(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイを含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20240405BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240405BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240405BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240405BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240405BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240405BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240405BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P11/06
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/02
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A61K8/99
(21)【出願番号】P 2023504386
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002433
(87)【国際公開番号】W WO2022045502
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0107619
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12621P
(73)【特許権者】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョ グ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジュ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドキュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ソ ユル
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ヘ リム
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515426(JP,A)
【文献】特表2016-511272(JP,A)
【文献】特表2018-532779(JP,A)
【文献】特表2019-512473(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230695(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/199895(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/035269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/74
A61P 11/06
A61P 17/00
A61P 37/08
A61P 11/02
C12N 1/20
A23L 33/135
A61K 8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(Faecalibacterium prausnitzii)(KCCM12621P)を有効成分として含む、
アトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は配列番号1で示される16s rDNA配列を有する、
請求項1に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は生菌株又は低温殺菌された菌株である、
請求項1に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物はビタミン又は免疫抑制剤を更に含む、
請求項1に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
前記免疫抑制剤は、グルココルチコイド(Glucocorticoid)、シクロスポリン(Cyclosporine)、タクロリムス(Tacrolimus)、ピメクロリムス(Pimecrolimus)、及びISA(TX)247を含むカルシニューリン(calcineurin)阻害剤、ラパマイシン(Rapamycin)、IV型PDE阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate Mofetil)、及びデキサメタゾンからなる群から選択される、
請求項4に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
前記アトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、有効成分としてフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を10
8~10
12CFUの含有量で含むか、又は同CFUの生きている菌又は低温殺菌された菌を有する培養物を含む、
請求項1に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
前記アトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、じんましん、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシー又は食物アレルギーである、
請求項1に記載のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(Faecalibacterium prausnitzii EB-FPDK11)(KCCM12621P)を有効成分として含む、
アトピー性疾患の予防又は改善用の健康機能性食品。
【請求項9】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(Faecalibacterium prausnitzii EB-FPDK11)(KCCM12621P)を有効成分として含む、
アトピー性疾患の緩和又は改善用の化粧品組成物。
【請求項10】
前記アトピー性
疾患は、皮膚アレルギー、皮膚じんましん、アトピー性皮膚炎、乾癬又は湿疹である、
請求項9に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関するものであり、より詳細には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK11菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厳密な意味で「アトピー」という用語は、外部から身体内に入る異物に対して異常にIgEを生成する傾向を意味する。したがって「アレルギー」という用語と同じではないが、実際には、同じ意味で混用している。これらの過敏反応が臨床的に症状に発現した場合を「アトピー性疾患」又は「アレルギー疾患」と呼び、伝統的に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー(anaphylaxis)、食品アレルギー(food allergy)などがアトピー性疾患に分類されている。
【0003】
現在までに知られているアトピー性疾患の発症原因は正確に明らかになっていないが、一般的に遺伝的、免疫学的要因が関与していると推定され、その他の環境的、精神要因などが悪化要因として作用するというのが専門家らの普遍的な見解である。アトピー性疾患は、単一の疾患で発生するよりもアトピー性皮膚炎、喘息及びアレルギー性鼻炎などが行進(atopic march)を行って発生するか、同時に現れる複数の疾患として知られている。
【0004】
アトピー性疾患の中でアトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)は、周知のように、新生児や小児に発症し、大人になるまで継続する可能性がある慢性再発性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の主な症状は、病変の初期である急性期には主にかゆみがひどい紅斑丘疹と水泡が発生し、傷付くと、粘液が出る滲出性病変に変わり、このときに二次感染がしばしば発生する。病変が進んで亜急性期には、傷、丘疹が発生し、慢性期になると、皮膚が厚くなる苔蘚化(lichenification)現象が起こる。アトピー患者は頻繁な再発や症状の悪化によって救急救命室及び入院治療を繰り返すことになり、通常の学校生活、社会生活、又は職場生活が困難になって精神的苦痛まで経験し、通常の生活を困難にすることがある。
【0005】
アトピー性疾患は、根本的に治療しにくく、症状がひどくなる傾向があるので、アトピー性疾患は、治療を目的とせず、適切な治療によって症状が制御されている。現在、アトピー性皮膚炎は、主にステロイド、抗ヒスタミン剤や抗生剤などの薬物療法によって治療されている。現在最も広く使用されている治療薬は、ステロイド剤として知られたデキサメタゾン(dexamethasone)である。ステロイド系薬物は、抗炎症及び免疫抑制効果が卓越するが、長期間使用すると、皮膚の弱化、全身ホルモン症状及び中毒性の効果のような副作用が発生する問題がある。抗ヒスタミン剤は、肥満細胞からヒスタミンが放出されることを防いでかゆみの症状を減少させるが、一時的な措置として使用され、長期間にわたって不眠、不安、及び食欲不振などの副作用を引き起こすことがある。
【0006】
