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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】歯車対及び章動減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
F16H1/32 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023540640
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2022094547
(87)【国際公開番号】W WO2023115805
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】202111579019.2
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523231004
【氏名又は名称】姜 虹
【氏名又は名称原語表記】JIANG Hong
【住所又は居所原語表記】Main Campus Of Beijing Jiaotong University, Beijing 100081, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 小椿
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-535327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン歯車と、瞬間中心なしエンベロープ歯車と、が噛み合って形成された歯車対であって、
前記ピン歯車の歯面は、動作歯面と、非動作歯面とを含み、
前記ピン歯車の動作歯面は、
外側に凸な楕円錐面で構成され、かつ、
前記ピン歯車の軸線方向に平行であって且つ前記ピン歯車の径方向に直交する横断面と前記楕円錐面とが交わって曲線が形成され、前記曲線において最高高さ位置にある最高点と最低高さ位置にある最低点に着目するときに、前記最高点と前記最低点との距離は、外側から内側へ円錐面母線に沿って徐々に小さくなり、
前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の動作歯面は、前記ピン歯車が章動運動過程中で生成された瞬間中心なしエンベロープ面であり、
前記ピン歯車の歯数は、瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯数よりも1つ多い
ことを特徴とする歯車対。
【請求項2】
前記ピン歯車の非動作歯面は、歯先曲面と、平面と、歯底曲面とを含み、前記歯先曲面と、前記楕円錐面と、前記平面と、前記歯底曲面とが前記ピン歯車の歯面を構成し、歯先曲面の両端の各々には、楕円錐面と、平面と、歯底曲面と、が順に接続され、かつ、歯先曲面と、楕円錐面と、平面と、歯底曲面とのうちの隣接する両者が接しており、前記歯先曲面は、外側に凸な滑らかな曲面であり、前記歯底曲面は、凹んだ滑らかな曲面であり、
前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯面は、歯先曲面と、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面とで構成され、歯先曲面の両端の各々には、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面と、が順に接続され、かつ、歯先曲面と、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面とのうちの隣接する両者が接しており、前記歯先曲面は、外側に凸な滑らかな曲面であり、前記歯底曲面は、凹んだ滑らかな曲面である
ことを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項3】
前記ピン歯車と瞬間中心なしエンベロープ歯車との軸角Tは、177°≦T<180°である
ことを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項4】
前記楕円錐面の長軸と短軸との比は、1.3~2.5である
ことを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項5】
前記ピン歯車の動作歯面の圧力角αは、40°-R≦α≦50°-Rを満たし、
Rは、ピン歯車と瞬間中心なしエンベロープ歯車との摩擦角である
ことを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項6】
前記ピン歯車の歯先と歯底との間には、第1の基準円錐面が設けられ、前記第1の基準円錐面の軸線と前記ピン歯車の軸線とが重なり、第1の基準円錐面の円すい角がβであり、
前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯先と歯底との間に、第2の基準円錐面が設けられ、前記第2の基準円錐面の軸線と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の軸線とが重なり、前記第2の基準円錐面の円すい角がWであり、
前記ピン歯車と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車との軸角がTであり、前記ピン歯車の歯先円すい角がγであり、前記ピン歯車の歯底円すい角がPであり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯先円すい角がKであり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯底円すい角がLであり、
β、W、T、γ、K、Lは、
89°≦β≦91°、W=T-β、β+0.3°≦γ≦β+2.1°、β-2.9°≦P≦β-0.5°、W+0.3°≦K≦W+2.3°、W-3.1°≦L≦W-0.6°
を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項7】
ケースと、
前記ケース内に回転可能に設けられる減速機出力軸と、
請求項1に記載の歯車対であって、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車が前記ケース内に固設されたか、又は、前記ケースと一体成形された歯車対と、
内輪、外輪、及び内輪と外輪との間に接続された環状弾性変形体を有し、その内輪には第1の接続部が設けられ、その外輪には第2の接続部が設けられ、前記第1の接続部が前記減速機出力軸に固定接続され、前記第2の接続部が前記ピン歯車に固定接続され、前記内輪と前記減速機出力軸とが同軸に設けられ、前記外輪と前記ピン歯車とが同軸に設けられる環状弾性膜と、
