(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ヘアトリートメント用組成物及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240405BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240405BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240405BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/41
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2018027104
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2021-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山中 良介
(72)【発明者】
【氏名】平 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】花手 愛夏
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】野田 定文
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167025(JP,A)
【文献】特開2017-197533(JP,A)
【文献】特開2011-93832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されたヘアトリートメント用組成物であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されたことを特徴とするヘアトリートメント用組成物。
【請求項2】
前記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが、アプリコット油由来の脂肪酸とグリセリンの平均重合度が2以上8以下であるポリグリセリンとのエステルである請求項1に記載のヘアトリートメント用組成物。
【請求項3】
前記アプリコット油由来の脂肪酸とグリセリンの平均重合度が2以上8以下であるポリグリセリンとのエステルが、アンズ核油ポリグリセリル-3エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-4エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-5エステルズ、又はアプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズから選ばれる1種又は2種以上である請求項2に記載のヘアトリートメント用組成物。
【請求項4】
アミノ変性シリコーンが1質量%以下又は配合されていない請求項1~3のいずれか1項に記載のヘアトリートメント用組成物。
【請求項5】
カチオン性界面活性剤と高級アルコールの合計配合量が、15質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のヘアトリートメント用組成物。
【請求項6】
洗い流される態様で用いられる請求項1~5のいずれか1項に記載のヘアトリートメント用組成物。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のヘアトリートメント用組成物を用いた毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアトリートメント用組成物及び毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の成分が配合されたヘアトリートメント用組成物が毛髪の状態改善を目的として提供されている。上記のヘアトリートメント用組成物の一例として、平均重合度が20000以上65000以下の高重合ポリエチレングリコールと4級アンモニウム塩が配合されたアルカリ性の毛髪処理剤によって、毛髪の柔らかな感触と毛先までのおさまりが向上する技術(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪はヘアカラー等の化学的損傷や摩擦等の物理的損傷を受けることで、損傷による状態変化が生じて、毛髪のなめらかな手触りが悪化することがあった。しかし、上記特許文献1の提案には、毛髪の手触りをなめらかにすることについては、なんら検討されていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の手触りをなめらかにすることが可能なヘアトリートメント用組成物の提供を目的とする。また、当該ヘアトリートメント用組成物を用いた毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、カチオン性界面活性剤及び高級アルコールが配合されたヘアトリートメント用組成物に、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルをさらに配合すれば、毛髪の手触りをなめらかにすることが可能になるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るヘアトリートメント用組成物は、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及び構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されたものであり、これにより毛髪の手触りをなめらかにすることが可能になる。
【0008】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物に配合される前記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、アプリコット油由来の脂肪酸とグリセリンの平均重合度が2以上8以下であるポリグリセリンとのエステルである。
【0009】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物に配合される前記アプリコット油由来の脂肪酸とグリセリンの平均重合度が2以上8以下であるポリグリセリンとのエステルは、例えば、アンズ核油ポリグリセリル-3エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-4エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-5エステルズ、又はアプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズから選ばれる1種又は2種以上である。
