール31の上に載置したものである。下側のレール31は、省略されている。なお、飛行体10の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
飛行体10は、バッテリ18をレール31に懸架する飛行体10に比べて、バッテリ18の着脱作業の作業性を高めることができる。
【0076】
<本発明の第5の実施形態に係る飛行体10
次に、図8は、本発明の第5の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。同図(C)は飛行体10の使用例を示している。
【0077】
飛行体10は、飛行体10図2)の上側のレール31の一端に接続部材33Aを設けたものである。接続部材33Aは、本発明の第1の接続部材に相当する。接続部材33Aは、例えば、高層建物のベランダに設けられた手摺60を跨ぐように下向きに形成された凸部331を有する。接続部材33Aは、凸部331が手摺60に引っ掛かることで、飛行体10を手摺60に係留することができる。飛行体10の場合、キャビン16は、図示するように、その端部が接続部材33Aよりもさらに突出する位置まで移動できることが望ましい。
【0078】
接続部材33Aは、レール31の一端に対して着脱可能としてもよい。なお、接続部材33Aには、上述した形状の他、例えば、吸盤を用いたり、磁石を用いたり、接着剤を用いたり、把持動作が可能なマニピュレータを用いたりしてもよい。また、接続部材33Aは、レール31の両端に設けてもよい。
【0079】
飛行体10の接続部材33A以外の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
飛行体10は、接続部材33Aによって、ベランダの手摺60に係留することができ、要救助者をキャビン16に収容する際の飛行体10の下がり込みを抑止できる。これにより、救助時の安全性を向上でき、要救助者に対しては心理的な安心感を与えることができる。
【0081】
<本発明の第6の実施形態に係る飛行体10
次に、図9は、本発明の第6の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は2台の飛行体10を連結した場合の側面図である。同図(C)は連結した飛行体10の使用例を示している。
【0082】
飛行体10は、飛行体10図8)と同様、レール31の一端に接続部材33Aを設け、レール31の他端に接続部材33Bを設けたものである。接続部材33Bは、本発明の第2の接続部材に相当する。接続部材33A,33Bは、レール31の端に対して着脱可能としてもよい。接続部材33Bは、他の飛行体10(飛行体10でもよい)の接続部材33Aと接続可能な形状を有する。例えば、接続部材33Bは、接続部材33Aの下向きの凸部331と噛合可能な上向きの凹部332を有する。
【0083】
同図(B)に示すように、飛行体10は、接続部材33A,33Bにより、他の飛行体10(飛行体10でもよい)と連結できる。なお、飛行体10どうしの連結は、飛行前に行ってもよいし、ホバリング中に行うこともできる。これにより、飛行体10は、飛行体10と同様の効果に加えて、2台が連結することにより、積載重量を増すことができる。
【0084】
さらに、同図(C)に示すように、飛行体10は、連結した他の飛行体10(飛行体10でもよい)と互いのキャビン16を接近させることができる。これにより、例えば、要救助者の受け渡しを行うことができる。
【0085】
<飛行体10の変形例>
図10は、飛行体10の変形例を示している。同図(A)は、連結した2台の飛行体10間にて、キャビン16の移動を可能にした変形例である。2台の飛行体10のレール31の対向する端部は、キャビン16を受け渡し可能に互いに近接又は接触する。これにより、例えば、要救助者の受け渡しをベランダ等の救助場所により近い側で行うことができる。同図(B)は、連結した2台の飛行体10にて、バッテリ18の移動を可能にした変形例である。これにより、例えば、ホバリング中においてバッテリ18の交換が可能となる。使用済のバッテリ18は、切り離して落下させてもよい。
【0086】
<本発明の第7の実施形態に係る飛行体10
次に、図11は、本発明の第7の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の側面図である。同図(B),(C)は飛行体10の使用例を示している。
【0087】
飛行体10は、飛行体10図1)のバッテリ18を本体30の内部に収容し、図3(A)に示された飛行体10の変形例と同様、レール31を伸縮可能としたものである。ただし、図3(A)の変形例が静止時(非飛行時)においてレール31を伸縮可能であったことに対し、飛行体10は、ホバリング中においてもレール31を伸縮することができる。これを実現するため、飛行体10においては、図11(B)に示されるように、例えば、レール31を図の左側に伸長する場合、同時に、伸長されるレール31のカウンタウェイトとして、キャビン16を図の右側に移動させるようになされている。反対に、何らかの目的のためにキャビン16を移動させる場合、キャビン16のカウンタウェイトとして、同時にレール31を伸縮することもできる。これにより、飛行体10は、レール31の伸縮、またはキャビン16の移動に伴う重心の移動を防ぎ、より安定したホバリングを実現できる。
【0088】