このように、合成医薬品は長期間の使用の際に副作用がひどく、アトピー性疾患に対して効果的でありながらも副作用がない新しいアトピー治療法が求められている。副作用がないアトピー治療法として、微生物新薬が新しい治療法として注目を集めている。よって、プロバイオティクスの効能及び機能も大きな注目を集めているが、微生物が体内にどのように動作するかなどは、かなりの部分で難題として残っており、効能においても腸内環境を健康に保つのにやや役立つだけで確実な薬学的効能まで期待することは難しいのが現状である。したがって、難治性疾患であるアトピー性疾患に対して検証された薬学的効能を有する次世代ファーマバイオティクス(pharmabiotics)治療薬の開発が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許公開第20160069733A号公報
【文献】韓国特許公開第20130034764A号公報
【文献】韓国特許登録第101925135B号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の限界を克服するためのものであり、本発明の一目的は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(KCCM12621P)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供することである。
【0009】
具体的に、本発明の一目的は、免疫過剰反応媒体であるIgEの過剰分泌を抑制し、Th1型サイトカインとTh2型サイトカインとの均衡的免疫調節に優れたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(KCCM12621P)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は改善用の健康機能性食品を提供することである。
【0011】
本発明の更に他の目的は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(KCCM12621P)を有効成分として含むアトピー性疾患の緩和又は改善用の化粧品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するための本発明の一態様は、寄託番号KCCM12621Pのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株、前記菌株の培養物又は乾燥物を含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関するものである。
【0013】
上述した目的を達成するための本発明の他の態様は、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、前記菌株の培養物又は乾燥物を含むアトピー性疾患の予防又は改善用食品に関するものである。
【0014】
上述した目的を達成するための本発明の更に他の態様は、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(KCCM12621P)、前記菌株の培養物又は乾燥物を含むアトピー性疾患の緩和又は改善用の化粧品組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、アトピー性疾患の治療効果が優れており、ステロイド系薬物と同等のレベルでアトピー性皮膚炎の予防又は治療効果を示す。
【0016】
また、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、Th1細胞とTh2細胞との均衡的な免疫調節に優れており、特にアトピー性皮膚炎の重症度に応じて、異なる免疫調節機序によりTh1型サイトカインとTh2型サイトカインとの均衡的免疫調節をなすのが特徴である。
【0017】
また、本発明の薬学的組成物は、アトピー性皮膚炎の発症の主要な因子である血清免疫グロブリンIgEの量を直接的に減少させる効果を有する。これにより、アトピー性疾患の予防及び治療に使用することができる薬学的組成物、健康機能性食品、化粧品組成物などに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の前記及び他の目的、特徴及び利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能であろう。
【
図1】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(F.prausnitzii)EB-FPDK11菌株(KCCM12621P)及び標準的な菌株(typestrain)であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165菌株の顕微鏡観察結果である。
【
図2】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株のPCR分析結果である。
【
図3】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株のゲノムDNAのRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析結果である。
【
図4】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株及び他のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌株の系統発生的関係を比較して図示したものである。
【
図5】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株の短鎖脂肪酸を分析したグラフである。
【
図6】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株の溶血活性実験結果である。
【
図7】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の処理の際に、アトピー性皮膚炎が誘発された実験動物の皮膚の状態を示す写真である。
【
図8】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株による皮膚炎指数(dermatitis score)の変化を示したグラフである。
【
図9】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群(EB-FPDK11)、デキサメタゾン投与陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群の耳浮腫の程度を比較して示した写真である。
【
図10】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群、陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群の耳の厚さ(ear thickness)の変化を分析した結果である。
【
図11】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群、陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群の実験動物の引っかき頻度(scratch frequency)を示すグラフである。
【
図12】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群、陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群の脾臓の写真である。
【
図13】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群、陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群の脾臓重量を比較して示したグラフである。
【
図14】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群、陽性対照群(DEX)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群のアレルギー疾患を媒介する最も重要な免疫指標であるIgEの変化を示すグラフである。
【
図15】PBS又は本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株処理したマウスのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色結果である。
【
図16】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株投与がIL-4、IL-6に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図17】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株投与が血中Th1サイトカイン、IFN-γ及びIL-12に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図18】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株投与が血中Th1サイトカイン及びTh2サイトカイン生成能に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図19】本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株投与が血中Th1サイトカイン及びTh2サイトカイン生成能に及ぼす影響を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下で、添付図面を参照して、本発明について更に詳細に説明する。
【0020】
