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特許7466341複合材翼、回転機械及び複合材翼の成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】複合材翼、回転機械及び複合材翼の成形方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/28 20060101AFI20240405BHJP
   F01D 5/14 20060101ALI20240405BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240405BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F01D5/28
F01D5/14
F01D25/00 L
F02C7/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020046584
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148024
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌美
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199483(JP,A)
【文献】特開昭64-031835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24;25/00
F02C 7/00
F03D 1/00-80/80
F04D 29/24;29/30;29/38
B64C 3/20; 3/24
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂を用いて形成される複合材翼において、
翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面、及び翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面を有し、前記複合材翼の内面に設けられる基材部と、
前記基材部の外面を被覆する第1被覆部と、
前記腹側翼面と前記背側翼面との間に設けられる中立部と、を備え、
前記基材部は、第1樹脂と炭素繊維とを含む炭素繊維強化樹脂を用いて形成され、
前記中立部は、前記第1被覆部と同一の材料、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、発泡樹脂、高弾性フィラーを添加した発泡剤のうちいずれか一つによって形成され、
前記第1被覆部は、第2樹脂と、弾性高分子繊維と、を含む弾性高分子繊維強化樹脂により形成され、かつ、前記基材部よりも耐衝撃性を有する複合材翼。
【請求項2】
前記第1被覆部は、少なくとも、
前記複合材翼のコード長の両端からコード長の5から10%の範囲であって、
前記複合材翼の先端から翼高さの5から10%の範囲において、
前記複合材翼の翼厚の50%以上の厚みに渡って、
積層される
請求項1に記載の複合材翼。
【請求項3】
前記弾性高分子繊維は、
アラミド繊維、
ポリアリレート系繊維、
液晶性全芳香族ポリエステル繊維、
の内のいずれか一つである
請求項1に記載の複合材翼。
【請求項4】
前記第1被覆部は前記基材部の翼面の全範囲に設けられる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項5】
前記第1被覆部は前記基材部の翼厚が最も厚い部位よりも薄い部位に設けられる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項6】
前記腹側翼面の前記背側翼面と対向する内面側と、
前記背側翼面の前記腹側翼面と対向する内面側と、をそれぞれ被覆する第2被覆部と、
前記腹側翼面の前記第2被覆部と、前記背側翼面の前記第2被覆部との間に設けられる緩衝部と、を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項7】
前記緩衝部は、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、発泡樹脂、の内のいずれか一つを用いて形成される
請求項に記載の複合材翼。
【請求項8】
前記発泡樹脂に用いる樹脂として熱可塑性樹脂を用いる
請求項、請求項のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項9】
前記緩衝部は、ラティス構造体の形状に形成され、金属、複合材、熱可塑性樹脂の内のいずれか一つを用いて形成される
請求項に記載の複合材翼。
【請求項10】
前記第1被覆部の最外層の弾性高分子繊維の方向は、前記基材部の表層の繊維の方向に対して、90度よりも小さい傾きを有する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項11】
前記第1被覆部の最外層の弾性高分子繊維の方向は、前記基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを有する
請求項1に記載の複合材翼。
【請求項12】
前記第1被覆部の弾性高分子繊維は、前記基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを有する織物を形成し、
前記織物は、弾性高分子繊維束同士が90度の傾きを持って形成される平織の織物である
