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特許7466306超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びその製造方法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240405BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240405BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20240405BHJP
   C08K 7/14 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C08L23/06
C08F4/654
C08F10/02
C08K7/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019510358
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2017075495
(87)【国際公開番号】W WO2018032744
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】201610695124.5
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610695066.6
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610695051.X
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610695021.9
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610694953.1
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610695013.4
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】506281853
【氏名又は名称】中国科学院化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李化毅
(72)【発明者】
【氏名】李倩
(72)【発明者】
【氏名】孫同兵
(72)【発明者】
【氏名】朱才鎮
(72)【発明者】
【氏名】劉瑞剛
(72)【発明者】
【氏名】超寧
(72)【発明者】
【氏名】徐堅
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-163935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23/06
C08F10/02
C08F4/654
C08K7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維強化ポリエチレン組成物であって、上記組成物は超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体と、ガラス繊維と、を含み、
上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)が1×106を超え、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは、2~15であり、
上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンが球形または類球形粒子であり、平均粒子径が10~100μmであり、標準偏差が2μm-15μmであり、かさ密度が0.1g/mL~0.3g/mLであり、
上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粒子径分布が正規分布に近く、
上記ガラス繊維の長さは0.5mm-10mmであり、
上記組成物中の各成分の含有量は、重量比で、超高分子量超微粒子径ポリエチレンが10-95wt%、ガラス繊維が5-90wt%であることを特徴とするガラス繊維強化ポリエチレン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、上記ガラス繊維の含有量は10-80wt%であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、上記ガラス繊維の含有量は40-70wt%であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物において、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの平均粒子径は20~90μmであり、上記標準偏差は5μm-15μmであり、かさ密度は0.15g/mL~0.25g/mLであることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物において、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの平均粒子径は30~85μmであることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物において、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの平均粒子径は30~80μmであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物において、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は、1.5×106~4.0×106であり、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは、4~8であることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物において、上記ガラス繊維の長さは1mm-3mm、または3mm-5mm、または5mm-7mmであることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物から製造されたことを特徴とするシート材。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物から製造されたことを特徴とするチューブ。
【請求項11】
請求項10に記載のチューブにおいて、上記チューブの壁厚さは0.1-10mmの間であることを特徴とするチューブ。
【請求項12】
請求項11に記載のチューブにおいて、上記チューブの壁厚さは0.5-5mmの間であることを特徴とするチューブ。
【請求項13】
請求項9に記載のシート材の製造方法であって、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンと、上記ガラス繊維と、を高速攪拌器で均一に混合し、押出機に添加し、シートダイにより押出し、冷却・延伸を経て上記シート材を製造するステップを含むことを特徴とするシート材の製造方法。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1項に記載のチューブの製造方法であって、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンと、上記ガラス繊維と、を高速攪拌器で均一に混合し、押出機に添加し、チューブダイにより押出し、冷却・延伸を経て上記チューブを製造するステップを含むことを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の製造方法であって、以下のステップを含む方法で上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンを製造するステップをさらに含み、
触媒作用の下、エチレンの重合反応を行い、そのうち、重合反応の温度は零下20~100℃であり;エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppmより高くなく、二酸化炭素は15ppmより高くなく、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppmより高くなく、
その内、上記触媒は以下のステップを含む方法により製造する:
(a)ハロゲン化マグネシウム、アルコール系化合物、助剤、一部の内部電子供与体と、溶媒と、を混合して混合物Iを製造する;
(b)反応器内に上記混合物Iを添加し、-30℃~30℃に予熱し、チタン化合物を滴下する;または、反応器内にチタン化合物を添加し、-30℃~30℃に予熱してから、上記の混合物Iを滴下し;
(c)滴下終了後、反応系を0.5~3時間かけて90℃~130℃に昇温し、残りの内部電子供与体を添加して反応を続け;
(d)反応系内の液をろ過除去して、残りのチタン化合物を加えて反応を続け;
(e)反応終了後、仕上げ処理を経て上記触媒が得られることを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項9に記載のシート材の使用であって、上記シート材を、自動車の製造または電子素子の製造に用いるシート材の使用
【請求項17】
請求項10~12のいずれか1項に記載のチューブの使用であって、給排水、または石油探査に用いるチューブの使用
【請求項18】
請求項17に記載の使用であって、上記チューブを給排水の管またはマイニング用の耐摩耗管として使う使用
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ポリオレフィン高分子材料分野に属し、具体的には超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びその製造方法と応用とに関するものである。
【0002】
〔技術背景〕
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、エチレンと、ブタジエンモノマーと、が、チーグラー触媒の作用の下、低圧重合されてなる平均分子量が150万を超え、且つ、その分子が線形構造を有する総合性能の優れた熱可塑性エンジニアリングプラスチックである。UHMWPEの極めて高い分子量(高密度ポリエチレンHDPEの分子量は、通常2~30万しかない)は、その物に優れた使用性能を与えることで、UHMWPEに通常のHDPEおよび他のエンジニアリングプラスチックにはない独特の性能、例えば、優れた耐衝撃性、耐磨耗性、耐薬品腐食性、低温耐性、耐応力亀裂性、抗接着性及び自己潤滑性などを持たせているので、「魔法のプラスチック」とも呼ばれている。当材料は総合性能の優れたものであり、密度も小さく、摩擦係数も非常に小さく、耐磨耗性・低温耐性・耐蝕性・自己潤滑性・耐衝撃性は、凡ゆるプラスチックの中で最高値を示し、耐摩耗性はポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、炭素鋼などよりも優れており、長期間-169℃~+ 80℃で作業することができ、物理的・機械的性能は通常のポリエチレンよりはるかに優れている。冶金、電力、石油、紡織、製紙、食品、化学工業、機械、電気などの分野で幅広く応用できる。
【0003】
熱可塑性エンジニアリングプラスチックとしてのUHMWPEは、固体状態では優れた総合的性能を有するが、その溶融体の特性は通常のポリエチレンなどの一般の熱可塑性プラスチックとは全く異なる。主に以下の幾つの面で表現されている:1)溶融体の粘度が高い; 2) 摩擦係数が小さい;3)臨界せん断速度が小さい;4)成形温度範囲が狭く、酸化分解されやすい。UHMWPEの加工技術は数十年の発展を経て、最初の圧制-焼結成形から押出し成形、ブロー成形および射出成形、溶液紡糸成形など多種の成形方法に発展してきたにも関わらず、UHMWPEには上記問題があるため、加工方法に困難をもたらし、それを形材、薄膜、繊維、フィルター材料などに応用した際、性能低下を起した。
【0004】
例え、UHMWPEの含有量が増加するにつれ、系の粘度も大幅に上昇され、伝統的な湿式法では高粘度の原液を処理することが困難なため、UHMWPEの応用も制限された。例えば、通常の湿式製造法によるプロセスでは、まず、ポリオレフィンをパラフィンワックスまたは他の溶剤中に加熱溶解し、均質溶液を形成させ、加硫装置にでシートに圧制してから冷却させ、液-液相分離が進行されてから、さらに抽出-延伸または延伸-抽出を行い多孔質隔膜が得られる。ポリオレフィンは冷却中に結晶され、液-液分離が発生するため、薄膜の高倍数延伸ができなくなり、隔膜の総合性能の向上も制限された。そのため、伝統の湿式法では、超高分子量ポリエチレンを含む溶液により隔膜を製造することは困難であったが、その主な原因は、均質溶液に冷却中に液-固相分離または液-液相分離が発生し、相の分離中にポリオレフィンが結晶するため、薄膜の高倍数延伸を行うことが困難となり、隔膜の総合的な性能改善も制限された。
【0005】
そのため、現在の研究は、主に加工性の優れたUHMWPEを製造ことを巡って展開されている。 一部の研究者はUHMWPEの製造方法中に使われる触媒について幅広い検討を行い、性能の高いUHMWPEを造るにあたり画期的な進歩を期待している。UHMWPEの製造に採用される触媒は主にメタロセン触媒及びチーグラーナッタ触媒である。しかし、メタロセン触媒は温度に対して非常に敏感なもので、Cp2ZrCl2を触媒としてエチレンの重合反応を進行させた場合、温度を20℃から70℃に上昇させた際、ポリマーの分子量は60万から12万に下がった。同時に、メタロセン触媒に十分に高い触媒活性をもたらすには、助触媒として高価なメチルアルミノキサン(MAO)を大量に必要とするため、製品の製造コストが上がった。一方、助触媒であるMAOは成分が単一である化合物ではないため、製造中に一定の製品性能を保つことも難しい。チーグラーナッタ触媒は、UHMWPEを製造するための産業化触媒である。例えば、ZhangH.X.など [Polym.Bull.,2011,66,627]では、内部電子供与体を有するチーグラーナッタ触媒を使ったUHMWPEの製造方法が報道されたが、当チーグラーナッタ触媒中の内部電子供与体は触媒の活性を低下させた。