他に定義しない限り、本願で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0021】
本明細書で使用される「約」という用語は、引用された特定の数値に関連して使用されるとき、その数値が引用された数値から1%以下に異なる場合があることを意味する。例えば、本明細書で使用されるように、「約100」という表現は、99と101との間の全ての数値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4、など)を含んでいる。
【0022】
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素を更に含むことができることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アトピー性疾患(atopic disease)」という用語は、アレルギー反応を発生させる遺伝される傾向の病気の一群を意味する。アトピー性疾患の例としては、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、アナフィラキシー、血管浮腫、食物アレルギーなどを挙げることができる。
【0024】
本明細書で使用される用語、「予防」は、本発明に係る薬学的組成物の投与によりアトピー性疾患を抑制させるか発症を遅延させる全ての行為を意味する。
【0025】
本明細書で使用される用語、「治療する」、「治療」などの用語は、一時的又は恒久的に症状を緩和するか、症状の原因を除去するか、又は前記疾患や病態の症状の発現を防ぐか又は遅らせることを意味する。
【0026】
本明細書で使用される用語、「改善」は、異常状態に関連するパラメータ、例えば症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0027】
本明細書で使用される用語、「薬学的に許容可能な」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症なしに利点/リスクの比が合理的であり、対象体(例えば、ヒト)の組織と接触して使用するのに適しており、健全な医学的判断の範疇内であることを意味する。
【0028】
ファーマバイオティクス(pharmabiotics)は、健康や病気に対して検証された薬学的役割(pharmacological role)を有するヒト由来の細菌又はその産物として定義されている(″Probiotics and pharmabiotics、″「Bioeng Bugs. 2010 Mar-Apr;1(2):79-84.)。
【0029】
本発明の一態様は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(Faecalibacterium prausnitzii EB-FPDK11)(寄託番号KCCM12621P)を有効成分として含む、ファーマバイオティクス(pharmabiotics)製剤として使用可能なアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関するものである。
【0030】
本発明の寄託番号KCCM12621Pのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK11菌株は配列番号1の16S rRNA遺伝子を有する。
【0031】
本発明で使用されるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、健康な韓国人の糞便から分離され、棒状であり、嫌気性細菌であり、運動性がなく、グラム陰性であり、内因性胞子を形成しない、粘液-分解性細菌(mucin-degrading bacteria)である。いくつかの粘液分解酵素を生成して粘液を炭素及び窒素供給源として使用することができ、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン及びラクトースを含むことで、様々な炭素源を代謝することができ、プロピオン酸及び酢酸のような短鎖脂肪酸を主な代謝体質として生成する。
【0032】
アレルゲン攻撃に対応して生成されるIgEはアトピー性疾患に関連する強力なアゴニストメカニズムを触発する。肥満細胞及び好塩基球上の高親和性受容体に結合する場合には、IgEはアレルギー抗原と架橋結合して、ヒスタミン、ロイコトリエン、及びその他の炎症媒介の脱顆粒化及び放出を誘導することができる。これらの製剤は、早期及び後期アレルギー反応に関連する喘鳴、気管支収縮、及び鼻炎の兆候を直接媒介し、肥満細胞及び好塩基球によって放出されるサイトカイン及びケモカインは局所炎症反応に寄与する。したがって、IgEの中和がアトピー性疾患の治療のための効果的な治療戦略になることができる。
【0033】
本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK11菌株は、炭水化物の嫌気性発酵によってブチレート、アセテート、及びプロピオネートのような短鎖脂肪酸(SCFA)を生成する。SCFAの受容体は、マクロファージ、樹状細胞、及び好中球で発現され、T及びB細胞媒介反応を調節することができる。
【0034】
また、SCFAは、調節T(Treg)細胞の生成及び変調に重要な役割を果たす。ブチレートは調節T(Treg)細胞の胸腺外分化を誘導し、プロピオネートは周辺でTregの生成を強化する。また、SCFAは、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤活性によってTh17、Th1及びIL-10の生成T細胞へのT細胞分化を調節することができる。
【0035】
アトピー性皮膚炎患者のB細胞と単球は低親和性IgE受容体の表現が増加しており、末梢血単核球ではIL-4の分泌が増加し、インターフェロンガンマ分泌は減少し、結果的にIgEの生成が増加することになる。アトピー患者は、T補助細胞の亜群の中でIL-4、IL-5を主に分泌するTh2細胞が増加し、IL-2及びINF-γを分泌するTh1細胞が相対的に低下している。
【0036】
IL-4は、免疫グロブリン生成の際にIgEへの分化を誘導し、接着分子を活性化させて単球又は好酸球などの炎症細胞を炎症が起こる組織の細胞に移動するように手伝う。IL-5は、好酸球の生存期間を延ばし、好塩基球からヒスタミンの分泌を促進させる。アレルギー疾患は、選択的標的記憶Th2細胞(selective target memory Th2 cells)が存在して、選択的標的臓器に病変を引き起こす。
【0037】
本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、Th2が優勢な状況でTh1/Th2のバランスを保つ作用をする。したがって、Th2反応の過剰に起因するTh1/Th2不均衡によって誘発されるアトピー性皮膚炎、喘息、及び鼻炎などの予防又は治療に有効である。一般的に、アトピー性皮膚炎でサイトカインの濃度の変化は、分化しなかったT-ヘルパー細胞-1(Th1)のT-ヘルパー細胞-2(Th2)への分化が非常に促進されるTh2の活性化による免疫システムによって誘発されるものとして知られている。これらのTh2細胞の活性化の過程で、Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13、IL-9、及びIL-10を生成する。
【0038】
本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株のプロバイオティクスを含むか、又は低温殺菌された菌株を含むことができる。本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、培養し、遠心分離などの分離過程によって回収し、乾燥、例えば、凍結乾燥によってプロバイオティクスの形態に製造して使用することができる。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌株の低温殺菌は、50℃以上100℃未満の温度で10分以上加熱することを意味する。例えば、70℃で30分間低温殺菌することができる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、組成物の総重量に対して、有効成分としてフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を108~1012CFUの含有量で含むか、同数の生菌を有する培養物を含むことができる。
【0040】
本発明の一実施例において、前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を含む薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態に製剤化して使用することができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、腸内又は経口投与用の製品に剤形化することができる。また、本発明の薬学的組成物は、公知の方法によって、胃を通過した後、小腸に到達して活性成分である微生物が迅速に腸内に放出されるように、腸溶被覆して製品化することができる。
【0042】
本発明の一実施例において、経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0043】
他の実施例で、本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、少なくとも一つのビタミンを更に含むことができる。このビタミンは脂溶性又は水溶性のビタミンであり得る。適切なビタミンは、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンK、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ピリドキシン、チアミン、パントテン酸、及びビオチンを含むが、必ずしもこれらに限定されない。前記任意の適切な形態は、ビタミンの塩、ビタミンの誘導体、同一又は類似の活性ビタミンを有する化合物及びビタミンの代謝産物である。