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の複合材翼。
【請求項13】
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の複合材翼を備える、
回転機械。
【請求項14】
請求項4に記載の複合材翼を成形する複合材翼の成形方法であって、
前記基材部は、強化繊維シートを積層して成形されると共に、翼厚方向において一方の端面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の端面となる背側翼面と、を有し、
前記背側翼面を成形するための背側成形型に、背側の前記第1被覆部を配置すると共に、前記強化繊維シートを積層して背側積層体を成形するステップと、
前記腹側翼面を成形するための腹側成形型に、腹側の前記第1被覆部を配置すると共に、前記強化繊維シートを積層して腹側積層体を成形するステップと、
前記腹側翼面と前記背側翼面との間に前記中立部を形成するステップと、
前記背側積層体と前記腹側積層体とが重なり合うように、前記背側成形型と前記腹側成形型とを型合わせするステップと、
前記背側積層体及び前記腹側積層体を加熱するステップと、
を備える
請求項4に記載の複合材翼を成形する複合材翼の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材翼、回転機械及び複合材翼の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機用エンジンのファンブレードに、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastic、以下CFRPと略す)を適用したものが製品化された。CFRPは軽量、かつ、高強度という特性を有しており、航空機用エンジンのファンブレードに適用することで、航空機用エンジンの軽量化が可能となり、航空機の燃費を向上させることができる。一方、航空機用エンジンでは、使用中のバードストライクや砂塵等の衝突を考慮する必要があるが、CFRPだけではバードストライクの衝突に対する耐衝撃性が足りないという課題があった。
【0003】
その課題に対処する為に、下記の特許文献1に係る開示では、ファンブレードの前縁部、及び、先端部を覆うように金属製の鞘形状の部材を接着し、耐衝撃性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-155674号公報
【0005】
産業用ガスタービンにおいても、翼材料としてCFRPの適用が検討されている。産業用ガスタービンでは、エンジン入口の上流吸気口に、吸気フィルターが設置されており、航空機用エンジンのように使用中に鳥や砂塵が侵入することは考慮する必要は無い。しかし、外気温が低い場合に、吸気口や圧縮機の前段に発生する氷が、後段の翼に衝突する恐れがある。その為、産業用ガスタービンの動翼に、CFRPを用いるには、耐衝撃性を向上させる必要がある。
【0006】
産業用ガスタービンの圧縮機の動翼にも、航空機用エンジンのファンブレードと同様に、前縁部に金属製の鞘形状の保護部材を接合し、耐衝撃性を向上させることが出来る。しかし、産業用ガスタービンにおいては、バードストライクの発生は考慮する必要は無く、金属程度の耐衝撃性は要求されない。また、保護部材に金属を使用した場合は重量が増加してしまい、炭素繊維強化樹脂の適用による軽量化の効果が十分に発揮できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、耐衝撃性が向上された複合材翼、回転機械及び複合材翼の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る強化繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂を用いて形成される複合材翼は、複合材翼の内面に設けられる基材部と、基材部の外面を被覆する第1被覆部と、を備え、基材部は、炭素繊維と第1樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂を用いて形成され、第1被覆部は、弾性高分子繊維と、第2樹脂と、を含む弾性高分子繊維強化樹脂により形成され、かつ、基材部よりも耐衝撃性を有する。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る回転機械は上述の複合材翼を備える。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る複合材翼の成形方法は、基材部が強化繊維シートを積層して成形されると共に、翼厚方向において一方の翼面となる腹側面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側面と、を有し、背側面を成形するための背側成形型に、第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して背側積層体を成形するステップと、腹側面を成形するための腹側成形型に、第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して腹側積層体を成形するステップと、背側積層体と腹側積層体とが重なり合うように、背側積層体型と腹側積層体型とを型合わせするステップと、背側積層体、及び、腹側積層体を加熱するステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、耐衝撃性が向上された複合材翼、回転機械及び複合材翼の成形方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の複合材翼が適用される産業用ガスタービンの全体構成を示す概略図である。