【0006】
したがって、現在、新しいUHMWPEの製造方法の登場が必要とされ、当製造方法により優れた性能を有するUHMWPEが製造され、その方法で形材、薄膜、繊維またはフィルター材料に加工する際もその物の性能が落ちることなく、より良い加工性をもち、より広い応用可能性を持たす。
【0007】
ポリエチレンは汎用プラスチックとして、大量製造・幅広い応用及び高品質且つ低価格で知られている。但し、ポリエチレンの低温耐性、耐候性、耐光性、染色性、接着性、静電気防止性、親水性は全て非常に悪い。なお、他の極性ポリマー、無機充填剤及び強化材料などとの相容性も非常に悪く、これらの弱点はポリエチレンの包装材料分野、自動車工業、電子工業及び医療機器などでの応用を制約している。
【0008】
ポリエチレンの性能を改良し、かつ、その応用範囲を拡大するためには、ポリエチレンを変性する必要がある。 ポリエチレンを変性するには多くの方法があるが、グラフト化変性はそのうち最も重要な一つである。グラフト化変性のプロセスにもいろんな種類がある。例え、化学的グラフト、機械的グラフト、光グラフトなどがあり、そのうち、化学的グラフトにはさらに溶液グラフト、固相グラフト、溶融グラフト、気相グラフト、懸濁グラフトなどが含まれる。ポリエチレンの固相グラフト化の始発は遅く、20世紀80年代末に、Rengarajanなどで固相グラフト化による無水マレイン酸官能化ポリプロピレンが製造されたことが初めに報道され、その後、陸続報道された固相グラフト化によるポリエチレンの変性に用いられたモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸グリシジル、4-ビニルピリジン、ビニルニトリル、2-ヒドロキシエチルアクリル酸メチルなどが含まれる。他のグラフト法と比較して、固相グラフト法は、ポリエチレン本来の性能を維持しながら極性官能基を導入することができるだけでなく、低温、低圧、低コスト、比較的高いグラフト率、溶剤回収不要などのメリットがある。
【0009】
しかし、今、固相グラフト法による変性ポリエチレンが直面している主な困難は、通常のプロセスまたは技術によって製造された変性ポリエチレンの有効グラフト率が非常に低く、眼下の文献報告では一般的に1%にしかならない。このような低いグラフト率の変性だけではポリエチレンに対する性能改善も高がしれている。近年来、研究者たちはグラフト率を高めるために一連の固相グラフト反応プロセスを検討、開発した。例、超臨界二酸化炭素協調固相グラフト法、パンミル式メカノケミカル反応器グラフト変性ポリエチレン、超音波補助の固相グラフト法、コモノマー溶融グラフト法、放射線グラフト法などの方法がある。これらの方法はグラフト化温度を下げることと、グラフト化時間の短縮と、グラフト率の向上と、に一定の貢献をしたが、全体の反応プロセスと操作が複雑すぎるし、しかも、新しい媒体または設備導入を必要とする。これらは製造コストを大いに増大させるため、大規模かつ安い値段で生産することは実現できない。そのため、通常の方法で高いグラフト率を有するグラフト化ポリエチレンを安く製造することへの研究は非常に有益である。
【0010】
ポリエチレン繊維には、長繊維、短繊維、不織布などが含まれる。その中、ポリエチレン長繊維は、光沢性、柔らかい手触り、優れたドレープ性、低密度のため、編み物産業に適し、綿、ビスコースシルク、シルク、スパンデックスなどに混ぜ込むことで、コットンフェイスポリプロピレン織物、シルクフェイスポリプロピレン織物などの製品を造り、高級スポーツウェア、Tシャツなどの理想な材料である。ポリエチレン短繊維はコットンと混紡して、綿平織布、ベッドシーツにすることができ、ビスコースと混紡することでモーフ、純ポリエチレン紡績、混紡ウール、カーペットにすることができ、詰め綿及びタバコのフィルターに使える。ポリエチレン不織布は、使い捨ての医療衛生用品、使い捨ての防汚服、農業用の布、家具用の布または靴の裏地などに使えるし、あるいは医療衛生、保温材、フィルター材などの分野にも使える。通常のポリエチレン繊維は、軽量、高強度、良い弾性、耐摩耗、耐食、良い絶縁性、良い保温性など数多くの長点を有する反面、耐熱、耐低温、耐老化の性能が悪い欠点も持っており、しかも、吸湿性や染色性も非常に悪い。
【0011】
化学繊維の成形加工には、湿式紡糸法、乾式-湿式紡糸法、溶融紡糸法等が含まれる。化学繊維の成形加工中に置いて延伸工程は重要な工程である。延伸は、化学繊維中の高分子に力学、光学、熱学などでの異方性を生じさせて、化学繊維の強度を効果的に高める。溶融紡糸に置ける延伸工程は主に、加熱ローラー延伸、加熱ボード延伸及び熱ボックス延伸を採用する。湿式または乾-湿式紡糸において、上記の延伸方法以外にも、加圧蒸気延伸を採用できる。加工方法を調整することでポリエチレンの上記の諸欠点を改善することも、現在多く進められている一つの研究方向である。
【0012】
ポリエチレン膜、特に二軸方向延伸ポリエチレン膜は、優れた折曲げ疲労耐性、高い耐熱性、良い化学的性質、純粋な質感と無毒性、良い透明性などのメリットがあり、主に包装用薄膜分野に使われている。しかし、その低温耐性と、低温衝撃強度と、は低い。従来技術では、プロピレンとの共重合や、変性剤(例え、エチレンプロピレンゴム、EPDM、POE、EVAまたはSBSなど)の添加・ブレンドなどの方法により低温耐性を改善しているが、これらの方法は低温耐性を向上させる同時に、ポリエチレンの他の優れた性能、例えば、強度や弾性率などに影響を与えている。
【0013】
また、ポリエチレン細孔膜は、電池セパレータ、電解コンデンサセパレータ、各種フィルター、透湿防水布、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜などにも広く使われている。電池用のセパレータに用いる場合は、上記膜に優れた透過性、機械的特性、耐熱収縮性、溶融特性などを具備することが要求される。どのように、各種性能全部が優れているポリエチレン細孔膜を得るかは研究者達が一貫して努力・追求する目標である。
【0014】
ポリエチレンは今使用量最大の汎用プラスチック品種の一つである。そのものは比較的均衡の取れている総合性能を有するため、自動車、電気製品、建材などの分野で大量に使われている。ポリエチレンは、耐摩耗性、耐薬品腐食性、耐応力亀裂性、抗接着性および自己潤滑性などで比較的良いこともある同時に、低温耐性や耐衝撃性が悪く、老化し易い問題もある。
【0015】
ガラス繊維強化ポリエチレン(GFPE)は、改善された剛性、抗衝撃強度、耐クリープ変形性、低反り、動的疲労耐性、寸法安定性などの長点があるため、近年来ますます多くの研究者の注目を集めている。ガラス繊維強化ポリエチレンは低温耐性を向上させることができるが、ガラス繊維とポリエチレンとの相容性が悪く、耐衝撃性および耐クリープ変形性の低いなどの問題は依然としてあり、新型のガラス繊維強化ポリエチレン複合材料の開発が期待されている。
【0016】
〔発明内容〕
本発明の一つ目の目的は、超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体及びその製造方法を提供するものであり、上記粉体は優れた加工性を有する。
【0017】
本発明の二つ目の目的は、グラフト変性超高分子量超微粒子径ポリエチレンおよびその固相グラフト化方法を提供するものであり、上記方法では簡単かつ効率的にグラフト率の高いグラフトポリエチレンを製造し得ることで、より効果的にポリエチレンに対する変性を行う。
【0018】
本発明の三つ目の目的は、ガラス繊維強化ポリエチレン組成物およびそれから製造されたシート材及びチューブを提供することであり、上記組成物から製造されたシート材またはチューブは優れた低温耐性があり、各種力学性能(特に耐衝撃性、耐クリープ変形性)と、熱学的性能とも十分に優れる。
【0019】
本発明の四つ目の目的は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びその製造法を提供するものであり、上記ポリエチレンは、より良い加工性能と、より加工し易いなどの特徴を有する。
【0020】
本発明の五つ目の目的は、低温耐性に優れ、各種力学的性能および熱学的性能も非常に優れている可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンで製造した繊維およびその製造方法を提供する。
【0021】
本発明の六つ目の目的は、低温耐性に優れ、各種力学的性能および熱学的性能も非常に優れている可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンで製造した膜およびその製造方法を提供する。また、本発明の膜は、優れた力学的性能・熱学的性能・透過性・溶融性などの特徴があるため、特に、電池セパレータとしての利用に適している。
【0022】
本発明の第1は、超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体の製造方法を提供して、当該製造方法が以下のステップを含む。
【0023】
触媒作用の下、エチレンの重合反応を行う;そのうち、重合反応の温度はー20~100℃である;エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppmより高くなく(例え5ppmより少ない)、二酸化炭素は15ppmより高くなく(例え15ppmより少ない)、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppmより高くない(10ppmより少ない)。
【0024】
上記触媒は、以下のステップを含む方法によって製造しうる:
(a)ハロゲン化マグネシウム、アルコール系化合物、助剤、一部の内部電子供与体と、溶媒と、を混合して混合物Iを製造し得る;
(b)反応器内に上記混合物Iを添加し、-30℃~30℃に予熱し、チタン化合物を滴下する;または、反応器内にチタン化合物を添加し、-30℃~30℃に予熱して、上記の混合物Iを滴下する;
(c)滴下終了後、反応系を0.5~3時間かけて90℃~130℃に昇温し、残りの内部電子供与体を添加して反応を続ける;
(d)反応系内の液体をろ過し除き、残りのチタン化合物を加えて反応を続ける;
(e)反応終了後、仕上げ処理を経て上記触媒が得られる。
【0025】
そのうち、得られたポリエチレン粉体の粘度平均分子量(Mv)は1×106を超え、上記ポリエチレン粉体は球形または類球形粒子であり、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL ~0.3g/mLである。
【0026】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の粒子径分布は正規分布に近い。
【0027】
本発明に基づき、上記重合反応の温度は、好ましくは、30~80℃であり、さらに好ましくは、50~80℃である。
【0028】
本発明の第2は、上記製造方法により製造した超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体を提供し、上記ポリエチレン粉体の粘度平均分子量(Mv)は1×106を超え、上記ポリエチレン粉体は球形または類球形粒子であり、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL ~0.3g/mLである。本発明の粉体は優れた加工性を有する。
【0029】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の粒子径分布は正規分布に近い。
【0030】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1.5×106以上であり、好ましくは1.5×106~4.0×106であり、上記ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは2~15であり、好ましくは、2~10である。
【0031】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の平均粒子径は、好ましくは、20μm-80μmであり、さらに好ましくは、50μm-80μmである;上記標準偏差は、好ましくは、5μm-15μmであり、より好ましくは6μm-12μmであり、さらに好ましくは、8μm-10μmである;上記ポリエチレン粉体のかさ密度は、好ましくは、0.15-0.25g/mLである。
【0032】
本発明の第3は、固相グラフト法を採用した超高分子量超微粒子径グラフトポリエチレンの製造方法を提供して、当該製造方法が以下のステップを含む。
【0033】
容器内に、ポリエチレンと、グラフトモノマーと、開始剤と、界面剤と、を添加し、均一に攪拌混合しする;加熱による固相グラフト反応を行う;上記のグラフトポリエチレンを得る;
上記ポリエチレンは粉体であり、球形または類球形を呈し、平均粒子径は10μm~100μmである;標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL~0.3g/mLである;上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1×106を超える。
【0034】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の粒子径分布は正規分布に近い。
【0035】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の平均粒子径は、好ましくは、20μm-80μmであり、より好ましくは50μm-80μmである;上記標準偏差は、好ましくは、5μm-15μmであり、より好ましくは、6μm-12μmであり、さらに好ましくは、8μm-10μmである。
【0036】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体のかさ密度は、好ましくは0.15g/mL-0.25g/mLである。
【0037】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1.5×106以上である。より好ましくは1.5×106~4.0×106である。上記ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは2~15であり;より好ましくは、2~10である。
【0038】
