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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】描画システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023223833
(22)【出願日】2023-12-30
【審査請求日】2024-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524006346
【氏名又は名称】株式会社サステナブルバリュー
(74)【代理人】
【識別番号】110004174
【氏名又は名称】弁理士法人エピファニー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真一
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-114384(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106056648(CN,A)
【文献】特開2004-154733(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116278493(CN,A)
【文献】特開平01-219962(JP,A)
【文献】特開昭61-100388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0032468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画ツールにより対象面に描画を行う描画システムであって、
前記描画ツールを保持し、移動させるロボットと、
前記ロボットの動きを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
画像データを減色した減色画像データを作成し、前記減色画像データに含まれる少なくとも1つの色の配置領域の情報を含むバイナリーイメージを作成する画像データ変換部を備え、
前記バイナリーイメージにおいて、
所定の図形の基準となる点であって、前記配置領域の少なくとも一部が前記図形の少なくとも一部の範囲内に所定の割合以上含まれるような基準点と、
前記基準点を始点とし、前記始点から所定の距離だけ離れた点であって、当該点を基準とする前記図形の範囲内に所定の割合以上の前記配置領域を含むように選択された終点と、を求め、
前記始点及び前記終点を基準として配置された前記図形の範囲内を、前記基準点、前記始点及び前記終点の選択対象から排除し、
繰り返し求められた前記基準点、前記始点及び前記終点を基に前記描画ツールの移動経路を作成し、
前記移動経路を基に前記ロボットの制御指示を行う、
描画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の描画システムであって、
前記制御装置は、
前記終点を次の始点とし、更に次の終点を求める、描画システム。
【請求項3】
請求項2に記載の描画システムであって、
前記制御装置は、
前記バイナリーイメージに含まれる複数のピクセルを順に走査し、前記基準点を求め、
前記次の始点から前記次の終点が求められなかったときに、前記複数のピクセルの走査を再開し、次の基準点を求める、描画システム。
【請求項4】
請求項3に記載の描画システムであって、
前記制御装置は、
前記複数のピクセルを全て走査した後に、前記図形を前記図形よりも小さい次の図形に変更し、再度前記複数のピクセルを順に走査し、前記基準点を求める、描画システム。
【請求項5】
請求項4に記載の描画システムであって、
前記制御装置は、
前記基準点、前記始点及び前記終点を基に作成された前記移動経路の距離に基づき、前記描画ツールの更新動作を前記移動経路に加える、描画システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の描画システムであって、
前記制御装置は、
目的色又は前記目的色に近い色を作り出すためのレシピを出力する混色部と、
複数の既知色の成分の値を記憶した記憶部と、を備え、
前記混色部は、
前記目的色の成分の値を前記減色画像データ又は前記バイナリーイメージから読み取り、前記複数の既知色の中から第1候補色を選択し、
座標空間内において、前記目的色の座標を含む平面によって区切られる2つの空間のうち前記第1候補色を含まない空間に存在する前記複数の既知色から第2候補色を選択し、
前記第1候補色及び前記第2候補色の座標を基に前記第1候補色と前記第2候補色との混合比率を算出する、
描画システム。
【請求項7】
請求項6に記載の描画システムであって、
前記混色部は、
前記目的色の成分値から前記複数の既知色のうち前記目的色に最も近い既知色を前記第1候補色として抽出する、
描画システム。
【請求項8】
請求項6に記載の描画システムであって、
前記混色部は、
色座標空間内において、前記目的色の座標を含む平面によって区切られる2つの空間のうち前記第1候補色が含まれていない空間において、前記目的色の座標を頂点とし、前記目的色の座標と前記第1候補色の座標とを通る直線を中心軸とし、母線の方向がθである円錐形状空間を定義し、
前記円錐形状空間から前記第2候補色を抽出する、
描画システム。
【請求項9】
請求項6に記載の描画システムであって、
前記混色部は、
色座標空間内において、前記目的色の座標を含む平面によって区切られる2つの空間のうち前記第1候補色が含まれていない空間に存在する前記複数の既知色のうち前記目的色の座標と前記第1候補色の座標とを通る直線からの距離が最も近いものを前記第2候補色として抽出する、
描画システム。
【請求項10】
請求項1~5の何れか1項に記載の描画システムであって、
前記ロボットは、
先端部に回転駆動が可能な回転軸を備え、
前記回転軸は、
前記描画ツールを複数保持できるように構成され、
前記制御装置は、
当該回転軸を駆動させることにより前記描画ツールの交換を行う、
描画システム。
【請求項11】
請求項1~5の何れか1項に記載の描画システムであって、
前記ロボットの周囲に配置された水槽と、
前記水槽の水中に配置された水流ポンプと、を備え、
前記制御装置は、
前記ロボットに、前記水流ポンプにより水流が発生した前記水槽に前記描画ツールを浸して洗浄をさせる、
描画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画システムであって、特に描画ツールを保持した描画ロボットにより入力した画像を再現させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアームを変位自在に連結して構成され、人間の腕の動きを再現可能なように多自由度で動作するロボットアームを備えるロボットが種々の産業分野等で利用されている。そして、係るロボットに対し、ロボットアームの各部位の三次元位置、アームを連結した関節角度、及びこれらの時系列変化を示す動作(軌道)に関する指示を行い、ロボットを予めプログラムした通りに動作させることが行われている。このとき、空間上の各座標点を数値化し、各々の部材に相当する座標点をそれぞれ入力し、ロボットアームを操作させる数値制御が一般に行われているが、個々のプログラムにおいてそれぞれの座標点を各動作のステップ毎に入力することは多大な労力及び時間を有し、さらに座標点の入力によってはロボットアームに滑らかな動きを再現させることができない場合があった。そこで、係る数値制御におけるロボット(ロボットアーム)の動作を予め教示するロボット教示システムが用いられている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ロボット教示システムは、人の腕と同様の動作を再現可能な多自由度多関節ロボットアーム及びワーク駆動部を有するスレーブ機構部によって、マスター機構部で認識された筆記者の筆記動作を再現することができる。さらに、具体的に説明すると、筆記動作を非接触型センサ等によって認識する筆記情報取得手段と、そのときのワークの状態を認識するワーク情報取得手段とを有するマスター機構部によって、筆記動作の状況が認識され、信号制御されてコントローラに送出される。