【0010】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物は、アミノ変性シリコーンが1質量%以下又は配合されていないものとすることで、洗い流し時のべたつきの程度が少なく、毛髪の柔らかさに優れたものとなる。
【0011】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物に配合されるカチオン性界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量を15質量%以下とすることで、毛髪の柔らかさに優れたものとなる。
【0012】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物は、例えば、洗い流される態様で用いられるものである。
【0013】
本発明のヘアトリートメント用組成物を用いた毛髪処理方法によれば、処理後の毛髪の手触りをなめらかにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るヘアトリートメント用組成物によれば、毛髪の手触りをなめらかにすることが可能になる。また、本発明のヘアトリートメント用組成物を用いた毛髪処理方法は、処理後の毛髪において、手触りをなめらかにすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
【0016】
本実施形態に係るヘアトリートメント用組成物は、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及び構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが水に配合されたものである(水の配合量は、例えば60質量%以上)。
また、本実施形態のヘアトリートメント用組成物が実使用上許容される限りにおいて、更に公知のヘアトリートメント用組成物に用いられる上記以外の成分が配合されていても良い。
【0017】
(カチオン性界面活性剤)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物は、ヘアトリートメント用組成物に用いられる公知のカチオン性界面活性剤が1種又は2種以上配合されたものである。本実施形態のヘアトリートメント用組成物にカチオン性界面活性剤が配合されることで、毛髪に柔らかさのある手触りを付与できる。
【0018】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。上記「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、その炭素数が16以上22以下であると皮膚刺激の抑制や毛髪に優れた柔らかさを付与する点から好ましい。なお、カチオン性界面活性剤として、モノ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩を本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合すれば、毛髪の柔らかさにより優れるため好ましい。
【0019】
上記モノ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸アルキルトリメチルアンモニウム塩(メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等)、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0020】
上記ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム(ジアルキルの後の括弧内の数値は、アルキルの炭素数を意味している)等が挙げられる。
【0021】
上記ベンザルコニウム型4級アンモニウムとしては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0022】
上記アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0023】
上記脂肪酸アミドアミンとしては、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0024】
カチオン性界面活性剤の配合量は、毛髪に優れた柔らかさを与える観点から、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
(高級アルコール)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物は、高級アルコールが1種又は2種以上配合されたものである。ここで、上記高級アルコールとは、炭素数が12以上22以下の1価アルコールを意味する。本実施形態のヘアトリートメント用組成物に高級アルコールが配合されることで、毛髪にしっとりとした手触りを付与できる。
【0026】
上記高級アルコールとしては、例えば、直鎖状飽和アルコール、直鎖状不飽和アルコール、分岐状飽和アルコール等が挙げられる。
【0027】
上記直鎖状飽和アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
上記直鎖状不飽和アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0029】
上記分岐状飽和アルコールとしては、例えば、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、ドデシルヘキサデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノール等が挙げられる。
【0030】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合される高級アルコールの配合量は、適宜設定されるものであるが、毛髪にしっとりとした手触りを付与する観点から、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合されるカチオン性界面活性剤と高級アルコールの合計配合量の上限値は、毛髪に優れた柔らかさを与える観点から、15質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合されるカチオン性界面活性剤と高級アルコールの合計配合量の下限値は、毛髪により塗布し易い粘度とする観点から、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
