(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】作業車協調システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240405BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
G08G1/00 X
(21)【出願番号】P 2019120478
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】西田 秀彦
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-88931(JP,A)
【文献】特開平11-39036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B69/00-69/08
G05D1/00-1/12
G08G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作業車と当該第1作業車に追従して自動走行する第2作業車とが協調して圃場作業を行う作業車協調システムであって、
前記第1作業車の位置である第1位置を検出する第1位置検出モジュールと、
前記第2作業車の位置である第2位置を検出する第2位置検出モジュールと、
前記圃場作業を行う圃場のマップを取得する圃場マップ取得部と、
前記第1位置と前記第2位置と前記マップとに基づいて、前記圃場作業を行った既作業地を示す既作業地マップを作成する既作業地マップ作成部と、
前記既作業地マップと前記第1位置とに基づいて前記第1作業車に対する前記第2作業車の相対走行位置を設定する相対走行位置設定部と、
前記第1位置と前記相対走行位置とに基づいて前記第2作業車を自動走行させる走行制御部と、
を備えた作業車協調システム。
【請求項2】
前記相対走行位置設定部は、前記既作業地マップに基づいて前記圃場における前記圃場作業を行っていない未作業地を前記第2作業車が走行するように前記相対走行位置を設定する請求項1に記載の作業車協調システム。
【請求項3】
前記既作業地マップと前記第1位置とに基づいて前記第1作業車の走行経路を算定する走行経路算定部を備え、
前記相対走行位置設定部は、前記第1作業車の走行経路として算定された領域が前記既作業地で挟まれている場合には、前記第2作業車が当該既作業地を走行するように前記相対走行位置を設定する請求項1又は2に記載の作業車協調システム。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記
第1作業車に対する前記第2作業車の位置が前記相対走行位置と一致するように前記第2作業車を自動走行させる請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車協調システム。
【請求項5】
前記第1作業車は、前記圃場内に設定される作業対象領域に設定される走行経路に沿って走行しながら前記圃場作業を行い、
前記相対走行位置設定部は、前記第1作業車の前記走行経路毎に前記相対走行位置を設定する請求項1から4のいずれか一項に記載の作業車協調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1作業車と当該第1作業車に追従して自動走行する第2作業車とが協調して圃場作業を行う作業車協調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場作業を迅速に終了すべく、従来、1つの圃場を複数の作業車で走行しながら圃場作業が行われてきた。このような技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、親作業車が実際に走行した位置に基づいて、順次目標走行位置を決定し、当該目標走行位置を目指して子作業車が走行する車両制御システムが開示されている。この車両制御システムでは、子作業車は、親作業車に対して設定された所定のオフセット量を維持するように追従走行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、子作業車は親作業車に対して予め設定された経度方向及び緯度方向の夫々のオフセット量を維持するような走行や、親作業車の走行軌跡を作業幅分だけ平行移動させた目標走行経路に沿う走行を行う。しかしながら、圃場は広大な作業地だけでなく、狭小な作業地や長手方向の長さに対して短手方向の長さが極端に短いような形状の作業地等もある。特許文献1に記載の技術を利用してこのような圃場を走行すると、適切に子作業車が走行することができず、作業効率が悪化する可能性がある。
【0006】
そこで、効率良く圃場作業を行うことができる作業車協調システムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車協調システムの特徴構成は、第1作業車と当該第1作業車に追従して自動走行する第2作業車とが協調して圃場作業を行う作業車協調システムであって、前記第1作業車の位置である第1位置を検出する第1位置検出モジュールと、前記第2作業車の位置である第2位置を検出する第2位置検出モジュールと、前記圃場作業を行う圃場のマップを取得する圃場マップ取得部と、前記第1位置と前記第2位置と前記マップとに基づいて、前記圃場作業を行った既作業地を示す既作業地マップを作成する既作業地マップ作成部と、前記既作業地マップと前記第1位置とに基づいて前記第1作業車に対する前記第2作業車の相対走行位置を設定する相対走行位置設定部と、前記第1位置と前記相対走行位置とに基づいて前記第2作業車を自動走行させる走行制御部と、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、設定された相対走行位置に基づいて第2作業車を第1作業車に追従するように自動走行させることができる。