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特許7466360産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】産業用ロボットのハンドおよび産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240405BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B25J15/06 D
H01L21/68 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071207
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167041
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】濱沖 孟
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265394(US,A1)
【文献】実開昭56-168826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、
上面側に前記搬送対象物が載置される直線状の複数のフォークと、前記フォークの上面側に載置される前記搬送対象物の下面を吸着するとともに前記フォークに取り付けられる吸着パッドと、複数の前記フォークの基端部が取り付けられるハンド基部とを備え、
記フォークは、前記フォークの上面側に載置される前記搬送対象物の反りに追従して前記フォークの長手方向を回動の軸方向とする前記フォークの回動方向において前記ハンド基部に対して回動可能となるように、前記フォークの回動方向において前記ハンド基部に対して付勢されていない状態で前記フォークの回動方向において回動自在に前記ハンド基部に保持されていることを特徴とするハンド。
【請求項2】
前記フォークは、前記ハンド基部に取り付けられるフォーク基部を備え、
前記フォーク基部には、前記フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状または円形状となる外周面が形成され、
前記ハンド基部には、前記フォーク基部が挿入される挿入穴が形成され、
前記フォークの長手方向から見たときの前記挿入穴の形状は円形状となっており、
前記フォーク基部の前記外周面は、前記挿入穴の側面に接触し、
前記フォーク基部の前記外周面の曲率半径と前記挿入穴の曲率半径とが略等しくなっていることを特徴とする請求項1記載のハンド。
【請求項3】
前記フォークは、前記ハンド基部に取り付けられるフォーク基部を備え、
前記フォーク基部には、前記フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状となる外周面が形成され、
前記ハンド基部には、前記フォーク基部が挿入される挿入穴が形成され、
前記挿入穴の側面の一部は、前記フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状となる円弧面となっており、
前記フォーク基部の前記外周面は、前記挿入穴の前記円弧面に接触し、
前記フォーク基部の前記外周面の曲率半径と前記挿入穴の前記円弧面の曲率半径とが略等しくなっており、
前記フォークの長手方向から見たときに、円弧状をなす前記挿入穴の前記円弧面の中心角は、円弧状をなす前記フォーク基部の前記外周面の中心角よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1記載のハンド。
【請求項4】
前記フォーク基部は、半円筒状に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のハンド。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載のハンドと、前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えることを特徴とする産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドに関する。また、本発明は、かかるハンドを備える産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ELディスプレイを搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットのハンドは、上面側に有機ELディスプレイが載置される直線状の4本のフォークと、4本のフォークの基端部が取り付けられるハンド基部(基部)と、フォークの上面側に載置される有機ELディスプレイの下面を吸着する吸着パッドとを備えている。吸着パッドは、フローティング機構を介してフォークに取り付けられている。そのため、特許文献1に記載のハンドでは、フォークの上面側に載置される有機ELディスプレイに反りが生じていても、有機ELディスプレイの反りに吸着パッドを追従させて、吸着パッドによって有機ELディスプレイの下面を吸着することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-10692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、長方形状または正方形状の大型のパネルの上に多数のチップを並べて複数の半導体パッケージを一括で製造する工法(パネルレベルパッケージング(PLP))が普及し始めており、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで産業用ロボットが使用され始めている。PLPには、多数のチップが載置されたパネルの上面を樹脂でコーティング(封止)する工程等が含まれており、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われるパネルには、大きな反りが生じやすい。