本発明に基づき、上記攪拌混合の時間は0.5~5時間である。攪拌の目的は、反応物を十分に均一混合することであり、原則上、攪拌時間が長いほど反応に有益だが、好ましい上記攪拌混合の時間は1~5時間である。
【0039】
本発明に基づき、固相グラフト化反応の温度は60~120℃であり、時間は0.5~5時間である。好ましくは、70~110℃で0.5~3.5時間反応する。より好ましくは、80~110℃で2~3時間反応する。
【0040】
本発明に基づき、上記のポリエチレンはエチレンホモポリマーである。
【0041】
本発明に基づき、上記のグラフトモノマーは、シロキサン系化合物またはビニル系不飽和化合物である。
【0042】
本発明に基づき、上記ビニル系不飽和化合物は、例えば、スチレン系化合物、ビニル系不飽和有機酸、ビニル系不飽和有機エステル、無水ビニル系不飽和有機酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(MEA)、アクリル酸ブチル(BA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸、スチレン(St)、ペンタエリスリトールトリアクリル酸(PETA)中の一種または多種である。
【0043】
本発明に基づき、上記シロキサン系化合物は、例え、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ジビニルジメチルシラン、(トリエチルシリル)アセチレン、アリルトリメチルシランなどがあり、好ましくは、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン中の一種または2種である。
【0044】
本発明に基づき、上記グラフトモノマーの添加量は、ポリエチレン粉体質量の0.2~15wt%であり、好ましくは、0.5~12wt%であり、より好ましくは、1~9wt%である。
【0045】
本発明に基づき、上記開始剤はアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤であり、好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルまたは過酸化クミル中の一種または多種である。上記開始剤の添加量は、ポリエチレン粉体質量の0.1~10wt%であり、好ましくは、2~9wt%であり、さらに好ましくは、3~8wt%である。
【0046】
本発明に基づき、上記界面剤は、ポリエチレンに対して膨潤効果を有する有機溶媒である。ポリエチレンに対して膨潤効果を有する以下の有機溶媒が好ましい:エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒またはアルカン系溶媒;より好ましくは、クロロベンゼン、ポリクロロベンゼン、C6以上のアルカンまたはシクロアルカン、ベンゼン、アルキル置換ベンゼン、脂肪族エーテル、脂肪族ケトン、またはデカリンがある;さらに好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン、ヘプタン中の一種または多種である。 例えば、キシレンであり、またはキシレンとテトラヒドロフランとの混合物である。上記界面剤の添加量はポリエチレン粉体質量の0.1~30wt%であり、好ましくは10~25wt%である。
【0047】
本発明の第4は、上記記載の固相グラフト法で超高分子量超微粒子径グラフトポリエチレンを製造する方法で製造されたグラフトポリエチレンを提供する。そのうち、グラフトモノマーの有効グラフト率は≧0.5%である。ベースポリマーはポリエチレンであり、上記ポリエチレンは粉体であり、球形または類球形状の粒子状を呈し、平均粒子径は10μm~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL~0.3g/mLであり、上記ポリエチレンの粘度平均分子量は(Mv)1×106を超える。
【0048】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の粒子径分布は正規分布に近い。
【0049】
本発明に基づき、上記有効グラフト率は0.5%~5.5%である;より好ましくは1.0~3.0%である;例えば、グラフトポリエチレンの有効グラフト率は1.33%、1.65%、2.14%または2.04%であってよい。
【0050】
本発明に基づき、上記ポリエチレン粉体の平均粒子径は、好ましくは、20μm-80μmであり、より好ましくは、50μm-80μmである;上記標準偏差は、好ましくは、5μm-15μmであり、より好ましくは、6μm-12μmであり、さらに好ましくは、8μm-10μmである。
【0051】
本発明に基づき、上記グラフトポリエチレンの水接触角は80°~88°である;より好ましくは、81°~84°である。
【0052】
本発明に基づき、上記ポリエチレンのかさ密度は、好ましくは、0.15g/mL-0.25g/mLである。
【0053】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は≧1.5×106である。より好ましくは、1.5×106~4.0×106である。上記ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは2~15であり;好ましくは、2~10である。
【0054】
本発明に基づき、上記のポリエチレンはエチレンホモポリマーである。
【0055】
本発明に基づき、上記のグラフトモノマーは、シロキサン系化合物またはビニル系不飽和化合物である。
【0056】
本発明に基づき、上記ビニル系不飽和化合物は、例えば、スチレン系化合物、ビニル系不飽和有機酸、ビニル系不飽和有機エステル、無水ビニル系不飽和有機酸、またはその混合物である。好ましくは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(MEA)、アクリル酸ブチル(BA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸、スチレン(St)、およびペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)中の一種または多種である。
【0057】
本発明に基づき、上記シロキサン系化合物は、例えば、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ジビニルジメチルシラン、(トリエチルシリル)アセチレン、アリルトリメチルシラン等であり、好ましくは、ビニルトリメチルシラン及びビニルトリエチルシラン中の一種または二種である。
【0058】
本発明に基づき、上記グラフトポリエチレンの水接触角は≦88°である。 例えば、上記グラフトポリエチレンの水接触角は80°~88°である。上記グラフトポリエチレンの結晶温度は、ベースポリマーより少なくとも8℃上昇された。
【0059】
本発明の第5は、超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びガラス繊維を含むガラス繊維強化ポリエチレン組成物を提供する。
【0060】
上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1×106を超え、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンは球形または類球形粒子であり、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度はで0.1g/mL~0.3/mLである。
【0061】
本発明に基づき、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粒子径分布は正規分布に近い。
【0062】
本発明に基づき、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は≧1.5×106であり、好ましくは、1.5×106~4.0×106である;上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは2~15であり、好ましくは、3~10であり、より好ましくは、4~8である。
【0063】
本発明に基づき、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの平均粒子径は、好ましくは、20-90μmであり、より好ましくは、30-85μmであり、さらに好ましくは、50-80μmである;上記標準偏差は、好ましくは、5-15μmであり、より好ましくは、6-12μmであり、さらに好ましくは、8-10μmである;上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンのかさ密度は、好ましくは0.15-0.25g/mLであり、例えば0.2 g/mLである。
【0064】
本発明に基づき、上記ガラス繊維は、カップリング剤の処理を経たガラス繊維である。上記カップリング剤は例えば、シランカップリング剤(例、γ-アミノプロピルトリエトキシシランKH550、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシランKH560、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランKH570、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランKH792、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランDL602、ビニルトリメトキシシランA-171、ビニルトリエトキシシランA-151など)、チタネートカップリング剤(例えば、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ジ(ジオクチルホスホリルオキシ)エチレンチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート)またはアルミネートカップリング剤中の一種または多種である。好ましくは、上記カップリング剤はシランカップリング剤から選ばれ、特に好ましくは、γ-アミノプロピルトリエトキシシランKH550、ビニルトリメトキシシランA-171、ビニルトリエトキシシランA-151などから選ばれる。上記カップリング剤の使用量は、ガラス繊維100重量部に対して、0.5-4重量部である。
【0065】
本発明に基づき、ガラス繊維を上記カップリング剤中により良く分散させるため、上記ガラス繊維とカップリング剤との体系中に、希釈剤を添加することができるが、上記希釈剤は、例えばホワイトオイルまたは流動パラフィンから選ばれる。上記希釈剤とカップリング剤との重量比は、例えば、(1~10):1であり、好ましくは(3~6):1である。
【0066】
本発明に基づき、上記ガラス繊維の長さは0.5mm-10mmであり、例えば1mm-3mm、または3mm-5mm、または5mm-7mm等である。
【0067】
本発明に基づき、上記組成物中の各成分の含有量は、重量百分比で超高分子量超微粒子径ポリエチレンが10-95wt%、ガラス繊維が5-90wt%である。好ましくは、上記ガラス繊維の含有量は10-80wt%であり、より好ましくは、40-70wt%である。
【0068】
本発明の第6は、上記組成物から製造し得るシート材またはチューブを提供する。
【0069】
本発明の第7は、以下のステップを含む上記シート材の製造方法を提供する:上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンと、上記ガラス繊維と、を高速攪拌器で均一に混合し、押出機に添加し、シートダイにより押出し、冷却・延伸を経て本発明のシート材を製造し得る。
【0070】
本発明の第8は、以下のステップを含む上記チューブの製造方法を提供する:上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンと、上記ガラス繊維と、を高速攪拌器で均一に混合し、押出機に添加し、チューブダイにより押出し、冷却・延伸を経て本発明のチューブを製造し得る。
【0071】
好ましくは、上記チューブの壁厚さは0.1-10mmの間であり、より好ましくは、0.5-5mmである。
【0072】
本発明の第9は、自動車、電子機器などの多くの分野に用いる上記シート材の用途を提供する。
【0073】
本発明の第10は、給水・排水、石油探査等の分野に用いり、例えば給水・排水管またはマイニング用の耐摩耗管等として使える上記チューブの用途を提供する。
【0074】
本発明の第11は、方法(1)または方法(2)中の一種から選ばれる可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの製造方法を提供する。上記方法(1)は以下のステップを含む:
(1a)触媒と分散媒との作用の下、エチレンの重合反応を行う;そのうち、重合反応の温度は-20~100℃である;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppmより少なく、二酸化炭素は15ppmより少なく、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppmより少ない。
【0075】
(1b)ステップ(1a)の重合終了後、溶媒を添加する。その後、分別蒸留の方法により上記分散媒を除去し、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンが得られる。
【0076】
上記方法(2)は以下のステップを含む:
(2a)触媒と分散媒と溶媒との作用の下、エチレンの重合反応を行う;そのうち、重合反応の温度は-20~100℃である;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppmより少なく、二酸化炭素は15ppmより少なく、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppmより少ない。
【0077】
(2b)ステップ(2a)の重合終了後、分別蒸留の方法により上記分散媒を除去し、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンが得られる。
【0078】