したがって、圃場作業を第1作業車だけでなく、第2作業車と共に行うことができるので、効率良く圃場作業を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記相対走行位置設定部は、前記既作業地マップに基づいて前記圃場における前記圃場作業を行っていない未作業地を前記第2作業車が走行するように前記相対走行位置を設定すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、第2作業車が未作業地に対して圃場作業を行いながら追従走行させることができる。
【0011】
また、前記既作業地マップと前記第1位置とに基づいて前記第1作業車の走行経路を算定する走行経路算定部を備え、前記相対走行位置設定部は、前記第1作業車の走行経路として算定された領域が前記既作業地で挟まれている場合には、前記第2作業車が当該既作業地を走行するように前記相対走行位置を設定すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば圃場における未作業地が少なくなっている場合でも、第2作業車を第1作業車に追従して走行させることができる。
【0013】
また、前記走行制御部は、前記第1作業車に対する前記第2作業車の位置が前記相対走行位置と一致するように前記第2作業車を自動走行させると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、第2作業車が設定された相対走行位置を維持しながらの自動走行を容易に行うことが可能となる。したがって、相対走行位置を未作業地に設定することで、圃場に対して圃場作業をくまなく行うことが可能となる。
【0015】
また、前記第1作業車は、前記圃場内に設定される作業対象領域に設定される走行経路に沿って走行しながら前記圃場作業を行い、前記相対走行位置設定部は、前記第1作業車の前記走行経路毎に前記相対走行位置を設定すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、走行経路毎に第1作業車の走行経路と第2作業車の走行経路との間隔を設定することができる。したがって、圃場の状態や、圃場作業の状態に応じて相対走行位置を適宜設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】作業車協調システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る作業車協調システムは、第1作業車と当該第1作業車に追従して自動走行する第2作業車とが協調して圃場作業を行うことができるように構成されている。第1作業車とは第2作業車に追従される作業車であって、第2作業車とは第1作業車を追従走行する作業車である。作業車協調システムによれば、このような第1作業車と第2作業車とが互いに共働して円滑に圃場作業を行うことが可能となる。以下、本実施形態の作業車協調システム1について、第1作業車及び第2作業車を、夫々圃場の収穫作業を行う第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bとして説明する。なお、第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bの夫々を区別する必要がない場合にはコンバイン10と総称する。
【0019】
図1は、本実施形態のコンバイン10の側面図である。なお、以下では、本実施形態のコンバイン10について所謂普通型コンバインを例に挙げて説明する。もちろん、コンバイン10は自脱型コンバインであっても良い。
【0020】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味するものとする。更に、「上」(
図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(
図1に示す矢印Dの方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。
【0021】
図1に示すように、コンバイン10は、走行車体11、クローラ式の走行装置12、運転部13、脱穀装置14、穀粒タンク15、収穫部H、搬送装置16、穀粒排出装置17(「作業ユニット」の一例)、位置検出モジュール18(
図4における「第1位置検出モジュール18A」及び「第2位置検出モジュール18B」の総称)を備えている。
【0022】
走行装置12は、走行車体11(以下では「車体11」と称する)の下部に備えられる。コンバイン10は、走行装置12によって自動走行が可能に構成されている。運転部13、脱穀装置14、及び穀粒タンク15は、走行装置12の上側に備えられ、車体11の上部を構成する。運転部13は、コンバイン10を運転する運転者やコンバイン10の作業を監視する監視者が搭乗可能である。通常、運転者と監視者とは兼務される。なお、運転者と監視者が別人の場合、監視者は、コンバイン10の機外からコンバイン10の作業を監視していても良い。
【0023】
穀粒排出装置17は、穀粒タンク15の後下部に連結されている。また、位置検出モジュール18は、運転部13の前上部に取り付けられ、コンバイン10の自車位置を検出する。位置検出モジュール18は、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュールを用いることが可能である。この位置検出モジュール18は、人工衛星GS(