そして、コントローラでは送出された筆記情報及びワーク情報を受付けるとともに、スレーブ機構部で再現動作可能に制御するための制御データ(筆記制御データ及びワーク制御データ)を演算処理して演算処理し、これをスレーブ機構部に送る。その後、コントローラから制御データを受付けたスレーブ機構部は、各々の制御データに基づいて多自由度多関節ロボットアーム及びワーク駆動部を制御し、スレーブ機構部で筆記動作を再現させることができる。これにより、両腕を用いて筆記動作を行った場合と同様の筆記動作を再現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-062052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているロボット教示システムでは、陶磁器などのワークに対し絵付けする場合、毛筆による書写を行うような場合には、優れた職人などの動きをデジタル化して残すことができる。そして、そのデジタル化した動きをロボットに再現させることにより、作品等を再現することができる。しかし、油絵等の絵画のように作品を完成させるのに複数の絵の具を使用する場合又は絵の具をキャンバスに塗布する範囲が広いような場合には、ロボットに教示させるための手間も多くなり、デジタル化したデータ量も多くなる。この場合、作品をロボットにより再現させるために、人がロボットに動きを教示させる手間及び時間と、ロボットによる作品の再現するための時間とが必要になり、1つの作品を再現させるために多くの時間が掛かるという課題があった。
【0006】
一方、絵画などを単にコピーし印刷する、という方法で作品を再現した場合、複製品の量産は容易であるものの、油絵や水彩画などの絵画に使用する絵の具や墨の風合いが再現されにくい、という課題があった。
【0007】
本発明の課題は、ロボットにより、絵画などの作品の風合いを再現しつつ、作品を繰り返し複製できる描画システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る描画システムは、描画ツールにより対象面に描画を行う描画システムであって、前記描画ツールを保持し、移動させるロボットと、前記ロボットの動きを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、画像データを減色した減色画像データを作成し、前記減色画像データに含まれる少なくとも1つの色の配置領域の情報を含むバイナリーイメージを作成する画像データ変換部を備え、前記バイナリーイメージを基に前記描画ツールの移動経路を作成し、前記移動経路を基に前記ロボットの制御指示を行うものである。
【発明の効果】
【0009】
上記の手段によれば、描画システムは、画像データを取り込み、複製が容易なように減色画像データを作成する。そして、減色画像データからバイナリーイメージを作成することにより、ある1つの色ごとに描画ツール(筆、ペンなど)の動きを作成することができる。これにより、描画システムが絵画などを再現するためのデータを効率良く作成することができる。ロボットは、作成されたデータに基づき描画ツールを保持して動かすことにより作品を再現するため、筆やペンなどの実物の絵画等の風合いを再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る描画システム100を示す概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る描画システム100に入力される画像データ及び画像処理された後の画像データの一例である。
図3】実施の形態1に係る描画システム100の基本的な処理のフローである。
図4】実施の形態1に係る描画システム100による混色作成手順の一例である。
図5図4の混色作成の説明図である。
図6】実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。
図7図6の移動経路作成の一例の説明図である。
図8図6の移動経路作成の一例の説明図である。
図9図6の移動経路作成の一例の説明図である。
図10】実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。
図11図10に示した移動経路作成の一例の説明図である。
図12図6又は図10のフローチャートに基づいて作成された描画ツール73の移動経路で描画を行い再現された画像の一例である。
図13】実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。
図14図13に示されるフローチャートによる処理により隙間が塗りつぶされる工程の説明図である。
図15A】実施の形態1に係る描画システム100によるロボット50の制御の一例を示すフローチャートである。
図15B図15Aの制御に対し更に描画ツール73の交換、洗浄の動作を加えた制御の一例を示すフローチャートである。
図16】実施の形態1に係る描画システム100において描画に使用されるロボット50の一例の斜視図である。
図17図16に示すロボット50の可動範囲80及びキャンバス70等の位置関係の説明図である。
図18図16に示すロボット50が再現可能な画像の範囲の説明図である。
図19】実施の形態1に係るロボット50の先端部58に取り付けられた描画ツール保持部59Bの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の描画システムの好ましい実施の形態が図面を参照して詳しく説明されている。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0012】
実施の形態1.
<描画システム100の構成>
図1は、実施の形態1に係る描画システム100を示す概略構成図である。図1に示される描画システム100は、例えば多関節の腕部51を有するロボット50を、制御装置10を用いて制御し、絵画等の画像を作成することを目的としている。腕部51の先端に筆などの描画ツール73(図19参照)が設置され、ロボット50が描画ツール73を動かすことにより、描画ツール73が保持する絵の具などが対象面に付着し、絵画が再現されるものである。対象面は、絵画用のキャンバス、紙など実際に絵画に使用される物が使用でき、描画ツール73は水彩画、油絵及び水墨画用の筆、クレヨン、パステル、鉛筆、色鉛筆、ボールペン、マーカー、エアブラシ、スプレー等、様々なものが使用できる。
【0013】
一例として、制御装置10は、デスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型のPCなどの端末、又はスマートフォンなどの携帯型端末などを利用して実現される。制御装置10は、プログラムがインストールされ、インターネットなどのネットワークなどを介して通信でき、マウス、キーボード及びタッチパネルなどの入力部17を介してユーザーの指示を受け付け、ロボット50の命令文及び入力した画像データ及び変換した画像データ等を表示部18に表示するように構成されても良い。
【0014】
制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はDSP(Digital Signal Processor)ともいう。制御装置10において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、描画システム100を統括制御するものである。制御装置10は、記憶部16に保存された情報に基づき表示部18に表示される内容を制御する。また、制御装置10は、ユーザーが入力部17を介して入力された内容に基づき表示部18に表示された内容を変更し、かつユーザーの操作を認識し、蓄積などの各機能を制御するものである。
【0015】
記憶部16は、例えば、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、又はHDD(Hard disk drive)等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置としての役割を担うものである。実施の形態1において、記憶部16は、端末内に設置されても良いし、ネットワークを介して接続されたサーバなどであっても良い。なお、記憶部16は、必ずしも端末に設置されているものではなく、ネットワーク上に通信可能に設置されているものも含み、ネットワーク上に存在するものも含めて記憶部16と称する場合がある。つまり、制御装置10は、端末に設置されている記憶部16またはネットワークに接続されている記憶部16も含めた通信可能な記憶装置から情報を呼び出すことができる。制御装置10は、表示部18に表示させるために必要な情報を適宜記憶部16から呼び出す。また、記憶部16は、入力部17を介しユーザーが入力した情報なども蓄積することができる。
