(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】車両ドア停止装置
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20240405BHJP
E05F 3/22 20060101ALI20240405BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20240405BHJP
E05C 17/36 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
E05F3/22 D
E05F5/00 C
E05C17/36
(21)【出願番号】P 2020076619
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】小島 侑也
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-046280(JP,A)
【文献】特開2000-062467(JP,A)
【文献】特開2001-132328(JP,A)
【文献】国際公開第2014/043780(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007019030(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/10
E05C 17/00 - 17/64
E05F 3/22 ; 5/00
F16H 1/00 - 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられるドア開口部を全閉する全閉位置及び前記ドア開口部を全開する全開位置の間で開閉動作する車両ドアを、前記全閉位置及び前記全開位置の間の位置で停止させる車両ドア停止装置であって、
前記車両ドアが開動作するときに第1回転方向に回転し、前記車両ドアが閉動作するときに前記第1回転方向の逆方向となる第2回転方向に回転するドラムと、
前記ドラムの前記第1回転方向の回転を制限する一方で前記第2回転方向の回転を許容するロック位置と、前記ドラムの前記第1回転方向の回転及び前記第2回転方向の回転を許容するアンロック位置と、に変位するロック部材と、
前記ドラムを前記第2回転方向に回転させた後に前記第1回転方向に回転させる動作を切換動作としたとき、
前記ロック部材が前記アンロック位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記ロック部材の位置を前記アンロック位置から前記ロック位置に切り換える一方、前記ロック部材が前記ロック位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記ロック部材の位置を前記ロック位置から切り換えない切換機構と、を備え
、
前記切換機構は、
前記切換動作に伴い、前記ドラムが前記第2回転方向に回転するときに第1方向に移動し、前記ドラムが前記第1回転方向に回転するときに前記第1方向の逆方向となる第2方向に移動する移動体と、
周方向に並んで配置される第1係合部及び第2係合部を有し、軸方向が前記移動体の移動方向を向く状態で配置される筒体と、
前記筒体の前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する係合片を有し、前記筒体に対して前記軸方向に移動しつつ前記周方向に回転することにより、前記係合片の係合対象が前記第1係合部及び前記第2係合部の一方から他方に変化する回転子と、
前記回転子を前記第2方向に付勢する付勢部材と、を有し、
前記回転子は、前記切換動作において、前記移動体が前記第1方向に移動するときに前記移動体に押されて前記第1方向に移動する一方、前記移動体が前記第2方向に移動するときに前記付勢部材に付勢されて前記第2方向に復帰するものであり、前記第2方向に復帰するときに前記係合片が前記筒体の前記第1係合部に係合する場合、前記ロック部材を前記アンロック位置に留める前進位置に位置し、前記第2方向に復帰するときに前記係合片が前記筒体の前記第2係合部に係合する場合、前記ロック部材を前記ロック位置に留める後退位置に位置し、
前記切換機構は、前記回転子が前記前進位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記回転子の位置を前記前進位置から前記後退位置に切り換え、前記回転子が前記後退位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記回転子の位置を前記後退位置から切り換えない
車両ドア停止装置。
【請求項2】
前記回転子の前記係合片は、前記第2方向における先端にカム面を含み、
前記筒体は、前記回転子が前記第2方向に復帰するときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる案内面を有し、
前記移動体は、前記回転子を前記第1方向に押すときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる押圧面を有し、
前記案内面は、前記係合片を前記第1係合部に案内する第1案内面と、前記係合片を前記第2係合部に案内する第2案内面と、を含み、
前記押圧面は、前記回転子が前記前進位置に配置される状況下で前記移動体が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面を前記筒体の前記第2案内面と前記軸方向に対向させる第1押圧面と、前記回転子が前記後退位置に配置される状況下で前記移動体が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面を前記筒体の前記第2案内面と前記軸方向に対向させる第2押圧面と、を含む
請求項
1に記載の車両ドア停止装置。
【請求項3】
前記回転子の前記係合片は、前記第2方向における先端にカム面を含み、
前記筒体は、前記回転子が前記第2方向に復帰するときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる案内面と、前記第1係合部から前記第1方向に延びるとともに前記第1係合部に係合する前記回転子の回転を規制する第1規制面と、前記第2係合部から前記第1方向に延びるとともに前記第2係合部に係合する前記回転子の回転を規制する第2規制面と、を有し、
前記案内面は、前記係合片を前記第1係合部に案内する第1案内面と、前記係合片を前記第2係合部に案内する第2案内面と、を含み、
前記第1規制面は、前記切換動作に伴って前記回転子が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面が前記第2案内面と前記軸方向に対向するように前記回転子が回転することを許容し、
前記第2規制面は、前記第1規制面よりも前記第1方向に長く延び、前記切換動作に伴って前記回転子が前記第1方向に移動するときに、前記回転子が回転することを規制する
請求項
1に記載の車両ドア停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドア停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両後部に開口部が設けられる車体と、開口部を全開する全開位置及び開口部を全閉する全閉位置の間で変位するバックドアと、バックドアを全閉位置及び全開位置の間の任意の中間位置で停止させる開閉調節装置と、を備える車両が開示されている。開閉調節装置は、停止操作及び停止解除操作を行うための操作部材と、バックドアを開閉可能に保持する調節部と、を有する。調節部は、操作部材の停止操作に伴って任意の中間位置からバックドアが開方向に変位しないようにロックしたり、操作部材の停止解除操作に伴ってバックドアのロックを解除したりする。
【0003】
こうして、車両の後方に障害物が存在するなどの理由により、バックドアを全開位置まで開動作できない状況下において、ユーザは、障害物の手前の位置でバックドアを停止させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような開閉調節装置は、バックドアの車両幅方向における一端部と車体の車両幅方向における一端部とを連結するように設置される。このため、開閉調節装置の操作部材は、バックドアを開操作するユーザにとって、必ずしも操作しやすい位置にあるとはいえない。本発明の目的は、ユーザが車両ドアを任意の位置で停止させるための操作を行いやすい車両用ドア停止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両ドア停止装置は、車体に設けられるドア開口部を全閉する全閉位置及び前記ドア開口部を全開する全開位置の間で開閉動作する車両ドアを、前記全閉位置及び前記全開位置の間の位置で停止させる車両ドア停止装置であって、前記車両ドアが開動作するときに第1回転方向に回転し、前記車両ドアが閉動作するときに前記第1回転方向の逆方向となる第2回転方向に回転するドラムと、前記ドラムの前記第1回転方向の回転を制限する一方で前記第2回転方向の回転を許容するロック位置と、前記ドラムの前記第1回転方向の回転及び前記第2回転方向の回転を許容するアンロック位置と、に変位するロック部材と、前記ドラムを前記第2回転方向に回転させた後に前記第1回転方向に回転させる動作を切換動作としたとき、前記ロック部材が前記アンロック位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記ロック部材の位置を前記アンロック位置から前記ロック位置に切り換える一方、前記ロック部材が前記ロック位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記ロック部材の位置を前記ロック位置から切り換えない切換機構と、を備える。
【0007】
上記構成の車両ドア停止装置は、切換動作が行われる場合、ロック部材の位置をアンロック位置からロック位置に切り換えることで、車両ドアを任意の位置で停止させることができる。つまり、ユーザは、車両ドアを閉操作した後に車両ドアを開操作することにより、車両ドアを任意の位置で停止できる。このように、車両ドア停止装置は、ユーザが車両ドアを任意の位置で停止させるための操作を行いやすくできる。
【0008】
また、車両ドア停止装置は、一度、ロック部材の位置をロック位置に切り換えた後は、切換動作が再度行われても、ロック部材の位置をアンロック位置に切り換えない。このため、車両ドアに風が当たるなどの外乱が作用することにより、切換動作に相当する動作が行われたとしても、車両ドアがユーザの意図によらず動作しにくい。よって、車両ドア停止装置は、ユーザの利便性を高めることもできる。
【0009】
