(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/37 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2020059289
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】竪谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 洋
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142968(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を成形することにより、表面にめっき処理が施される樹脂基体を形成する射出成形用金型であって、
前記樹脂基体の意匠面を形成する意匠面形成面と、前記樹脂基体の前記意匠面の裏面を形成する裏面形成面とを有し、
前記裏面形成面には、前記意匠面形成面と前記裏面形成面との間の空間における前記溶融樹脂の主たる流れ方向に交差する方向に延伸すると共に前記意匠面形成面に向けて突出し、前記溶融樹脂の表面被膜を破膜する破膜突部が設けら
れ、
前記破膜突部は、延伸方向に沿った方向から見て先端が尖った形状とされており、
前記裏面形成面には、前記溶融樹脂の主たる流れ方向にて前記破膜突部に隣接配置されると共に前記意匠面形成面と反対方向に向けて窪む破膜溝部が設けられており、
前記破膜溝部の内壁面は、前記破膜突部の外壁面と面一となる傾斜面とされている
ことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記破膜突部は、前記溶融樹脂の主たる流れ方向に配列されて複数設けられていることを特徴とする請求項
1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記溶融樹脂の主たる流れ方向にて、前記破膜溝部を挟むように2つの前記破膜突部と1つの破膜溝部とが隣接配置されていることを特徴とする請求項1
または2記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記破膜溝部は、前記破膜突部の延伸方向に沿った方向から見て、底部が前記意匠面形成面と反対方向に向けて尖った形状とされていることを特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用外装部品には、表面にめっき処理がほどこされた樹脂成形品が用いられている。このような車両用外装部品は、射出成形用金型の内部に溶融樹脂を供給して冷却することによって樹脂基体を形成し、その樹脂基体の表面に金属薄膜をめっき処理により形成する。例えば、特許文献1には、金型の表面に溝部を形成し、この溝部にて溶融樹脂の流れを変更することで溶融樹脂の表面に脆弱層が形成されることを抑止することで、樹脂基体に対するめっき層の付着強度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、溶融樹脂の流れを変更することによって脆弱層が形成されることを抑制するものであり、形成されてしまった脆弱層に対応できるものではない。このため、溝部に到達する前に溶融樹脂の表面に脆弱層が形成されてしまうと、その脆弱層が樹脂基体の表層に残存することとなる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、表面にめっき処理が施される樹脂基体を形成する射出成形用金型において、樹脂基体の表層に脆弱層が残存することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、溶融樹脂を成形することにより、表面にめっき処理が施される樹脂基体を形成する射出成形用金型であって、上記樹脂基体の意匠面を形成する意匠面形成面と、上記樹脂基体の上記意匠面の裏面を形成する裏面形成面とを有し、上記裏面形成面には、上記意匠面形成面と上記裏面形成面との間の空間における上記溶融樹脂の主たる流れ方向に交差する方向に延伸すると共に上記意匠面形成面に向けて突出し、上記溶融樹脂の表面被膜を破膜する破膜突部が設けられているという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記破膜突部が、延伸方向に沿った方向から見て先端が尖った形状とされているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記破膜突部が、上記溶融樹脂の主たる流れ方向に配列されて複数設けられているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記裏面形成面には、上記溶融樹脂の主たる流れ方向にて上記破膜突部に隣接配置されると共に上記意匠面形成面と反対方向に向けて窪む破膜溝部が設けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記溶融樹脂の主たる流れ方向にて、上記破膜溝部を挟むように2つの上記破膜突部と1つの破膜溝部とが隣接配置されているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第4または第5の発明において、上記破膜溝部は、上記破膜突部の延伸方向に沿った方向から見て、底部が上記意匠面形成面と反対方向に向けて尖った形状とされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、意匠面の裏面を形成する射出成形用金型の裏面形成面に対して、溶融樹脂の表面被膜を破膜する破膜突部が設けられている。