前記ケース内に設けられており、前記ピン歯車を章動運動するように駆動し、前記ピン歯車の歯を前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯に転動させ、かつ、ピン歯車の章動運動に適応するように前記環状弾性変形体に変形を発生させるための章動発生機構と、を含む
ことを特徴とする章動減速機。
【請求項8】
前記ケース内に回転可能に設けられる減速機の入力軸をさらに含み、
前記章動発生機構は、
前記減速機の入力軸に転設され、一方の側面が斜面であり、他方の側面がその軸線に垂直であるスワッシュプレートと、
前記スワッシュプレートを回転するように駆動する駆動機構と、
前記スワッシュプレートの両側に設けられる平面密集玉軸受と、を含み、
前記ケースの内表面には、前記減速機の入力軸の径方向に沿って凸に伸びる環状ボスが形成されており、前記環状ボスの一方の側面が前記平面密集玉軸受の玉に貼り合わせられ、かつ、前記環状ボスの一方の側面が前記減速機の入力軸に垂直であり、前記環状ボスの端面と、前記ピン歯車の背面と、前記スワッシュプレートの両側面とが前記平面密集玉軸受の軌道となる
ことを特徴とする請求項7の章動減速機。
【請求項9】
前記歯車対は、2対であり、前記章動発生機構の両側に対称的に設けられる
ことを特徴とする請求項8の章動減速機。
【請求項10】
前記章動発生機構は、
前記ケース内の前記減速機出力軸に転設され、その両側に対称な斜面が設けられ、駆動機構により回転するように駆動されるスワッシュプレートと、
平面密集玉軸受と、を含み、
前記スワッシュプレートの両側の各々に前記平面密集玉軸受が設けられ、前記スワッシュプレートの両側面と、2対の前記歯車対のうちそれぞれの前記ピン歯車の背面と、が前記平面密集玉軸受の軌道となり、
2対の前記歯車対のうちの2つの前記ピン歯車の歯数は等しい
ことを特徴とする請求項9の章動減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本出願は、この基礎出願を参照することによって基礎出願の全ての内容を含む。本出願は、国際出願No.PCT/CN2022/112809(出願日:2022年8月16日)、及び中華人民共和国国家知識産権局(CNIPA)に出願された中国出願202111579019.2(願日:2021年12月22日)を基礎出願とする優先権を享受する。本出願は、この基礎出願を参照することによって基礎出願の全ての内容を含む。
【0002】
本発明は、減速機の技術分野に係り、特に、歯車対及び章動減速機に係る。
【背景技術】
【0003】
自動化分野において、大伝達比の減速機は、工業用ロボットアームやマニピュレータなどの大量の需要を持っている。一般的に用いられる大伝達比の減速機には、ウォーム減速機、多段遊星減速機、ハーモニック減速機、RV減速機がある。現在、構造がコンパクトである必要がある場合、ハーモニック減速機及びRV減速機が多く選択され、これは主に、ウォーム減速機の効率が比較的低く、熱平衡の問題により、頻繁な高速動作の要求を満たすことが困難であり、かつ、多段遊星減速機構の体積が比較的大きく、低バックラッシュ遊星減速機のプロセス要求及び製造コストが高いためである。章動減速機は比較的新しく、現在、比較的完備な成熟な製品シリーズが見られていない。現在公表された資料から見ると、多数の章動減速装置はいずれも、インボリュート歯形を採用している。インボリュート歯車対の設計は、通常、ピッチ円錐面に基づいて接する設計原則に従うべきであり、大伝達比が要求されると、そのうちの1つの歯車は、かさ歯車として作成される必要があり、加工難易度が大きく、製造コストが高い。インボリュート歯車のもう1つの固有の欠点は、重合度が低く、同時に動く歯の数が通常3歯を超えないことであり、接触応力の観点から見て、各歯の耐荷能力を大きくすることができるとしても、歯底の曲げ応力及び剪断応力に制限され、歯車対の動力密度を高めることは困難である。章動サイクロイドピンホイール対は、1歯数差の大伝達比の構造を容易に実現でき、強制変位により端面歯車対として作成されることができるが、ピンホイールの歯面において有効な動作弧長が非常に短く、長期動作に局所的な摩耗が発生しやすくなる問題が存在し、さらに、同時に作業する歯数が比較的多いが、ピンホイールとサイクロイド歯車の歯面との間の相対曲率が大きいため、歯面の接触応力が大きくなる問題も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑み、本発明は、従来の章動サイクロイドピンホイール対のピンホイールの歯面における有効な動作弧長が非常に短く、長期動作に局所的な摩耗が発生しやすくなる問題や、同時に作業する歯数が多いが、ピンホイールとサイクロイド歯車の歯面との間の相対曲率が大きいため、歯面の接触応力が大きくなる問題を解決するために用いられる、歯車対及び章動減速機を開示している。
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術案を採用した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ピン歯車と、瞬間中心なしエンベロープ歯車との各々の歯、が噛み合って形成された歯車対であって、前記ピン歯車の動作歯面は、外側に凸な楕円錐面シートで構成され、かつ、前記楕円錐面シートの同一横断面における最高点と最低点との距離は、前記ピン歯車の径方向に従って、外側から内側へ円錐面母線に沿って徐々に小さくなり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の動作歯面は、前記ピン歯車が章動運動過程中で生成された瞬間中心なしエンベロープ面であり、前記ピン歯車の歯数は、瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯数よりも1つ多い歯車対を開示している。
【0007】
さらに、前記ピン歯車の歯面は、歯先曲面と、楕円錐面シートと、平面と、歯底曲面とで構成され、歯先曲面の両端の各々には、楕円錐面シートと、平面と、歯底曲面と、が順に接続され、かつ、歯先曲面と、楕円錐面シートと、平面と、歯底曲面とのうちの隣接する両者が接しており、前記歯先曲面は、外側に凸な滑らかな曲面であり、前記歯底曲面は、凹んだ滑らかな曲面であり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯面は、歯先曲面と、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面とで構成され、歯先曲面の両端の各々には、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面と、が順に接続され、かつ、歯先曲面と、瞬間中心なしエンベロープ歯面と、平面と、歯底曲面とのうちの隣接する両者が接しており、前記歯先曲面は、外側に凸な滑らかな曲面であり、前記歯底曲面は、凹んだ滑らかな曲面であってもよい。
【0008】
さらに、前記歯先曲面と前記歯底曲面との各々は、スプライン曲面で構成されていてもよい。
【0009】
さらに、前記ピン歯車と瞬間中心なしエンベロープ歯車との軸角Tは、177°≦T<180°であってもよい。