図2図2は、本開示の複合材翼の実施例1の構成を示す断面図である。
図3図3は、本開示の複合材翼の実施例2-1の構成を示す断面図である。
図4図4は、本開示の複合材翼の実施例2-2の構成を示す断面図である。
図5図5は、本開示の複合材翼の実施例3の構成を示す断面図である。
図6図6は、本開示の複合材翼の実施例3-2の構成を示す断面図である。
図7図7は、ラティス構造体の構造を示す説明図である。
図8図8は、複合材翼の成形方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により、この開示が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本開示に係る複合材翼が適用される回転機械の一例である産業用ガスタービンの全体構成を示す概略図である。なお、本開示に係る複合材翼の適用対象は、産業用ガスタービンに限定されるものではなく、ターボチャージャー、航空機用ガスタービンエンジン、産業用圧縮機等の回転機械に適用することが出来る。産業用ガスタービンは、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3と、により構成される。産業用ガスタービンには、同軸上に図示しない発電機が連結され発電可能となっている。
【0015】
圧縮機1は、空気を取り込む空気取入口を有し、圧縮機車室内に、入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)が、配設されると共に、複数の動翼と、複数の静翼が交互に配設される。空気取入口から取り込まれた空気を圧縮機1によって圧縮することで、空気が高温・高圧に状態変化され、燃焼器2が備えられた車室に供給される。
【0016】
燃焼器2が備えられた車室に供給された圧縮空気は、燃料が供給され、燃料が燃焼することで、燃焼ガスが生成される。タービン3は、タービン車室内に複数の静翼と、複数の動翼が、交互に配設される。タービン3は、燃焼器2からの燃焼ガスによって、駆動され、同軸上に連結された発電機を駆動する。
【0017】
(実施例1)
図2は、本開示に係る複合材翼の実施例1の構成を示す断面図である。本開示に係る、樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂を用いて形成される複合材翼は、複合材翼の内面に設けられる基材部11と、基材部11の外面を被覆する第1被覆部12と、を備える。基材部11は、炭素繊維と第1樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂を用いて形成される。第1被覆部12は、第2樹脂と、弾性高分子繊維と、を含む弾性高分子繊維強化樹脂により形成され、かつ、基材部11よりも耐衝撃性を有する。
【0018】
また、基材部11は、翼厚方向における一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向における他方の翼面となる背側翼面と、を備える。腹側翼面は圧力面となる翼面であり、前縁部と後縁部とを結んで形成される翼外周形状が、内面側から外面側に向かって窪んだ形状に形成される。背側翼面は負圧面となる翼面であり、前縁部と後縁部とを結んで形成される翼外周形状が、内面側から外面側に向かって突出した形状に形成される。
【0019】
基材部11は、樹脂と炭素繊維とを含む炭素繊維強化樹脂によって形成される。なお、基材部11に使用する強化繊維は、炭素繊維に限定するものではなく、ガラス繊維であってもよい。基材部11を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が、挙げられる。他には、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、基材部11は、炭素繊維に樹脂が含浸された強化繊維シート(プリプレグ)を積層して積層体を形成し、積層体を加熱することで成形される。ただし、基材部11の製造方法は、これに限定されるものではない。
【0020】
基材部11の外面が、弾性高分子繊維強化樹脂を用いて形成される第1被覆部12によって被覆されることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0021】
(実施例1-1)
第1被覆部12は、少なくとも複合材翼のコード長の両端からコード長の5から10%の範囲であって、複合材翼の先端から翼高さの5から10%の範囲において、複合材翼の翼厚の50%以上の厚みに渡って積層される。
【0022】
複合材翼のコード長の両端からコード長の5から10%の範囲は、翼の先縁部に当たる部分と、後縁部に当たる部分に該当する。当該部分はコード長の中央部分に当たる箇所と比較すると翼厚が薄い部分である。また、複合材翼の先端から翼高さの5から10%の範囲は、翼高さの中央部分に当たる箇所と比較して翼厚が薄い部分である。したがって、第1被覆部12が、複合材翼の翼厚が薄い部分に設けられることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0023】
(実施例1-2)
また、第1被覆部12に用いる弾性高分子繊維としては、アラミド繊維、ポリアリレート系繊維、液晶性全芳香族ポリエステル繊維の内のいずれか一つを用いることが好ましい。
【0024】