車両ドア停止装置において、前記切換機構は、前記切換動作に伴い、前記ドラムが前記第2回転方向に回転するときに第1方向に移動し、前記ドラムが前記第1回転方向に回転するときに前記第1方向の逆方向となる第2方向に移動する移動体と、周方向に並んで配置される第1係合部及び第2係合部を有し、軸方向が前記移動体の移動方向を向く状態で配置される筒体と、前記筒体の前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する係合片を有し、前記筒体に対して前記軸方向に移動しつつ前記周方向に回転することにより、前記係合片の係合対象が前記第1係合部及び前記第2係合部の一方から他方に変化する回転子と、前記回転子を前記第2方向に付勢する付勢部材と、を有し、前記回転子は、前記切換動作において、前記移動体が前記第1方向に移動するときに前記移動体に押されて前記第1方向に移動する一方、前記移動体が前記第2方向に移動するときに前記付勢部材に付勢されて前記第2方向に復帰するものであり、前記第2方向に復帰するときに前記係合片が前記筒体の前記第1係合部に係合する場合、前記ロック部材を前記アンロック位置に留める前進位置に位置し、前記第2方向に復帰するときに前記係合片が前記筒体の前記第2係合部に係合する場合、前記ロック部材を前記ロック位置に留める後退位置に位置し、前記切換機構は、前記回転子が前記前進位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記回転子の位置を前記前進位置から前記後退位置に切り換え、前記回転子が前記後退位置に配置される状況下において、前記切換動作が行われる場合、前記回転子の位置を前記後退位置から切り換えないことが好ましい。
【0010】
上記構成の車両ドア停止装置は、回転子の位置の切り換えにより、ロック部材の位置を切り換えることができる。
車両ドア停止装置において、前記回転子の前記係合片は、前記第2方向における先端にカム面を含み、前記筒体は、前記回転子が前記第2方向に復帰するときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる案内面を有し、前記移動体は、前記回転子を前記第1方向に押すときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる押圧面を有し、前記案内面は、前記係合片を前記第1係合部に案内する第1案内面と、前記係合片を前記第2係合部に案内する第2案内面と、を含み、前記押圧面は、前記回転子が前記前進位置に配置される状況下で前記移動体が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面を前記筒体の前記第2案内面と前記軸方向に対向させる第1押圧面と、前記回転子が前記後退位置に配置される状況下で前記移動体が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面を前記筒体の前記第2案内面と前記軸方向に対向させる第2押圧面と、を含むことが好ましい。
【0011】
上記構成の車両ドア停止装置は、回転子が前進位置及び後退位置の何れの位置に配置される場合でも、切換動作に伴い移動体が第1方向に移動すると、回転子の係合片のカム面が筒体の第2案内面と軸方向に対向する状態となる。このため、回転子は、第2方向に復帰する際に、係合片が第2係合部に案内される。つまり、回転子は、ロック部材をロック位置に留める後退位置に配置される。こうして、車両ドア停止装置は、回転子の動きを制限することにより、車両ドアを一度停止させた後、当該車両ドアがユーザの意図によらず動作することを抑制できる。
【0012】
車両ドア停止装置において、前記回転子の前記係合片は、前記第2方向における先端にカム面を含み、前記筒体は、前記回転子が前記第2方向に復帰するときに、前記係合片の前記カム面と摺動することで前記回転子を回転させる案内面と、前記第1係合部から前記第1方向に延びるとともに前記第1係合部に係合する前記回転子の回転を規制する第1規制面と、前記第2係合部から前記第1方向に延びるとともに前記第2係合部に係合する前記回転子の回転を規制する第2規制面と、を有し、前記案内面は、前記係合片を前記第1係合部に案内する第1案内面と、前記係合片を前記第2係合部に案内する第2案内面と、を含み、前記第1規制面は、前記切換動作に伴って前記回転子が前記第1方向に移動するときに、前記係合片の前記カム面が前記第2案内面と前記軸方向に対向するように前記回転子が回転することを許容し、前記第2規制面は、前記第1規制面よりも前記第1方向に長く延び、前記切換動作に伴って前記回転子が前記第1方向に移動するときに、前記回転子が回転することを規制することが好ましい。
【0013】
上記構成の車両ドア停止装置において、回転子の係合片が第1係合部に係合する場合、言い換えれば、回転子が前進位置に配置される場合、切換動作に伴い回転子が第1方向に移動すると、係合片のカム面が第2案内面と軸方向に対向するように回転子が回転する。このため、回転子が第2方向に復帰すると、係合片が第2係合部に案内される。つまり、回転子は、ロック部材をロック位置に留める後退位置に配置される。一方、回転子の係合片が第2係合部に係合する場合、言い換えれば、回転子が後退位置に配置される場合、切換動作に伴い回転子が第1方向に移動しても、回転子の回転が規制される。このため、回転子が第2方向に復帰すると、係合片が第2係合部に係合する。つまり、回転子は、ロック部材をロック位置に留める後退位置に配置される。こうして、車両ドア停止装置は、回転子の動きを制限することにより、車両ドアを一度停止させた後、当該車両ドアがユーザの意図によらず動作することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
車両用ドア停止装置は、ユーザが車両ドアを任意の位置で停止させるための操作を行いやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の停止装置を備える車両の概略構成を示す側面図。
【
図2】上記停止装置を正面から見たときの分解斜視図。
【
図3】上記停止装置を背面から見たときの分解斜視図。
【
図4】上記停止装置を正面から見たときの分解斜視図。
【
図5】上記停止装置を背面から見たときの分解斜視図。
【
図8】上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図9】上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図10】上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図11】上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図12】上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図13】バックドアが全閉位置に位置するときの上記停止装置の背面図。
【
図14】
図13からバックドアが僅かに開動作するときの上記停止装置の背面図。
【
図15】
図14からバックドアが僅かに開動作するときの上記停止装置の背面図。
【
図16】バックドアが中途位置に位置するときの上記停止装置の背面図。
【
図17】
図16からバックドアが僅かに閉動作するときの上記停止装置の背面図。
【
図18】
図17からバックドアが僅かに開動作するときの上記停止装置の背面図。
【
図19】バックドアが全閉位置の近傍に位置するときの上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図20】バックドアが全閉位置の近傍に位置するときの上記切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図22】第2実施形態の切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図23】第2実施形態の切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図24】第2実施形態の切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図25】第2実施形態の切換機構の作用を説明するための模式図。
【
図26】第2実施形態の切換機構の作用を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、車両ドア停止装置(以下、「停止装置」とも言う。)を備える車両の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、車両10は、後部にドア開口部11が設けられる車体12と、ドア開口部11を開閉する「車両ドア」の一例としてのバックドア20と、車体12とバックドア20との間に配置されるガススプリング30と、バックドア20を任意の位置で停止させる停止装置40と、を備える。
【0018】
ドア開口部11は、略矩形状をなし、車両後方に開口している。ドア開口部11は、ユーザが車両10の荷室から荷物を取り出したり、ユーザが車両10の荷室に荷物を積み込んだりするための開口部である。
【0019】
バックドア20は、ドア開口部11に対応する形状をなしている。バックドア20は、車両幅方向に延びる回動軸21を介して、ドア開口部11の上部に回動可能に支持されている。バックドア20は、回動軸21の軸線回りに回動することで、ドア開口部11を全開する「全開位置」及びドア開口部11を全閉する「全閉位置」の間で開閉動作する。また、バックドア20は、ユーザがバックドア20を開こうとする際にユーザに操作されるドアハンドル22を有する。
【0020】
ガススプリング30は、筒状のシリンダ31と、棒状のピストンロッド32と、を有する。ガススプリング30は、シリンダ31とピストンロッド32との間に封入された高圧ガスの反力でバックドア20を付勢する。ガススプリング30は、バックドア20が全閉位置に位置するときも、バックドア20が全開位置に位置するときも、バックドア20を開方向に付勢する。ガススプリング30の一端は、車体12に対して、車両幅方向に延びる軸線回りに回動可能に連結され、ガススプリング30の他端は、バックドア20に対して、車両幅方向に延びる軸線回りに回動可能に連結されている。
【0021】
バックドア20には、バックドア20の重量と、ガススプリング30の反力と、ユーザによるドアハンドル22の操作力と、が作用し得る。つまり、バックドア20には、バックドア20の重量に応じた第1のモーメントと、ガススプリング30の反力に応じた第2のモーメントと、ユーザの操作力に応じた第3のモーメントと、が作用し得る。
【0022】
ここで、第1のモーメントは、バックドア20の重量と、バックドア20の回動軸21からバックドア20の重心までの距離と、の積で表現されるモーメントである。第2のモーメントは、ガススプリング30の反力と、バックドア20の回動軸21からバックドア20とガススプリング30との連結位置までの距離と、の積で表現されるモーメントである。第3のモーメントは、ユーザの操作力と、バックドア20の回動軸21からドアハンドル22までの距離と、の積で表現されるモーメントである。