【0010】
さらに、前記楕円錐面の長軸と短軸との比は、1.3~2.5であってもよい。
【0011】
さらに、前記ピン歯車の歯たけは、前記ピン歯車の径方向に沿って外側から内側へ徐々に小さくなってもよい。
【0012】
さらに、前記ピン歯車の動作歯面の圧力角αは、40°-R≦α≦50°-Rを満たし、Rは、ピン歯車と瞬間中心なしエンベロープ歯車との摩擦角であってもよい。
【0013】
さらに、前記ピン歯車の歯先と歯底との間には、第1の基準円錐面が設けられ、前記第1の基準円錐面の軸線と前記ピン歯車の軸線とが重なり、第1の基準円錐面の円すい角がβであり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯先と歯底との間に、第2の基準円錐面が設けられ、前記第2の基準円錐面の軸線と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の軸線とが重なり、前記第2の基準円錐面の円すい角がWであり、前記ピン歯車と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車との軸角がTであり、前記ピン歯車の歯先円すい角がγであり、前記ピン歯車の歯底円すい角がPであり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯先円すい角がKであり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯底円すい角がLであり、β、W、T、γ、K、Lは、89°≦β≦91°、W=T-β、β+0.3°≦γ≦β+2.1°、β-2.9°≦P≦β-0.5°、W+0.3°≦K≦W+2.3°、W-3.1°≦L≦W-0.6°を満たしてもよい。
【0014】
さらに、本発明の第2の態様は、ケースと、前記ケース内に回転可能に設けられる減速機出力軸と、第1の態様に記載の歯車対であって、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車が前記ケース内に固設されたか、又は、前記ケースと一体成形された歯車対と、内輪、外輪、及び内輪と外輪との間に接続された環状弾性変形体を有し、その内輪には第1の接続部が設けられ、その外輪には第2の接続部が設けられ、前記第1の接続部が前記減速機出力軸に固定接続され、前記第2の接続部が前記ピン歯車に固定接続され、前記内輪と前記減速機出力軸とが同軸に設けられ、前記外輪と前記ピン歯車とが同軸に設けられる環状弾性膜と、前記ケース内に設けられており、前記ピン歯車を章動運動するように駆動し、前記ピン歯車の歯を前記瞬間中心なしエンベロープ歯車の歯に転動させ、かつ、ピン歯車の章動運動に適応するように前記環状弾性変形体に変形を発生させるための章動発生機構と、を含む章動減速機を開示している。
【0015】
さらに、前記ケース内に回転可能に設けられる減速機の入力軸をさらに含み、前記章動発生機構は、前記減速機の入力軸に転設され、一方の側面が斜面であり、他方の側面がその軸線に垂直であるスワッシュプレートと、前記スワッシュプレートを回転するように駆動する駆動機構と、前記スワッシュプレートの両側に設けられる平面密集玉軸受と、を含み、前記ケースの内表面には、前記減速機の入力軸の径方向に沿って凸に伸びる環状ボスが形成されており、前記環状ボスの一方の側面が前記平面密集玉軸受の玉に貼り合わせられ、かつ、前記環状ボスの一方の側面が前記減速機の入力軸に垂直であり、前記環状ボスの端面と、前記ピン歯車の背面と、前記スワッシュプレートの両側面とが前記平面密集玉軸受の軌道となってもよい。
【0016】
さらに、前記駆動機構は、モータであり、前記モータの出力軸は、前記スワッシュプレートに固定接続され、前記モータの出力軸は、前記減速機の入力軸として、前記スワッシュプレートを回転するように駆動してもよい。
【0017】
さらに、前記ケースは、前記モータのケースとして、前記モータの固定子は、前記ケース内に嵌め込まれ、前記モータの回転子は、前記ケース内に転設される。
【0018】
さらに選択的に、前記歯車対は、2対であり、前記章動発生機構の両側に対称的に設けられてもよい。
【0019】
さらに、前記章動発生機構は、前記ケース内の前記減速機出力軸に転設され、その両側に対称な斜面が設けられ、駆動機構により回転するように駆動されるスワッシュプレートと、平面密集玉軸受と、を含み、前記スワッシュプレートの両側の各々に前記平面密集玉軸受が設けられ、前記スワッシュプレートの両側面と、2対の前記歯車対のうちそれぞれの前記ピン歯車の背面と、が前記平面密集玉軸受の軌道となり、2対の前記ピン歯車対のうちの2つの前記ピン歯車の歯数は等しくてもよい。
【0020】
さらに、前記スワッシュプレート上の斜面と前記スワッシュプレートの軸線とに挟まれた角はCであり、前記ピン歯車と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車との軸角はTであり、C=T-90°であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
有益の効果は以下のとおりである。本発明において、ピン歯車の動作歯面が楕円錐面シートとして設けられ、端面サイクロイドピンホイール対と比較して、ピン歯車の動作歯面の弧長を効果的に増加させることにより、同様の歯車直径、伝達比及び出力荷重の場合、ピンホイールの動作歯面の弧長を60%程度増加でき、ピン歯車の歯面の局所的な摩耗を低減し、耐用年数を延長することができる。同時に、端面サイクロイドピンホイール対と比較して、同様の歯車直径、伝達比及び出力荷重の場合、歯面の接触応力を23%程度低下させることができ、又は同様の接触応力の場合、耐荷能力を約30%向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付図面を参照しながら、それに例示された実施例について詳細に説明することにより、本発明が開示する上記と他の目的、特徴及び利点はさらに明確になる。以下で説明される図面は、本発明が開示するいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を必要とせずに、これらの図面から他の図面を得ることができる。
図1】本発明の歯車対におけるピン歯車の実施例の斜視図を示す。
図2図1におけるピン歯車の1つの歯形の実施例の斜視図である。
図3図2におけるピン歯車の1つの歯形の実施例の正面図である。
図4図3の左側面図である。
図5】本発明の歯車対における瞬間中心なしエンベロープ歯車の1つの歯形の実施例の正面図を示す。
図6図5の左側面図である。
図7】本発明の歯車対の実施例の全体の斜視図を示す。
図8図7の分解図である。
図9図7の歯車対の実施例の正面図である。
図10】本発明の歯車対の実施例が章動減速機の第1の実施例に適用された全体の構成図を示す。
図11図10におけるスワッシュプレートの実施例の斜視図である。
図12図11における実施例の側面図である。
図13】本発明の歯車対の実施例が章動減速機の第2の実施例に適用される全体の構成図を示す。