【0044】
本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、アトピー性疾患を予防及び治療する効果を有する公知の追加の治療薬を更に含むことができる。本発明で使用可能な追加の治療薬は、免疫抑制剤、鎮痛剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)又はサイトカイン拮抗剤、及びこれらの組み合わせである。
【0045】
前記免疫抑制剤としては、グルココルチコイド(Glucocorticoid)、シクロスポリン(Cyclosporine)、タクロリムス(Tacrolimus)、ピメクロリムス(Pimecrolimus)、ISA(TX)247を含むカルシニューリン(calcineurin)阻害剤、ラパマイシン(Rapamycin)、IV型PDE阻害剤(Type IV PD Einhibitors)、ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate Mofetil)、デキサメタゾンなどを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されず、公知の全ての免疫抑制剤を一緒に用いることができる。
【0046】
また、1種の免疫抑制剤を単独で使用するか、2種以上の免疫抑制剤を組み合わせて使用することができ、好ましくは、前記免疫抑制剤として、シクロスポリン、タクロリムス、デキサメタゾン、及びピメクロリムスから構成される群から選択された1種以上を用いることができる。本発明に係る薬学的組成物は、他の治療薬と併用して投与する場合、順次又は同時に投与することができ、一回又は複数回投与することができる。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、前記有効成分の他に、製薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を更に含むことができ、その他にも、バインダー、分解除、コーティング剤、潤滑剤などのような製薬学的に一般的に使用される様々な添加剤と一緒に製剤化して調製することができる。
【0048】
本発明で使用可能な賦形剤は、スクロース、ラクトース、マンニトール、グルコースなどの糖及びトウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、米澱粉、部分的に前ゼラチン化した澱粉などの澱粉を含む。バインダーは、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、グアーガム、アカシア、寒天などの多糖類、トラガカント、ゼラチン、グルテンなどの天然発生巨大分子物質、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及び酢酸ビニル樹脂などの高分子を含む。
【0049】
本発明で使用可能な分解剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、及びナトリウムカルボキシ澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、米澱粉、及び部分的に前ゼラチン化した澱粉などの澱粉を使用することができる。
【0050】
本発明で使用可能な潤滑剤の例は、タルク、ステアリン酸、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、コロイド性シリカ、含水二酸化ケイ素、種々のワックス及び水素化油などを含む。
【0051】
コーティング剤としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、エチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート共重合体、エチルセルロースなどの水不溶性重合体、メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなどの腸溶性重合体及びメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性重合体を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0052】
本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物において有効成分である前記菌株の投与量は、様々な病気の種類、患者の年齢、体重、性別、患者の医学的状態、状態の重症度、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、及び排出比、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定することができる。したがって、投薬計画は広範囲に変化することができるが、前記要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者が標準的な方法で容易に決定することができる。
【0053】
一般的に、成人患者の場合には、1×108以上の生菌又は低温殺菌された細菌を、必要に応じて一回又は複数回に分けて投与することができる。本発明の一実施例において、前記アトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物は、前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を含むものであれば、その含有量が特に限定されない。
【0054】
例えば、前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株を1×108細胞/ml~1×1012細胞/mlの濃度で含むことができるが、必ずしもこれらに限定されない。例えば、前記フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の濃度は、1×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、2×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、3×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、5×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、1×108細胞/ml~5×109細胞/ml、2×108細胞/ml~5×109細胞/ml、3×108細胞/ml~5×109細胞/ml、又は5×108細胞/ml~5×109細胞/mlであり得るが、必ずしもこれらに限定されない。
【0055】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株、これらの培養物又は乾燥物を含む食品又は健康機能性食品に関するものである。
【0056】
本発明の菌株含有食品は、牛乳や乳製品のような多様な食品や栄養製品として、又は栄養補助食品又は健康機能性食品として摂取することができる。本発明の一実施例によって、前記製品は、乳製品、飲料、ジュース、スープ、又は子供用食品などの食品を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の更に他の態様は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株、これらの培養物又は乾燥物を含むアトピー性皮膚炎を緩和するか又は改善する化粧品組成物に関するものである。
【0058】
本発明の化粧品組成物は、前記有効成分の他に、化粧品組成物に通常的に用いられる成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、ビタミン、顔料及びスパイスのような通常の補助剤、及び担体を含んでもよい。
【0059】
前記化粧品組成物は、皮膚アレルギー、皮膚じんましん、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌による感染症及び湿疹からなる群から選択される1種以上の皮膚状態を改善する機能性を有することを特徴とすることができるが、その機能は必ずしもこれらの状態に限定されるものではない。
【0060】
本発明の化粧品組成物は、当業界で通常的に製造されるどの剤型にも製造することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジングオイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション、パック、マスクパック、マッサージクリーム、及びスプレーに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー又はパウダーの剤形に製造することができる。
【0061】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0062】
実施例
実施例1:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の分離及び同定
1.1.菌株の分離及び同定
健康な韓国人(女性、9歳、BMI 15.5)の糞便からフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイを分離するために、Martin方法によって、嫌気性チャンバーを用いて、厳格な無酸素条件(5%H2、15%CO2及び80%N2)の下で、0.5%酵母エキス、0.1%D-セロビオース、0.1%D-マルトースを添加したYBHI培地(brain heart infusion medium supplemented with 0.5% yeast extract)(Difco社製、米国デトロイト)を用いて培養した後、EOS(Extremely Oxygen Sensitivity)菌種を選別した後、分離した。
【0063】
1.2.