飛行体10は、以下のような状況下での利用が想定される。マンション火災に現場に出動し、逃げ遅れた要救助者をベランダから飛行体10に収容するような場合、同図(B)に示されるように、飛行体10は、始めに、当該ベランダの前でホバリングしながらレール31の端部がベランダの手摺60(図9)に載るまでレール31を伸長させ、これと同時に、キャビン16を後方側に移動させる。これにより、飛行体10は、その姿勢を水平に保つことができる。
【0089】
次に、同図(C)に示されるように、レール31の端部が手摺60に載った状態で、キャビン16をレール31に沿ってベランダ側まで移動させて要救助者をキャビン16に収容する。この後、キャビン16をレール31の中央よりも右側に移動させ、そこからキャビン16をレール31の中央に戻し、これと同時にレール31の伸長を元に戻せば、飛行体10は、その姿勢を水平に保った状態で現場から帰投することができる。
【0090】
<第7の実施形態に係る飛行体10の変形例>
次に、図12は、第7の実施形態に係る飛行体10の変形例を示している。当該変形例は、飛行体10~飛行体10の同様に、バッテリ10をレール31の下側に懸架したものである。当該変形例は、レール31の伸縮、キャビン16の移動、及びバッテリ18の移動を相互のカウンタウェイトとして実行する機能を有する。当該変形例の場合、図11の飛行体10に比べてより安定したホバリングを実現できる。
【0091】
<本発明の第8の実施形態に係る飛行体10
次に、図13は、本発明の第8の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の側面図である。同図(B)は飛行体10の使用例を示している。
【0092】
飛行体10は、特に、マンションのベランダ等から宅配便等の荷物の配達、集荷に適した実施形態である。飛行体10は、飛行体10図1)のバッテリ18を本体30に収容し、飛行体10からキャビン16を省略し、第1積載部161、第2積載部162、及びそれぞれの移動機構(不図示)を追加したものである。
【0093】
第1積載部161、及び第2積載部162は、レール31の下に懸架されており、それぞれの移動機構により、レール31に沿って移動される。第1積載部161、及び第2積載部162は、一方が他方の移動に対応するカウンタウェイトとして機能する。
【0094】
第1積載部161には、配達する荷物、または集荷した荷物163が収容される。第2積載部162は、荷物163を収容するスペースを有し、且つ、例えば、ロボットアーム等の荷物移動機構(不図示)を備える。なお、荷物移動機構は、ロボットアームに限らず、台車等でもよい。第2積載部162は、例えば、その側面に荷物163を出し入れするための扉を有する。第2積載部162は、荷物移動機構により、第1積載部161に積載された、配達する荷物163を取り出して自身に積載する。また、第2積載部162は、自身に積載された、集荷した荷物163を荷物移動機構によって第1積載部161に積載する。
【0095】
飛行体10によって荷物163を配達する場合、飛行体10は、始めに、ベランダの前でホバリングしながら、第2積載部162が、荷物移動機構により第1積載部161に積載されている荷物163を取り出して自身に収容する。次に、同図(B)に示すように、荷物163が収容された第2積載部162をレール31下で端(図の左側)まで移動させ、これと同時に、第2積載部162のカウンタウェイトとして、第1積載部161を反対側(図の右側)に移動させる。これにより、飛行体10のホバリング姿勢を安定させることができる。第2積載部162に積載された荷物163は、荷物移動機構によって取り出してもよいし、配達先の人に取り出させるようにしてもよい。第2積載部162から荷物163が取り出された後、第2積載部162、及び第1積載部161を互いにバランスを取りながら元の位置に戻せば、飛行体10は、安定した姿勢で帰投することができる。
【0096】
<第8の実施形態に係る飛行体10の変形例>
次に、図14は、第8の実施形態に係る飛行体10の変形例を示している。
【0097】
同図(A)は、飛行体10の第1の変形例であり、第1積載部161、及び第2積載部162をレール31上に配置したものである。
【0098】
同図(B)は、飛行体10の第2の変形例であり、レール31上にキャビン16を設けたものである。この場合、第1積載部161だけでなく、キャビン16にも荷物163を積載することができるので、飛行体全体としての積載量を増やすことができる。ただし、この場合、第2積載部162の荷物移動機構によりキャビン16に積載されている荷物163を取り出して自身に収容できるようにする。
【0099】
<動力部20の変形例>
図15は、動力部20の変形例を示している。当該変形例は、動力部20(のロータ202)の回転軸の傾きを可変としたものである。同図(A)は動力部20の回転軸を傾けていない初期状態の上面図である。同図(B)は動力部20の回転軸を傾けていない初期状態の側面図である。同図(C)は動力部20の回転軸を傾けた状態の上面図である。同図(D)は動力部20の回転軸を傾けた状態の側面図である。
【0100】