このため、本発明によれば、溶融樹脂が流れるに従って、溶融樹脂の表面被膜が破膜突部によって破られる。このように本発明によれば、脆弱層となるあるいは脆弱層となった表面被膜を破膜突部で破ることができ、樹脂基体の表層に脆弱層が残存することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における射出成形金型によって成形された樹脂基体の斜視図である。
【
図2】(a)が本発明の一実施形態における射出成形金型の模式的な要部拡大断面図であり、(b)が(a)の領域Aの拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態における射出成形金型における溶融樹脂の流れる様子を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態における射出成形金型の変形例が備える破膜部の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る射出成形用金型の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の射出成形用金型によって成形された樹脂基体10の斜視図である。樹脂基体10は、表面にめっき処理が施されることによって車両用外装部品とされる部材であり、樹脂によって形成されている。このような樹脂基体10は、例えばABS樹脂やABSとポリカーボネートとの混合樹脂によって形成されている。
【0017】
樹脂基体10の形状は、車両用外装部品の形状に合わせて任意に変更可能である。ただし、車両用外装部品は、車外から視認される部品であるため、樹脂基体10には、外部から視認される側に位置する意匠面が少なくとも一部に設けられている。
【0018】
図1は、意匠面と反対側から視認した樹脂基体10の斜視図である。この図に示すように、本実施形態において樹脂基体10は、意匠面11aを有する意匠壁11と、意匠壁11の端部に接続された2つの側壁12とを有している。
【0019】
樹脂基体10は、
図1に示すように、直線状に延伸された長尺状の部材である。意匠壁11は、樹脂基体10の延伸方向に沿った長尺板状の壁部であり、外側面が意匠面11aとされ、内側面が裏面11bとされている。意匠面11aは、車両用外装部品が車両に取り付けられた状態で、外部から視認される側の面である。また、裏面11bは、車両用外装部品が車両に取り付けられた状態で、車両側に向けられる面であり、外部から視認されない面である。
【0020】
本実施形態において意匠面11aは凹凸のない平面とされている。一方で、裏面11bには、意匠壁11の長手方向(樹脂基体10の延伸方向)に配列された複数の段部20が設けられている。つまり、裏面11bは、凹凸を有する面とされている。各々の段部20は、意匠壁11の短手方向(樹脂基体10の延伸方向と直交しかつ裏面11bに沿った方向)に直線状に延伸され、一方の側壁12から他方の側壁12に至る長さで形成されている。
【0021】
側壁12は、意匠壁11の短手方向における縁部に対して屈曲して接続された壁部である。2つの側壁12は、対向されるようにして意匠壁11に接続されている。このような意匠壁11及び2つの側壁12を有する樹脂基体10は、断面が略U形とされている。
【0022】
このような樹脂基体10は、射出成型時に溶融樹脂の表面被膜が破膜されることで、表層の脆弱層の形成が抑制されている。このため、本実施形態の樹脂基体10によれば、樹脂基体10に対するめっき層の付着強度が高まる。また、溶融樹脂がブタジエン粒子を含む場合には、後述のように、表面被膜の破壊によって流動性が高い溶融樹脂が表層に溢れ出し、ブタジエン粒子の変形が抑制されるため、射出成形後のブタジエン粒子の溶解処理によって深い孔部を形成することができる。このため、めっき層のアンカー効果が高まり、めっき層の付着強度をより高めることができる。
【0023】
続いて、このような樹脂基体10の形成方法について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0024】
図2(a)は、樹脂基体10を射出成形にて形成する際に用いる射出成形用金型1の模式的な要部拡大図である。また、
図2(b)は、
図2(a)の領域Aの拡大図である。
