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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】おかずケース包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/032 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
B65D21/032
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020059838
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155103
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】山口 正起
(72)【発明者】
【氏名】荒内 隆志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 美香
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕史
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-061727(JP,U)
【文献】実開平07-035310(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0100367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/02
B65D 21/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁および底壁の周縁から立ち上がる側壁を有して上方に開口するおかずケースを上下に複数重ね合わせてなるおかずケース群と、
底壁、底壁の周縁から立ち上がる側壁および側壁の上縁に付属する縁巻き部を有して上方に開口し、前記おかずケース群を収納する包装カップと、
天壁および天壁の周縁に付属する嵌合部を有してその嵌合部が前記包装カップの縁巻き部に嵌合した状態で前記包装カップの開口を閉塞する蓋と、を備え、
前記包装カップは紙製であり、
前記蓋はプラスチック製であり、かつ前記包装カップに収納された前記おかずケース群のうち、最上段のおかずケースの開口から内部へと入り込む凹部を前記天壁に有しており、
前記蓋の凹部は、窪みの浅い周縁の肩部と、窪みの深い中央の押さえ部とからなり、前記包装カップを上下に積み重ねた際に、上段の包装カップの底壁が下段の包装カップの開口を閉塞する蓋の天壁の前記肩部にはまり込むことで、上段の包装カップの底壁と下段の包装カップの開口を閉塞する蓋の押さえ部との間に隙間が形成可能に構成されており、
前記蓋は透明であり、かつ前記嵌合部は上下方向の中途にストッパが設けられ、このストッパが前記包装カップの縁巻き部にはまり込んだ状態で、その天壁が前記縁巻き部よりも所定量dだけ上方に位置し、
上下に積み重ねた包装カップの間から下段の包装カップに収納されたおかずケース群が視認可能なように構成されている、おかずケース包装体。
【請求項2】
前記所定量dは、1mmから10mmである、請求項1に記載のおかずケース包装体。
【請求項3】
前記包装カップは、前記側壁の外面にパッケージ表示やバーコードなどからなる印刷が施されている請求項1または2に記載のおかずケース包装体。
【請求項4】
前記おかずケース群をなすおかずケースは、紙製である請求項1からのいずれかに記載のおかずケース包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせたおかずケースを包装カップに収納してなるおかずケース包装体および重ね合わせたおかずケースを収納するための蓋つきの包装カップに関する。
【背景技術】
【0002】
食品の収納容器として、おかずケースと一般に称されるものが知られている。このようなおかずケースとしては、食品メーカー向けの業務用としてだけではなく、家庭用としても広く用いられている。
【0003】
おかずケースは、紙や樹脂フィルムやアルミニウム箔などのシート体をプレス成形することで形成されており、底壁と底壁から広がって立ち上がる周壁を有して上方に開口し、周壁には製法に由来する多数の襞が形成されている。
このような家庭用のおかずケースは、トラック輸送などを含めた流通時や小売店における販売時に、おかずケースに塵や雑菌などが付着するのを防ぐために、複数個を重ね合わせたうえで包装したおかずケース包装体の状態で市場に供される。
おかずケース包装体としては、特許文献1のように、重ね合わせたおかずケースをプラスチック製で蓋付きの包装カップで包装したものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-136282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、環境への負荷を考慮して、プラスチック材料を極力減らす試みがなされており、上記のようなおかずケース包装体においても、同様の要請がある。