【0023】
ドアハンドル22の操作力は、バックドア20の開方向に作用する場合に正の値になり、バックドア20の閉方向に作用する場合に負の値になるとする。また、以降の説明では、第1のモーメントを「M1」で表現し、第2のモーメントを「M2」で表現し、第3のモーメントを「M3」で表現する。
【0024】
バックドア20において、「M1>M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の閉方向に作用するモーメントがバックドア20の開方向に作用するモーメントよりも大きい場合、バックドア20は閉動作する。また、「M1<M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の開方向に作用するモーメントがバックドア20の閉方向に作用するモーメントよりも大きい場合、バックドア20は開動作する。さらに、「M1=M2+M3」が成立する場合、言い換えれば、バックドア20の閉方向に作用するモーメントとバックドア20の開方向に作用するモーメントとが釣り合う場合、バックドア20は停止する。
【0025】
以降の説明では、ユーザがバックドア20を操作しない場合に、「M1=M2」が成立するときのバックドア20の位置を「中立位置」という。第1実施形態では、バックドア20が中立位置よりも全閉位置寄りに位置する場合、言い換えれば、バックドア20が中立位置及び全閉位置の間に位置する場合、バックドア20が閉動作しようとする。一方、バックドア20が中立位置よりも全開位置寄りに位置する場合、言い換えれば、バックドア20が中立位置及び全開位置の間に位置する場合、バックドア20が開動作しようとする。
【0026】
次に、停止装置40について説明する。
停止装置40は、ユーザのバックドア20の開閉操作に基づいて、全開位置及び全閉位置の間、詳しくは、全開位置及び中立位置の間の任意の位置でバックドア20を停止させる装置である。言い換えれば、停止装置40は、「M1<M2」が成立する範囲内でバックドア20を停止させる装置である。
【0027】
図2~
図5に示すように、停止装置40は、筐体100と、ドラムユニット200と、伝達機構300と、ロック機構400と、切換機構500と、キャンセル機構600と、を備える。
図2以降の一部の図面には、方向を示すX軸、Y軸及びZ軸を記載する。停止装置40は、車両10に搭載される場合、X軸が車両幅方向に延び、Y軸が車両前後方向に延び、Z軸が車両上下方向に延びる。
【0028】
筐体100について説明する。
図2及び
図3に示すように、筐体100は、平板状をなすベースプレート110と、ベースプレート110の板厚方向における一方側に設けられるケース120と、ベースプレート110の板厚方向における他方側に設けられるカバー130と、を備える。また、筐体100は、ベースプレート110とケース120とに支持される第1支軸141、第2支軸142及び第3支軸143を備える。
【0029】
ベースプレート110は、例えば金属板からなる。ベースプレート110には、ケース120及びカバー130を固定したり、第1支軸141、第2支軸142及び第3支軸143を支持したりするための孔及び突起が複数設けられる。ケース120は、ベースプレート110と同程度の大きさに形成され、カバー130は、ケース120よりも小さく形成されている。ケース120及びカバー130は、例えば、スナップフィットによりベースプレート110に取り付くように構成してもよいし、ボルトなどの締結部材によりベースプレート110に取り付くように構成してもよい。
【0030】
図3に示すように、ケース120は、ドラムユニット200のドラム210を収容するドラム収容部121と、伝達機構300のセクターギヤ340を収容するセクターギヤ収容部122と、切換機構500を収容する切換機構収容部123と、を有する。また、ドラム収容部121を区画する壁部は、ベースプレート110に向かって延びる第4支軸124を有する。セクターギヤ収容部122を区画する壁部は、第1支軸141の軸線回りに対向する第1壁部125及び第2壁部126を有する。切換機構収容部123を区画する壁部は、ケース120の長手方向に並ぶ第3壁部127、第4壁部128及び第5壁部129を有する。
【0031】
ドラムユニット200について説明する。
図4及び
図5に示すように、ドラムユニット200は、第1支軸141とともに回転するドラム210と、ドラム210に巻き掛けられるケーブル220と、を備える。また、
図3に示すように、ドラムユニット200は、ドラム210を付勢する第1スプリング230を備える。
【0032】
図4に示すように、ドラム210は、略円板状をなしている。ドラム210は、ケーブル220の巻き取りを案内する周溝211と、ケーブル220の第1端が挿入される挿入孔212と、周溝211と挿入孔212とを接続する接続溝213と、を有する。周溝211は、ドラム210の外周面に螺旋状に設けられている。挿入孔212は、ドラム210を軸方向に貫通している。接続溝213は、周溝211の基端と挿入孔212とを接続する。
【0033】
図4に示すように、ケーブル220の第1端は、ドラム210の挿入孔212に挿入された状態で固定される。挿入孔212から延びるケーブル220は、ドラム210の周溝211に巻き取られる。
図1に示すように、ドラム210から延びるケーブル220の第2端は、バックドア20に固定される。
図2及び
図3に示すように、ドラム210は、ベースプレート110とケース120との間に配置される。このとき、ドラム210は、ケース120のドラム収容部121に収容され、第1支軸141と一体回転可能に第1支軸141に支持される。
【0034】
図3に示すように、第1スプリング230は、いわゆる渦巻ばねである。第1スプリング230は、ベースプレート110において、ドラム210とは反対側に配置される。第1スプリング230の一端は、ベースプレート110を貫通する第1支軸141の先端に係止され、第1スプリング230の他端はベースプレート110に係止される。このとき、第1スプリング230は、ドラム210がケーブル220を巻き取る方向に回転するように、第1支軸141に初期荷重を付与する。また、第1スプリング230は、カバー130により覆われる。
【0035】
こうして、バックドア20が開動作する場合、開動作するバックドア20がケーブル220を牽引するため、ドラム210からケーブル220が繰り出される。このとき、第1スプリング230は、ドラム210の回転量、具体的には第1支軸141の回転量に応じて弾性変形する。一方、バックドア20が閉動作する場合、第1スプリング230の復元力によって第1支軸141とともにドラム210が回転するため、ドラム210がケーブル220を巻き取る。つまり、バックドア20が閉動作する場合であっても、ケーブル220に緩みが発生しない。
【0036】
以降の説明では、バックドア20が開動作する場合にドラム210が回転する方向を「第1回転方向R11」とし、バックドア20が閉動作する場合にドラム210が回転する方向を「第2回転方向R12」とする。第1回転方向R11は、第2回転方向R12の逆方向である。
【0037】
伝達機構300について説明する。
図4及び
図5に示すように、伝達機構300は、ドラム210と同一軸線上に配置されるドライブギヤ310と、ドライブギヤ310と噛み合うアイドルギヤ320と、アイドルギヤ320と噛み合うドリブンギヤ330と、を備える。また、伝達機構300は、ドリブンギヤ330と同一軸線上に配置されるセクターギヤ340と、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340の間に配置されるロータリダンパ350と、を備える。
【0038】
ドライブギヤ310は、第1支軸141と一体回転可能に第1支軸141に支持される。アイドルギヤ320は、第2支軸142と相対回転可能に第2支軸142に支持される。
図5に示すように、アイドルギヤ320は、アイドルギヤ320の軸方向に突出する係合突起321を有する。係合突起321は、略円柱状をなし、アイドルギヤ320のベースプレート110を向く側面から突出している。
図4及び
図5に示すように、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340は、ベースプレート110に回転可能に支持される第5支軸331及びケース120に回転可能に支持される第5支軸341をそれぞれ有する。セクターギヤ340は、ケース120のセクターギヤ収容部122に収容される。
【0039】
ドライブギヤ310、アイドルギヤ320及びドリブンギヤ330は円形のギヤであり、セクターギヤ340は扇形のギヤである。ドライブギヤ310、アイドルギヤ320及びドリブンギヤ330の中では、ドリブンギヤ330の歯数が最も少なく、アイドルギヤ320の歯数が最も多い。
【0040】
ロータリダンパ350は、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340の間で、所定値未満のトルクが伝達されることを許容し、所定値以上のトルクが伝達されることを制限する。つまり、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340は、一体的に回転することにあれば、相対的に回転することもある。この点で、ロータリダンパ350は、いわゆるトルクリミッタとして機能する。
【0041】
伝達機構300において、ドラム210が回転する場合には、ドライブギヤ310、アイドルギヤ320、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が回転する。以降の説明では、ドラム210と同一軸線状に配置されるドライブギヤ310の回転方向を第1回転方向R11及び第2回転方向R12とし、アイドルギヤ320の回転方向を第1回転方向R21及び第2回転方向R22とし、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340の回転方向を第1回転方向R31及び第2回転方向R32とする。
【0042】
ドラム210が第1回転方向R11に回転する場合、伝達機構300において、ドライブギヤ310が第1回転方向R11に回転し、アイドルギヤ320が第2回転方向R22に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が第1回転方向R31に回転する。一方、ドラム210が第2回転方向R12に回転する場合、伝達機構300において、ドライブギヤ310が第2回転方向R12に回転し、アイドルギヤ320が第1回転方向R21に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が第2回転方向R32に回転する。