【0005】
特許文献1に記載のハンドでは、吸着パッドがフローティング機構を介してフォークに取り付けられているため、ある程度の反りが搬送対象物に生じていても、搬送対象物の反りに吸着パッドを追従させて、吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することは可能である。しかしながら、特許文献1に記載のハンドの場合、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われるパネルのように、搬送対象物に大きな反りが生じていると、搬送対象物の反りに吸着パッドを追従させられなくなり、その結果、吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することができなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物が上面側に載置されるフォークを備える産業用ロボットのハンドにおいて、搬送対象物に大きな反りが生じていても、フォークに取り付けられた吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することが可能な産業用ロボットのハンドを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるハンドを備える産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットのハンドは、搬送対象物を搬送する産業用ロボットのハンドにおいて、上面側に搬送対象物が載置される直線状の複数のフォークと、フォークの上面側に載置される搬送対象物の下面を吸着するとともにフォークに取り付けられる吸着パッドと、複数のフォークの基端部が取り付けられるハンド基部とを備え、フォークは、フォークの上面側に載置される搬送対象物の反りに追従してフォークの長手方向を回動の軸方向とするフォークの回動方向においてハンド基部に対して回動可能となるように、フォークの回動方向においてハンド基部に対して付勢されていない状態でフォークの回動方向において回動自在にハンド基部に保持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用ロボットのハンドでは、フォークは、フォークの長手方向を回動の軸方向とするフォークの回動方向において回動自在にハンド基部に保持されている。
【0009】
そのため、本発明では、搬送対象物に大きな反りが生じていても、フォークの全体を搬送対象物の反りに追従させることが可能になる。したがって、搬送対象物に大きな反りが生じていても、フォークに取り付けられた吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、たとえば、複数の製造工程を有する製造ラインで産業用ロボットが使用される場合に、製造工程ごとに搬送対象物の反りの大きさが変わっても、ハンド基部に対して回動自在なフォークを、搬送対象物の反りの大きさに応じて回動させて、搬送対象物の反りに追従させることが可能になるため、全ての製造工程において同じハンドを用いて搬送対象物を搬送することが可能になる。したがって、本発明では、ハンドの汎用性を高めることが可能になる。
【0011】
なお、本発明における「直線状のフォーク」とは、全体として直線状に形成されているフォークのことである。したがって、緩やかに曲がった部分が一部に含まれているフォークや、全体的に緩やかに曲がっているフォークであっても、全体として直線状に形成されていれば、これらのフォークも、本発明の「直線状のフォーク」に含まれる。
【0012】
本発明において、フォークは、ハンド基部に取り付けられるフォーク基部を備え、フォーク基部には、フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状または円形状となる外周面が形成され、ハンド基部には、フォーク基部が挿入される挿入穴が形成され、フォークの長手方向から見たときの挿入穴の形状は円形状となっており、フォーク基部の外周面は、挿入穴の側面に接触し、フォーク基部の外周面の曲率半径と挿入穴の曲率半径とが略等しくなっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明において、フォークは、ハンド基部に取り付けられるフォーク基部を備え、フォーク基部には、フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状となる外周面が形成され、ハンド基部には、フォーク基部が挿入される挿入穴が形成され、挿入穴の側面の一部は、フォークの長手方向から見たときの形状が円弧状となる円弧面となっており、フォーク基部の外周面は、挿入穴の円弧面に接触し、フォーク基部の外周面の曲率半径と挿入穴の円弧面の曲率半径とが略等しくなっており、フォークの長手方向から見たときに、円弧状をなす挿入穴の円弧面の中心角は、円弧状をなすフォーク基部の外周面の中心角よりも大きくなっていても良い。
【0014】
このように構成すると、比較的簡易な構成で、フォークの長手方向を回動の軸方向とするフォークの回動方向においてハンド基部に対するフォークの回動が自在となるように、ハンド基部にフォークを保持させることが可能になる。