【0016】
描画システム100における制御装置10、記憶部16及び入力部17は、どのような形で構成されていてもよい。例えば、描画システム100が複数のサーバコンピュータからなるネットワークコンピュータシステムとして形成されている場合、各機能が複数のサーバコンピュータに分散して配設されていてもよい。また、それらのサーバコンピュータは、複数の業者、サーバ管理者がそれぞれ所有するコンピュータシステム(例えば、他の情報提供業者、プロバイダ、ホスティングシステム提供業社等が所持又は管理するコンピュータシステム)に跨って配設されていてもよい。サーバコンピュータは、いわゆるクラウド・コンピュータシステムとして形成されてもよい。更に、制御装置10、記憶部16及び入力部17のうち少なくとも一部の構成が、描画システム100を構成するクライアント端末に設けられていてもよい。
【0017】
表示部18は、描画システム100を構成するコンピュータに接続されたLCD(Liquid Crystal Display)等であっても良いし、携帯型端末などの表示画面又はテレビ画面であっても良い。
【0018】
制御装置10は、ロボット制御部11においてロボット50を制御する命令文を実行し、ロボット50を動かし、描画ツール73を所定の移動経路(軌跡)で動かす。例えば、描画ツール73の移動経路は、描画データ作成部12において描画データ作成部12で作成する。描画ツール73の移動経路を作成するに当たっては、画像データが画像入力部14に入力され、その画像データが画像データ変換部13で画像処理し、そのデータを基に描画ツール73の移動経路が作成される。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る描画システム100に入力される画像データ及び画像処理された後の画像データの一例である。図2(a)は、描画システム100によって再現する元の画像の一例を示している。図2(b)は、実際に描画システム100が描けるように処理された後の画像を示している。描画システム100は、現存する絵画などの画像データを基にして描画ツール73を用いて絵画を再現する。ただし、描画システム100が使用できる色の数はある程度制限があるため、描画システム100は、画像データを減色処理して作成された減色画像データに基づいて、再現するための各色を決定し、描画ツール73の移動経路を決定する。
【0020】
<描画システム100の基本的な処理>
図3は、実施の形態1に係る描画システム100の基本的な処理のフローである。描画システム100は、描画ツール73の移動経路を作成するに当たって、画像を取得する。画像は、写真のデータでも良いし、絵画の画像データでも良い。制御装置10は、画像を所定の色数に減色処理する(ステップA1)。例えば、制御装置10は、図2(a)の画像から図2(b)の画像に変換するに当たって、24色に減色している。減色アルゴリズムは、メディアンカット、ファストオクトツリー、マックスカバレッジなどのオープンソースの手法を採用できる。なお、減色画像データは、24色に限定されるものではなく、任意の色数にできる。ただし、色数が多いと、描画システム100は、描画するにあたって多くの色の塗料を準備する必要があるため、色数は適宜設定される。減色画像データは、再現する画像データを基に画像データ変換部13で変換される。また、減色画像データを作成するときに元の画像をそのまま減色処理すると、ユーザーが望む色が他の色に置き換わってしまう場合がある。このような場合は、元の画像からユーザーが望む色を抽出し、画像の端に追加することにより、望む色が他の色に置き換わってしまわないようにできる。例えば、予め画像の下端の全幅に亘って望む色の領域を追加した画像を作成し、その画像を減色処理すると良い。
【0021】
次に、制御装置10は、減色画像データを基に、描画するために必要な色を既知色から選択、又は既知色から作成する(ステップA2)。例えば、制御装置10は、準備された絵の具を画像データとして保持している。絵の具の基本色(例えば、市販の12色絵の具)のデータは、例えばスキャナなどの撮像装置により取得され、それぞれの色がRGB値に変換されたものである。また、基本色の混色も含めて画像データとして保持しても良い。例えば、制御装置10は、基本色の12色をそれぞれ1:2または2:1の混合比で混ぜた144色を画像化してRGB値に変換したデータを保持していても良い。制御装置10は、既知色のデータから描画に使用する色を選択するか、混色のレシピを作成し、描画に使用する色を作成する。詳細については、別途図4を用いて説明する。
【0022】
次に、制御装置10は、減色画像データの各色のバイナリーイメージを作成する(ステップA3)。バイナリーイメージは、減色画像データに含まれるある特定の色と透明色とで構成された画像データである。減色画像データが、例えば24色に減色されたものであれば、24個のバイナリーイメージが作成される。
【0023】
作成された各色のバイナリーイメージごとに、描画ツール73の移動経路(軌跡)を作成する(ステップA4)。描画ツール73の移動経路の作成のアルゴリズムは、後述する。
【0024】
描画ツール73の移動経路が作成されたら、それを基にロボット50の動作の命令文が作成される(ステップA5)。描画ツール73の移動経路のみのデータは、例えば絵筆などの描画ツール73の絵の具の補充のタイミング、各色の筆の交換及び筆の洗浄などが考慮されていないため、ステップA5ではそれらの動作も含めて命令文が作成される。ただし、各色の絵の具の交換などは、人の手が介在して行われても良い。例えば、色の交換時は、ロボット50が停止し、描画ツール73を交換した後にユーザーがリスタートさせるように命令文が構成されても良い。
【0025】
以上のように、描画システム100は、上記のような手順で画像データから描画ツール73の移動経路を作成し、ロボット50の動作を制御するためのデータを作成する。
【0026】
(混色の手順)
画像データは、上記の手順で減色されるが、減色された画像データに含まれる色は、必ずしも市販の基本色及びそれらを単純な比率(上記の1:2または2:1など)には当てはまらない場合がある。そのような場合は、以下のような手順で混色を作成する。以下の手順は、図3に示したフローチャートのステップA2の詳細の手順の一例である。
【0027】
図4は、実施の形態1に係る描画システム100による混色作成手順の一例である。図5は、図4の混色作成の説明図である。描画システム100における混色の作成は、制御装置10がデータとして保有している既知色から2つの色を選んでそれらの混合比率を算出し、混色のレシピとして出力するものである。
【0028】
まず、制御装置10は、減色した画像データに含まれる特定の指定色を目的色Zとし、目的色ZのRGB値を取得する(ステップB1)。目的色Zは、図5に示すようにRGBの三次元空間の1点で表される。また、制御装置10がデータとして保有している既知色もRGBの三次元空間に存在している。制御装置10は、RGBの三次元空間に存在する既知色の中から目的色Zにユークリッド距離で最も近い色を候補色X1として選択する(ステップB2)。
【0029】
次に、制御装置10は、候補色X2を選択する(ステップB3)。候補色X2を選択するに当たっては、目的色Zの座標を通り候補色X1と目的色Zとを結ぶ線分aに垂直な平面Fを設定する。設定された平面FでRGB空間を2つに区切ったときに、候補色X2は、候補色X1が存在しない方の空間に存在する既知色から選択される。このとき、候補色X1と目的色Zとを結ぶ線分aに対し、候補色X2と目的色Zとを結ぶ線分bが所定の角度θ以下であるように、候補色X2を選択すると良い。なお、候補色X2の選択については、例えば候補色X1が存在しない方の空間にある既知色であって、線分aを延長した直線に対し最も垂直距離が近い既知色を選択して候補色X2としても良い。これは、図5においてθ=180°に設定された場合を意味する。つまり、候補色X1が存在しない方の空間にある既知色から候補色X2が選択されることになる。また、図5においてθ=0°に設定することもできる。この場合、候補色X2が選択されないことになるため、次のステップB4においてNoと判断される。これは、例えば、ペン、マーカーなど混色ができない描画ツール73を使用する場合に設定される。