アラミド繊維は、芳香族ポリアミドの化学構造を有する合成繊維である。アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維に分類されるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を、デュポン社が商業生産したケブラー(登録商標)が知られている。ポリパラフェニレンテレフタルアミドは、溶液中で液晶を形成する溶液液晶ポリマー(Thermotropic LCP)に分類される。他に、パラ系アラミド繊維としては、AKZO社のトワロン(登録商標)(正式名称:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)、帝人社のテクノーラ(登録商標)(正式名称:コポリパラフェニン・3”4オキシジフェニレン・テレフタルアミド)が、商業生産されている。本開示に係る複合材翼の第1被覆部に用いる弾性高分子繊維として用いることが出来るアラミド繊維の例示は上述の通りであるが、これに限定するものではない。
【0025】
アラミド繊維は、炭素繊維と比較して、衝撃吸収性に優れるという特性を有している。従って、第1被覆部に用いる弾性高分子繊維として、アラミド繊維を用いることによって、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0026】
ポリアリレート系繊維は、ポリエステル系液晶ポリマーを原料とした合成繊維である。ポリエステル系液晶ポリマーは、熱溶融状態で液晶を形成する溶融液晶ポリマー(Thermotropic LCP)に分類される。ポリアリレート系繊維は、高強力・高弾性率のほか、水をほとんど吸わないという特性を有する。ポリアリレート系繊維としては、例えば、クラレ社が商業生産する「ベクトラン」(登録商標)を用いることが出来る。第1被覆部に用いる弾性高分子繊維として用いることが出来るポリアリレート系繊維の例示は上述の通りであるが、これに限定するものではない。
【0027】
第1被覆部に用いる弾性高分子繊維としてポリアリレート系繊維を用いることによって、異物が第1被覆部12に衝突した際に、第1被覆部12が弾性変形し、衝撃エネルギーが弾性エネルギーに変換され、基材部11の破損を防ぐことが出来る。その為、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0028】
液晶性全芳香族ポリエステルは、溶融状態で分子の直鎖が規則正しく並んだ液晶の性質を示す液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、以下LCPと略す)の一種である。液晶ポリマー(LCP)は、溶液中で液晶を形成する溶液液晶ポリマー(Lyotropic LCP)と、熱溶融状態で液晶を形成する溶融液晶ポリマー(Thermotropic LCP)に分類される。また、液晶ポリマー(LCP)は、特に強度に優れ、耐熱性のような特定の機能を強化したエンジニアリングプラスチックにも分類される。住友化学社のスミカスーパー(登録商標)LCPは、エンジニアリングプラスチックの中では、耐熱温度が高い部類に入り、高い流動性を有し、射出成形による成形が可能という特性を有する。液晶性全芳香族ポリエステルを押し出し成形することによって、繊維状に成形することも出来る。また、スミカスーパー(登録商標)LCPに、ガラス繊維を充填することで、耐衝撃性を向上させたガラス繊維充填液晶性全芳香族ポリエステルを第1被覆部に用いることによっても、耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0029】
第1被覆部12に用いる弾性高分子繊維として、液晶性全芳香族ポリエステル繊維を用いることによって、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0030】
(実施例1-3)
図2に示すように、本開示に係る複合材翼の第1被覆部12は、基材部11の翼面の全範囲に形成される。
【0031】
基材部11と比較して耐衝撃性を有する第1被覆部12が、基材部11の翼面の全範囲に形成されることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0032】
(実施例1-4)
また、本開示に係る複合材翼の第1被覆部12は、基材部11の翼厚が最も厚い部位よりも、薄い部位に設けられる。基材部11の翼厚が最も厚い部位よりも、薄い部位としては、基材部11の前縁部、後縁部、先端部が挙げられる。前縁部は、作動流体の流通方向における翼の上流側の端部である。一方、後縁部は、作動流体の流通方向における翼の下流側の端部である。先端部は、翼高さ方向における翼の先端側の端部である。翼全体の内、翼の前縁部、後縁部、先端部は、翼厚さが薄い部分である。その為、当該部分の耐衝撃性が低い場合、当該部分への異物の衝突によって破損が生じる可能性がある。
【0033】
従って、基材部11と比較して耐衝撃性を有する第1被覆部12を、基材部11の翼厚が最も厚い部位よりも、薄い部位に設けることによって、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。なお、第1被覆部の厚さを変えても良い。
【0034】
(実施例2-1)
図3は、本開示に係る複合材翼の実施例2-1の構成を示す断面図である。基材部11は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面16と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面17と、腹側翼面16と背側翼面17との間に設けられる中立部13とを有する。中立部13は、第1被覆部12と同一の材料を用いて形成される。中立部13は、翼厚方向において厚さが、翼の前縁部から後縁部に亘って、同一の厚さに形成される。また、中立部13の翼の前縁部側の端部、および、翼の後縁部側の端部は、それぞれ第1被覆部の前縁側の端部、第1被覆部の後縁側の端部に接合している。