【0015】
本発明において、フォーク基部は、半円筒状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、フォーク基部が、半円柱状、円筒状または円柱状に形成されている場合と比較して、フォーク基部を軽量化することが可能になる。
【0017】
本発明のハンドは、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備える産業用ロボットに用いることができる。この産業用ロボットでは、搬送対象物に大きな反りが生じていても、フォークに取り付けられた吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、搬送対象物が上面側に載置されるフォークを備える産業用ロボットのハンドにおいて、搬送対象物に大きな反りが生じていても、フォークに取り付けられた吸着パッドによって搬送対象物の下面を吸着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの側面図である。
図3図1に示すハンドの平面図である。
図4図4(A)は、図3のE-E断面の断面図であり、図4(B)は、図3に示すフォークの構成を説明するための図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかるフォークの動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の側面図である。
【0022】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2を搬送するための水平多関節型のロボットである。本形態の搬送対象物2は、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われる大型のパネルである。搬送対象物2は、長方形の平板状に形成されている。ロボット1は、複数枚の搬送対象物2が収容される収容部からの搬送対象物2の搬出や、収容部への搬送対象物2の搬入を行う。収容部には、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。
【0023】
ロボット1は、搬送対象物2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース6とを備えている。本体部5は、アーム4の基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポート7と、アームサポート7を昇降可能に支持する支持フレーム8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース6に対して水平移動可能な基台9と、支持フレーム8の下端が固定されるとともに基台9に対して回動可能な旋回フレーム10とを備えている。
【0024】
アーム4は、第1アーム部12と第2アーム部13との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部12の基端側は、アームサポート7に回動可能に連結されている。すなわち、アーム4の基端側は、本体部5に回動可能に連結されている。2本のアーム4のうちの一方のアーム4の基端側は、アームサポート7の上端側に連結され、他方のアーム4の基端側は、アームサポート7の下端側に連結されている。第1アーム部12の先端側には、第2アーム部13の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部13の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。すなわち、アーム4の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。ロボット1は、2本のアーム4のそれぞれを伸縮させる2個のアーム駆動機構を備えている。
【0025】
支持フレーム8は、アームサポート7を介してハンド3およびアーム4を昇降可能に保持している。ロボット1は、支持フレーム8に対してアームサポート7を昇降させる昇降機構と、アームサポート7を上下方向に案内するガイド機構とを備えている。支持フレーム8の下端は、旋回フレーム10に固定されている。旋回フレーム10は、上述のように、基台9に対して回動可能となっている。ロボット1は、基台9に対して旋回フレーム10を回動させる回動機構を備えている。基台9は、上述のように、ベース6に対して水平移動可能となっている。ロボット1は、ベース6に対して基台9を水平移動させる水平移動機構を備えている。
【0026】
(ハンドの構成)
図3は、図1に示すハンド3の平面図である。図4(A)は、図3のE-E断面の断面図であり、図4(B)は、図3に示すフォーク18の構成を説明するための図である。
【0027】
ハンド3は、第2アーム部13の先端側に回動可能に連結されるハンド基部17と、上面側に搬送対象物2が載置される複数のフォーク18とを備えている。本形態のハンド3は、2本のフォーク18を備えている。また、ハンド3は、フォーク18の上面に固定されるとともに搬送対象物2が載置される複数の載置部材19と、載置部材19に載置される搬送対象物2(すなわち、フォーク18の上面側に載置される搬送対象物2)の下面を吸着する複数の吸着パッド20とを備えている。
【0028】
フォーク18は、直線状に形成されている。2本のフォーク18は、ハンド基部17から水平方向の同方向へ突出している。また、2本のフォーク18は、互いに平行に配置されている。以下の説明では、直線状に形成されるフォーク18の長手方向(図3等のX方向)を「前後方向」とし、上下方向と前後方向とに直交する図3等のY方向を「左右方向」とする。2本のフォーク18は、左右方向に間隔をあけた状態で配置されている。
