(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04N 23/67 20230101AFI20240405BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240405BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20240405BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20240405BHJP
G03B 13/02 20210101ALI20240405BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240405BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240405BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20240405BHJP
H04N 23/53 20230101ALI20240405BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20240405BHJP
【FI】
H04N23/67 100
G02B7/28 N
G02B7/34
G02B7/36
G03B13/02
G03B13/36
G03B15/00 Q
G03B17/18
H04N23/53
H04N23/611
(21)【出願番号】P 2019239285
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019072164
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】翠川 賢太郎
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129765(JP,A)
【文献】特開2018-125612(JP,A)
【文献】特開2009-065582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/50 -23/76
G02B 7/28 - 7/40
G03B 13/02
G03B 13/36
G03B 15/00
G03B 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、
撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、
を備え
、
前記操作手段は、撮像装置の第1面の第1の辺に沿う第1のグリップ部を持つ手の親指で操作可能であって、タッチ操作と光学式トラッキングポインタへの指のスライド操作を検出できる光学式トラッキングポインタであり、
前記光学式トラッキングポインタは、オートフォーカス操作の開始を指示するオートフォーカスボタンに組み込まれていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記表示手段を見ながら撮影を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を、前記ファインダーを見ながら撮影を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量よりも大きくすることを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、ライブビューを行うスイッチの状態に基づいて、前記表示手段を見ながら撮影を行うか、前記ファインダーを見ながら撮影を行うかを判断することを特徴とする請求項
1または
2に記載の撮像装置。
【請求項4】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、
撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、
画面上の焦点検出領域の配置数が異なる複数の焦点検出方式で焦点検出を行うことが可能な焦点検出手段と、
を備え
、
前記制御手段は、前記焦点検出領域の配置数が相対的に多い焦点検出方式で焦点検出を行う場合と、前記焦点検出領域の配置数が相対的に少ない焦点検出方式で焦点検出を行う場合とで、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記焦点検出領域の配置数が相対的に多い焦点検出方式で焦点検出を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を、前記焦点検出領域の配置数が相対的に少ない焦点検出方式で焦点検出を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量よりも大きくすることを特徴とする請求項
4に記載の撮像装置。
【請求項6】
画面上の焦点検出領域の配置範囲の広さが異なる複数の焦点検出方式で焦点検出を行うことが可能な焦点検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記焦点検出領域の配置範囲の広さが相対的に広い焦点検出方式で焦点検出を行う場合と、前記焦点検出領域の配置範囲の広さが相対的に狭い焦点検出方式で焦点検出を行う場合とで、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする請求項1
乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記焦点検出領域の配置範囲の広さが相対的に広い焦点検出方式で焦点検出を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を、前記焦点検出領域の配置範囲の広さが相対的に狭い焦点検出方式で焦点検出を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量よりも大きくすることを特徴とする請求項
6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、モードを切り替えるスイッチの状態に基づいて、どの焦点検出方式が選択されているかを判断することを特徴とする請求項
4乃至
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、
撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、
画像信号から被写体を検出する検出手段と、
を備え
、