【0043】
第1実施形態において、バックドア20が全閉位置及び全開位置の間で開閉動作する場合には、アイドルギヤ320が略1回転し、ドライブギヤ310及びドリブンギヤ330はアイドルギヤ320よりも多く回転する。一方、
図5に示すように、セクターギヤ340が回転可能な範囲は、セクターギヤ収容部122の第1壁部125及び第2壁部126の間をなす角度未満である。したがって、ドリブンギヤ330が回転可能な状態であって且つセクターギヤ340が回転不能な状態である場合、ロータリダンパ350により、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が相対的に回転する。
【0044】
ロック機構400について説明する。
図4及び
図5に示すように、ロック機構400は、ドラム210から伝達されるトルクによって回転するラチェットギヤ410と、ラチェットギヤ410の回転をロックするロック部材420と、を備える。
【0045】
ラチェットギヤ410は、通常の歯車と比較して、周方向に歯が傾いている。ラチェットギヤ410は、第1支軸141が挿通された状態で、ドラム210とドライブギヤ310との間に配置される。つまり、ラチェットギヤ410は、ドラム210とドライブギヤ310と同一軸線上に並んで配置される。このため、ラチェットギヤ410は、ドラム210と一体に第1回転方向R11及び第2回転方向R12に回転する。
【0046】
ロック部材420は、レバー状をなしている。ロック部材420は、先端部に係止爪421を有する。また、ロック部材420は、基端部を貫通する第1貫通孔422と、先端部を貫通する第2貫通孔423と、を有する。第1貫通孔422は、断面形状が略円形状であり、第2貫通孔423は、断面形状が略長円形状である。ロック部材420は、第1貫通孔422に第3支軸143が挿入されることにより、第3支軸143と相対回転可能に第3支軸143に支持される。
【0047】
ロック部材420は、ラチェットギヤ410に係止するロック位置と、ラチェットギヤ410に係止しないアンロック位置と、の間を第3支軸143の軸線回りに回転する。ロック部材420がロック位置に位置する場合、ラチェットギヤ410の第1回転方向R11の回転が制限され、ラチェットギヤ410の第2回転方向R12の回転が許容される。一方、ロック部材420がアンロック位置に位置する場合、ラチェットギヤ410の第1回転方向R11の回転及び第2回転方向R12の回転が許容される。
【0048】
切換機構500について説明する。
以降の説明では、
図6及び
図7に示すように、切換機構500の構成部品が連結される方向を「軸方向A」とし、切換機構500の軸方向Aにおける一方向を「第1方向A1」とし、第1方向A1の逆方向を「第2方向A2」とする。また、切換機構500の周方向Cにおける一方向を「第1周方向C1」とし、第1周方向C1の逆方向を「第2周方向C2」とする。
【0049】
図6及び
図7に示すように、切換機構500は、筒状をなす筒体510と、筒体510に対して軸方向Aに移動する移動体520と、筒体510に対して軸方向Aに移動するプッシュ体530と、筒体510に対して周方向Cに回転する回転子540と、を有する。また、切換機構500は、回転子540を第2方向A2に付勢する第3スプリング550と、ロック部材420と回転子540とを連結する連結体560と、を有する。
【0050】
筒体510の軸方向は、軸方向Aと一致し、筒体510の周方向は、周方向Cと一致する。筒体510は、移動体520の軸方向Aの移動をガイドする第1ガイド溝511と、プッシュ体530の軸方向Aの移動をガイドする第2ガイド溝512と、を有する。第1ガイド溝511及び第2ガイド溝512は、筒体510の第2方向A2の端部から第1方向A1に向かって延びる。
【0051】
筒体510は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜する第1案内面513及び第2案内面514と、軸方向Aに延びる第1規制面515及び第2規制面516と、を有する。また、筒体510は、第1規制面515の第2方向A2における端部に位置する第1係合部517及び第2規制面516の第2方向A2における端部に位置する第2係合部518を有する。
【0052】
第1案内面513及び第2案内面514の軸方向Aに対する傾きは等しく、第1規制面515及び第2規制面516の延びる方向は同方向である。一方、周方向Cにおいて、第1案内面513は第2案内面514よりも長く、軸方向Aにおいて、第1規制面515は第2規制面516よりも短い。また、第1方向A1において、第1案内面513及び第2規制面516で構成される頂部は、第2案内面514及び第1規制面515で構成される頂部と同じ高さに位置している。
【0053】
第1案内面513及び第2案内面514は、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられ、第1規制面515及び第2規制面516は、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられている。第1実施形態では、第1案内面513、第2案内面514、第1規制面515及び第2規制面516の各々の形成数は、「3」である。
【0054】
第1案内面513、第1規制面515、第2案内面514及び第2規制面516は、第1周方向C1において、記載の順に並んでいる。第1係合部517は、第1案内面513及び第1規制面515の境界部分であり、第2係合部518は、周方向Cにおいて第2案内面514及び第2規制面516の間で第2方向A2に延びる溝である。第1案内面513及び第2案内面514は、第1係合部517及び第2係合部518に向かってそれぞれ延び、第1規制面515及び第2規制面516は、第1係合部517及び第2係合部518からそれぞれ延びている。第2係合部518の底面は、第2案内面514と同程度の傾きを有する。
【0055】
移動体520は、伝達機構300のセクターギヤ340と噛み合うラック521と、略円筒状をなす筒状部522と、ラック521と筒状部522とを接続する連結部523と、を有する。筒状部522は、第2方向A2における端部から径方向における外方に延びる第1ガイド軸524と、筒状部522の第1方向A1における端面としての第1押圧面525及び第2押圧面526と、を有する。第1押圧面525は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜し、第2押圧面526は、第1周方向C1に進むに連れて第1方向A1に向かうように傾斜する。第1押圧面525及び第2押圧面526は、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられている。周方向Cにおいて、第1押圧面525の長さは、第2押圧面526の長さと等しい。第1実施形態では、第1押圧面525及び第2押圧面526の各々の形成数は、「3」である。
【0056】
プッシュ体530は、略筒状をなしている。プッシュ体530は、プッシュ体530の第2方向A2における端部から第1方向A1に延びる第3ガイド溝531を有する。また、プッシュ体530は、軸方向Aにおける中間部から径方向における外方に延びる第2ガイド軸532と、第2ガイド軸532の先端から延びるカム軸533と、プッシュ体530の第1方向A1における端面としての第3押圧面534と、を有する。第2ガイド軸532は略角柱状をなし、カム軸533は略円柱状をなしている。第3押圧面534は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜する。第3押圧面534は、周方向Cに並ぶように複数設けられている。第1実施形態では、第3押圧面534の形成数は、「3」である。
【0057】
回転子540は、軸方向Aに延びる軸体541と、軸体541から軸体541の径方向に放射状に延びる複数の係合片542と、を有する。軸体541は、第1方向A1における端部から第2方向A2に延びる係合孔543を有する。係合片542の第2方向A2における先端面は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうカム面544である。カム面544は、筒体510の第1案内面513及び第2案内面514と摺動する面であり、移動体520の第1押圧面525及び第2押圧面526と摺動する面であり、プッシュ体530の第3押圧面534と摺動する面である。
【0058】
連結体560は、円板状をなすフランジ561と、フランジ561から第1方向A1に延びる屈曲軸562と、フランジ561から第2方向A2に延びる係合軸563と、を有する。フランジ561は、例えば、コイルばねである第3スプリング550の端部を支持する部位となる。屈曲軸562は、略L字状に屈曲する。第3スプリング550は、「付勢部材」の一例である。
【0059】
そして、移動体520とプッシュ体530とが筒体510に対して第1方向A1に挿入され、回転子540と第3スプリング550と連結体560とが筒体510に対して第2方向A2に挿入されることで、切換機構500が構成される。移動体520とプッシュ体530とが筒体510に挿入される状態では、移動体520の第1ガイド軸524が筒体510の第1ガイド溝511及びプッシュ体530の第3ガイド溝531に収まり、プッシュ体530の第2ガイド軸532が筒体510の第2ガイド溝512に収まる。こうして、移動体520は、筒体510とプッシュ体530とに対し、周方向Cに回転不能且つ軸方向Aに移動可能となる。同様に、プッシュ体530は、筒体510に対し、周方向Cに回転不能且つ軸方向Aに移動可能となる。
【0060】
回転子540が筒体510に挿入される状態では、回転子540のカム面544が、筒体510の第1案内面513、第2案内面514及び第2係合部518の底面の何れかと軸方向Aに対向し、移動体520の第1押圧面525及び第2押圧面526の何れかと軸方向に対向し、プッシュ体530の第3押圧面534と軸方向に対向する。
【0061】
また、回転子540が第3スプリング550に付勢されることにより筒体510に係合する。詳しくは、回転子540の係合片542が筒体510の第1係合部517及び第2係合部518の一方に係合する。回転子540の係合片542が筒体510の第1係合部517及び第2係合部518の一方に係合する状況下では、筒体510の第1規制面515又は第2規制面516に係合片542が接触することにより、回転子540は第1周方向C1の回転が規制される。一方、回転子540が筒体510と係合しない状態、言い換えれば、回転子540が筒体510に対して第1方向A1に変位した状態では、回転子540の周方向Cの回転が許容される。
【0062】