【0035】
腹側翼面16と背側翼面17との間に中立部13を備え、中立部13が第1被覆部12と同一の材料を用いて形成されることから、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、耐衝撃性を有する材料に囲まれた領域内で反射し、減衰することで、衝撃エネルギーを低減させることが出来る。その為、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0036】
(実施例2-2)
図4は、本開示に係る複合材翼の実施例2-2の構成を示す断面図である。翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面16と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面17と、腹側翼面16と背側翼面17との間に設けられる中立部13と、を有し、中立部13は、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、発泡樹脂、の内のいずれか一つを用いて形成される。
【0037】
中立部13に用いる材料としては、樹脂系の材料にエラストマーの弾性充填剤を充填した材料を用いることが出来る。樹脂系の材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、または、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂を用いることが出来る。弾性充填剤とは、樹脂等に充填し、弾性を付与する機能を有する充填剤である。エラストマーとは、elastic(弾性がある)と、polymer(重合体)を組み合わせた造語である。すなわち、弾性を持った高分子の総称である。例えば、ゴムがエラストマーに含まれる。エラストマーは、熱を加えると硬化する「熱硬化性エラストマー」と、熱を加えると軟化し流動性を示す「熱可塑性エラストマー」に分類することが出来る。熱可塑性エラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることが出来る。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、動的加硫系熱可塑性エラストマー等を用いることが出来る。
【0038】
また、中立部13に用いる材料として、他に発泡樹脂を用いることが出来る。発泡樹脂は、樹脂のマトリックス中に気泡が多数分散したものである。各気泡が各々個別に封じられたものが「独立気泡型」、各気泡が繋がっているものは「連続気泡型」と分類される。「独立気泡型」は、適度な弾性を有し寸法維持性が高い。「連続気泡型」は、柔軟性が高い。樹脂に気泡を発生させる方法は、化学反応を利用する「化学反応ガス活用法」、沸点が低い溶剤を用いる「低沸点溶剤活用法」、空気を混入させる「機械的混入法」、含ませた溶剤を除去する過程で空隙を作る「溶剤除去法」等によって、発生させる。発泡樹脂に用いる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、または、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂を用いることが出来る。
【0039】
中立部13に、樹脂系の材料にエラストマーの弾性充填剤を充填した材料、又は、発泡樹脂を用いることによって、複合材翼の外部からの異物の衝突による衝撃エネルギーが、中立部13の弾性変形によって吸収され、複合材翼の外面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0040】
(実施例2-3)
基材部は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面と、腹側翼面と背側翼面との間に設けられる中立部と、を有し、中立部は、高弾性フィラーを添加した発泡材で形成される。
【0041】
高弾性フィラーとしては、前述のエラストマーの弾性充填剤を用いることができる。発泡材としては、前述の発泡樹脂を挙げることができる。すなわち、高弾性フィラーを添加した発泡材とは、例えば、発泡樹脂にエラストマーを添加した材料である。
【0042】
(実施例2-2-1)
中立部13に用いる発泡樹脂の樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂は、線状あるいは分岐状の化学構造を有することから、高分子の構造上、樹脂に外力が加わった際に、高分子の弾性特性により変形抵抗力が発生すると考えられる。その為、熱可塑性樹脂の化学構造が、振動発生時に減衰特性が発揮される要因となると考えられる。また、発泡樹脂の減衰特性を向上させる為、発泡樹脂に用いる樹脂に粘弾性付与材を付与することが出来る。粘弾性付与材としては、上述の合成ゴムに含まれるポリブタジエンや、上述の「熱硬化性エラストマー」、又は、「熱可塑性エラストマー」を用いることが出来る。これらの粘弾性付与材を樹脂に付与した発泡樹脂は、減衰特性が向上される。発泡樹脂に用いる樹脂として粘弾性付与材を付与された発泡樹脂を用いることが出来る。
【0044】
中立部13に用いる発泡樹脂の樹脂として、熱可塑性樹脂を用いることで、中立部13の振動減衰特性を向上させることが出来る。その為、中立部13において、外部から衝撃エネルギーが弾性エネルギーに変換された後に早期に、弾性エネルギーを減衰させることが出来ることから、中立部13の衝撃吸収特性を高めることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0045】