上記方法(1)または方法(2)のうち、上記分散媒の沸点は上記溶媒の沸点より低く、且つ少なくとも5℃低い;このような温度差を設定するのは、分別蒸留の方法により系内の分散媒を有効的に分離するためである。
【0079】
上記方法(1)または方法(2)のうち、上記触媒は上記の触媒の製造方法により製造し得る。
【0080】
本発明に基づき、そのうち、製造された可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1×106を超える;上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンは球形または類球形粒子であり、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL ~ 0.3g/mLである;上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン中の溶媒の含有量は重量百分比で0<含有量≦98wt%である。
【0081】
本発明に基づき、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン中の溶媒の含有量は、重量百分比で0<含有量≦80wt%であり、好ましくは0<含有量≦50wt%、より好ましくは10-50wt%であり、さらに好ましくは20-40wt%である。
【0082】
本発明に基づき、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの粒子径分布は正規分布に近い。
【0083】
上記の製造方法のうち、上記重合反応はスラリー法を採用する。
【0084】
上記製造方法のうち、上記分散媒は、n-ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテルなどのうちの少なくとも1種である。
【0085】
上記製造方法のうち、上記溶媒は、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,1,1-トリクロロエタン、ホワイトオイル、パラフィン、灯油、オレフィン鉱油およびデカリン中の少なくとも1種である。
【0086】
本発明に基づき、上記重合反応の温度は、好ましくは、0~90℃であり、好ましくは、10~85℃であり、より好ましくは、30~80℃であり、さらに好ましくは、50~80℃である。
【0087】
本発明の第12は、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの製造方法で製造された可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを提供し、上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1×106を超える;上記ポリエチレンは球形または類球形粒子であり、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1g/mL ~ 0.3g/mLである;上記ポリエチレン中の溶媒の含有量は重量百分比で0<含有量≦98wt%である。
【0088】
本発明に基づき、上記ポリエチレン中の溶媒の含有量は、重量百分比で0<含有量≦80wt%であり、好ましくは0<含有量≦50wt%であり、より好ましくは10-50wt%であり、さらに好ましくは20-40wt%である。
【0089】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの粒子径分布は正規分布に近い。
【0090】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1.5×106以上であり、好ましくは、1.5×106~4.0×106である;上記ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは2~15であり、好ましくは、3~10であり、より好ましくは、4~8ある。
【0091】
本発明に基づき、上記ポリエチレンの平均粒子径は、好ましくは、20μm-90μmであり、より好ましくは、30-85μmであり、さらに好ましくは、50μm-80μmである;上記標準偏差は、好ましくは、5μm-15μmであり、より好ましくは、6μm-12μmであり、さらに好ましくは、8μm-10μmである;上記ポリエチレンのかさ密度は、好ましくは、0.15g/mL-0.25g/mLであり、例えば0.2 g/mLである。
【0092】
本発明の第13は、繊維を提供し、その原料には、主に上記の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンが含まれる。
【0093】
本発明に基づき、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンは、上記方法(1)または方法(2)中から選ばれた一種の製造方法で製造しうる。
【0094】
本発明に基づき、上記原料中には上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン以外にも、酸化防止剤が含まれる。好ましくは、酸化防止剤の添加量は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの100分重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは、0.02-0.5重量部である。 具体的には、上記繊維は酸化防止剤を含む可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンから製造し得る。
【0095】
本発明の第14は、以下のステップを含む上記繊維の製造方法を提供する。
【0096】
1)上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを含む原料を溶媒中に溶解して紡糸液またはゲルを得る。
【0097】
2)凍結ゲル紡糸法による紡糸をし、ゲル繊維をえる。
【0098】
3)延伸を経て、上記繊維を得る。
【0099】
本発明に基づき、ステップ1)のうち、超高分子量ポリエチレンが溶解および使用中に分解されることを回避するために、溶解中に酸化防止剤を添加する。酸化防止剤の添加量は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは0.02-0.5重量部である。
【0100】
一つの実施形態の中で、ステップ3)の延伸ステップ前に、凝固剤または抽出剤により溶媒を抽出する工程が含まれる。好ましくは、上記凝固剤または抽出剤は沸点が低い有機溶媒を採用する。例えば以下の低沸点の有機溶媒中の一種または多種である:石油エーテル、ジクロロメタン、シクロヘキサンなど。
【0101】
そのうち、ステップ3)の延伸は、ホットボックスまたはヒートローラー延伸を採用するか、温浴延伸を採用してもよい。
【0102】
その中の温浴延伸において、好ましくは、採用される温浴媒は多価アルコール(好ましくは、沸点が120-220℃である)、ポリオキシエチレンオリゴマー(好ましくは、相対分子量が88-5000g/mol)、ポリオキシプロピレンオリゴマー(好ましくは、相対分子量が116-1200g/mol)、鉱油およびシリコーン油から選ばれる一種または多種の成分を含む。好ましくは、上記温浴媒の温度TLは、ポリマーマトリックスのガラス転移温度Tgと、ポリマーマトリックスの分解温度Tdと、の間に設定する。
【0103】
もう一つの実施形態の中で、前記のステップ3)としては、具体的に、上記ゲル繊維をゲル糸延伸、溶媒抽出、乾燥、第1ホットボックス乾熱延伸、第2ホットボックス乾熱延伸、熱固定、巻取りなど工程を経て本発明の繊維が得られる。
【0104】
そのうち、ゲル糸延伸工程中の延伸温度は10-70℃であり、好ましくは、25-50℃である;延伸倍数は2-20倍であり、好ましくは、3-15倍である。
【0105】
そのうち、溶媒抽出工程中の抽出剤は、低沸点の有機溶媒を採用するが、例えば、以下の低沸点の有機溶媒中の1種または多種である:石油エーテル、ジクロロメタン、シクロヘキサンなど。
【0106】
そのうち、乾燥工程の乾燥は熱風乾燥であり、熱風温度は30-90℃であり、好ましくは、40-80℃である。
【0107】
そのうち、第1ホットボックス乾熱延伸工程中の温度は100-160℃であり、好ましくは、130-145℃であり、延伸倍数は1-20倍であり、好ましくは、1.5-15倍である。
【0108】
そのうち、第2ホットボックス乾熱延伸工程中の温度は110-160℃であり、好ましくは、130-145℃であり、延伸倍数は1-5倍であり、好ましくは、1.1-3倍である。
【0109】
そのうち、熱固定工程の温度は100-150℃であり、好ましくは120-135℃である。
【0110】
本発明の第15は、膜を提供し、その原料中には主に上記の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンが含まれる。
【0111】
本発明に基づき、上記の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンは、上記方法(1)または方法(2)中の一つの製造方法により製造し得る。
【0112】
本発明に基づき、上記原料中には上記の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン以外にも、酸化防止剤が含まれる。好ましくは、酸化防止剤の添加量は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは、0.02-0.5重量部である。具体的に、上記膜は、酸化防止剤を含む上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンから製造し得る。
【0113】
本発明に基づき、上記膜は二軸方向延伸である。
【0114】
本発明の第16は、以下のステップを含む上記膜の製造方法を提供する:
1)上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを含む原料と、製膜用溶剤と、を熔融混錬し溶液を得る。
【0115】
2)溶液を押出し、成形体を形成し、冷却によりポリマーシート材を得る。
【0116】
3)二軸延伸により、薄膜を得る。
【0117】
本発明に基づき、ステップ1)において、超高分子量プロピレンポリマーが溶解および使用中に分解されることを回避するため、溶解中で酸化防止剤を添加する。酸化防止剤の添加量は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは0.02-0.5重量部である。具体的に、上記原料は、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンと酸化防止剤とから構成される。
【0118】
本発明の第17は、電池セパレータとして用いる、上記膜の用途を提供する。
【0119】
〔発明効果〕
1. 本発明は、超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体の斬新な製造方法を提供する。上記方法では、エチレンの重合温度と、エチレンモノマーの純度とを制御することと、触媒の製造工程を調整することによって、超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体を合成した。当該方法は工程が簡単で、制御し易く、再現性も高いため、工業化の実現を可能にした。
【0120】
本発明は初めて、超高分子量と、超微細粒径の範囲とを備え兼ねるポリエチレン粉体を合成した。研究を経て、特に、上記特性を有するポリエチレン粉体は加工応用に適しており、なお、グラフト化による変性も実現しやすいため、超高分子量ポリエチレンの応用分野と適用範囲とを大幅に拡大したことがわかる。同時に、上記ポリエチレン粉体はさらに以下の優れた性能を有する。まず、耐摩耗性が優れており、一般の炭素鋼や銅などの金属の耐摩耗指数よりも数倍高い;次に、超高分子量と、超長い分子鎖とを備えるため、材料に高い衝撃強度を持たした;そして、当該ポリエチレン粉体の耐薬品腐食性は一般的なポリオレフィンより強い;最後に、当該材料の使用温度の範囲も比較的広く、より低いまたはより高い温度でも良好な靭性と強度とを維持する。
【0121】
したがって、本発明の方法によって製造されたポリエチレン粉体は、優れた加工性能を有するので、その後の成形、製膜、繊維形成中でより省エネーだけでなく、プロセスの加速化にも繋がり、より高性能の材料を製造し得ることが期待できる。
【0122】
2. 本発明は、グラフト変性超高分子量超微粒子径ポリエチレン及びその固相グラフト法を提供し、従来技術と比較して、まずは、反応基質として選択した超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体(球形または類球形粒子を呈し、平均粒子径は10~100μmであり、標準偏差は2μm-15μmであり、かさ密度は0.1~0.3g/mLである;上記ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は1×106を超える。)は、通常のポリエチレン粒子(400μmを超える)と比較して、粒径がより小さく、分子量はより高く、比表面積は大いに上昇されたため、グラフトモノマーにより多くの反応サイトをもたらしたため、造られたグラフトポリエチレンの有効グラフト率は比較的に高い。次に、高グラフト率のグラフトポリエチレンを製造する他の製造方法と比較して、本発明で提供する方法は、原料に対して複雑な前処理をする必要もなく、特定の反応装置を設計する必要もない。最後に、本発明が提供する固相グラフトによる高グラフト率のグラフトポリエチレンの製造方法は、プロセスの簡単さ、低コスト、操作の簡単さのため、工業化製造を実現しやすい。
【0123】
実験結果として、本発明が提供する方法により製造されたグラフト化超高分子量超微粒子径ポリエチレン粒子は、熱学的性能、力学的性能および極性などの面で著しく改善されている共に、ポリエチレン本来の優良な性能を維持している。グラフトポリエチレンの結晶温度はベースポリマーより少なくとも8℃高くなり、有効グラフト率は≧0.5%(例え5.5%に達する)であり、グラフトポリエチレンの水接触角は≦88°(例え80~88°)であるが、ベースポリマーの水接触角は通常95°以上である。従って、本発明のグラフトポリエチレンの親水性及び極性は著しく向上されていることが分かる。