顕微鏡観察
分離された菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌株であるかを確認するために、分離された菌株を顕微鏡で観察した。
図1に示すように、標準菌株であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株(A)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(B)を1000倍の倍率に拡大して観察した結果、菌株の形状がいずれもまっすぐな又は曲がっている棒状を有し、互いに類似した形状を有することを確認した。
【0064】
1.3.
PCR分析
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌株であるかを確認するために、分離された菌株を表1のFP-特異性プライマー(配列番号2及び配列番号3)を使用してPCR分析を実施した。その結果、
図2に示すように、陽性対照群の菌株であるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165菌株と類似したバンドパターンを現したことを確認することができた。
【0065】
【0066】
1.4.
Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)分析
前記ように分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株が既に報告された同種のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株と同じ菌株であるかを検証するために、分子タイピングの一種であるRAPDを実施した。このために、菌体から抽出したゲノムDNAを対象として、下記の表2の汎用プライマーを用いてDNAを増幅した後、1%寒天ロースゲルで1時間30分間電気泳動し、UVトランスイルミネーターでDNA分節パターンを比較し、その結果を
図3に示した。
【0067】
【0068】
図3から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株と比較すると、異なるRAPDバンドパターンを示した。したがって、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株と種は同一であるが、異なる菌株であることを確認した。
【0069】
1.5.16S rRNA BLAST
分離された菌株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイであるかを確認するために、16S RNAの塩基配列を分析した後、BLAST(Basic local alignment search tool)で確認した結果、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ種と99%以上一致することを確認した。
【0070】
1.6.
全長16S rRNA遺伝子の塩基配列を用いた系統樹(phylogenetic tree)分析
前記ように分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の全長(full-length)16S rRNA遺伝子の塩基配列分析のために、下記の表3の27F及び1492Rプライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した後、3730xl DNA分析器を用いて塩基配列を決定した。このように得られた本発明のEB-FPDK11菌株及び既に公表された同種の他の菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を用いて系統樹(phylogenetic tree)を作成して
図4に示した。
【0071】
【0072】
図4に示すように、16S rRNA遺伝子の塩基配列分析によって進化的関係を、系統樹(phylogenetic tree)を介して分析した結果、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は遺伝学的にフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ種に属する菌株であることを確認した。ヒトの糞便から分離した、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株をフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(A2-165)を対照群とした生化学的方法(API)及び分子生物学的方法(16S rRNA序列分析、16S rRNA BLAST分析、RAPD)で同定し、後述する抗生剤耐性検査によってプロバイオティクスの機能を有することができる安全な菌株であることを確認した。
【0073】
これらの結果に基づいて分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイを「フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11」菌株と命名し、韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託して受託番号KCCM12621Pを受けた。
【0074】
実施例2:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の特性及び安全性の分析
2.1.機能性代謝体(短鎖脂肪酸)の分析
分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の機能性代謝体を確認するために、培養液に含有された短鎖脂肪酸(SCFA、short chain fatty acids)の含有量をガスクロマトグラフィーで分析した。このために、YBHI培地[Brain-heart infusion medium supplemented with 0.5%w/v yeast extract(Difco)、0.1%w/v Dcellobiose、0.1%w/v D-maltose)に菌株を24時間培養した後、12,000Хgで5分間遠心分離して上澄み液を回収し、上澄み液は0.2μmシリンジフィルターで濾過した後、分析に使用した。FFAP column(30m×0.320mm、0.25μm phase)が装着されたガスクロマトグラフィー(Agilent 7890N)を用い、条件は表4のように設定した。
【0075】
【0076】
機能性短鎖脂肪酸を分析した結果、
図5のグラフから分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は酢酸を消費してブチレートを生成することを確認した。
【0077】
2.2.抗菌剤感受性確認
前記ように分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の抗菌剤感受性を把握するために、Clinical & Laboratory Standard Institute(CLSI)ガイドラインの微量液体希釈法(broth microdilution method)によって、嫌気性細菌用抗菌剤をピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)、セフチゾキシム(CTZ)、クロラムフェニコール(CHL)、クリンダマイシン(CLI)、メロペネム(MEM)、モキシフロキサシン(MXF)、メトロニダゾール(MTZ)、シプロフロキサシン(CIP))の最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を決定し(CLSI、2017)、その結果を下記の表5に示した。
【0078】
【0079】
表5から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、ピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)、セフチゾキシム(CTZ)及びメロペネム(MEM)とフルオロキノロン系の抗生剤であるモキシフロキサシン(MXF)及びシプロフロキサシン(CIP)に耐性を示し、クロラムフェニコール(CHL)、クリンダマイシン(CLI)及びメトロニダゾール(MTZ)には感受性を示した。標準菌株(A2-165)と比較すると、クロラムフェニコール(CHL)抗生剤に対する耐性において大きな差を見せた。
【0080】
2.3.