(実施例3)
図5は、本開示に係る複合材翼の実施例3の構成を示す断面図である。本開示に係る複合材翼の基材部11は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面16と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面17と、腹側翼面16と背側翼面17との間に設けられる中立部13と、を有する。中立部13は、腹側翼面16の背側翼面17と対向する内面側と、背側翼面17の腹側翼面16と対向する内面側と、をそれぞれ被覆し、第1被覆部12と同じ複合材を用いて形成される第2被覆部14と、腹側翼面16の第2被覆部14と、背側翼面17の第2被覆部14との間に設けられる緩衝部15と、を備える。
【0046】
複合材翼の内部に中立部13を備え、中立部13が、第2被覆部14と緩衝部15とを備えることから、複合材翼の表面の材料が受ける衝撃エネルギーが、緩衝部15によって吸収される。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0047】
(実施例3-1)
上述の本開示に係る複合材翼の緩衝部15に用いる材料としては、樹脂系の材料にエラストマーの弾性充填剤を充填した材料、又は、発泡樹脂を用いることが出来る。樹脂系の材料としては、実施例2-2の中立部13に用いる樹脂系の材料と同一の材料を用いることが出来る。エラストマーの弾性充填剤としては、実施例2-2の中立部13の樹脂系の材料に充填するエラストマーの弾性充填剤と同様の材料を用いることが出来る。発泡樹脂としては、実施例2-2の中立部13に用いる発泡樹脂と同様の材料を用いることが出来る。
【0048】
緩衝部15に、樹脂系の材料にエラストマーの弾性充填剤を充填した材料、又は、発泡樹脂を用いることによって、複合材翼の外部からの異物の衝突による衝撃エネルギーが、緩衝部15の弾性変形によって吸収され、複合材翼表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0049】
(実施例3-2)
図6に示すように、上述の本開示に係る複合材翼の緩衝部15は、ラティス構造体の形状に形成され、金属、複合材、熱可塑性樹脂の内のいずれか一つを用いて形成されても良い。また、緩衝部15は、ハニカム構造、トラス構造、等の緩衝性を有する構造の形状に形成されても良い。図7に示すように、ラティス構造体とは、格子状に形成される構造である。機械加工による造形は容易ではなかったが、3Dプリンターにより容易に造形が可能となった。ラティス構造体は、多数の分岐・節を有する構造であることから、発泡樹脂と同様に弾性変形による衝撃エネルギーの減衰が期待出来る。ラティス構造体に用いる材料として、金属を用いた場合は、動翼全体の剛性の向上が期待できる。また、ラティス構造体に用いる材料として、複合材を用いた場合は、衝撃エネルギーの減衰効果の向上が期待できる。また、ラティス構造体に用いる材料として、熱可塑性樹脂を用いた場合は、弾性特性を有する材料である為、衝撃エネルギーの減衰効果の向上が期待できる。
【0050】
従って、複合材翼の緩衝部15を上述の構成とすることによって、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0051】
(繊維方向の特定(90度))
本開示に係る複合材翼の第1被覆部の最外層の繊維は、基材部の表層の繊維の方向に対して、90度よりも小さい傾きを持って配向される。第1被覆部の最外層の繊維が、基材部の表層の繊維の方向に対して、90度よりも小さい傾きを持って配向されることから、熱膨張により繊維が膨張した際に、第1被覆部に使用される繊維と、基材部に使用される繊維の熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を抑制することが出来る。その為、複合材翼の強度を高めることが出来る。
【0052】
(繊維方向の特定(45度))
本開示に係る複合材翼の第1被覆部の最外層の繊維は、より好ましくは、基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを持って配向される。第1被覆部の最外層の繊維が、基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを持って配向されることから、熱膨張により繊維が膨張した際に、第1被覆部に使用される繊維と、基材部に使用される繊維の熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を抑制することが出来る。その為、複合材翼の強度を高めることが出来る。
【0053】
(繊維方向の特定(45度の織物))
本開示に係る複合材翼の第1被覆部の繊維は、基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを有する織物を用いてもよい。当該織物は、弾性高分子繊維束同士が90℃の傾きを持って形成される平織の織物である。その為、第1被覆部と基材部に使用される繊維の熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を抑制することが出来る。従って、複合材翼の強度を高めることが出来る。
【0054】
(複合材翼の成形方法)