図14図10及び図13の章動減速機の各実施例における平面密集玉軸受の実施例の斜視図を示す。
図15図13におけるスワッシュプレートの実施例の斜視図を示す。
図16図15におけるスワッシュプレートの実施例の側面図である。
図17図10及び図13の章動減速機の各実施例における環状弾性膜の実施例の模式図を示す。
図18】本発明の章動減速機の実施例がDELTAロボットのスイングアームに適用される模式図を示す。
図19】本発明の章動減速機の実施例がSCARAロボットアームに適用される模式図を示す。 なお、図4及び図6における破線は、仮想線であり、本発明の実施例における歯面の構成を説明するために引かれたものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明し、ここで、説明された実施例は本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではないことは明らかである。創造的の労働をしない前提に、本発明における実施例に基づいて当業者が得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0024】
本発明の実施例において使用される用語は、特定の実施例を説明するためのみを目的として、本発明を限定することを意図していない。文脈から他の意味が明確に示されていない限り、本発明の実施例及び特許請求の範囲において使用される単数形式の「1種」、「前記」及び「該」は、複数形式を含むことを意図し、「複数種」は、通常少なくとも2種を含むが、少なくとも1種を含む場合もある。
【0025】
本明細書中に使用される「及び/又は」という用語について、関連対象の関連関係を説明するものだけであり、3種の関係が存在可能であることを示しており、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する場合、AとBが同時に存在する場合及びBが単独で存在する場合という3種の場合を示し得ることが理解されるべきである。また、本明細書中に、「/」という符号は、通常、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0026】
また、「含む」という用語又はその他のいずれかの変形について説明すべきであることは、非排他的な「含む」を包括することによって、一連の要素を含む商品やシステムが、それらの要素を含むだけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含まれるように、又は、このような商品又はシステムに固有された要素も含まれるようにすることを意図している。「1つの…を含む」という文によって限定された要素は、さらなる制限がない限り、前記要素を含む商品又はシステムにおいて、別の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0027】
従来の減速機において、サイクロイドピンホイール対を採用することにより、ピンホイールの歯面での有効な動作弧長が非常に短く、長時間動作に局所的な摩耗が発生しやすくなる問題が存在し、さらに、同時に作業する歯数が比較的多いが、ピンホイールとサイクロイドピンホイール歯車の歯面との間の相対曲率が大きいため、歯面の接触応力が大きくなる問題も存在する。
【0028】
本発明は、ピン歯車と瞬間中心なしエンベロープ歯車とが噛み合う動作歯面として、楕円錐面シートを採用することにより、ピン歯車の動作歯面の長さを増加させ、歯面の接触応力を減少させ、歯の耐荷能力を向上させるとともに、ピンホイールの動作歯面の摩耗を低減している。
【0029】
本発明における技術案をさらに説明するために、図1図18を参照し、以下の具体的な実施例を提供する。
【0030】
(実施例1)
本実施例は、図1図8に示すように、前記歯車対はピン歯車400と、瞬間中心なしエンベロープ歯車500と、のそれぞれの歯が噛み合いで形成された歯車対であって、前記ピン歯車400の動作歯面は、外側に凸な円錐楕円錐面シートbで構成され、かつ、前記楕円錐面シートbの同一横断面における最高点と最低点との距離は、前記ピン歯車400の径方向に従って、外側から内側へ円錐面母線に沿って徐々に小さくなり、前記瞬間中心なしエンベロープ歯車500の動作歯面は、前記ピン歯車400が章動運動過程中で生成された瞬間中心なしエンベロープ面であり、前記ピン歯車400の歯数は、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯数より1つ多い歯車対を提供している。
【0031】
本実施例における楕円錐面シートとは、完全な楕円錐面から切り取られた楕円錐面の一部のことを意味する。
【0032】
本実施例におけるピン歯車400の歯と、及び瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯とは、それぞれの歯付きディスクの側の端面に形成され、それぞれの歯はいずれもそれぞれの歯付きディスクの径方向に延び、それぞれの歯の歯厚は、歯先から歯底まで徐々に大きくなり、歯幅は、歯内円における端面と、歯外における円端面との距離である。
【0033】
図4及び図6に示すように、ピン歯車400の歯面は、歯先曲面aと、楕円錐面シートbと、平面cと、歯底曲面dとで構成され、歯先曲面aの両端の各々には、楕円錐面シートbと、平面cと、歯底曲面dと、が順に接続され、かつ、歯先曲面aと、楕円錐面シートbと、平面cと、歯底曲面dとのうちの隣接する両者が接しており、前記歯先曲面aは、外側に凸な滑らかな曲面であり、前記歯底曲面dは、凹んだ滑らかな曲面であり、ピン歯車400の歯面と、瞬間中心なしエンベロープ歯車500とのそれぞれの歯先曲面aは、外側に凸な滑らかな曲面であり、それぞれの底曲面dは、凹んだ滑らかな曲面である。ピン歯車400の正逆回転時の耐荷能力を満たすことができる。好ましくは、ピン歯車400及び瞬間中心なしエンベロープ歯車500のそれぞれの歯先曲面a及び歯底曲面dは、スプライン曲面で構成されている。また、ピン歯車400は、上歯先曲面aの両端の楕円錐面シートb、平面c及び歯底曲面dは互いに対称的であってもよい。瞬間中心なしエンベロープ歯車500は、上歯先曲面aの瞬間中心なしエンベロープ歯面eと、平面cと、歯底曲面dとは、互いに対称的である。
【0034】
従来のピン歯車400の設計では、通常、ピッチ円錐面の概念に基づいて設計されている。いわゆるピッチ円錐面とは、2つの歯車の相対運動であり、運動学的に言えば、2つの歯車上のピッチ円錐面の純転がりに相当する。この2つのピッチ円錐面の共通接線は、瞬間中心線と呼ばれ、すなわち、2つの歯車のこの瞬間の相対運動は、瞬間中心線の周りに回転することに相当する。従来の設計方法では、通常、瞬間中心線は動作歯たけの中央部の近傍に配置されている。一方、本実施例において、歯形設計の際に、瞬間中心線を考慮する必要が完全になく、すなわち歯形の有効高さ内には、瞬間中心線が徹底的に存在しないため、瞬間中心なしエンベロープ歯面と呼ばれる。この設計方法は、基準円錐面を中心として歯形を配置するものである。2つの歯車の基準円錐面がいずれも内テーパ面でなければ、内錐形歯車を避けることができ、端面が噛み合う歯車対を実現することにより、歯車対の軸方向における寸法を縮小し、歯車対の動力密度を向上させる。