溶血活性(hemolytic activity)分析
前記ように分離されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の安全性検証のために、溶血活性を有するかを評価した。このために、トリプティックソイ寒天(17.0g/Lカゼインの膵臓消化物、3.0g/L大豆の膵臓消化物、2.5g/Lデキストロース、5.0g/L塩化ナトリウム、2.5g/Lリン酸カリウム、15g/L寒天)に5%w/vの脱線維素血液(defibrinated sheep blood)を添加して製造した血液寒天培地を用いて菌株を培養し、その結果は
図6に示した。
【0081】
図6から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株は、コロニー周辺の完全に透明な部分が現れないことから、病原性に関連したβ溶血(β-hemolysis)を引き起こさないことを確認した。
【0082】
実施例3:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌株のアトピー性疾患の治療効能確認
3.1.菌株試料
本実験に使用したフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11生菌は、1×108CFU/150μl PBS(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)の濃度に製造した。
【0083】
3.2.動物モデル及びサンプリング
アトピー性皮膚炎病変を観察するために、6週齢の体重21~25g程度の雄性NC/Ngaマウス(SLC、Inc.、Japan)をデハンバイオリンク(韓国、忠清北道)から供給された。動物実験はInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC)のAnimal use and Care Protocolを遵守して遂行した。一週間の適応期間を経た後、9週間飼育し、飼育環境は、一定の温度(22℃)及び相対湿度(40~60%)を維持し、12時間の周期で明暗を調節しながら飼育した。
【0084】
3.3.アトピー性皮膚炎誘発
6週齢のNC/Ngaマウスの背中部位をきれいに除毛した後、皮膚の微細傷が治癒されるように、24時間放置した。1%の2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)溶液(Sigma-Aldrich Korea)をマウスの背中部位に1週間に2回ずつ、3週間塗布して免疫反応を誘発した後、0.5%DNCB溶液を一週に2回塗布して接触性皮膚炎を誘導した。本実施例で使用されたDNCBはアセトンとオリーブオイルとが3:1で混合された溶液に0.5%及び1%に希釈して使用した。
【0085】
それぞれの該当薬物を使用してアトピー性皮膚炎を誘導した後、6週間にかけて毎日経口投与を実施した。陽性対照群として、デキサメタゾンを蒸留水で60μg/mlに希釈して毎日200μlずつ経口投与した(表6参照)。
【0086】
【0087】
3.4.アトピー性皮膚炎評価
DNCBによってアトピー性皮膚炎を誘発させた後、デキサメタゾン(DEX)、ATCCBAA-835菌株及びEB-AMDK19菌株を含有する調製品で6週間の治療を行い、臨床症状を確認するために、皮膚の状態と、これを点数化した皮膚炎指数(dermatitis score)を確認した。
【0088】
アトピー性皮膚炎で一般的に使用される臨床的肉眼評価法であるSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)インデックスを変更し、臨床的肉眼評価法で官能評価を実施した。皮膚の乾燥状態(dryness)、浮腫(edema)、紅斑及び出血(erythema/hemorrhage)、びらん及び擦りむき(erosion/excoriation)を、症状なし(0点)、弱症状(1点)、普通(2点)、激しい症状(3点)と点数化し、毎週測定し、評価結果は
図7及び
図8に示した。
【0089】
6週間の治療期間中に一週の間隔で各グループの皮膚の状態を肉眼で観察して皮膚炎指数(Dermatitis score)で測定した結果、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)は6週が経過するうちに、アトピー性皮膚炎の症状が維持される一方で、A2-165標準菌株、EB-FPDK11菌株及びデキサメタゾン(DEX)を投与した実験群ではアトピー性皮膚炎の症状が著しく減少することを確認することができた。
【0090】
6週後の皮膚炎指数に基づく数値評価の結果として、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べてA2-165標準菌株群(P=0.02)、及び本発明のEB-FPDK11群(P=0.02)でそれぞれ32.5%及び30.9%の減少を確認することができた。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群に比べて、本発明のEB-FPDK11菌株群がより優れたアトピー皮膚状態改善効果を示すことを確認した。
【0091】
3.5.
アトピー性皮膚炎による耳浮腫への影響
実験終了の後、マウスをCO
2で麻酔して犠牲させた後、厚さ測定器(Digimatic thickness gauge、547-301、Mitutoyo、Japan)を用いて、速度変化法でマウスの両耳の浮腫の程度を測定し、その結果を
図9及び
図10に示した。
【0092】
NC/Ngaマウスの耳浮腫は、6週の後、正常群が0.55mm、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)が1.50mmとして現れ、A2-165投与群は1.37mm、EB-FPDK11投与群は1.16mm(P=0.02)、陽性対照群(DEX)は1.00mm(P<0.001)として現れた。
【0093】
耳浮腫の状態でアトピー程度を観察した結果、陽性対照群(DEX)で最も優れたアトピー改善効果を示し、また、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及びEB-FPDK11菌株群の両方で優れたアトピー改善効果を示した。このように、本発明の薬学的組成物は、アトピー性皮膚炎が誘発されたマウスモデルで顕著な浮腫抑制効果があることを確認することができた。
【0094】
3.6.引っかき回数(Scratching score)測定
実験終了の前日にそれぞれのかゆみによる患部引っかき回数を測定した。引っかき回数(scratching frequency)の測定は、マウスに10分間の適応期間を与えた後、10分間の引っかき回数をカウンターで測定した。
【0095】
図11を参照すると、DNCBで処理したアトピー性皮膚炎誘導群は、正常群に比べて、体を引っかく回数(scratching frequency)が有意に増加した(P<0.001)。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群及び本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11群の両方で引っかき回数はアトピー性皮膚炎誘導群よりそれぞれ69.4%(P=0.01)、76.19%(P=0.01)減少したことを確認した。
【0096】
陽性対照群は、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)より引っかき回数が59.4%(P=0.03)程度減少することを示した。したがって、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11投与群は、デキサメタゾンを投与した陽性対照群、及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群より優れたかゆみ止め効果を示すことを確認した。
【0097】
3.7.脾臓の重量及びサイズ測定
脾臓は、1次及び2次リンパ器官の特性を全て示し、赤血球を濾過する赤脾髄(red pulp)と体液性免疫及び細胞性免疫活性を示す白髄(white pulp)とから構成されており、免疫反応で他の重要な器官である(Mebius、R E and Kraal、G 2005 Structure and function of the spleen Nat Rev Immunol 5、pp606-616)。