【0030】
上記のような条件を満たす候補色X2が存在すれば(ステップB4でYes)、制御装置10は、候補色X1及び候補色X2を混ぜる比率を算出し、混色のデータを作成する(ステップB5)。作成された混色は、目的色として設定される(ステップB6)。
【0031】
上記のような条件を満たす候補色X2が存在しなければ(ステップB4でNo)、制御装置10は、候補色X1を目的色として設定する(ステップB7)。
【0032】
以上の手順は、減色画像データに含まれる各色について行われる。ただし、目的色ZがRGB空間内において既知色から所定の距離以下である場合は、その目的色として既知色を設定しても良い。
【0033】
以下は、減色画像データに含まれたある目的色Zを混色により作成した場合の、制御装置10の出力の例である。
(例1)
指定色 [92, 112, 51] を再現するためには、 スカーレット1とグリーンライト2の混色 (RGB: [98, 109, 53]) を 61.50% と バイオレット1とグリーンライト2の混色 (RGB: [86, 117, 59]) を 38.50% 混ぜます。
これにより再現されるRGB色は [93, 112, 55] です。
1色目と指定色の距離: 7.00
2色目と指定色の距離: 11.18
再現される色と指定色の距離: 4.12
(例2)
指定色 [127, 5, 0] を再現するためには、 スカーレット1とバーントシェンナー2の混色 (RGB: [144, 38, 30]) のみが考慮できます。 適切な2色目を見つけることができませんでした。
1色目と指定色の距離: 47.73
(例3)
指定色 [34, 11, 119] を再現するためには、 ブラック1とコバルトブルー2の混色 (RGB: [24, 36, 93]) を 53.94% と セルリアンブルー1とバイオレット2の混色 (RGB: [40, 22, 161]) を 46.06% 混ぜます。
これにより再現されるRGB色は [31, 30, 124] です。
1色目と指定色の距離: 37.43
2色目と指定色の距離: 43.83
再現される色と指定色の距離: 19.87
【0034】
(描画ツール73の移動経路の作成)
以下に、バイナリーイメージを基にして描画ツール73の移動経路を作成するアルゴリズムについて説明する。制御装置10は、画像データを減色処理した後に、減色画像データに含まれる複数の色のうち1つの色のバイナリーイメージを処理し、その1つの色についての描画ツール73の移動経路を作成する。1つの色についての描画ツール73の移動経路の作成を繰り返し、減色画像データに含まれる全色の描画ツール73の移動経路を作成する。例えば、描画ツール73の移動経路の作成は、制御装置10が備える描画データ作成部12で行われる。
【0035】
図6は、実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。描画システム100の制御装置10は、画像データから所定色のピクセルのみを取り出したバイナリーイメージを作成し、処理を開始する(ステップC0)。制御装置10は、画像データに含まれる全色について移動経路作成の処理を繰り返す(ステップC0aでYes)。
【0036】
図7図8及び図9は、図6の移動経路作成の一例の説明図である。次に、制御装置10は、ある所定色のバイナリーイメージBを走査(scan)し、基準点20となる点の候補を探す(ステップC1)。基準点20となる点の候補の探索は、バイナリーイメージBの全ピクセルを走査するまで行われる(ステップC2)。
【0037】
図7に示すように、バイナリーイメージBは、減色画像データと同じ大きさの画像であり、減色画像データに含まれる複数の色のうち1つの所定色60が配置されているピクセルを有し、それ以外の部分は透過色となっている。制御装置10は、例えばバイナリーイメージBの左上の端から下方向(y方向)に向かって走査し、基準点20を探す。基準点20は、例えば、所定色60のピクセルであって、基準点20を中心とした直径dの円21内に所定色60のピクセルがq%以上含まれる点である。制御装置10は、図7に示すように、バイナリーイメージBの左上から順に各ピクセルを探索し、条件に合う点を見つける(ステップC3)。条件に合う点が見つからない場合は、条件に合う点の探索が繰り返される(ステップC3でNoの場合)。なお、基準点20の決定条件は、適宜調整できる。例えば、基準点20を中心とした円21ではなく、矩形などの図形を用いて図形の内側に含まれる所定色60のピクセル量を判定することにより基準点20を決定しても良い。また、図形の大きさも適宜設定できる。
【0038】
ステップC3において条件に合う基準点20が見つかった場合(ステップC3でYes)、制御装置10は、バイナリーイメージBの基準点20を中心とする直径dの円内のピクセルをリセットする(ステップC4)。ここで「リセットする」とは、例えば、所定色60が存在するピクセルを透過色61に変換することを言う。つまり、バイナリーイメージB内のリセットされた部分は、基準点20の候補から外れる。
【0039】
制御装置10には、フラグS及びフラグTが設定されており、ここでフラグS及びフラグTを両方とも「0」に設定する(ステップC4a)。フラグS及びフラグTは、描画ツール73の移動経路を出力するために使用するフラグである。
【0040】
次に、図7に示すように、制御装置10は、基準点20を始点22として設定し、終点23の候補を探す。制御装置10は、例えば始点22から方向p(0)について終点23の候補となる点を探す(ステップC5)。
【0041】
終点23は、始点22から距離d離れた点であって、終点23の候補となった点を中心とする直径dの円21内の所定色60のピクセルがq%以上含まれるような点である。終点23の候補となった点がこの条件に当てはまった場合(C6においてYesの場合)、終点23として設定される(ステップC7)。
【0042】
終点23が設定されたら、フラグSを1に設定する(ステップC7a)。
【0043】
次に終点23a(新たな始点22b)を中心とする直径dの円内のバイナリーイメージのピクセルをリセットする(ステップC8)。
【0044】
図8に示すように、ステップC3~C4で設定された基準点20が始点22aになり、始点22aを基準に探索されて設定された終点23aが、次の始点22bになる。このときフラグTが0であれば、フラグTが1に設定される(ステップC9)。
【0045】
ステップC9が完了したら、再度ステップC5に戻り、図8の始点22bを基準として方向P(3)で距離dの終点候補を選定する。
【0046】
図8の始点22bにおいては、方向P(1)に終点23となりうる点が無いため(ステップC6においてNo)、方向p(1)に角度s[°]が追加される(ステップC10)。
【0047】
次に、フラグTの状態が確認され(ステップC11)、始点22bにおいてフラグTは「1」であるため、始点22aから始点22bの直線が移動経路として出力される。移動経路が出力されると、フラグTは「0」に設定が戻される。
【0048】
次に、方向p(2)が方向P(1)に360°を加えた角度以上になっていないか判定される(ステップC12)。始点22bにおいては、方向P(1)に対し角度s[°]が追加されているだけなので、ここで処理はステップC5に戻る(ステップC12でNo)。
【0049】
ステップC5に戻ると、方向P(2)に更にs[°]が追加され、方向P(3)に終点23となりうる点がないか探索される。図8に示されたバイナリーイメージBにおいては、方向P(3)に終点候補があるため(ステップC6においてYes)、その点が終点23bに設定され(ステップC7)、フラグSが「1」に設定される(ステップC7a)。そして、円21内のピクセルがリセットされ(ステップC8)、終点23bは、次の始点22cに設定される。ここでフラグTは「0」から「1」に設定される(ステップC9)。そして、処理はステップC5に戻る。
【0050】
図8の場合、始点22cから方向p(3)に終点23となる点が存在するため(ステップC6でYes)、ステップC7~C9の処理が繰り返される。以下、終点23eに至るまでステップC5~ステップC9が繰り返される。図8に示す始点22bから始点22fは直線上に並んでいる。図6のアルゴリズムにおいては、可能な限り直線的に始点22及び終点23が移動するように終点23が選定される。