【0124】
3.本発明はガラス繊維強化ポリエチレン組成物を提供している。上記組成物から製造されたシート材またはチューブは、優れた低温耐性(例えば、零下30℃~零下135℃で長期的に使用可能)と、耐衝撃性(例えば、シャルピーノッチ付衝撃強さ(7.5J)は10.0KJ/m2より高い)と、耐クリープ変形性能(例えば、クリープ変形性≦2%)と、を有する。また、ガラス繊維の強化作用により、上記シート材またはチューブの機械的性能(例えば、折曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度、熱変形温度など)も非常に優れている。したがって、本発明のシート材は特に、自動車、電子機器など多くの分野に適用しており、上記チューブは、特に給排水、石油探査などの分野に適している。
【0125】
4.本発明は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの斬新な製造方法を提供する。上記方法では、エチレンの重合温度とエチレンモノマーの純度を制御し、触媒の製造工程を調整することと、重合系内に分散媒を投入することにより、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを合成する。当該方法は工程が簡単で、制御し易く、再現性も高いため、工業化の実現が可能である。
【0126】
本発明は初めて、可溶性と、超高分子量と、超微細粒径範囲とを備え兼ねるポリエチレンを合成した。研究結果、上記特性を有するポリエチレンは、特に、加工応用に適しており、なお、グラフト変性も実現しやすいため、超高分子量ポリエチレンの加工性能及びその製品の応用分野と適用範囲とを極めて大幅に拡大した。同時に、上記ポリエチレンはさらに以下の優れた性能を有する。まず、耐摩耗性が非常に優れており、一般の炭素鋼や銅などの金属の耐摩耗指数よりも数倍高い;次に、超高い分子量と超長い分子鎖を備えるため、材料に高い衝撃強度を持たした;そして、当該ポリエチレンの耐薬品腐食性は一般的なポリオレフィンより強い;最後に、当該材料の使用温度の範囲も広く、より低いまたはより高い温度でも良好な靭性と強度とを維持する。最後に、当該材料はその後の成形、製膜、繊維成形中の省エネー効果も高く、プロセス所用時間も短い(例えば、より低い温度で完全溶解し、またはより高い温度では短時間内に早く溶解する。従って、溶解工程を短縮する共に、ポリマーの分解を有効的に削減または減らした。)。
【0127】
したがって、本発明の方法により製造されたポリエチレンは、優れた加工性を有しているので、その後の成形、製膜、繊維形成中でより省エネーだけでなく、プロセスの加速化にも繋がり、より高性能の材料を製造し得ることが期待できる。
【0128】
5.本発明の繊維では、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを原料として選択した。上記ポリエチレンは溶解しやすく、溶解温度も低いため、特に、加工応用に適しており、上記繊維の湿式紡糸加工に格別に適している。
【0129】
本発明の繊維では、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを原料としたため、優れた耐クリープ変性性を有し、使用温度の範囲も極めて広い(低温応用にも適しており、より高い温度の応用にも適している)。
【0130】
6.本発明の膜では、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを原料として選択した。上記原料の超高分子量は製品性能の大幅向上をもたらす共に、原料中に含まれる溶媒はポリエチレンの結晶程度を制限させ、加工中にポリエチレンがより低い温度で溶融・溶解しやすくなり、通常超高分子量ポリエチレンが加工中に分解されやすい問題を抑制し、特に加工応用に適しており、上記膜のホットプレスおよび延伸加工に格別に適している。
【0131】
本発明の膜では、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを原料として使ったため、優れた耐クリープ変形性を有し、使用温度の範囲も広くなる(低温使用にも適し、より高温での使用にも適している)。
【0132】
〔添付図〕
図1は実施例1.3のポリエチレン粒子の走査型電子顕微鏡図である。
【0133】
図2は実施例2.1の無水マレイン酸グラフトポリエチレンの赤外線スペクトルである。
具体的な実施形態
触媒の製造方法
本発明の製造方法で採用する触媒は、本出願人が既に提出済みの特許出願(出願番号201510271254.1)に開示した方法により製造することができ、その全文を本明細書に組み込み、参考とする。
【0134】
上記のように、本発明のうち、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体及び可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの製造方法では、採用した触媒は、以下の工程を含む方法により製造された。
【0135】
(a)ハロゲン化マグネシウム、アルコール系化合物、助剤、一部の内部電子供与体と、溶媒と、を混合して混合物Iを製造しうる;
(b)反応器内に上記混合物Iを添加し、-30℃~30℃に予熱し、チタン化合物を滴下する;または、反応器内にチタン化合物を添加し、-30℃~30℃に予熱し、上記混合物Iを滴下する;
(c)滴下終了後、反応系を30分~3時間かけて90℃~130℃に昇温させ、残りの内部電子供与体を添加して反応を続ける;
(d)反応系の液を濾過除去して、残りのチタン化合物を添加して反応を続ける;
(e)反応完了後、仕上げ処理を経て上記の触媒を得る。
【0136】
本発明に基づき、上記工程(b)が以下の工程(b’)で置き換えられる。
【0137】
(b’)ナノ粒子、分散剤および溶媒を含む混合物IIを調製する。
【0138】
反応器内に上記混合物Iおよび混合物IIを添加して両者の混合物を得り、-30℃~30℃に予熱し、チタン化合物を滴下する;または、
反応器にチタン化合物を添加し、-30℃~30℃に予熱して、上記の混合物Iおよび混合物IIを滴下する。
【0139】
本発明のうち、上記の混合物Iは、以下の方法で製造することが好ましい:ハロゲン化マグネシウムとアルコール系化合物とを有機溶媒中で混合し、昇温して、保温後に、助剤および一部の内部電子供与体を添加し、一定温度で反応させた後に安定かつ均質な混合物Iが得られる。
【0140】
上記アルコール系化合物は、C1-C15の脂肪アルコール系化合物と、C3-C15のシクロアルキルアルコール系化合物と、C6-C15芳香族アルコール系化合物と、から選ばれる一種または多種であり、好ましくは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,3-プロパンジオール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、n-オクタノール、イソオクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ソルビトール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールから選ばれる一種または多種であり、より好ましくは、エタノール、ブタノール、ヘキサノールおよびイソオクタノールである。
【0141】
上記内部電子供与体は、モノエステル、ジエステル、モノエーテル、ジエーテル化合物中の少なくとも一種であり、より好ましくは、ジエステルまたはジエーテルである。具体的には、芳香族カルボン酸ジエステル、1,3-ジエーテル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、グリコールエステルから選ばれ、例えば、ジイソブチルフタル酸、ジn-ブチルフタル酸、1,3-ジエーテル系化合物、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン、2ーイソプロピルマロン酸2-nーブチル、2ーデシルマロン酸ジエチル、2-メチル-2-イソプロピルマロン酸ジエチル、ジイソプロピル琥珀酸ジイソブチル、2,3-ジイソプロピル琥珀酸ジエチル、β-置換グルタル酸エステル、1,3-グリコールエステルなどである。上記の内部電子供与体は、以下の特許または出願の中に開示されている:CN1453298、CN1690039、EP1840138、CN101423566、CN101423570、CN101423571、CN101423572、CN1986576、CN1986576、CN101125898、CN1891722、WO2007147864、CN1831017、CN101560273、EP 2029637、EP2029642、CN1330086、CN1463990、CN1397568、CN1528793、CN1732671、CN1563112、CN1034548、CN1047302、CN1091748、CN1109067、CN94103454、CN1199056、EP03614941990、EP03614931990、WO002617など。
【0142】
上記溶媒は、炭素5-20個の直鎖アルカン、炭素5-20個の分岐鎖アルカン、炭素6-20個の芳香族炭化水素またはそれらのハロゲン化炭化水素中の少なくとも一種から選ばれ、好ましくは、トルエン、クロロベンゼン、 ジクロロベンゼンまたはデカンから選ばれる少なくとも一種である。
【0143】
本発明で、ハロゲン化マグネシウムは、直接サブミクロンサイズのポリオレフィン粒子が得られる触媒を製造するにあたり、担体の役割を果たし、従来のチーグラーナッタ触媒の組成の一つであり、製造された触媒は、適切な形状、サイズおよび機械的強度を備える同時に、担体は活性成分を担体表面上に分散させ、より高い比表面積を得り、単位質量当たり活性成分の触媒効率を改善する。また、上記アルコール系化合物の役割は担体、即ち、ハロゲン化マグネシウムを溶解させる。混合物Iの製造中に、上記の得られた混合溶液の温度は、好ましくは、110~130℃であり、より好ましくは、130℃であり、上記保温時間は、好ましくは、1~3時間であり、より好ましくは、2~3時間であり、上記助剤等を添加してからの反応時間は0.5~2時間であり、より好ましくは1時間である。 従って、ハロゲン化マグネシウムは高温下でアルコール系化合物に溶解され、混合物Iが得られた。
【0144】
本発明に基づき、上記混合物IIは、以下の方法により製造されることが好ましい:ナノ粒子と、分散剤と、溶媒と、を反応容器に添加し、超音波処理を経て均質な混合物IIが得られる。上記ナノ粒子は、好ましくは、ナノ二酸化ケイ素、ナノ二酸化チタン、ナノ二酸化ジルコニウム、ナノ酸化ニッケル、ナノ塩化マグネシウムまたはナノカーボン球中の少なくとも一種であり、より好ましくは、ナノ二酸化ケイ素、ナノ二酸化チタンである。ナノ粒子の粒度は、好ましくは、1~80nmであり、より好ましくは、10~50nmである。添加されるナノ粒子の質量は、好ましくは、ハロゲン化マグネシウムの添加質量に対して、0%~200%であり、より好ましくは、0%~20%である。超音波処理の時間は2時間が好ましい。本発明では、ナノ粒子を結晶種として導入したが、担体の成形を促進することと、触媒粒子の粒径を小さくすることと、が目的である。分散剤と、溶媒と、超音波処理とを含む全ての手段は、ナノ粒子の分散を促進させるためであり、これにより個々のナノ粒子全部が結晶種の役割を果たすようにする。
【0145】
本発明に基づき、上記工程(b’)の混合物IIの中で、上記ナノ粒子は、ナノ二酸化ケイ素、ナノ二酸化チタン、ナノ二酸化ジルコニウム、ナノ酸化ニッケル、ナノ塩化マグネシウムまたはナノカーボン球からなる選らばれる少なくとも一種である。
【0146】
好ましくは、上記ナノ粒子の粒度は、1~80nmであり、好ましくは2~60nmであり、より好ましくは、3~50nmである。
【0147】
上記ナノ粒子の添加質量は、ハロゲン化マグネシウムの添加質量に対して、0%を超え200%以下であり、好ましくは、上記ナノ粒子の添加質量の範囲は、0%を超え20%以下である。
【0148】
本発明で、上記ステップ(b’)の混合物IIのうち、上記溶媒は、炭素5-20個の直鎖アルカン、炭素5-20個の分岐鎖アルカン、炭素6-20個の芳香族炭化水素またはそれらのハロゲン化炭化水素中から選ばれる少なくとも一種である。
【0149】
上記分散剤は、四塩化チタン、四塩化ケイ素、またはその2つの混合物から選らばれる。
【0150】
ステップ(a)での、上記混合は加熱攪拌下で行い、均一で安定的な透明混合物Iを得る。
【0151】
ステップ(b’)での、調製の時に超音波分散処理を行う。
【0152】
ステップ(b)または(b’)での滴下はゆっくりとした滴下である。
【0153】
ステップ(b)または(b’)での反応予熱温度は、好ましくは、-20℃~30℃であり、より好ましくは、-20℃~20℃である。
【0154】
ステップ(c)の反応時間は1~5時間であり、好ましくは、2~3時間である。
【0155】
ステップ(d)での継続反応時間は1~5時間であり、好ましくは、2~3時間である。
【0156】
ステップ(e)での仕上げ処理は、得られた生成物をヘキサンにより洗浄した後、乾燥させてよい;そのうち、洗浄回数は1~10回で良いが、好ましくは3~6回がよい。
【0157】
ステップ(a)のうち、上記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムまたはヨウ化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種である。
【0158】
ステップ(a)のうち、上記助剤は、チタン酸エステル系化合物でよい。
ステップ(b)または(b’)のうち、上記チタン化合物の一般式は式I示すとおり:
【0159】
【数1】
【0160】
そのうち、Rは、C1-C12の分岐鎖または直鎖のアルキル基であり、Xはハロゲンであり、nは、0、1、2または3である。
【0161】
ステップ(d)のうち、好ましくは、反応系を40分~3時間にかけて90℃~130℃に加熱し、より好ましくは、反応系を40分~2時間にかけて100℃~120℃に加熱する。
【0162】