図2参照)からのGPS信号やGNSS信号(本実施形態では「GPS信号」とする)を受信するための衛星用アンテナを有している。なお、位置検出モジュール18には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、位置検出モジュール18とは別の場所に設けてもよい。位置検出モジュール18は、上述したGPS信号、慣性航法モジュールの検出結果に基づいて、コンバイン10の位置である自車位置を検出する。位置検出モジュール18により検出された自車位置は、コンバイン10の自動走行(自律走行)や、後述する各機能部に利用される。
【0024】
収穫部Hは、コンバイン10における前部に備えられる。搬送装置16は、収穫部Hの後側に設けられる。収穫部Hは、切断機構19及びリール20を有している。切断機構19は、圃場の植立穀稈を刈り取る。リール20は、回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。このような構成により、収穫部Hは、圃場の穀物(農作物の一種)を収穫可能となる。コンバイン10は、収穫部Hによって圃場の穀物を収穫しながら走行装置12によって走行する作業走行が可能である。
【0025】
切断機構19により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置14へ搬送される。脱穀装置14において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク15に貯留される。穀粒タンク15に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置17により機外に排出される。
【0026】
図2は、第1コンバイン10Aの走行経路の概要を示す図である。第1コンバイン10Aは、圃場において設定された走行経路に沿って自動走行することが可能である。この自動走行には、上述した第1位置検出モジュール18Aにより取得された自車位置を示す情報(自車位置情報)が利用される。
【0027】
本実施形態の第1コンバイン10Aは、圃場において以下の手順にしたがって収穫作業を行う。
【0028】
まず、運転者兼監視者は、第1コンバイン10Aを手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように収穫走行を行う。これにより既刈地(既作業地)となった領域は、外周領域SAとして設定される。外周領域SAの内側に未刈地(未作業地)のまま残された領域は、作業対象領域CAとして設定される。
【0029】
このとき、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、運転者は、第1コンバイン10Aを2~3周走行させる。この走行においては、第1コンバイン10Aが1周する毎に、第1コンバイン10Aの作業幅分だけ外周領域SAの幅が拡大する。例えば、最初の2~3周の走行が終わると、外周領域SAの幅は第1コンバイン10Aの作業幅の2~3倍程度の幅となる。なお、運転者による最初の周回走行は2~3周でなく、それ以上(4周以上)であっても良いし、1周であっても良い。
【0030】
外周領域SAは、作業対象領域CAにおいて収穫走行を行うときに、第1コンバイン10Aが方向転換するためのスペースとして利用される。また、外周領域SAは、収穫走行を一旦終えて、穀粒の排出場所へ移動する際や、燃料の補給場所へ移動する際等の移動用のスペースとしても利用される。
【0031】
図2には、コンバイン10が収穫した穀粒が排出され、運搬する搬送車CVも示される。穀粒を排出する際、コンバイン10は搬送車CV(「支援車」の一例)の近傍へ移動し、穀粒排出装置17を介して穀粒を搬送車CVへ排出する。
【0032】
上述した手動操作は、第1コンバイン10Aの走行により行われる。外周領域SA及び作業対象領域CAが設定されると、
図3に示されるように、第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bにより作業対象領域CAにおける収穫作業が行われる。第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bは、作業対象領域CAに設定される走行経路に沿って自動走行により収穫作業が行われる。なお、第1コンバイン10Aにあっては手動走行であっても良い。
【0033】
図4は、本実施形態の作業車協調システム1の構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、作業車協調システム1は、第1位置検出モジュール18A、第2位置検出モジュール18B、圃場マップ取得部30、既作業地マップ作成部32、相対走行位置設定部34、走行制御部36、走行経路算定部40、検出部42の各機能部を備えている。これらの各機能部は、第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bの協調作業に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0034】
第1位置検出モジュール18Aは、第1コンバイン10Aの位置である第1位置を検出する。第1位置検出モジュール18Aの機能については上記位置検出モジュール18にて説明したので省略する。
【0035】
第2位置検出モジュール18Bは、第2コンバイン10Bの位置である第2位置を検出する。第2位置検出モジュール18Bの機能については上記位置検出モジュール18にて説明したので省略する。
【0036】