【0029】
ハンド基部17は、たとえば、アルミニウム合金で形成されている。ハンド基部17は、上下方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されている。ハンド基部17は、ハンド基部17の左右の側面が左右方向に直交し、ハンド基部17の前後の側面が前後方向と直交するように配置されている。ハンド基部17には、2本のフォーク18の基端部が取り付けられている。ハンド基部17には、フォーク18の基端部を構成する後述のフォーク基部22が挿入される挿入穴17aが形成されている。
【0030】
挿入穴17aは、前後方向でハンド基部17を貫通する丸穴であり、前後方向から見たときの挿入穴17aの形状は円形状となっている。挿入穴17aは、左右方向に間隔をあけた状態で2箇所に形成されている。なお、挿入穴17aは、ハンド基部17の前後方向の一方の面から他方の面に向かって窪む丸穴であっても良い。すなわち、挿入穴17aは、前後方向でハンド基部17を貫通していなくても良い。
【0031】
また、ハンド基部17には、図4(A)に示すように、ハンド基部17の外側面から挿入穴17aに通じるネジ穴17bが形成されている。具体的には、ハンド基部17の下側面から挿入穴17aに通じるネジ穴17bがハンド基部17に形成されている。ネジ穴17bは、たとえば、1個の挿入穴17aに対して複数箇所に形成されている。すなわち、ハンド基部17には、挿入穴17aに沿って前後方向に間隔をあけた状態で配置される複数のネジ穴17bが形成されている。
【0032】
フォーク18は、フォーク18の基端部を構成するフォーク基部22と、ハンド基部17から前後方向の一方側へ突出するフォーク本体部23を備えている。フォーク基部22とフォーク本体部23とは、別体で形成されている。フォーク基部22は、ハンド基部17に取り付けられている。具体的には、フォーク基部22は、挿入穴17aに挿入された状態でハンド基部17に固定されている。
【0033】
図4(A)に示すように、フォーク基部22は、半円筒状に形成されている。すなわち、フォーク基部22には、前後方向から見たときの形状が円弧状となる外周面22aが形成されている。具体的には、前後方向から見たときの形状が半円弧状となる外周面22aがフォーク基部22に形成されており、前後方向から見たときの外周面22aの中心角は、180°となっている。フォーク基部22は、外周面22aが下側に配置されるように挿入穴17aに挿入されている。挿入穴17aに挿入されるフォーク基部22は、ネジ穴17bに螺号する止めネジ24によってハンド基部17に固定されている。止めネジ24の上端は、フォーク基部22の外周面22aに所定の接触圧で接触している。
【0034】
外周面22aは、挿入穴17aの側面に接触している。外周面22aの曲率半径と挿入穴17aの曲率半径とは、略等しくなっている。挿入穴17aにフォーク基部22が挿入された状態では、フォーク基部22は、前後方向を回動の軸方向として回動可能となっている。具体的には、挿入穴17aにフォーク基部22が挿入された状態では、フォーク基部22は、外周面22aの曲率中心(挿入穴17aの曲率中心)を回動中心にして、挿入穴17aの側面に沿って回動可能となっている。本形態では、止めネジ24を緩めた状態で、前後方向を回動の軸方向としてフォーク基部22を手動で所定角度、回動させた後、止めネジ24を締めることで、前後方向を回動の軸方向とするとともに外周面22aの曲率中心を回動中心にするフォーク18の回動方向において、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整可能となっている。
【0035】
フォーク本体部23は、前後方向に細長い直線状に形成されている。フォーク本体部23の上面は、平面となっている。フォーク本体部23の基端側は、外周面22aが下側に配置される半円筒状のフォーク基部22の上端面に固定されている。フォーク基部22の上端面に固定されるフォーク本体部23の基端側は、挿入穴17aの中に配置されている。搬送対象物2は、フォーク本体部23の、前後方向の中心から先端までの部分に載置される。上述のように、ロボット1は、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部からの搬送対象物2の搬出や、収容部への搬送対象物2の搬入を行う。収容部からの搬送対象物2の搬出時や、収容部への搬送対象物2の搬入時には、フォーク本体部23が収容部の中に挿入される。
【0036】
載置部材19は、フォーク18に取り付けられている。具体的には、載置部材19は、フォーク本体部23の上面に固定されている。吸着パッド20は、フォーク18に取り付けられている。具体的には、吸着パッド20は、フォーク本体部23の上面側に取り付けられている。吸着パッド20は、フローティング機構(図示省略)を介して、フォーク本体部23に取り付けられており、フォーク本体部23に対して傾動可能になっている。すなわち、フォーク本体部23に対して吸着パッド20を傾けることが可能になっている。また、吸着パッド20は、フォーク本体部23に対してわずかに上下動可能となっている。吸着パッド20は、搬送対象物2の下面を真空吸着する。
【0037】