(構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステル)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが1種又は2種以上配合されたものとすれば、毛髪になめらかな手触りを付与することができる。
【0033】
構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸にリノール酸を含むものであれば良く、構成脂肪酸にリノール酸以外の脂肪酸を含んでいても良い。リノール酸以外の脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、リノレン酸等の炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルにおける、構成脂肪酸全体のリノール酸の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、5%以上100%以下である。
【0034】
上記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、リノール酸を含む植物油由来の脂肪酸とグリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリンとのエステル化物を用いても良い。
そのようなエステル化物としては、例えば、リノール酸を含む植物油とポリグリセリン(グリセリンの平均重合度2以上8以下)とのエステル交換によって得られたものや、リノール酸を含む植物油から得られた脂肪酸とポリグリセリン(グリセリンの平均重合度2以上8以下)とをエステル化させたもの等を用いることができる。
【0035】
上記のリノール酸を含む植物油は、遊離脂肪酸にリノール酸を含む植物油及び/又はトリグリセリド中の構成脂肪酸にリノール酸を含む植物油を意味する。ここで、「及び/又は」とは両方又はいずれか一方であることを表す(以下、用語「及び/又は」は同様の意)。
そのようなリノール酸を含む植物油としては、例えば、アプリコット核油(アンズ核油)、オリーブ油、ブドウ種子油、コーン油、ダイズ油、綿実油、ゴマ油、ナタネ油、コメヌカ油、ピーナッツ油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ヒマワリ種子油、ババス油、ヤシ油等が挙げられる。
【0036】
上記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリンのものを用いても良く、グリセリンの平均重合度が3以上6以下のポリグリセリンのものを用いることもできる。
【0037】
構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとして、例えば、平均エステル化率が3%以上50%以下のものを用いることができる。ここでいう平均エステル化率とは、ポリグリセリン1分子当りの平均水酸基数に対する平均エステル結合数の百分率である。なお、平均水酸基数は、ポリグリセリンの平均重合度がnの場合に(n+2)で算出される値である。
【0038】
構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、化粧品表示名称で表されるものとしては、例えば、アンズ核油ポリグリセリル-3エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-4エステルズ、アンズ核油ポリグリセリル-5エステルズ、アプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズ、アルガン油ポリグリセリル-6エステルズ、アーモンド油ポリグリセリル-4エステルズ、アーモンド油ポリグリセリル-6エステルズ、アーモンド油脂肪酸ポリグリセリル-4、オリーブ油ポリグリセリル-3エステルズ、オリーブ油ポリグリセリル-4エステルズ、オリーブ油ポリグリセリル-6エステルズ、コメヌカ油ポリグリセリル-3エステルズ、コメヌカ油脂肪酸ポリグリセリル-3、ゴマ油ポリグリセリル-6エステルズ、ババス油ポリグリセリル-4エステルズ、ババス油ポリグリセリル-6エステルズ、パーム油ポリグリセリル-3エステルズ、パーム油ポリグリセリル-4エステルズ、パーム油ポリグリセリル-5エステルズ、パーム油ポリグリセリル-6エステルズ、ヒマシ油ポリグリセリル-6エステルズ、ヒマワリ種子油ポリグリセリル-6エステルズ、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-3、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-4、スクレロカリアビレア種子油ポリグリセリル-6エステルズ等が挙げられる。
【0039】
上記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量の下限値は、適宜設定されるものであるが、毛髪にしっとりとした手触りを付与する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.15質量%以上がより一層好ましい。また、上記構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量の上限は、高温による臭いの変化(高温保存により生じる油が酸化したような特異臭)を抑制する観点から、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0040】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物において、「構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」の配合量に対する「カチオン性界面活性剤」の配合量の質量比は、例えば、0.1以上50以下である。
【0041】
(任意成分)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合される上記必須成分以外の任意成分は、公知のヘアトリートメント用組成物に配合される成分の中から、ヘアトリートメント用組成物の用途、目的に応じて適宜に選定される。