【0035】
本実施例では、従来の章動減速装置に用いられるインボリュート歯車対及び比較的に新たなサイクロイドピンホイール対の代わりに、楕円錐面シートbを動作歯面とすることにより、インボリュート端面歯形伝達を用いる時に発生する様々な干渉問題(歯先干渉、歯形重なり干渉など)を解決するだけでなく、端面サイクロイドピンホイールの副歯面の間の相対曲率が大きく、ピンホイールの有効動作歯面の長さが短く、摩耗しやすいなどの問題及び欠陥を解決している。
【0036】
1歯差の端面が噛み合う歯車対を採用することにより、エンベロープ歯車の1つの歯が完全に離脱した状態、すなわち歯先が歯先に当接する状態から、この歯が完全にピン歯車400の歯溝に入る状態に移行し、エンベロープ歯車及びピン歯車400はいずれもそれぞれの軸線の周りに180°に近い回転角まで回転する必要がある。一方、2歯差を採用すれば、この過程は90°の回転角の範囲内に完了される。最も深い進入点から正負90°の範囲外では、2つの歯車が完全に離脱した状態にあり、すなわち2つの歯車の歯先円が完全に分離された状態にあり、噛み合う可能性がないものである。そのため、本発明は、1歯差の端面で噛み合う歯車対を採用することにより、同じ章動歯数で得られた同時動作歯数は2歯差歯車対の約2倍である。
【0037】
歯車対の軸角は、歯車対の歯たけに基づいて決定され、すなわち動作歯面が完全に噛み合うことを保証するだけでなく、2つの歯車の歯先が一周の回転過程において干渉しないことを保証する必要がある。そのため、軸角は、少なくとも、2つの歯車の歯高の和の半分を歯車対の母線長さで割った値の逆正接値の補角よりも小さい必要がる。実際の軸角は僅かに小さいことにより、非噛み合う領域の最小歯先の隙間を保証する。決定された歯形設計方法について、歯車対の歯たけ係数は基本的に一定であり、歯たけと母線との長さの比は、歯車対の歯数の増加に伴って線形的に減少するため、少歯数差歯車対は伝達比が大きいほど、軸角が180°に近くなる。本実施例におけるピン歯車400は、環状弾性膜103を出力機構とするが、具体的な構造は以下に詳細に説明する。ピン歯車400の歯数が少ないほど、軸角が小さくなるが、軸角が小さすぎると、出力機構である環状弾性膜103の応力及び歪みの状態に影響を与えるので、章動運動を実現するために軸角が180°より小さい必要がある。それに対し、歯数の上限は、減速機構の伝達効率の制限を受けるため、伝達比が大きいほど、効率が低くなる。そのため、本実施例に記載の前記ピン歯車400と瞬間中心なしエンベロープ歯車500との軸角Tは、177°≦T<180°に設定される。
【0038】
好ましくは、前記楕円錐面bの長軸と短軸との比が1.3~2.5であり、この比が小さすぎると、歯面間の接触応力が上昇し、歯面の動作長さを増加させる作用が明らかではないが、この比が大きすぎると、歯面が干渉し、同時に動作する歯数を減少させる。
【0039】
好ましくは、ピン歯車400の歯たけは、ピン歯車400の径方向に沿って外側から内側へ徐々に小さくなることにより、噛み合う時に干渉することを避ける。
【0040】
好ましくは、ピン歯車400の歯先と歯底との間には、軸線とピン歯車400の軸線と重なる第1の基準円錐面が設けられ、第1の基準円錐面の円すい角がβであり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯先と歯底との間に、軸線と瞬間中心なしエンベロープ歯車500の軸線と重なる第2の基準円錐面が設けられ、第2の基準円錐面の円すい角がWであり、ピン歯車400と瞬間中心なしエンベロープ歯車500との軸角がTであり、ピン歯車400の歯先円すい角がγであり、ピン歯車400本の円すい角がPであり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯先円すい角がKであり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500本の円すい角がLであり、β、W、T、γ、K、Lは、89°≦β≦91°、W=T-β、β+0.3°≦γ≦β+2.1°、β-2.9°≦P≦β-0.5°、W+0.3°≦K≦W+2.3°、W-3.1°≦L≦W-0.6°を満たす。
【0041】
上記パラメータの最適化により、ピン歯車の動作歯面の長さを増加させ、歯面の接触応力を減少させ、歯の耐荷能力をさらに向上させることができる。
【0042】
第1の基準円錐面の円すい角は、第1の基準円錐面の母線と第1の基準円錐面の軸線との角であり、第2の基準円錐面の円すい角は、第2の基準円錐面の母線と第2の基準テーパ面の軸線との角である。ピン歯車400は、瞬間中心なしエンベロープ歯車500で章動運動する場合、第1の基準円錐面と第2の基準円錐面とは接する。
【0043】
ピン歯車400の基準面を強制的に近似平面に設定することにより、ピン歯車400と相手歯車との軸角を大きくすることができるため、弾性膜を出力機構として採用することを可能にし、同時に噛み合い歯数を最大限まで増加させることを可能にする。
【0044】
前記ピン歯車400の動作歯面の圧力角αは、40°-R≦α≦50°-Rを満たし、Rは、ピン歯車400と瞬間中心なしエンベロープ歯車500との摩擦角であることにより、摩擦損失を低減し、機械的効率を向上させることができる。修正された歯面摩擦係数に応じて動作歯面の圧力角範囲を決定することにより、減速機が可能な限り高い伝達効率及び合理的な軸受の耐用年数を得ることができる。歯面摩擦係数が0.08~0.1程度であれば、歯車対の伝達効率(軸受摩擦損失を計算せず)は、80%~83%程度に達することができる。
【0045】
本実施例には、以下のいくつかの異なるパラメータのピン歯車400及び瞬間中心なしエンベロープ歯車500が挙げられている。
【0046】
ピン歯車400の歯数は45であり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯数は44であり、歯車対の軸角は178.02726°であり、ピン歯車400の外円の直径は165mmであり、歯面の幅は25mmであり、基準円すい角は90°(設定値)であり、歯先円すい角は91.48813°であり、歯底円すい角は87.51994°であり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の基準円すい角は88.02726°(計算値)であり、歯先円すい角は90.38022°であり、歯底円すい角は86.41190°であってもよい。
【0047】