上記方案からわかるように、本発明に関わったチーグラーナッタ触媒の製造方法は工程が簡単のため、工業化製造し易い。なお、本発明で製造されたチーグラーナッタ触媒は、エチレン重合の際に、平均粒子径が10~100μm、高い球形度、狭い粒度分布、低いかさ密度(0.1~0.3/mL)を有するポリエチレン粒子を製造しあげる。研究からわかることは、本発明で製造された触媒をエチレン重合に用いって製造したポリエチレン粒子は、他のポリエチレンに対して、粒度が20~30倍低減され、粒度分布も著しく狭くなり、かさ密度も0.1g/mLまで低くなった。
【0163】
超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体の製造方法
上記記載のように、本発明では超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体の製造方法を提供するが、それは以下のステップを含む:触媒作用の下、エチレンの重合反応が行われる;そのうち、重合反応の温度は-20~100℃である;エチレン中、一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である。
【0164】
上記触媒は、上記の触媒の製造方法により製造しうる。
【0165】
本発明の研究で発現されたことは、上記触媒の製造方法に対する簡単な制御で、上記粉体の粒度への制御を確実に実現した。但し、製造したポリエチレンの分子量は高くないので、粒径を制御する共に上記重合体の分子量を高めるため、発明人は様々な試みを行い、研究を経て、重合反応の温度およびモノマーの純度を制御することは簡単かつ効果的な方法の一つでありながら、上記ポリマー粒径への有効的な制御にも影響を与えなく、乃至、より狭い粒径範囲およびより低いかさ密度範囲のポリマーを製造することに有益であることを発現した。
【0166】
研究から発現したことは、上記重合反応の温度は-20~100℃に制御し、エチレン中の純度は一酸化炭素の含有量を5ppm未満と、二酸化炭素は15ppm未満と、共役ジエンの含有量は10ppm未満と、に制御することだけで、粒径制御を実現する同時に、超高分子量のポリエチレンが製造される。好ましくは、上記重合反応の温度は、30-80℃であり、より好ましくは、50-80℃である。
【0167】
超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体
上記のように、本発明では超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体を提供する。
【0168】
上記粒径およびかさ密度を有する超高分子量ポリエチレンは、特に、グラフト変性に適しており、ポリエチレンの変性可能性を極めて大きく拡大する一方、上記重合体の加工性も著しく改善させたため、より幅広い品物の製造に適している;このよう上記重合体の応用分野を効果的に拡大させた。
【0169】
本発明の超高分子量超微粒子径ポリエチレン粉体は、さらに次のような優れた特性も有する。まず、耐摩耗性が非常に優れており、通常の炭素鋼や銅など金属の耐摩耗性指数よりも数倍高い;次に、超高分子量および超長い分子鎖のため、材料の衝撃強度が高い;その次に、当ポリエチレン粉体の耐薬品腐食性は普通のポリオレフィンより強い;最後に、当材料の使用温度範囲も比較的広く、より低いまたはより高い温度でも常に非常に良い靭性と強度とを維持する。
【0170】
固相グラフト方法による高いグラフト率のグラフトポリエチレンを製造
上記記載のよう、本発明では固相グラフト法による超高分子量超微粒子径グラフトポリエチレンの製造方法を提供する。
【0171】
本発明の一個の好ましい実施形態の中で、上記グラフトポリエチレンは以下の方法で製造される:容器内に、粘度平均分子量(Mv)は1×106以上であり、平均粒子径は10~100μm(好ましくは20μm-80μm、より好ましくは50μm~80μmである)であり、標準偏差は2μm-15μm(好ましくは5μm-15μmであり、より好ましくは6μm-12μmであり、さらに好ましくは8μm-10μmである)であり、かさ密度は0.1g/mL ~0.3g/mLの間(好ましくは0.15g/mL~0.25g/mLの間である)であるポリエチレン粉体を添加する;アゾ系開始剤または過酸化化合物系開始剤(例、過酸化ベンゾイル)を添加し、添加量はポリエチレン粉体質量の0.1~10wt%であり、好ましくは2~9wt%であり、より好ましくは3~8wt%である;グラフトモノマーを添加するが、シロキサン系化合物またはビニル系不飽和化合物から選ばれる。上記ビニル系不飽和化合物は、例えば、スチレン系化合物、ビニル系不飽和有機酸、ビニル系不飽和有機エステル、無水ビニル系不飽和有機酸またはそれらの混合物であり、より好ましくは、アクリル酸(AA)、無水マレイン酸(MAH)、メタクリル酸メチル(MMA)、スチレン(St)中の一種または多種である;上記シロキサン系化合物は、例えば、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ジビニルジメチルシラン、(トリエチルシリル)アセチレン、アリルトリメチルシランなどであり、好ましくは、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン中の一種または二種である。上記グラフトモノマーの添加量はポリエチレン粉体質量の0.2~15wt%であり、好ましくは、0.5~12wt%であり、より好ましくは、1~9wt%である;添加する界面剤は、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、アセトン、ヘキサン、ヘプタンのうちの一種または多種であり、より好ましくは、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、アセトン中の一種または多種であり、例えば、キシレンであり、またはキシレンと、テトラヒドロフランと、の混合物である。上記界面剤の添加量はポリエチレン粉体質量の0.1~30wt%であり、好ましくは10~25wt%である。
【0172】
原料添加終了後、撹拌機で高速撹拌を行うが、撹拌時間は撹拌翼の効率に関係しており、撹拌の目的は反応物を均一に混合することで、グラフト反応がより充分に行われ、グラフトモノマーの自己重合反応を低減させる。従って、攪拌時間は不定であるが、通常0.5~5時間であり、好ましくは1~5時間で、より好ましくは3~5時間である。加熱による固相グラフト化反応を行うが、グラフト反応条件は60~120℃で0.5~5時間のグラフト反応を行い、好ましくは、70~110℃で0.5~3.5時間のグラフト反応を行い、より好ましくは、85~110℃で2~3時間のグラフト反応を行う。反応終了後、生成物は高いグラフト率を有するグラフトポリエチレンである。
【0173】
可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの製造方法
上記のよう本発明は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの製造方法を提供する。
【0174】
本発明の研究で発現されたことは、上記触媒の製造方法に対する簡単な制御で、上記ポリエチレン粒径への確実な制御を実現できる。但し、製造したポリエチレンの分子量は高くない。粒径への制御を実現する共に上記重合体の分子量を高めるため、発明人は様々な試みを行い、研究を経て発現したことは、重合反応の温度およびモノマーの純度を制御することは簡単かつ効果的な方法の一つでありながら、上記重合体粒径への有効的な制御にも影響を与えない。しかもより狭い粒径範囲およびより低いかさ密度範囲のポリマーを製造することにも有益である。
【0175】
研究から発現したことは、上記重合反応の温度は-20~100℃に制御し、エチレン中の純度は一酸化炭素の含有量を5ppm未満と、二酸化炭素は15ppm未満と、共役ジエンの含有量は10ppm未満と、に制御することだけで、粒径制御を実現する同時に、超高分子量のポリエチレンが製造される。好ましくは、上記重合反応の温度は、0~90℃であり、好ましくは、10~85℃であり、より好ましくは、30-80℃であり、さらに好ましくは50-80℃である。
【0176】
また、上記超高分子量超微粒子径ポリエチレンの加工性をさらに向上させるために、本発明ではさらに可溶化手段を導入した。すなわち、本発明ではポリエチレンの製造中に分散媒、または分散媒と溶媒とを導入したが、これら小分子の存在は、得られたポリエチレンの結晶領域サイズを多いに小さくし、分子鎖がより移動しやすくなり、その後の溶解または溶融加工による製品加工をする際も、熱伝達をより良くさせ、得られたポリエチレンはより低い温度でも急速に溶解または溶融されるので、工程の短縮化に貢献する以外に、溶解または溶融温度を下げることでポリエチレンの分解も著しく減少させた。これはポリエチレンの分子量を確保し、高性能のポリエチレン製品を得るにあたり重要なキーポイントである。
【0177】
可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン
上記記載のように、本発明は可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを提供する。
【0178】
上記の粒径、かさ密度、溶媒含有量を具備する超高分子量ポリエチレンは、特に、グラフト変性に適しており、ポリエチレンの変性可能性を極めて大きく拡大する一方、上記重合体の加工性も著しく改善させたため、より幅広い品物の製造に適している;このよう上記重合体の応用分野を効果的に拡大させた。
【0179】
同時に、本発明のポリエチレンはさらに次のような優れた特性も有する。1)耐摩耗性が非常に優れており、通常の炭素鋼や銅など金属の耐摩耗性指数よりも数倍高い;2)超高い分子量および超長い分子鎖のため、材料の衝撃強度が高い;3)当ポリエチレンの耐薬品腐食性は普通のポリオレフィンより強い; 4)当材料の使用温度範囲も比較的広く、より低いまたはより高い温度でも非常に良い靭性と強度とを維持する。5)当材料は後の形成、成膜、繊維形成工程で、消費エネルギーが少なく、工程時間も短い。
【0180】
繊維及びその製造方法
上記記載のように、本発明は繊維及びその製造方法を提供する。
【0181】
本発明の一つの好ましい実施形態のうち、ステップ(1)のうち、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを含む混合物及び溶媒を混合溶解して、上記紡糸溶液またはゲルを得る。本発明で、上記溶媒は上記ポリエチレンを溶解することができる有機溶媒であり、例えば、デカリン、ホワイトオイルなどである。上記紡糸溶液またはゲル中のポリマーの含有量は3-20wt%であり、好ましくは、5-15wt%である。
【0182】
本発明の一つの好ましい実施形態のうち、ステップ(2)で、溶液凍結ゲル紡糸法を例に、上記方法は具体的に以下のステップを含む:可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン及び溶剤を混合して混合物を得る;混合物をツインスクリューにより溶解押出し(好ましくは、上記溶解押出しの温度は120-270℃であり、好ましくは、150-240℃である)、紡糸溶液を得る;上記紡糸溶液は、ツインスクリューを通して直接押出され、紡糸部品、紡糸ノズルにより押出されたあと、凝固浴(例えば、冷却水浴;好ましくは、水浴温度は0-15℃であり、好ましくは2-10℃である)の冷却を経てゲル繊維が得られる。上記ゲル繊維はゲル糸延伸、溶媒抽出、乾燥、第1ホットボックス乾熱延伸、第2ホットボックス乾熱延伸、熱固定、巻取りなどの工程を経て、本発明の繊維が得られる。本発明により、上記原料には、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレン以外にも、さらに酸化防止剤が含まれる。好ましくは、酸化防止剤の添加量は、可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンの100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは、0.02-0.5重量部である。具体的に、上記繊維は、酸化防止剤を含む上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンから製造し得る。
【0183】
本発明のうち、上記混合物は上記ポリエチレン以外にも、さらに酸化防止剤を含む。好ましくは、酸化防止剤の添加量はポリエチレン100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは、0.02-0.5重量部である。具体的には、上記混合物は、上記可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンと、酸化防止剤と、からなる。上記酸化防止剤は、当該技術分野でポリエチレンに使われる既知の酸化防止剤であり、限定的ものではなく、上記酸化防止剤は、メイン酸化防止剤および補助酸化防止剤からなり、上記メイン酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤から選ばれ、上記補助酸化防止剤は、チオジプロピオン酸ジエステルまたは亜リン酸エステルなどから選ばれる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、立体障害を有するフェノール系化合物であり、それらの抗熱酸化効果は著しく、製品も汚さない;当類の酸化防止剤は品種が非常に多く、主に:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、四[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸]ペンタエリスリトールエステルなどがある。上記チオジプロピオン酸ジエステルは、一種の補助酸化防止剤であり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とよく併用され、効果も著しい。上記チオジプロピオン酸ジエステルは、例えば、チオジプロピオン酸ジドデシル、チオジプロピオン酸ジテトラデシル、またはチオジプロピオン酸ジオクタデシルである。上記亜リン酸エステルも補助酸化防止剤であり、主に、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリドデシル、亜リン酸トリセチルなどがある。
【0184】