そのようなヘアトリートメント用組成物に配合される成分としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤(構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)、高級アルコール以外のアルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン油、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、粘土鉱物、酸、アルカリ、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等である。
なお、本実施形態のヘアトリートメント用組成物には、上記の任意成分のうち、毛髪の手触り向上を目的として、エステル油、油脂、シリコーン油、多価アルコール、酸、粘土鉱物を配合しても良い。
【0042】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に1種又は2種以上のエステル油を配合すれば、毛髪にしっとりとした手触りを付与できる。エステル油の具体例としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、イソノナン酸イソトリデシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、ステアリン酸コレステリル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物にエステル油を配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0043】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に1種又は2種以上の油脂を配合すれば、毛髪にしっとりとした手触りを付与できる。油脂の具体例としては、例えば、アボカド油、アマニ油、アルガニアスピノサ核油、アプリコット核油(アンズ核油)、オリーブ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、ローズヒップ油等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物に油脂を配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0044】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に1種又は2種以上のシリコーン油を配合すれば、毛髪によりなめらかな手触りを付与できる。シリコーン油の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等)、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、ポリエーテル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、シラノール変性シリコーン等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物にシリコーン油を配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.5質量%以上10質量%以下とすることができる。なお、アミノ変性シリコーンについては、毛髪のべたつきの程度を少ないものとし、毛髪の柔らかさに優れたものとする観点から、1質量%以下又は配合しないことが好ましい。
【0045】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に1種又は2種以上の多価アルコールを配合すれば、毛髪にしっとりとした手触りを付与できる。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物に多価アルコールを配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.5質量%以上10質量%以下である。
【0046】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物には、pH調整のために1種又は2種以上の酸を配合しても良い。酸の具体例としては、例えば、リン酸等の無機酸;グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルキル硫酸等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物に酸を配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.0001質量%以上1質量%以下である。
【0047】
本実施形態のヘアトリートメント用組成物に1種又は2種以上の粘土鉱物を配合すれば、毛髪にしっとりとした手触りを付与できる。粘土鉱物の具体例としては、例えば、カオリン、スメクタイト、ベントナイト等が挙げられる。本実施形態のヘアトリートメント用組成物に粘土鉱物を配合する場合、その配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば、0.0001質量%以上1質量%以下である。
【0048】
<ヘアトリートメント用組成物>
【0049】
(製造方法)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物の製造方法としては、使用時の剤型に応じて、公知のヘアトリートメント用組成物の製造方法を採用すればよい。例えば、クリーム状のヘアトリートメント用組成物を製造する場合の一例としては、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及び構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した油相を、当該油相の融点以上に加熱し、水を配合した水相と混合する方法がある。
【0050】
(剤型)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状が挙げられる。剤型は、毛髪の塗布を容易にする観点から、クリーム状とすることが好ましい。
【0051】