前記制御手段は、前記検出手段により複数の被写体が検出された場合に、該複数の被写体間の距離に応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記被写体間の距離が一定距離よりも大きくなった場合に、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を大きくすることを特徴とする請求項
9に記載の撮像装置。
【請求項11】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、
撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、
オートフォーカス動作を継続的に行うサーボモードと、1回のオートフォーカス動作で動作を完了するワンショットモードの2つのオートフォーカスモードを有する焦点調節手段と、
を備え
、
前記制御手段は、サーボモードで焦点調節を行う場合と、ワンショットモードで焦点調節を行う場合とで、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
前記制御手段は、サーボモードで焦点調節を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を、ワンショットモードで焦点調節を行う場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量よりも大きくすることを特徴とする請求項
11に記載の撮像装置。
【請求項13】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、
撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、
を備え
、
前記制御手段は、前記焦点検出領域の密度に応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記焦点検出領域の密度が高い場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を、前記焦点検出領域の密度が低い場合の、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量よりも大きくすることを特徴とする請求項
13に記載の撮像装置。
【請求項15】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、を備え
、前記操作手段は、撮像装置の第1面の第1の辺に沿う第1のグリップ部を持つ手の親指で操作可能であって、タッチ操作と光学式トラッキングポインタへの指のスライド操作を検出できる光学式トラッキングポインタであり、前記光学式トラッキングポインタは、オートフォーカス操作の開始を指示するオートフォーカスボタンに組み込まれている、撮像装置を制御する方法であって、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御工程を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項16】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御工程
と、
画面上の焦点検出領域の配置数が異なる複数の焦点検出方式で焦点検出を行うことが可能な焦点検出工程と、を有
し、
前記制御工程では、前記焦点検出領域の配置数が相対的に多い焦点検出方式で焦点検出を行う場合と、前記焦点検出領域の配置数が相対的に少ない焦点検出方式で焦点検出を行う場合とで、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項17】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御工程
と、
画像信号から被写体を検出する検出工程と、を有
し、
前記制御工程では、前記検出工程において複数の被写体が検出された場合に、該複数の被写体間の距離に応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項18】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御工程
と、
オートフォーカス動作を継続的に行うサーボモードと、1回のオートフォーカス動作で動作を完了するワンショットモードの2つのオートフォーカスモードを有する焦点調節工程と、を有
し、
前記制御工程では、サーボモードで焦点調節を行う場合と、ワンショットモードで焦点調節を行う場合とで、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項19】
ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、
ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段
であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御工程を有
し、
前記制御工程では、前記焦点検出領域の密度に応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項20】
請求項
15乃至19のいずれか1項に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項21】
請求項
15乃至19のいずれか1項に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
ユーザが行うスライド操作によって画面上の焦点検出領域を移動できる操作装置と、
ファインダーに設けられた第1の表示装置と、
撮像装置の背面に設けられる第2の表示装置であって、前記第1の表示装置の下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記第1の表示装置の画面の大きさよりも大きい第2の表示装置と、
前記第1の表示装置、前記第2の表示装置のいずれかに被写体像を表示させ、前記第2の表示装置に被写体像を表示する場合の前記操作装置の操作量に対する画面上の焦点検出領域の移動量が、前記第1の表示装置に被写体像を表示する場合の前記操作装置の操作量に対する画面上の焦点検出領域の移動量よりも大きくなるように制御する制御装置と、を備え、
前記操作装置は、撮像装置の第1面の第1の辺に沿う第1のグリップ部を持つ手の親指で操作可能であって、タッチ操作と光学式トラッキングポインタへの指のスライド操作を検出できる光学式トラッキングポインタであり、
前記光学式トラッキングポインタは、オートフォーカス操作の開始を指示するオートフォーカスボタンに組み込まれていることを特徴とする撮像装置。
【請求項23】