上述のように、ロボット1は、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部からの搬送対象物2の搬出や、収容部への搬送対象物2の搬入を行う。また、搬送対象物2は、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われる大型のパネルであり、収容部に収容される搬送対象物2には、比較的大きな反りが生じている(図4(B)参照)。また、上述のように、前後方向を回動の軸方向とするとともに外周面22aの曲率中心を回動中心にするフォーク18の回動方向において、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整可能となっている。
【0038】
本形態では、搬送対象物2の反りに応じて、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整されており、図4(B)に示すように、フォーク18は、各製造工程における搬送対象物2の反りに応じた取付角度でハンド基部17に固定されている。たとえば、各製造工程において、搬送対象物2の下面を吸着する前の吸着パッド20の上端が搬送対象物2の下面と略平行になるように、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整された後、フォーク18がハンド基部17に固定されている。ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度の調整は、各製造工程が開始される前に行われる。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、前後方向を回動の軸方向とするとともにフォーク基部22の外周面22aの曲率中心を回動中心にするフォーク18の回動方向において、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整可能となっている。また、本形態では、搬送対象物2の反りに応じて、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整されており、フォーク18は、各製造工程における搬送対象物2の反りに応じた取付角度でハンド基部17に固定されている。そのため、本形態では、吸着パッド20の傾動動作では吸収しきれない大きな反りが搬送対象物2に生じていても、収容部から搬送対象物2を搬出する際に、フォーク18に取り付けられた吸着パッド20によって搬送対象物2の下面を吸着することが可能になる。
【0040】
また、本形態では、搬送対象物2の反りに応じてハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整された後、ハンド基部17にフォーク18が固定されているため、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容される収容部の中の搬送対象物2の上下方向の間隔が狭くなっていても、収容部の中にフォーク本体部23を挿入する際の、フォーク本体部23および吸着パッド20と、搬送対象物2との干渉を防止することが可能になる。さらに、本形態では、製造工程ごとにハンド基部17に対するフォーク18の取付角度が調整されており、製造工程ごとに搬送対象物2の反りの大きさが変わっても、全ての製造工程において同じハンド3を用いて搬送対象物2を搬送することが可能になる。そのため、本形態では、ハンド3の汎用性を高めることが可能になる。
【0041】
本形態では、フォーク基部22の外周面22aの曲率半径と、フォーク基部22が挿入される挿入穴17aの曲率半径とが略等しくなっており、フォーク基部22は、外周面22aの曲率中心を回動中心にして、挿入穴17aの側面に沿って回動可能となっている。そのため、本形態では、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度を容易に調整することが可能になる。また、本形態では、前後方向を回動の軸方向とするフォーク18の回動方向において、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度を連続的に調整することが可能になる。
【0042】
本形態では、フォーク基部22は、半円筒状に形成されている。そのため、本形態では、フォーク基部22が、半円柱状、円筒状または円柱状に形成されている場合と比較して、フォーク基部22を軽量化することが可能になる。また、本形態では、挿入穴17aに挿入されるフォーク基部22は、ネジ穴17bに螺合する止めネジ24によってハンド基部17に固定されているため、ハンド基部17に対する取付角度を調整した後のフォーク基部22をハンド基部17に容易に固定することが可能になる。
【0043】
(ハンドの変形例)
図5は、本発明の他の実施の形態にかかるフォーク18の動きを説明するための図である。
【0044】
上述した形態では、挿入穴17aに挿入されるフォーク基部22は、ネジ穴17bに螺号する止めネジ24によってハンド基部17に固定されているが、挿入穴17aに挿入されるフォーク基部22がハンド基部17に固定されずに、ハンド基部17に対して回動自在となっていても良い。すなわち、フォーク18は、前後方向を回動の軸方向とするとともに外周面22aの曲率中心を回動中心にするフォーク18の回動方向において回動自在にハンド基部17に保持されていても良い。
【0045】
この変形例では、フォーク18に外力が作用していないときに、吸着パッド20の上端が真上を向いており、収容部から搬送対象物2を搬出するために、フォーク本体部23が収容部の中に挿入されるときには、吸着パッド20の上端が真上を向いている(図5(A)参照)。また、収容部に収容される搬送対象物2をフォーク18に載置するときには、吸着パッド20の傾動動作では吸収しきれない大きな反りが搬送対象物2に生じていても、フォーク18が搬送対象物2の反りに追従して回動する(図5(B))。