【0051】
終点23eが始点22fとして設定されると(ステップC9)、再度ステップC5に戻り、終点23fが見つかるまで、ステップC5、C6、C10~C12が繰り返される。始点22fを基準として終点候補を選定する場合、方向p(3)には終点23fとなる点が存在しないため、順次方向p(4)、p(5)、p(6)の順に終点候補が選定される。このように、始点22を基準とした場合、終点23となりうる点が見つかるまで方向p(k)を基準として角度sずつ変動させて終点23を選定することになる。
【0052】
図8に示す始点22fの場合、方向p(6)に条件を満たす(直径dの円21内の所定色60のピクセルがq%以上)点が存在するため、その点が終点23fとして設定され、円21内のピクセルがリセットされる。(ステップC5~C8)。そして、終点23fは、始点22gとして設定される(ステップC9)。そして、処理は、ステップC5に戻る。
【0053】
図9に示すように、始点22gは、方向p(6)に終点23gとなりうる点が存在しないため、終点23gとなる点が見つかるまで、ステップC5、C6、C10~C12が繰り返される。始点22gは、方向p(9)に終点23gとなる点が存在するため、上述したC5~C9が処理され、始点22gから方向p(9)にある始点22kに至るまで、図8に示した始点22bから始点22fまでと同様にステップC5~C9が繰り返される。そして、始点22kが設定された状態で、再度ステップC5に戻る。
【0054】
図9に示す始点22kにおいては、終点となる点が方向p(9)には存在しない。よって、始点22kにおいては、ステップC6からステップC10に進み方向p(10)に設定される。そして、ステップC11で始点22f~始点22kに至るまでを結ぶ直線が移動経路として出力され、フラグTが「0」に設定される。
【0055】
次に、ステップC12において、方向p(10)が方向p(1)を基準として360°以上の角度になっているかが判定される。方向p(10)は、この条件を満たしていないため、処理は再びステップC5に戻る。図9に示す始点22kにおいて、ステップC5、C6、ステップC10~C12が繰り返され、最終的に方向p(12)が設定されると、ステップC12において、方向p(12)が方向p(1)を基準として360°以上の角度になっていると判定され(ステップC12においてYes)、処理はステップC13に進む。
【0056】
ステップC13においては、フラグSがどのような設定になっているかが判定される。図9の始点22kにおいては、フラグSは「1」であるため、処理はそのままC1に戻る。なお、ステップC13において、フラグSが「0」の場合とは、終点23が1つも見つからないような基準点が設定された場合である。
【0057】
ステップC1に戻ると、制御装置10は、再度バイナリーイメージBを走査し、基準点20を探す。ステップC1~C13の処理が繰り返され、バイナリーイメージBの全ピクセルについて走査が完了したら、ステップC0に戻る。ステップC0においては、画像データに含まれる他の色のバイナリーイメージBが作成される。制御装置10は、そのバイナリーイメージBについてステップC1以降の処理を行い、画像データに含まれる各色について順次描画ツール73の移動経路を作成する。画像データに含まれる全ての色のバイナリーイメージBの処理が完了したら、1つの画像データについての描画ツール73の移動経路の作成処理が完了する。
【0058】
移動経路の作成処理が完了すると、描画ツール73の移動経路が出力される。なお、出力した移動経路を用いて作成された各色のバイナリーイメージは、後述する図12(b)のように元画像に対して部分的に隙間が生じる。
【0059】
なお、図6に示した処理は、1つのバイナリーイメージBについてのみステップC1~C13を繰り返して描画ツール73の移動経路を出力するようにしても良い。この場合、減色画像データに含まれる他のバイナリーイメージBについても個別に描画ツール73の移動経路を出力する処理が行われる。
【0060】
(描画ツール73の移動経路の作成の変形例)
図10は、実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。図11は、図10に示した移動経路作成の一例の説明図である。図10に示した描画ツール73の移動経路作成の処理は、図6に示した処理に対してステップC8を変更したものである。図6に示した処理は、ステップC8において、終点23を中心とした円21内に存在する所定色のピクセルをリセットするのに対し、図10に示した処理は、ステップD8において、終点23を中心とする円21内及び始点22から終点23を結ぶ幅dの線分の領域もリセットされる点で異なる。
【0061】
図11に示すように、始点22を中心とする円21内は、ステップD4で所定色のピクセルがリセットされ、終点23を中心とする円21内及び太さdの線分の領域は、ステップD8において所定色のピクセルがリセットされる。つまり、図11に示される斜線部分の領域に存在する所定色のピクセルが透明色にリセットされることになる。
【0062】
(描画ツール73の移動経路の隙間部分の処理)
図12は、図6又は図10のフローチャートに基づいて作成された描画ツール73の移動経路で描画を行い再現された画像の一例である。図12(a)は、元の画像であり、図12(b)は、図6又は図10のフローチャートで制御装置10が作成した移動経路により画像を再現した例である。描画システム100を用いて図12(a)の画像を再現しようとした場合、図6又は図10のフローチャートを用いて作成した移動経路だと、再現された画像は部分的に隙間(色で塗られていない部分;図12(b)においては黒で示された部分)ができる。
【0063】
図12(c)、(d)及び(e)は、図12(a)の左下の稲妻形状のみを抜粋した図である。図6又は図10に示した処理で移動経路を作成すると、稲妻形状は、図12(d)のように再現されるため、黒で示された隙間部分を埋めて図12(e)のように元の画像に一致又は近似させるための描画ツール73の移動経路を作成する必要がある。
【0064】
図13は、実施の形態1に係る描画システム100の描画ツール73の移動経路作成の一例のフローチャートである。図13に示す処理は、図6又は図10に示した処理で作成された移動経路により再現される画像の隙間部分を埋めるための描画ツール73の移動経路を作成するものである。
【0065】
図13に示す処理を実行するに先立ち、制御装置10は、元の画像に含まれた各色について、図6又は図10に示すフローチャートで作成された移動経路に基づき処理後バイナリーイメージCを作成する。処理後バイナリーイメージCは、図12(d)に示すように、ある特定の色について直線及び点(図7図8図9及び図11で示した円21)で表された移動経路で描かれた画像になる。ここで、各色の処理後バイナリーイメージCを重ね合わされて作成された画像を作成途中画像Dと呼ぶ。作成途中画像Dは、各色で塗られない部分が例えば透過色として表されている。なお、作成途中画像Dにおいて各色で塗られていない部分は、透過色でなく他の色で表されても良い。
【0066】
まず、制御装置10は、作成途中画像Dから透過色ピクセルを探し、基準点となりうるピクセルを検出する(ステップE1)。基準点の探索は、図7に示したように作成途中画像Dの左上から順に走査することにより行っても良いし、その他の手段によっても良い。
【0067】
基準点となりうる透過色ピクセルが検出された場合(ステップE2においてYes)、制御装置10は、基準点を中心とする直径eの円内に存在する各色のピクセルのうち最も多い色(最多色)を検出する(ステップE3)。
【0068】
ステップE3において検出された最多色が透過色である場合(ステップE3aにおいてYes)、制御装置10は、円の直径eを大きくする(ステップE3b)。そして再度ステップE3に戻り、直径eの円内に存在する各色が検出される。
【0069】
ステップE3において検出された最多色が透過色以外である場合(ステップE3aにおいてNo)、最多色が単数か複数かが判定される(ステップE4)。最多色が1つである場合(ステップE4においてNo)、作成途中画像Dにおいて直径eの円内が最多色で上書きされる(ステップE5)。
【0070】