前記光学式トラッキングポインタは、赤外線方式を採用することにより、タッチ操作と前記光学式トラッキングポインタへの指の前記スライド操作を検出できることを特徴とする請求項22に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記焦点検出領域の取りうる位置の選択可能な点数は、前記第2の表示装置よりも前記第1の表示装置の方が少ないことを特徴とする請求項22に記載の撮像装置。
【請求項25】
ユーザが行うスライド操作によって画面上の焦点検出領域を移動できる操作装置と、ファインダーに設けられた第1の表示装置と、撮像装置の背面に設けられる第2の表示装置であって、前記第1の表示装置の下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記第1の表示装置の画面の大きさよりも大きい第2の表示装置と、を備え、前記操作装置は、撮像装置の第1面の第1の辺に沿う第1のグリップ部を持つ手の親指で操作可能であって、タッチ操作と光学式トラッキングポインタへの指のスライド操作を検出できる光学式トラッキングポインタであり、前記光学式トラッキングポインタは、オートフォーカス操作の開始を指示するオートフォーカスボタンに組み込まれている、撮像装置を制御する方法であって、
前記第1の表示装置、前記第2の表示装置のいずれかに被写体像を表示させ、前記第2の表示装置に被写体像を表示する場合の前記操作装置の操作量に対する画面上の焦点検出領域の移動量が、前記第1の表示装置に被写体像を表示する場合の前記操作装置の操作量に対する画面上の焦点検出領域の移動量よりも大きくなるように制御する制御工程を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項26】
請求項25に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項27】
請求項25に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置において焦点検出領域を移動させる操作の操作性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにより撮影を行う場合、カメラの背面の表示部の画像を見ながら撮影を行う場合(以下、ライブビュー撮影と呼ぶ)とファインダーを覗いて撮影を行う場合(以下、ファインダー撮影と呼ぶ)がある。このように2つの撮影方法がある場合、それぞれの方法においてカメラが提供する機能が異なる場合には、操作部材の操作受付条件を変えることがあった。
【0003】
例えば、特許文献1には、ライブビュー撮影と、ファインダー撮影とで、それぞれ有効な操作部材を切り替える手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、ライブビュー撮影を行う場合とファインダー撮影を行う場合とで操作部材自体の有効無効を切り替えている。そのため、例えばある操作部材に焦点検出領域を選択する機能が割り当てられている場合、ライブビュー撮影を行う場合とファインダー撮影を行う場合とで、同じ操作部材で焦点検出領域を選択することができない。これは、ユーザーに使用上の違和感を与えることになる。
【0006】
また、2つの撮影方法に対して、同じ操作部材に同じ機能を割り当てた場合、次のような問題が生じる。例えば上記と同様に、ある操作部材で焦点検出領域の選択を行う場合、ライブビュー撮影では、ユーザーは自分の指の動きを視認しながら操作を行うことができるので、緻密な選択操作が可能である。一方、ファインダー撮影では、自分の指の動きが視認できないので、ライブビュー撮影に比べて指の動きは荒くなってしまう。そのため、操作部材にライブビュー撮影を前提にしたアルゴリズムを適用すると、ファインダー撮影を行う場合、ユーザーの思い通りの操作ができないことがある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ライブビュー撮影とファインダー撮影のいずれの場合でも、焦点検出領域を移動させる操作の良好な操作性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる撮像装置は、ユーザーによる移動操作により、画面上の焦点検出領域を移動させることが可能な操作手段と、ファインダーと、撮像装置の背面に設けられた被写体像を表示する表示手段であって、前記ファインダーの下方に配置され、且つ、その画面の大きさが前記ファインダーの画面の大きさよりも大きい表示手段と、前記ファインダーを見ながら撮影するか、前記表示手段を見ながら撮影するかに応じて、前記操作手段の操作量に対する画面上での前記焦点検出領域の移動量を変更するように制御する制御手段と、を備え、前記操作手段は、撮像装置の第1面の第1の辺に沿う第1のグリップ部を持つ手の親指で操作可能であって、タッチ操作と光学式トラッキングポインタへの指のスライド操作を検出できる光学式トラッキングポインタであり、前記光学式トラッキングポインタは、オートフォーカス操作の開始を指示するオートフォーカスボタンに組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ライブビュー撮影とファインダー撮影のいずれの場合でも、焦点検出領域を移動させる操作の良好な操作性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の撮像装置の第1の実施形態である一眼レフデジタルカメラを示す斜視図。
【
図2】第1の実施形態のカメラの構成を示すブロック図
【
図3】第1の実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャート。
【
図4】第2の実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャート。
【
図5】第3の実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャート。
【
図6A】
図1に示すカメラを用いた撮影の一例を説明するための図。
【
図6B】
図1に示すカメラを用いた撮影の一例を説明するための図。
【
図6C】
図1に示すカメラを用いた撮影の一例を説明するための図。
【
図6D】
図1に示すカメラを用いた撮影の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の撮像装置の第1の実施形態である一眼レフデジタルカメラ(以降、カメラと称する)100を示す斜視図である。具体的には、
図1(a) は、カメラ100を前面側から見た図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。
図1(b) は、一眼レフカメラ100を背面側から見た図である。
【0013】