本発明の繊維は、優れた力学的性質と、耐クリープ変形性と、を有し、比較的に広い温度使用範囲も持っている。具体的に、本発明の繊維は以下の性能を有する:繊度(dtex)1.5-3.0、破断強度≧2.0-3.5GPa、弾性率95-220GPa、破断伸び3.0-4.5%、クリープ変形≦2%(例えば1.0%-2.0%)、結晶度95%、融点130℃-140℃、使用の温度範囲は-30℃~135℃である。
【0185】
膜及びその製造
上記記載のように、本発明は膜及びその製造方法を提供する。
【0186】
本発明の一つの好ましい実施形態のうち、ステップ(1)の熔融混錬は二軸押出機により実現するが、二軸押出機による熔融混錬を行うことは周知のものであるため、ここでは詳しく説明しない。上記溶液中、ポリエチレンの重量百分率は20~50wt%であり、好ましくは、30~40wt%である。上記製膜用の溶媒は、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ナノン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,1,1-トリクロロエタン、ホワイトオイル、流動パラフィン、灯油、オレフィン鉱油、デカリン中の少なくとも一種であって良い。そのうち、上記熔融混錬の温度はポリマー及び溶媒によって異なるが、通常の範囲は130~280℃である。
【0187】
本発明の一つの好ましい実施形態のうち、ステップ(2)は具体的に、ステップ(1)の溶液は押出機を経て一つの金型に供給され、上記溶液は金型から押し出され成形体(例シート状)に成形され、冷却ローラーによる冷却を経てポリマーシート材が得られる。上記冷却ローラーの表面温度は20~40℃に設定され、成形体の冷却ローラーによる冷却速度は20℃/s以上である。
【0188】
本発明の一つの好ましい実施形態のうち、ステップ(3)での二軸延伸とは、ステップ(2)のポリマーシート材を、通常のステンター法、ローラー法またはそれらの組み合わせによって、横方向(幅方向、TD)と、縦方向(機械方向、MD)と、二つの方向に一定の倍率(横方向延伸倍率と縦方向延伸倍率)の延伸を行う。本発明での好ましい横方向延伸倍率および縦方向延伸倍率はそれぞれに4~5倍であり、好ましくは、横方向延伸倍率と、縦方向延伸倍率と、は同じである。
【0189】
更に、原料中のポリマーの含有量は3-20wt%であり、好ましくは、5-15wt%である。またさらに、原料中には酸化防止剤を添加するが、好ましくは、酸化防止剤の添加量はポリエチレン100重量部に対して、0.01-1重量部であり、より好ましくは、0.02-0.5重量部である。上記酸化防止剤は当該分野でポリエチレンに使われる既知の酸化防止剤である。非限定的で、上記酸化防止剤は、メイン酸化防止剤および補助酸化防止剤からなり、上記メイン酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤から選ばれ、上記補助酸化防止剤は、チオジプロピオン酸ジエステルまたは亜リン酸エステルなどから選ばれる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、立体障害を有するフェノール系化合物であり、それらの抗熱酸化効果は著しく、製品も汚さない。当類の酸化防止剤は品種が非常に多く、主に:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、四[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸]ペンタエリスリトールエステルなどがある。上記チオジプロピオン酸ジエステルは、一種の補助酸化防止剤であり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とよく併用され、効果も著しい。上記チオジプロピオン酸ジエステルは、例えば、チオジプロピオン酸ジドデシル、チオジプロピオン酸ジテトラデシルまたはチオジプロピオン酸ジオクタデシルである。上記亜リン酸エステルも補助酸化防止剤であり、主に、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリドデシル、亜リン酸トリセチルなどがある。
【0190】
性能及びパラメータの測定
本発明のシート材とチューブとの性能は、周知基準中の測定方法により測定する。
【0191】
例え、耐クリープ変形性は、中国国家標準GB11546-89、ISO899-1981の方法で測定する。耐衝撃性は、GB/T1043.1-2008により測定する。曲げ強度および曲げ弾性率は、GB/T9341-2008により測定する。引張強度は、GB/T1040-2006で測定する。熱変形温度は、GB/T1634.2-2004により測定する。
【0192】
本発明のグラフトポリエチレンのキャラクタリゼーション法:
グラフト化ポリエチレンの赤外線キャラクタリゼーション:少量のサンプルを採取し、フラット加硫機上で薄膜にプレスして、NICOLET 560型FTIRにより赤外スペクトルを測る。
【0193】
水接触角の測定:少量のサンプルを採取し、フラット加硫機で薄膜にプレスする。サンプル台に蒸留水1滴を落とし、サンプル膜をサンプル台にしっかり付着させる。マイクロインジェクターを使って、2 μLの脱イオン水をサンプル膜の上に滴下し、10秒後の角度を測定する。
【0194】
グラフトポリエチレンの有効グラフト率の測定方法:乾燥した精製グラフトサンプル1 gを正確に秤量し、250 mLのフラスコに入れ、80 mLのキシレンを加え、溶解するまで加熱還流する。冷却後、過量の0.1 mol/L KOH-エタノール溶液を添加し、さらに2時間加熱還流させ、冷却後にフェノールフタレインを指示剤とし、0.1 mol/Lの HCl-イソプロパノール溶液で滴定を行う。添加したアルカリ量と中和に消費された酸の量を記録し、固相グラフト反応生成物の有効グラフト率を次の式で算出する。
【0195】
【数2】
【0196】
式中、Gは生成物の有効グラフト率であり;cはKOH-エタノール溶液の濃度mol/ Lであり;vは過量に添加したKOH-エタノール溶液の体積mLであり;cはHCl-イソプロパノール溶液の濃度mol/Lであり;vはアルカリを滴定中和するのに消耗されたHCl-イソプロパノール溶液の体積mLあり;aはグラフトモノマーの中和反応に参加した官能基数であり;mは精製されたサンプルの質量gであり;Mはモノマーの相対分子量である。
【0197】
本発明の繊維の性能と、膜の性能と、は周知基準の測定方法で測定する。
【0198】
例えば、本発明の耐クリープ変形性は中華人民共和国国家標準GB11546-89、ISO899-1981中の測定方法で測定する。
【0199】
本発明の目的・技術案・長点をより明確にわかるように、以下、具体的な実施例をあげ、添付図面を参考しながら、本発明に対してさらに詳しく説明する。 だが、当業者がわかるように、本発明は添付図及び以下の実施例に限られるものではない。
【0200】
〔製造例1〕
触媒の製造
高純度窒素ガスで十分置換した反応器内に、無水塩化マグネシウム4.94gと、イソオクタノール18.9gと、デカン30mlと、を順次添加し、攪拌しながら130℃まで昇温させ2時間保持した後、チタン酸テトラプチル2.65gと、フタル酸ジイソブチル2.05gと、を添加し、130℃でさらに1時間反応させ、最後に室温まで冷却させると均一で透明な溶液、即ち混合物Iが形成される。
【0201】
反応釜内に四塩化チタン200mlを添加し攪拌しながら0℃まで予熱した後、2時間ぐらいで混合物Iを四塩化チタン中に滴下した。滴下完了後、昇温し始め、2時間内に110℃に昇温した。内部電子供与体であるフタル酸ジイソブチル1.23gを添加した。この温度で2時間反応させた後、反応液を除去し、再度四塩化チタン200mlを添加して、2時間反応させた。最後に反応液を除去し、残りの固形物を60℃のヘキサンで10回洗浄した後、乾燥することで触媒が得られた。
【0202】
〔実施例〕
(実施例1.1)
エチレンのスラリー重合
高純度窒素ガスの保護の下、1Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行い、n-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次に添加した後、エチレンガスを導入して0.7MPaに維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は80℃に維持し、反応時間は30分である。得られた触媒の活性及びポリエチレンの性質は表1の通り。
【0203】
(実施例1.2)
エチレンのスラリー重合
高純度窒素ガスの保護の下、1Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行い、n-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次に添加した後、エチレンガスを導入して0.7MPaの圧力を維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は70℃に維持し、反応時間は30分である。得られた触媒の活性及びポリエチレンの性質は表1の通り。
【0204】
(実施例1.3)
エチレンのスラリー重合
高純度窒素ガスの保護の下、1Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行い、n-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次に添加した後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は50℃に維持し、反応時間は30分である。得られた触媒の活性及びポリエチレンの性質は表1の通り。
【0205】
図1は、実施例1.3で製造されたポリエチレンの走査型電子顕微鏡図であり、図1から分かるように全てのポリエチレン粒子が良好な球形度を呈するもので、球形または類球形であり、なお、粒子径分布も比較的均一であり、平均粒子径も比較的に小さい。
【0206】
(比較例1.1)
エチレンの塊状重合
高純度窒素ガスの保護の下、1Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行い、n-ヘキサン150mLと、上記の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次に添加した後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は10ppmを超え、二酸化炭素は20ppmを超え、共役ジエン炭化水素の含有量は20ppmを超える;重合反応が開始され、系の温度は110℃に維持し、反応時間は30分である。得られた触媒の活性及びポリエチレンの性質は表1の通り。
【0207】
【表1】
【0208】
本発明ではさらに実施例1.3及び比較例1.1のポリエチレンの他の性質も測定したところ、以下のことを発現した:(1)実施例1.3のポリエチレンの耐摩耗性指数は全て一般の炭素鋼または銅の耐摩耗性指数より数倍高い;だが、比較例1.1の耐摩耗性指数はわずかに下がっていた;(2)実施例1.3のポリエチレンの衝撃強度は10KJ/m2を超えるが、比較例1.1の衝撃強度は3KJ/m2前後である;(3)実施例1.3のポリエチレン粉体の耐薬品腐食能力は一般のポリオレフィンより強いが、比較例1.1のポリエチレン粉体は酸性条件下で非常に分解し易い;(4)実施例1.3のポリエチレン粉体の使用温度範囲は比較的に広く、より低い(例えば:零下30℃)またはより高い温度(例えば:110℃)でも非常に良い靭性と強度とを維持した。
【0209】
(実施例2.1)
グラフトポリエチレンの製造
PE-g-MAHの製造:高純度窒素ガスで十分置換した反応器内に実施例1.1で製造した平均粒子径85μmのポリエチレン粒子(標準偏差は8.21μm、粘度平均分子量は1.3×106、分子量分布は9.2)を40 g添加し、過酸化ベンゾイルを2.0 g添加し、無水マレイン酸(MAH)2.8 gを添加し、テトラヒドロフラン4 mLとキシレン5 mLとを添加する;そして攪拌機械を稼働し、3時間急速に攪拌する;最後、反応器を100℃の油浴中に仕込み、2時間反応させることで生成物の粗グラフト物が得られた。
【0210】
PE-g-MAHの精製:粗グラフト物を約4 g秤量し、キシレン200 mLと共に、500 mLの蒸留フラスコ内に添加して加熱溶解させ、4時間還流する。冷却してからアセトン(約200 mL)を入れて均等に振った後、静置沈殿させてから濾過する。さらにアセトンで1回洗浄し、濾過物を50 ℃のオーブン中で12時間乾燥し冷却することで精製グラフト物が得られる。
【0211】
PE-g-MAHの赤外線キャラクタリゼーション:上記方法により当該精製グラフト物の赤外線スペクトルを測定したが、結果は図2の通り、そのうち上の方がポリエチレン原料(即ちベースポリマー)であり、下の方がグラフトポリエチレンである。1862 cm-1、1785 cm-1、1717 cm-1は無水マレイン酸の特徴的なピークであるため、無水マレイン酸が成功的にポリエチレン鎖にグラフトされたことを示す。
【0212】
水接触角の測定:上記の方法により水接触角を測定したところ、ポリエチレン原料(即ちベースポリマー)の水接触角は95°であり、グラフト化ポリエチレンの水接触角は88°である。
【0213】
PE-g-MAHの有効グラフト率の測定:上記の方法により測定した上記グラフト化ポリエチレンの有効グラフト率は1.33%である。
【0214】
(実施例2.2)
グラフトポリエチレンの製造
PE-g-MAHの製造:高純度窒素ガスで十分置換した反応器内に、実施例1.1で製造した平均粒子径76μmのポリエチレン粉体(標準偏差は8.22μm、粘度平均分子量は1.7×106)を40 g添加し、アゾビスイソブチロニトリルを2.0 g添加し、無水マレイン酸(MAH)2.8 gを添加し、テトラヒドロフラン3 mL及びキシレン 6 mLを添加する;そして攪拌機械を稼働し、3時間急速に攪拌する;最後に、反応器を120℃の油浴中に仕込み、2時間反応させることで生成物が得られた。グラフト化ポリエチレンの無水マレイン酸の有効グラフト率の測定値は1.65%であり、グラフト化ポリエチレンの水接触角度は84°である。
【0215】
(実施例2.3)
グラフトポリエチレンの製造