連結体560が筒体510に挿入される状態では、連結体560の係合軸563が回転子540の係合孔543に挿入される。連結体560は、第3スプリング550により第2方向A2に付勢されることになるため、連結体560は回転子540を第2方向A2に常時押す状態となる。このため、回転子540が第1方向A1及び第2方向A2に移動する場合には、連結体560は回転子540に接したまま回転子540とともに移動する。
【0063】
図5に示すように、切換機構500は、ケース120の切換機構収容部123に収容される。このとき、筒体510は、第3壁部127及び第4壁部128の間に配置され、第1方向A1及び第2方向A2に移動不能となる。また、第3スプリング550は、連結体560のフランジ561と第3壁部127との間で圧縮される。こうして、第3スプリング550は、回転子540と連結体560とを第2方向A2に付勢する。また、連結体560の屈曲軸562は、ロック部材420の第2貫通孔423に挿入される。つまり、連結体560の屈曲軸562が軸方向Aに進退することにより、ロック部材420がロック位置及びアンロック位置の間で変位する。
【0064】
図2に示すように、移動体520のラック521は、伝達機構300のセクターギヤ340とともに、ラックアンドピニオン機構を構成する。このため、移動体520は、伝達機構300のセクターギヤ340の回転方向に応じて、第1方向A1に移動したり第2方向A2に移動したりする。詳しくは、バックドア20が開動作することでドラム210が第1回転方向R11に回転する場合には、移動体520が第2方向A2に移動し、バックドア20が閉動作することでドラム210が第2回転方向R12に回転する場合には、移動体520が第1方向A1に移動する。
【0065】
続いて、
図8~
図12を参照して、切換機構500の作用について説明する。
図8~
図12は、筒体510の一部構成と、移動体520の一部構成と、回転子540の一部構成と、を模式的に図示している。
【0066】
図8は、移動体520が第2方向A2に移動しているときの筒体510と移動体520と回転子540との位置関係を示している。
図8に示すように、回転子540は、第3スプリング550によって第2方向A2に付勢されるため、回転子540のカム面544は、筒体510の第1案内面513を第2方向A2に押す。筒体510の第1案内面513は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、筒体510の第1案内面513に沿って移動しようとする。その結果、回転子540の係合片542は、筒体510の第1規制面515に接触する。こうして、回転子540の係合片542は、第1案内面513に案内されることにより、筒体510の第1係合部517に係合する。
【0067】
以降の説明では、
図8に示す回転子540の位置を「前進位置」という。前進位置は、回転子540の係合片542が第1係合部517に係合することで、回転子540の姿勢が安定する位置の1つである。回転子540が前進位置に位置する場合、ロック部材420はアンロック位置に位置する。
【0068】
図9に実線で示すように、
図8に示す状態から移動体520が第1方向A1に移動すると、移動体520の第1押圧面525が回転子540のカム面544を第1方向A1に押す。移動体520の第1押圧面525が筒体510の第2案内面514よりも第1方向A1に移動すると、回転子540の係合片542が筒体510の第1案内面513及び第1規制面515に係合しなくなる。移動体520の第1押圧面525は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、移動体520の第1押圧面525に沿って移動しようとする。詳しくは、
図9に二点鎖線で示すように、回転子540が移動体520に対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が移動体520の第1押圧面525と摺動する。
【0069】
一方、移動体520の第1押圧面525と第1周方向C1に隣り合う第2押圧面526は、第1周方向C1に進むに連れて第1方向A1に向かうように傾斜するため、回転子540のカム面544は移動体520の第2押圧面526と摺動しない。その結果、回転子540の係合片542の先端が、移動体520の第1押圧面525及び当該第1押圧面525と第1周方向C1に隣り合う第2押圧面526の境界に留まる。
【0070】
以降の説明では、
図9に二点鎖線で示す回転子540の周方向Cにおける位置を「第1の位置」という。回転子540が第1の位置に位置する場合、軸方向Aにおいて、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514と軸方向Aに対向する。こうした点で、移動体520の第1押圧面525は、回転子540が前進位置に配置される状況下で、移動体520が第1方向A1に移動するとき、回転子540のカム面544を筒体510の第2案内面514と軸方向Aに対向させる。
【0071】
図10に実線で示すように、
図9に示す状態から移動体520が第2方向A2に移動すると、回転子540のカム面544が移動体520の第1押圧面525に接触しなくなる。つまり、移動体520の第1押圧面525が回転子540のカム面544を第1方向A1に押す状態が解消され、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514を押す状態となる。言い換えれば、第1方向A1に押されていた回転子540が第2方向A2に復帰しようとする。筒体510の第2案内面514は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、筒体510の第2案内面514に沿って移動しようとする。詳しくは、回転子540が移動体520に対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514と摺動する。
【0072】
筒体510の第2案内面514と当該第2案内面514の第1周方向C1に隣り合う第1案内面513との間には、第2係合部518が位置する。このため、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514と摺動し続けると、
図10に二点鎖線で示すように、回転子540の係合片542が筒体510の第2係合部518に係合する。つまり、回転子540の係合片542は、第2案内面514により第2係合部518に案内される。
【0073】
以降の説明では、
図10に示す回転子540の位置、すなわち、回転子540が前進位置よりも第2方向A2に移動した位置を「後退位置」という。後退位置は、回転子540の係合片542が第2係合部518に係合することで、回転子540の姿勢が安定する位置の1つである。回転子540が後退位置に位置する場合、ロック部材420はロック位置に位置する。
【0074】
図11に実線で示すように、
図10に示す状態から移動体520が第1方向A1に移動すると、移動体520の第2押圧面526が回転子540のカム面544を第1方向A1に押す。移動体520の第2押圧面526が筒体510の第1案内面513よりも第1方向A1に移動すると、回転子540が筒体510に係合しなくなる。移動体520の第2押圧面526は、第2周方向C2に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、移動体520の第2押圧面526に沿って移動しようとする。詳しくは、
図11に実線で示すように、回転子540が移動体520に対して第2周方向C2に回転するように、回転子540のカム面544が移動体520の第2押圧面526と摺動する。
【0075】
一方、移動体520の第2押圧面526と第2周方向C2に隣り合う第1押圧面525は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540のカム面544は移動体520の第1押圧面525と摺動しない。その結果、回転子540の係合片542の先端が移動体520の第2押圧面526及び当該第2押圧面526と第2周方向C2に隣り合う第1押圧面525の境界に留まる。言い換えれば、回転子540は
図9と同じく第1の位置に位置する。こうした点で、第2押圧面526は、回転子540が後退位置に配置される状況下で、移動体520が第1方向A1に移動するとき、回転子540のカム面544を筒体510の第2案内面514と軸方向Aに対向させる。
【0076】
図12に実線で示すように、
図11に示す状態から移動体520が第2方向A2に移動すると、回転子540のカム面544が移動体520の第1押圧面525に係合しなくなる。つまり、移動体520の第1押圧面525が回転子540のカム面544を第1方向A1に押す状態が解消され、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514を押す状態となる。言い換えれば、第1方向A1に押されていた回転子540が第2方向A2に復帰しようとする。
【0077】
すると、
図12に二点鎖線で示すように、回転子540が移動体520に対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514と摺動する。このため、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514と摺動し続けると、回転子540の係合片542が筒体510の第2係合部518に係合する。つまり、
図10に示す場合と同じく、回転子540が後退位置に位置する。
【0078】
図8~
図12に示すように、切換機構500は、回転子540が前進位置に位置する状況下では、移動体520が第1方向A1に移動した後に第2方向A2に移動すると、回転子540の位置を前進位置から後退位置に切り換える。つまり、切換機構500は、ロック部材420の位置をアンロック位置からロック位置に切り換える。一方、切換機構500は、回転子540が後退位置に位置する状況下では、移動体520が第1方向A1に移動した後に第2方向A2に移動しても、回転子540の位置を後退位置から前進位置に切り換えない。つまり、切換機構500は、ロック部材420の位置をロック位置からアンロック位置に切り換えない。
【0079】
なお、切換機構500において、移動体520は、ドラム210が第2回転方向R12に回転するときに第1方向A1に移動し、ドラム210が第1回転方向R11に回転するときに第2方向A2に移動する。このため、切換機構500は、ユーザがバックドア20を閉操作した後に開操作することで、移動体520が第1方向A1に移動した後に第2方向A2に移動する。したがって、切換機構500は、ユーザのバックドア20を閉め開けする操作に基づき、ロック部材420の位置をアンロック位置からロック位置に切り換えることができる。
【0080】