図1(a)において、カメラ100には、横位置での撮影時にユーザーがカメラ100を安定して握り、操作出来るよう、前方に突出した第1グリップ部101が設けられている。またカメラ100には、縦位置での撮影時にユーザーがカメラ100を安定して握り、操作出来るよう、前方に突出した第2グリップ部102が設けられている。シャッターボタン103,105は、撮影指示を行うための操作部材である。
【0014】
メイン電子ダイヤル104,106は回転操作部材であり、このメイン電子ダイヤル104,106を回すことにより、シャッター速度や絞りなどの設定値の変更等を行うことができる。シャッターボタン103,105、及びメイン電子ダイヤル104,106は、スイッチ部70に含まれる。シャッターボタン103、メイン電子ダイヤル104は横位置撮影用、シャッターボタン105、メイン電子ダイヤル106は縦位置撮影用として主に使用することが出来る。
【0015】
図1(b)において、表示部28は画像や各種情報を表示可能な表示部である。表示部28は、タッチ操作を受け付け(タッチ検出)可能なタッチパネル70aと重畳して、もしくは一体となって設けられている。
【0016】
光学トラッキングポインター1、光学トラッキングポインター2(以降、光学トラッキングポインターをOTPと称する)はタッチ操作を受け付けることが可能なタッチ操作部材(本実施形態では赤外線式センサー)である。ファインダーを覗いたまま、OTP1は第1グリップ部101を、OTP2は第2グリップ部102を握った右手の親指でタッチ操作、及び任意の2次元方向へスライド操作(移動操作)することが出来る。OTP1は横位置撮影用、OTP2は縦位置撮影用として主に使用することが出来る。また、第1グリップ部101または第2グリップ部102を握り、タッチ操作及びスライド操作をしながら、即座にAF(オートフォーカス)が開始出来るよう、OTP1はAF-ONボタン80a内に、OTP2はAF-ONボタン80b内にそれぞれ組み込まれている。
【0017】
OTP1、OTP2は、タッチパネル70aとは異なる操作部材であり、表示機能は備えていない。カメラ100を操作するユーザーは、OTP1またはOTP2を操作することにより、表示部28の画面上に表示された焦点検出枠305の位置を移動させることが出来る。なお、表示部28に表示でき、かつ移動させることが出来るものであれば、OTP1、OTP2を操作して移動させる対象物は、いかなるものでもよく、また同一対象物でなくてもよい。
【0018】
モード切り替えスイッチ60は、各種モードを切り替えるための操作部材である。なお、本実施形態のカメラ100では、焦点検出領域(焦点検出枠)の配置数が異なる複数の焦点検出方式により焦点検出を行うことが可能であり、モード切り替えスイッチ60は、この焦点検出方式の切り替えも行う。さらには、焦点検出領域の配置範囲の広さが異なる複数の焦点検出方式により焦点検出を行うことも可能であり、モード切り替えスイッチ60は、この焦点検出方式の切り替えも行う。
【0019】
電源スイッチ72は、カメラ100の電源のON及びOFFを切り替える操作部材である。サブ電子ダイヤル73は選択枠の移動や画像送りなどを行う回転操作部材である。8方向キー74a,74bは、上、下、左、右、左上、左下、右上、右下部分をそれぞれ押し込み可能な操作部材であり、8方向キー74a,74b の押された方向に応じた操作が可能である。8方向キー74aは横位置撮影用、8方向キー74bは縦位置撮影用として主に使用することが出来る。SETボタン75は、主に選択項目の決定などに用いられる操作部材である。静止画/動画切り替えスイッチ77は、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替える操作部材である。
【0020】
LVボタン78は、ライブビュー(以下、LV)のONとOFFを切り替える操作部材である。再生ボタン79は、撮影モード(撮影画面)と再生モード(再生画面)とを切り替える操作部材である。Qボタン76はクイック設定をするための操作部材であり、撮影画面においてQボタン76を押下すると、設定値の一覧が表示されて設定項目を選択可能になり、さらに設定項目を選択すると各設定項目の設定画面へと遷移することができる。撮影モード中に再生ボタン79を押下することにより再生モードに移行し、記録媒体200(
図2参照)に記録された画像のうち最新の画像を表示部28に表示させることができる。
【0021】
モード切り替えスイッチ60、電源スイッチ72、サブ電子ダイヤル73、8方向キー74a,74b、SETボタン75、Qボタン76、静止画/動画切り替えスイッチ77、LVボタン78、再生ボタン79は、スイッチ部70に含まれる。AF-ONボタン80a,80bはAFを開始するための操作部材であり、スイッチ部70に含まれる。AF-ONボタン80aは横位置撮影用、AF-ONボタン80bは縦位置撮影用として主に使用することが出来る。
【0022】
メニューボタン81は、スイッチ部70に含まれ、カメラ100の各種設定を行うための操作部材である。メニューボタン81が押されると各種の設定可能なメニュー画面が表示部28に表示される。ユーザーは、表示部28に表示されたメニュー画面と、サブ電子ダイヤル73、8方向キー74a,74b、SETボタン75、メイン電子ダイヤル104,106を用いて直感的に各種設定を行うことができる。
【0023】
接眼ファインダー16はレンズユニットを通して得た被写体の光学像の焦点や構図の確認を行うための、被写体を観察可能な覗き込み型のファインダーである。INFOボタン82はスイッチ部70に含まれ、カメラ100の各種情報を表示部28に表示することが出来る。
【0024】
図6A~6Dは、
図1に示すカメラを用いた撮影の一例を説明するための図である。
図6A、6Cは、撮影の際にファインダーにて見える像を示す図であり、
図6B、6Dは、撮影の際に表示部28に表示される像を示す図である。
【0025】
今、ユーザーが手301によって第1のグリップ部101を把持して、OTP1を親指301bで操作しているものとする。ユーザーがOTP1を操作する親指301bをスライド操作することによって、システム制御部50がOTP1のタッチムーブを検知する。
【0026】
図6A、6Cにおいて、焦点検出枠405はファインダーにて見える移動前の焦点検出枠である。そして、焦点検出枠405a,405cは移動後の焦点検出枠である。タッチムーブによって焦点検出枠405が焦点検出枠405a,405cの位置に移動する。
【0027】
図6B、6Dにおいて、表示部28に表示した際において、焦点検出枠305は移動前の焦点検出枠である。そして、焦点検出枠305b,305dは移動後の焦点検出枠である。タッチムーブによって焦点検出枠305が焦点検出枠305b,305dの位置に移動する。
【0028】
ここで、