【0046】
このように、この変形例では、吸着パッド20の傾動動作では吸収しきれない大きな反りが搬送対象物2に生じていても、フォーク18の全体を搬送対象物2の反りに追従させることが可能になるため、フォーク18に取り付けられた吸着パッド20によって搬送対象物2の下面を吸着することが可能になる。また、この変形例では、ハンド基部17に対するフォーク18の取付角度の調整を事前に行わなくても、大きな反りが生じている搬送対象物2の下面を、フォーク18に取り付けられた吸着パッド20によって吸着することが可能になる。
【0047】
また、この変形例では、製造工程ごとに搬送対象物2の反りの大きさが変わっても、ハンド基部17に対して回動自在なフォーク18を、搬送対象物2の反りの大きさに応じて回動させて、搬送対象物2の反りに追従させることが可能になる。そのため、この変形例でも、全ての製造工程において同じハンド3を用いて搬送対象物2を搬送することが可能になる。したがって、ハンド3の汎用性を高めることが可能になる。
【0048】
また、この変形例では、フォーク基部22の外周面22aの曲率半径と、フォーク基部22が挿入される挿入穴17aの曲率半径とが略等しくなっており、フォーク基部22は、外周面22aの曲率中心を回動中心にして、挿入穴17aの側面に沿って回動自在となっているため、比較的簡易な構成で、ハンド基部17にフォーク18を回動自在に保持させることが可能になる。
【0049】
ただし、この変形例では、フォーク本体部23が収容部の中に挿入されるときに吸着パッド20の上端が真上を向いているため、収容部に収容される搬送対象物2の上下方向の間隔が狭くなると、図5(C)に示すように、収容部の中にフォーク本体部23を挿入する際に、フォーク本体部23または吸着パッド20と、搬送対象物2とが干渉するおそれがある。これに対して、上述した形態のように、ハンド基部17に対する取付角度が調整された後のフォーク18がハンド基部17に固定されていれば、収容部に収容される搬送対象物2の上下方向の間隔が狭くなっていても、収容部の中にフォーク本体部23を挿入する際の、フォーク本体部23および吸着パッド20と、搬送対象物2との干渉を防止することが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態において、フォーク基部22は、半円柱状に形成されていても良い。また、フォーク基部22は、円筒状または円柱状に形成されていても良い。フォーク基部22が円筒状または円柱状に形成されている場合には、前後方向から見たときのフォーク基部22の外周面22aは、円形状となっている。また、前後方向から見たときの外周面22aの形状が、中心角が180°を超え、かつ、360°未満となる円弧状をなすように、フォーク基部22が形成されていても良い。たとえば、フォーク基部22は、3/4円筒状に形成されていても良い。
【0052】
上述した形態において、挿入穴17aは、丸穴に形成されていなくても良い。すなわち、前後方向から見たときの挿入穴17aの形状は円形状となっていなくても良い。この場合には、挿入穴17aの側面の一部は、前後方向から見たときの形状が円弧状となる円弧面となっており、フォーク基部22の外周面22aは、挿入穴17aの円弧面に接触している。また、この場合には、外周面22aの曲率半径と挿入穴17aの円弧面の曲率半径とが略等しくなっている。さらに、この場合には、前後方向から見たときに、円弧状をなす挿入穴17aの円弧面の中心角は、外周面22aの中心角よりも大きくなっている。たとえば、前後方向から見たときに、外周面22aの中心角が180°となっており、挿入穴17aの円弧面の中心角が240°となっている。
【0053】
上述した形態において、フォーク18は、止めネジ24以外の固定手段によってハンド基部17に固定されていても良い。また、上述した形態において、ハンド3は、ハンド基部17に対してフォーク18を自動で回動させる回動機構を備えていても良い。さらに、上述した形態において、ハンド3が備えるフォーク18の数は、3本以上であっても良い。また、上述した形態において、吸着パッド20は、フォーク本体部23に対して傾動可能になっていなくても良い。
【0054】
上述した形態において、フォーク18が全体として直線状に形成されているのであれば、緩やかに曲がった部分がフォーク18に含まれていても良いし、フォーク18が全体的に緩やかに曲がっていても良い。また、上述した形態において、搬送対象物2は、PLPを用いた半導体パッケージの製造ラインで取り扱われる大型のパネル以外のものであっても良い。
【0055】
上述した形態では、2本のアーム4は、上下方向にずれた状態で配置されているが、たとえば、特開2016-207938号公報に記載されるように、2本のアーム4が同じ高さで、かつ、水平方向にずれた状態で配置されていても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、水平多関節型のロボットであるが、本発明が適用されるロボットは、水平多関節型のロボット以外の産業用ロボットであっても良い。たとえば、本発明が適用されるロボットは、特開2017-19061号公報に開示された産業用ロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 搬送対象物
3 ハンド
4 アーム
5 本体部
17 ハンド基部
17a 挿入穴
17b ネジ穴
18 フォーク
20 吸着パッド
22 フォーク基部
22a 外周面
24 止めネジ
X フォークの長手方向
図1
図2
図3
図4
図5