また、ピン歯車400の歯数は120であり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯数は119であり、歯車対の軸角は179.25997°であり、ピン歯車400の外円の直径は165mmであり、歯面の幅は25mmであり、基準円すい角は90°(設定値)であり、歯先円すい角は90.55853°であり、歯底円すい角は89.06907°であり。瞬間中心なしエンベロープ歯車500の基準円すい角は89.25997°(計算値)であり、歯先円すい角は90.14317°であり、歯底円すい角は88.65370°であってもよい。
【0048】
また、ピン歯車400の歯数は160であり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯数は159であり、歯車対の軸角は179.44496°であり、ピン歯車400の外円の直径は80mmであり、歯面の幅は12mmであり、基準円すい角は90°(設定値)であり、歯先円すい角は90.41893°であり、歯底円すい角は89.30179°であり、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の基準円すい角は89.44496°(計算値)であり、歯先円すい角は90.10740°であり、歯底円すい角は88.99022°であってもよい。
【0049】
本実施例の歯車対が、章動歯車対であり、ピン歯車動作歯面が楕円錐面シートであることにより、ピン歯車の動作歯面の弧長を増加させることができ、ピン歯車の歯面の局所的な摩耗を低減し、耐用年数を延長するため、章動減速機に適用されると、章動減速機の耐用年数を大幅に向上させることができるとともに、歯形パラメータ(基準円錐面、歯先円すい角、歯底円すい角等)等の最適化により、ピンホイールの動作歯面の弧長は円錐面シートをピンホイールの動作歯面とするサイクロイドピンホイール対に対して60%程度増加するため、ピン歯車の歯面の局所的な摩耗を顕著に低減し、耐用年数を延長することができる。
【0050】
(実施例2)
本実施例は図9図11図13図16に示すように、ケース300と、ケース300内に回転可能に設けられる減速機出力軸301と、実施例1に記載の歯車対であって、瞬間中心なしエンベロープ歯車500がケース300内に固設けられたか、又は、ケース300と一体成形された歯車対と、内輪101、外輪102及び内輪101と外輪102との間に接続された環状弾性変形体を有し、その内輪101には第1の接続部が設けられ、その外輪102には第2の接続部が設けられ、前記第1の接続部が前記減速機出力軸301に固定接続され、前記第2の接続部が前記ピン歯車400に固定接続され、前記内輪101と前記減速機出力軸301とが同軸に設けられ、前記外輪102と前記ピン歯車400とが同軸に設けられる環状弾性膜103と、前記ケース300内に設けられ、前記ピン歯車400を章動運動するように駆動し、前記ピン歯車400の歯を前記瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯を転動させ、かつ、ピン歯車400の章動運動に適応するように前記環状弾性変形体に変形を発生させるための章動発生機構と、を含む章動減速機を提供している。
【0051】
また、第1の接続部及び第2の接続部は、いずれもリーマであり、内輪101は、リーマボルトによって減速機出力軸301に固定接続され、外輪102は、リーマボルトによってピン歯車400に固定接続されてもよい。
【0052】
また、内輪101と外輪102はフランジを形成することにより、減速機出力軸301とピン歯車400をネジによって固定しやすくなってもよい。内輪101と減速機出力軸301とを同軸にし、外輪102とピン歯車400とを同軸にし、取り付け後に内輪101の軸線と外輪102の軸線は平行ではなく、角を呈して設けられ、すなわち環状弾性隔膜103は弾性変形を発生することにより、ピン歯車400が章動運動することに適応する。環状弾性隔膜103は予備引張成形を採用してもよい。好ましくは、前記環状弾性変形体は、一方の側に凸で、他方の側に凹む環状突起構造である。前記内輪101は、前記環状弾性変形体内の周辺に接しており、前記外輪102は前記環状弾性変形体の外周に接する。さらに、前記突起構造の凹面及び凸面は円弧面、スプライン曲面又は余弦曲面構造で形成される。環状弾性膜103を環状突起構造に設置し、ピン歯車400の力の作用を受けることにより、内輪101の軸線と外輪102の軸線との間に一定の角度の偏向が発生することで、その軸線が交差するが、円周方向にねじりが発生しないため、高い伝達精度を有するとともに、内輪101の軸線と外輪102の軸線との間の偏向は、径方向における力を受ける方向であり、環状突起構造は径方向力の方向を受ける方向は常に伸ばした状態を保持することにより、環状突起構造を平面に延伸する時に発生された曲げ応力及び歪みはほとんど無視することができるため、環状弾性膜103の径方向にける剛性を向上させるだけでなく、その弾性不安定の安全係数を向上させることができる。環状弾性膜103の取り付け過程で発生された引張変形量を補償するための事前引張伸び量は、環状弾性膜103の取付応力を顕著に低減することができる。適量の予備引張変形は、環状弾性膜103の径方向剛性をほとんど低下させないが、過大な予備引張変形量は、その径方向剛性を低下させ、さらに弾性不安定をもたらす。
【0053】
環状弾性膜103を採用することは、理論的運動誤差を生成せず、減速機出力軸301に伝達された回転角は理論的にはピン歯車400の自転回転角に厳密に等しく、かつ任意の回転角で、出力機構の剛性は一定であるため、出力回転角の変動誤差が発生しなく、さらに、ほとんどエネルギー損失がなく、余分な熱量を発生しなく、さらに、関節軸受の作用を発揮することにより、軸受を追加する必要がなく、バネ膜自体がピン歯車400の径方向力を負担し、かつピン歯車400の芯出し機能を実現するため、伝達に関節軸受を採用することに比べて、構造をよりコンパクトにし、減速機の内部空間を縮小することにより、同じトルクを出力する場合に減速機の体積をより小さくすることができ、適用場面がより広くなる。
【0054】
さらに、本実施例の章動減速機は、減速機の入力軸716をさらに含み、減速機の入力軸716はケース300内に回転可能に設けられる。本実施例の章動発生機構は、スワッシュプレート600が減速機の入力軸716に回転可能に設けられ、スワッシュプレート600の一方の側面が斜面であり、他方の側面にスワッシュプレート600の軸線に垂直であるスワッシュプレート600と、スワッシュプレート600を回転するように駆動する駆動機構と、スワッシュプレート600の両側に設けられる平面密集玉軸受200と、を含む、ケース300の内表面には、減速機の入力軸716の径方向に沿って伸びる環状ボス300aが形成されており、環状ボス300aの一方の側面が平面密集玉軸受200の玉に貼り付けられ、かつ、環状ボス300aの一方の側面が減速機の入力軸716に垂直であり、環状ボス300aの端面と、ピン歯車400の背面と、スワッシュプレート600の両側面が平面密集玉軸受200の軌道となる。本実施例では、平面密集玉軸受200の軌道は平面軌道である。本実施例の一方の平面密集玉軸受200上の玉は、環状ボス300aの一方側の端面とスワッシュプレート600の一方の側面に貼り合わせ、他方の平面密集玉軸受200上の玉は、スワッシュプレート600の他の側面とピン歯車400の背面に貼り合わせる。本実施例では、平面を平面密集玉軸受200の軌道とすることが好ましい。スワッシュプレート600が回転する時、スワッシュプレート600の斜面601はピン歯車400の章動動作を駆動することにより、ピン歯車400を瞬間中心なしエンベロープ歯車500で転動さるが、ピン歯車400の歯数をi個とし、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯数をi-1個とすると、両者の減速比が1:iであり、大減速比の特徴を有する。