図6A、6Bは、同じOTPの操作量に対して、一律に焦点検出枠の移動量 (Δx,Δy) で制御した場合を表している。ライブビュー撮影の場合、ファインダー撮影に比べて、焦点検出枠の取りうる位置の選択可能な範囲が広く、細かい位置調整が可能である。したがって、移動量(Δx,Δy)で単純に制御しても意図した位置へ合わせやすい。これに対して、ファインダー撮影の場合、ライブビュー撮影に比べて、焦点検出枠の取りうる位置の選択可能な点数が少なく、予め決まっている位置の密度が高いため、細かい位置調整が不可能である。また、ライブビュー撮影では、ユーザーの顔がカメラから離れているため、比較的細かい操作がしやすいが、ファインダー撮影の場合には、ユーザーの顔と、手やカメラとの距離が接近しているため、比較的細かい操作がしにくい。したがって、移動量 (Δx,Δy)での単純な制御をすると、意図しない方向に移動する、行き過ぎるといったことがおこり、ユーザーに違和感を与えてしまう可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、
図6C、6Dのように、同じOTPの操作量に対して、ファインダー撮影の場合の方が、ライブビュー撮影の場合よりも、焦点検出枠位置がより小さく動くように焦点検出枠位置の移動量を制御する。言い換えると、同じOTPの操作量に対して、ライブビュー撮影の場合の方が、ファインダー撮影の場合よりも、焦点検出枠位置がより大きく動くように焦点検出枠位置の移動量を制御することになる。これにより、ライブビュー撮影のときも、ファインダー撮影のときも、操作量が同じ第1の値だったときには、焦点検出枠の移動量は、ライブビュー撮影のときの方が大きくなる。
【0030】
なお、OTP1、OTP2の各々はタッチおよびスライド操作の受付について有効および無効に切り替えることができる。また、OTP1、OTP2の各々はAF動作中においてもタッチおよびスライド操作を受け付けることができる。
【0031】
このように、本実施形態では、押し込みの際の誤検知を回避するため、押しボタンにおけるストロークを確保する。そして、操作部材間における指の移動を行うことなくAF位置の選択およびAFの開始を容易に行うことができる。
【0032】
なお、上述の例では、選択部材(ポインティングデバイス)はAF位置の選択およびAFの開始に用いる場合について説明したが、カメラにおける撮像、再生、および設定に係る動作を選択して当該選択した動作の開始又は選択の決定を指示することに適用することができる。
【0033】
例えば、表示部に撮像、再生、および設定に係る動作を選択するための画面を表示するとともに、当該画面から撮像、再生、および設定を選択するためのカーソル(表示体)を表示する。そして、選択部材(ポインティングデバイス)による入力量に応じてカーソルを移動させて操作部材の操作に応じてカーソルによって選択された動作を実行する。
【0034】
また、前述のように、ポインティングデバイスは操作部材内に配置される。さらに、撮像には被写体をフォーカスする動作が含まれ、再生には画像送りおよび画像の拡大縮小が含まれており、設定には少なくともシャッタースピード、ISO感度、絞り、および露出補正の設定が含まれている。
【0035】
図2は、本実施形態のカメラ100の構成を示すブロック図である。
【0036】
図2において、レンズユニット150は、撮影レンズを搭載する交換可能なレンズユニットである。レンズ155は通常、複数枚のレンズから構成されるが、ここでは簡略化して一枚のレンズのみで示している。
【0037】
通信端子6は、レンズユニット150がカメラ100と通信を行うための通信端子であり、通信端子10はカメラ100がレンズユニット150と通信を行うための通信端子である。レンズユニット150は、この通信端子6,10を介してシステム制御部50と通信する。そして、内部のレンズシステム制御回路154は、絞り駆動回路152を介して絞り151の制御を行い、AF駆動回路153を介してレンズ155の位置を変位させることにより焦点を合わせる。レンズユニット150はカメラ100に設けられた装着部を介してカメラ100に装着される。レンズユニット150として、単焦点レンズやズームレンズなどの様々な種類のレンズを装着することができる。
【0038】
AEセンサー17は、レンズユニット150、クイックリターンミラー12を介してフォーカシングスクリーン13上に結像した被写体像の輝度を測光する。
【0039】
焦点検出部11(AFセンサー)は、クイックリターンミラー12を介して入射する像を光電変換し、システム制御部50にデフォーカス量情報を出力する位相差検出方式のAFセンサーである。システム制御部50は、デフォーカス量情報に基づいてレンズユニット150を制御し、焦点調節を行う。AFの方法は、位相差AFに限らず、コントラストAFでもよい。また、位相差AFは焦点検出部11を用いずに、撮像部22の撮像面で検出されたデフォーカス量に基づいて行ってもよい(撮像面位相差AF)。
【0040】
クイックリターンミラー12(以下、ミラー12)は、露光、ライブビュー撮影、動画撮影の際にシステム制御部50から指示されて、不図示のアクチュエータによりアップダウンされる。ミラー12は、レンズ155から入射した光束をファインダー16側と撮像部22側とに切替えるためのミラーである。ミラー12は通常時はファインダー16へと光束を反射させて導くように配置されているが、撮影が行われる場合やライブビュー表示の場合には、撮像部22へと光束を導くように上方に跳ね上がり、光路中から退避する(ミラーアップ)。またミラー12は、その中央部が光の一部を透過できるようにハーフミラーとなっており、光束の一部を、焦点検出を行うための焦点検出部11に入射するように透過させる。
【0041】
ユーザーは、ペンタプリズム14とファインダー16を介して、フォーカシングスクリーン13上に結像した像を観察することにより、レンズユニット150を通して得た被写体の光学像の焦点状態や構図の確認を行うことができる。フォーカルプレーンシャッター21(以下、シャッター21)は、システム制御部50の制御により撮像部22の露光時間を制御する。
【0042】
撮像部22は光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS素子等で構成される撮像素子を備える。A/D変換器23は、撮像部22から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0043】
画像処理部24は、A/D変換器23からのデータ、又は、メモリ制御部15からのデータに対し所定の画素補間処理、縮小処理といったリサイズ処理や、色変換処理を行う。また、画像処理部24では、撮像した画像データを用いて所定の演算処理が行われ、得られた演算結果に基づいてシステム制御部50が露光制御、焦点検出制御を行う。これにより、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理が行われる。画像処理部24では更に、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理も行っている。