上記剤型の形態は、特に限定されないが、例えばO/W型エマルジョン、W/O/W型エマルジョン、W/O型エマルジョンの形態とすることができる。
【0052】
(粘度)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、4000mPa・s以上50000mPa・s以下である。なお、ヘアトリートメント用組成物の剤型をクリーム状に調整する場合、B型粘度計で適宜なローターを用いて25℃で計測した60秒後の粘度の計測値が、例えば4000mPa・s以上20000mPa・s以下である。
【0053】
(pH)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物のpHは、特に限定されないが、例えば、3以上7以下である。なお、pHの値は25℃における測定値が採用される。
【0054】
(用途)
本実施形態に係るヘアトリートメント用組成物の用途は、ヘアトリートメント(例えば、リンス、コンディショナー、洗い流すヘアトリートメント、洗い流さないヘアトリートメント、多剤式ヘアトリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのヘアトリートメント、パーマの後処理のためのヘアトリートメント、カラーリングの前処理のためのヘアトリートメント、カラーリングの後処理のためのヘアトリートメント、ブリーチの前処理のためのヘアトリートメント、ブリーチの後処理のためのヘアトリートメント等)が挙げられる。なお、本実施形態に係るヘアトリートメント用組成物は、頭皮に用いても良い。また、本実施形態に係るヘアトリートメント用組成物は、シャンプー等の毛髪洗浄剤を用いて毛髪を洗浄した後に用いても良い。
【0055】
(使用方法)
本実施形態のヘアトリートメント用組成物の使用方法は、その用途に応じた公知のヘアトリートメント用組成物の使用方法を採用すればよい。そのため、ヘアトリートメント用組成物を塗布した後に、洗い流す又は洗い流さない使用方法として良い。
上記洗い流す使用方法の一例として、例えばシャンプー後の濡れた毛髪に本実施形態のヘアトリートメント用組成物を塗布し、塗布した直後又は塗布し一定時間放置した後に洗い流して、毛髪を乾燥させる使用方法が挙げられる。
上記洗い流さない使用方法の一例として、水で濡れた毛髪に本実施形態のヘアトリートメント用組成物を塗布し、洗い流さずに毛髪を乾燥させる使用方法が挙げられる。
また、本実施形態に係るヘアトリートメント用組成物は、シャンプー等の毛髪洗浄剤を用いて毛髪を洗浄した後の、濡れた状態の毛髪に塗布して用いても良い。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0057】
(ヘアトリートメント用組成物の調製)
実施例1~7、比較例1~11、参考例1、2のヘアトリートメント用組成物を、表1~7に示す成分と水と混合してそれぞれ調製した。これら、実施例1~7、比較例1~11、参考例1、2のヘアトリートメント用組成物は、いずれもクリーム状のO/W型エマルジョンであった。
【0058】
(実施例1、2、比較例1、2)
調製した実施例1、2、比較例1、2のヘアトリートメント用組成物を用いて、次に示す毛髪処理及び評価を行った。
【0059】
(毛髪処理)
毛先にダメージを受けている同一人物の日本人毛髪から、根元から毛先までの長さを約15~25cmにそろえた約5gの毛束を複数作成した。
上記毛束を0.3gのミルボン社製のディーセスノイドゥーエシルキーリュクスシャンプーで洗浄し、温水ですすいだ後、濡れた各毛束に対して表1に示す実施例又は比較例のヘアトリートメント用組成物をそれぞれ0.3g塗布した。その後、塗布したトリートメント用組成物を温水で洗い流し、ドライヤーで毛束を乾燥させた。
【0060】
(評価)
上記毛髪処理を行った後の乾燥した毛束について、「なめらかさ」、「しっとり感」、「柔らかさ」の評価を、下記の評価方法及び評価基準に基づいて行った。
【0061】
毛髪処理を行った後の乾燥した毛束の根元部分を持ち上げ毛先部分を鉛直方向に垂らした後、根元から毛先に向かって毛束に指を通した際のすべりのあるなめらかな指通りを「なめらかさ」として評価し、毛先(毛先の先端から5cm以下の部位)の潤いのある手触りを「しっとり感」として評価し、毛束全体を指で軽く折り曲げたときの毛束の柔軟性を「柔らかさ」として評価した。
ヘアトリートメント用組成物の評価を日常よく行うパネラー5名の評価で、基準とした毛束に比べて、なめらかさ、しっとり感、柔らかさの各項目について、それぞれ「優れる」、又は、「同等」、又は、「劣る」のいずれかを回答させて、下記の評価基準に従って各項目の評点を付けた。
【0062】
◎ :基準とした毛束と比べて、「優れる」と4名以上が回答。
○ :基準とした毛束と比べて、「優れる」と3名が回答し「同等」と1名以上が回答、又は、「優れる」と2名が回答し「同等」と3名が回答。
同等:基準とした毛束と比べて、「同等」と4名以上が回答、又は、「優れる」と1名以上が回答し「同等」と2名以上が回答し「劣る」と1名以上が回答、又は、「優れる」と2名以上が回答し「劣る」と2名以上が回答。
△ :基準とした毛束と較べて、「劣る」と3名が回答し「同等」と1名以上が回答、又は、「劣る」と2名が回答し「同等」と3名が回答。
× :基準とした毛束と比べて、「劣る」と4名以上が回答。
【0063】
(評価結果)
下記表1に、水と配合した成分と共に、実施例1、2、比較例1、2のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価結果は、比較例1を処理した毛束を基準としたものである。
なお、表1におけるポリグリセリン脂肪酸エステル(1)の表記は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルに該当するポリグリセリン脂肪酸エステルを表し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)の表記は構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルに該当しないポリグリセリン脂肪酸エステルを表している(下記表2~7においても同様の意味)。また、下記表1における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0064】
【0065】