そこで本発明の解決すべき課題は、重ね合わせたおかずケースを包装カップに収納してなるおかずケース包装体において、プラスチック材料の使用量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、発明にかかるおかずケース包装体を、底壁および底壁の周縁から立ち上がる側壁を有して上方に開口するおかずケースを上下に複数重ね合わせてなるおかずケース群と、底壁、底壁の周縁から立ち上がる側壁および側壁の上縁に付属する縁巻き部を有して上方に開口し、前記おかずケース群を収納する包装カップと、天壁および天壁の周縁に付属する当接部を有してその当接部が前記包装カップの縁巻き部に当接した状態で前記包装カップの開口を閉塞する蓋と、を備え、前記包装カップは紙製であり、前記蓋はプラスチック製であり、かつ前記包装カップに収納された前記おかずケース群のうち、最上段のおかずケースの開口から内部へと入り込む凹部を有している構成としたのである。
【0007】
発明にかかるおかずケース包装体において、包装カップを従来のプラスチック製から紙製に変えることで、プラスチック材料の使用量を低減することができる。
また、このように構成すると、蓋の凹部により、おかずケース群が包装カップ内でずれ動かないように押えられるため、おかずケース包装体の運搬中などにおかずケースが摩耗したり破損したりすることが防止され、おかずケース群の適切な積み重ね状態を維持することができる。
【0008】
発明にかかるおかずケース包装体において、前記凹部は、前記包装カップを上下に積み重ねた際に、上段の包装カップの底壁が下段の包装カップの開口を閉塞する蓋の天壁にはまり込み可能に構成されているのが好ましい。
このように構成すると、おかずケース包装体は、運搬時や陳列時などにスタッキング、すなわち上下に積み重ねることがよく行われるが、上段の包装カップの底壁が下段の蓋の凹部にはまり込むことで、スタッキング状態を安定させることができ、荷崩れ等を防ぐことができる。また、蓋に凹部が形成されていない場合と比較して、スタッキング高さを低減することができ、コンパクト化が図られる。
【0009】
発明にかかるおかずケース包装体において、前記包装カップは、前記側壁の外面にパッケージ表示やバーコードなどからなる印刷層が施されている構成を採用するのが好ましい。
従来のプラスチック製の包装カップの場合、包装カップの内部にパッケージ表示やバーコードなどを印刷した紙製のラベルを入れていたが、包装カップを紙製にした場合、直接パッケージ表示やバーコードなどを印刷することが容易となり、ラベルの挿入作業が不要となり、作業負担の軽減が図られる。
【0010】
発明にかかるおかずケース包装体において、前記蓋は透明であり、かつ前記当接部が前記包装カップの縁巻き部に当接した状態で、その天壁が前記縁巻き部よりも上方に位置するように形成されており、これにより、上下に積み重ねた包装カップの間から下段の包装カップに収納されたおかずケース群が視認可能なように構成することができる。
このように構成すると、おかずケース包装体のスタッキング状態においても、天壁が盛り上がった透明な蓋を通して包装カップの内部を視認することができるため、運搬中や陳列中におかずケース群の状態を確認するのに便利である。
【0011】
発明にかかるおかずケース包装体において、前記おかずケース群をなすおかずケースは、紙製である構成を採用するのが好ましい。
このように構成すると、おかずケースがプラスチック製である場合と比較して、おかずケース包装体全体のプラスチック使用量をさらに低減することができる。
【0012】
上記した課題を解決するため、発明にかかる蓋付きの包装カップを、底壁、底壁の周縁から立ち上がる側壁および側壁の上縁に付属する縁巻き部を有して上方に開口する包装カップと、天壁および天壁の周縁に付属する当接部を有して、その当接部が前記包装カップの縁巻き部に当接した状態で前記包装カップの開口を閉塞する蓋と、を備え、前記包装カップは紙製であり、かつ底壁および底壁の周縁から立ち上がる側壁を有して上方に開口するおかずケースを上下に複数重ね合わせてなるおかずケース群を収納可能であり、前記蓋はプラスチック製であり、かつ前記包装カップに収納された前記おかずケース群のうち、最上段のおかずケースの開口から内部へと入り込む凹部を有している構成としたのである。
このように構成すると、蓋付き包装カップの包装カップが紙製であるため、包装カップがプラスチック製である場合と比べて、これにおかずケース群を収納してなるおかずケース包装体全体のプラスチック使用量を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
発明にかかるおかずケース包装体を以上のように構成したので、プラスチック材料の使用量を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】おかずケース包装体の斜視図