【0044】
メモリ32は、撮像部22によって取得されA/D変換器23によりデジタルデータに変換された画像データや、表示部28に表示するための画像データを格納する。メモリ32は、所定枚数の静止画像や所定時間の動画像および音声を格納するのに十分な記憶容量を備えている。メモリ32は、メモリカードなどの着脱可能な記録媒体であっても、内蔵メモリであってもよい。
【0045】
表示部28は、画像を表示するための液晶表示装置などの背面モニタであり、
図1(b)に示すようにカメラ100の背面に設けられている。D/A変換器19は、メモリ32に格納されている表示用の画像データをアナログ信号に変換して表示部28に供給する。表示部28は、画像を表示するディスプレイであれば液晶方式に限らず、有機ELなど他の方式のディスプレイであってもよい。
【0046】
姿勢検出部55は、カメラ100の傾き角度などの姿勢を検出するためのセンサーである。不揮発性メモリ56は、システム制御部50によって電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばEEPROM等が用いられる。不揮発性メモリ56には、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等が記憶される。ここでいう、プログラムとは、本実施形態において後述する各種フローチャートを実行するためのプログラムのことである。
【0047】
システム制御部50は、少なくとも1つのプロセッサーを内蔵し、カメラ100全体を制御する。不揮発性メモリ56に記録されたプログラムを実行することにより、後述する本実施形態の各処理を実行する。システムメモリ52では、システム制御部50の動作用の定数、変数などを一時的に記憶するとともに、不揮発性メモリ56から読み出したプログラム等を展開する。また、システム制御部50は、メモリ32、D/A変換器19、表示部28等を制御することにより表示制御も行う。
【0048】
システムタイマー53は各種制御に用いる時間や、内蔵された時計の時間を計測する計時部である。モード切り替えスイッチ60は、システム制御部50の動作モードを静止画撮影モード、動画撮影モード等の各種モードのいずれかに切り替える。静止画撮影モードには、Pモード(プログラムAE)、Mモード(マニュアル)等が含まれる。あるいは、モード切り替えスイッチ60でメニュー画面に一旦切り換えた後に、メニュー画面に含まれるこれらのモードのいずれかに、他の操作部材を用いて切り替えるようにしてもよい。同様に、動画撮影モードにも複数のモードが含まれていてもよい。Mモードでは、絞り数値、シャッター速度、ISO感度をユーザーが設定でき、ユーザーの意図する露出で撮影を行う。
【0049】
第1シャッタースイッチ62は、カメラ100に設けられたシャッターボタン103,105の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。第1シャッタースイッチ信号SW1により、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の撮影準備動作を開始する。またAEセンサー17による測光も行う。第2シャッタースイッチ64は、シャッターボタン103,105の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。システム制御部50は、第2シャッタースイッチ信号SW2により、撮像部22からの信号読み出しから記録媒体200に画像データを書き込むまでの一連の撮影処理の動作を開始する。
【0050】
電源制御部83は、電池検出回路、DC-DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行う。また、電源制御部83は、その検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体200を含む各部へ供給する。電源スイッチ72はカメラ100の電源のON、OFFを切り替えるためのスイッチである。
【0051】
電源部30は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池、NiCd電池やNiMH電池やLiイオン電池等の二次電池、ACアダプター等からなる。記録媒体I/F18は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体200とのインターフェースである。記録媒体200は、撮影された画像を記録するためのメモリカード等の記録媒体であり、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される。
【0052】
なお操作部70の一つとして、表示部28に対する接触を検知可能なタッチパネル70aを有する。タッチパネル70aと表示部28とは一体的に構成することができる。例えば、タッチパネル70aを光の透過率が表示部28の表示を妨げないように構成し、表示部28の表示面の上層に取り付ける。そして、タッチパネルにおける入力座標と、表示部28上の表示座標とを対応付ける。これにより、あたかもユーザーが表示部28上に表示された画面を直接的に操作可能であるかのようなGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を構成することができる。システム制御部50はタッチパネル70aへの以下の操作、あるいは状態を検出することができる。
・タッチパネル70aにタッチしていなかった指やペンが新たにタッチパネル70aにタッチしたこと。すなわち、タッチの開始(以下、タッチダウン(Touch-Down)と称する)。
・タッチパネル70aを指やペンでタッチしている状態であること(以下、タッチオン(Touch-On)と称する)。
・タッチパネル70aを指やペンでタッチしたまま移動していること(以下、タッチムーブ(Touch-Move)と称する)。
・タッチパネル70aへタッチしていた指やペンを離したこと。すなわち、タッチの終了(以下、タッチアップ(Touch-Up)と称する)。
・タッチパネル70aに何もタッチしていない状態(以下、タッチオフ(Touch-Off)と称する)。
【0053】
タッチダウンが検知されると、同時にタッチオンであることも検知される。タッチダウンの後、タッチアップが検出されない限りは、通常はタッチオンが検知され続ける。タッチムーブが検知されるのもタッチオンが検知されている状態である。タッチオンが検知されていても、タッチ位置が移動していなければタッチムーブは検知されない。タッチしていた全ての指やペンがタッチアップしたことが検知された後は、タッチオフとなる。さらにタッチオン状態で所定以上の圧力がタッチパネル70a上にかかる押圧状態を検知できるようにしてもよい。