表1に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された実施例1、2のへアトリートメント用組成物は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない比較例1、2のヘアトリートメント用組成物よりもなめらかさ、しっとり感、柔らかさの各項目において優れる結果であったことが分かる。また、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが0.1質量%配合された実施例1と0.2質量%配合された実施例2を比較すると、実施例2の方がなめらかさ、しっとり感についてより優れる結果であったことが分かる。
【0066】
(実施例3、比較例3)
調製した実施例3、比較例3のヘアトリートメント用組成物を用いて、上記の実施例1、2、比較例1、2の毛髪処理に準じて行い(毛束の洗浄は、アニオン性界面活性剤が配合されたシャンプーを使用)、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様になめらかさ、しっとり感、柔らかさの評価を行った。
【0067】
(評価結果)
下記表2に、水と配合した成分と共に、実施例3、比較例3のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、比較例3を処理した毛束を基準としたものである。
なお、下記表2における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0068】
【0069】
表2に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された実施例3のへアトリートメント用組成物は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない比較例3のヘアトリートメント用組成物よりもなめらかさ、しっとり感、柔らかさの各項目において優れる結果であったことが分かる。
【0070】
(高温による臭いの変化の評価)
高温による臭いの変化の評価は、次の(1)、(2)の順に従って行った。
(1)表2に示す実施例2、比較例3のヘアトリートメント用組成物及び別途調製したヘアトリートメント用組成物A(比較例2のヘアトリートメント用組成物に構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであるアプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズを0.2質量%配合したもの)をそれぞれ別の密閉容器に入れ、設定温度を50℃にした恒温槽内に9日間保管した。
(2)50℃で9日間保管後、常温に戻した各ヘアトリートメント用組成物について、密閉容器の栓を開けた際の油が酸化したような特異臭をパネラー1名により評価した(パネラーは、ヘアトリートメント用組成物の評価を日常よく行うパネラー)。
【0071】
(高温による臭いの変化の評価結果)
50℃で9日間保管したヘアトリートメント用組成物A及び比較例3のヘアトリートメント用組成物は油が酸化したような特異臭が認められなかったが、実施例3のヘアトリートメント用組成物は、油が酸化したような特異臭が認められた。なお、50℃で9日間保管する前の実施例2、比較例3のヘアトリートメント用組成物及びヘアトリートメント用組成物Aは、いずれも、油が酸化したような特異臭は認められなかった。
よって、本実施形態のヘアトリートメント用組成物に配合される構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が多くなることで、高温による臭いの変化が大きくなる傾向であることが分かる。
【0072】
(比較例4~8)
調製した比較例4~8のヘアトリートメント用組成物を用いて、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様の毛髪処理を行い、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様になめらかさの評価を行った。
【0073】
(評価結果)
下記表3に、水と配合した成分と共に、比較例4~8のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、比較例4を処理した毛束を基準としたものである。
なお、下記表3における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0074】
【0075】
表3に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない比較例4のへアトリートメント用組成物に比べて、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルには該当しないポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された比較例5のヘアトリートメント用組成物や、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なるその他のノニオン性界面活性剤が配合された比較例6~8のヘアトリートメント用組成物は、なめらかさに劣っていたことが分かる。
【0076】
上記に示す表1、2の評価結果と表3の評価結果の比較から、ヘアトリートメント用組成物に構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合によれば、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルに該当しないポリグリセリン脂肪酸エステルやその他のノニオン性界面活性剤を配合されたものよりも、なめらかさに優れた結果であったことが理解できる。
【0077】
(実施例4、5、比較例9)
調製した実施例4、5、比較例9のヘアトリートメント用組成物を用いて、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様の毛髪処理を行い、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様になめらかさの評価を行った。
【0078】
(評価結果)
下記表4に、水と配合した成分と共に、実施例4、5、比較例9のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、比較例9を処理した毛束を基準としたものである。なお、下記表4における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0079】
【0080】