図2】おかずケース包装体の分解斜視図
図3】おかずケース包装体を積み重ねた状態を示す縦断面図
図4】他の例のおかずケース包装体を積み重ねた状態を示す斜視図
図5】他の例のおかずケース包装体の縦断面図
図6】さらに他の例のおかずケース包装体の縦断面図
図7】さらに他の例のおかずケース包装体の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1から図3に示す実施形態のおかずケース包装体1は、おかずケース群10と、おかずケース群10を収納する包装カップ20と、包装カップ20の開口を閉鎖する蓋30とからなる。
おかずケース包装体1は、この状態で市場に流通し、購入先において蓋30があけられ、包装カップ20中のおかずケース群10からおかずケース11が個別に取り出され、食品収納の用に供される。
【0016】
図2に示すように、おかずケース群10は、複数のおかずケース11を上下に重ね合わせてなる。各おかずケース11は、底壁11aと底壁11aから広がって立ち上がる側壁11bとからなり、上方に開口11cを有している。
おかずケース11は、平面状のシート体(ブランク)をプレス成形装置を用いて所望の形状にプレス成形することにより製造されるものであり、その側壁11bのほぼ全域にはプレス成形法に由来する縦縞状の襞11dが形成されている。
ここで、おかずケース11を製造するためのシート体としては、特に限定されないが、紙、樹脂フィルム、アルミニウム箔、またはこれらを貼り合わせた複合基材が例示できるが、紙製であることが好ましい。
なお、本明細書において、おかずケース11が紙製であるとは、おかずケース11を構成する材料が100%紙で構成されている場合だけでなく、おかずケース11を構成する主たる材料が紙である場合も含む。
例えば、紙を含む紙基材からなり、紙基材の少なくとも片面に押出ラミネート法などにより積層された樹脂層を有する複合紙基材を用いたおかずケースであっても、その構成中に紙を半分以上含むものであれば本明細書においては紙製と取り扱うものとする。おかずケース11の内面(食品と直接接する面)が樹脂層となるように複合紙基材をプレス成形しておかずケース11とした場合は、食品からの水分や油分の複合紙基材への浸透が抑えられるので、水分や油分に起因しておかずケース11の形状が変形したりすることが抑制できる。
【0017】
なお、おかずケース11をプレス成形により製造するにあたっては、複数枚のブランクを積層した状態でプレス成形装置へと供給し、プレスすることで重なり合った状態で同時に複数を製造することができ、これをそのままおかずケース群10として利用することも可能である。
おかずケース11は、図2では底壁11aが平面視で円形であるものを示しているが、形状はこれに限定されず、底壁11aが平面視で楕円形であったり、扇形、あるいは、三角形や四角形などの多角形としてもよい。
おかずケース群10におけるおかずケース11の数や、各おかずケース11の寸法も特に限定されない。
【0018】
図1から図3に示すように、包装カップ20は、底壁21と底壁21から広がって立ち上がる側壁22と側壁22の上縁に付属する縁巻き部23とからなり、上方に開口24を有している。
この開口24を通じて、包装カップ20の内部におかずケース群10が収納されている。また、側壁22の外面にはパッケージ表示などの印刷22aが施されている。印刷22aの表示内容については特に限定されず、バーコード、製造者表示、原材料表示、注意書、商品名、品番が挙げられる。
【0019】
包装カップ20は、図1では底壁21が平面視で円形であるものを示しているが、おかずケース群10を収納可能な限りにおいてこれに限定されず、底壁21が平面視で楕円形であったり、扇形、あるいは、三角形や四角形などの多角形としてもよい。おかずケース群10の収納が容易なものとしては、図1から図3のように、包装カップ20の形状をおかずケース群10の形状に対応するものとすると、収納が容易となる。ただし、おかずケース群10が包装カップ20に無理なく収まるのであれば、例えば、平面視が円形の包装カップ20に平面視が四角形のおかずケース群10を収納してもよい。
包装カップ20の寸法も、おかずケース群10を収納可能な限りにおいて限定されない。
【0020】
この包装カップ20は、紙製である。なお、本明細書において、包装カップ20が紙製であるとは、包装カップ20を構成する材料が100%紙で構成されている場合だけでなく、包装カップ20を構成する主たる材料が紙である場合も含む。例えば、紙を含む紙基材からなり、紙基材の少なくとも片面に押出ラミネート法などにより積層された樹脂層を有する複合紙基材を用いて包装カップ20が製造された場合であっても、その構成中に紙を半分以上含むものであれば本明細書においては紙製と取り扱うものとする。なお、後述に例示するような製法により得られる包装カップ20を製造する場合、上述の複合紙基材のような材料構成の紙を用いることが、包装カップ20を構成する底紙、胴紙および縁巻き部の接着の確実性や成形のし易さの観点から好ましい。