当該変形例は、動力部20の周囲に円環状の動力部ガード22を設けたものである。この場合、動力部支持部材21(図2)に対して動力部ガード22が固定される。動力部ガード22の内側には、動力部回転支持部材23を軸として回転自在に動力部20が取り付けられる。動力部回転支持部材23は、動力部ガード22の内側のXY平面にて回転自在に取り付けられる。なお、回転軸の傾きを変化させるための機構は、例えば、制御部11により制御されるモータ、シリンダ等のアクチュエータと、ギア、ベルト、ローラ、レール等の機械要素により実現できる。
【0101】
当該変形例の場合、動力部ガード22の内側のXY平面にてZ軸を中心に動力部回転支持部材23を回転させ、さらに、動力部回転支持部材23を軸として動力部20を回転させることができる。すなわち、当該変形例の場合、動力部20全体は、直交する2軸を中心に回転させることができるので、動力部20(のロータ202)の回転軸を任意の方向に変化させることができる。したがって、上述した飛行体10~10の動力部20に当該変形例を使用した場合、より高精度で揚力や推進力を調整でき、より安定した飛行やホバリングを実現できる。
【0102】
<本発明の第9の実施形態に係る飛行体10
次に、図16は、本発明の第9の実施形態に係る飛行体10の構成例を示している。同図(A)は飛行体10の上面図である。同図(B)は飛行体10の側面図である。
【0103】
同図(A)及び同図(B)に示すように、飛行体10は、キャビン71、動力部72、テールロータ支持部材73、テールロータ74、及び脚75を備える。
【0104】
キャビン71は、飛行体10の先頭に設けられている。キャビン71は、少なくとも要救助者一人を収容できる大きさを有する。望ましくは、要救助者の収容を補助する救助者を含めた二人を収容できる大きさが確保できればよい。キャビン71は、先頭側(動力部72と接する面の反対側の面)に出入り口を有する。出入り口には扉が設けられていてもよい。
【0105】
キャビン71の後方には、動力部72が設けられている。動力部72は、例えばダクテッドファンであり、飛行体10に揚力、及び推進力を発生させる。なお、同図における動力部72は、回転軸が固定されたシングルロータであるが、2重反転ロータを採用してもよい。また、図15に示された動力部20の変形例のように、回転軸の傾きを変更できるようにしてもよい。
【0106】
動力部72の後方には、テールロータ支持部材73を介してテールロータ74が設けられている。動力部72は、本体を兼ね、その内部に、制御部11、通信部12、各種センサ13、給電部14、バッテリ18(図1)(いずれも不図示)を有する。
【0107】
テールロータ74は、動力部72の回転に伴う飛行体10全体の回転防止と、飛行体10の飛行方向の調整を目的として設けられている。
【0108】
飛行体10は、動力部72(ロータを含む)よりも外側前方にキャビン71が配置されており、従来のヘリコプタのようにロータの回転面の外周がキャビン71よりも外側に突出していないため、高層建物に接近することができ、キャビン71をベランダ等に近接または接触させて要救助者を収容することができる。
【0109】
<飛行体10の変形例>
図17は、飛行体10の変形例を示している。
【0110】
同図(A)は、図15に示された動力部20の変形例と同様に、飛行体10のテールロータ74の回転軸の傾きを可変とした変形例である。この変形例は、飛行体10の空中姿勢をより高い精度で制御できる。また、所謂「テールロータの効果喪失」を回避することが可能となる。なお、図示は省略するが、複数のテールロータ74を設け、上下または左右に配置するようにしてもよい。
【0111】
同図(B)は、キャビン71を動力部72から離す方向に移動可能とし、さらに、上下左右に移動可能した変形例である。一例として、キャビン71と動力部72を連結し、キャビン71を前後移動可能かつ上下左右移動可能に支持する連結部76が設けられている。この変形例は、キャビン71をベランダ等に近接または接触させる際の飛行体10の空中位置の自由度を上げることができる。なお、図示は省略するが、テールロータ74についても、その位置を上下左右に移動可能としてもよい。
【0112】
同図(C)は、テールロータ支持部材73を伸縮自在とした変形例である。この変形例は、飛行中にテールロータ支持部材73を伸縮させることにより、飛行体10の前後のバランス操作を行い、前進、後進、空中停止等を制御することができる。また、この変形例は、テールロータ支持部材73を縮めることにより、飛行体10をトラック等によって救助現場等まで輸送する際に要する輸送スペースを削減できる。
【0113】
なお、図示は省略するが、同図(B)の変形例と同図(C)の変形例とを組み合わせてもよい。この場合、飛行中にキャビン71を前後に移動させたり、テールロータ支持部材73を伸縮させたりすることにより、飛行体10の前後のバランス操作を行い、前進、後進、空中停止等を制御することができる。
【0114】
さらに、テールロータ支持部材73の内部または外部にテールロータ支持部材73の長手方向に延びたレールと、当該レールに沿って移動可能なウェイトとを設けてもよい。この場合、飛行中に当該ウェイトを移動させることにより、前後のバランス操作を行い、前進、後進、空中停止等を制御することができる。
【0115】
<本発明の第10の実施形態に係る飛行体1010
次に、図18は、本発明の第10の実施形態に係る飛行体1010の構成例を示している。同図(A)は飛行体1010の上面図である。同図(B)は飛行体1010の側面図である。
【0116】