図14は、図13に示されるフローチャートによる処理により隙間が塗りつぶされる工程の説明図である。ステップE1において検出された基準点30を中心とした直径eの円内は、色xが最多色であるため、図14(b)で示されるように色xで塗りつぶされる。
【0071】
最多色が2つ以上である場合(ステップE4においてYes)、直径eの円内は、2つ以上の最多色のうちRGB値の二乗平均値で最も大きい色で上書きされる(ステップE5)。
【0072】
ステップE5において円内が最多色で塗りつぶされると、処理は再度ステップE1に戻る。
【0073】
以降、制御装置10は、作成途中画像Dから基準点となるピクセルがなくなるまで処理を繰り返し、基準点となるピクセルが存在しなくなったら(ステップE2においてNo)処理が完了する。つまり、ステップE5の塗りつぶし処理を行った座標情報が、各色の描画ツール73の移動経路として出力される。
【0074】
以上のように、図13に示されたフローチャートに従い、制御装置10は、作成途中画像Dにおいて各色が塗られていない部分を埋める。例えば、図12(d)に示すような作成途中画像Dは、図12(e)に示すように各色のいずれかで塗りつぶされる。
【0075】
(ロボット50による描画)
以上のように、描画ツール73の移動経路が作成された後に、描画ツール73の移動経路は、ロボット50の動作を制御する命令文に変換される。ロボット50の動作制御命令文は、移動経路を、絵画を再現するキャンバスの大きさに合わせる、描画ツール73の交換に伴う動作を加える、描画ツール73に絵の具などの塗料の補充する動作を加える、描画ツール73を洗浄する動作を加える、などを考慮して作成される。例えば、描画ツール73に絵の具等の塗料を補充する場合は、描画動作の途中に描画ツール73を絵の具のパレットに移動させる動作を加える。また、描画ツール73を交換する場合は、ロボット50を所定の位置に停止させて描画ツール73を交換できるようにする。このような、絵の具のパレットでの塗料の補充、描画ツール73の交換及び描画ツール73の洗浄をまとめて描画ツール73の更新動作と呼ぶ。制御装置10は、1つの画像を再現させる動作制御命令文を作成し、その動作制御命令文に従ってロボット50を制御する。例えば、ロボット50の動作制御命令文は、描画データ作成部12において、図6又は図10で示したような処理を経て作成された移動経路を基に変換される。変換された動作制御命令文は、ロボット制御部11において実行されロボット50が運転される。または、描画データ作成部12において作成された描画ツール73の移動経路を、ロボット制御部11においてロボット50の動作制御命令文に変換しながら動作制御命令文を実行してもよい。
【0076】
また、図6図10及び図13の各フローチャートは、複数の筆の太さごとに移動経路を作成することができる。例えば、移動経路の作成は、最も太い筆の太さに合わせて直径dが設定された状態で図6又は図10のフローチャートで示す処理が実行され、順次細い筆に合わせた直径dが設定された状態で同様の処理が行われる。これにより、最初に太い筆で移動経路が作成され順次筆を補足して移動経路を作成するため、全体として描画ツール73の移動経路の長さを抑えることができる。
【0077】
図15Aは、実施の形態1に係る描画システム100によるロボット50の制御の一例を示すフローチャートである。まず、制御装置10は、作成された各色の移動経路を並べ替える。例えば、各色のRGB値の二乗平均値の降順に並ぶように移動経路の配列が変更される。また、移動経路は、筆の太さの順に並ぶように配列が変更される(ステップF1)。
【0078】
次に、移動経路の配列から命令が取り出される(ステップF2)。取り出す命令があった場合(ステップF3でNo)、移動経路は、ロボット50の動作制御命令文に変換される。動作制御命令文は、描画の対象となるキャンバスのサイズに合わせて拡大縮小するように変換される。また、動作制御命令文は、キャンバスが傾いて設置されている場合は、その傾きに合わせて変換される。さらには、描画ツール73がキャンバスに接しない移動経路においては、ロボット50の動きを速くするなどの変換が行われても良い(ステップF4)。
【0079】
変換された動作制御命令文において描画ツール73がキャンバス70の描画対象面に接した状態で移動する距離である描画距離hが所定の上限距離Hを超えている場合は(ステップF5においてYes)、ロボット50の動作制御命令文に、描画ツール73の塗料を補充する動作を行う命令文が追加される(ステップF6)。描画距離hは、動作制御命令文から算出できる。または、移動経路から算出してもよい。また、塗料を補充する動作が必要な上限距離Hは、描画ツール73の種類(筆、ペン、マーカーなど)によって設定が変更される。塗料を加える動作の命令文が出力された場合は、描画距離hはリセットされる。
【0080】
また、取り出されたロボット50の動作制御命令文の描画距離hが、上限距離Hを超えない範囲だった場合は(ステップF5でNo)、描画ツール73の移動経路がロボット向けの動作制御命令文に変換されて出力される(ステップF7)。
【0081】
なお、描画距離hは、描画ツール73が移動する距離の全てが対象になるわけではなく、描画ツール73が対象面に接した状態で移動した距離に従い加算されていくものである。ここで、描画ツール73がある座標P1、P2、P3、P4を順に移動し、座標P1からP2までの線分と座標P3からP4までの線分とを描画する場合を考える。このとき、描画距離hに加算されるのは、座標P1からP2までの距離及び座標P3からP4までの距離であり、座標P2からP3までの距離は加算されない。また、移動経路の配列及び動作制御命令文は、描画ツール73が接地か非接地かを表すパラメータが含まれている。例えば、描画ツール73がキャンバスの対象面に接していない状態と接した状態は、描画ツール73の位置座標のZ方向成分(図16参照)を変動させることにより実現される。
【0082】
従って、ステップF7においては、描画ツール73がキャンバスに接地した状態の移動である場合に描画距離hに移動距離を加算する処理が行われる。その他の描画が行われない描画ツール73の移動の場合は、描画距離hに移動距離の加算は行われない。
【0083】
ステップF6又はF7において命令文が出力された後、処理はステップF2へ戻る。以降、取り出せる移動経路がなくなるまでステップF2~F7が繰り返され、ロボット50の動作制御命令文が出力される。取り出せる移動経路がなくなった場合(ステップF3でYes)、制御装置10は、出力された動作制御命令文に基づきロボット50に描画動作を実行させる。
【0084】
なお、図15Aに示すフローチャートにおいては、移動経路の配列を全てロボット50の動作制御命令文に変換してからロボット50による描画を実行させているが、移動経路の配列のうち1つ又は一部を動作制御命令文に変換してロボット50に描画を実行させながら、残りの移動経路の配列を動作制御命令文に変換することもできる。つまり、移動経路を動作制御命令文に変換させながらロボット50による描画を進めることもできる。例えば、描画する画像に含まれる各色のうち1色の動作制御命令文を実行しながら、他の色についての変換を実行することもできる。
【0085】
なお、図15Aに示すフローチャートは、例えば、描画ツール73がペン、マーカーなどの塗料の混色が発生しないものである場合には、描画距離hが上限距離Hを超えたかの判定をしなくてもよい。つまり、描画ツール73の種類によっては、図15AのフローチャートからステップF5及びステップF6が削除されたフローチャートで移動経路から動作制御命令文への変換が行われる。
【0086】
図15Bは、図15Aの制御に対し更に描画ツール73の交換、洗浄の動作を加えた制御の一例を示すフローチャートである。描画ツール73の移動経路は、色の変更及び描画ツール73の洗浄などを考慮してその動作を加えた動作制御命令文に変換されてもよい。一例として、図15Aに示したフローチャートのステップF4の後に、以下に説明するようにステップF4A、F4B、F4C及びF4Dの処理を加えてもよい。
【0087】
制御装置10は、移動経路の配列から命令を取り出した後、移動経路をキャンパスのサイズに合わせる等の変換を行い(ステップF4)、その後、命令の内容を判断する。まず、取り出された命令が、前に処理した命令に対し色が変更されている場合(ステップF4AでYes)、移動経路に描画ツール73の洗浄及び塗料を補充するロボットの動作を加え、動作制御命令文に変換し出力する(ステップF4B)。このとき描画距離hはリセットされる。