PE-g-AAの製造:高純度窒素ガスで十分置換した反応器内に実施例1.1と同じ方法で製造した平均粒子径45μmのポリエチレン粉体(標準偏差は8.18μm、粘度平均分子量は2.7×106)を40 g添加し、過酸化ベンゾイルを2.0 g添加し、ヘキセン酸2.8 gを添加し、キシレン5mLを添加する;そして攪拌機械を稼働し、3時間急速に攪拌する;最後に、反応器を100℃の油浴中に仕込み、2時間反応させることで生成物が得られた。グラフト化ポリエチレンのヘキセン酸の有効グラフト率の測定値は2.14%であり、グラフト化ポリエチレンの水接触角度は80°である。
【0216】
(実施例2.4)
グラフトポリエチレンの製造
PE-g-MMAの製造:高純度窒素ガスで十分置換した反応器内に実施例1.1と同じ方法で製造した平均粒子径70μmのポリエチレン粉体(標準偏差は8.21μm、粘度平均分子量は1.3×106)を40 g添加し、過酸化ベンゾイルを2.0 g添加し、メタクリル酸メチル(MMA)2.8 gを添加し、キシレン5mLを添加する;そして攪拌機械を稼働し、4時間急速に攪拌する;最後に、反応器を100℃の油浴中に仕込み、2時間反応させることで生成物が得られた。グラフト化ポリエチレンのMMAの有効グラフト率の測定値は2.04%であり、グラフト化ポリエチレンの水接触角度は81°である。
【0217】
(製造例3.1)
ガラス繊維
ミキサーにガラス繊維と、カップリング剤と、を添加して30分間攪拌する;希釈剤を添加して更に30分間攪拌する;本発明の処理後のガラス繊維が得られた。そのうち、カップリング剤は γ--アミノプロピルトリエトキシシランKH550であり;ガラス繊維の長さは3-5mmであり;希釈剤はホワイトオイルである。希釈剤とカップリング剤との重量比は3:1であり、カップリング剤の使用量はガラス繊維100重量部に対して2重量部である。
【0218】
(製造例3.2)
ガラス繊維
ミキサーにガラス繊維と、カップリング剤と、を添加して30分間攪拌する;更に希釈剤を添加して30分間攪拌する;本発明の処理後のガラス繊維が得られた。そのうち、カップリング剤はビニルトリメトキシシランA-171であり;ガラス繊維の長さは3-5mmであり;希釈剤はホワイトオイルである。希釈剤とカップリング剤との重量比は4:1であり;カップリング剤の使用量はガラス繊維100重量部に対して1重量部である。
【0219】
(製造例3.3)
ガラス繊維
ミキサーにガラス繊維と、カップリング剤と、を添加して30分間攪拌する;更に希釈剤を添加して30分間攪拌する;本発明の処理後のガラス繊維が得られた。そのうち、カップリング剤はビニルトリエトキシシランA-151であり;ガラス繊維の長さは3-5mmであり;希釈剤は流動パラフィンである。希釈剤とカップリング剤との重量比は6:1であり、カップリング剤の使用量はガラス繊維100重量部に対して3重量部である。
【0220】
(実施例3.1~3.9)
ガラス繊維強化ポリエチレン組成物
本発明実施例3.1~3.9の組成物の構成及び含有量は表2で示す通り。
【0221】
【表2】
【0222】
【0223】
(実施例3.10~3.18)
実施例3.1~3.9の組成物をそれぞれに使ってシート材を製造する。
【0224】
実施例3.1aの組成物を例に、実施例1.1のエチレンホモポリマー6kgと、製造例3.1のガラス繊維4kgと、を高速ミキサーで均一に混合し、押出機に添加し、スリットダイを通して押出し、冷却・延伸により本発明のシート材を製造し得る。そのうち、上記押出機の加工温度は180~240℃である。
【0225】
実施例3.10~3.18で製造したシート材の性能測定結果は表3に示す通り。
【0226】
【表3】
【0227】
【0228】
(実施例3.19~3.27)
実施例3.1~3.9の組成物をそれぞれに使ってチューブを製造する。
【0229】
実施例3.1aの組成物を例に、実施例1.1のエチレンホモポリマー6kgと、製造例3.4のガラス繊維4kgと、を高速ミキサーで均一に混合し、押出機に添加し、チューブ用ダイを通して押出し、冷却・延伸により本発明のチューブを製造し得る。そのうち、上記押出機の加工温度は180~240℃である。上記チューブの壁厚さは0.5mm-5mmの間である。
【0230】
実施例3.19~3.27で製造したチューブの性能測定結果は、相応するシート材の性能に近い。
【0231】
(実施例4.1)
可溶型エチレンのスラリー重合
スラリー法重合工程を採用して、まず、重合釜の予備処理を行う(高純度窒素ガスの保護の下、5Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行う)。分散媒であるシクロヘキサン500gを添加し、続いてn-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次添加する。その後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は80℃に維持し、反応時間は30分である。重合反応終了後、冷却させ温度を下げてから、底弁から直接的にスラリー材料を排出し、必要な量のホワイトオイルを添加し、蒸留による分散媒の除去を行い本発明の可溶型超高分子量超微粒子径エチレンホモポリマーが得られる。そのうち、ホワイトオイルの含有量は質量百分比で30wt%である。得られたポリエチレンの性質は表4の示す通り。
【0232】
比較溶解試験:実施例4.1で製造したホワイトオイルを含む超高分子量超微粒子径エチレンポリマー10gを、ホワイトオイル60gに添加し、140℃で溶解させ、20分掛けて溶解完了させる。
【0233】
比較例4.1で調製した超高分子量超微粒子径エチレンポリマー7gを、ホワイトオイル63gに添加し、140℃で溶解させ、90分掛けて溶解完了させる。
【0234】
(実施例4.2)
可溶型エチレンのスラリー重合
スラリー法重合工程を採用して、まず、重合釜の予備処理を行う(高純度窒素ガスの保護の下、5Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行う)。分散媒であるn-ペンタン500gを添加し、続いてn-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次添加する。その後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は70℃に維持し、反応時間は30分である。重合反応終了後、冷却させ温度を下げてから、底弁から直接的にスラリー材料を排出し、必要な量のホワイトオイルを添加し、蒸留による分散媒の除去を行い本発明の可溶型超高分子量超微粒子径エチレンホモポリマーが得られる。そのうち、ホワイトオイルの含有量は質量百分比で40wt%である。得られたポリエチレンの性質は表4の示す通り。
【0235】
実施例4.1と類似した方法で溶解性を測定したところ、溶媒含有量が0のポリマーの溶解時間より約80%短縮された。
【0236】
(実施例4.3)
可溶型エチレンのスラリー重合
スラリー法重合工程を採用して、まず、重合釜の予備処理を行う(高純度窒素ガスの保護の下、5Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行う)。分散媒であるシクロヘキサン500gと、必要なホワイトオイルと、を添加し、続いて上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次添加する。その後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は50℃に維持し、反応時間は30分である。重合反応終了後、冷却させ温度を下げてから、底弁から直接的にスラリー材料を排出し、蒸留による分散媒の除去を行い本発明の可溶型超高分子量超微粒子径エチレンホモポリマーが得られる。そのうち、ホワイトオイルの含有量は質量百分比で30wt%である。得られたポリエチレンの性質は表4の示す通り。
【0237】
実施例4.1と類似した方法で溶解性を測定したところ、溶媒含有量が0のポリマーの溶解時間より約80%短縮された。
【0238】
走査型電子顕微鏡図から分かるように、実施例4.1-4.3で製造したポリエチレン粒子は比較的に良い球形度を呈し、球形または類球形である。なお、粒子径分布が比較的に均一であり、平均粒子径も比較的に小さい。
【0239】
(比較例4.1)
エチレンホモポリマー及びその製造
高純度窒素ガスの保護の下、1Lの高圧反応釜に対して乾燥、酸素除去を行い、n-ヘキサン150mLと、上記製造例1の触媒20mgと、トリエチルアルミニウム12mlと、を順次添加する。その後、エチレンガスを導入して0.7MPaを維持した;そのうち、エチレン中の一酸化炭素の含有量は5ppm未満、二酸化炭素は15ppm未満、共役ジエン炭化水素の含有量は10ppm未満である;重合反応が開始され、系の温度は80℃に維持し、反応時間は30分である。上記エチレンホモポリマーを製造しうる。
【0240】
(比較例4.2)
エチレンの塊状重合
実施例4.1と類似した方法を採用し、重合温度とモノマーの純度のみを変化させた。そのうち、エチレンの純度は、一酸化炭素の含有量が10ppmを超え、二酸化炭素が20ppmを超え、共役ジエン炭化水素の含有量が20ppmを超える;系の温度は110℃に維持した。得られた触媒の活性とポリエチレンの性質は表4に示す通り。
【0241】
【表4】
【0242】
本発明ではさらに実施例4.1~4.3のポリエチレンの他の性質も測定し、測定の結果として以下のことがわかった。(1)実施例4.1~4.3のポリエチレンの耐摩耗性指数は全て一般の炭素鋼または銅の耐摩耗性指数より数倍高い;なお、比較例4.1の耐摩耗性指数はわずかに低い;(2)実施例4.1~4.3のポリエチレンの衝撃強度は10KJ/m2より高いが、比較例4.1の衝撃強度は3KJ/m2前後である。(3)実施例4.1~4.3のポリエチレン粉体の耐薬品腐食性は一般のポリオレフィンより強く、比較例4.1のポリエチレン粉体は酸性条件で極めて分解しやすい。(4)実施例4.1~4.3のポリエチレン粉体の使用温度の範囲は比較的広く、比較的低い(例えば、零下30℃)または比較的高い温度(例えば、110℃)でもより良い靭性および強度を維持できる。
【0243】
(実施例5.1)
繊維の製造
実施例4.1の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンをホワイトオイルと混合して、混合物をえる。其の内、ポリマーの含有量は10wt%である;混合物をツインスクリューにより溶解押出し、上記溶解押出しの温度は200℃であり、紡糸溶液が得られる;上記紡糸溶液は、ツインスクリューを通して直接的に押出され、紡糸部品、紡糸ノズルから押出されたあと、冷却水浴(水浴温度は5℃)の冷却を経てゲル繊維が得られる。上記ゲル繊維をゲル糸延伸、溶媒抽出、乾燥、第1ホットボックス乾熱延伸、第2ホットボックス乾熱延伸、熱固定および巻取り工程を経て、本発明の繊維が得られる。
【0244】
上記ゲル繊維を繊維に加工する工程において、ゲル糸延伸工程の延伸温度は40℃であり、延伸倍率は10倍である;溶媒抽出工程中の抽出剤はシクロヘキサンから選ばれる;乾燥工程での乾燥は熱風乾燥であり、熱風温度は60℃である;第1ホットボックス乾熱延伸工程中の温度は130℃であり、延伸倍数は10倍である;第2ホットボックス乾熱延伸工程中の温度は135℃である。 延伸倍率は2倍である;熱固定工程中の温度は120℃である。
【0245】
(実施例5.2)
繊維の製造
ステップ(1)で溶媒と混合する過程で酸化防止剤を添加し、酸化防止剤の添加量はポリエチレン100重量部に対して0.05重量部を添加した他に、実施例5.1と同様である。上記酸化防止剤は、メイン酸化防止剤と、補助酸化防止剤と、からなり、上記メイン酸化防止剤は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールから選ばれる。上記補助酸化防止剤は、チオジプロピオン酸ジドデシルから選ばれる。
【0246】
実施例5.1及び5.2で製造した繊維の性能は表5を参照。
【0247】
【表5】
【0248】
表5のデータから分かるように、本発明の繊維は、優れた耐クリープ変形性および比較的広い使用温度を有するため、極めて大きい応用可能性がある。
【0249】
(実施例6.1)
膜の製造
1)可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを含む原料と製膜用溶剤とを熔融混錬して溶液が得られる。
【0250】
上記ポリマーは実施例4.1の可溶型超高分子量超微粒子径ポリエチレンを採用する共に、酸化防止剤を添加するが、ポリマー100重量部に対して酸化防止剤の使用量は0.1重量部であり、上記酸化防止剤は、メイン酸化防止剤及び補助酸化防止剤からなり、上記メイン酸化防止剤は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールから選ばれる。上記補助酸化防止剤はチオジプロピオン酸ジドデシルから選ばれる。製膜用の溶媒は流動パラフィンであり、溶液中のポリマーの重量百分率は30wt%である。
【0251】
上記熔融混錬は、既知の二軸押出機により行い、そのうち、上記熔融混錬の温度は180~250℃である。
【0252】
2)溶液を押出し、成形体を成形し冷却してポリマーのシート材をえる。具体的には、ステップ(1)の溶液を押出機により金型内に供給し、上記溶液を金型から押し出し成形体(例えば、シート状)を形成する。冷却ローラーで冷却した後に、ポリマーシート材が得られる;冷却ローラーの表面温度は20~40℃に設定され、成形体が冷却ローラーを通過する冷却速度は20℃/s以上である。
【0253】
3)二軸延伸により薄膜を製造し得る。上記延伸はローラー法で実現するが、そのうち、縦方向延伸倍率は5倍であり、横方向延伸倍率は5倍である。
【0254】
(実施例6.2~6.6)
膜の製造
相違点は表6に示す通る他に、実施例6.1と同じである。
【0255】
【表6】
【0256】
実施例6.1~6.6の膜の性能測定結果は表7で表す。
【0257】
【表7】
【0258】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。本発明の精神および原則範囲内で行われた凡ゆる修正、同等な置き換え、改善などは、全て本発明の保護範囲内に包括される。
【図面の簡単な説明】
【0259】
図1図1は実施例1.3のポリエチレン粒子の走査型電子顕微鏡図である。
図2図2は実施例2.1の無水マレイン酸グラフトポリエチレンの赤外線スペクトルである。
図1
図2