以降の説明では、切換機構500がロック部材420の位置を切り換えるのに必要なユーザの操作を「切換操作」ともいい、切換機構500がロック部材420の位置を切り換えるのに必要なドラム210の動作を「切換動作」ともいう。切換操作は、バックドア20を所定量だけ閉動作させた後にバックドア20を所定量だけ開動作させる操作であり、切換動作は、ドラム210を所定量だけ第2回転方向R12に回転させた後にドラム210を所定量だけ第1回転方向R11に回転させる動作である。
【0081】
キャンセル機構600について説明する。
図4及び
図5に示すように、キャンセル機構600は、正面視略L字状をなすキャンセルレバー610と、キャンセルレバー610を付勢する第4スプリング620と、を有する。
【0082】
キャンセルレバー610は、支持孔611が貫通形成される基部612と、基部612から支持孔611の径方向に延びる第1レバー613及び第2レバー614と、を有する。第1レバー613及び第2レバー614は、異なる方向に延び、第1レバー613及び第2レバー614の間をなす角度は略120°となっている。第2レバー614は、支持孔611と同じ方向に貫通する係止孔615及び長孔616を有する。第4スプリング620は、いわゆる引張コイルばねである。
【0083】
図5に示すように、キャンセルレバー610は、基部612の支持孔611にケース120の第4支軸124が挿通されることで、第4支軸124に回転可能に支持される。キャンセルレバー610が第4支軸124に支持される状態では、第1レバー613がアイドルギヤ320の係合突起321に接触可能となり、第2レバー614の長孔616に切換機構500のプッシュ体530のカム軸533が挿通される。また、第4スプリング620は、伸長された状態で、一端がキャンセルレバー610の係止孔615に係止され、他端がケース120の第4壁部128に係止される。
【0084】
次に、
図13~
図20を参照して、停止装置40の作用について説明する。
まず、任意の位置まで開動作させたバックドア20に対し、ユーザが切換操作を行うときの停止装置40の作用について説明する。
【0085】
図13は、バックドア20が全閉位置に位置するときの停止装置40の状態を示している。バックドア20が全閉位置に位置する場合、ドラム210は最も第2回転方向R12に回転し、アイドルギヤ320は最も第1回転方向R21に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340は最も第2回転方向R32に回転している。
【0086】
また、アイドルギヤ320の係合突起321と係合するキャンセルレバー610は、最も第2回転方向R42に回転した位置に位置する。キャンセルレバー610が最も第2回転方向R42に回転するとき、切換機構500のプッシュ体530は、カム軸533を介して、第1方向A1に最も押し上げられている。このため、切換機構500の回転子540は、その移動範囲において最も第1方向A1に移動し、ロック部材420は、係止爪421が最もラチェットギヤ410から離れている。
【0087】
図14は、ユーザがバックドア20を開操作することにより、バックドア20が全閉位置から僅かに開動作したときの停止装置40の状態を示している。
図14に示すように、バックドア20が全閉位置から開動作すると、バックドア20がケーブル220を牽引するため、ドラム210からケーブル220が繰り出される。つまり、ドラム210が第1回転方向R11に回転するため、アイドルギヤ320が第2回転方向R22に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が第1回転方向R31に回転する。
【0088】
アイドルギヤ320が第2回転方向R22に回転すると、アイドルギヤ320の係合突起321とキャンセルレバー610との係合関係が変化する。ただし、キャンセルレバー610におけるアイドルギヤ320の係合突起321との係合位置が僅かに変化するだけで、キャンセルレバー610の姿勢は略変化しない。
【0089】
また、セクターギヤ340が第1回転方向R31に回転すると、ラック521を有する切換機構500の移動体520が
図8に示すように第2方向A2に移動する。ところが、キャンセルレバー610の姿勢が変化しないため、切換機構500のプッシュ体530と回転子540とは、その移動範囲において最も第1方向A1に移動する位置に留まる。
【0090】
なお、セクターギヤ340は、移動体520がケース120の第5壁部129に接触するまで、第1回転方向R31に回転し、移動体520がケース120の第5壁部129に接触した後は、第1回転方向R31に回転できなくなる。このため、
図14に示すように、移動体520がケース120の第5壁部129に接触した後、ドリブンギヤ330が第1回転方向R31に回転しようとする場合、ドリブンギヤ330がセクターギヤ340に対して相対的に回転する。
【0091】
図15は、ユーザがバックドア20を開操作することにより、バックドア20が
図14に示す状態から僅かに開動作したときの停止装置40の状態を示している。
図15に示すように、バックドア20がさらに開動作すると、アイドルギヤ320の係合突起321とキャンセルレバー610の係合関係が変化する。詳しくは、キャンセルレバー610が第4スプリング620の復元力に基づき、第1回転方向R41に回転する。すると、切換機構500のプッシュ体530は、カム軸533を介して、第2方向A2に押し下げられる。このため、プッシュ体530が第2方向A2に移動する。
【0092】
図15に示すように、キャンセルレバー610が、最も第1回転方向R41に回転した位置に位置すると、プッシュ体530は、その移動範囲において最も第2方向A2に移動する。キャンセルレバー610が最も第1回転方向R41に回転するとき、プッシュ体530は、切換機構500の回転子540に接触不能となる。したがって、切換機構500の回転子540は、
図8に示すように、前進位置に位置する。なお、
図15に示す状態からキャンセルレバー610が第1回転方向R41に回転できなくなるのは、プッシュ体530がケース120の第4壁部128に接触することで、プッシュ体530が第2方向A2に移動できなくなるためである。また、ドリブンギヤ330が第1回転方向R31に回転する一方で、セクターギヤ340とプッシュ体530とが停止し続ける。
【0093】
図16は、ユーザがバックドア20を開操作することにより、バックドア20が中立位置及び全開位置の間の任意の位置(以下、「中途位置」ともいう。)まで開動作したときの状態を示している。
図16に示すように、バックドア20が中途位置まで開動作すると、
図15に示す場合よりも、ドラム210が第1回転方向R11にさらに回転することで、アイドルギヤ320が第2回転方向R22にさらに回転する。つまり、アイドルギヤ320の回転方向において、アイドルギヤ320の係合突起321がキャンセルレバー610から離れる。また、ドリブンギヤ330が第1回転方向R31に回転する一方で、セクターギヤ340とプッシュ体530とが停止し続ける。その後、ユーザが停止操作を行う場合、ユーザはバックドア20を中途位置から僅かに閉操作する。
【0094】
図17は、ユーザが停止操作を開始することにより、バックドア20が中途位置から僅かに閉動作したときの停止装置40の状態を示している。
図17に示すように、
図16に示す状態からバックドア20が僅かに閉動作すると、ケーブル220に弛みが発生するため、ドラム210がケーブル220を巻き取る。つまり、ドラム210が第2回転方向R12に回転するため、アイドルギヤ320が第1回転方向R21に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が第2回転方向R32に回転する。
【0095】
セクターギヤ340が第2回転方向R32に回転すると、ラック521を有する切換機構500の移動体520が第1方向A1に移動する。すると、
図9に実線及び二点鎖線で示すように、移動体520が回転子540を第1方向A1に押すことにより、回転子540が前進位置よりも第1方向A1に移動する。その結果、
図17に示すように、ロック部材420がアンロック位置よりも第1方向A1に変位する。
【0096】
図18は、ユーザが停止操作を完了させたときの停止装置40の状態であって、
図17に示す状態からバックドア20が僅かに開動作したときの停止装置40の状態を示している。このとき、ユーザは、バックドア20を開方向に操作したり、バックドア20から手を離したりすることで、バックドア20を開動作させればよい。バックドア20から手を離すだけでバックドア20が開動作するのは、バックドア20が中立位置よりも全開位置寄りに位置するためである。
【0097】
図18に示すように、
図17に示す状態からバックドア20が僅かに開動作すると、バックドア20がケーブル220を牽引するため、ドラム210からケーブル220が繰り出される。つまり、ドラム210が第1回転方向R11に回転するため、アイドルギヤ320が第2回転方向R22に回転し、ドリブンギヤ330及びセクターギヤ340が第1回転方向R31に回転する。セクターギヤ340が第1回転方向R31に回転すると、ラック521を有する切換機構500の移動体520が第2方向A2に移動する。すると、
図10に示すように、回転子540の位置が後退位置に切り換わる。その結果、
図18に示すように、ロック部材420の位置がロック位置に切り換わる。
【0098】
ロック部材420がロック位置に位置すると、ドラム210が第1回転方向R11に回転不能となる。つまり、バックドア20がドラム210からケーブル220を引き出すことができなくなり、バックドア20が開動作不能となる。こうして、停止装置40は、バックドア20を停止させる。
【0099】
図18に示す状態の停止装置40に対し、ユーザが再度、切換操作を行う場合、ドラム210が第2回転方向R12に回転した後に第1回転方向R21に回転するため、移動体520が第1方向A1に移動した後に第2方向A2に移動する。すると、
図11及び
図12に示すように、移動体520が回転子540を第1方向A1に押した後に移動体520が第2方向A2に移動するが、回転子540の位置は後退位置から前進位置に切り換わらない。つまり、ロック部材420の位置がロック位置からアンロック位置に切り換わらないため、ドラム210が第1回転方向R11に回転不能な状態が維持される。このため、バックドア20が開動作不能な状態が維持される。このように、一度、ユーザが切換操作を行うと、バックドア20を全閉位置の近傍まで閉動作させない限り、バックドア20を開動作させることが不可能となる。
【0100】
次に、バックドア20が閉動作するときの停止装置40の作用について説明する。
バックドア20の閉動作中には、ドラム210が第2回転方向R12に回転するため、アイドルギヤ320が第1回転方向R21に回転し、セクターギヤ340が第2回転方向R32に回転する。