包装カップ20の製法は特に限定されないが、たとえば、複合紙基材を用いる場合であれば、まず複合紙基材の原紙から円形の底紙と扇型の胴紙をそれぞれ打ち抜き、ついで底紙の円周部をL字型に折り曲げて屈曲片を形成する。
そして、胴紙の両端を接着して円筒状に形成し、その下端を折り返して折り返し片を形成するとともに、その上端に縁巻き部23を形成する。
さらに、胴紙の縁巻き部が設けられた上端開口から内部に底紙を挿入し、図3を参照して、底紙の屈曲片を胴紙の下端の内壁と折り返し片との間に差し込んで、接着させることによる。底紙の屈曲片を除く箇所が底壁21になり、胴紙の縁巻き部23と折り返し片を除く箇所が側壁22になる。
【0021】
ここで紙基材の種類は特に限定されないが、所望の用途に応じて、純白ロール紙、クラフト紙、パーチメント紙、アイボリー紙、マニラ紙、カード紙、カップ紙、グラシン紙などを用いることができる。
紙基材の厚みは、特に限定されないが、0.2~0.5mm(重量150~500g/m)程度が好ましく使用できる。
厚みが0.2mmを下回ると強度不足となる恐れがあり、厚みが0.5mmを上回ると剛性が大きくなって、上記したように原紙を打ち抜き折り曲げて成形する際の障害となりうる。
【0022】
複合紙基材の樹脂層を形成する樹脂の種類は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエンなどのジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が例示できる。
また、より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂や生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマス樹脂を用いることもできる。なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であって、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、融点が235℃以上250℃以下であることが好ましい。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂として生物由来のものを用いる場合は、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中の生物由来原料の占める割合を示す指標であるバイオベース炭素含有率が5%以上の、生物由来のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を主成分とし、これらを重縮合して得られる樹脂であるが、その大半は化石資源に由来するものである。これをサトウキビ等の生物由来原料から得られたバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂とすることで、化石資源由来の使用量を削減でき、カーボンニュートラル性が向上するため、持続可能性が向上し環境保全に役立つ。
【0023】
バイオベース炭素含有率は、5%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。
バイオベース炭素含有率が高いほど、化石資源由来原料の割合が少なくなるため環境保全に役立つ容器となる。他方でバイオベース炭素含有率の割合が高くなるとコストも増加するため、適正な範囲内であることがより好ましい。
尚、バイオベース炭素含有率は、ISO-16620-2(ASTM-D6866標準規格と同等)に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値で示すことができる。即ち、化石資源中にはC14がほとんど含まれず、一方で生物資源中にはC14が一定割合(105.5pMC)で含まれるため、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中のC14の含有量をPC14とすると、下記式でバイオベース炭素含有率を算出することができる。
バイオベース炭素含有率(%)=PC14/105.5×100
【0024】
樹脂層は、紙基材の内面または外面のいずれかに積層しても両面に積層してもよいが、両面に設けるほうが、包装カップ20を胴紙と底紙から作成する場合に、両者を熱接着により接着させることが容易となるため好ましい。
樹脂層を加熱により発泡させて、包装カップ20を発泡紙カップとしてもよい。
樹脂層の厚みも限定されないが、例えば、厚さ10~50μmの範囲が挙げられる。
厚みが10μmを下回ると接着不良が生じる恐れがあり、厚みが50μmを上回るとプラスチックの使用量が増加してしまう。
【0025】
図1から図3に示すように、蓋30は、天壁31と天壁31の周縁に付属する当接部としての嵌合部32とからなり、包装カップ20の開口24に天壁31を被せ、嵌合部32を縁巻き部23に当接の一態様として嵌合させることで、包装カップ20を閉塞できるように構成されている。