圃場マップ取得部30は、圃場作業を行う圃場のマップを取得する。圃場作業とはコンバイン10による収穫作業である。圃場のマップは、例えば上述した運転者兼監視者により第1コンバイン10Aが圃場の境界線に沿って周回する際に、順次、第1位置を検出しながら収穫走行を行って取得し、当該第1位置に基づいて生成しても良いし、別途記憶しておいたマップがある場合には当該マップを取得するように構成しても良い。
【0037】
既作業地マップ作成部32は、第1位置と第2位置とマップとに基づいて、圃場作業を行った既作業地を示す既作業地マップを作成する。第1位置は第1位置検出モジュール18Aにより取得され、第1位置を示す情報として伝達される。第2位置は第2位置検出モジュール18Bにより取得され、第2位置を示す情報として伝達される。マップは圃場マップ取得部30により取得され、マップを示すマップ情報として伝達される。既作業地は、圃場において第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bが収穫作業を行いながら走行した領域が既作業地とされる。既作業地マップ作成部32は、圃場マップ取得部30から伝達されるマップ情報で示される未作業地を、第1位置を示す情報及び第2位置を示す情報に基づき第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bが収穫作業を行いながら走行した領域である既作業地に更新しながら既作業地マップを作成する。
【0038】
相対走行位置設定部34は、既作業地マップと第1位置とに基づいて第1コンバイン10Aに対する第2コンバイン10Bの相対走行位置を設定する。既作業地マップは既作業地マップ作成部32により作成され、既作業地マップ作成部32から伝達される。もちろん、既作業地マップ作成部32に記憶しておき、相対走行位置設定部34が参照するような構成であっても良い。第1位置は第1位置検出モジュール18Aにより取得され、第1位置を示す情報として伝達される。
【0039】
第1コンバイン10Aに対する第2コンバイン10Bの相対走行位置とは、第1コンバイン10Aの位置を基準とする第2コンバイン10Bの走行位置である。本実施形態では、第1コンバイン10Aの位置とは第1コンバイン10Aにおける第2コンバイン10Bとの間隔が最も近くなる端部が相当する。具体的には、第2コンバイン10Bは第1コンバイン10Aの左後方を追従する場合には、第1コンバイン10Aの左後端部が相当する。
【0040】
一方、第2コンバイン10Bの走行位置とは、後述するように、第2コンバイン10Bにおける、当該第2コンバイン10Bが第1コンバイン10Aを検出する機能部(本実施形態では「検出部42」)の位置が相当する。検出部42は、運転部13の前端部の上部に設けると良い。また、このような位置を示す情報は、第2コンバイン10Bの第2位置検出モジュール18Bの検出結果を用いて算定することが可能である。
【0041】
したがって、相対走行位置設定部34は、既作業地マップ作成部32により作成された既作業地マップと、第1位置検出モジュール18Aにより取得された第1位置を示す情報とに基づいて、第1コンバイン10Aの左後端部を基準とする第2コンバイン10Bの検出部42の位置を相対走行位置として設定する。
【0042】
図5には、相対走行位置の概念図が示される。相対走行位置は、上述したように第1コンバイン10Aの左後端部からの距離r1と、第1コンバイン10Aにおける基準となる方向(
図5にあっては、第1コンバイン10Aの進行方向)に対する角度θ1とで規定される。
【0043】
相対走行位置設定部34は、既作業地マップに基づいて圃場における圃場作業を行っていない未作業地を第2コンバイン10Bが走行するように相対走行位置を設定すると好適である。既作業地マップは上述したように圃場マップにおいて収穫作業を行われた領域が既作業地として示される。このため、圃場における既作業地以外の領域が未作業地に相当する。相対走行位置設定部34は、このような未作業地を第2コンバイン10Bが収穫作業を行いながら走行するように相対走行位置を設定する。これにより、効率良く収穫作業を行うことが可能となる。
【0044】
相対走行位置設定部34は、第1コンバイン10Aの走行経路毎に相対走行位置を設定すると好適である。上述したように、第1コンバイン10A及び第2コンバイン10Bは作業対象領域CAにおいて設定される走行経路に沿って走行する。すなわち、作業対象領域CAには複数の走行経路が形成され、往復走行する。このような走行経路毎に、相対走行位置設定部34は相対走行位置を設定する。具体的には、第1コンバイン10Aが収穫作業を行った領域から次に収穫作業を行う領域に旋回しながら移動する際に、設定すると好適である。これにより、第2コンバイン10Bが次の収穫作業を行う領域に効率良く移動することが可能となる。
【0045】
なお、
図5では第1コンバイン10Aの作業幅と第2コンバイン10Bの作業幅とが互いに隙間なく隣接するように設定される相対走行位置を例示した。例えば、相対走行位置は、
図7の(A)に示されるように、進行方向に沿って見た場合に、第1コンバイン10Aの作業幅と第2コンバイン10Bの作業幅との間に隙間を有するように設定することも可能であるし、
図7の(B)に示されるように、進行方向に沿って見た場合に、第1コンバイン10Aの作業幅と第2コンバイン10Bの作業幅とが互いに重複するように設定することも可能である。
【0046】
検出部42は、第2コンバイン10Bに設けられ、第2コンバイン10Bに対する第1コンバイン10Aの相対位置を検出する。本実施形態では、検出部42は運転部13の前端部の上部に設けられたカメラが相当する。
【0047】