【0054】
これらの操作状態や、タッチパネル70a上に指やペンがタッチしている位置座標は内部バスを通じてシステム制御部50に通知され、システム制御部50は通知された情報に基づいてタッチパネル上にどのような操作が行なわれたかを判定する。タッチムーブについてはタッチパネル上で移動する指やペンの移動方向についても、位置座標の変化に基づいて、タッチパネル上の垂直成分・水平成分毎に判定できる。またタッチパネル上をタッチダウンから一定のタッチムーブを経てタッチアップをしたとき、ストロークを描いたこととする。素早くストロークを描く操作をフリックと呼ぶ。フリックは、タッチパネル上に指をタッチしたままある程度の距離だけ素早く動かして、そのまま離すといった操作であり、言い換えればタッチパネル上を指ではじくように素早くなぞる操作である。所定距離以上を、所定速度以上でタッチムーブしたことが検出され、そのままタッチアップが検出されるとフリックが行なわれたと判定できる。また、所定距離以上を、所定速度未満でタッチムーブしたことが検出された場合はドラッグが行なわれたと判定するものとする。
【0055】
タッチパネル70a は、抵抗膜方式や静電容量方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、画像認識方式、光センサー方式等、様々な方式のタッチパネルのうちいずれの方式のものを用いてもよい。方式によって、タッチパネルに対する接触があったことでタッチがあったと検出する方式や、タッチパネルに対する指やペンの接近があったことでタッチがあったと検出する方式ものがあるが、いずれの方式でもよい。
【0056】
システム制御部50は、OTP1、OTP2の出力情報に基づいて、スライド操作による動きの方向(以降、移動方向と称する)を、上、下、左、右、左上、左下、右上、右下の8方向で算出する。またシステム制御部50は、OTP1、OTP2の出力情報に基づいて、スライド操作による動きの量をx軸方向、y軸方向(以降、移動量(x,y)と称する)の2次元方向で算出する。システム制御部50は、さらにOTP1、OTP2への以下の操作、あるいは状態を検知することができる。
・OTP1、またはOTP2にタッチしていなかった指が新たにOTP1、またはOTP2にタッチしたこと。すなわち、タッチの開始(以下、タッチダウン(Touch-Down)と称する)。
・OTP1、またはOTP2を指でタッチしている状態であること(以下、タッチオン(Touch-On)と称する)。
・OTP1、またはOTP2を指でタッチしたまま移動していること(以下、タッチムーブ(Touch-Move)と称する)。
・OTP1、またはOTP2へタッチしていた指を離したこと。すなわち、タッチの終了(以下、タッチアップ(Touch-Up)と称する)。
・OTP1、またはOTP2に何もタッチしていない状態(以下、タッチオフ(TouchーOff)と称する)。
【0057】
タッチダウンが検知されると、同時にタッチオンであることも検知される。タッチダウンの後、タッチアップが検知されない限りは、通常はタッチオンが検知され続ける。タッチムーブが検知されるのもタッチオンが検知されている状態である。タッチオンが検知されていても、移動量(x,y)が0であれば、タッチムーブは検知されない。タッチしていた全ての指やペンがタッチアップしたことが検知された後は、タッチオフとなる。
【0058】
システム制御部50は、これらの操作状態や移動方向、移動量(x,y)に基づいて、OTP1、OTP2上にどのような操作(タッチ操作)が行なわれたかを判定する。タッチムーブについてはOTP1、OTP2上で、上、下、左、右、左上、左下、右上、右下の8方向、またはx軸方向、y軸方向の2次元方向の移動を検知する。システム制御部50は、8方向のいずれかの方向への移動、またはx軸方向、y軸方向の2次元方向の片方もしくは両方への移動が検出された場合は、スライド操作が行なわれたと判定するものとする。OTP1またはOTP2上に指をタッチし、スライド操作することなく、所定時間以内にタッチを離す操作があった場合に、タップ操作が行われたと判定するものとする。
【0059】
OTP1、OTP2は、本実施形態では、赤外線方式のタッチセンサーであるものとする。ただし、抵抗膜方式、表面弾性波方式、静電容量方式、電磁誘導方式、画像認識方式、光センサー方式等、別の方式のタッチセンサーであってもよい。
【0060】
次に、上記のように構成される本実施形態のカメラ100における焦点検出枠位置の移動動作について説明する。
図3は、本実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャートである。
【0061】
S301において、システム制御部50は、50msのポーリング周期でOTP(光学トラッキングポインターOTP1、OTP2)の操作入力をチェックする。ポーリング周期ごとにS302でX方向への操作量を、S303でY方向への操作量を取得する。
【0062】
S304において、システム制御部50は、LVボタン78のONかOFF化に基づいて、現在の撮影方法がファインダーを用いた撮影(ファインダー撮影)であるか否かを確認する。そして、ファインダー撮影であれば、S305に進み、S302及びS303で得られた操作量に従って焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0063】
S304において、現在の撮影方法がファインダー撮影でなかった場合、S306において、現在の撮影方法が背面パネル表示での撮影(ライブビュー撮影)であるか否かを確認する。そして、ライブビュー撮影であれば、S307に進み、S302及びS303で得られた操作量に1より大きい係数をかけて、同じOTPの操作量に対して、ファインダー撮影の場合よりも、焦点検出枠位置がより大きく動くように焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0064】
なお、S306において、現在の撮影方法がライブビュー撮影でもない場合は、そのままS308に進む。
【0065】
S308では、OTPの操作の受け付けを停止するか否かの判断を行い、停止する場合はこのフローの処理を終了し、停止しない場合はS301へ戻る。
【0066】
以上説明したように、第1の実施形態では、ユーザーが自分の指の動きを視認しながら焦点検出枠位置を移動させることができ、繊細な操作ができるライブビュー撮影においては、視認することができないファインダー撮影の場合よりも、OTPの操作量に対する焦点検出枠位置の移動量を大きくする。これにより、OTPの操作量に対する、ファインダー撮影とライブビュー撮影に適した焦点検出枠位置の移動感度を得ることができ、いずれの撮影方法においても、焦点検出枠位置を移動させるときの良好な操作性を実現することができる。