【0088】
前に処理した命令と色が同じ場合(ステップF4AでNo)、制御装置10は、前に処理した命令と筆の太さが同じか否かを判定する(ステップF4C)。命令において筆の太さが変更されている場合(ステップF4CでYes)、移動経路に描画ツール73の洗浄及び描画ツール73の塗料を補充するロボットの動作を加え、動作制御命令文に変換し出力する(ステップF4D)。このとき描画距離hはリセットされる。
【0089】
前に処理した命令と色が同じ場合(ステップF4CでNo)、処理はステップF5に進む。ステップF5においては、上記の説明と同様に処理が行われる。つまり、ステップF5においては、描画距離hが上限距離Hを超えるか否かを判定し、超えた場合には(ステップF5でYes)、描画距離hはリセットされる(ステップF6)。
【0090】
ステップF4B、F4D若しくはF6の処理が完了した後又はF5においてNoだった場合は、処理はステップF7に進み、移動経路の配列から取り出された命令が、ロボット向けの動作制御命令文として出力される。図15Bに示す処理においても、描画ツール73が描画を伴う移動である場合は、描画距離hに移動距離が加算される。
【0091】
(ロボット50の構造)
図16は、実施の形態1に係る描画システム100において描画に使用されるロボット50の一例の斜視図である。実施の形態1に係るロボット50は、多関節を有するいわゆるロボットアームである。ロボット50は、多関節の腕部51の先端部58に回転軸57が設けられている。回転軸57は、軸Rを中心として回転する。描画ツール73は、例えば回転軸57に直接取り付けられても良いし、先端部58に描画ツール73保持部を設け、描画ツール保持部により保持されても良い。
【0092】
先端部58の位置は、第1関節52、第2関節53及び第3関節54の角度を制御することにより、先端側の第1腕部51a及びベース55側の第2腕部51bの姿勢を制御する。また、ベース55は、台56に対しz軸周りに回転するように構成されている。従って、ロボット50は、保持している描画ツール73を、腕部51が届く範囲内において三次元的に自由に移動させることができる。
【0093】
図17は、図16に示すロボット50の可動範囲80及びキャンバス70等の位置関係の説明図である。図17は、ロボット50を図16におけるZ方向の上側から見た図である。図16に示すロボット50の可動範囲80は、ベース55の回転も含めて±160°の範囲内を動くことができ、腕部51を伸長させることができる。これによりキャンバス70及び絵の具パレット71を可動範囲80に収めることができる。また、可動範囲80内に他の描画ツール73を配置する又はさらに追加の絵の具パレット71を配置することも可能である。例えば、ロボット50は、F4号サイズのキャンバス70と絵の具パレット71を使用してキャンバス70に画像(絵画)を再現させることができる。
【0094】
また、ロボット50の動作に絵の具をつける動作を加えた場合、ロボット50は、描画ツール73を絵の具パレット71の所定の色が配置されている皿の位置に移動させ、皿の範囲内で所定回数描画ツール73をランダムに動かし絵の具を描画ツール73の先端につける。その後、絵の具パレット71の皿の縁に描画ツール73の先端を当接させ又はぶつけ、余分な絵の具を落とす動作が加えられても良い。
【0095】
また、可動範囲80内には筆を洗浄するための水槽72が配置されていてもよい。水槽72内には水流ポンプ74が設置されている。水流ポンプ74は、水槽72内に水流を発生させることにより、筆を水槽72内に浸けて筆から塗料を落とし易くする効果がある。また、併せてロボット50に水槽72内で筆を揺らす動作を追加しても良い。洗浄の動作は、例えば図15Bに示したステップF4Bにて動作制御命令文が追加される。
【0096】
図18は、図16に示すロボット50が再現可能な画像の範囲の説明図である。ロボット50は、図17に点線で示した追加アーム59Aを回転軸57に取り付けることにより描画ツール73を移動させる範囲を拡張することができる。つまり、描画ツール73は、追加アーム59Aの先端に取り付けられ、先端部58周りに回転移動される。追加アーム59Aは、回転軸57周りに回転されるため、ロボット50は、描画ツール73を移動させる範囲を水平方向に拡張できる。
【0097】
例えば、追加アーム59Aがない場合は、図18に示す範囲90に収まるキャンバス70に画像を再現させることができるが、追加アーム59Aを取り付けることにより、範囲91までのサイズの画像を再現することができる。例えば、範囲90に収まるキャンバス70がF4号サイズだとすると、追加アーム59Aを設けたロボット50は、範囲91に収まるF6号サイズのキャンバス70にも対応できる。追加アーム59Aの長さは適宜調整され、様々なサイズの画像の再現が可能となる。
【0098】
図19は、実施の形態1に係るロボット50の先端部58に取り付けられた描画ツール保持部59Bの一例である。ロボット50は、先端に複数の描画ツール73を保持しても良い。ロボット50の先端部58には回転軸57が設けられているため、回転軸57に描画ツール保持部59Bを取り付ける。描画ツール保持部59Bは、例えば40mm×200mm程度の板状の部材であり、その長手方向の両端に異なる太さの筆を取り付けられるように構成されている。キャンバス70は、回転軸57に対し例えば45°傾斜されており、一方の描画ツール73Aが接することにより描画が行われる。描画ツール73Aを描画ツール73Bに変更する場合は、回転軸57を180°回転させる。図19においては、ロボット50が、描画ツール73A及び73Bの2本を保持する形態について示したが、3本以上の描画ツール73を保持しても良い。
【0099】
また、図19に示すように、描画ツール保持部59Bに保持された描画ツール73は、回転軸57に対し傾斜して保持されている。これにより、描画ツール73は、キャンバス70の描画対象面に対し概ね垂直になった状態で描画できるように構成されている。ただし、描画ツール73とキャンバス70の対象面の角度は垂直に限定されるものではなく、傾斜するように構成されていてもよい。またこの場合、描画ツール保持部59Bに保持されている複数の描画ツール73は、それぞれ回転軸57に対し傾斜して配置されており、先端に向かうに従い外側向かって傾斜するように保持されている。これにより、複数の描画ツール73は、何れもキャンバス70の対象面に対しほぼ垂直な状態で描画が可能となる。図19においては、描画ツール73の角度は、水平から45°に設定されているが、30°~60°の間の任意の角度に設定することもできる。
【0100】
<実施の形態1に係る描画システム100の作用>
描画ツール73により対象面に描画を行う描画システム100であって、描画ツール73を保持し、移動させるロボット50と、ロボット50の動きを制御する制御装置10と、を備える。制御装置10は、画像データを減色した減色画像データを作成し、減色画像データに含まれる少なくとも1つの色の配置領域の情報を含むバイナリーイメージBを作成する画像データ変換部13と、バイナリーイメージBを基に描画ツール73の移動経路を作成する描画データ作成部12と、移動経路を基にロボット50の制御指示を行うロボット制御部11と、を備える。
これにより、描画システム100は、元の画像データを絵の具などの塗料を使用して再現することができる。また、描画システム100は、もとの画像データを減色させることにより、準備すべき塗料の種類を抑えることができる。
【0101】
また、上記の描画システム100においては、さらに、制御装置10は、バイナリーイメージBにおいて、所定の図形の基準となる点であって、特定の色の配置領域の少なくとも一部が図形21の少なくとも一部の範囲内に含まれるような基準点20と、基準点20を始点22とし、始点22から所定の距離dだけ離れた点であって、当該点を基準とする図形21の範囲内に所定の割合の特定の色の配置領域を含むように選択された終点23と、を求める。始点22及び終点23を基準として配置された図形21の範囲内を、基準点20、始点22及び終点23の選択対象から排除し、繰り返し求められた基準点20、始点22及び終点23を基に描画ツール73の移動経路を作成する。