第2コンバイン10Bに対する第1コンバイン10Aの相対位置とは、第2コンバイン10Bの位置を基準とする第1コンバイン10Aの相対位置である。本実施形態では、第2コンバイン10Bの位置は、検出部42の位置が相当する。一方、第1コンバイン10Aの相対位置は第1コンバイン10Aの左後端部により規定される。
【0048】
図6には、相対位置の概念図が示される。相対位置は、第2コンバイン10Bの検出部42からの距離r2と、第2コンバイン10Bにおける基準となる方向(
図6にあっては、第2コンバイン10Bの進行方向)に対する角度θ2とで規定される。
【0049】
走行制御部36は、第1位置と相対走行位置とに基づいて第2コンバイン10Bを自動走行させる。第1位置は第1コンバイン10Aの位置を示す情報であって、相対走行位置とは第1コンバイン10Aに対して、距離r1と角度θ1とからなるパラメータで設定される第2コンバイン10Bの位置である。
【0050】
特に、本実施形態では、走行制御部36は相対位置が相対走行位置と一致するように第2コンバイン10Bを自動走行させる。相対位置は、検出部42により検出され、第2コンバイン10Bに対して、距離r2と角度θ2とで規定される第1コンバイン10Aの位置である。したがって、走行制御部36は、第2コンバイン10Bに対する第1コンバイン10Aの距離r2及び角度θ2の夫々が、距離r1及び角度θ1に一致するように自動走行する。これにより、第2コンバイン10Bが第1コンバイン10Aに適切に追従しながら圃場作業を行うので、効率良く圃場作業を行うことが可能となる。
【0051】
ここで、上述したように、第2コンバイン10Bは未作業地を走行するように相対走行位置が設定されるとして説明した。例えば作業対象領域CAにおいて未作業地の領域が第1コンバイン10Aの走行経路しか残っていないこともあり得る。このような状況を相対開始位置の設定前に特定すべく、走行経路算定部40が作業地マップと第1位置とに基づいて、第1コンバイン10Aの走行経路を算定すると好適である。これにより、作業対象領域CAの全ての領域が第1コンバイン10Aの走行によって既作業地となることが第1コンバイン10Aや第2コンバイン10Bの走行前に特定できる。
【0052】
係る場合、相対走行位置設定部34は、第1コンバイン10Aの走行経路として算定された領域が既作業地で挟まれている場合には、第2コンバイン10Bが当該既作業地を走行するように相対走行位置を設定すると好適である。第1コンバイン10Aの走行経路として算定された領域が既作業地で挟まれている場合とは、
図8に示されるように既作業地となっている場合及び上述したようにこれから第1コンバイン10Aが走行することで既作業地となることにより既作業地で挟まれる場合の双方が含まれる。係る状況においては、相対走行位置設定部34は、いずれかの既作業地を走行して第2コンバイン10Bが第1コンバイン10Aに追従できるように相対走行位置を設定する。これにより、圃場の収穫作業を終えた第1コンバイン10Aの近傍に第2コンバイン10Bを移動させることが可能となる。
【0053】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第1作業車及び第2作業車がコンバイン10であるとして説明したが、第1作業車及び第2作業車はコンバイン10とは異なる物であっても良い。すなわち、第1作業車及び第2作業車は田植機であっても良いし、トラクタであっても良い。もちろん、これら以外の車両であっても良い。更に、第1作業車及び第2作業車は、互いに異なる機種(例えばトラクタとコンバインとの組み合わせ)であっても良い。
【0054】
上記実施形態では、第2コンバイン10Bが1台である場合の例を挙げて説明したが、第2コンバイン10Bは2台以上であっても良い。
【0055】
上記実施形態では、相対走行位置設定部34は、既作業地マップに基づいて圃場における収穫作業を行っていない未作業地を第2コンバイン10Bが走行するように相対走行位置を設定するとして説明したが、相対走行位置設定部34は、収穫作業を行っている既作業地を第2コンバイン10Bが走行するように相対走行位置を設定しても良い。
【0056】
上記実施形態では、検出部42がカメラであって、第2コンバイン10Bに対する第1コンバイン10Aの相対位置を撮像画像に基づいて検出し、走行制御部36は、相対位置が相対走行位置と一致するように第2コンバイン10Bを自動走行させるとして説明した。しかしながら、検出部42は、例えば距離を直接検出するセンサ(距離センサやレーザ等)であっても良い。
【0057】
上記実施形態では、相対走行位置設定部34は、作業対象領域CAに設定される第1コンバイン10Aの走行経路毎に相対走行位置を設定するとして説明したが、相対走行位置は作業対象領域CAにおいて変更することなく一定なものに設定することも可能である。
【0058】
上記実施形態では、作業対象領域CAにおける走行経路を直線状に示したが、これは一例であって、例えばカーブを描きながら走行するような経路(曲線を含む経路)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、第1作業車と当該第1作業車に追従して自動走行する第2作業車とが協調して圃場作業を行う作業車協調システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:作業車協調システム
10A:第1コンバイン(第1作業車)
10B:第2コンバイン(第2作業車)
18A:第1位置検出モジュール
18B:第2位置検出モジュール
30:圃場マップ取得部
32:既作業地マップ作成部
34:相対走行位置設定部
36:走行制御部
40:走行経路算定部
42:検出部
CA:作業対象領域