図2(a)に示すように、射出成形用金型1は、コア金型2と、キャビティ金型3とを備えている。
【0025】
コア金型2は、樹脂基体10の意匠壁11の裏面11bを形成する裏面形成面2aを有している。キャビティ金型3は、樹脂基体10の意匠壁11の意匠面11aを形成する意匠面形成面3aを有している。射出成形用金型1は、コア金型2の裏面形成面2aとキャビティ金型3の意匠面形成面3aとの間に、溶融樹脂P(
図3参照)が流し込まれるキャビティ空間Cを有している。また、射出成形用金型1は、キャビティ空間Cに溶融樹脂を供給するためのゲートGを有している。
【0026】
キャビティ空間Cは、樹脂基体10を成形するための空間であり、樹脂基体10の形状に合わせた長尺状とされた中空空間である。
図2における左右方向は、キャビティ空間Cの長手方向とされている。ゲートGは、キャビティ空間Cの長手方向の一方の端部(
図2における左側端部)と接続されている。このようなキャビティ空間CにゲートGから溶融樹脂Pが供給されると、溶融樹脂Pは、キャビティ空間Cの長手方向に沿って流れる。つまり、本実施形態においては、ゲートGが接続されたキャビティ空間Cの左端部から右端部に向かって溶融樹脂Pが流れる。このように、本実施形態においては、キャビティ空間Cの長手方向が、キャビティ空間Cにおける溶融樹脂Pの主たる流れ方向とされている。
【0027】
図2(a)に示すように、本実施形態の射出成形用金型1において、コア金型2の裏面形成面2aには、溶融樹脂Pの表面被膜P1を破るためのものであり、複数の破膜部4が設けられている。これらの破膜部4は、キャビティ空間Cの長手方向、すなわち溶融樹脂Pの主たる流れ方向に配列されている。
図2(b)に示すように、各々の破膜部4は、2つの破膜突部4aと、1つの破膜溝部4bとを有している。
【0028】
破膜突部4aは、裏面形成面2aの基準面(パーティングライン)からキャビティ金型3の意匠面形成面3aに向けて突出した部位である。この破膜突部4aは、溶融樹脂Pの主たる流れ方向と直交しかつ裏面形成面2aに沿った方向に、直線状に延伸して設けられている。この破膜突部4aは、延伸方向に沿った方向から見て先端が尖った形状とされており、同方向から見た形状が頂部を意匠面形成面3aに向けた三角形状とされている。
【0029】
このような破膜突部4aは、溶融樹脂Pの流れ方向にて、破膜溝部4bと隙間を空けずに隣接配置されている。さらに、2つの破膜突部4aは、
図2(b)に示すように、溶融樹脂Pの流れ方向にて、破膜溝部4bを挟むように、破膜溝部4bの上流側と下流側とに配置されている。つまり、溶融樹脂Pの主たる流れ方向にて、破膜溝部4bを挟むように2つの破膜突部4aと1つの破膜溝部4bとが隣接配置されている。
【0030】
破膜溝部4bは、裏面形成面2aから意匠面形成面3aと反対側に窪んだ溝部である。この破膜溝部4bは、破膜突部4aと同一方向に延伸して設けられている。つまり、破膜溝部4bは、溶融樹脂Pの主たる流れ方向と直交しかつ裏面形成面2aに沿った方向に、直線状に延伸して設けられている。この破膜溝部4bの内壁面は、破膜突部4aの外壁面と面一となる傾斜面とされている。
【0031】
なお、
図2及び後述する
図3においては、破膜部4が視認可能なように拡大して図示している。実際は、例えば、破膜部4の配置ピッチは数mm程度であり、破膜部4の溶融樹脂Pの主たる流れ方向の寸法は数十μm程度であり、破膜突部4aの高さ寸法と破膜溝部4bの深さ寸法は合わせて10μm程度である。
【0032】
このような本実施形態の射出成形用金型1のキャビティ空間CにゲートGから溶融樹脂Pが流し込まれる。
図3は、本実施形態の射出成形用金型1のキャビティ空間Cにて溶融樹脂Pが流れる様子を示した模式図である。
図3(a)に示すように、溶融樹脂Pは、キャビティ空間Cを左側から右側に向けて流れる。このようにキャビティ空間Cを流れる溶融樹脂Pの表面には、キャビティ空間C内で冷却等されることによって、被膜(表面被膜P1)が形成される。この表面被膜P1は、脆弱層であり樹脂基体10に対するめっき層の付着強度の低下を招く。
【0033】
また、表面被膜P1は、溶融樹脂Pの内部と比較して密度が高い。このため、溶融樹脂Pにブタジエン粒子が含まれている場合には、表面被膜P1は、溶融樹脂Pの流れに伴って球形のブタジエン粒子を偏平状に引き延ばす。このため、後にブタジエン粒子を酸化や溶解によって除去した場合に形成される孔が浅くなり、アンカー効果によるめっき層の樹脂基体10に対する密着性を低下させる。
【0034】
これに対して、本実施形態においては、
図3(b)に示すように、表面被膜P1が生じた溶融樹脂Pが破膜部4に到達すると、破膜突部4aが表面被膜P1に刺さり、表面被膜P1が破壊される。この結果、
図3(c)に示すように、内部の粘度が低い溶融樹脂Pが表面被膜P1を押し破って流れ出る。この結果、意匠面形成面3a及び裏面形成面2aに冷却等されることなく粘度が低い溶融樹脂Pが触れ、脆弱層が形成されることを抑制する。