実施形態では、嵌合部32が縁巻き部23に嵌合した状態で、蓋30の天壁31は縁巻き部23の上縁に当接している。
天壁31には、下方に窪む凹部33が形成されており、この凹部33は、窪みの浅い周縁の肩部33aと、凹みの深い中央の押さえ部33bとからなる。
図3のように、おかずケース包装体1を上下に積み重ねた状態で、上段のおかずケース包装体1の包装カップ20の底壁21が、下段のおかずケース包装体1の蓋30の凹部33の肩部33aにはまり込むようになっている。
また、包装カップ20に収納されたおかずケース群10のうち、最上段のおかずケース11の開口11cから内部に押さえ部33bがはまり込むようになっている。
天壁31から押さえ部33bの底にかけての深さfは、特に限定されないが、収納されたおかずケース群10のうち、最上段のおかずケース11の開口11c上端部から底壁11aにかけての深さhに対して10%~90%程度の深さに設定されることが好ましく、30%~70%程度の深さに設定することがより好ましい。
10%未満であると、包装カップ20内でのおかずケース群のずれ動きを抑える効果が小さくなる場合があり、90%を超えると、おかずケースはプレス成形により製造されるので、いわゆるスプリングバック(経時により元の状態に戻ろうとすること)が生じる場合があり、その場合には収納するおかずケースの深さhが成形当初よりも小さくなることがあり、その結果、押さえ部33bが必要以上におかずケース群10を押すことになり、おかずケース11の変形などの品質不良が生じるおそれがある。さらに、90%を超えると、その分だけ蓋30のプラスチック使用量が増えることにもなってしまう。
なお、凹部33の形状は、包装カップ20の底壁21がはまり込み可能な限りにおいて、実施形態に限定されず、たとえば肩部33aを省略することもできる。
【0026】
この蓋30は、プラスチック製である。
そのプラスチックの種類は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエンなどのジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。また、より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂や生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマス樹脂を用いることもできる。
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であって、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、融点が235℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0027】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂として生物由来のものを用いる場合は、バイオベース炭素含有率が5%以上の、生物由来のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。バイオベース炭素含有率が5%以上の、生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を主成分とし、これらを重縮合して得られる樹脂であるが、その大半は化石資源に由来するものである。これをサトウキビ等の生物由来原料から得られたバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂とすることで、化石資源由来の使用量を削減でき、カーボンニュートラル性が向上するため、持続可能性が向上し環境保全に役立つ。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中の生物由来原料の占める割合を示す指標であるバイオベース炭素含有率は、5%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。バイオベース炭素含有率が高いほど、化石資源由来原料の割合が少なくなるため環境保全に役立つ容器となる。他方でバイオベース炭素含有率の割合が高くなるとコストも増加するため、適正な範囲内であることがより好ましい。尚、バイオベース炭素含有率は、ISO-16620-2(ASTM-D6866標準規格と同等)に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値で示すことができる。即ち、化石資源中にはC14がほとんど含まれず、一方で生物資源中にはC14が一定割合(105.5pMC)で含まれるため、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中のC14の含有量をPC14とすると、下記式でバイオベース炭素含有率を算出することができる。
「バイオベース炭素含有率(%)=PC14/105.5×100」
【0028】