【0055】
14に示すように、本実施例における平面密集玉軸受は、複数セットの玉孔が設けられ、前記玉孔内に保持器の両側面から突出する玉202が設けられ、各セットの玉孔が半径の異なる楕円に応じて配列され、かつ各セットの玉孔が楕円を周りに設けられ、複数セットの前記玉孔が位置する楕円の長軸が同一直線にありかつそれが位置する楕円の中心が重なり、隣接する2セットの玉孔が交差して配列される、保持器201を含む。本実施例の任意の1セットの玉孔のうちの1つの玉孔と隣接する最も近い他のセットの玉孔との距離は、玉の直径の2倍より小さいことにより、玉を近接配列に確保することができる。なお、本実施例における玉は正円周に沿って配列されてもよく、本実施例では、好ましくは楕円配列を採用することにより、トラックが早期に疲労孔食を現れることを避けることができる。
【0056】
実施例1では、ピン歯車400の動作歯面の圧力角αは、40°-R≦α≦50°-Rを満たす。歯面動作圧力角の数値が理論上の歯車対効率最適化の圧力角より僅かに小さいことは、動作圧力角が大きいほど、平面密集玉軸受200上の玉が接触面に作用する正圧力及び摩擦損失も大きくなることにより、減速機全体の最適効率動作圧力角は歯車対のみを考慮する最適動作圧力角より僅かに小さいであるためであるが、スラスト玉軸受の負荷能力も既に臨界状態にある。
【0057】
さらに、駆動機構はモータ900であり、モータ900の出力軸は、前記スワッシュプレート600に固定接続され、モータ900の出力軸は、前記減速機の入力軸716として、前記スワッシュプレート600を回転するように駆動してもよい。前記ケース300は、前記モータ900のケースとし、モータ900は、固定子及び回転子がいずれもケース300内に設けられ、減速機の入力軸716(モータの出力軸)はスワッシュプレート600に固定接続され、モータ900は、前記ケース300内に回転可能に設けられていてもよい。さらに好ましくは、前記ケース300を前記モータ900のケースとして、前記モータ900の固定子は、前記ケース300内に嵌め込まれ、前記モータ900の回転子は、前記ケース300内に転設けられることにより、減速機の体積を縮小することができる。
【0058】
本実施例においてケース300は、第1のケースと第2のケースの2つの部分で構成されてもよく、第1のケースと第2のケースはボルトによって固定接続されて一体成形されてケース300を形成する。瞬間中心なしエンベロープ歯車500は、第1のケースと一体成形され、第1のケースに設けられ、第2のケースはモータ900のケースとして、固定子は、第2のケースに嵌め込まれ、モータ900の回転子は、第2のケースに回転可能に設けられて固定子と嵌合し、モータ900軸は軸受保持器、スワッシュプレート600の軸線と同軸に設けられる。減速機の内部構造を簡略化することができることにより、減速機をよりコンパクトにし、従来の減速機の出力トルクと同じトルクで、体積がより小さいものである。
【0059】
さらに好ましくは、前記スワッシュプレート600上の斜面601と前記スワッシュプレート600の軸線との角がCであり、前記ピン歯車400と前記瞬間中心なしエンベロープ歯車500との軸角がTであり、C=T-90°であることより、ピン歯車400が軸角で章動動作を実現することを満たす。
【0060】
モータ900の軸によって章動スワッシュプレート600が回転するように駆動することにより、ピン歯車400が平面密集玉軸受200で章動運動し、ピン歯車400が瞬間中心なしエンベロープ歯車500で転動し、ピン歯車400が章動運動する中に、環状弾性膜103が変形するとともに、ピン歯車400のトルクを減速機出力軸301に伝達することにより、動力の出力を実現するため、機械的効率が高いだけでなく、同時に環状弾性膜103を採用することにより、減速機の機構をよりコンパクトにすることができるため、減速機を増加させる場合に、空間が狭い場合に適用されることができる。
【0061】
理解を容易にするために、以下に、章動減速機の詳細な構造を挙げるが、本発明の保護範囲は限定されないものである。
【0062】
図8に示すように、ケース300は、モータ900のケースとして、ケース300の前端(モータ出力端)に瞬間中心なしエンベロープ歯車500が固定接続され、ケース300の内部にモータ固定子が嵌め込まれ、モータの回転子はモータ軸(減速機の入力軸716)に取り付けられて固定子と嵌合し、モータ軸(減速機の入力軸716)の前端は第1の軸受711によりケース300内に回転可能に取り付けられる。選択的に、第1の軸受711はアンギュラボール軸受であり、モータ軸の末端は、第2の軸受712によってモータエンドカバー714に回転接続され、選択的に、第2の軸受は深溝ボール軸受であり、モータエンドカバー714は、ケース300の後端に固定接続され、ケース300の内部にモータ軸の前端位置に環状突起300aが形成され、環状突起300aに平面密集玉軸受200の一方側に向かって第1の環状ボスが設けられ、平面密集玉軸受200の保持器201に位置決め孔が設けられ、位置決め孔が第1の環状ボスに嵌設されかつ第1の環状ボスと隙間嵌めされることにより、平面密集玉軸受200が径方向に位置決めすることができ、モータ軸716がスワッシュプレートの一方の側面に固定接続され、かつ該側面とスワッシュプレート600の軸線とは垂直であり、スワッシュプレート600の斜面601に第2の環状ボスが設けられ、平面密集玉軸受200は第2の環状ボスに設けられることにより、平面密集玉軸受200の径方向の位置決めを実現する。瞬間中心なしエンベロープ歯車500に、それと同軸である第1の軸受取付孔及び第2の軸受取付孔が設けられ、第1の軸受取付孔及び第2の軸受取付孔の取付方向が逆であり、減速機出力軸301に第1の軸受取付部及び第2の軸受取付部が設けられ、第1の軸受取付部が第3の軸受710により第1の軸受取付孔内に回転可能に設けられ、第2の軸受取付部は第4の軸受713により第2の軸受取付孔内に回転可能に設けられ、第4の軸受713の外輪が軸受エンドカバー715により突き当て位置決められており、軸受エンドカバー715は瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯裏に固定接続される。選択的に、第3の軸受710は円錐ころ軸受であり、第4の軸受713はRV-80E軸受であり、RV-80E軸受はRV-80E減速機上の軸受であり、減速機出力軸301のモータ軸716に向かう側の端面は、リーマボルトによって環状弾性膜103の内輪101に固定接続され、かつ内輪101は減速機出力軸301と同軸であり、環状弾性膜103の外輪102はヒンジ孔ボルトによりピン歯車400に固定接続され、外輪102とピン歯車400とは同軸であり、ピン歯車400の歯は瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯と噛み合い、かつピン歯車400と瞬間中心なしエンベロープ歯車500の軸角Tは180°より小さい。減速機出力軸301は第1の軸部及び出力フランジで構成されてもよく、減速機出力軸301に出力フランジが形成され、環状弾性膜の内輪101とヒンジ孔ボルトによって固定接続されてもよく、同時にリーマボルトも出力フランジを第1の軸部に固定接続することにより、第3の軸受710の内輪を固定することにより、減速機出力軸301の軸方向の位置決めを実現する。