これにより、描画システム100は、複数の色からなる減色画像を再現するに当たって必要な描画ツール73の移動経路を作成することができる。また、描画システム100は、減色画像がどのようなものであっても、減色画像から変換された各色のバイナリーイメージBを基に各色の移動経路を作成できる。そのため、ロボット50が複数の色を変更する頻度を抑えることができる。
【0102】
上記の描画システム100においては、さらに、制御装置10は、終点23を次の始点22とし、更に次の終点23を求めるものである。
これにより、描画システム100は、一筆で繋がったなるべく長い描画ツール73の移動経路を作成できる。これにより、描画システム100は、元の画像を再現させるために必要な工程及び時間を抑えることができる。
【0103】
上記の描画システム100においては、制御装置10は、バイナリーイメージBに含まれる複数のピクセルを順に走査し、基準点20を求め、次の始点22から次の終点23が求められなかったときに、複数のピクセルの走査を再開し、次の基準点20を求める。
これにより、描画システム100は、元の画像の全域をもれなく再現することができる。
【0104】
上記の描画システム100においては、さらに、制御装置10は、複数のピクセルを全て走査した後に、図形21を図形21よりも小さい次の図形21に変更し、再度複数のピクセルを順に走査し、基準点20を求める。
これにより、描画システム100は、最初に太い筆を使用して描画する場合の移動経路を作成、順次小さい筆を使用して描画した場合の移動経路を作成できる。これにより、描画ツール73の移動経路の長さを抑えながら、精度の高い画像の再現が可能となる。
【0105】
上記の描画システム100においては、さらに、制御装置10は、基準点20、始点22及び終点23を基に作成された移動経路の距離に基づき、描画ツール73の更新動作を移動経路に加える。または、制御装置10は、描画ツール73の移動経路から変換されたロボット50の動作制御命令文から算出された描画距離hに基づいて更新動作を動作制御命令文に追加してもよい。
これにより、描画システム100は、複数の色を使用した画像の再現が可能となり、描画ツール73の交換も可能となる。
【0106】
上記の描画システム100においては、さらに、制御装置10は、目的色Z又は目的色Zに近い色を作り出すためのレシピを出力する混色部15と、複数の既知色の成分の値を記憶した記憶部16と、を備える。混色部15は、目的色Zの成分の値を画像データ、減色画像データ又はバイナリーイメージBから読み取り、複数の既知色の中から色空間において色に最も近い第1候補色X1を選択する。
これにより、描画システム100は、元の画像に近い画像を再現できる。
【0107】
上記の描画システム100においては、混色部15は、目的色Zの成分値から記憶部16に保存された複数の既知色のうち最も近い第1候補色X1を抽出し、色座標空間内において、目的色Zの座標を含む平面によって区切られる2つの空間のうち第1候補色X1を含まない空間に存在する複数の既知色から第2候補色X2を抽出し、第1候補色X1及び第2候補色X2の座標を基に第1候補色X1と第2候補色X2との混合比率を算出する。
これにより、描画システム100は、限定された既知色を用いて様々な色を再現させることができるため、再現する画像の精度を向上させることができる。
【0108】
上記の描画システム100においては、混色部15は、色座標空間内において、目的色Zの座標を含む平面によって区切られる2つの空間のうち第1候補色X1が含まれていない空間において、目的色Zの座標を頂点とし、目的色Zの座標と第1候補色X1の座標とを通る直線aを中心軸とし、母線の方向がθである円錐形状空間を定義し、円錐形状空間から第2候補色X2を抽出する。また、上記の描画システム100においては、混色部15は、色座標空間内において、目的色Zの座標を含む平面Fによって区切られる2つの空間のうち第1候補色X1が含まれていない空間に存在する複数の既知色のうち目的色Zの座標と第1候補色X1の座標とを通る直線からの距離が最も近いものを第2候補色X2として抽出する。
これにより、描画システム100は、目的色Zをより近い既知色である第1候補色X1及び第2候補色X2から作成するレシピを作成できる。
【0109】
上記の描画システム100においては、ロボット50は、先端部58に回転駆動が可能な回転軸57を備える。回転軸57は、描画ツール73を複数保持できるように構成され、回転駆動することにより描画ツール73の交換を行う。
これにより、描画システム100は、例えば太い筆と細い筆とを自動に変更して描画を行える。
【0110】
上記の描画システム100においては、ロボット50の周囲に配置された水槽72と、水槽72の水中に配置された水流ポンプ74と、を備える。ロボット50は、水流ポンプ74により水流が発生した水槽72に描画ツール73を浸して洗浄を行う。
これにより、描画システム100は、描画の際に絵の具などの塗料の色の変更を行うにあたって、描画ツール73の洗浄が可能となり、ロボット50が自動で行える作業の幅が広がる。
【0111】
以上に本発明を各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。上記各実施の形態においては、描画システム100を制御装置10とロボット50とで実現する例を説明したが、制御装置10及びロボット50の構成は適宜変更できる。例えば、制御装置10は、ネットワークコンピュータシステムのクライアント・サーバシステムなどを始めとするシステムにおいて実現されても良いし、クライアント・サーバシステムを構成しないパーソナルコンピュータ等の各種コンピュータや、携帯端末やタブレット等の各種通信端末・携帯情報端末において同じ機能を実現させることもできる。この際、描画システム100の機能の少なくとも一部を、コンピュータプログラムを各種コンピュータや各種通信端末・携帯情報端末に実装させることによって実現させることも可能である。つまり、各種コンピュータを描画システム100の少なくとも一部として機能させるためのプログラムも本発明に含むものである。また、上記各実施の形態は、組み合わせて実施される場合もある。いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0112】
10 :制御装置
11 :ロボット制御部
12 :描画データ作成部
13 :画像データ変換部
14 :画像入力部
15 :混色部
16 :記憶部
17 :入力部
18 :表示部
20 :基準点
21 :図形(円)
22 :始点
22a~22k :始点
23 :終点
23a~22j :終点
30 :基準点
50 :ロボット
51 :腕部
51a :第1腕部
51b :第2腕部
52 :第1関節
53 :第2関節
54 :第3関節
55 :ベース
56 :台
57 :回転軸
58 :先端部
59A :追加アーム
59B :描画ツール保持部
60 :所定色
61 :透過色
70 :キャンバス
70 :キャンバス
71 :絵の具パレット
72 :水槽
73 :描画ツール
73A :描画ツール
73B :描画ツール
74 :水流ポンプ
80 :可動範囲
90 :範囲
91 :範囲
P :方向
R :軸
100 :描画システム
B :バイナリーイメージ
C :処理後バイナリーイメージ
D :作成途中画像
F :平面
H :上限距離
P :方向
R :軸
S :フラグ
T :フラグ
X1 :(第1)候補色
X2 :(第2)候補色
Z :目的色
a :線分
b :線分
d :距離
h :描画距離
p :方向
s :角度
x :色
θ :角度。

【要約】
【課題】ロボットにより、絵画などの作品の風合いを再現しつつ、作品を繰り返し複製できる描画システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の描画システムは、描画ツールにより対象面に描画を行う描画システムであって、描画ツールを保持し、移動させるロボットと、ロボットの動きを制御する制御装置と、を備え、制御装置は、画像データを減色した減色画像データを作成し、減色画像データに含まれる少なくとも1つの色の配置領域の情報を含むバイナリーイメージを作成する画像データ変換部を備え、バイナリーイメージを基に描画ツールの移動経路を作成し、移動経路を基にロボットの制御指示を行うものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19