図8は、複合材翼の成形方法に関する説明図である。図8に示す本開示に係る複合材翼の成形方法は、基材部11が強化繊維シートを積層して成形されると共に、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面16と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面17と、を有し、背側翼面17を成形するための背側成形型に、背側の第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して背側積層体を成形するステップ、腹側翼面16を成形するための腹側成形型に、腹側の第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して腹側積層体を成形するステップと、背側積層体と腹側積層体とが重なり合うように、背側積層体型と腹側積層体型とを型合わせするステップと、背側積層体、及び、腹側積層体を加熱するステップとを備える。
【0055】
この方法によれば、耐衝撃性を有する複合材翼を、効率的に成形することが出来る。
【0056】
本開示に係る、樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂を用いて形成される複合材翼は、複合材翼の内面に設けられる基材部と、基材部の外面を被覆する第1被覆部と、を備え、基材部は、第1樹脂と炭素繊維とを含む炭素繊維強化樹脂を用いて形成され、第1被覆部は、第2樹脂と、弾性高分子繊維と、を含む弾性高分子繊維強化樹脂により形成され、かつ、前記基材部よりも耐衝撃性を有する。
【0057】
この構成によれば、第1被覆部が基材部よりも耐衝撃性を有することから、基材部の外面上に形成される第1被覆部によって、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0058】
第1被覆部は、複合材翼のコード長の両端からコード長の5から10%の範囲であって、複合材翼の翼端から翼長の5から10%の範囲において、複合材翼の翼厚の50%以上の厚みに渡って積層される。
【0059】
この構成によれば、動翼の基材部の表面上に形成される第1被覆部が、複合材翼の翼厚が薄い部分を中心に形成されることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0060】
弾性高分子繊維は、アラミド繊維、ポリアリレート系繊維、液晶性全芳香族ポリエステル繊維、の内のいずれか一つである。
【0061】
この構成によれば、アラミド繊維、ポリアリレート系繊維、液晶性全芳香族ポリエステル繊維は、高弾性繊維であることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0062】
第1被覆部は、基材部の翼面の全範囲に形成されることが好ましい。
【0063】
この構成によれば、耐衝撃性を有する第1被覆部が、基材部の翼面の全範囲に形成されることから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0064】
第1被覆部は、基材部の翼厚が最も厚い部位よりも、薄い部位に設けられる。
【0065】
この構成によれば、複合材翼の全体の内、翼厚さが薄い部分を、耐衝撃性を有する材料を用いて形成された第1被覆部で覆うことから、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0066】
基材部は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面と、腹側翼面と背側翼面との間に設けられる中立部と、を有し、中立部は、第1被覆部と同一の材料を用いて形成される。
【0067】
この構成によれば、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、耐衝撃性を有する第1被覆部に用いる材料に囲まれた領域内で反射し、減衰することで、衝撃エネルギーを低減させることが出来る。その為、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0068】
基材部は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面と、腹側翼面と背側翼面との間に設けられる中立部と、を有し、中立部は、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、発泡樹脂、の内のいずれか一つを用いて形成される。
【0069】
この構成によれば、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、又は、発泡樹脂、によって吸収され、複合材翼の表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0070】
基材部は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面と、腹側翼面と背側翼面との間に設けられる中立部と、を有し、中立部は、高弾性フィラーを添加した発泡材で形成される。
【0071】
この構成によれば、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、高弾性フィラーを添加した発泡材の弾性変形によって吸収され、動翼表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0072】