飛行体1010は、飛行体10図16)の動力部72の周囲に複数(同図の場合、4つ)のカウンタウェイト81を設けたものである。飛行体1010のカウンタウェイト81以外の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0117】
カウンタウェイト81は、キャビン71に要救助者を収容する際の飛行体1010の傾きを抑止するため、ウェイト移動機構(不図示)によって動力部72の周囲を周方向に沿って移動できるようになされている。ウェイト移動機構は、例えば、制御部11により制御されるモータ、シリンダ等のアクチュエータと、ギア、ベルト、ローラ、レール等の機械要素により実現できる。なお、カウンタウェイト81の数は4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、カウンタウェイト81を着脱可能とし、必要に応じ、ユーザからの操作に応じて飛行体1010から切り離すことができるようにしたり、ユーザの作業によりその数を増減できるようにしたりしてもよい。
【0118】
飛行体1010は、カウンタウェイト81を設けたことにより、飛行体10図16)に比べて、キャビン71に要救助者を収容する際の飛行体1010の傾きを抑止することができる。また、飛行体1010の空中姿勢をより高い精度で制御できる。
【0119】
<本発明の第11の実施形態に係る飛行体1011
次に、図19は、本発明の第11の実施形態に係る飛行体1011の構成例を示している。同図(A)は飛行体1011の上面図である。同図(B)は飛行体1011の側面図である。
【0120】
当該飛行体1011は、飛行体10図16)の動力部72の周囲に制御部11により制御される複数の補助動力部91を設けたものである。飛行体1011の補助動力部91以外の構成要素については、飛行体10と同様であり、共通の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
補助動力部91は、動力部72に比べて径が小さく、小さな揚力、及び推力を発生させる。ただし、補助動力部91は、補助動力部移動機構(不図示)によって動力部72の周囲を周方向に沿って移動できるようになされている。補助動力部移動機構は、例えば、制御部11により制御されるモータ、シリンダ等のアクチュエータと、ギア、ベルト、ローラ、レール等の機械要素により実現できる。なお、補助動力部91の数は4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、補助動力部91を着脱可能とし、必要に応じてユーザの作業によりその数を増減できるようにしてもよい。さらに、補助動力部91には、図15に示された動力部20の変形例と同様の構造を適用してもよい。
【0122】
飛行体1011は、補助動力部91を設けたことにより、飛行体10図16)に比べて、飛行速度や耐荷重量を上げることができる。また、補助動力部91を適切に移動させることにより、キャビン71に要救助者を収容する際の飛行体1011の傾きを抑止することができる。また、飛行体1011の空中姿勢をより高い精度で制御できる。
【0123】
<飛行体10~1011の変形例>
飛行体10~1011にロボットアームを設けてもよい。これにより、例えば、ベランダの手摺60等を掴んで接近したり、所定の救助用具を渡したり、水上に浮かぶ要救助者を掬い上げて救助したり、浮遊物を回収したりすることができる。
【0124】
また、飛行体10~1011に着水フロートを設けてもよい。着水フロートは、着脱可能としてもよい、また、着水フロートは、折り畳み式として、使用時にガスにより膨張させるようにしてもよい。これにより、着水を可能とするだけでなく、着陸時の衝撃を吸収することが可能となる。
【0125】
本発明は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態や変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある変形例の一部を他の変形例に置き換えたり、変形例を組み合わせたりすることが可能である。
【0126】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0127】
10~1011・・・飛行体、11・・・制御部、12・・・通信部、13・・・種センサ、14・・・給電部、15・・・キャビン移動機構、16・・・キャビン、160・・・自走機構、161・・・第1積載部、162・・・第2積載部、163・・・荷物、17・・・ウェイト移動機構、18・・・バッテリ、180・・・自走機構、19・・・レール伸縮機構、20・・・動力部、201・・・モータ、202・・・ロータ、203・・・モータ支持部材、204・・・ロータガード、21・・・動力部支持部材、22・・・動力部ガード、23・・・動力部回転支持部材、30・・・本体、31・・・レール、32・・・脚、33A,33B・・・接続部材、331・・・凸部、332・・・凹部、40,50・・・本体、60・・・手摺、71・・・キャビン、72・・・動力部、73・・・テールロータ支持部材、74・・・テールロータ、75・・・脚、81・・・カウンタウェイト、91・・・補助動力部
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