図15に示すように、バックドア20が全閉位置の近傍まで閉動作すると、アイドルギヤ320の係合突起321がキャンセルレバー610に接触する。その後、
図13及び
図14に示すように、バックドア20がさらに閉動作すると、アイドルギヤ320の係合突起321に押されることで、キャンセルレバー610が第4スプリング620を伸長させつつ第2回転方向R42に回転する。
【0101】
キャンセルレバー610が第2回転方向R42に回転するとき、切換機構500のプッシュ体530は、カム軸533を介して、第1方向A1に押し上げられる。つまり、切換機構500のプッシュ体530が第1方向A1に移動する。
図13及び
図14に示すように、キャンセルレバー610が最も第2回転方向R42に回転すると、切換機構500のプッシュ体530が第1方向A1に最も移動した状態となる。その結果、切換機構500のプッシュ体530は、切換機構500の回転子540を第1方向A1に押す。
【0102】
ここで、
図19は、バックドア20が全閉位置まで閉動作される場合の切換機構500の状態を示している。
図19に二点鎖線で示すように、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作されることで、プッシュ体530の第3押圧面534が移動体520の第1押圧面525よりも第1方向A1に移動すると、プッシュ体530の第3押圧面534が回転子540のカム面544を第1方向A1に押す。すると、
図19に二点鎖線で示すように、回転子540がプッシュ体530に対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544がプッシュ体530の第3押圧面534と摺動する。
【0103】
その結果、回転子540は、周方向Cにおいて、
図19に実線で示す第1の位置から
図19に二点鎖線で示す「第2の位置」に移動する。詳しくは、回転子540は、軸方向Aにおいて、カム面544が筒体510の第2案内面514と対向する第1の位置から、カム面544が筒体510の第1案内面513と対向する第2の位置に移動する。
【0104】
図19に二点鎖線で示すように回転子540が第2の位置に位置する状態で、バックドア20が開動作する場合には、移動体520とプッシュ体530とが第2方向A2に移動する。すると、
図20に示すように、第1方向A1に押されていた回転子540が第2方向A2に復帰しようとすることで、回転子540のカム面544が筒体510の第2案内面514を押す状態となる。その結果、回転子540が移動体520に対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が筒体510の第1案内面513と摺動する。
図20に二点鎖線で示すように、回転子540の係合片542が第1規制面515に接触すると、回転子540の係合片542が筒体510の第1係合部517に係合する。こうして、回転子540は、
図20に二点鎖線で示す前進位置に移動する。言い換えれば、回転子540が後退位置に移動しない点で、停止装置40はバックドア20の開動作を停止しない。
【0105】
こうして、プッシュ体530は、バックドア20が全閉位置の付近まで閉動作される場合に、回転子540を第2の位置に移動させることで、回転子540の位置を初期化する。以降の説明では、プッシュ体530が回転子540の位置を初期化する機能を「初期化機能」ともいう。
【0106】
また、
図19に二点鎖線で示すように、プッシュ体530が回転子540を後退位置よりも第1方向A1に移動させる場合、すなわち、プッシュ体530の第3押圧面534が筒体510の第2規制面516よりも第1方向A1に位置する場合には、回転子540が後退位置に移動できなくなる。つまり、この場合には、停止装置40がバックドア20の開動作を停止できなくなる。
【0107】
こうして、プッシュ体530は、バックドア20が全閉位置の付近に位置する場合に、回転子540を後退位置に移動できなくすることで、ロック部材420によるドラム210の回転のロックを無効化する。以降の説明では、プッシュ体530がドラム210の回転のロックを無効化する機能を「無効化機能」ともいう。
【0108】
ここで、バックドア20が閉動作する状況下において、プッシュ体530がドラム210の回転のロックを無効化し始めるときのバックドア20の位置を「無効化位置」とし、プッシュ体530が切換機構500の回転子540の位置を初期化するときのバックドア20の位置を「初期化位置」とする。この場合、無効化位置及び初期化位置は、中立位置及び全閉位置の間の位置とすることが好ましい。
【0109】
第1実施形態の効果について説明する。
(1)停止装置40は、ユーザが切換操作を行う場合、ロック部材420の位置をアンロック位置からロック位置に切り換えることで、バックドア20を任意の位置で停止させることができる。つまり、ユーザは、バックドア20を閉操作した後にバックドア20を開操作することにより、バックドア20を任意の位置で停止できる。このように、停止装置40は、ユーザがバックドア20を任意の位置で停止させるための操作を行いやすくできる。
【0110】
また、停止装置40は、一度、ロック部材420の位置をロック位置に切り換えた後は、ユーザが切換操作を再度行っても、ロック部材420の位置をアンロック位置に切り換えない。このため、バックドア20に風が当たるなどの外乱が作用することにより、バックドア20が切換操作に相当する動作をしても、バックドア20がユーザの意図によらず開動作しにくい。よって、停止装置40は、ユーザの利便性を高めることもできる。
【0111】
(2)停止装置40は、回転子540が前進位置及び後退位置の何れの位置に配置される場合でも、切換操作に伴い移動体520が第1方向A1に移動すると、回転子540の係合片542のカム面544が筒体510の第2案内面514と軸方向Aに対向する状態となる。このため、回転子540は、切換操作に伴い第2方向A2に復帰する際に、係合片542が第2係合部518に案内される。つまり、回転子540は、ロック部材420をロック位置に留める後退位置に配置される。こうして、停止装置40は、回転子540の動きを制限することにより、バックドア20を一度停止させた後に当該バックドア20がユーザの意図によらず開動作することを抑制できる。
【0112】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る停止装置について説明する。第2実施形態に係る「停止装置」は、第1実施形態と比較して、「切換機構」の構成が主に異なる。
【0113】
図21に示すように、停止装置40Aの切換機構500Aは、筒体510Aと、移動体520Aと、プッシュ体530と、回転子540と、第3スプリング550と、連結体560と、を有する。
【0114】
筒体510Aは、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜する第1案内面513A及び第2案内面514と、軸方向Aに延びる第1規制面515及び第2規制面516Aと、を有する。
【0115】
第1案内面513Aの勾配は、第2案内面514の勾配よりも急勾配であり、周方向Cにおいて、第1案内面513Aは第2案内面514よりも長い。また、第2規制面516Aは、第1規制面515よりも第1方向A1に長く延びる。このため、第1案内面513A及び第2規制面516Aで構成される頂部は、第2案内面514及び第1規制面515で構成される頂部よりも、第1方向A1に位置している。
【0116】
第1案内面513A及び第2案内面514は、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられ、第1規制面515及び第2規制面516Aは、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられている。第2実施形態では、第1案内面513A、第2案内面514、第1規制面515及び第2規制面516Aの各々の形成数は、「3」である。
【0117】
第1案内面513A、第1規制面515、第2案内面514及び第2規制面516Aは、第1周方向C1において、記載の順に並んでいる。第1係合部517は、第1案内面513A及び第1規制面515の境界部分であり、第2係合部518は、周方向Cにおいて第2案内面514及び第2規制面516Aの間で第2方向A2に延びる溝である。言い換えれば、第1案内面513A及び第2案内面514は、第1係合部517及び第2係合部518に向かってそれぞれ延び、第1規制面515及び第2規制面516Aは、第1係合部517及び第2係合部518からそれぞれ延びている。
【0118】
移動体520Aは、ラック521と、筒状部522と、連結部523と、第1ガイド軸524と、第1押圧面525A及び第2押圧面526Aと、を有する。第1押圧面525Aは、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜し、第2押圧面526Aは、第1周方向C1に進むに連れて第1方向A1に向かうように傾斜する。第1押圧面525A及び第2押圧面526Aは、周方向Cに交互に並ぶように複数設けられている。周方向Cにおいて、第1押圧面525Aの長さは、第2押圧面526Aの長さと等しい。第2実施形態では、第1押圧面525A及び第2押圧面526Aの各々の形成数は、「6」である。
【0119】
そして、移動体520Aとプッシュ体530とが筒体510Aに対して第1方向A1に挿入され、回転子540と第3スプリング550と連結体560とが筒体510Aに対して第2方向A2に挿入されることで、切換機構500Aが構成される。
【0120】
移動体520Aとプッシュ体530とが筒体510Aに挿入される状態では、移動体520Aの第1ガイド軸524が筒体510Aの第1ガイド溝511及びプッシュ体530の第3ガイド溝531に収まり、プッシュ体530の第2ガイド軸532が筒体510Aの第2ガイド溝512に収まる。こうして、移動体520Aは、筒体510Aとプッシュ体530とに対し、周方向Cに回転不能且つ軸方向Aに移動可能となる。同様に、プッシュ体530は、筒体510Aに対し、周方向Cに回転不能且つ軸方向Aに移動可能となる。
【0121】
回転子540が筒体510Aに挿入される状態では、回転子540のカム面544が、筒体510Aの第1案内面513A、第2案内面514及び第2係合部518の底面の何れかと軸方向Aに対向し、移動体520Aの第1押圧面525A及び第2押圧面526Aの何れかと軸方向に対向し、プッシュ体530の第3押圧面534と軸方向に対向する。
【0122】
続いて、
図22~
図26を参照して、切換機構500Aの作用について説明する。
図22~
図26は、筒体510Aの一部構成と、移動体520Aの一部構成と、回転子540の一部構成と、を模式的に図示している。
【0123】
図22は、移動体520Aが第2方向A2に移動しているときの筒体510Aと移動体520Aと回転子540との位置関係を示している。