【0035】
また、密度が高い表面被膜P1が破壊されることによって、ブタジエン粒子を偏平状に引き延ばす力を弱めることができる。さらに、溶融樹脂Pは、破膜溝部4bにおいて、意匠面形成面3a及び裏面形成面2aと直交する方向(
図3における上下方向)に広がるように流れる。このため、溶融樹脂Pの主たる流れ方向への流速を低減させることができ、ブタジエン粒子を偏平状に引き延ばす力を弱めることができる。また、溶融樹脂Pが破膜突部4aに衝突することで溶融樹脂Pの主たる流れ方向への流速を低減させることができ、ブタジエン粒子を偏平状に引き延ばす力を弱めることができる。
【0036】
このような本実施形態の射出成形用金型1によれば、後に形成されるめっき層の密着性が良い樹脂基体10を形成することが可能となる。このような本実施形態の射出成形用金型1は、溶融樹脂Pを成形することにより、表面にめっき処理が施される樹脂基体10を形成する。また、本実施形態の射出成形用金型1は、樹脂基体10の意匠面11aを形成する意匠面形成面3aと、樹脂基体10の意匠面11aの裏面11bを形成する裏面形成面2aとを有し、裏面形成面2aには、意匠面形成面3aと裏面形成面2aとの間の空間における溶融樹脂Pの主たる流れ方向に交差する方向に延伸すると共に意匠面形成面3aに向けて突出し、溶融樹脂Pの表面被膜P1を破膜する破膜突部4aが設けられている。
【0037】
このような本実施形態の射出成形用金型1によれば、意匠面11aの裏面11bを形成する裏面形成面2aに対して、溶融樹脂Pの表面被膜P1を破膜する破膜突部4aが設けられている。このため、本実施形態の射出成形用金型1によれば、溶融樹脂Pが流れるに従って、溶融樹脂Pの表面被膜P1が破膜突部4aによって破られる。このように本実施形態の射出成形用金型1によれば、脆弱層となるあるいは脆弱層となった表面被膜P1を破膜突部4aで破ることができ、樹脂基体10の表層に脆弱層が残存することを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の射出成形用金型1においては、破膜突部4aが、延伸方向に沿った方向から見て先端が尖った形状とされている。このため、破膜突部4aが表面被膜P1を突き破りやすく、より確実に破膜突部4aを破ることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の射出成形用金型1においては、破膜突部4aが、溶融樹脂Pの主たる流れ方向に配列されて複数設けられている。このため、キャビティ空間Cの長手方向すなわち樹脂基体10の長手方向の広い領域にて、めっき層の樹脂基体10に対する付着強度を向上させることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の射出成形用金型1においては、裏面形成面2aには、溶融樹脂Pの主たる流れ方向にて破膜突部4aに隣接配置されると共に意匠面形成面3aと反対方向に向けて窪む破膜溝部4bが設けられている。このため、破膜溝部4bにて溶融樹脂Pの流速を弱め、ブタジエン粒子が偏平することを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態の射出成形用金型1においては、溶融樹脂Pの主たる流れ方向にて、破膜溝部4bを挟むように2つの破膜突部4aと1つの破膜溝部4bとが隣接配置されている。このため、狭い範囲で、2つの破膜突部4aで確実に表面被膜P1を破き、さらに溶融樹脂Pの流速を低減することができるため、確実にその範囲でめっき層の樹脂基体10に対する付着強度を向上させることが可能となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、破膜溝部4bが平面状の底面を有する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図4(a)に示すように、破膜溝部4bが、破膜突部4aの延伸方向に沿った方向から見て、底部が意匠面形成面3aと反対方向に向けて尖った形状とされているという構成を採用しても良い。このような構成を採用することによって、破膜溝部4bに流れ込んだ溶融樹脂Pが底面で跳ね返ることを抑止し、溶融樹脂Pが破膜溝部4bに流れ込み易くすることができる。このため、破膜溝部4bによって、溶融樹脂Pの流速をより確実に遅くすることが可能となる。
【0044】
ただし、本発明は、破膜溝部4bが設けられた構造に限定されるものではない。例えば、
図4(b)に示すように、破膜溝部4bを備えない構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1……射出成形用金型、2……コア金型、2a……裏面形成面、3……キャビティ金型、3a……意匠面形成面、4……破膜部、4a……破膜突部、4b……破膜溝部、10……樹脂基体、11……意匠壁、11a……意匠面、11b……裏面、12……側壁、20……段部、C……キャビティ空間(空間)、G……ゲート、P……溶融樹脂、P1……表面被膜