【0067】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態では、カメラ100の構成は第1の実施形態と同一であり、焦点検出枠位置の移動動作のみが異なる。そのため、カメラ100の構成についての説明は省略し、焦点検出枠位置の移動動作について説明する。
【0068】
図4は、第2の実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャートである。
【0069】
S401において、システム制御部50は50msのポーリング周期でOTPの操作入力をチェックする。ポーリング周期ごとにS402でX方向への操作量を、S403でY方向への操作量を取得する。
【0070】
S404において、システム制御部50は、モード切り替えスイッチ60の状態から、現在のAF(オートフォーカス)方式が、焦点検出枠位置として選択可能な点が少ない方式であるか否かを確認する。そして、AF方式が選択可能点が相対的に少ない方式であれば、S405に進み、S402及びS403で得られた操作量に従って焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0071】
S404において、現在のAF方式が選択可能点が少ない方式でなかった場合、S406において、AF方式が選択可能点が多い方式であるか否かを確認する。そして、AF方式が選択可能点が多い方式であれば、S407に進み、S402及びS403で得られた操作量に1より大きい係数をかけて、同じOTPの操作量に対して、選択可能点が少ない方式よりも、焦点検出枠位置がより大きく動くように焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0072】
なお、S406において、現在のAF方式が選択可能点が多い方式でもない場合は、そのままS408に進む。
【0073】
S408では、OTPの操作の受け付けを停止するか否かの判断を行い、停止する場合はこのフローの処理を終了し、停止しない場合はS401へ戻る。
【0074】
以上説明したように、第2の実施形態では、焦点検出枠位置の選択可能点が相対的に多いAF方式においては、選択可能点が相対的に少ないAF方式の場合よりも、OTPの操作量に対する焦点検出枠位置の移動量を大きくする。これにより、OTPの操作量に対する、焦点検出枠位置の選択可能点が多いAF方式と選択可能点が少ないAF方式に適した焦点検出枠位置の移動感度を得ることができる。そして、いずれのAF方式においても、焦点検出枠位置を移動させるときの良好な操作性を実現することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態でも、カメラ100の構成は第1の実施形態と同一であり、焦点検出枠位置の移動動作のみが異なる。そのため、カメラ100の構成についての説明は省略し、焦点検出枠位置の移動動作について説明する。
【0076】
図5は、第3の実施形態における焦点検出枠位置の移動動作を示すフローチャートである。
【0077】
S501において、システム制御部50は50msのポーリング周期でOTPの操作入力をチェックする。ポーリング周期ごとにS502でX方向への操作量を、S503でY方向への操作量を取得する。
【0078】
S504において、システム制御部50は、モード切り替えスイッチ60の状態から、現在のAF方式が焦点検出枠位置の選択可能範囲が狭い方式であるか否かを確認する。そして、AF方式が選択可能範囲が狭い方式であればS505に進み、S502及びS503で得られた操作量に従って焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0079】
S504において、現在のAF方式が選択可能範囲が狭い方式でなかった場合、S506において、AF方式が焦点検出枠位置の選択可能範囲が広い方式であるか否かを確認する。そして、AF方式が選択可能範囲の広い方式であれば、S507に進み、S502及びS503で得られた操作量に1より大きい係数をかけて、同じOTPの操作量に対して、選択可能範囲が狭い方式よりも、焦点検出枠位置がより大きく動くように焦点検出枠位置の移動量を算出する。
【0080】
なお、S506において、現在のAF方式が選択可能範囲が広い方式でもない場合は、そのままS508に進む。
【0081】
S508では、OTPの操作の受け付けを停止するか否かの判断を行い、停止する場合はこのフローの処理を終了し、停止しない場合はS401へ戻る。
【0082】
以上説明したように、第3の実施形態では、焦点検出枠位置の選択可範囲が相対的に広いAF方式においては、選択可能範囲が相対的に狭いAF方式の場合よりも、OTPの操作量に対する焦点検出枠位置の移動量を大きくする。これにより、OTPの操作量に対する、焦点検出枠位置の選択可能範囲が広いAF方式と選択可範囲が狭いAF方式に適した焦点検出枠位置の移動感度を得ることができる。そして、いずれのAF方式においても、焦点検出枠位置を移動させるときの良好な操作性を実現することができる。
【0083】
なお、上記の実施形態では、OTPの操作量に対する焦点検出領域の移動量を、撮影状況に応じて異ならせる例として、ファインダー撮影とライブビュー撮影の場合、焦点検出領域の配置数が異なるAF方式の場合、焦点検出領域の配置数が異なるAF方式の場合、の3つの場合を挙げて説明した。しかし、本発明は、これらの場合以外の撮影状況にも適用可能である。例えば、画像信号から被写体を検出する検出手段を持ち、複数の被写体を検出した場合に、被写体間の距離が一定距離よりも大きくなったときに、OTPの操作量に対する焦点検出領域の移動量を大きくするようにしてもよい。また、オートフォーカス動作を継続的に行うサーボモードと、1回のオートフォーカス動作で動作を完了するワンショットモードの2つのオートフォーカスモードを持ち、サーボモード時はワンショットモード時よりもOTPの操作量に対する焦点検出領域の移動量を大きくするようにしてもよい。
【0084】
さらに、上記の実施形態では、焦点検出領域を移動させる操作部材としてOTPを例に挙げて説明したが、OTPの代わりにタッチパネル70aを用いて焦点検出領域を移動させるようにしてもよい。この場合も、第1乃至第3の実施形態に示したOTPを用いた制御と同様の制御を行うことが可能である。
【0085】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0086】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0087】
1:OTP、2:OTP,11:焦点検出部、16:ファインダー、22:撮像部、28:表示部、50:システム制御部、100:カメラ、150:レンズユニット