図22に示すように、回転子540は、第3スプリング550によって第2方向A2に付勢されるため、回転子540のカム面544は、筒体510Aの第1案内面513Aを第2方向A2に押す。筒体510Aの第1案内面513Aは、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、筒体510Aの第1案内面513Aに沿って移動しようとする。その結果、回転子540の係合片542は、筒体510Aの第1規制面515に接触し、筒体510Aの第1係合部517に係合する。つまり、回転子540は、前進位置に位置する。
【0124】
こうした点で、筒体510Aの第1案内面513Aは、回転子540が第2方向A2に復帰するときにカム面544と摺動することで回転子540を回転させ、係合片542を第1係合部517に案内する。また、筒体510Aの第1規制面515は、前進位置に位置する回転子540の第1周方向C1の回転を規制する。
【0125】
図23に実線で示すように、
図22に示す状態から移動体520Aが第1方向A1に移動すると、移動体520Aの第1押圧面525Aが回転子540のカム面544を第1方向A1に押す。移動体520Aの第1押圧面525Aが筒体510Aの第1案内面513Aよりも第1方向A1に移動すると、回転子540の係合片542が筒体510Aの第1案内面513A及び第1規制面515に係合しなくなる。移動体520Aの第1押圧面525Aは、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、移動体520Aの第1押圧面525Aに沿って移動しようとする。詳しくは、
図23に二点鎖線で示すように、回転子540が移動体520Aに対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が移動体520Aの第1押圧面525Aと摺動する。
【0126】
その結果、回転子540の係合片542の先端が、移動体520Aの第1押圧面525A及び当該第1押圧面525Aと第1周方向C1に隣り合う第2押圧面526Aの境界に留まる。つまり、回転子540は、第1の位置に位置する。
【0127】
こうした点で、第1規制面515は、回転子540が第1方向A1に移動するときに、言い換えれば、回転子540が移動体520Aに第1方向A1に押されるときに、係合片542のカム面544が筒体510Aの第2案内面514と軸方向Aに対向するまで回転子540が回転することを許容する。
【0128】
図24に実線で示すように、
図23に示す状態から移動体520Aが第2方向A2に移動すると、回転子540のカム面544が移動体520Aの第1押圧面525Aに接触しなくなる。つまり、第1方向A1に押されていた回転子540が第2方向A2に復帰し、回転子540のカム面544が筒体510Aの第2案内面514を押す状態となる。筒体510Aの第2案内面514は、第1周方向C1に進むに連れて第2方向A2に向かうように傾斜するため、回転子540の係合片542は、筒体510Aの第2案内面514に沿って移動しようとする。詳しくは、回転子540が移動体520Aに対して第1周方向C1に回転するように、回転子540のカム面544が筒体510Aの第2案内面514と摺動する。
【0129】
筒体510Aの第2案内面514と当該第2案内面514の第1周方向C1に隣り合う第1案内面513Aとの間には、第2係合部518が位置する。このため、回転子540のカム面544が筒体510Aの第2案内面514と摺動し続けると、
図24に二点鎖線で示すように、回転子540の係合片542が筒体510Aの第2係合部518に係合する。つまり、回転子540は、後退位置に位置し、回転子540の係合片542は、第2規制面516Aに接触する。
【0130】
こうした点で、筒体510Aの第2案内面514は、回転子540が第2方向A2に復帰するときにカム面544と摺動することで回転子540を回転させ、係合片542を第2係合部518に案内する。また、筒体510Aの第2規制面516Aは、後退位置に位置する回転子540の第1周方向C1の回転を規制する。
【0131】
図25に実線で示すように、
図24に示す状態から移動体520Aが第1方向A1に移動すると、移動体520Aの第1押圧面525Aが回転子540のカム面544を第1方向A1に押す。移動体520Aが第1方向A1に移動し終えても、回転子540の係合片542は、筒体510Aの第2規制面516Aに接触する状態が維持される。つまり、回転子540は、移動体520Aの第1押圧面525Aに沿って、第2周方向C2に回転しようとするが、第2周方向C2に回転することが規制される。
【0132】
こうした点で、第2規制面516Aは、回転子540が第1方向A1に移動するときに、言い換えれば、移動体520Aに回転子540が第1方向A1に押されるときに、回転子540が回転することを規制する。
【0133】
図26に実線で示すように、
図25に示す状態から移動体520Aが第2方向A2に移動すると、回転子540のカム面544が移動体520Aの第1押圧面525Aに係合しなくなる。つまり、第1方向A1に押されていた回転子540が第2方向A2に復帰する。ただし、回転子540の回転は、筒体510の第2規制面516Aに規制されているため、回転子540は第1周方向C1に回転することなく第2方向A2に変位する。つまり、回転子540の係合片542が筒体510Aの第2係合部518に係合し、回転子540が後退位置に位置する。
【0134】
図22~
図26に示すように、切換機構500Aは、回転子540が前進位置に位置する状況下では、ユーザの切換操作に伴い、回転子540の位置を前進位置から後退位置に切り換える。つまり、切換機構500Aは、ロック部材420の位置をアンロック位置からロック位置に切り換える。一方、切換機構500Aは、回転子540が後退位置に位置する状況下では、ユーザの切換操作に伴い、回転子540の位置を後退位置から前進位置に切り換えない。つまり、切換機構500Aは、ロック部材420の位置をロック位置からアンロック位置に切り換えない。
【0135】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の効果(1)に加え、以下の効果を得ることができる。
(3)停止装置40Aにおいて、回転子540が前進位置に配置される場合、切換操作に伴い回転子540が第1方向A1に移動すると、係合片542のカム面544が第2案内面514と軸方向Aに対向するように回転子540が回転する。このため、切換操作に伴い回転子540が第2方向A2に復帰すると、回転子540が後退位置に位置する。つまり、ロック部材420がロック位置に配置される。
【0136】
一方、回転子540が後退位置に配置される場合、切換操作に伴い回転子540が第1方向A1に移動しても、回転子540が回転できない。このため、切換操作に伴い回転子540が第2方向A2に復帰すると、回転子540が後退位置に位置する。つまり、ロック部材420がロック位置に留まる。こうして、停止装置40Aは、回転子540の動きを制限することにより、バックドア20を一度停止させた後に当該バックドア20がユーザの意図によらず開動作することを抑制できる。
【0137】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・停止装置40,40Aは、ドア開口部11の車両幅方向における片端に1つだけ設けてもよいし、ドア開口部11の車両幅方向における両端に1つずつ設けてもよい。
【0138】
・停止装置40,40Aはバックドア20に取り付けてもよい。この場合、停止装置40から延びるケーブル220の端部は車体12に取り付けることが好ましい。
・伝達機構300のセクターギヤ340と切換機構500,500Aの移動体520,520Aのラック521とにより、移動体520,520Aを軸方向Aに往復運動させる機構を構成したが、例えば、ウォームホイールとウォームとにより、当該機構を構成してもよい。
【0139】
・停止装置40,40Aは、車体12の側部に設けられるドア開口部を開閉する「車両ドア」の一例としてのサイドドアに適用することも可能である。この場合、サイドドアは、車両10の上下方向と交差する方向に延びる軸線回りに回動可能に車体12に支持されることが好ましい。
【0140】
・停止装置40,40Aは、ドラム210とラチェットギヤ410との間にトルクリミッタを備えてもよい。この場合、停止装置40は、ドラム210とラチェットギヤ410との間で所定の上限トルク以上のトルクを伝達できなくなる。このため、停止装置40は、任意の位置で停止したバックドア20に対し、開方向に荷重が作用する場合に、停止装置40の構成部品に負荷が作用することを抑制できる。
【0141】
・切換機構500,500Aの構造は、切換機構500,500Aの機能を発揮できる範囲内で適宜に変更することができる。例えば、第1案内面513,513A、第2案内面514、第1規制面515及び第2規制面516,516Aに関して、軸方向A及び周方向Cに対する傾き及び長さを適宜に変更することができる。また、第1係合部517は、周方向Cにおいて第1案内面513,513A及び第2案内面514の間で軸方向Aに延びる溝としてもよいし、第2係合部518は、第2案内面514及び第2規制面516,516Aとの交差する部位としてもよい。ただし、第1係合部517に係合する回転子540の係合片542は、第2係合部518に係合する回転子540の係合片542よりも、第2方向A2に位置することが必要である。
【0142】
・切換機構500,500Aにおいて、第1係合部517及び第2係合部518は、少なくとも、第2方向A2に向かって変位しようとする回転子540を支える部位と、第1周方向C1に向かって変位しようとする回転子540を支える部位と、を有していればよい。
【0143】
・切換機構500,500Aは、例えば、ユーザがスイッチを押したりレバーを引いたりすることで、回転子540の位置を後退位置から前進位置に切り換える機構を有してもよい。この場合、切換機構500,500Aは、プッシュ体530を有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0144】
10…車両
11…ドア開口部
12…車体
20…バックドア(車両ドアの一例)
40,40A…停止装置
200…ドラムユニット
210…ドラム
400…ロック機構
410…ラチェットギヤ
420…ロック部材
500,500A…切換機構、
510,510A…筒体、
513,513A…第1案内面(案内面)
514…第2案内面(案内面)
515…第1規制面
516,516A…第2規制面
517…第1係合部
518…第2係合部
520,520A…移動体
525,525A…第1押圧面(押圧面)
526,526A…第2押圧面(押圧面)
540…回転子
542…係合片
544…カム面
550…第3スプリング(付勢部材の一例)
A(A1,A2)…軸方向
C(C1,C2)…周方向