蓋30は、透明でも不透明でもよいが、透明であるほうが、蓋30をあけずとも包装カップ20に収納されたおかずケース群10を視認可能となるため好ましい。
蓋30の厚みも限定されないが、例えば、厚さ0.1mm~1mmの範囲が挙げられる。特に好ましくは0.2mm~0.5mmの範囲内である。
厚みが0.1mmを下回ると、蓋30が強度不足となる恐れがあり、厚みが1mmを上回ると、プラスチックの使用量が増加してしまう。
【0029】
図4および図5に、実施形態のおかずケース包装体1の他の例を示す。
この例では、蓋30は、その嵌合部32の上下方向の中途にストッパ32aが設けられている。嵌合部32の嵌合状態で、このストッパ32aに包装カップ20の縁巻き部23が当接の一態様としてはまり込み、蓋30の上下位置が固定されている。
したがって、包装カップ20の開口24に蓋30をかぶせた状態で、蓋30の天壁31は、包装カップ20の縁巻き部23に当接せず、それよりも所定量dだけ上方に支持されている。
【0030】
このように蓋30が包装カップ20の開口24から所定量d浮き上がった状態にあるため、包装カップ20に収納可能なおかずケース11の数が若干量増加する。
また、おかずケース包装体1を上下に積み重ねた場合に、上下の包装カップ20の隙間から、透明な蓋30を通して下段の包装カップ20に収納されたおかずケース群10を視認できるようになっている。
ここでdの大きさは特に限定されないが、1~10mmであることが好ましい。
1mmを下回ると、浮き上がり量が小さすぎて、おかずケース群10を視認できる範囲が狭くなり、10mmを上回ると、浮き上がり量が大きすぎて、おかずケース包装体1を上下に積み重ねた場合に、スタッキング高さが大きくなり、嵩張ってしまう。
【0031】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【0032】
実施形態では、おかずケース群10と包装カップ20と蓋30のみからおかずケース包装体1を構成したが、おかずケース包装体1の構成要素はこれのみに限定されない。たとえば蓋30を包装カップ20にとめるためのテープや、シュリンク包装などが付加されていてもよい。
これらテープやシュリンク包装が付加されていれば、蓋30は包装カップ20の縁巻き部23と必ずしも嵌合している必要は無く、蓋30の天壁31の周縁に付属する当接部が包装カップ20の縁巻き部23に当接した状態でありさえすれば包装カップ20の開口を閉塞することが可能である。
また、包装カップ20と蓋30のみから、蓋付きの包装カップとして、おかずケース群10を収納しない状態で流通させることも可能である。
【0033】
実施形態の他の例では、蓋30を包装カップ20の開口から浮き上がらせる構成として、当接部としての嵌合部32およびストッパ32aを例示したが、これに限定されない。たとえば、蓋30の天壁31の周縁に包装カップ20の縁巻き部23が当接する当接部としての段部や縮径部や拡径部を設けてもよい。
【0034】
図6および図7に、そのようなさらに他の例の当接部を有するおかずケース包装体1を示す。
まず、図6の例では、おかずケース包装体1の蓋30は、天壁31の周縁に当接部としての段部34を有しており、この段部34が包装カップ20の縁巻き部23の上縁に当接することで、天壁31が縁巻き部23よりも所定量dだけ上方に位置するようになっている。
図6の例では、蓋30の天壁31には、肩部33aは存在せず、包装カップ20に収納したおかずケース群10のずれ動きを抑えるための押さえ部33bのみから凹部33が構成されている。肩部33aを省略することで、凹部33の形状の簡素化が図られ、蓋30の成形が容易となる。
また、図7の例では、図6と同様に、おかずケース包装体1の蓋30は、天壁31の周縁に段部34を有し、段部34と縁巻き部23との当接により、天壁31が縁巻き部23よりも所定量dだけ上方に位置するようになっているが、その凹部33は肩部33aと押さえ部33bとからなり、スタッキングの際には上段の包装カップ20の底壁21が下段の蓋30の肩部33aにはまり込むようになっている。
図6および図7の例のいずれの場合においても、蓋30が包装カップ20の開口24から所定量d浮き上がった状態にあるため、包装カップ20に収納可能なおかずケース11の数が若干量増加するとともに、おかずケース包装体1を上下に積み重ねた場合に、上下の包装カップ20の隙間から、透明な蓋30を通して下段の包装カップ20に収納されたおかずケース群10を視認できるようにもなっている。
【符号の説明】
【0035】
1 おかずケース包装体
10 おかずケース群
11 おかずケース
11a 底壁
11b 側壁
11c 開口
11d 襞
20 包装カップ
21 底壁
22 側壁
22a 印刷
23 縁巻き部
24 開口
30 蓋
31 天壁
32 嵌合部
32a ストッパ
33 凹部
33a 肩部
33b 押さえ部
34 段部
f 蓋の凹部の深さ
h おかずケースの深さ
d 包装カップの縁巻き部と蓋の天壁との距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7