【0063】
(実施例3)
本実施例は別の章動減速機を提供している。図12図16に示すように、前記章動減速機は、ケース300と、ケース300内に回転可能に設けられる減速機出力軸301と、瞬間中心なしエンベロープ歯車500がケース300内に固設けられるか、又は、ケース300と一体成形される実施例1に記載の歯車対と、その内輪101に第1の接続部が設けられ、その外輪102に第2の接続部が設けられ、第1の接続部が前記減速機出力軸301に固定接続され、第2の接続部がピン歯車400に固定接続される環状弾性膜103と、ケース300内に設けられ、ピン歯車400を章動運動するように駆動することにより、ピン歯車400の歯を瞬間中心なしエンベロープ歯車500の歯で転動する章動発生機構を含む。
【0064】
さらに、歯車対は2対であり、章動発生機構の両側に対称的に設けられる。
【0065】
さらに、章動発生機構は、ケース300内の前記減速機出力軸301に回転可能に設けられ、スワッシュプレート600の両側に対称な斜面601が設けられ、スワッシュプレート600が駆動機構により回転するように駆動されるスワッシュプレート600と、平面密集玉軸受200とを含み、スワッシュプレート600の両側の各々に平面密集玉軸受200が設けられ、スワッシュプレート600の両側面と、2対の前記歯車対のうちそれぞれの前記ピン歯車の背面が平面密集玉軸受200の軌道となり、2対の章動歯車対のうちの2つのピン歯車400の歯数が等しい。
【0066】
本実施例における平面密集玉軸受200の構成は、実施例における平面密集玉軸受200と同様の構成である。
【0067】
具体的には、減速機出力軸301は第1の減速機出力軸3011と第2の減速機出力軸3012の2つの部分で構成され、瞬間中心なしエンベロープ歯車500の裏部に軸受取付孔が設けられ、円錐ころ軸受は軸受取付孔内に設けられ、第1の減速機出力軸は円錐ころ軸受内輪に回転可能に取り付けられ、第2の減速機出力軸は円錐ころ軸受を介してケースに回転可能に取り付けられ、かつ第1の減速機出力軸と第2の減速機出力軸にいずれも円錐面が設けられ、かつ両者が円錐面によって嵌合されかつねじによって固定接続され、第1の減速機出力軸と第2の減速機出力軸はピン歯車章動運動中に発生された軸力を相殺し、相互にトルクを伝達し、同期同位相の出力運動を保持する。スワッシュプレートは軸受を介して減速機の出力軸に回転可能に設けられ、スワッシュプレートと減速機の出力軸に接続された軸受は調心軸受であってもよい。
【0068】
さらに、スワッシュプレート600上の斜面601とスワッシュプレート600の軸線との角はCであり、ピン歯車400と瞬間中心なしエンベロープ歯車500との軸角はTであり、C=T-90°である。
【0069】
本実施例の2対のピン歯車400は対称的に配置され、スワッシュプレート600の両側に配置され、スワッシュプレート600の両側に2つの対称傾斜面601が設けられる。スワッシュプレート600が回転する場合、2対のピン歯車400は同時に章動動作を行い、かつ2つのピン歯車400は同一の減速機出力軸301を用いてトルクを出力することにより、同じ出力電力で、平面密集玉軸受200とピン歯車400との間及び平面密集玉軸受200とスワッシュプレート600との間の摩擦損失を50%減少させ、その値は約伝達比で0.0005を乗算することにより得られた値である。単段変速比が160程度に達した章動減速機について、減少した摩擦損失は歯面摩擦損失の半分程度に近いため、減速装置の作業効率を顕著に向上させる。
【0070】
本実施例のスワッシュプレートの外周に歯車歯が設けられ、駆動機構は、モータ900及び歯車901を含み、歯車は、スワッシュプレートの歯車の歯と噛み合い、歯車はモータにより駆動されることにより、スワッシュプレートの回転を実現する。
【0071】
実施例1が提供する楕円形動作歯面の瞬間中心なしエンベロープ端面噛み合う歯車対、及び前記端面噛み合う歯車対による章動減速機(実施例及びで挙げられた章動減速機)は、各種の自動化設備に適用され、特に各種の直列ロボットアーム及び並列ロボットハンド、例えば、自動車組立ラインにおけるロボットアーム、手術ロボット、生産ラインにおける自動材料供給ロボットアーム、自動ラインにおけるSCARAロボットアーム等である。図19は、章動減速機HがSCARAロボットアームに適用される様子。
【0072】
二重斜面601のスワッシュプレート600と1つの減速器内に2セットのピン歯車400を鏡映対称に配置することにより、減速装置の動力密度を顕著に向上させ、軸受の摩擦損失を減少させ、減速装置の伝達効率をさらに向上させることができる。該レイアウトは特に二重出力端を有する減速機に適用される。図18は、章動減速機がDELTAロボットに適用される様子、及び直列ロボットアームにおける揺動関節である。
【0073】
以上、本開示の例示的な実施例について具体的に示して説明した。理解できるように、本開示は、ここで説明された詳細な構造、設置方式又は実現方法に限定されるものではなく、それに対し、本開示は、特許請求の範囲の要旨及び範囲内に含まれる種々の変更及び等価設定を包括することを意図する。
【符号の説明】
【0074】
101 内輪
102 外輪
103 環状弾性膜
200 平面密集玉軸受
201 保持器
202 玉
300 ケース
301 減速機出力軸
400 ピン歯車
401 ピン歯車の動作歯面
402 第2の環状軌道
500 瞬間中心なしエンベロープ歯車
501 瞬間中心なしエンベロープ歯車歯面の動作歯面
600 スワッシュプレート
601 斜面
602 第1の環状軌道
900 モータ
901 歯車
a 歯先曲面
b 楕円錐面シート
c 平面
d 歯底曲面
e 瞬間中心なしエンベロープ歯面
710 第3の軸受
711 第1の軸受
712 第2の軸受
713 第4の軸受
714 モータエンドカバー
715 軸受エンドカバー
716 減速機の入力軸
H 章動減速機
3011 第1の減速機出力軸
3012 第2の減速機出力軸
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