表4に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された実施例4、5のへアトリートメント用組成物は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない比較例9のヘアトリートメント用組成物よりもなめらかさに優れる結果であったことが分かる。また、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが0.05質量%配合された実施例4と0.1質量%配合された実施例5とを比較すると、実施例5の方がなめらかさにより優れる結果であったことが分かる。
【0081】
(実施例6、比較例10)
調製した実施例6、比較例10のヘアトリートメント用組成物を用いて、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様の毛髪処理を行い、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様になめらかさ、しっとり感の評価を行った。
【0082】
(評価結果)
下記表5に、水と配合した成分と共に、実施例6、比較例10のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、比較例10を処理した毛束を基準としたものである。なお、下記表5における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0083】
【0084】
表5に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された実施例6のへアトリートメント用組成物は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない比較例10のヘアトリートメント用組成物よりもなめらかさ、しっとり感に優れる結果であったことが分かる。
【0085】
(実施例7、比較例11)
調製した実施例7、比較例11のヘアトリートメント用組成物を用いて、次に示す毛髪処理及び評価を行った。
【0086】
(1回の毛髪処理)
表6に示す実施例7又は比較例11のヘアトリートメント用組成物を用いた以外は、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様に毛髪処理を行った(1回の毛髪処理)。
【0087】
(1回の毛髪処理の評価)
上記毛髪処理中の毛束及び処理後の毛束について、「洗い流し時のべたつきの程度」、「なめらかさ」、「しっとり感」、「柔らかさ」の評価を行った。「洗い流し時のべたつきの程度」の評価項目については、下記の評価方法及び評価基準に基づいて行った。また、「なめらかさ」、「しっとり感」、「柔らかさ」の評価項目については、上記実施例1、2、比較例1、2の評価方法及び評価基準と同様にして評価を行った。
【0088】
上記毛髪処理において、トリートメント用組成物を塗布した毛束に指を通しながら温水で洗い流した際の毛束がべたべたする手触りを「洗い流し時のべたつきの程度」として評価した。パネラー5名の評価で、基準とした毛束に比べて、「洗い流し時のべたつきの程度」が、それぞれ「優れる(べたつきの程度が少ない)」、又は、「同等(べたつきの程度が基準と同程度)」、又は、「劣る(べたつきの程度が多い)」のいずれかを回答させて、下記の評価基準に従って評点を付けた。
【0089】
◎ :基準とした毛束と比べて、「優れる」と4名以上が回答。
○ :基準とした毛束と比べて、「優れる」と3名が回答し「同等」と1名以上が回答、又は、「優れる」と2名が回答し「同等」と3名が回答。
同等:基準とした毛束と比べて、「同等」と4名以上が回答、又は、「優れる」と1名以上が回答し「同等」と2名以上が回答し「劣る」と1名以上が回答、又は、「優れる」と2名以上が回答し「劣る」と2名以上が回答。
△ :基準とした毛束と較べて、「劣る」と3名が回答し「同等」と1名以上が回答、又は、「劣る」と2名が回答し「同等」と3名が回答。
× :基準とした毛束と比べて、「劣る」と4名以上が回答。
【0090】
(複数回の毛髪処理)
上記の1回の毛髪処理を行った毛束に対して、さらに1回の毛髪処理と同様の毛髪処理を6回行い、計7回の毛髪処理を行った。
【0091】
(複数回の毛髪処理の評価)
7回目の毛髪処理中の毛束及び処理後の毛束について、「洗い流し時のべたつきの程度」、「なめらかさ」、「しっとり感」、「柔らかさ」の評価を行った。なお、各評価は1回の毛髪処理の評価における評価方法及び評価基準と同様にして行った。
【0092】
(評価結果)
下記表6に、水と配合した成分と共に、実施例7、比較例11のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、実施例7を処理した毛束を基準としたものである。なお、下記表6における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0093】
【0094】
表6に示す結果から、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合された実施例7のへアトリートメント用組成物は、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの代わりにアミノ変性シリコーンが配合された比較例11のヘアトリートメント用組成物に比べて、毛髪処理1回の評価では、洗い流し時のべたつきの程度が少なく、柔らかさに優れる結果であったことが分かる。また、毛髪処理7回の評価では、実施例7は比較例11に比べて、洗い流し時のべたつきの程度が少なく、なめらかさ、しっとり感、柔らかさのいずれもが優れる結果であったことが分かる。
【0095】
(参考例1、2)
調製した参考例1、2のヘアトリートメント用組成物を用いて、上記の実施例1、2、比較例1、2と同様の毛髪処理及び評価を行った。なお、参考例1と比較例1は同じものである。
【0096】
(評価結果)
下記表7に、水と配合した成分と共に、参考例1、2のヘアトリートメント用組成物の評価結果を示す。この評価は、参考例2を処理した毛束を基準としたものである。なお、下記表7における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0097】
【0098】
表7に示す結果から、カチオン性界面活性剤と高級アルコールの合計配合量が10.2質量%の参考例2と7.6質量%の参考例1とを比較すると、参考例2に比べて参考例1は柔らかさの評価に優れる結果であったが、なめらかさ、しっとり感の評価に劣る結果であったことが分かる。