基材部は、翼厚方向において一方の翼面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の翼面となる背側翼面と、腹側翼面と背側翼面との間に設けられる中立部と、を有し、中立部は、第1被覆部と同じ複合材を用いて形成され、腹側翼面の背側翼面と対向する内面側と、背側翼面の腹側翼面と対向する内面側と、をそれぞれ被覆する第2被覆部と、腹側翼面の第2被覆部と、背側翼面の第2被覆部との間に設けられる緩衝部と、を備える。
【0073】
この構成によれば、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、耐衝撃性を有する材料に囲まれた緩衝部で反射し、減衰することで、動翼表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。
【0074】
緩衝部は、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、発泡樹脂、の内のいずれか一つを用いて形成されることが好ましい。
【0075】
この構成によれば、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、樹脂系の材料にエラストマーを添加した材料、又は、発泡樹脂の弾性変形によって吸収され、複合材翼の表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0076】
発泡樹脂に用いる樹脂として、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0077】
この構成によれば、発泡樹脂が減衰特性を有することから、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、発泡樹脂によって、弾性エネルギーに変換され、弾性エネルギーが早期に減衰する。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0078】
緩衝部を形成する発泡樹脂に用いる樹脂として、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0079】
この構成によれば、発泡樹脂が減衰特性を有することから、複合材翼が外部から受けた衝撃エネルギーは、発泡樹脂によって、弾性エネルギーに変換され、弾性エネルギーが早期に減衰する。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0080】
緩衝部は、ラティス構造体の形状に形成され、金属、複合材、熱可塑性樹脂の内のいずれか一つを用いて形成されることが好ましい。
【0081】
この構成によれば、複合材翼の外部から受けた衝撃エネルギーが、ラティス構造体の形状に形成された緩衝部の弾性変形によって吸収され、動翼表面の材料が受ける衝撃エネルギーを低減させることが出来る。従って、複合材翼の耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0082】
上述の複合材翼を備える回転機械を提供することが出来る。
【0083】
この構成よれば、耐衝撃性が向上された複合材翼を回転機械に用いることによって、回転機械の空気流路に侵入する異物の衝突に対する耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0084】
第1被覆部の最外層の弾性高分子繊維の方向は、基材部の表層の繊維の方向に対して、90度よりも小さい傾きを有する。
【0085】
この構成によれば、熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を防ぐことが出来る。従って、複合材翼の強度を向上させることが出来る。
【0086】
第1被覆部の最外層の弾性高分子繊維の方向は、基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを有する。
【0087】
この構成によれば、熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を防ぐことが出来る。従って、複合材翼の強度を向上させることが出来る。
【0088】
第1被覆部の弾性高分子繊維は、基材部の表層の繊維の方向に対して、45度の傾きを有する織物を形成し、織物は、弾性高分子繊維束同士が90度の傾きを持って形成される平織の織物である。
【0089】
この構成によれば、熱膨張率の相違に起因するひずみの発生を防ぐことが出来る。従って、複合材翼の強度を向上させることが出来る。
【0090】
上述の複合材翼を成形する複合材翼の成形方法であって、基材部は、強化繊維シートを積層して成形されると共に、翼厚方向において一方の端面となる腹側翼面と、翼厚方向において他方の端面となる背側翼面と、を有し、背側翼面を成形するための背側成形型に、背側の第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して背側積層体を成形するステップと、腹側翼面を成形するための腹側成形型に、腹側の第1被覆部を配置すると共に、強化繊維シートを積層して腹側積層体を成形するステップと、背側積層体と腹側積層体とが重なり合うように、背側成形型と腹側成形型とを型合わせするステップと、背側積層体及び腹側積層体を加熱するステップと、を備える。
【0091】
この構成によれば、本開示に係る複合材翼を効率的に成形することが出来る。
【符号の説明】
【0092】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
11 基材部
12 第1被覆部
13 中立部
14 第2被覆部
15 緩衝部
16 腹側翼面
17 背側翼面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8