【0098】
また、脾臓はB細胞発生の最終段階が進むところであり、同時に、血液に由来する抗原に反応する特化した器官としての機能を有する(Boehem、T and Bleul、CC 2007 The evolutionary history of lymphoid organs Nat. Immunol 8、131-135)。アトピー性皮膚炎の反応は免疫組織内の様々な反応を誘導し、これらの反応は、一次的に免疫器官である脾臓の重量に影響を与えることがある。
【0099】
したがって、本発明のアトピー性疾患の予防又は治療用組成物は、DNCBによってアトピー性皮膚炎が誘導されたNC/Ngaマウスの免疫臓器に及ぼす影響を観察するために脾臓(spleen)の重量を測定した。より具体的には、実験が終わった後、実験動物をCO
2で麻酔した後、頸椎脱臼法で犠牲させ、開腹して脾臓組織を採取した。前記採取された脾臓組織を生理食塩水で洗浄した後、水気を除去し、微量天秤で重量を測定し、それらのサイズを肉眼で観察した。そして、その結果を
図12及び
図13に示した。
【0100】
アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)の脾臓の重量は正常群に比べて約2倍増加し(P<0.001)、A2-165標準菌株、EB-FPDK11菌株、及びデキサメタゾン投与群では、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べてそれぞれ17.37%(P=0.010)、19.98%(P=0.0006)、23.26%(P=0.007)減少したことを確認した。特に、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及び本発明のEB-FPDK11菌株投与菌の両方で共に陽性対照群(DEX)と同様の効果を示した。したがって、本発明のEB-FPDK11菌株を含む組成物が免疫を抑制する効果に優れることを確認することができる。
【0101】
3.8.
血清中のIgE濃度の測定
実験終了の際、CO
2で麻酔した後、心穿刺によって血液を採取し、採取した血液は、10,000rpmで5分間遠心分離して血清(serum)を分離し、IgE濃度を測定し、その結果を
図14に示した。IgE濃度の測定は、ELISAキット(IgEマウスuncoated ELISA kitcat#88-50460、Invitrogen、CA、USA)を用いた。
【0102】
図14を参照すると、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)は、血清中のIgEの生成量は、正常群に比べて約13倍増加したが(1545.08ng/ml、P<0.001)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株投与群及び本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株群の両方で共にDNCB処理した対照群に比べて著しく減少した。
【0103】
A2-165菌株投与群、EB-FPDK11菌株投与群、及びデキサメタゾン(DEX)投与群では、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べてそれぞれ32.23%、40.00%、40.70%減少したことから有意に著しく減少したことを確認した(P<0.001)。したがって、本発明のEB-FPDK11菌株含有組成物はIgE生成抑制効果がデキサメタゾン群の効果に匹敵し、アトピー症状を緩和させる効果が大きいことが確認された。
【0104】
3.9.
組織病理学的観察
実験終了の際、マウスを犠牲させた後、皮膚を摘出し、10%ホルムアルデヒド溶液に固定し、パラフィンブロックを製作して薄片を製造した後、ヘマトキシリン及びエオシン(hematoxylin & eosin、H&E)染色を実施し、表皮層及び真皮層の厚さ変化を光学顕微鏡で200倍拡大して観察し、その結果を
図15に示した。
【0105】
NC/Ngaマウスの背中の皮膚組織をH&E染色して観察した結果、
図15に示すように、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)は、正常群に比べて、表皮層が真皮層に向かって厚く拡張した肥厚化と皮膚障壁の深刻な損傷及び炎症細胞の浸潤増加の組織病理学的所見を示した。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ群及び陽性対照群(DEX群)の両方で共に、顕微鏡観察の際、炎症細胞の浸潤が減少する様相を示し、アトピー性皮膚炎誘発の際に観察される表皮の厚さ及び真皮の厚さの両方の拡張が抑制され、正常群と同様の組織病理学的特徴を示した。
【0106】
図15(A)に示す過角化症(hyperkeratosis)及び過形成(hyperplasia)現象を、正常群の厚さを0点、正常群の厚さの2倍を1点、3倍を2点、4倍を3点、4倍以上を4点と点数化することで、組織学的に評価した。
【0107】
図15(B)及び(C)のグラフに示すように、過角化症及び過形成の現象は、正常群に比べて、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で有意に3~4倍増加し、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、陽性対照群を含むフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及び本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11の両方で共に有意に抑制されることを確認した。特に、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11を投与した群では、A2-165標準菌株より過角化症及び過形成の現象が著しく減少して陽性対照群(DEX)と同様の組織病理学的所見を観察することができた。
【0108】
3.10.血清中のサイトカイン濃度の測定
アトピー性皮膚炎誘導の後、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の投与による免疫反応を確認するために、Th1及びTh2に関連したサイトカインの濃度を測定した。全ての実験の統計は、GraphPad Prism7.04を使用してOne-way ANOVAを遂行した。
【0109】
実験終了の際、マウスをCO
2で麻酔した後、心穿刺によって血液を採取し、採取した血液は、10,000rpmで10分間遠心分離して血清を分離し、-80℃で保管した。ELISAキット(Invitrogen、CA、USA)を用いて、IL-4、IL-12、IFN-γ、及びIL-6サイトカインの濃度を測定し、その結果を
図16及び
図17に示した。
【0110】
まず、Th2細胞活性によって引き起こされ、炎症反応の指標としても知られているサイトカインIL-4及びIL-6の濃度を確認した。
【0111】
図16(A)に示すように、IL-4濃度は、アトピー性皮膚炎誘導群であるアトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で、正常群より20.54%(P=0.02)増加した。また、アトピー性皮膚炎誘導群に比べて、陽性対照群である陽性対照群(DEX)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及び本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11群の両方で共に有意に減少し、正常群のレベルのIL-4濃度が測定された。また、マウスの血中IL-6の濃度を測定した結果、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で、正常群に比べて、1.54倍(P=0.009)増加し、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、陽性対照群(DEX)は35.5%(P=0.009)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株は41.8%(P=0.003)、本発明のEB-FPDK11投与群では40.7%(P=0.01)減少することを確認することができた(
図16(B)参照)。
【0112】
3.11.
EB-FPDK11菌株が血中Th1サイトカイン、IFN-γ及びIL-12に及ぼす影響
本実験では、Th1サイトカインであるIFN-γ及びそのインデューサ(inducer)であるIL-12を測定した結果、
図17に示すように、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11群でこれらのサイトカインの全て有意に増加することが分かった。IL-12の濃度を測定した結果、正常群に比べて、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)は有意に減少し(P=0.03)、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、陽性対照群(P=0.008)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群(P=0.03)、EB-FPDK11群(P=0.004)では有意に増加した。
【0113】
特に、本発明のEB-FPDK11投与群は、A2-165標準菌株群に比べても、もっと有意に増加する結果を示した。マウスの血中IFN-γの濃度は、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、陽性対照群(DEX)投与群(P=0.03)及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11投与群(P=0.03)でそれぞれ有意に増加した。したがって、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の投与が血清IL-12及びIFN-γの生成を促進してTh1分化を誘導するのにデキサメタゾンより良い効能を示すことが確認された。
【0114】
3.12.
アトピー動物モデルでEB-FPDK11菌株の投与がTh1及びTh2サイトカイン生成能に及ぼす影響
免疫学的観点で、アレルギー性アトピー性皮膚炎は、Th1及びTh2の免疫反応が過度に発生してバランスが崩れて生じる疾患である。したがって、先に測定したサイトカインの濃度に基づいてTh2/Th1サイトカインの比で表現して
図18及び
図19に示した。
【0115】
図18(A)を参照すると、IL-4/IFN-γを分析した結果、正常群に比べて、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で有意に増加し、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株及びEB-FPDK11菌株群の両方で有意に減少し、これらの群でのIL-4/IL-12の比は正常群と同等であることを確認した。IL-4/IL-12の比を分析した結果、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で、正常群に比べて、35.4%(P=0.02)増加した。これは、アトピー性皮膚炎で典型的に現れるTh2サイトカインの増加を意味する。
【0116】
全ての陽性対照群(DEX)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165投与群及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11投与群でIL-4/IL-12の比が有意に減少すること(DEX:23.7%(P=0.02)、A2-165:30.4%(P=0.002)、EB-FPDK11:23.0%(P=0.04))を確認した(
図18(B)参照)。
【0117】
また、
図19を参照すると、IL-6/IFN-γの比及びIL-6/IL-12の比も前記結果と同等であることを確認することができた。IL-6/IFN-γの比を見ると、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)は、正常群に比べて、有意に増加し、DNCBに比べて、陽性対照群(DEX)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株群及びEB-FPDK11投与群の全てで有意に減少することを確認した(
図19(A)参照)。
【0118】
図19(B)を参照すると、IL-6/IL-12の比は、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)で、正常群に比べて、58%(P=0.02)増加した一方で、アトピー性皮膚炎誘導群(DNCB)に比べて、陽性対照群(DEX)は35.8%(P=0.002)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイA2-165標準菌株投与群は46.8%(P=0.01)、EB-FPDK11群は44%(P=0.04)減少した。
【0119】
総合的に考察してみると、アトピー性皮膚炎を誘導したマウスではIL-4/IFN-γ、IL-4/IL-12、IL-6/IFN-γ及びIL-6/IL-12が増加すること、及び本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株がこれ抑制することを確認した。言い換えれば、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株の摂取はアトピー性皮膚炎の誘発の際に誘導されるTh2サイトカインであるIL-4及びIL-6の生成を抑制し、その結果、IgEの過剰生産を制御することを確認した。また、Th1サイトカインIFN-γ及びIL-12の生成を促進してアトピー性皮膚炎を効果的に好転させる作用をしてTh1及びTh2の免疫バランスをなすと考えられる。
【0120】
前述したように、本発明のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイEB-FPDK11菌株(Faecalibacterium prausnitzii EB-FPDK11)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防又は治療用の薬学的組成物はアトピー性疾患の治療効果に優れ、特に、従来のプロバイオティクス製剤の限界を著しく克服し、デキサメタゾンのようなステロイド系薬物と同等のレベルでアトピー性皮膚炎の予防、改善又は治療の効果を示すので、産業上利用可能性が大きい。
【0121】
本明細書に記載された具体的実施例は、単に本発明の好適な実施例を説明するためのものであり、本発明を制限するものと解釈してはいけない。本発明は、その思想及び範囲から逸脱することなしに様々な変形及び変更の実施が可能である。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定され、前記のような様々な変形及び変更は本発明の保護範囲に含まれるものである。
【0122】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12621P
受託日:2019年11月1日
【配列表】